JPH08259255A - 光リソグラフィ−用石英ガラス、それを含む光学部材、 それを用いた露光装置、並びにその製造方法 - Google Patents

光リソグラフィ−用石英ガラス、それを含む光学部材、 それを用いた露光装置、並びにその製造方法

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JPH08259255A
JPH08259255A JP8000808A JP80896A JPH08259255A JP H08259255 A JPH08259255 A JP H08259255A JP 8000808 A JP8000808 A JP 8000808A JP 80896 A JP80896 A JP 80896A JP H08259255 A JPH08259255 A JP H08259255A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 短波長でかつ高出力の紫外線やエキシマレー
ザ光を長期間照射しても透過率の低下を生じさせない、
耐紫外線性の向上した石英ガラス光学部材を提供する。 【解決手段】 400nm以下の波長帯域の光と共に使用さ
れる光リソグラフィー用石英ガラスであって、構造決定
温度が1200K以下でかつOH基濃度が1000pp
m以上である石英ガラス。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光リソグラフィ−用石
英ガラス、それを含む光学部材、それを用いた露光装
置、並びにその製造方法に関する。より詳しくは、本発
明は、光リソグラフィー技術において400nm以下、
好ましくは300nm以下の波長帯域の光と共に使用さ
れる石英ガラス、レンズやミラー等の光学部材、及び露
光装置、並びにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年において、VLSIは、ますます高
集積化、高機能化され、論理VLSIの分野ではチップ
上により大きなシステムが盛り込まれるシステムオンチ
ップ化が進行している。これに伴い、その基板となるシ
リコン等のウエハ上において、微細加工化及び高集積化
が要求されている。シリコン等のウエハ上に集積回路の
微細パターンを露光・転写する光リソグラフィー技術に
おいては、ステッパと呼ばれる露光装置が用いられてい
る。
【0003】VLSIの中でDRAMを例に挙げれば、
LSIからVLSIへと展開されて1K→256K→1
M→4M→16M→64Mと容量が増大してゆくにつ
れ、それぞれ10μm→2μm→1μm→0.8μm→
0.5μm→0.3μmといった微細な加工線幅に対応
できるステッパが要求される。このため、ステッパの投
影レンズには、高い解像度と深い焦点深度が要求されて
いる。この解像度と焦点深度は、露光に使う光の波長と
レンズのN.A.(開口数)によって決まる。
【0004】細かいパターンほど回折光の角度が大きく
なり、レンズのN.A.が大きくなければ回折光を取り
込めなくなる。また、露光波長λが短いほど同じパター
ンでの回折光の角度は小さくなり、従ってN.A.は小
さくてよいことになる。解像度と焦点深度は、次式のよ
うに表される。 解像度=k1・λ/N.A. 焦点深度=k2・λ/N.A.2 (但し、k1、k2は比例定数である) 解像度を向上させるためには、N.A.を大きくする
か、λを短くするかのどちらかであるが、上式からも明
らかなように、λを短くするほうが深度の点で有利であ
る。このような観点から、光源の波長は、g線(g-lin
e)(436nm)からi線(i-line)(365nm)
へ、さらにKrF(248nm)やArF(193n
m)エキシマレーザビームへと短波長化が進められてい
る。
【0005】また、ステッパに搭載される光学系は、多
数のレンズ等の光学部材の組み合わせにより構成されて
おり、たとえレンズ一枚当たりの透過損失が小さくと
も、それが使用レンズ枚数分だけ積算されてしまい、照
射面での光量の低下につながるため、光学部材に対して
高透過率化が要求されている。そのため、400nmよ
りも短い波長帯域の光を使用するステッパにおいては、
短波長化及び光学部材の組み合わせによる透過損失を考
慮した特殊な製法の光学ガラスを用いる。さらに300
nm以下の光を使用するステッパにおいては、合成石英
ガラスやCaF2(蛍石)等のフッ化物単結晶を用いる
ことが提案されている。
【0006】内部透過率の具体的な測定方法としては、
例えばJOGIS17−1982光学ガラスの内部透過
率の測定方法がある。ここで、内部透過率は次の式によ
って求める。
【0007】◎
【数1】
【0008】上式中、τは厚さ10mmのときのガラス
の内部透過率であり、dは試料の厚みの差であり、T
1,T2はそれぞれ試料厚さが3mm,10mmのガラ
スの反射損失を含む分光透過率である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本発明
者らは、このようにして内部透過率が規定された従来の
石英ガラスからなる光学部材においては、スペック的に
はある程度の解像度が保証されているにもかかわらず、
像のコントラストが悪く、充分に鮮明な像が得られるに
は至っていないことを見出した。
【0010】ここでコントラストとは、次式にて定義さ
れる。
【0011】◎
【数2】
【0012】上式中、Imaxはウエハ面上の光強度の最
大値であり、Iminはウエハ面上の光強度の最小値であ
る。本発明は、上述のような従来技術の欠点を解決し、
コントラストが良好で、充分に微細且つ鮮明な露光・転
写パターンを実現できる光リソグラフィー用石英ガラス
及び光学部材を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
光リソグラフィー技術等に使用される石英ガラス(光学
部材)の透過損失のうち、像のコントラストを低下させ
る原因について研究した結果、透過損失の主な原因は石
英ガラスにおける光吸収のみならず光散乱も原因であ
り、かかる光散乱に基づく光の損失量(散乱損失量)は
OH基を一定量以上含有する石英ガラスにおいて構造決
定温度を一定水準以下に低下させることによって充分に
抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】本発明の石英ガラスは、400nm以下の
波長帯域の光と共に使用される光リソグラフィ−用石英
ガラスであって、構造決定温度が1200K以下でかつ
OH基濃度が1000ppm以上であることを特徴とす
るものである。また、本発明の光学部材は、400nm
以下の波長帯域の光と共に使用される光学部材であっ
て、前記本発明の石英ガラスを含むことを特徴とするも
のである。
【0015】さらに、本発明の露光装置は、400nm
以下の波長帯域の光を露光光として使用する露光装置で
あって、前記本発明の石英ガラスを含む光学部材を備え
ることを特徴とするものである。さらにまた、本発明の
石英ガラスの製造方法は、OH基濃度が1000ppm
以上である石英ガラスインゴットを1200〜1350Kの温度
に昇温し、該温度に所定期間保持した後、1000K以下の
温度まで50K/hr以下の降温速度で降温することによって
該インゴットをアニーリングする工程を含むことを特徴
とし、構造決定温度が1200K以下でかつOH基濃度が1
000ppm以上である石英ガラスを製造可能な方法で
ある。
【0016】ここでいう「構造決定温度」とは、石英ガ
ラスの構造安定性を表すパラメータとして導入されたフ
ァクターであり、以下に詳細に説明する。室温での石英
ガラスの密度揺らぎ、すなわち構造安定性は、高温で融
液状態にある石英ガラスの密度、構造が冷却過程におい
てガラス転移点付近で凍結されたときの密度、構造によ
って決定される。すなわち、密度、構造が凍結されたと
きの温度に相当する熱力学的密度、構造が室温下でも保
存されるのである。その密度、構造が凍結されたときの
温度を、本発明では「構造決定温度」と定義する。
【0017】構造決定温度は以下のように求めることが
できる。まず、図1に示すような管状炉中で複数の石英
ガラス試験片を空気中で1073K〜1700Kの範囲の複数の
温度でそれぞれ、その温度における構造緩和時間(その
温度において石英ガラスの構造が緩和されるに要する時
間)以上の期間保持することによって、各試験片の構造
をその保持温度における構造に到達させる。これによ
り、各試験片は保持温度での熱平衡状態にある構造を有
することになる。図1中、101は試験片、102は石
英ガラス管、103はヒーター、104は熱電対、10
5はビーカー、106は液体窒素である。
【0018】次に、各試験片を水ではなく、液体窒素に
0.2秒以内に投入して急冷を実施する。水への投入では
急冷が十分ではなく、そのため冷却過程で構造緩和が生
じ、保持温度での構造を固定できない。さらに、水と石
英ガラスとの反応による悪影響も考えられる。本発明で
は、各試験片を液体窒素へ投入することにより、水の場
合より超急冷を達成することができ、この操作により、
各試験片の構造を保持温度の構造に固定することが可能
になった。そのようにしてはじめて、構造決定温度を保
持温度と一致させることができる。
【0019】このようにして作製した、いろいろな構造
決定温度(ここでは保持温度に等しい)をもつ試験片に
ついてラマン散乱測定を行い、606cm-1線強度を800cm-1
線強度に対する比として求めて、606cm-1線強度に対す
る構造決定温度を変数にしたグラフを作成して、これを
検量線とする。この検量線に基づいて、構造決定温度が
未知である試験片の構造決定温度をその606cm-1線強度
測定値から逆算することができる。本発明では、構造決
定温度が未知の石英ガラスについて、以上のようにして
求めた温度をその石英ガラスの構造決定温度とした。
【0020】
【発明の実施の形態】先ず、本発明の石英ガラスについ
て説明する。本発明の石英ガラスは、400nm以下の
波長帯域の光と共に使用される光リソグラフィ−用石英
ガラスであって、構造決定温度が1200K以下でかつ
OH基濃度が1000ppm以上、好ましくは1000
〜1300ppm、であることを特徴とするものであ
る。
【0021】このようにOH基濃度が1000ppm以
上としかつ構造決定温度を1200K以下にすること
で、ArFエキシマレーザに対する散乱損失量が0.2
%/cm以下であるという、従来は達成することができ
なかった低散乱損失量の石英ガラスを得ることができ、
それによって散乱光に起因するフレアやゴーストによる
コントラストの低下が充分に抑制される。
【0022】一般的に、物質中に入射した光エネルギー
は散乱現象を生ずる。散乱現象は、レ−リ−散乱、ブリ
リアン散乱等の弾性散乱やラマン散乱等の非弾性散乱に
大別できる。特に、光学部材中の散乱強度が高いと、そ
の散乱光はフレアやゴーストとなり像のコントラストを
低下させ、光学性能を低下させる原因となる。もっと
も、光散乱は、光吸収による光学部材の形状や屈折率の
変化による解像力の低下に比べて、その影響が充分に小
さく、実用上は無視できる値であると考えられていた。
実際、可視域の光を用いる光学機器においては、透過損
失の主な原因は光吸収であり、その光吸収を一定以下に
設定することにより、所望の解像度を満たし、像のコン
トラストの良好なものが得られる。
【0023】しかしながら、本発明者らは、入射光の波
長が短波長化するにしたがって光散乱は無視できなくな
り、特に光リソグラフィー用の投影レンズなどの従来の
光学部材においては、散乱光によるフレアやゴーストに
より鮮明な像が得られなくなることを見い出したのであ
る。構造安定性のパラメータである構造決定温度が12
00K以下である石英ガラス、すなわち理想に近い構造
を持つ石英ガラス、に1000ppm以上のOH基が導
入された石英ガラスにおいてArFエキシマレーザに対
する散乱損失が著しく抑制される機構は必ずしも明確で
ないが、本発明者らは以下のように考える。なお、本発
明の石英ガラスの構造決定温度は、たとえば光ファイバ
の構造決定温度である約1450Kと比較して非常に低い。
【0024】構造決定温度が高い石英ガラスは構造的に
は不安定であると考えられる。すなわち、石英ガラスネ
ットワーク中の≡Si−O−Si≡結合角はガラスであ
るがゆえにある分布を持っており、この結合角分布の中
には構造的に不安定なものが含まれている。この結合角
分布は石英ガラス中の酸素原子と硅素原子とで作られる
四面体どうしが架橋しており、従って歪んだ状態の四面
体が存在していることに起因していると考えられる。こ
のような歪んだ結合部分は、紫外線の照射により容易に
切断され、有害なE’センターやNBOHCなどの欠陥
を発生させてしまうものと考えられる。これに対して、
構造決定温度が低い石英ガラスにおいては、かかる歪ん
だ結合部分が非常に少ないと考えられる。
【0025】そして、上記範囲内のOH基を含有する石
英ガラスは、それ以外の石英ガラスに比較して構造的に
安定しており、構造決定温度がより低下する傾向にあ
る。その詳細な理由は以下の通りである。前述のよう
に、石英ガラスネットワーク中の≡Si−O−Si≡結
合角はガラスであるがゆえにある分布を持っており、構
造的に不安定な歪んだ結合部分が含まれている。しかし
ながら、上記範囲内のOH基が含有されると不安定な結
合角をとってまで架橋する必要が無くなるため、四面体
が最安定構造に近づくことができる。従って、上記範囲
内のOH基を含有する石英ガラスは、それ以外の石英ガ
ラスに比較して構造的に安定しており、また、構造決定
温度がより低下する傾向にある。
【0026】従って、OH基濃度が1000ppm以上
でかつ構造決定温度が1200K以下である本発明の石
英ガラスにおいては、それらの相乗効果によって、Ar
Fエキシマレーザに対する散乱損失量が0.2%/cm
以下であるということが達成される。本発明の石英ガラ
スにおいては、フッ素濃度が300ppm以上であるこ
とが好ましい。フッ素濃度が300ppm以上である
と、同一のアニール条件下で構造決定温度がより低下す
る傾向にあるからである。
【0027】さらに、光散乱と光吸収のト−タル量すな
わち透過損失量は、レチクルやウエハ上の光量に影響
し、照度低下によるスル−プットの低下などに影響を及
ぼす。特に、光リソグラフィ−光学系は、解像度を極限
まで高めているため、各種波面収差の補正のためレンズ
枚数が多く、光路長が長い。そのため微小な透過損失量
(散乱損失量+吸収損失量)も影響する。例えば、1m
の光路長では、透過損失量が0.2%/cmの場合で
も、全透過損失量は、約18%にも及ぶ。
【0028】従って、本発明の石英ガラスにおいては、
厚さ10mmの前記石英ガラスにおけるArFエキシマ
レーザに対する内部吸収率が0.2%/cm以下である
ことが好ましい。かかる光吸収が解像度を低下させる原
因であることは下記の通りである。すなわち、光吸収と
は、光学部材に入射した光子エネルギーによる電子遷移
に起因する現象である。光学部材において光吸収が起こ
ると、そのエネルギーは主に熱エネルギ−に変換され、
光学部材が膨張したり、屈折率や面状態が変化し、結果
として高解像度が得られなくなる。さらに、光吸収は、
電子状態の変化を伴い、その緩和過程で入射光より長い
波長の光が蛍光として放出される。その蛍光の波長が露
光波長と近く、その強度が高ければ、像のコントラスト
を著しく低下させる。したがって、コントラストが良好
で微細且つ鮮明な像を得るためには、散乱損失量ととも
に、吸収損失量についても規定することが望ましい。
【0029】また、石英ガラスの耐紫外線性を悪化させ
る要因として、≡Si−Si≡、≡Si−O−O−Si
≡、溶存酸素分子等が知られている。これらの前駆体
は、エキシマレーザなどの紫外線照射によって容易に
E’センターやNBOHCなどの構造欠陥に変換されて
しまい、透過率の低下の原因となる。本発明の石英ガラ
スにおいては、そのような化学量論比からのずれに起因
する不完全構造が存在しないことが好ましい。例えば、
上記範囲内のOH基が含有されると、酸素欠乏型欠陥吸
収帯(7.6、5.0eV吸収帯)を実質的に含まない傾向にあ
る。また、本発明の石英ガラスが5×1016molecules/
cm3以上の水素分子を含有する場合には、ArFエキシ
マレーザをワンパルスエネルギー密度100mJ/cm2で1x106
ハ゜ルス照射したとき、酸素過剰型欠陥吸収帯(4.8eV吸収
帯)が実質的に生成しない。これらの欠陥が存在しない
ことにより、真空紫外・紫外・可視・赤外分光光度計に
よる透過率測定では、g線(436nm)〜i線(365nm)及
びKrFエキシマレーザビーム(248nm)の波長の光に
対しては内部透過率(厚さ10mmの石英ガラス)が99.
9%以上、ArFエキシマレーザビーム(193nm)の波
長の光に対しては内部透過率(厚さ10mmの石英ガラス)
が99.6%以上の高透過率が達成されるようになる。
また、KrFエキシマレーザを平均ワンパルスエネルギ
ー密度400mJ/cm2で1×106パルス照射した後
の、厚さ10mmの前記石英ガラスにおける波長248
nmの光に対する内部透過率が99.5%を超え、他
方、ArFエキシマレーザを平均ワンパルスエネルギー
密度100mJ/cm2で1×106パルス照射した後
の、厚さ10mmの前記石英ガラスにおける波長193
nmの光に対する内部透過率が99.5%を超えること
となる。
【0030】また本発明の石英ガラスにおいては、構造
決定温度分布が部材内で中央対称性を有する方が、散乱
損失特性(散乱強度)も中央対称性を有することになる
ため望ましい。これは、レンズ調整時、フレアやゴ−ス
トの原因となるレンズ部品を特定し易くし、光学調整が
容易となる。さらに、結像面上でのコントラストのバラ
ツキを抑えることができる。さらに、本発明の石英ガラ
スにおいては、複屈折量が2nm/cm以下であること
が好ましく、偏光特性及び複屈折特性が中央対称性を有
することが好ましい。
【0031】本発明の石英ガラスにおいては、塩素濃度
が50ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であ
ることが特に好ましい。塩素濃度が50ppmを超える
と、石英ガラス中のOH基濃度を1000ppm以上に維
持することが困難となる傾向にあるからである。さら
に、含有金属不純物(Mg,Ca,Ti,Cr,Fe,Ni,Cu,Zn,Co,Mn,
Na,K)濃度がそれぞれ50ppb以下、より好ましくは20ppb
以下という高純度の石英ガラスを用いることが好まし
い。これにより、前述の構造欠陥が減って理想に近い構
造となり、さらに金属不純物による屈折率変化、面変
化、透過率劣化がより少なくなり、耐紫外線性が向上す
る傾向にある。
【0032】次に、本発明の光学部材並びに露光装置に
ついて説明する。本発明の光学部材は、構造決定温度が
1200K以下でかつOH基濃度が1000ppm以上
である前記本発明の石英ガラスを含むものである。かか
る本発明の光学部材は、上記石英ガラスを含むこと以外
は特に制限されず、400nm以下の波長帯域の光と共に使
用されるレンズ、プリズムなどの光学部材である。ま
た、本発明の光学部材はブランクも包含する。さらに、
上記本発明の石英ガラスを本発明の光学部材に加工する
方法も特に制限されず、通常の切削法、研磨法等が適宜
採用される。
【0033】本発明の光学部材は、前述のようにArF
エキシマレーザビームのような短波長の光に対する散乱
損失量が非常に小さい石英ガラスを備えているため、従
来の光学部材に比べて散乱光の発生が抑制され、高い解
像力を奏する。従って、本発明の石英ガラスは、特にA
rFステッパーの投影系レンズのような0.25μm以下と
いう高い解像力が要求される光学部材に好適に適用され
る。また、本発明の石英ガラスは、ステッパーの投影系
レンズのみならず照明系レンズ等にも有用である。
【0034】本発明の露光装置は、かかる本発明の石英
ガラスを含む光学部材を備え、400nm以下の波長帯域の
光を露光光として使用するものであり、上記石英ガラス
を投影系レンズ、照明系レンズなどとして含むこと、及
び400nm以下の波長帯域の光を発する光源を備えること
以外は特に制限されない。本発明の露光装置は、前述の
ようにArFエキシマレーザビームのような短波長の光
に対する散乱損失量が非常に小さい石英ガラス製の光学
部材を備えているため、従来の露光装置に比べてフレア
やゴーストによる像のコントラストの低下が充分に防止
され、高解像力が達成される。
【0035】本発明者らは、上記の光学部材を使用する
場合について光学シミュレ−ションや結像性能評価実験
を行なったところ、フレアやゴ−ストの影響が実質上な
く、光量の低下についても性能上問題ない露光装置(光
リソグラフィ−装置)を提供できることを見い出した。
そしてこの知見をもとに、本発明の光学部材を用いて構
成された光学系において、線幅0.25μm以下の微細
かつ鮮明な露光・転写パターンを得た。
【0036】このように、本発明者らは、光リソグラフ
ィー技術において微細かつ鮮明な露光・転写パターンを
得ることのできる光学部材の特性について鋭意研究し、
その結果、投影レンズの光学性能は屈折率の均質性(△
n)やレンズ面精度、光学薄膜特性がほぼ同一の場合、
透過損失量が結像性能に極めて影響が大きいこと、ま
た、さらに重要なことに、その透過損失を光吸収と光散
乱に分離して精密に評価しないとその光学性能を正確に
予測できないことを見い出した。なぜならば、光吸収は
レンズ内発熱に起因する結像性能の悪化に、一方光散乱
はフレアやゴ−ストに起因するコントラストの悪化と異
なる現象を生ずる。
【0037】ここで、光学部材における光散乱について
詳細に述べる。光学単結晶、例えば単結晶蛍石(CaF
2)は、完全結晶体とみなされるため、全ての原子やイ
オンが5オングストローム前後の距離で規則正しく配列
していて、その密度は一様であると考えられる。光の伝
搬に関するハイゲンス・フレネルの原理からも、光の波
面が分子(=散乱因子)にあたって無数の2次球面波を
出しても、光が直進する方向の散乱光以外は干渉して打
ち消しあってしまう。そのため、光学単結晶の散乱損失
は、液体や非平衡状態であるガラス、プラスチックと比
較して非常に小さくなり、内部に構造欠陥や微粒子等が
実用上存在しない場合は、その散乱損失量は無視し得る
と考えられる。
【0038】しかし、ガラスは製法上溶融物を急冷する
ため溶融時の原子配列がある程度凍結されるため、巨視
的性質は固体であるが、微視的には液体の構造をもつ。
そのため、液体同様分子の分布は結晶のような規則性を
もたず、熱運動をすることによる統計熱力学的なゆらぎ
を持つため、光散乱があると考えられている。このよう
な光散乱はレーリー散乱と呼ばれているものである。
【0039】レーリ−散乱は、散乱強度が波長λの4乗
に反比例する。このため、短波長域で使用される光学機
器においては、光学部材のレーリー散乱が光学性能に影
響を及ぼす。特に、光リソグラフィ−用投影レンズ等の
ように超微細な解像度が要求される光学機器では、透過
損失や散乱光によるフレアやゴ−ストが問題となる。ガ
ラスの散乱損失量は、次式により算出することができ
る。
【0040】◎
【数3】
【0041】上式中、sは散乱損失係数(/cm)、p
はポッケルス係数:0.27、Tsは構造決定温度
(K)、βTは等温圧縮率:7×10-12cm/dy
n、ρは密度:2.201(g/cm3)、λは波長
(cm)、kはボルツマン定数:1.38×10
-16(erg/K)、nは屈折率である。例えば、石英
ガラスの計算を試みると、与えた物性値、波長λ=19
3.4nm、屈折率n=1.5603、構造決定温度T
s=1273K、での散乱損失係数はs=0.0018
61/cm、すなわち散乱損失量は0.1861%/c
mと算出される。この様に、実際に測定される透過損失
量に対し、より大きな数値が予測され、193.4nm
の透過損失の原因については光吸収よりも散乱損失が主
因であることを本発明者らは見出した。
【0042】尚、ブリリアン散乱分を補正し、レ−リ−
散乱係数の算出にはβTの項を以下の様に補正する。
【0043】◎
【数4】
【0044】上式中、v∞は高周波音速:5.92(c
m/s)である。計算した結果、散乱損失量は0.15
16%/cmとなる。これより、散乱損失の理論計算値
をレ−リ−散乱損失+ブリリアン散乱損失と定義する。
尚、ブリリアン散乱損失の算出には、式(3)を使用
し、βTを式(4)中に示した(v∞2-1に入れ替えT
sを室温(298K)にすることで算出できる。ブリリ
アン散乱はレ−リ−散乱に対して理論上約1/20程度
と見積もられる。
【0045】しかしながら、このようにして求めた散乱
損失量は、他の散乱因子や非弾性散乱等を考慮していな
いため実際より低く見積もられている可能性がある。さ
らに、ここに示した数値は、理論式からの算出であるこ
と、使用している物性値の信頼性の問題などがあるため
あくまでも推測でしかない。そのため、実際には散乱損
失量の計測が必要となる。
【0046】ここで、散乱損失量の測定装置について詳
細に説明する。測定装置は積分球を使用した全散乱量
を測定する積分球方式(図2)及び角度分布測定に用
いられるゴニオフォトメトリ−方式(図3)、楕円鏡
を用いた楕円鏡方式(図4)がある。光源及び光学系は
各方式ほぼ共通である。可視光に関しては、He−Ne
レ−ザ(632.8nm)、Ar+イオンレ−ザ(48
8nm等)等を光源として用いた実測定が用いられる。
また、ArFエキシマレ−ザ(193.4nm)実波長
に関しては、D2ランプやArFエキシマレ−ザを光源
として用いた実測定や、Hgランプ輝線を使用して19
3.4nmの散乱損失量を計算式により内挿する方法が
用いられる。
【0047】サンプル形状は円柱もしくは角柱が望まし
く、光入出射面は平行平面にし、他の面も表面粗さを望
ましくは、RMSで5オングストローム以下にし、表面
清浄度を高めておく必要がある。これは表面散乱、表面
吸収の影響を防ぐためである。本発明における光散乱、
光吸収とは光学部材の内部散乱及び内部吸収を意味す
る。
【0048】次に、各方式毎の検出部の説明を記す。図
2の積分球を用いる方式は、積分球内の光路部分にサン
プル(被検物)を保持する。その際サンプル長は積分球
内光路長より、やや長くすることが好ましい。これは、
表面散乱光の積分球内への入射を防ぐためである。ま
た、表面反射や表面散乱光を測定系から遮断するには、
平行平面部に数分のくさびを付けるか、セッティング時
に光軸に対して数度傾ければ良い。また、0点校正に
は、サンプルなしの時の信号強度を、検量線には透過率
が精密に保証されているNDフィルタ−等を用いる。光
検出素子には、各測定波長で高感度で安定性の良いフォ
トダイオ−ドやフォトマル等を使用する。
【0049】図3はゴニオフォトメトリ−方式を用い、
基本的には散乱光の角度依存性を測定する装置である。
この装置の構成を用いて散乱光の絶対値測定を行うに
は、可視光ではベンゼン等散乱損失係数のわかっている
物質との相対値から算出する。紫外光では光吸収の影響
の少ない稀ガス等が望ましい。例えば、光軸に対してθ
90度の相対散乱強度比較(R90比:光軸90度方向の強
度)より、全散乱量は16π/3×R90で見積もること
ができる。この場合、散乱の角度依存性は、完全レ−リ
−散乱であると仮定している。
【0050】散乱光の検出部への伝送には、光ファイバ
−の入射部を、光軸に対してθ90度方向に設置し、検
出部にはフォトダイオ−ドアレイを用いた分光器を使用
することで簡易にR90相対値を測定することができる。
また、散乱光のスペクトルを確認することもできる。図
4の楕円鏡方式は主に表面散乱の測定に用いられる。こ
の装置は、散乱測定においても相対強度を測定するには
優れた構成であるが、絶対値を算出するためには複雑な
補正式が必要となる等の欠点がある。
【0051】そこで、本発明者らは、積分球方式及びゴ
ニオフォトメトリ−方式で測定した散乱実測値を用い、
散乱損失による光リソグラフィ−装置の光学性能例えば
解像度及びコントラストへの影響を検討した。これらの
結果をもとに、光学シミュレ−ションや結像性能評価実
験を行なった。図5に、結像評価実験により求めた、光
リソグラフィ−装置の光学系における総散乱損失量とコ
ントラストとの関係を示す。この様に両者には非常に良
い相関関係が得られた。
【0052】ここで、散乱損失量の規格値0.2%/c
mは、次式により算出した数値である。
【0053】◎
【数5】
【0054】上式中、S0=必要なコントラストを得る
ために許容される総散乱損失量の最大値(%)、L=光
学系総光路長(cm)であり、総散乱損失量=総散乱損
失強度÷入射光強度×100(%)である。すなわち、
ステッパの結像性能には、吸収損失だけでなく、散乱損
失も顕著に影響していることが結像評価実験により確認
され、散乱損失量が0.2%/cm以下であれば、フレ
アやゴ−ストの影響が実質上なく、光量の低下について
も性能上問題ないレベルであり、結像性能に影響しない
ことが解った。
【0055】さらに、193.4nmの光に対する散乱
損失量が0.2%/cm以下ならば、散乱損失量は波長
λ4に反比例し屈折率n8に比例するため、193.4n
mより長波長域の光に対しては波長が長くなるにしたが
って散乱損失量は小さくなり、本発明にかかる規格は満
たされる。このことは、式(3)からも、実験結果から
も確認した。
【0056】逆に、可視域、例えばHe−Neレ−ザ
(632.8nm)、Ar+イオンレ−ザ(488nm
等)等の波長での散乱損失量から、波長λ4反比例則及
び屈折率n8比例則を用いて、193.4nmの散乱損
失量を計算し、本発明にかかる規格である散乱損失量
0.2%/cm以下を満たすか否かの判別も可能であ
る。種々の光リソグラフィ−用石英ガラスの散乱損失量
の実測値と、構造決定温度Tsを1273Kに想定して
式(3)を用いて算出した散乱損失量の理論計算値とを
比較した結果を図6に示す。この様に理論計算値に対し
て実測値が高い値を示し、さらに大きなバラツキを示
す。193.4nmでは、このバラツキにより、従来よ
り使用されてきた光リソグラフィ−用石英ガラスであっ
ても、本発明における散乱損失量の規格0.2%/cm
を越えてしまうことがわかった。これに対して、後述す
る実施例から明らかなように、本発明の石英ガラスは、
193.4nmの光に対してさえ0.2%/cm以下と
いう散乱損失量を達成するものである。
【0057】また、本発明者らは、構造決定温度Tsと
散乱損失との関係を確認した。結果を図7に示す。ここ
でも実測値は、理論値よりやや高めとなった。これは、
レ−リ−散乱で見積もれる以外の光散乱(例えば光学ガ
ラスのような粒子状もしくはコロイド状の散乱因子の影
響、非弾性散乱等の影響)、及び理論計算に用いた物性
値の信頼性欠如に起因すると考えられる。
【0058】また、本発明者らは、石英ガラス中のOH
基、F濃度の変化やHIP処理による屈折率変化と、散
乱損失との関係を確認し、その結果を図8に示す。この
様に、実測値は、理論計算値よりやや高く測定された。
また、散乱損失量は屈折率依存性をもつことが解った。
さらに、本発明にかかる規格である散乱損失量0.2%
/cm以下を満たすには、少なくとも193.4nmの
光に対する屈折率が1.56未満であることが望ましい
ことが判明した。
【0059】次に、本発明の石英ガラスの製造方法につ
いて説明する。本発明の石英ガラスの製造方法において
は、OH基濃度が1000ppm以上である石英ガラス
インゴットを1200〜1350Kの温度に昇温し、該温度に所
定期間保持する。保持温度が1350Kを超える場合は、石
英ガラスの表面が変質し、また、構造決定温度を120
0K以下にするのに非常に長時間を要するようになる。
他方、保持温度が1200K未満の場合は所定期間内に構造
決定温度を1200K以下に下げることができず、またアニ
ールが不充分となって歪がとれない。
【0060】また、保持時間は、保持温度における構造
緩和時間以上の期間であることが好ましく、特に好まし
くは1〜24時間である。例えば、1300K以上の構造決
定温度を有しかつOH基を1000ppm程度含有する石英ガ
ラスでは、1273Kにおける構造緩和時間は280秒とされ
ている。なお、昇温速度は得られる石英ガラスの物性に
影響しないが、150K/hr以下程度が好ましい。
【0061】次に、本発明の石英ガラスの製造方法にお
いては、上記石英ガラスインゴットを、1000K以下、好
ましくは873K以下、特に好ましくは473K以下、の温度
(徐冷終了温度)まで50K/hr以下、好ましくは20K/hr以
下の降温速度(徐冷速度)で降温することによって該イ
ンゴットをアニーリングする。徐冷終了温度が1000Kを
超えている場合や、徐冷速度が50K/hrを超える場合は、
構造決定温度を1200K以下に下げることができず、さら
に歪も充分に除去されない。
【0062】そして、上記徐冷終了温度に到達した後は
特に制限されないが、通常は室温まで自然放冷される。
本発明にかかる上記アニーリング工程における雰囲気は
特に制限されず、空気でよい。また、圧力も特に制限さ
れず、大気圧でよい。更に、本発明の製造方法において
は、上記のアニーリング工程に先立って、SiCl4、SiHCl
3、SiF4のようなケイ素化合物を火炎(好ましくは酸素
水素火炎)中で加水分解せしめてガラス微粒子(ガラス
スート)を得、そのガラス微粒子を堆積かつ溶融せしめ
てOH基濃度が1000ppm以上である石英ガラスイ
ンゴットを得る工程を更に含むことが好ましい。
【0063】さらに、本発明の製造方法においては、上
記の石英ガラスインゴットを少なくとも1373Kの温
度から1073K以下の温度、好ましくは773K以下
の温度、特に好ましくは室温、までの間50K/hr以
下、好ましくは20K/hr以下、特に好ましくは10
K/hr以下、の降温速度で降温することによって該イ
ンゴットを予備アニーリングする工程を更に含むことが
好ましい。石英ガラスインゴットをかかる予備アニーリ
ングすると、構造決定温度がより低下する傾向にある。
【0064】このように、本発明にかかる石英ガラスイ
ンゴットは、上記のような直接法(direct method)す
なわち酸水素火炎加水分解法(oxy-hydrogen flame hyd
rolysis)で製造することが好ましい。すなわち、合成
石英ガラスに紫外線を照射したときに構造欠陥を発生さ
せるような前駆体の例として≡Si−Si≡結合や≡S
i−O−O−Si≡結合等が知られており、いわゆるス
ート法(VAD法、OVD法)やプラズマ法で得られた
石英ガラスにはそのような前駆体が存在する。一方、直
接法で製造された合成石英ガラスには、そのような化学
量論比からのずれに起因する、酸素欠乏性・過剰性の不
完全構造が存在しないからである。さらに、直接法で製
造された合成石英ガラスでは、含有金属不純物濃度が低
い高純度が一般に達成される。
【0065】このように塩化ケイ素を酸素水素火炎で加
水分解し、生じた石英ガラス微粒子をターゲット上に堆
積、溶融させて石英ガラスインゴットを形成するとい
う、いわゆる直接法によって合成された石英ガラスは、
合成直後の状態では構造決定温度が1300K以上である。
また、直接法においてOH基濃度が1000ppm以上
である石英ガラスインゴットを得るためには、前記火炎
中の水素ガスに対する酸素ガスの容量比(O2/H 2)を
0.4以上、特に好ましくは0.42〜0.5にするこ
とが好ましい。かかる比率(酸素水素ガス比率)が0.
4未満の場合、得られた石英ガラスインゴット中に10
00ppm以上のOH基が含有されない傾向にある。ま
た、本発明の製造方法においては、石英ガラスインゴッ
トを切断して所定の寸法、好ましくは直径200〜40
0mm、厚さ40〜150mm、を有するブランクとし
た後に前記のアニーリングを施すと、前記アニーリング
の効果がより効果的にかつ均一に達成される傾向にある
ため好ましい。
【0066】
【実施例】実施例1〜14及び比較例1〜10 図9に示す石英ガラス製造装置を用いて石英ガラスイン
ゴットを製造した。すなわち、ケイ素化合物ボンベ40
1から供給された高純度四塩化ケイ素A(原料)(実施
例1〜11、比較例1〜8)、又は四塩化ケイ素A及び
四フッ化ケイ素B(原料)(実施例12〜14、比較例
9〜10)をベーキングシステム402において酸素ボ
ンベ403から供給されたキャリアガスと混合し、水素
ボンベ404から供給された水素ガスと、酸素ボンベ4
05から供給された酸素ガスと共に石英ガラス製バーナ
406に供給した。そして、バーナ406にて表1に示
す流量の酸素ガスおよび水素ガスを混合・燃焼させ、中
心部から表1に示す流量の原料ガスをキャリアガス(酸
素ガス)で希釈して噴出させて石英ガラス微粒子(Si
2微粒子)を得、耐火物407で包囲されたターゲッ
ト408上に石英ガラス微粒子を堆積、溶融させ、さら
に表2に示す降温速度(予備アニール)で室温まで冷却
し、表1に示す組成の石英ガラスインゴット409(長
さ500mm)を得た。その際、インゴット409の上面
(合成面)は火炎に覆われるようにし、ターゲット40
8を一定周期で回転及び揺動させつつ一定速度で降下さ
せた。なお、この段階の石英ガラスの構造決定温度は1
400Kであった。また、図9中の410はマスフロー
コントローラであり、表1中のRは酸素水素比率(O2/H
2)である。
【0067】なお、バーナ406は、図10に示すよう
に5重管構造を有しており、501は原料及びキャリア
ガス噴出口、502は内側酸素ガス(OI)噴出口、5
03は内側水素ガス(HI)噴出口、504は外側酸素
ガス(OO)噴出口、505は外側水素ガス(HO)噴
出口である。また、各噴出口の寸法(mm)は以下の通
りである。
【0068】 バーナA 内径 外径 501 6.0 9.0 502 12.0 15.0 503 17.0 20.0 504 3.5 6.0 505 59.0 63.0 バーナB 内径 外径 501 3.5 6.5 502 9.5 12.5 503 14.5 17.5 504 3.5 6.0 505 59.0 63.0 バーナC 内径 外径 501 2.0 5.0 502 8.5 11.5 503 14.5 17.5 504 3.5 6.0 505 59.0 63.0 次いで、得られたインゴットからArFエキシマレーザ
ビーム照射用試験片(直径60、厚さ10mm、向かい合う2
面を光学研磨してある)をそれぞれ作製した。これらを
図11に示すような耐火断熱レンガ製のアニール炉の中
に配置し、表2に示す昇温速度で室温から保持温度に加
熱し、保持時間経過後、表2に示す徐冷速度で保持温度
から徐冷終了温度に降温し、その後は室温まで自然放熱
させた。なお、表2に示す冷却速度は、自然放熱開始後
1時間における冷却速度である。また、図11中の60
1は試験片、602はアニール炉、603は石英ガラス
板と耐火レンガ製脚部とからなる台、604は棒状Si
C発熱体である。
【0069】◎
【表1】
【0070】◎
【表2】
【0071】◎
【表3】
【0072】これらの各試験片について構造決定温度
(Ts)、OH基濃度、F濃度、水素分子濃度を測定し
た。結果を表3に示す。なお、構造決定温度は、予め作
成しておいた検量線に基づいて、その606cm-1線強度測
定値から逆算して求めた。また、水素分子濃度の測定は
レーザラマン分光光度計により行った。すなわち、Ar
+レーザビーム(出力800mW)を照射した時に発生する試
料と直角方向のラマン散乱光のうち、800cm-1と4135cm
-1との強度を測定し、その強度比をとることにより行な
った。また、OH基濃度測定は赤外吸収分光法(1.38μ
mのOH基による吸収量を測定する)により行った。加
えて、各試験片中の含有金属不純物(Mg,Ca,Ti,Cr,Fe,N
i,Cu,Zn,Co,Mn,Na,K)の定量分析を誘導結合プラズマ発
光分光法によって行ったところ、濃度がそれぞれ20ppb
以下であることがわかった。
【0073】このようにして作製した各試験片につい
て、ArFエキシマレーザ光に対する散乱損失量を測定
した。得られた結果を表3に示す。表3から明らかなよ
うに、本発明の石英ガラス(実施例1〜14)は散乱損
失量について所望の基準を満たすものであった。また、
図12から明らかなように、OH基濃度が1000pp
m以上である場合は、構造決定温度を1200K以下と
することによって散乱損失量が顕著に低下した。
【0074】また、実施例で得られた石英ガラスはいず
れも、散乱損失特性、偏光特性及び複屈折特性が中央対
称性を有するものであった。また、複屈折量は2nm/
cm以下であった。更に、実施例で得られた石英ガラス
について以下の諸特性を測定したところ、以下の結果で
あった。すなわち、厚さ10mmの前記石英ガラスにお
けるArFエキシマレーザに対する内部吸収率は0.2
%/cm以下であった。また、厚さ10mmの前記石英
ガラスにおけるArFエキシマレーザに対する内部透過
率は99.8%以上であった。さらに、KrFエキシマ
レーザを平均ワンパルスエネルギー密度400mJ/c
2で1×106パルス照射した後の、厚さ10mmの前
記石英ガラスにおける波長248nmの光に対する内部
透過率は99.5%以上であった。さらにまた、ArF
エキシマレーザを平均ワンパルスエネルギー密度100
mJ/cm2で1×106パルス照射した後の、厚さ10
mmの前記石英ガラスにおける波長193nmの光に対
する内部透過率は99.5%以上であった。
【0075】比較例11 保持温度を1123Kとした以外は実施例4と同様にし
て石英ガラス試験片を得たところ、保持されている間に
構造が緩和されなかったために構造決定温度が1200K以
下に下がらず、またアニーリングが充分でなかったため
に歪もとれなかった。
【0076】比較例12 単に、レンズ素材特性△n≦2×10-6、且つ 複屈折
量≦2nm/cm、内部透過率99.6%以上の仕様を
満たす石英ガラスでArFエキシマレ−ザステッパ用投
影レンズを作製した。得られた解像度(L/S)は、設
計L/Sの0.20μmに対して0.30μmであっ
た。また、コントラストも悪く設計性能が得られなかっ
た。この様な仕様による光学部材の選定だけでは、不十
分であることがわかった。L/S悪化の原因は、吸収損
失量もしくは散乱損失量が0.2%/cmを越えていた
ために光吸収によるレンズ内発熱及び光散乱によるフレ
アによる影響が著しいためと推測される。
【0077】L/Sとは、line and spac
eの略語で半導体製造の性能評価の指標として一般的に
使用される数値である。均質性の測定は、He−Neレ
ーザ干渉計を用いたオイルオンプレート法、複屈折の測
定は回転検光子法により行った。内部透過率は、通常の
分光光度計にて測定した。
【0078】実施例15 レンズ素材特性△n≦2×10-6、且つ 複屈折量≦2
nm/cm、且つ散乱損失量、吸収損失量ともに0.2
%/cm以下である仕様を満たす本発明の石英ガラスで
ArFエキシマレ−ザステッパ用投影レンズを作製し
た。得られたL/Sは、設計L/Sの0.20μmに対
して0.20μmであった。またコントラストも良好で
あった。この仕様により光学部材を選別することで、設
計値に近い性能が得られた。
【0079】均質性の測定は、He−Neレーザ干渉計
を用いたオイルオンプレート法、複屈折の測定は位相変
調法により行った。この際使用した石英ガラスは、19
3nmにおいて10mm内部透過率が99.6%を超え
るものであった。また、ArFエキシマレーザを 10
0mJ/cm2・pulseで106pulse照射した
後、193nmにおける10mm内部透過率は99.5
%を超えていた。
【0080】さらに、KrFエキシマレーザ特性を確認
したところ400mJ/cm2・pulseで106pu
lse照射した後、248nmにおける10mm内部透
過率が99.5%を超えることを確認した。レンズ設計
をKrFエキシマレ−ザ用にすることで、この光学部材
を使用すれば、KrFエキシマレ−ザステッパにも使用
可能である。
【0081】この光学部材による投影レンズは、水素濃
度5×1017個/cm3以上であり、中央部の方が周辺
部より高い水素濃度を持つ。この投影レンズは、256
MBのVLSI製造ライン用に使用可能である。
【0082】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
光散乱によるフレア、ゴ−ストの影響が低減されること
により、レンズ設計時の設計解像度に近い光学性能、す
なわち高解像度が得られる石英ガラスを提供することが
できる。また、本発明によれば、上記本発明の石英ガラ
スを含み、コントラストが良好な光学部材を提供するこ
とができる。さらに、スル−プットの向上にも効果があ
る。
【0083】従って、本発明の石英ガラスを含む光学部
材は、400nm以下の光を用いる、i−Line、A
rF及びKrFエキシマレ−ザステッパ用投影レンズの
いずれにも適用できる。そして、本発明により、光リソ
グラフィー装置の性能、すなわち解像度の向上及び安定
化が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる構造決定温度を測定する為の装
置の一例の模式図である。
【図2】散乱光の積分球方式測定装置の概念図である。
【図3】散乱光のゴニオフォトメトリ−方式測定装置の
概念図である。
【図4】散乱光の楕円鏡方式測定装置の概念図である。
【図5】散乱損失量とコントラストとの関係を示すグラ
フである。
【図6】波長と散乱損失との関係を示すグラフである。
【図7】構造決定温度と散乱損失との関係を示すグラフ
である。
【図8】屈折率と散乱損失との関係を示すグラフであ
る。
【図9】本発明にかかる石英ガラスインゴットを製造す
る為の装置の一例の模式図である。
【図10】本発明にかかる石英ガラスインゴットを製造
する為のバーナーの一例の底面図である。
【図11】本発明にかかるアニール炉の一例の斜視図で
ある。
【図12】構造決定温度と散乱損失との関係を示すグラ
フである。
【符号の説明】
1…光源、2…光学系、3…光検出素子、4…測定サン
プル、5…積分球、6…楕円鏡、101…試験片、10
2…石英ガラス管、103…ヒーター、104…熱電
対、105…ビーカー、106…液体窒素、401…四
塩化ケイ素ボンベ、402…ベーキングシステム、40
3…酸素ボンベ、404…水素ボンベ、405…酸素ボ
ンベ、406…バーナ、407…耐火物、408…ター
ゲット、409…インゴット、410…マスフローコン
トローラ、601…試験片、602…アニール炉、60
3…台、604…発熱体。

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 400nm以下の波長帯域の光と共に使
    用される光リソグラフィ−用石英ガラスであって、構造
    決定温度が1200K以下でかつOH基濃度が1000
    ppm以上であることを特徴とする石英ガラス。
  2. 【請求項2】 フッ素濃度が300ppm以上であるこ
    とを特徴とする、請求項1に記載の石英ガラス。
  3. 【請求項3】 ArFエキシマレーザに対する散乱損失
    量が0.2%/cm以下であることを特徴とする、請求
    項1又は2に記載の石英ガラス。
  4. 【請求項4】 前記石英ガラスの散乱損失特性が中央対
    称性を有することを特徴とする、請求項1〜3のうちの
    いずれかに記載の石英ガラス。
  5. 【請求項5】 厚さ10mmの前記石英ガラスにおける
    ArFエキシマレーザに対する内部吸収率が0.2%/
    cm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のうち
    のいずれかに記載の石英ガラス。
  6. 【請求項6】 厚さ10mmの前記石英ガラスにおける
    ArFエキシマレーザに対する内部透過率が99.6%
    以上であることを特徴とする、請求項1〜5のうちのい
    ずれかに記載の石英ガラス。
  7. 【請求項7】 KrFエキシマレーザを平均ワンパルス
    エネルギー密度400mJ/cm2で1×106パルス照
    射した後の、厚さ10mmの前記石英ガラスにおける波
    長248nmの光に対する内部透過率が99.5%を超
    えることを特徴とする、請求項1〜6のうちのいずれか
    に記載の石英ガラス。
  8. 【請求項8】 ArFエキシマレーザを平均ワンパルス
    エネルギー密度100mJ/cm2で1×106パルス照
    射した後の、厚さ10mmの前記石英ガラスにおける波
    長193nmの光に対する内部透過率が99.5%を超
    えることを特徴とする、請求項1〜7のうちのいずれか
    に記載の石英ガラス。
  9. 【請求項9】 複屈折量が2nm/cm以下であること
    を特徴とする、請求項1〜8のうちのいずれかに記載の
    石英ガラス。
  10. 【請求項10】 前記石英ガラスの偏光特性及び複屈折
    特性が中央対称性を有することを特徴とする、請求項1
    〜9のうちのいずれかに記載の石英ガラス。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10のうちのいずれかに記
    載の石英ガラスを含むことを特徴とする、400nm以
    下の波長帯域の光と共に使用される光学部材。
  12. 【請求項12】 請求項1〜10のうちのいずれかに記
    載の石英ガラスを含む光学部材を備えることを特徴とす
    る、400nm以下の波長帯域の光を露光光として使用
    する露光装置。
  13. 【請求項13】 OH基濃度が1000ppm以上であ
    る石英ガラスインゴットを1200〜1350Kの温度に昇温
    し、該温度に所定期間保持した後、1000K以下の温度ま
    で50K/hr以下の降温速度で降温することによって該イン
    ゴットをアニーリングする工程を含むことを特徴とす
    る、構造決定温度が1200K以下でかつOH基濃度が10
    00ppm以上である石英ガラスの製造方法。
  14. 【請求項14】 ケイ素化合物を火炎中で加水分解せし
    めてガラス微粒子を得、該ガラス微粒子を堆積かつ溶融
    せしめてOH基濃度が1000ppm以上である石英ガ
    ラスインゴットを得る工程を更に含むことを特徴とす
    る、請求項13に記載の方法。
  15. 【請求項15】 ケイ素化合物を火炎中で加水分解せし
    めてガラス微粒子を得、該ガラス微粒子を堆積かつ溶融
    せしめてOH基濃度が1000ppm以上である石英ガ
    ラスインゴットを得る工程と、 該石英ガラスインゴットを少なくとも1373Kの温度
    から1073K以下の温度までの間50K/hr以下の
    降温速度で降温することによって該インゴットを予備ア
    ニーリングする工程とを更に含むことを特徴とする、請
    求項13に記載の方法。
  16. 【請求項16】 前記火炎中の水素ガスに対する酸素ガ
    スの容量比が0.4以上であることを特徴とする、請求
    項14又は15に記載の方法。
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