JPH08247150A - 液体中摺動部材の組合せ及びその選択方法 - Google Patents

液体中摺動部材の組合せ及びその選択方法

Info

Publication number
JPH08247150A
JPH08247150A JP7713995A JP7713995A JPH08247150A JP H08247150 A JPH08247150 A JP H08247150A JP 7713995 A JP7713995 A JP 7713995A JP 7713995 A JP7713995 A JP 7713995A JP H08247150 A JPH08247150 A JP H08247150A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sliding
members
liquid
hardness
combination
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP7713995A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenta Kuwayama
健太 桑山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toto Ltd
Original Assignee
Toto Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toto Ltd filed Critical Toto Ltd
Priority to JP7713995A priority Critical patent/JPH08247150A/ja
Publication of JPH08247150A publication Critical patent/JPH08247150A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Mechanical Sealing (AREA)
  • Sliding-Contact Bearings (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 非潤滑環境下においても、摩擦係数が安定し
て低いという優れた摺動特性を有する液体中摺動部材の
組合せ及びその選択方法を提供する。 【構成】 本発明の液体中摺動部材の組合せは、液体中
又は湿潤雰囲気中において相対的に摺動する2つの部材
の組合せである。両部材の摺動面の表面硬さが、ブリネ
ル硬さ又はビッカース硬さで70 Kgf/mm2 以上であ
り、以下の式で計算される、両部材の摺動面の液体中で
の界面エネルギーが100mJ・m-2以下であることを特徴
とする。 Δγ=2{γL d+γL P+(γA dγB d1/2 +(γA pγB p1/2 −(γA dγL d 1/2 −(γA pγL p1/2 −(γB dγL d1/2 −(γB pγL p1/2 }・・・(1) γL :液体の界面エネルギー γA 、γB :両部材の摺動面表面の界面エネルギー スーパー・スクリプトd:界面エネルギーの分散成分 スーパー・スクリプトp:界面エネルギーの極性成分

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水栓の弁体と弁座に代
表される、液体中(水中)や液滴(水滴)の凝集が生じ
る高湿雰囲気において相対的に摺動する部材の組合せ、
及び、その選択方法に関する。特には、非潤滑環境下に
おいても、摩擦係数が安定して低いという優れた摺動特
性を有する液体中摺動部材の組合せ及びその選択方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】液中で摺動する機械部品としては、水道
水等の液体の通路を連通・遮断するためのバルブの弁体
と弁座、あるいは、水中ポンプ等の中で用いられるメカ
ニカルシールや滑り軸受けがある。これらの機械部品用
の部材には、十分な機械的強度と耐摩耗性、耐熱性、耐
触性などが要求される。さらに、水中では潤滑油の供給
が困難であり、グリースなどの粘性の高い潤滑剤も流失
することがあるので、最も重要な特性として、部材表面
の摩擦係数が小さいことが求められる。
【0003】これらの水中で摺動する部材を構成する材
料としては、以前は、鉄鋼材料や銅合金材料等の金属材
料が一般的であったが、近年セラミック材料も用いられ
るようになってきた。例えば、バルブの弁体ならびに弁
座には、アルミナなどのセラミック材料が用いられる。
【0004】水中における潤滑の困難性から、理想的に
は、無潤滑でも摩擦係数の低い摺動部材の組合せが望ま
しいのであるが、摺動面における摩擦によって摺動に要
する駆動力が上昇したり、あるいは摺動面が損傷を受け
たりすることを抑制するために、摺動面に何らかの潤滑
を施して摩擦を低減する処置が行われている。
【0005】最も単純な潤滑処置としては、部品の組立
時に、グリースやオイルを摺動面に塗布することが行わ
れている。これだけでは長期にわたって潤滑性を維持で
きないような場合には、潤滑剤を蓄える場所を摺動面近
傍に設け、連続的に摺動面に潤滑剤を供給することも行
われている。例えば、バルブの弁体に溝を設けてその溝
内に潤滑剤を充填したり(実開昭62−14386
9)、弁体をセラミック多孔質体で構成しその気孔内に
種々の潤滑剤を充填したり(特開昭63−9781、特
開昭61−206875)することが行われている。
【0006】さらに、フッ素樹脂やシリコン樹脂、グラ
ファイト、炭化ケイ素等といった固体潤滑剤のコーティ
ング層を摺動面に形成したりすること(実開昭63−2
4460、実開昭63−51970)や、部材を炭化ケ
イ素そのもので作製することが行われている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、連続的
に潤滑剤を供給する処置を施しても、潤滑剤が摺動面全
体に行き渡らないことや、予定以上の潤滑剤が供給され
る事態が生じて潤滑剤が蓄え場所からもなくなってしま
うこともある。そのような場合には、摺動面の潤滑を維
持することはできず、例えばバルブにあっては、摺動力
の増大や摺動面の損傷・固着に起因する液体の連通・遮
断不良が生じ、機器の信頼性が損なわれることがある。
また、潤滑剤を蓄える場所を設けるには弁座あるいは弁
体に余分な加工を行う必要があるのでコスト及び生産性
の両面で不利である。さらに、弁座あるいは弁体が大き
くなり外観上(意匠上)も不利となることがある。
【0008】固体潤滑剤のコーティング層を摺動面に形
成する処置の場合、樹脂やグラファイトのコーティング
層を用いると、これらは機械的強度と耐摩耗性がセラミ
ックや金属に大きく劣るため、バルブの厚さが増加した
り、異物のかみこみが生じないようバルブの上流にスト
レーナーが必要になったりして、設計の自由度が損なわ
れる。さらにこれらの処置によっても微細な粒子による
コーティング層の磨耗がすすむので、機械部品としての
寿命も短くなる。
【0009】炭化ケイ素、窒化ケイ素あるいはサイアロ
ンは、摺動中の摩擦係数(動摩擦係数)が低いので、水
中で摺動する機械部品用の材料としては好適である。し
かし、いったん摺動を停止し、所定の時間を経た後再び
摺動を始めようとすると、起動に大きな力が必要なこと
がある。すなわち静摩擦係数がきわめて大きくなること
があるのである。これは、水中で、これらケイ素を含む
セラミック表面に生成するシラノール基(−SiOH)
のためである。同基は摺動中にあっては水分子を吸着
し、ゾル状となって摩擦係数の低減に寄与するが、摺動
を停止すると相手摺動材との間で次化学式に示す脱水縮
合反応を起こし、摺動材料間に固着を生じさせる。 −Si−OH + −M−OH → −Si−O−M−
+ H2
【0010】すなわち、水中摺動材料としてケイ素を含
むセラミックを用いた場合には、動摩擦係数を下げるこ
とはできるが、同時に静摩擦係数が上がってしまう。し
たがってケイ素を含むセラミックは、連続高速運転が主
体であるメカニカルシールなどには適すが、頻繁に起
動、停止を繰り返すバルブ(水栓)の弁体や弁座には不
適である。
【0011】本発明は、連続的に潤滑剤を供給する方法
で対処しえなかった潤滑剤が摺動面全面に行き渡らない
問題および潤滑剤を消費してしまう問題、さらに潤滑剤
を蓄える場所を必要とする問題等を解決するだけでな
く、固体潤滑剤の樹脂やグラファイトで問題であった耐
摩耗性、耐久性を改善するとともに、ケイ素を含むセラ
ミックで問題であったシラノール基と相手摺動材との間
の脱水縮合反応に基因する静摩擦係数の上昇を解決する
ことを目指した。すなわち、本発明は、非潤滑環境下に
おいても、摩擦係数が安定して低いという優れた摺動特
性を有する液体中摺動部材の組合せ及びその選択方法を
提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の液体中摺動部材の組合せは、液体中又は湿
潤雰囲気中において相対的に摺動する2つの部材の組合
せであって;両部材の摺動面の表面硬さが、ブリネル硬
さ又はビッカース硬さで70 Kgf/mm2 以上であり、以
下の式で計算される、両部材の摺動面の液体中での界面
エネルギー(Δγ)が100mJ・m-2以下であることを特
徴とする。 Δγ=2{γL d+γL P+(γA dγB d1/2 +(γA pγB p1/2 −(γA dγL d 1/2 −(γA pγL p1/2 −(γB dγL d1/2 −(γB pγL p1/2 }・・・(1) γL :液体の界面エネルギー γA 、γB :両部材の摺動面表面の界面エネルギー スーパー・スクリプトd:界面エネルギーの分散成分 スーパー・スクリプトp:界面エネルギーの極性成分
【0013】また、本発明の液体中摺動部材の組合せの
選択方法は、液体中又は湿潤雰囲気中において相対的に
摺動する2つの部材の組合せの選択方法であって;両部
材の摺動面の表面硬さが、ブリネル硬さ又はビッカース
硬さで70 Kgf/mm2 以上であり、上記(1) 式で計算さ
れる両部材の摺動面の液体中での界面エネルギー(Δ
γ)が100mJ・m-2以下となるように両部材を選択する
ことを特徴とする。
【0014】なお、上記両部材の摺動面の表面硬さが、
ブリネル硬さ又はビッカース硬さで700 Kgf/mm2
上であることが、一層摩擦係数を低減できるので、より
好ましい。
【0015】
【作用】本発明では、摺動特性の優れた液体中摺動部材
の組合せを選択するに当たって、表面硬さがある程度以
上高いことと、液体中での界面エネルギーが所定値より
も低いことの両点に着目している。表面硬さについて
は、以前から、硬い部材同士の組合せが摺動摩擦を低減
するために好ましいとされていた。しかし、摺動部材同
士の固着し易さをも考慮して部材を選択することが必要
であり、”固着し易さ”を示す指標として”摺動面の液
体中での界面エネルギー”を採用することが妥当である
ことを見いだして本発明を完成するに至った。
【0016】まず、”部材の摺動面の表面硬さ”につい
て説明する。一般的には摩擦係数μは次式で表せる。 μ=τ/Pm ・・・・・・・・・・・・・・・・・(2) 式(2)においてτは凝着部のせん断力であり、摺動材
間にはたらく力に依存する。Pmは柔らかいほうの素材
の流動圧力であり、通常ブリネル硬さHB あるいはビッ
カース硬さHV で近似できる。式(2)から明らかなよ
うに硬さと摩擦力係数は反比例する。本発明では2つの
摺動材表面の硬さのいずれもがブリネル硬さHB あるい
はビッカース硬さHV で70( Kgf/mm2 )以上とする
ことで摩擦係数を小さく保つ。
【0017】次に、”液体中での部材の摺動面の界面エ
ネルギー”について説明する。本発明では、相対運動す
る2つの摺動材表面それぞれの界面エネルギーを制御す
ることにより、摺動材間に作用する引力を低く抑えある
いは斥力とすることとした。化学物質には固有の界面エ
ネルギーがあり、2つの物質を接触させる場合に、接触
面において作用する力は、2つの物質およびそれを取り
囲む環境を構成する物質の界面エネルギーによって決定
される。
【0018】2つの固体A、Bと気相または液相の3相
からなる系を考える。環境が気相Gの場合、2つの固体
の接合にともなう界面エネルギー変化Δ7 は Δγ=γAG+γBG−γAB ・・・・・・・・・・・・・(3) 環境が液相Lの場合のそれは、 Δγ=γAL+γBL−γAB ・・・・・・・・・・・・・(4) となる。ここでγは界面エネルギーであり、サフィック
スAGは固体Aと気相(G)の界面を表し、ALは固体Aと
液相(L)の界面を、さらにABは固相A、Bの界面を表
す。Δγが負の値のときは固体間にはたらく力は斥力と
なる。
【0019】大気中のΔγは、以下の式(5)により、
水中のΔγは、以下の式(6)により計算できる。 Δγ=2{(γA dγB d1/2 +(γA pγB p1/2 } ・・・・・・(5) Δγ=2{γL d+γL P+(γA dγB d1/2 +(γA pγB p1/2 −(γA dγL d 1/2 −(γA pγL p1/2 −(γB dγL d1/2 −(γB pγL p1/2 }・・(6) 式(5)、(6)において、スーパー・スクリプトのd
とpは、それぞれ界面エネルギーγの分散成分と極性成
分を表す。
【0020】なお、気相は液相に比べその活性は無視で
きる(γAG=γA =γA d+γA p)として、上式を導出し
ている。また式(6)におけるγL は、液体が水の場合
は、水の界面エネルギーである。式(5)から明らかな
ように、気相中では固体間にはたらく力は正の値しか取
り得ない。しかしながら式(6)から明らかなように、
水中で固体間にはたらく力は、γA d、γA p、γB dさらに
γB pを選ぶことで、零あるいは負の値にもなりうる。
【0021】表1に、酸化鉄、アルミナ、シリカおよび
水の界面エネルギーの分散成分と極性成分の値を示す。
鉄系の素材を水中で使用すると、その表面は酸化されて
酸化鉄となる。ケイ素を含むセラミックは、水中ではそ
の表面にシリカが形成されている。これらを摺動材の一
方としたとき、いま一方の摺動材の界面エネルギーの分
散成分γd と極性成分γp から決まる摺動材間にはたら
く力を、式(6)と表1の値に基づいて計算すると、図
1、2および3に表された曲線のようになる。
【0022】
【表1】
【0023】すなわち、摺動材の分散成分γd と極性成
分γp を選択することにより、摺動材間にはたらく力を
制御することができる。このときには分散成分の大きさ
がとくに大きく寄与する。例えば、図1は基本となる摺
動材を鉄系の素材とした場合だが、同じ鉄系の素材をい
ま一方の摺動材として選択すると、摺動材間にはたらく
力は1000mJ・m-2を越すが、γp が小さな素材を選択する
と、摺動材間にはたらく力を制御することができ、とく
にγp <40mJ・m-2の場合には、摺動材間にはたらく力を
零あるいは負の値にすることもできる。図2および3か
らアルミナやシリカについてもほぼ同様のことがいえ
る。
【0024】摺動部材表面の界面エネルギーおよび硬さ
を制御する方法は、それぞれの摺動部材を組みあわせた
場合に、低い活面エネルギーとなる物質自身で部材を形
成する方法の他に、金属やプラスチック、セラミックな
ど任意の材料の上に、鍍金法やCVDあるいはPVD
法、ゾルゲル法、照射法により、同様の特性の物質の膜
を成膜する方法が適用できる。
【0025】
【実施例】次に、本発明に係る実施例について説明す
る。第一実施例 摺動材の組み合わせ:アルミナセラミック対ダイヤモン
ドライクカーボンアルミナセラミックは、Al23
有率97wt%、蒿比重3.9、吸収率0%、ヤング率
360GPa、ピッカーズ硬さ1600( Kgf/mm2
の緻密な焼成体を用いた。ダイヤモンドライクカーボン
は、上記アルミナセラミック上に、高周波誘導プラズマ
CVD法により、下地としてのアモルファス炭化ケイ素
(以下、a-SiC と呼ぶ、厚さ750nm)を形成した
後、表面層としてのダイヤモンドライクカーボン(以
下、DLC という、厚さ650nm )の膜を形成したも
のである。膜を2層としたのは剥離強度の向上を目的と
している。
【0026】主要な成膜条件は次のとうりである。成膜
はRF−P−CVD法(高周波誘導プラズマ化学蒸着
法)にて行った。a−SiC層成膜時の原料ガスは、S
iCCl4 及びCH4 であり、基板温度は500℃以
上、RF出力1kWである。DLC層については、原料
ガスがCH4 、基板温度200℃以下、RF出力は1k
Wである。真空度はいずれの場合も、5×10-3〜5×
10-4torrである。
【0027】一方の摺動部材であるとともに、DLC 成膜
の基板としたアルミナセラミックの表面の粗さは、表面
平均粗さRa=0.3μmである。なお、表面粗さはか
かる摺動部材を製品に組み込む際に必要な粗さ範囲であ
ればよい。バルブの弁体の場合には、セラミック表面が
Ra=0.1〜0.2μmであることが好ましく、特に
Ra=0.1〜0.8μmの範囲の表面粗さが好適であ
る。また、成膜の基板もかかる摺動部材を製品に組み込
む際に必要な物性値を備えていればよい。
【0028】DLC の界面エネルギーの分散成分は33.
3mJ・m-2、極性成分は9.1mJ・m-2であった。これらの
値は、2層膜を成膜後、液滴法により界面エネルギーを
測定して求めた。測定に用いた液体は、ヨウ化メチレン
と蒸留水である。試料上に置いた液滴を写真撮影し、接
触角を読取り算出した。前述の式(4)を2つの液体に
適用し、以下の連立方程式によって目的物質のγd 、γ
p を決めた。
【0029】水と非極性液体とを用いて、固体表面エネ
ルギーとその分散成分、極性成分を求める方法は以下の
とおりである。 Youngの式 γSV−γSL=γLVcos Θ・・・・・(7) 液体の付着に伴う仕事は WA =γSV+γLV−γSL ・・・・(8) (7)式を(8)式に代入して WA =γLV(1+cos Θ)・・・・(9)
【0030】ここにForksによれば、 γ=γd +γp (d:分散、p:極性)・・(10) 固体と液体の接触時には以下となる。 γSL=γS +γL −2(γS dγL d1/2 −2(γS pγL p1/2 ・・(11) 上式と組合わせ、(8)式より(12)式となるので、
(13)式となる。 WA =γSV+γLV−γSL=γS +γL −γSL・・・(12) WA =γLV+(1+cos Θ)=2(γS dγL d1/2 +2(γS pγL p1/2 ・・(13)
【0031】ここに2種の液体Liq・1 とLiq・2 を考え
る。もちろん γL1=γL1 d +γL1 p 、 γL2=γL2 d
+γL2 p である。さて、式(13)にLiq・1 を適用、し
かもγL1 p ≒0とすると以下となる。 γLV1 =γL1 d ・・・・・・(14) γL1 d (1+cos Θ1 )=2(γS dγL1 d1/2 ・・・(15) よって γS d=γL1 d (1+cos Θ12 /4・・・・・・(16)
【0032】次に式(13)にLiq・2 を適用する。 γLV2 (1+cos Θ2 )=2(γS dγL2 d1/2 +2(γS pγL p1/2 ・・(17) 整理すると以下となる。 γS P={γLV2 (1+cos Θ2 )−2(γS dγL2 d1/22 /4γL2 p ・・(18) なお、通常使用する2種の液体は以下である。 Liq・1 :コウ化メチレン、γL1 D =40、γL1 P ≒0 Liq・2 :水、γL1 d =22、γL2 P =50
【0033】DLC 表面の硬さは、ビッカース硬さで、7
00〜1800(kgf /mm2 )の範囲であった。硬さは
極微小硬度計により測定した。なお、アルミナの硬さを
同じ測定機で計ったところ、ビッカーズ硬さで1500
〜2500( Kgf/mm2 )であった。なお、通常の材料
では表面エネルギーの低さと高い硬さは両立しない。図
4に示すように、黄銅以上の硬さをもつ材料は、金属ま
たはガラスを含むセラミックだが、これらの表面エネル
ギーは分散成分γd >70、極性成分γp >500であ
る。しかし、DLC のように高い硬度と低い界面エネルギ
ーを両立しうる物質もある。また、セラミックの上に薄
膜で作製する炭素、フッ素、シリコン系材料は、上述の
特性が成立する可能性が大である。
【0034】こうして作製したDLC をアルミナと組み合
わせ摺動試験を行った。試料は摺動部分が内径18mm、
外径21.2mmの同心円となっている厚さ5mmの円筒状
である。これを2つ端面同士を接触させて組み合わせ、
回転型摩擦摩耗試験機により摩擦係数を測定した。試験
は水温20℃の水中で行い、比較のためにアルミナ同士
を組み合わせた試験も行った。
【0035】摩擦係数の荷重依存性を図5に示す。アル
ミナ同士を組み合わせた場合の摩擦係数が0.3〜0.
4の範囲にあるのに対し、DLC とアルミナとを組み合わ
せた場合の摩擦係数は0.10程度となった。また、試
験前後で試料の重量を比較したところ、アルミナ同士を
組み合わせた場合の摩耗率が片側で約2.8×10-13m
2 であったのに対し、DLC とアルミナを組み合わせた場
合、DLC の摩耗率は測定限界(2×10-14m2 )以下、
アルミナの摩耗率はアルミナ同士を組み合わせた場合と
同じく、約2.8×10-13m2 となった。
【0036】前述の摩擦係数の一般式(2)において硬
さの効果だけを取り上げると、図5の試験結果の理由、
すなわちアルミナ同士を組み合わせた場合よりDLC とア
ルミナとを組み合わせた場合の摩擦係数が低くなる理
由、を説明することはできない。後者のほうが摩擦係数
が低くなる理由は、摺動面の凝着力の低下にある。前述
の図2において、水中ではアルミナ同士を組み合わせた
場合の界面エネルギーが500mJ・m-2であるのに対し、
DLC とアルミナの界面エネルギーは負の領域にある。こ
れを式(6)にて計算すると、水中ではアルミナ同士を
組み合わせた場合の界面エネルギーは575mJ・m-2とな
り、DLC とアルミナの界面エネルギーは120mJ・m-2
なる。
【0037】次に、水栓に、実際に本体実施例の摺動部
材を組み込んで行った試験結果を説明する。図6は、水
栓の弁体にアルミナを、弁座に前述の方法でDLC 膜を成
膜した部材を組み込んで、摺動試験を行った際の摺動回
数に対する操作力変化を示すグラフである。この測定を
行った際の条件は、水栓に供給する水の温度15〜30
℃、湯の温度70〜80℃、水の圧力約2Kgf /cm2
湯の圧力約2Kgf /cm2 である。また同じ面粗度に仕上
げたアルミナセラミック焼成体の弁座表面に単にシリコ
ーンオイルを塗布しただけのものを水栓に組み込んだ際
の摺動回数に対する操作力変化も合わせて示す。
【0038】後者(アルミナ同士+シリコーンオイル)
は、摺動が始まって暫くは操作力が安定せず、2万回以
上の摺動回数に達してやっと安定する。しかし、10万
回を過ぎると徐々に操作力が上昇し、ついには操作不能
な大きさまでに達してしまった。これに対し、本発明に
よるセラミックバルブは摺動が始まってすぐに操作力が
低い値で安定するだけでなく、摺動回数が20万回を過
ぎても操作力の上昇が生じることはなかった。この実験
結果は、本発明によって摩擦係数を低下させた。セラミ
ックの摺動部分は、単に長い期間にわたり良好な潤滑性
が確保されるのみならず、摺動開始の段階ですでに安定
した摩擦面が形成されているので、いわゆる「なじみ」
にともなう摩擦係数の不安定状態をも解消できることを
示している。
【0039】第二実施例 摺動材の組み合わせ:ダイヤモンドライクカーボン対ダ
イヤモンドライクカーボン 摺動材の両方をDLC コートを施したアルミナセラミック
とした。CVDの方法、基板としたアルミナセラミック
は第一の実施例と同じである。
【0040】これについても第一の実施例とおなじ方法
で摺動試験を行った。結果を図7に示す。DLC 同士を組
み合わせた場合の摩擦係数も0.1前後となった。式
(6)にて水中でDLC 同士を組み合わせた場合の界面エ
ネルギーを求めると、35mJ・m-2となる。この値は正の
領域にあるが、水中でのアルミナ同士の界面エネルギー
の6%に過ぎず、小さい。
【0041】以上の実施例の他、本発明の考え方からす
れば、アルミナをはじめとするセラミック材料(Al2O
3 、SiC 、Si3N4 ムライト、ジルコニア、) 対 DLC
、フッ素改質DLC 、アモルファスシリコンの組み合わ
せが、水中摺動部材を構成する材料の組み合わせとして
好適と考えられる。
【0042】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
は以下の効果を発揮する。 従来の潤滑剤を蓄える場所を設け連続的に潤滑剤を
供給する方法では、潤滑剤が摺動面全体に行き渡らない
場合や、予定以上の供給が生じ潤滑剤が蓄え場所からも
なくなってしまう場合には潤滑性を維持することができ
ないという問題があったが、本発明ではこれらの問題は
生じることなく、非潤滑環境下においても、摩擦係数が
安定して低いという優れた摺動特性を有する液体中摺動
部材の組合せが得られる。
【0043】 従来の潤滑剤を蓄える場所を設け連続
的に潤滑剤を供給する方法は、バルブにあっては弁座あ
るいは弁体が大きくなりデザインの自由度と外観上で不
利であったが、本発明ではこれらの問題はない。 通常の固体潤滑剤のコーティング層を摺動面に形成
する場合、樹脂やグラファイトを用いると、樹脂は機械
的強度と耐摩耗性がセラミックや金属に大きく劣るた
め、設計の自由度が損なわれ、また機械部品としても寿
命も短くなるが、本発明によればこれらの問題を解決で
きる。
【0044】 炭化ケイ素、窒化ケイ素あるいはサイ
アロンは、金属およびセラミックと組み合わせ使用する
とき、いったん摺動を停止し、所定の時間を経た後、再
び摺動を始めようとすると起動に大きな力が必要なこと
があるが、本発明によればこれらの問題を解決できる。 潤滑剤を供給する方法では、摺動の開始段階で摺動
面の「なじみ」がとれるまで摺動状態が不安定であり、
時として摺動抵抗が急増することがある。しかしなが
ら、本発明によれば、摺動開始の段階ですでに安定した
摩擦面が形成されているので「なじみ」にともなう不安
定状態をも解消できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基本となる一方の摺動部材が鉄系材料のとき
の、水中での界面エネルギー変化Δγを表すグラフであ
る。
【図2】基本となる一方の摺動部材がアルミナのとき
の、水中での界面エネルギー変化Δγを表すグラフであ
る。
【図3】基本となる一方の摺動部材がシリカを含む材料
のときの、水中での界面エネルギー変化Δγを表すグラ
フである。
【図4】各種材料のブリネルおよびビッカース硬さを表
すグラフである。
【図5】アルミナ/DLC組み合わせ時の摩擦係数の荷
重依存性を表すグラフである。
【図6】アルミナ/DLC組み合わせ摺動部材を有する
セラミックバルブの耐久試験結果における操作力の操作
回数依存性を表すグラフである。
【図7】DLC/DLC組み合わせ時の摩擦係数の荷重
依存性を表すグラフである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年4月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図4】
【図6】

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液体中又は湿潤雰囲気中において相対的
    に摺動する2つの部材の組合せであって;両部材の摺動
    面の表面硬さが、ブリネル硬さ又はビッカース硬さで7
    0 Kgf/mm2 以上であり、 以下の式で計算される、両部材の摺動面の液体中での界
    面エネルギー(Δγ)が100mJ・m-2以下であることを
    特徴とする液体中摺動部材の組合せ。 Δγ=2{γL d+γL P+(γA dγB d1/2 +(γ
    A pγB p1/2 −(γA dγL d1/2 −(γA pγL p1/2
    (γB dγL d1/2 −(γB pγL p1/2 } γL :液体の界面エネルギー γA 、γB :両部材の摺動面表面の界面エネルギー スーパー・スクリプトd:界面エネルギーの分散成分 スーパー・スクリプトp:界面エネルギーの極性成分
  2. 【請求項2】 上記両部材の摺動面の表面硬さが、ブリ
    ネル硬さ又はビッカース硬さで700 Kgf/mm2 以上で
    ある請求項1記載の液体中摺動部材の組合せ。
  3. 【請求項3】 液体中又は湿潤雰囲気中において相対的
    に摺動する2つの部材の組合せの選択方法であって;両
    部材の摺動面の表面硬さが、ブリネル硬さ又はビッカー
    ス硬さで70 Kgf/mm2 以上であり、 以下の式で計算される、両部材の摺動面の液体中での界
    面エネルギー(Δγ)が100mJ・m-2以下となるように
    両部材を選択することを特徴とする液体中摺動部材の組
    合せの選択方法。 Δγ=2{γL d+γL P+(γA dγB d1/2 +(γ
    A pγB p1/2 −(γA dγL d1/2 −(γA pγL p1/2
    (γB dγL d1/2 −(γB pγL p1/2 } γL :液体の界面エネルギー γA 、γB :両部材の摺動面表面の界面エネルギー スーパー・スクリプトd:界面エネルギーの分散成分 スーパー・スクリプトp:界面エネルギーの極性成分
  4. 【請求項4】 上記両部材の摺動面の表面硬さが、ブリ
    ネル硬さ又はビッカース硬さで700 Kgf/mm2 以上で
    ある請求項3記載の液体中摺動部材の組合せの選択方
    法。
JP7713995A 1995-03-09 1995-03-09 液体中摺動部材の組合せ及びその選択方法 Pending JPH08247150A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP7713995A JPH08247150A (ja) 1995-03-09 1995-03-09 液体中摺動部材の組合せ及びその選択方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP7713995A JPH08247150A (ja) 1995-03-09 1995-03-09 液体中摺動部材の組合せ及びその選択方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH08247150A true JPH08247150A (ja) 1996-09-24

Family

ID=13625479

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP7713995A Pending JPH08247150A (ja) 1995-03-09 1995-03-09 液体中摺動部材の組合せ及びその選択方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH08247150A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005061426A (ja) * 2003-08-11 2005-03-10 Nissan Motor Co Ltd メカニカルシール及びその製造方法
WO2014126080A1 (ja) * 2013-02-12 2014-08-21 カヤバ工業株式会社 摺動部材
JP2017106585A (ja) * 2015-12-11 2017-06-15 Toto株式会社 水栓装置用セラミック構造体、水栓装置用すべり弁および水栓装置用カートリッジ
WO2023027055A1 (ja) * 2021-08-27 2023-03-02 三友特殊精工株式会社 摺動構造

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005061426A (ja) * 2003-08-11 2005-03-10 Nissan Motor Co Ltd メカニカルシール及びその製造方法
WO2014126080A1 (ja) * 2013-02-12 2014-08-21 カヤバ工業株式会社 摺動部材
JP2014152373A (ja) * 2013-02-12 2014-08-25 Kayaba Ind Co Ltd 摺動部材
JP2017106585A (ja) * 2015-12-11 2017-06-15 Toto株式会社 水栓装置用セラミック構造体、水栓装置用すべり弁および水栓装置用カートリッジ
WO2023027055A1 (ja) * 2021-08-27 2023-03-02 三友特殊精工株式会社 摺動構造

Similar Documents

Publication Publication Date Title
DellaCorte The effect of counterface on the tribological performance of a high temperature solid lubricant composite from 25 to 650 C
JP4751832B2 (ja) シール部品
US20110142384A1 (en) Sliding element having a multiple layer
US20050118426A1 (en) Slidably movable member and method of producing same
JP2008081522A (ja) 摺動部材
JPS61189932A (ja) 滑り面用材料及びその製造方法
WO2017150571A1 (ja) 摺動部材及びピストンリング
Erdemir et al. Solid/liquid lubrication of ceramics at elevated temperatures
JP4732701B2 (ja) プーリ及び湿式ベルト式無段変速機
JPH08247150A (ja) 液体中摺動部材の組合せ及びその選択方法
JP5196495B2 (ja) 摺動用構造部材及びその製造方法
Guo et al. Identifying the optimal interfacial parameter correlated with hydrodynamic lubrication
JPH10292867A (ja) ガスシール装置
JP2008075787A (ja) メカニカルシール
JP3821976B2 (ja) 通電用途向転がり軸受
RU2743353C9 (ru) Коррозионностойкий элемент конструкции
JP3761731B2 (ja) 転がり軸受
JPH03223190A (ja) セラミック製摺動部構造
JPH11351242A (ja) 低粘度液潤滑軸受
EP0165584A2 (en) Sliding contact material
JPH08128541A (ja) ディスクバルブ及びその評価方法
JP3481774B2 (ja) セラミック製摺動装置
JPS6237517A (ja) 摺動部材
US6170988B1 (en) Self-acting air bearing apparatus
JP2008174590A (ja) 摺動部材、バルブリフタ、及び内燃機関の動弁装置

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040727

A02 Decision of refusal

Effective date: 20041122

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02