JPH08311542A - 耐リジング性に優れ、異方性の小さい深絞り用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は耐リジング性に優れ、異方性の小さ
い深絞り用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法を提
供するものである。 【構成】 Ｔｉ，Ｎｂを少なくともＣ，Ｎ当量含んだ極
低炭素フェライト系ステンレス鋼を熱延する際、１０５
０℃〜９００℃の温度域でロールと鋼板の間の摩擦係数
を小さくし、７０％以上の圧延を行ない、９００℃以上
で仕上圧延を終了した後、７５０℃以上で巻き取り、そ
の後冷延、焼鈍する。これによって、表面品位の高い異
方性が極めて小さい深絞り用フェライト系ステンレス鋼
板を製造することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、フェライト系ステンレ
ス鋼板の問題点であるリジングの発生を抑制し、かつ異
方性の少ない深絞り用のフェライト系ステンレス鋼板を
製造する方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】フェライト系ステンレス鋼板は、普通鋼
の深絞り用鋼板に比べるとｒ値が低いだけでなく、場合
によってはプレス加工時にリジングと呼ばれる圧延方向
に沿った特有の凸凹が生じ、製品の表面品質の著しい劣
化を招くことがある。

【０００３】リジング防止策としては、低温仕上圧延を
行ない、その後熱延板焼鈍をした後、冷延、焼鈍をする
方法（特公昭４５−３４０１６号公報参照）、低温熱延
と高温巻取を組み合わせた方法等（特開平１−１３６９
３０号公報参照）が開示されている。しかし、熱延を低
温にすると、変形抵抗が高くなり圧延時にロールと鋼板
の単位接触面積当たりの荷重が大きくなり表面疵の発生
が増加する難点がある。

【０００４】一方、深絞り性を高める技術として、普通
鋼で熱延時に潤滑をすることが有効であることが開示さ
れている（特開昭５９−２２６１４９号公報参照）。ま
た、フェライト系ステンレス鋼板でも、前記した特開平
１−１３６９３０号公報において圧延時の摩擦係数を
０．２以下とすることにより高ｒ値化がなされることが
示されている。ところで、これらの技術では異方性につ
いて一切データが示されていないが、熱間潤滑圧延をし
た材料を冷延、焼鈍すると一般に異方性は比較的大きく
なる。

【０００５】現在のところ、フェライト系ステンレス鋼
板の製造において、表面疵を抑制し、かつ耐リジング性
を確保し、異方性の小さい高ｒ値冷延鋼板を製造する技
術は確立されていない。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技
術における問題点であった熱延表面疵あるいはリジング
等の表面品質の劣化を抑制し、従来のフェライト系ステ
ンレスでは得られなかった低異方性で高ｒ値の冷延鋼板
を製造する方法を提供するものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、表面疵の
低減、耐リジング性および深絞り性の向上の観点で成分
および熱延条件の最適化を求める実験を行ない、以下の
ような知見を得た。すなわち、 １）生産性の観点から考慮された通常の圧下配分で熱延
をする際、ロールと鋼板間の焼付きに伴う熱延板の表面
疵を抑制するには、圧延荷重を下げるために仕上圧延を
９００℃以上にする必要がある。

【０００８】２）しかし、９００℃以上の仕上温度で
は、Ｃ，Ｎがある量以上添加されていると、リジングの
発生が避けられないことも明らかになった。逆にいう
と、Ｃ，Ｎの添加量を限定することにより高温仕上でも
リジングが抑制できることが明らかになった。 ３）また、熱延時に潤滑を行なうことは、中心層の熱延
再結晶を促進することを見いだした。

【０００９】４）冷延焼鈍板のｒ値に及ぼす熱延仕上温
度および熱延時の摩擦係数の影響を調査した結果、摩擦
係数をある限界値より小さくすることによりｒ値は顕著
に増加する。 ５）また、ｒ値を高めるには、ある限界の熱延圧下率が
必要なこと、巻き取りにおいて再結晶が起こる場合は仕
上温度が低い方がｒ値の向上には有利なこと等も明らか
になった。

【００１０】６）しかし、Ｃ，Ｎの添加量を限定し、Ｔ
ｉ，ＮｂをＣ，Ｎの原子当量以上添加することによりｒ
値は著しく高くなり、かつｒ値の仕上温度依存性が小さ
くなって仕上温度が高くても高いｒ値が得られることが
わかった。特に重要な新知見は、潤滑圧延と組み合わせ
て９００℃以上で仕上げることによりΔｒが小さくなる
ことである。 以上の実験結果を基に、耐リジング性に優れ、異方性の
小さい深絞り用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法
を構築した。

【００１１】すなわち本発明の要旨とするところは、重
量％で、Ｃ：０．００５％以下、Ｎ：０．０１２％以下
を含み、ＴｉおよびＮｂのいずれか一方または双方をＣ
／１２＋Ｎ／１４＜Ｔｉ／４８＋Ｎｂ／９３なる条件を
満足するように含有するフェライト系ステンレス鋼を、
熱間仕上圧延する際に１０５０℃から９００℃の温度範
囲で少なくとも全圧下率が７０％以上の圧延を摩擦係数
０．２以下で行ない、９００℃以上の温度で仕上げ、そ
の後７５０℃以上で巻き取った後、通常の冷延、焼鈍を
施すことを特徴とする耐リジング性に優れ、異方性の小
さい深絞り用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法に
ある。

【００１２】

【作用】以下に、本発明を詳細に説明する。まず、成分
の限定条件について述べる。本発明において、Ｔｉおよ
びＮｂのいずれか一方または双方をＣ／１２＋Ｎ／１４
＋Ｓ／３２＜Ｔｉ／４８＋Ｎｂ／９３なる関係を満足す
るように添加する。このように限定したのは、鋼中のＣ
およびＮを大部分析出物の形で固定することは、熱延で
の集合組織制御により、製品の深絞り性を良好とするの
に有利な方位である（１１１）〈１１２〉，（５５４）
〈２２５〉等の集積度の高い集合組織を有する鋼板を得
ることができるからである。

【００１３】一方、Ｃ：０．００５％以下、Ｎ：０．０
１２％以下とした。これらの量を超えて、Ｃ，Ｎを添加
すると、９００℃以上の仕上温度で熱延するとリジング
が顕著に観察されるためである。また、潤滑圧延との組
み合わせで９００℃以上の高温仕上で異方性を低減し、
高いｒ値を得るのにも必須の条件である。

【００１４】次に、プロセス条件の限定について述べ
る。熱間仕上圧延する際には、１０５０℃から９００℃
の温度範囲で少なくとも全圧下率が７０％以上の圧延を
行なう。その限定理由は、温度的には、これによって熱
延板のロール焼付きに基づく表面疵を避けるため、そし
て再結晶の観点からは、連続熱延におけるこの温度域で
のトータル圧下率を大きくし、歪みを十分に付与するこ
とにより巻取処理を含め再結晶を促進するのに必要な圧
下率として少なくとも７０％以上の圧下が必要なためで
ある。

【００１５】また、１０５０℃から９００℃の温度範囲
での摩擦係数が０．２％以下となる潤滑圧延を全圧下率
７０％以上で行なう。これ以下の全圧下率では高いｒ値
が得られないだけでなくｒ値の異方性も大きくなるため
である。この圧延時のロールと鋼板間の摩擦係数を０．
２％以下と限定したのは、摩擦係数がこれ以上大きくな
ると鋼板の表層部に強い剪断変形が起き、深絞り性に好
ましい集合組織の形成を阻害するためである。

【００１６】次に、仕上温度を９００℃以上、巻取温度
を７５０℃以上とする。これ以下の仕上温度あるいは巻
取温度では再結晶が十分に完了せずにリジングが発生す
る可能性が高いためである。以上のような条件で熱延し
た後は、通常の冷延、焼鈍を施す。冷延率は、高ｒ値を
確保することから７０％以上、できれば８０％以上が好
ましい。また、焼鈍は、再結晶温度以上で行なえばよ
い。

【００１７】

【実施例】本発明の実施例を、比較例と共に説明する。
表１に示した成分組成を有するフェライト系ステンレス
鋼を種々の条件で熱間圧延した。熱延板の加熱温度は１
２００℃前後であった。また、仕上板厚は３mmである。
冷延率は８０％、連続焼鈍条件は８７５℃で６０秒保持
して行なった。熱間潤滑は潤滑油と水をエマルジョンに
してワークロールに噴射して行なった。摩擦係数はレイ
ザーを用いた先進率計で得たデータを圧延理論を基に解
析し間接的に求めた。これらの圧延条件と製品特性を表
２に示す。

【００１８】耐リジング性は、圧延方向から切り出した
ＪＩＳ５号引張試験片を１５％引っ張った後、表面を粗
度計で測定して鋼板のうねりの高さより評価した。ラン
ク１はうねりの高さが２０μｍ以下、ランク２：２０〜
３０μｍ、ランク３：３０〜４０μｍ、ランク４：４０
〜７０μｍ、ランク５：７０μｍ以上とした。ランク２
までは実用上問題がないとされている。熱延板の表面疵
は、目視によって判断した。表２中○は表面疵なし、×
は表面疵ありを示す。

【００１９】

【表１】

【００２０】

【表２】

【００２１】本発明の範囲を満足する実験番号１，２，
４，８，９，１０，１１の材料では、熱延板の表面品
位、耐リジング性、深絞り性のすべての点で優れた結果
を示した。一方、１０５０℃から９００℃の温度範囲で
の全圧下率が本発明の範囲外である実験番号３の材料で
は、ｒ値は低く、異方性も大きい。その上、リジングも
観察された。仕上温度が本発明の範囲より低かった実験
番号５の材料は、ｒ値は高く、リジングも観察されなか
ったが、Δｒが比較的大きく、熱延板の表面疵も散見さ
れた。巻取温度が低かった実験番号６の材料は、リジン
グが顕著でｒ値の異方性も大きかった。摩擦係数が大き
かった実験番号７の材料は、ｒ値が低く、Δｒが大きか
った。

【００２２】

【発明の効果】以上、本発明の方法によれば、Ｃ，Ｎ量
の限定と、Ｃ，Ｎの原子当量以上のＴｉ，Ｎｂの添加
と、特定温度範囲での潤滑仕上圧延と、高温巻取とを組
み合わせることによって、表面疵やリジングによる表面
品位の劣化を伴うことなく、従来の鋼板より高いｒ値を
持ち、かつ異方性が極めて小さいフェライト系ステンレ
ス鋼板を製造することができる。

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【手続補正書】

【提出日】平成７年１２月２７日

【手続補正１】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００１９

【補正方法】変更

【補正内容】

【００１９】

【表１】

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 重量％で、Ｃ：０．００５％以下、Ｎ：
   ０．０１２％以下を含み、ＴｉおよびＮｂのいずれか一
   方または双方をＣ／１２＋Ｎ／１４＜Ｔｉ／４８＋Ｎｂ
   ／９３なる条件を満足するように含有するフェライト系
   ステンレス鋼を、熱間仕上圧延する際に１０５０℃から
   ９００℃の温度範囲で少なくとも全圧下率が７０％以上
   の圧延を摩擦係数０．２以下で行ない、９００℃以上の
   温度で仕上げ、その後７５０℃以上で巻き取った後、通
   常の冷延、焼鈍を施すことを特徴とする耐リジング性に
   優れ、異方性の小さい深絞り用フェライト系ステンレス
   鋼板の製造方法。