JPH0827619A - 炭素繊維用アクリル系プリカーサーおよび炭素繊維の製造方法 - Google Patents

炭素繊維用アクリル系プリカーサーおよび炭素繊維の製造方法

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JPH0827619A
JPH0827619A JP11089195A JP11089195A JPH0827619A JP H0827619 A JPH0827619 A JP H0827619A JP 11089195 A JP11089195 A JP 11089195A JP 11089195 A JP11089195 A JP 11089195A JP H0827619 A JPH0827619 A JP H0827619A
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JP
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carbon fiber
precursor
radiation
yarn
producing
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Makoto Kobayashi
真 木林
Makoto Endo
真 遠藤
Keizo Ono
恵三 小野
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Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【構成】重合性不飽和カルボン酸を0.1〜10重量%
含むポリアクリロニトリル共重合体からなり、240℃
で1時間加熱後のラジカル量、または、空気中240℃
で処理した時のスピン密度の平均ラジカル生成速度を特
定範囲とする炭素繊維用アクリル系プリカーサー、およ
び、アクリル系プリカーサーまたは焼成途中の糸条に放
射線を照射して焼成することを特徴とする炭素繊維の製
造方法。 【効果】炭化収率あるいは炭素繊維の物性を低下させず
に耐炎化時間短縮が可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は炭素繊維の製造方法およ
びそのプリカーサー、特に短時間かつ大量に、効率よく
炭素繊維を製造する方法およびそのプリカーサーに関す
る。
【0002】
【従来の技術】アクリル系プリカーサーから炭素繊維を
製造する方法は広く知られており、まず、空気または他
の酸化性ガス雰囲気中にて、200〜300℃で耐炎化
処理して耐炎化繊維となし、次いでこれを窒素、アルゴ
ン等の不活性ガス雰囲気中にて最高温度を800〜20
00℃として炭化処理して製造される。また、さらに2
000〜3000℃の不活性ガス雰囲気中での炭化処
理、いわゆる黒鉛化処理を行ない、弾性率が一段と高い
黒鉛繊維を製造することも行なわれる。
【0003】上記炭素繊維または黒鉛繊維の製造工程の
中で、耐炎化処理は酸化と環化による発熱をともない、
その反応を十分コントロールしながら処理する必要があ
り、それには長時間を要するため、炭素繊維の製造費に
占める割合は高い。
【0004】低コストの炭素繊維を供給するためには、
炭化収率を維持したまま耐炎化処理時間を短縮する技
術、あるいは炭化収率そのものを良好なものとする技術
が求められている。
【0005】耐炎化処理時間の短縮を図るために、プリ
カーサーに熱風を吹き付けたり、また、たとえば特公昭
53−21396号公報には加熱固体表面に間欠的に接
触させる方法が、さらに、特願昭62−190301号
には、流動化した加熱熱媒中で耐炎化処理する方法が示
されている。これらの方法は、いずれも耐炎化反応熱を
効率的に除去し、暴走反応を抑制しつつ高温で耐炎化処
理する技術であるが、上記の方法によれば単に耐炎化時
間は短縮されるものの、それを実施するための設備コス
トが高くなり、安価に炭素繊維を供給する手段とはなり
得ない。
【0006】また、特開昭59−211624号公報に
はアクリル系プリカーサーに電子線を照射してから耐炎
化処理する方法が提案されており、短時間に効率よく炭
素繊維が得られるとしているが、この方法では耐炎化処
理時間は短縮したとしても炭化収率が低いという問題が
あった。
【0007】本発明者らは、放射線を利用した炭素繊維
の製造法について検討した結果、重合性不飽和カルボン
酸を共重合したアクリル系プリカーサーへの放射線照射
により耐炎化処理時間を短縮しても炭化収率を維持でき
ることを見出し、本発明に到達したものである。また、
特に焼成途中の糸条への放射線の照射による方法で製造
した炭素繊維では、放射線による架橋が原因となって焼
成工程で発生する配向緩和が抑制されたためと思われる
が、放射線を照射しないで得た炭素繊維に対して高い弾
性率を有することを見出し、本発明に到達したものであ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は上記の
ような問題点を解決し、炭化収率を低下させることなく
短時間かつ大量に、効率よく炭素繊維を製造する方法お
よびかかる炭素繊維の製造に適したプリカーサーを提供
することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の炭素繊維用アクリル系プリカーサーは、次
のいずれかの構成を有する。すなわち、重合性不飽和カ
ルボン酸を0.1〜10重量%含むポリアクリロニトリ
ル共重合体からなり、240℃で1時間加熱後のラジカ
ル量が2×1018spins/g 以上であることを特徴とする
炭素繊維用アクリル系プリカーサー、または、重合性不
飽和カルボン酸を0.1〜10重量%含むポリアクリロ
ニトリル共重合体からなり、空気中240℃で処理した
時のスピン密度の平均ラジカル生成速度が5×1014sp
in/g/秒以上であることを特徴とする炭素繊維用アクリ
ル系プリカーサーである。
【0010】また、上記課題を解決するため、本発明の
炭素繊維の製造方法は、次のいずれかの構成を有する。
すなわち、重合性不飽和カルボン酸を0.1〜10重量
%含むポリアクリロニトリル共重合体からなるアクリル
系プリカーサーに放射線を照射した後、焼成することを
特徴とする炭素繊維の製造方法、または、アクリル系プ
リカーサーを焼成して炭素繊維を製造するに際して、焼
成途中の糸条に放射線を照射することを特徴とする炭素
繊維の製造方法である。
【0011】以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】本発明の炭素繊維用アクリル系プリカーサ
ーは、重合性不飽和カルボン酸を0.1〜10重量%、
好ましくは0.3〜5重量%、より好ましくは0.5〜
3重量%含むポリアクリロニトリル共重合体からなる。
重合性不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル
酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコ
ン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸等をあげ
ることができる。共重合量が0.1重量%未満である
と、耐炎化時間の短縮効果が少なく、また、10重量%
を越えると、得られる炭素繊維の物性が低下する。
【0013】本発明の炭素繊維用アクリル系プリカーサ
ーは、空気中240℃で1時間加熱後のラジカル量が2
×1018spins/g 以上であるか、または、空気中240
℃で処理した時のスピン密度の平均ラジカル生成速度が
5×1014spin/g/秒以上である。高分子物質に電子線
を照射すると、ラジカルが生成するが、そのラジカルは
速やかに反応して安定な状態になる。本発明者らは、ラ
ジカル量、またはラジカル生成速度と耐炎化反応時間と
の関係について検討した結果、未照射のものも含めて、
良い相関関係があることを見いだした。すなわち、ラジ
カル量、またはラジカル生成速度が高いほど、耐炎化反
応が早くなるのである。そして、かかるラジカル量、ま
たはラジカル生成速度が上記数値以上になると著しく耐
炎化反応時間が短くなるのである。なお、得られる炭素
繊維の機械的特性を高く維持する観点からは、好ましく
は空気中240℃で1時間加熱後のラジカル量は20×
1018spins/g 以下であるのが良く、空気中240℃で
処理した時のスピン密度の平均ラジカル生成速度は50
×1014spin/g/秒以下であるのが良い。
【0014】空気中240℃で1時間加熱後のラジカル
量、および、空気中240℃で処理した時のスピン密度
の平均ラジカル生成速度は次のようにして測定される。
【0015】α.ラジカル量(spins/g) 試料であるアクリル系プリカーサーを空気中240℃で
1時間加熱し、加熱直後のラジカル量を電子スピン共鳴
法(ESR)を用いて次に示す測定条件で測定する。
【0016】磁場掃引範囲 327±10mT 変調 100kHz、0.2mT マイクロ波 0.4mW(9.22Hz) 掃引時間 10秒 時定数 0.01秒以下 キャビティー TE011 、円筒型 β.ラジカル生成速度(spins/g/秒) 試料であるアクリル系プリカーサーを空気中240℃で
0.5時間加熱した直後のラジカル量と、1時間加熱し
た直後のラジカル量を上記と同様の条件でESRを用い
て測定し、下式を用いてラジカル生成速度を算出する。
【0017】Vs=(S2−S1)/1800 ここで、Vsはラジカル生成速度(spins/g/
秒)、S2は1時間加熱直後のラジカル量(spins
/g)、S1は0.5時間加熱直後のラジカル量(sp
ins/g)である。
【0018】なお、後述する実施例では、ESR装置と
して日本電子社製JES−FE3XGを、高温キャビテ
ィー、温度コントローラーとして、日本電子社製BT−
HTXAを、データ・システムとして、日本電子社製E
SーPRIT23を、マイクロ波周波数カウンターとし
て、アドバンテスト社製TR5212を用いて測定を行
った。
【0019】なお、かかるESRによる測定により、生
成したラジカルの中には、複数の性質の異なるラジカル
が存在することが示唆された。
【0020】本発明のアクリル系プリカーサーは、重合
性不飽和カルボン酸を前記特定量含むポリアクリロニト
リル共重合体からなるアクリル系繊維に10Mrad以
上の線量の放射線を照射することにより得ることができ
る。このようなアクリル系プリカーサーの製造法につい
てより詳細に説明する。
【0021】まず、ポリアクリロニトリル共重合体を得
る。ポリアクリロニトリル共重合体を得るための重合方
法としては、懸濁重合、溶液重合、乳化重合など従来公
知の方法を採用することができる。重合度としては、極
限粘度([η])で好ましくは1.0以上、より好まし
くは1.35以上、さらに好ましくは1.7以上であ
る。なお、[η]は5.0以下にするのが紡糸安定性の
点から一般的である。
【0022】溶液重合の場合の溶媒は、有機、無機の公
知の溶媒を使用することができる。重合体は公知の方法
によってプリカーサーとすることができる。紡糸は、直
接凝固浴中へ紡出する湿式紡糸法や、一旦空気中へ紡出
した後に浴中凝固させる乾湿式紡糸法、あるいは乾式紡
糸法、溶融紡糸によってもよい。溶媒、可塑剤を使用す
る紡糸方法による時には、紡出糸を直接浴中延伸しても
よいし、また、水洗して溶媒、可塑剤を除去した後に浴
中延伸してもよい。浴中延伸の条件は、通常、50〜9
8℃の延伸浴中で約2〜6倍に延伸される。浴中延伸後
の糸条はホットドラムなどで乾燥することによって乾燥
緻密化が達成される。乾燥温度、時間などは適宜選択す
ることができる。また、必要に応じて乾燥緻密化後の糸
条をより高温(たとえば加圧スチーム中)で延伸するこ
ともおこなわれ、これらによって、所定の単繊維繊度、
配向度を有するプリカーサーとすることができる。ま
た、乾燥緻密化に先立って、耐熱性付与を目的としてシ
リコーン系油剤を付与することが好ましい。
【0023】プリカーサーの単繊維繊度としては、引き
続く耐炎化工程において焼成ムラを起こさないよう細い
方が良く、好ましくは2.0デニール以下、より好まし
くは1.5デニール以下、さらに好ましくは1.0デニ
ール以下であることが望ましい。
【0024】このようなアクリル系プリカーサーに、1
0Mrad以上、好ましくは20Mrad以上、より好
ましくは40Mrad以上の線量の放射線を照射するの
である。
【0025】高分子物質に電子線を照射すると、ラジカ
ルが生成するが、そのラジカルは速やかに反応して安定
な状態になる。炭素繊維製造において、アクリル系プリ
カーサーに電子線を照射した場合もラジカルは生成し
て、そのラジカル濃度は急速に減少するが、一部のラジ
カルは極めて長時間に渡って残留するのである。電子線
照射しなくとも、耐炎化促進共重合成分を含むプリカー
サーを耐炎化処理しただけでも、ラジカルの存在は認め
られるが、共重合成分の存在だけでは前記した高いラジ
カル量、またはラジカル生成速度となるようなプリカー
サーを得ることは困難である。電子線照射によれば容易
に前記した高いラジカル量、またはラジカル生成速度と
せしめることが可能で、耐炎化促進成分を共重合したプ
リカーサーに電子線を照射することで、電子線単独より
も、更にラジカル量、またはラジカル生成速度を大きく
できる。特にカルボン酸基を有する共重合成分を用いれ
ば本発明の効果である短時間の耐炎化処理で高炭化収率
で、かつ高物性の炭素繊維が得られるのである。
【0026】放射線量の上限については特に制限はない
が、高すぎると得られる炭素繊維の物性がかえって低下
したり、炭化収率が減少したりする場合もあるので、1
000Mrad程度までに抑えるのが良い。
【0027】本発明に用いる放射線の種類としては特に
限定されないが、プリカーサーの構造を過度に破壊せ
ず、しかも透過力にすぐれた質量の小さい粒子線、すな
わち中性子線、電子線などが好ましく、その中でも電子
線がより好ましい。また、放射線を得る方法としては、
原子炉、放射性同位体、加速器等があるが、これには限
定されない。
【0028】放射線のエネルギーとしては、低すぎると
透過力が小さいため処理の均一性が不足する場合があ
り、またあまりに高いエネルギーの放射線は一般に得る
のが困難な場合があるため、好ましくは100keV〜
10MeV、より好ましくは150keV〜5MeV、
さらに好ましくは200keV〜1MeVであることが
望ましい。
【0029】また、放射線を照射する雰囲気については
特に限定されないが、酸化性雰囲気においては照射にと
もなって過度の低分子量化、分解が生じる場合もあるた
め、一般的には窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で照
射されるが、酸素含有雰囲気中で照射することにより、
炭化収率の上昇および耐炎化時間を短縮できる効果がよ
り顕著に現れる場合もある。その場合の雰囲気中の酸素
濃度は小さすぎると耐炎化時間短縮効果が小さくなる場
合があるので、好ましくは1%以上、より好ましくは5
%以上、さらに好ましくは10%以上、コストダウンの
観点から最も好ましくは空気中であることが望ましい。
【0030】放射線が照射されるプリカーサーの形態と
しては、単繊維状に開繊された状態でも束状に集束され
た状態でもよいが、電子線、中性子線などは透過力が高
いため、束状に集束し、高密度で処理するのが経済性か
らみて好ましい。集束された束は、好ましくは3000
フィラメント以上、より好ましくは6000フィラメン
ト以上、さらに好ましくは12000フィラメント以上
であるのが良い。また、数万フィラメント以上のトウ状
のプリカーサーに照射することもできる。
【0031】高照射量が必要な場合には、過熱による糸
条の劣化、破断、消失を抑制するために、1回あたりの
線量を制限して2回以上に分割して照射しても良い。そ
の場合、1回あたりの線量は好ましくは50Mrad以
下、より好ましくは30Mrad以下、さらに好ましく
は10Mrad以下であることが望ましい。この場合、
ネルソンローラー等を用いて折り返して処理回数を増す
こともできる。
【0032】放射線の照射中、照射されるプリカーサー
は、ボビン等に巻き取られた形状であっても良いし、コ
ンベアの上に振り落とされた状態で無緊張の処理をおこ
なっても良いが、好ましくは緊張、あるいは延伸条件下
であるのが良い。
【0033】また、放射線照射に先立って、より耐熱性
を付与して炭化収率を向上させる意味から、架橋助剤等
をプリカーサーに付与してもよい。架橋助剤としては、
トリメチロールプロパンアクリレート、トリアリルイソ
シアヌレート、ポリエチレングルコールジメタクリレー
ト、ジビニルベンゼン等を挙げることができる。また、
これら架橋助剤等は放射線を照射する直前に付与しても
よいし、可能であれば、紡糸時、あるいは重合時から混
在させておくこともできる。
【0034】以上述べたようなアクリル系プリカーサー
を焼成して炭素繊維を製造するのである。これにより、
炭化収率を低下させることなく短時間かつ大量に、効率
よく炭素繊維を製造することができるのである。耐炎化
処理および炭化処理などの焼成の条件としては、放射線
を照射することがある以外は従来公知の方法を使用する
ことができる。好ましくは、耐炎化処理条件としては、
酸化性雰囲気中200〜300℃の範囲で緊張、あるい
は延伸条件下で処理するのが良く、炭化処理条件として
は、不活性雰囲気中で、得られる炭素繊維の物性をより
良好なものとするため、炭化処理の最高温度を好ましく
は1000〜3000℃の範囲内とするのが良い。
【0035】一方、本発明のアクリル系プリカーサーを
用いなくとも、アクリル系プリカーサーを焼成して炭素
繊維を製造する際に、焼成途中の糸条に放射線を照射す
ることによっても、炭化収率を低下させることなく短時
間かつ大量に、効率よく炭素繊維を製造することができ
る。
【0036】焼成途中の糸条に放射線を照射する場合に
は、アクリル系プリカーサーはポリアクリロニトリル共
重合体であって、アクリロニトリル85重量%以上、ア
クリロニトリルと共重合可能な重合性不飽和単量体を1
5重量%以下含む重合体からなることが好ましい。重合
性不飽和単量体としては、前記した重合性不飽和カルボ
ン酸の他、それら重合性不飽和カルボン酸のアルカリ金
属塩、アンモニウム塩およびアルキルエステル類や、ア
クリルアミド、メタクリルアミドおよびそれらの誘導体
や、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれ
らの塩類またはアルキルエステル類や、スチレン等を挙
げることができる。より耐炎化処理時間を短縮するため
には、重合性不飽和単量体の中でも前記した重合性不飽
和カルボン酸を共重合することが望ましい。その共重合
量は少なすぎると耐炎化処理に長時間を要する場合があ
り、多すぎると得られる炭素繊維の物性が低下する場合
があるため、好ましくは0.1〜10重量%、より好ま
しくは0.3〜5重量%、さらに好ましくは0.5〜3
重量%であるのが良い。
【0037】本発明において、焼成とは耐炎化処理およ
び炭化処理をさす。焼成途中の糸条に放射線を照射する
具体的な態様としては、 (1)耐炎化反応と同時進行的に照射する。より具体的
には、例えば耐炎化処理工程途中の耐炎化炉内で照射す
る。
【0038】(2)耐炎化処理途中であって、耐炎化反
応が中断している時点で照射する。より具体的には、例
えば耐炎化処理工程途中の耐炎化炉外で照射する。
【0039】(3)耐炎化反応終了後に照射する。より
具体的には、例えば耐炎化処理工程と炭化処理工程の途
中で耐炎化繊維に炉外で照射する。
【0040】(4)炭化処理途中であって、炭化反応が
中断している時点で照射する。より具体的には、例えば
炭化処理工程途中の炭化炉外で照射する。
【0041】などを挙げることができる。
【0042】また、放射線を照射する雰囲気については
特に限定されないが、酸化性雰囲気においては照射にと
もなって過度の低分子量化、分解が生じる場合もあるた
め、一般的には窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下での
照射されるが、耐炎化反応と同時進行的に照射する場
合、または耐炎化処理途中であって耐炎化反応が中断し
ている時点で照射する場合には、酸素を含有する雰囲気
中で照射することにより、炭化収率の上昇および耐炎化
処理時間を短縮できる効果がより顕著に現れる場合もあ
るので酸素含有雰囲気中で照射することが望ましい。そ
の場合の雰囲気中の酸素濃度は小さすぎると耐炎化処理
時間短縮効果が小さくなる場合があるので、好ましくは
1%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは
10%以上、コストダウンの観点から最も好ましくは空
気中であることが望ましい。
【0043】照射される焼成途中の糸条の形態として
は、前記したプリカーサーに放射線照射する場合と同様
のことがいえる。
【0044】焼成途中の糸条に放射線を照射する場合
は、焼成途中の糸条がプリカーサーに比べて、熱処理に
対する耐熱性が向上しているので、1回の照射線量を大
きくできる。特に、焼成途中の糸条の比重が1.25以
上、好ましくは1.3以上であるか、焼成途中の糸条の
水素含有量と炭素含有量のモル比(H/C)が0.9以
下、好ましくは0.85以下である糸条は耐熱性が高い
ので、かかる糸条に放射線を照射する場合には、1回の
照射線量を例えば50Mrad以上、さらには100M
rad以上と高くしても、放射線照射で発生する熱によ
る糸条への悪影響なしに本発明の効果を顕著に生じさせ
ることができる。また、放射線を2回以上に分割して照
射する場合には、ネルソンローラー等を用いて折り返し
て処理回数を増して、照射線量を大きくすることもでき
る。なお、炭素繊維の基本骨格である炭素網面構造(黒
鉛前駆構造)が形成される前の糸条、例えば900℃以
下の温度で一旦炭化処理した糸条や、焼成途中の糸条の
比重が1.55以下、好ましくは1.50以下である
か、焼成途中の糸条の水素含有量と炭素含有量のモル比
(H/C)が0.45以上、好ましくは0.50以上で
ある糸条に放射線を照射するのが良い。
【0045】ここで、糸条の比重は、JIS R760
1に規定されている密度の試験方法に従って測定され
る。但し、浸漬液としてアセトンを用い、試験体は12
0℃の乾燥機中で1時間乾燥した後、吸湿しない条件下
で秤量操作を行う。
【0046】また、焼成途中の糸条の水素含有量と炭素
含有量のモル比(H/C)は、次のようにして測定され
る値である。
【0047】150℃定温下2時間処理した乾燥試料2
〜3mg(超微量天秤にて秤量)をCHNコーダーを用
いて、燃焼条件として試料分解炉温度900〜950
℃、酸化炉850℃、還元炉550℃、ヘリウム流速1
80ml/分、酸素流速25ml/分で測定した。な
お、後述する本発明の実施例中では、CHNコーダーと
して、柳本製作所製MT−3型を用いた。
【0048】放射線の照射中、照射される焼成途中の糸
条は、ボビン等に巻き取られた形状であっても良いし、
コンベアの上に振り落とされた状態で無緊張の処理をお
こなっても良いが、好ましくは、緊張、あるいは延伸条
件下であるのが良い。
【0049】耐炎化処理および炭化処理などの焼成の条
件としては、放射線を照射することがある以外は従来公
知の方法を使用することにより高性能な炭素繊維とする
ことができる。
【0050】耐炎化処理条件としては、酸化性雰囲気中
200〜300℃の温度範囲で、緊張あるいは延伸条件
下であることが好ましく採用されるが、無緊張処理をお
こなってもよい。また、炭化処理条件としては不活性雰
囲気中で、得られる炭素繊維の物性をより良好なものと
するため、炭化処理の最高温度としては好ましくは10
00〜3000℃とすることが望ましい。
【0051】以上、本発明により得られた炭素繊維は、
必要に応じてさらに従来公知の技術により表面処理、サ
イジング付与などをおこなうことができる。
【0052】本発明を採用することによって、耐炎化処
理時間を大幅に短縮しても炭化収率、物性等を維持した
まま炭素繊維を得ることができる。特に焼成途中糸条へ
の放射線の照射による方法で製造した炭素繊維では、放
射線による架橋が原因となって焼成工程で発生する配向
緩和が抑制されるためか、放射線を照射しないで得た炭
素繊維に対して高い弾性率を得ることができる。
【0053】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
する。
【0054】なお、本実施例中、炭素繊維の引張強度、
弾性率は次のようにして測定した。“ベークライト”E
RL−4221(登録商標、ユニオン・カーバイド
(株)製)/三フッ化ホウ素モノエチルアミン(BF3
・MEA)/アセトン=100/3/4部を炭素繊維に
含浸し、得られた樹脂含浸ストランドを130℃で30
分間加熱して硬化させ、JIS−R−7601に規定す
る樹脂含浸ストランド試験法に従って測定した。
【0055】(実施例1)ジメチルスルホキシドを溶媒
とする溶液重合法により重合体濃度20重量%の紡糸原
液を得て、それをジメチルスルホキシド水溶液中に紡出
した後、沸水中で延伸しながら水洗し、乾燥緻密化した
後に、加圧スチーム中でさらに延伸することにより、単
繊維繊度1.0デニール、12000フィラメント、ア
クリロニトリル99.5重量%、イタコン酸0.5重量
%という共重合組成からなるプリカーサーを得た。この
プリカーサーに対して、緊張状態で表1に示すような線
量の電子線(加速電圧200kV)を空気中で照射した
後、空気中260℃で20分間耐炎化処理した。引き続
いて窒素中1400℃まで加熱して炭化処理して炭素繊
維A〜Cを得た。炭化収率ならびに物性を表1に示す。
【0056】(実施例2)実施例1と同様にして得たプ
リカーサーに、緊張状態で線量5Mradの電子線(加
速電圧200kV)を空気中で照射した後、空気中26
0℃で20分間耐炎化処理した。引き続いて窒素中14
00℃まで加熱して炭化処理して炭素繊維Dを得た。炭
化収率ならびに物性を表1に示す。
【0057】(比較例1)電子線を照射しなかったこと
以外は実施例1と同様にして炭素繊維Eを得た。炭化収
率ならびに物性を表1に示す。非常に低い炭化収率しか
得られなかった。 (比較例2)実施例1と同様にして得たプリカーサーを
電子線を照射せずに窒素中1400℃まで加熱して炭化
収率55%を維持するためには、260℃で50分間耐
炎化する必要があった。
【0058】(比較例3)共重合組成をアクリロニトリ
ル97重量%、アクリル酸メチル3重量%とする以外は
実施例1と同様にしてプリカーサーを得た。さらに、こ
のプリカーサーに加速電圧200kV、線量40Mra
dの電子線を窒素中で照射してから空気中260℃で2
0分間耐炎化処理し、引き続いて窒素中1400℃まで
加熱して炭化処理して炭素繊維Fを得た。炭化収率なら
びに物性を表1に示す。
【0059】(実施例3)ジメチルスルホキシドを溶媒
とする溶液重合法により重合体濃度20重量%の紡糸原
液を得て、それをジメチルスルホキシド水溶液中に紡出
した後、沸水中で延伸しながら水洗し、乾燥緻密化した
後に、加圧スチーム中でさらに延伸することにより、単
繊維繊度1.0デニール、12000フィラメント、ア
クリロニトリル99.5重量%、イタコン酸0.5重量
%という共重合組成からなるプリカーサーを得た。この
プリカーサーを緊張状態で空気中260℃で20分間耐
炎化処理するに際して、耐炎化炉内で線量40Mrad
の電子線(加速電圧200kV)を照射しながら耐炎化
処理した。引き続いて窒素中1400℃まで加熱して炭
化処理して炭素繊維Gを得た。炭化収率ならびに物性を
表1に示す。
【0060】(実施例4)実施例3と同様にして得たプ
リカーサーを緊張状態で空気中260℃で10分間耐炎
化処理した後、線量40Mradの電子線(加速電圧2
00kV)を耐炎化炉外の空気中で照射し、さらに空気
中260℃で10分間耐炎化処理した。引き続いて窒素
中1400℃まで加熱して炭化処理して炭素繊維Hを得
た。炭化収率ならびに物性を表1に示す。
【0061】(実施例5)実施例3と同様にして得たプ
リカーサーを緊張状態で空気中260℃で20分間耐炎
化処理した後、線量40Mradの電子線(加速電圧2
00kV)照射処理を酸素濃度2%の窒素雰囲気中で行
い、同雰囲気中で290℃で2分間の耐炎化処理をし
た。引き続いて窒素中1400℃まで加熱して炭化処理
して炭素繊維Iを得た。炭化収率ならびに物性を表1に
示す。
【0062】(実施例6)実施例3と同様にして得たプ
リカーサーを緊張状態で空気中260℃で40分間耐炎
化処理し、引き続いて窒素中500℃まで加熱して得た
炭化途中糸に対して線量40Mradの電子線(加速電
圧200kV)を窒素中で照射した。さらに、窒素中1
400℃まで加熱して炭化処理して炭素繊維Jを得た。
炭化収率ならびに物性を表1に示す。比較例1よりも短
い耐炎化処理時間であるにもかかわらず、より高い炭化
収率を得ることができた。
【0063】(実施例7)共重合組成をアクリロニトリ
ル97重量%、アクリル酸メチル3重量%とする以外は
実施例3と同様にしてプリカーサーを得た。このプリカ
ーサーに緊張状態で空気中260℃で10分間耐炎化処
理した後、加速電圧200kV、線量40Mradの電
子線を空気中で照射し、さらに空気中260℃で10分
間耐炎化処理した。引き続いて窒素中1400℃まで加
熱して炭化処理して炭素繊維Kを得た。炭化収率ならび
に物性を表1に示す。
【0064】
【表1】 表1中、αは、空気中240℃で1時間加熱後のラジカ
ル量を、βは、空気中240℃で処理した時のスピン密
度の平均ラジカル生成速度を意味する。
【0065】(実施例8)実施例1と同様にして得たプ
リカーサーを図1に示す耐炎化設備を用いて耐炎化処理
した。耐炎化炉1の温度は260℃、耐炎化炉2の温度
は290℃に設定し、電子線照射装置3で30Mra
d、電子線照射装置4で80Mradを空気中で照射し
た。総耐炎化処理時間は14分、電子線照射装置3によ
る電子線照射までの熱処理時間は8分で、電子線照射装
置4による電子線照射までの熱処理時間は12分であっ
た。また、電子線照射装置3による電子線照射直前の焼
成途中糸のH/Cは0.91、比重は1.23であり、
電子線照射装置4による電子線照射直前の焼成途中糸の
H/Cは0.75、比重は1.38であった。引き続い
て窒素中1400℃に加熱して炭化処理して炭素繊維L
を得た。得られた炭素繊維の炭化収率は54%であり、
強度350kgf/mm2 、弾性率24×103kgf
/mm2 であった。
【0066】(実施例9)実施例1と同様にして得たプ
リカーサーを緊張状態で空気中260℃で比重が1.3
1およびH/C=0.8になるまで耐炎化処理した後、
電子線照射を線量120Mradで行い、続いて空気3
00℃で2分間耐炎化処理した。引き続いて窒素中14
00℃まで加熱して炭化処理して炭素繊維を得た。得ら
れた炭素繊維の炭化収率は54%であり、強度350k
gf/mm2 、弾性率24×103kgf/mm2 であ
った。
【0067】(実施例10)実施例1と同様にして得た
プリカーサーを緊張状態で空気中260℃で比重が1.
25およびH/C=0.88になるまで耐炎化処理した
後、電子線照射を線量120Mradで行い、続いて空
気中280℃で4分間耐炎化処理して後、窒素中140
0℃まで加熱して炭化処理して炭素繊維を得た。得られ
た炭素繊維の炭化収率は54%であり、強度350kg
f/mm2 、弾性率24×103 kgf/mm2 であっ
た。
【0068】(実施例11)実施例1と同様にして得た
プリカーサーを緊張状態で空気中260℃で比重が1.
25およびH/C=0.88になるまで耐炎化処理した
後、電子線照射を線量90Mradで行い、続いて空気
中280℃で5分間耐炎化処理して後、窒素中1400
℃まで加熱して炭化処理して炭素繊維を得た。得られた
炭素繊維の炭化収率は54%であり、強度360kgf
/mm2 、弾性率25×103 kgf/mm2 であっ
た。
【0069】
【発明の効果】本発明の炭素繊維の製造方法により、炭
化収率あるいは炭素繊維の物性を低下させずに耐炎化時
間短縮が可能となり、短時間かつ大量に、効率よく炭素
繊維を製造すること、ひいては炭素繊維のコストダウン
ができる。また、特に焼成途中の糸条への放射線の照射
による方法で製造した炭素繊維では、放射線を照射しな
いで得た炭素繊維に対して高い弾性率が得られるという
顕著な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例7において用いた耐炎化設備を
示す一部透視概略側面図である。
【符号の説明】
1、2:耐炎化炉 3、4:電子線照射装置 5:ローラー 6:糸条

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重合性不飽和カルボン酸を0.1〜10重
    量%含むポリアクリロニトリル共重合体からなり、24
    0℃で1時間加熱後のラジカル量が2×1018spins/g
    以上であることを特徴とする炭素繊維用アクリル系プリ
    カーサー。
  2. 【請求項2】重合性不飽和カルボン酸を0.1〜10重
    量%含むポリアクリロニトリル共重合体からなり、空気
    中240℃で処理した時のスピン密度の平均ラジカル生
    成速度が5×1014spin/g/秒以上であることを特徴と
    する炭素繊維用アクリル系プリカーサー。
  3. 【請求項3】重合性不飽和カルボン酸を0.1〜10重
    量%含むポリアクリロニトリル共重合体からなるアクリ
    ル系プリカーサーに放射線を照射した後、焼成すること
    を特徴とする炭素繊維の製造方法。
  4. 【請求項4】酸素含有雰囲気中で放射線を照射すること
    を特徴とする請求項3記載の炭素繊維の製造方法。
  5. 【請求項5】アクリル系プリカーサーを焼成して炭素繊
    維を製造するに際して、焼成途中の糸条に放射線を照射
    することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
  6. 【請求項6】焼成途中の糸条が耐炎化処理途中の糸条で
    あり、かつ放射線照射処理を2回以上行うことを特徴と
    する請求項5記載の炭素繊維の製造方法。
  7. 【請求項7】焼成途中の糸条が、900℃以下の炭化処
    理を施した後の炭化処理途中の糸条であることを特徴と
    する請求項5記載の炭素繊維の製造方法。
  8. 【請求項8】比重が1.25以上である焼成途中の糸条
    に放射線を照射することを特徴とする請求項5記載の炭
    素繊維の製造方法。
  9. 【請求項9】水素含有量と炭素含有量のモル比(H/
    C)が0.9以下である焼成途中の糸条に放射線を照射
    することを特徴とする請求項5記載の炭素繊維の製造方
    法。
  10. 【請求項10】酸素含有雰囲気中で放射線を照射するこ
    とを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の炭素繊
    維の製造方法。
  11. 【請求項11】放射線が電子線であることを特徴とする
    請求項3〜10のいずれかに記載の炭素繊維の製造方
    法。
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