JPH08333161A - 圧電体の製造方法 - Google Patents

圧電体の製造方法

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JPH08333161A
JPH08333161A JP7160119A JP16011995A JPH08333161A JP H08333161 A JPH08333161 A JP H08333161A JP 7160119 A JP7160119 A JP 7160119A JP 16011995 A JP16011995 A JP 16011995A JP H08333161 A JPH08333161 A JP H08333161A
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孝宏 山川
Shigeru Takahashi
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 焼結助剤の添加やPbを過剰に加えなくても
焼結温度を低くすることができ、しかも分極時の破壊を
起こり難くすることのできる圧電体の製造方法を提供す
ること。 【構成】 組成としてABO3で表される圧電体の製造
方法において、Aサイトの元素が、モル比でA=mB
(但し、0.95≦m≦0.99)となるように原料配
合して混合し、その混合物をペロブスカイト相が単一相
となるように仮焼した後、その仮焼物にさらにA=nB
(1.00≦n≦1.02)となるようにAサイト元素
の原料を加え、それを比表面積が5m2/g以上になる
まで粉砕した後、焼結することとした圧電体の製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、圧電体に関し、特に主
成分にPbを含有する圧電体(以下鉛系圧電体と称す
る)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鉛系圧電体は、ペロブスカイト構造を有
し、ABO3で表される圧電体であるが、その圧電的特
性が非常に優れているため、さまざまな分野で用いられ
ている。例えば電話機のレシーバーやブザーなどの発音
体、超音波ソナーやノッキングセンサーなどのセンサ
ー、超音波モータなどのアクチュエーターなどに実用化
されている。
【0003】この鉛系圧電体を工業的に作る方法として
は、AサイトのPb源としてPbOやPb34などを、
BサイトのZr源としてZrO2やZrCO3などを、同
じくTi源としてTiO2やTi(OH)4などを主原料
とし、その他必要に応じてAサイトの原料にはBa、L
a、Sr、Caなどの元素の酸化物や炭酸塩を、Bサイ
トの原料にはMg、Nb、Sb、Mn、V、Cr、F
e、Bi、Niなどの元素の酸化物や炭酸塩を少量加
え、それをミルなどで混合した後仮焼し、その仮焼物を
粉砕、成形、焼成して製造する方法であった。なお、一
般にAとBサイトに入る元素イオン及び酸素イオンの半
径が、それぞれrA+rB=t√2(rB+rO)(但し、
0.9≦t≦1.1)で表される式を満足することがで
きれば、ペロブスカイト型構造を取り得るといわれてお
り、前記に掲げた元素はいずれもこの式を満足してい
る。
【0004】しかし、Aサイトの50モル%以上がPb
から成る圧電体の製造方法においては、高温で焼成する
とPbが揮発するため、組成がずれて焼結し難くなり圧
電特性に悪影響を与えたり、緻密な圧電体が得られ難い
という問題があった。そのため、できるだけ低い温度で
焼結すべく、SiO2やB23−SiO2ガラス、Bi2
3−CuO系ガラスなどの焼結助剤をさらに添加する
ことが行われている。また、初めからPb分をA>Bと
なるように多めに配合して焼成温度を下げることも行わ
れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この両
方法とも低温で焼結し易いものの、仮焼時に粒子間に強
固なネッキングを生じ易く、その後の粉砕では壊れない
凝集体が残るため、焼結しても緻密化してない部分が残
留する。この疎な部分に起因して圧電体が分極時に壊れ
易いという問題があった。
【0006】本発明は、上述した鉛系圧電体の製造方法
が有する課題に鑑みなされたものであって、その目的
は、焼結助剤の添加やPbを過剰に加えなくても焼結温
度を低くすることができ、しかも分極時の破壊を起こり
難くすることのできる圧電体の製造方法を提供すること
にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的
を達成するため、様々な実験を繰り返した結果、Aサイ
トを構成する1種以上の元素の合計が、Bサイトを構成
する元素の合計より少なくなるよう原料を配合して仮焼
し、その仮焼物に不足分のAサイト元素の原料を加え、
それを細かく粉砕した粉末を用いて焼結すれば、焼結温
度を低くすることができ、しかもその焼結した圧電体の
分極時の破壊が従来より起こり難いとの知見を得て本発
明を完成した。
【0008】上記Aサイト元素をBサイト元素より少な
くする組成としては、モル比でA=mB(但し、0.9
5≦m≦0.99)とし、その組成になるよう原料を配
合し、それを単一のペロブスカイト相となるように仮焼
することとした。
【0009】mをこの範囲にしたのは、次の理由によ
る。それは、mが1以上の場合には、Aサイトを構成す
る元素が充足されているため、元素の一部が仮焼時にA
サイトから粒界や粒子表面などに弾き出され、弾き出さ
れた元素によって形成される酸化物により局部的に液相
を生じ、その液相によって粒子間に強固なネッキングを
作ってしまうものと考えられ、これを上記のようにmを
1より小さく、すなわちAサイト元素を不足にすれば、
粒界や粒子表面に弾き出される元素が少なくなり、仮焼
時に生じるネッキングが少なくなって分極時の破壊が改
善されるものと思われる。
【0010】逆にmが小さすぎる、すなわち0.95よ
り小さいと、仮焼時のネッキングは起こり難いが、Aサ
イトの元素が少なすぎてペロブスカイト相以外の結晶相
が生じ、ペロブスカイトの単一相とすることができない
ので、仮焼物に不足分を補って焼成してもペロブスカイ
ト相以外の結晶相が残って混在し、高い圧電特性が得ら
れなくなる。なお、mが0.95以上であっても、使用
する原料種類や仮焼温度、その時間などの違いでペロブ
スカイト相以外の結晶相が生成することもあるので、単
一相になるかどうかをあらかじめ実験で調べて最適な条
件で仮焼するのがよい。
【0011】また、上記仮焼後に不足分のAサイト元素
を加える組成としては、モル比でA=nB(但し、1.
00≦n≦1.02)とした。nをこの範囲にしたの
は、nが1.00未満であるとAサイトが欠損するた
め、低温では焼結し難くなり、分極時の破壊が改善され
ず、逆に1.02を超えると仮焼時のネッキングは少な
いが、その後の焼成でガラスが多くなってネッキングが
増え、分極時の破壊も改善されず、その他圧電特性の低
下や圧電体中の気孔が消滅し難くなるなど、この範囲を
外れると好ましくないからである。
【0012】この仮焼後に不足分を加えるのは、Aサイ
トの欠損を補うのに加えて、より低温で焼成可能となる
働きを持つ。その理由は、Aサイトを構成する元素は比
較的拡散し易いので、仮焼後に添加した元素が焼結助剤
の働きをして焼結温度を下げるものと思われ、最終的に
はその元素は、焼結終了までに欠損しているAサイトに
入り込み圧電特性に悪影響を与えないものと思われる。
これにより、分極時の破壊が改善されることに加えて、
焼結助剤の添加やPbを過剰に加えなくても低温焼結が
可能となる。
【0013】この不足分を補う元素、あるいは仮焼前に
不足にする元素については、Aサイトを欠損型にし、そ
れを解消するためだけの元素であるので、前述のAサイ
トの元素のいずれを選んでも構わないが、それらの中で
は、Pb、Laが特にネッキングを発生させ易く、また
仮焼後に焼成した場合に拡散し易い元素であるので、こ
れらを抑え、促進する効果も大きいため、これらの元素
を選定することが好ましい。
【0014】さらに、上記不足分を加えた仮焼物を粉砕
する細かさとしては、比表面積で5m2/g以上とし
た。これは、比表面積を5m2/g以上にしないと、仮
焼時に生じるネッキングが少なくても、それを壊しきれ
なくなり、同時に、添加する不足分のAサイト原料の分
散が悪くなるので、焼成後に欠陥が残り易く、圧電体が
分極時に壊れ易くなることによる。仮焼物のみを細かく
粉砕した後、不足分を加えて混合しても構わないが、工
程が長くなりメリットはない。
【0015】本発明の製造方法をさらに詳細に述べる
と、先ずAサイトには、前述の原料の中から、同じくB
サイトにも前述の原料の中から必要な原料を選び、それ
らの原料をAサイトが所定の欠損となる組成になるよう
配合してミルで混合する。混合が悪いとペロブスカイト
相の生成量が少なくなることがあるので、よく混合す
る。混合した粉末を乾燥して700〜900℃の温度で
仮焼した後、その仮焼物に所定の組成となるようAサイ
ト原料を加えた後、慣用の方法、例えば、ボールミルや
振動ミルあるいは大量に処理できる強制攪拌ミルなどで
比表面積が5m2/g以上になるまで粉砕する。粉砕し
た粉末を成形(プレス成形、押出し成形、テープ成形な
ど)、加工(所望形状への打抜き、切断、印刷、積層な
ど)、焼成(脱脂、サヤ詰め、焼成など)、電極付け
(導体印刷、導体焼き付け、リード線付けなど)、分極
(洗浄、分極、洗浄、検査など)などの慣用の工程を経
て、圧電体を作製する。
【0016】以上、上記のような方法で製造することに
より、低温で焼結することができ、しかも分極時に壊れ
難い圧電体とすることができる。
【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、
本発明をより詳細に説明する。
【0018】(実施例1〜5) (1)圧電体の作製 原料としてPb34、SrCO3、ZrO2、TiO2
MnCO3、Nb25の粉末を、モル比でPbxSry
0.56Ti0.41Nb0.02Mn0.013(但し、x+y=
m)で表わされる式中のx、yが表1に示す組成となる
ように配合し、それを直径が3〜10mmのジルコニア
ボールを充填した樹脂製ポットミルで24時間混合し、
噴霧乾燥機で乾燥した。この乾燥物をアルミナ製のサヤ
を用いて800℃で2時間仮焼した。この仮焼物にさら
に、PbsSrjZr0.56Ti0.41Nb0.02Mn0.013
(但し、s+j=n)で表わされる式中のs、jが表1
に示す組成となるように加え、直径が1mmのジルコニ
アビーズを用いた強制攪拌ミル(コトブキ技研工業社:
AM−1)にて表1に示す比表面積になるまで粉砕し
た。
【0019】この粉末を1トン/cm2の圧力で、直径
20mm、厚さ2mmの円板にプレス成形し、その成形
体をマグネシアのサヤに入れて1150℃で2時間焼成
した。その焼成体の表面を#600のカーボランダム砥
粒にて研磨して0.5mmの厚さに揃え、この両面にA
gペーストを印刷して700℃×10分で焼き付け電極
を形成した後、シリコンオイル中で1.7kVの電圧を
60分間印加して分極し、1実施例毎に100枚の圧電
体を作製した。
【0020】(2)評価 仮焼した仮焼物の構成相については、X線回折法にて調
べた。仮焼後粉砕した粉末の比表面積については、窒素
吸着法によって求めた。分極時の破壊状態については、
分極した圧電体を目視で調べ、割れたり、貫通孔が生じ
たりしたものを破壊されたとした。また、圧電体が緻密
に焼結されているか否かをみるためアルキメデス法で焼
結体の気孔率を、その焼結体の圧電特性の良否をみるた
め径方向振動の電気機械結合係数Kr(0.55以上が
良)を併せて求めた。それらの結果を表1に示す。
【0021】(比較例1〜6)比較のために、仮焼前と
仮焼後の組成比を表1に示す組成とする他は実施例と同
じにして圧電体を作製し、実施例と同様に評価した。そ
れらの結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】表1から明らかなように、実施例1〜5に
おいては、仮焼前の圧電体の組成が本発明の範囲内にあ
ってしかも仮焼物の構成相が単一のペロブスカイト相と
なっており、また仮焼後の組成及び粉末の細かさも本発
明の範囲内にあるので、従来は1250℃前後の温度で
焼結しないと緻密にできなかったものが、本発明の11
50℃の低温でも気孔率が小さく十分緻密に焼結してい
る。また、壊れた圧電体の枚数はいずれも2枚以下と少
なく満足できるものであり、さらにKrも良であった。
【0024】これに対して比較例1、2では、mが1以
上なので、仮焼物にAサイトの原料を加えていないた
め、焼結温度が高く、この焼結温度では焼結不足となっ
ている。そのため、気孔率が高目となり、破壊された圧
電体の枚数も多くなっている。
【0025】また、比較例3では、mが0.95より小
さいため、ジルコニア相が混在しており、仮焼物にAサ
イトの原料を加えてnを1.00にしても、分極時に破
壊された圧電体の枚数は実施例より増えており、Krも
不良となっている。
【0026】さらに、比較例4、5では、仮焼前の組成
は本発明の範囲内にあるものの、仮焼後の組成が本発明
の範囲外にあるので、破壊された圧電体の枚数が実施例
より増え、気孔率、Krとも不良であった。
【0027】さらにまた、比較例6では、実施例4と組
成では同じであるが、焼結する粉末の細かさが粗いた
め、破壊枚数が大幅に増え、Kr、気孔率とも大幅に悪
化している。
【0028】
【発明の効果】以上の通り、本発明にかかる方法で圧電
体を製造すれば、焼結助剤の添加やPbを過剰に加えな
くても、Pbの揮発が少ない低い温度で焼結することが
でき、しかも従来より分極時の破壊が起こり難い圧電体
とすることができた。このことにより、分極時の破壊が
少ない圧電体を低温焼結によっても得ることのできる製
造方法を提供することができた。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 組成としてABO3で表される圧電体の
    製造方法において、Aサイトの元素が、モル比でA=m
    B(但し、0.95≦m≦0.99)となるように原料
    配合して混合し、その混合物を単一のペロブスカイト相
    となるように仮焼した後、その仮焼物にさらにA=nB
    (但し、1.00≦n≦1.02)となるようにAサイ
    ト元素の原料を加え、それを比表面積が5m2/g以上
    になるまで粉砕した後、焼結することを特徴とする圧電
    体の製造方法。
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