JPH08326834A - 能動除振装置 - Google Patents

能動除振装置

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JPH08326834A
JPH08326834A JP7154148A JP15414895A JPH08326834A JP H08326834 A JPH08326834 A JP H08326834A JP 7154148 A JP7154148 A JP 7154148A JP 15414895 A JP15414895 A JP 15414895A JP H08326834 A JPH08326834 A JP H08326834A
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武彦 間山
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 能動除振装置において、除振性能を損なうこ
となく制振性能を向上させることが可能であり、かつ、
従来に比較して非常に単純な構成の補償器を用いて、床
などの装置設置基礎からの振動伝達特性を大きく改善す
る。 【構成】 除振台1と、除振台を防振支持する支持機構
2と、除振台に制御力を加える電磁アクチュエータ3
と、除振台の振動を検出する第1の振動検出手段4と、
第1の振動検出手段の検出出力を除振台の振動を抑制す
べく所定の補償を施す第1の補償手段5を介して電磁ア
クチュエータにフィードバックする制御ループと、支持
機構を支える基礎6の振動を検出する第2の振動検出手
段7と、第2の振動検出手段の検出出力を、基礎から除
振台への振動伝達を抑制すべく第2の補償手段8によっ
て補償して電磁アクチュエータにフィードフォワードす
る制御ループとを備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、精密機器等の搭載用の
能動除振装置に関し、特に除振性能を損なうことなく制
振性能を向上させることが可能で、特に床などの装置設
置基礎からの振動の伝達特性を、従来に比較して大きく
改善したものに関する。
【0002】
【従来の技術】電子顕微鏡、半導体露光装置等の精密機
器の高精度化にともない、それらを搭載する精密除振装
置の高性能化が求められている。特に、半導体露光装置
においては、適切かつ迅速な露光を行なうために、床な
どの装置設置基礎からの振動など外部から伝達する振動
を極力除去する除振台が必要である。これは露光に悪影
響をおよぼす振動が、露光用ステージに発生しないよう
にしなければならないからである。
【0003】また、ステップ・アンド・リピート方式と
いう間欠動作を特徴とする半導体露光装置においては、
露光用XYステージの繰り返しステップ動作が除振台の
振動を励起する。したがって、除振台には、外部振動に
対する除振性能と、除振台に搭載された機器の動作によ
って発生する振動に対する制振性能とを、バランスよく
実現することが求められている。
【0004】ステップ・アンド・リピート方式にかわる
ものとして、スキャン露光方式を採用した半導体露光装
置もあるが、この装置においても、床などの装置設置基
礎からの振動など外部から伝達する振動を極力除去する
とともに、露光用ステージのスキャン動作により励起さ
れる除振台の振動を制振する必要がある。特に、スキャ
ン露光装置では、露光用ステージがスキャン動作をして
いる状態で露光を行なうため、外部振動に対する除振性
能および除振台に搭載された機器の動作によって発生す
る振動に対する制振性能のそれぞれに対する要求は厳し
く、一段と高性能な除振装置が不可欠なものとなってい
る。
【0005】このような要求に対しては、除振台の振動
を振動センサで検出し、その出力信号を補償して、除振
台に制御力を加えるアクチュエータにフィードバックす
ることにより、能動的に除振台の振動制御を行なうこと
ができる能動除振装置が実用化されている。能動除振装
置は、バネ、ダンパ等の受動的な除振要素だけで構成さ
れた従来の除振装置では困難な、除振性能と制振性能と
のバランスのとれた実現を可能にする。
【0006】さらに、除振台上に搭載される機器の高精
度化に対応して、床などの装置設置基礎の振動を検出
し、その補償信号をアクチュエータにフィードフォワー
ドする制御方法や、除振台上に搭載された機器の駆動信
号をもとに、その駆動反力を相殺するようにアクチュエ
ータをフィードフォワード制御する方法も提案され、除
振装置の性能は飛躍的に向上している。
【0007】これらの制御方法の中で、装置設置基礎の
振動を除振台に作用するアクチュエータにフィードフォ
ワードする方法は、装置設置基礎からの振動の絶縁性能
を大きく向上させ、半導体露光装置の高精細化や、装置
設置基礎の振動規準の緩和を可能にする。以下、この制
御方法を床振動フィードフォワード制御方法、また、そ
れに用いる補償器を床振動フィードフォワード補償器と
いう。
【0008】この制御方法は、必ずしも床振動をフィー
ドフォワードするものではなく、除振装置が設置されて
いるパレット状の部材などの振動をフィードフォワード
するものも含むが、本発明においては、便宜上、上記の
ようにいう。
【0009】床振動フィードフォワード制御方法として
は、例えば、特開平5−263868号公報『除振台の
地動外乱制御方法』のように、アクチュエータ特性を含
めた能動除振装置のいくつかの特性を実測し、それらの
実測特性に基づいて床振動フィードフォワード補償器の
特性を導出することにより補償器を実現する方法があ
る。同公報では、能動除振装置のアクチュエータを用い
た除振台の加振応答と、装置設置基礎から除振台までの
振動伝達率から最適な床振動フィードフォワード補償器
の特性を導出する方法が開示されている。この方法は、
実機の特性を補償器に十分反映させることが可能であ
り、従来のフィードバック制御ループのみで構成された
能動除振装置と比較して装置設置基礎の振動の絶縁性能
を大きく改善することができる。
【0010】床振動フィードフォワード補償器の実現手
法としては、適応デジタルフィルタを用いたものもあ
る。これは、床振動フィードフォワード補償器の特性
を、適応デジタルフィルタによって、自動的に導出し、
実現する方法である。この種の制御方法は、車両用サス
ペンション制御などにも多く見られる。
【0011】適応デジタルフィルタを用いた補償器は、
除振台の特性が未知の場合においても、それ自身の適応
動作によって、除振台の特性に応じた適切な補償器の特
性を自動的に導出し、実現できるというメリットがあ
り、デジタルシグナルプロセッサ(以下、DSPとい
う)などの離散演算装置が容易に利用できるようになっ
た今日においては、効果的な制御方法である。
【0012】特開平6−235439号公報『振動制御
方法および装置』には、適応デジタルフィルタを用いた
床振動フィードフォワード補償器と、従来からのフィー
ドバック補償器を併用して床からの振動伝達をはじめと
する除振台の振動抑制性能を改善する方法および装置が
開示されている。同公報では、除振系の固有振動数近傍
における振動減衰特性をフィードバック補償器により改
善することで、除振台のインパルス応答の離散データ数
を削減し、かつ適応デジタルフィルタを用いて実現した
床振動フィードフォワード補償器における演算負荷を軽
減している。これにより、従来の適応デジタルフィルタ
を用いた床振動フィードフォワード補償器に比較して、
演算負荷を増大させることなく除振性能を改善すること
ができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、能動除
振装置における床振動フィードフォワード制御について
は、いくつかの制御方法が提案されている。
【0014】しかしながら、実機特性の実測結果に基づ
いて補償器の特性を求めるような方法においては、除振
系の特性をある程度正確に同定する必要があり、補償器
の設計段階で、周波数特性解析等の処理を行なう必要が
ある。また、得られた特性が比較的単純な特性ではない
場合は、補償器が複雑化する。
【0015】一方、適応デジタルフィルタを用いた補償
器は、非常に多くの積和演算を行なうため、DSPなど
に代表されるプロセッサで高速演算を行なう必要があ
る。そのために、プロセッサにおける制御演算の負荷が
大きなものになってしまうとともに、能動除振装置の制
御回路として、DSPやその周辺の電気回路が不可欠な
ものとなる。
【0016】フィードフォワード補償を行なわず、除振
台の振動をフィードバックする制御ループのみを有する
従来の能動除振装置では、PI補償器(比例・積分補償
器)や、速度フィードバック補償器などの非常に単純な
構成の補償器で、実用上、十分な性能を確保できること
を考慮すると、床振動フィードフォワード制御の採用に
よる補償器設計方法や補償器構成の複雑化および制御回
路規模の拡大は、望ましいことではない。
【0017】本発明の目的は、この従来技術の問題点に
鑑み、能動除振装置において、除振性能を損なうことな
く制振性能を向上させることが可能であり、かつ、従来
に比較して非常に単純な構成の補償器を用いて、床など
の装置設置基礎からの振動伝達特性を大きく改善するこ
とにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
めに、本発明では、除振台と、除振台を防振支持する支
持機構と、除振台に制御力を加える電磁アクチュエータ
と、除振台の振動を検出する第1の振動検出手段と、第
1の振動検出手段の検出出力を、除振台の振動を抑制す
べく所定の補償を施す第1の補償手段を介して電磁アク
チュエータにフィードバックする制御ループと、支持機
構を支える基礎の振動を検出する第2の振動検出手段
と、第2の振動検出手段の検出出力を、基礎から除振台
への振動伝達を抑制すべく第2の補償手段によって補償
して電磁アクチュエータにフィードフォワードする制御
ループとを備えることを特徴としている。
【0019】また、第2の補償手段は、PI補償器と積
分補償器とを直列に接続した補償器であることを特徴と
している。
【0020】また、第2の補償手段は、2重積分補償器
であることを特徴としている。
【0021】また、除振台を防振支持するとともに除振
台に能動的な制御力を加える空気圧アクチュエータを含
み、フィードバック制御ループは、電磁アクチュエータ
および空気圧アクチュエータの双方またはいずれか一方
を駆動するものであり、フィードフォワード制御ループ
は電磁アクチュエータを駆動するものであることを特徴
としている。
【0022】また、能動除振装置は、基準位置に対する
除振台の変位量を検出する変位検出手段を備え、変位検
出手段の出力信号を補償して少なくともいずれかのアク
チュエータにフィードバックする制御ループを備えるこ
とを特徴としている。
【0023】また、電磁アクチュエータは、ボイスコイ
ルモータ等の電磁駆動のリニアモータであることを特徴
としている。
【0024】さらに、第1の振動検出手段、または第2
の振動検出手段、あるいはその両者は、加速度センサで
あることを特徴としている。
【0025】
【作用】この構成において、支持機構によって防振支持
された精密機器を搭載する除振台の振動を第1の振動検
出手段によって検出し、その出力信号を適切に補償する
第1の補償手段を介してアクチュエータにフィードバッ
クすると、このアクチュエータは、除振台に制御力を加
え、除振台の振動を抑制する。一方、基礎の振動が、支
持機構を介して除振台に作用する力は、基礎の加速度信
号に対して、高周波にむかってロールオフしていく周波
数特性を示す。したがって、基礎の加速度信号をPI補
償器と積分補償器とを直列に接続した補償器、または2
重積分補償器である第2の補償手段によって補償する
と、基礎の振動が支持機構を介して除振台に作用する力
と同様の傾向をもつ信号が生成される。よって、その信
号を除振系の固有振動数と比較して非常に高い周波数帯
域まで良好な応答特性を示すボイスコイルモータなどの
電磁アクチュエータに対して、適切に信号の極性を設定
してフィードフォワードすると、基礎の振動が支持機構
を介して除振台に作用する力が電磁アクチュエータの制
御力で相殺され、基礎の振動の除振台への影響が抑制さ
れる。
【0026】これによれば、従来に比較して、この種の
制御技術における補償器が非常に単純な構成となり、ま
た、補償器の調整は、PI補償器、積分補償器の比例ゲ
イン、積分ゲインだけであるため、容易に行なわれる。
【0027】除振系の多くはバネ、ダンパなどの除振要
素からなる比較的単純な2次振動系であり、このような
系では、後で詳述するように、装置設置基礎の振動の伝
達経路に依存する除振要素、電磁アクチュエータの特性
を考慮すると、PI補償器と積分補償器を直列に接続し
た非常に単純な構成の補償器で、実用上十分なレベルま
で、装置設置基礎からの振動伝達を抑制することができ
る。特に、除振台を支持するために用いられる受動的な
除振装置の減衰特性が小さい場合、前記PI補償器の折
点周波数を高周波数に設定すると装置設置基礎の振動の
絶縁性能が向上し、センサ帯域や床振動フィードフォワ
ード制御の制御帯域では、PI補償器を積分補償器に置
き換えることが可能となる。このような場合は、装置設
置基礎の加速度の信号を2重積分補償器を介して、電磁
アクチュエータにフィードフォワードしてもよい。もち
ろん受動的な除振要素の減衰特性が小さくない場合で
も、要求される装置設置基礎の振動の絶縁性能仕様を満
足できれば、装置設置基礎の加速度の信号を、2重積分
補償器という非常に単純な構成の補償器を介して、電磁
アクチュエータにフィードフォワードしてもよい。
【0028】
【実施例】
[実施例1]図1は、本発明の一実施例に係る能動除振
装置の構成を示す図である。なお、図1は、水平方向に
作用する除振装置を例示したものであるが、鉛直方向に
作用する除振装置において、以下に詳述する手段を適用
してもよい。同図において、1は半導体露光装置等の精
密機器を搭載する除振台、2は除振台1を防振支持する
支持機構、3はボイスコイルモータ等の電磁リニアモー
タである電磁アクチュエータ、4は除振台1の振動を検
出する第1の振動検出手段、5は第1の振動検出手段4
の出力信号に適切な演算処理を施す除振台振動フィード
バック補償器、6は床等の装置設置基礎、7は装置設置
基礎6の振動を検出する第2の振動検出手段、8は第2
の振動検出手段7の出力信号に適切な演算処理を施す床
振動フィードフォワード補償器、そして9は除振台振動
フィードバック補償器5と床振動フィードフォワード補
償器8との演算結果に基づいて電磁アクチュエータ3の
駆動を行なう駆動回路である。
【0029】第1の振動検出手段4および第2の振動検
出手段7には、加速度センサを用いることができる。ま
た、床振動フィードフォワード補償器8は、PI補償器
と積分補償器とを直列に接続した補償器である。
【0030】この除振装置は、除振台1の振動に着目し
て振動制御を行なう除振台振動フィードバックループ
と、能動除振装置を設置する床などの装置設置基礎6か
ら除振台1への振動伝達に着目して振動制御を行なう床
振動フィードフォワードループとからなる。
【0031】除振台振動フィードバックループは、支持
機構2により防振支持された除振台1の振動を、加速度
センサなどの第1の振動検出手段4によって検出し、こ
れを除振台振動フィードバック補償器5で演算処理し、
駆動回路9を介して電磁アクチュエータ3にフィードバ
ックする。
【0032】なお、基準位置に対する除振台1の相対変
位を検出する変位センサを備え、その変位センサの出力
信号を補償し、駆動回路9を介して電磁アクチュエータ
3にフィードバックする除振台変位制御ループを有する
能動除振装置も本発明に含まれる。
【0033】ここでは、除振台振動フィードバックルー
プにおけるアクチュエータとしてボイスコイルモータな
どの電磁アクチュエータ3を用いているが、電磁アクチ
ュエータ3の代わりに、空気ばねの内圧をサーボバルブ
などで調整することにより、その発生力を制御する空気
圧アクチュエータを用いることもできる。この場合は、
空気圧アクチュエータとして用いる空気ばねを除振台の
支持機構として兼ねることもできる。また、除振台振動
フィードバックループにおけるアクチュエータとして電
磁アクチュエータと空気圧アクチュエータとを併用する
こともできる。さらに、除振台変位制御ループにおける
アクチュエータにおいても、電磁アクチュエータの他に
空気圧アクチュエータや、電磁アクチュエータと空気圧
アクチュエータとを併用したものを用いることができ
る。
【0034】次に、床振動フィードフォワードループに
ついて説明する。
【0035】床振動フィードフォワードループは、能動
除振装置を設置する床などの装置設置基礎6の振動を第
2の振動検出手段7によって検出し、第2の振動検出手
段7で検出した装置設置基礎6の加速度信号を床振動フ
ィードフォワード補償器8で演算処理し、この床振動フ
ィードフォワード補償器8で得られた操作量を駆動回路
9に入力して電磁アクチュエータ3を駆動するものであ
る。第2の振動検出手段7は、例えば、第1の振動検出
手段4と、装置設置基礎6と除振台1の相対変位を検出
する変位センサの信号とから、装置設置基礎6の加速度
信号と等価な信号を演算によって求めるものであっても
よい。
【0036】上記のように、本装置では、床振動フィー
ドフォワード補償器8として、PI補償器と積分補償器
とを直列に接続した非常に単純な構成の補償器を用い
る。床振動フィードフォワード補償器8に、このような
補償器を用いる理由は以下の通りである。
【0037】除振台1を防振支持する支持機構2には、
一般に、空気ばね、防振ゴム、コイルスプリング、オイ
ルダンパ等の受動的な除振要素を目的に応じて適切に選
択し、組み合わせたものを用いる。このような支持機構
2と除振台1とからなる除振系の多くは、図2に示すよ
うな、質量要素11、ダンパ要素12およびばね要素1
3で構成された最も基本的な2次振動系の力学モデルで
表すことができる。したがって、除振台1の振動および
装置設置基礎6の振動の伝達する様子をブロック線図で
示すと、図3のようになる。同図において、Mは搭載し
た精密機器の質量を含む除振台1の質量、Dは支持機構
2の減衰係数、Kは支持機構2のばね定数、およびsは
ラプラス演算子である。なお、同図には、除振台振動フ
ィードバックループおよび床振動フィードフォワードル
ープも合わせて示してある。
【0038】図3に示すように、装置設置基礎6の振動
が支持機構2を介して除振台1に伝達する経路の特性
は、数1式で表すことができる。
【0039】
【数1】 ただし、図3においては、除振台1の振動および装置設
置基礎6の振動ともに加速度で記述しており、数1式の
特性は、装置設置基礎6の加速度からの特性である。
【0040】上記の関係を鑑みると、装置設置基礎6の
振動が支持機構2を介して除振台1に作用する力は数2
式で表される。
【0041】
【数2】 すなわち、装置設置基礎6の振動が支持機構2を介して
除振台1に作用する力は、装置設置基礎6の加速度をP
I補償器と積分補償器とを直列に接続した補償器で演算
処理して得た信号と等価となる。しかるに、除振台1に
制御力を加える電磁アクチュエータ3は、除振装置の固
有振動数と比較して、非常に高い周波数帯域まで良好な
応答特性を有しており、本装置が対処しようとしている
周波数帯域においては、アクチュエータ入力信号に比例
した制御力を瞬時に発生することができる。したがっ
て、装置設置基礎6の加速度をPI補償器と積分補償器
とを直列に接続した床振動フィードフォワード補償器8
で演算処理し、装置設置基礎6の振動の検出方向および
電磁アクチュエータ3の作用方向を考慮して適切に信号
の極性設定をした後、駆動回路9にその信号を入力し
て、電磁アクチュエータ3を駆動することにより、装置
設置基礎6の振動が支持機構2を介して除振台1に作用
する力を相殺することができる。これによって、床など
の装置設置基礎6から除振台1への振動伝達を抑制する
ことができる。
【0042】なお、第2の振動検出手段7で検出した装
置設置基礎6の加速度信号を直流成分除去フィルタ、ロ
ーパスフィルタ、バンドパスフィルタ等の信号処理手段
を用いて前処理を行なった後、床振動フィードフォワー
ド補償器8へ入力する方法は、この種の制御方法で一般
的に用いる手法であり、本発明においても、上述の信号
処理手段を用いて制御を行なうことができる。
【0043】以上のように、本能動除振装置は、PI補
償器と積分補償器とを直列に接続した非常に単純な構成
の補償器で、床などの装置設置基礎6から除振台1への
振動伝達特性を大幅に改善することができる。また、補
償器の調整要素が、PI補償器および積分補償器の比例
ゲインおよび積分ゲインのみであり、パラメータの調整
も非常に容易に行なうことができる。
【0044】[実施例2]実施例1においては、除振系
が減衰特性をもつ2次振動系であると考えたが、精密機
器搭載用の除振装置によく用いられる空気ばねは、一般
に減衰特性が小さい。このように、除振台1を防振支持
するために用いられる受動的な除振要素の減衰特性が小
さい場合は、振動センサの周波数帯域、床振動フィード
フォワード制御の制御帯域等を考慮すると、PI補償器
を積分補償器に置き換えることが可能となる。したがっ
て、装置設置基礎6の加速度信号を2重積分補償器を介
して、電磁アクチュエータ3にフィードフォワードすれ
ばよい。すなわち、床振動フィードフォワード補償器8
として、2重積分補償器を用いることができる。
【0045】支持機構2の減衰特性が小さい場合は、支
持機構2の減衰係数Dが小さくなるため、数1式の周波
数特性における折点周波数は、図4に示すように、高周
波数側にシフトする。したがって、振動センサの周波数
帯域、床振動フィードフォワード制御の制御帯域等を考
慮すると、床振動フィードフォワード補償器8のPI補
償器を積分補償器に置き換えることが可能となる。すな
わち、床振動フィードフォワード補償器8は2重積分補
償器を用いて実現することができる。
【0046】本実施例における能動除振装置では、床振
動フィードフォワード補償器8の調整要素は、積分ゲイ
ンのみであり、PI補償器を用いた実施例1の装置に比
較しても、さらにその構成を単純にすることができ、ま
た、補償器の調整もさらに容易に行なうことができる。
【0047】なお、本実施例では、除振要素の減衰特性
が小さい場合として説明したが、減衰特性がそれほど小
さくない場合においても床振動フィードフォワード補償
器8は、高周波数側にゲインがロールオフする特性を示
す。したがって、実用上、装置設置基礎6からの振動の
絶縁性能を十分に確保できる場合は、除振要素の減衰特
性が小さくない場合においても、床振動フィードフォワ
ード補償器8を2重積分補償器を用いて実現することが
できる。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
基礎の振動をアクチュエータにフィードフォワードする
際の補償をPI補償および積分補償、あるいは2重積分
補償としたため、従来の補償手段に比較して、非常に単
純な構成の補償手段により、基礎からの振動伝達を抑制
し、非常に広い周波数帯域で基礎から除振台までの振動
伝達率を0dB以下にすることができる。
【0049】また、PI補償器および積分補償器の比例
ゲインおよび積分ゲインを調整するだけで、実用上、十
分な除振性能を確保できるうえに、第2の補償手段を実
現する際に、除振系の特性を精度よく同定する必要もな
くなる。また、第2の補償手段として、2重積分補償器
を用いた場合は、補償器の調整は積分ゲインだけで容易
に行なうことができる。
【0050】さらに、第2の補償手段を含む能動除振装
置の補償手段が非常に単純な補償要素によって実現でき
るので、能動除振装置が組み込まれる半導体露光装置等
のシステムにおいて、より上位の役割を担う処理装置
や、他の機器の制御に用いる処理装置に能動除振装置の
演算処理を合わせて受け持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係る能動除振装置の構成
を示す図である。
【図2】 一般的な除振系の力学モデルを表す図であ
る。
【図3】 図1の装置における除振系の振動伝達を表す
ブロック図である。
【図4】 本発明の実施例における、床の加速度から床
の振動が支持機構を介して除振台に作用する力までのゲ
イン特性を表す図である。
【符号の説明】
1:除振台、2:支持機構、3:電磁アクチュエータ、
4:第1の振動検出手段、5:除振台振動フィードバッ
ク補償器、6:装置設置基礎、7:第2の振動検出手
段、8:床振動フィードフォワード補償器、9:電磁ア
クチュエータの駆動回路、11:2次振動系の質量要
素、12:2次振動系のダンパ要素、13:2次振動系
のばね要素。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 除振台と、 前記除振台を防振支持する支持機構と、 前記除振台に制御力を加える電磁アクチュエータと、 前記除振台の振動を検出する第1の振動検出手段と、 前記第1の振動検出手段の検出出力を、前記除振台の振
    動を抑制すべく所定の補償を施す第1の補償手段を介し
    て前記電磁アクチュエータにフィードバックする制御ル
    ープと、 前記支持機構を支える基礎の振動を検出する第2の振動
    検出手段と、 前記第2の振動検出手段の検出出力を、前記基礎から前
    記除振台への振動伝達を抑制すべく第2の補償手段によ
    って補償して前記電磁アクチュエータにフィードフォワ
    ードする制御ループとを備えることを特徴とする能動除
    振装置。
  2. 【請求項2】 前記第2の補償手段は、PI補償器と積
    分補償器とを直列に接続した補償器であることを特徴と
    する請求項1記載の能動除振装置。
  3. 【請求項3】 前記第2の補償手段は、2重積分補償器
    であることを特徴とする請求項1記載の能動除振装置。
  4. 【請求項4】 前記除振台を防振支持するとともに前記
    除振台に能動的な制御力を加える空気圧アクチュエータ
    を含み、前記フィードバック制御ループは、前記電磁ア
    クチュエータおよび空気圧アクチュエータの双方または
    いずれか一方を駆動するものであり、前記フィードフォ
    ワード制御ループは前記電磁アクチュエータを駆動する
    ものであることを特徴とする請求項1〜3記載の能動除
    振装置。
  5. 【請求項5】 前記能動除振装置は、基準位置に対する
    前記除振台の変位量を検出する変位検出手段を備え、前
    記変位検出手段の出力信号を補償して少なくともいずれ
    かの前記アクチュエータにフィードバックする制御ルー
    プを備えることを特徴とする請求項1〜4記載の能動除
    振装置。
  6. 【請求項6】 前記電磁アクチュエータは、ボイスコイ
    ルモータ等の電磁駆動のリニアモータであることを特徴
    とする請求項1〜5記載の能動除振装置。
  7. 【請求項7】 前記第1の振動検出手段、または前記第
    2の振動検出手段、あるいはその両者は、加速度センサ
    であることを特徴とする請求項1〜6記載の能動除振装
    置。
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