JPH08246234A

JPH08246234A - 電気植毛用ナイロン６トウの製造方法

Info

Publication number: JPH08246234A
Application number: JP7047285A
Authority: JP
Inventors: Shinji Sano; 眞二佐野; Hiroshi Kamiyama; 弘志上山
Original assignee: Toray Industries Inc
Current assignee: Toray Industries Inc
Priority date: 1995-03-07
Filing date: 1995-03-07
Publication date: 1996-09-24

Abstract

(57)【要約】【構成】溶融紡糸し、冷却固化したナイロン６未延伸
トウを、ガラス転移点以上の温度の温水浴中で熱処理し
た後、延伸することにより電気植毛用ナイロン６トウを
製造する。【効果】ストレート性およびカット性がともに良好と
いう電気植毛用に好適な特性を有する電気植毛用ナイロ
ン６トウを、生産性良くかつ容易に製造することができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、電気植毛用に好適なナ
イロン６トウの製造方法に関するものである。さらに詳
しくは、良好なカット性を有するとともにストレート性
に優れ、カット後、染色時のカール発生が小さい電気植
毛用ナイロン６トウに製造方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】電気植毛は一般的には０．３〜５mm程度
に短くカットされた繊維に電荷を付与し、電極内で飛翔
させ接着剤の塗布された対象物に植毛させる技術で、昭
和３０年代に入り大きく飛躍した。

【０００３】電気植毛に用いられる素材は、繊維状なら
ば殆ど何でも使用できるが、最もポピュラーな素材の１
つとしてナイロン短繊維がある。このナイロン短繊維は
染色性、接着性、立毛特性としての耐磨耗性、及び圧縮
特性に優れている。

【０００４】また、昨今のソフト化ブームにおいては植
毛製品としてもそのタッチが重視され、２デニール以下
の細繊度の分野においては、ナイロン短繊維の中でもよ
りソフトな風合いを得やすいナイロン６短繊維が広く使
用されてきている。

【０００５】そして、このナイロン６短繊維は、溶融紡
糸、冷却固化の後に、濃度１〜５重量％と極めて低濃度
の水系油剤を付与した後、未延伸トウの状態で缶中に一
旦収納し、別工程で延伸する方法によりナイロン６トウ
を製造し、このトウを短くカットすることにより製造さ
れる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、細繊度
のナイロン６トウを短くカットした短繊維を使用した場
合、次の問題点があった。

【０００７】電気植毛用繊維の染色は一般的に、トウ状
繊維を短くカットして短繊維とした後、布袋に入れ染浴
中で移動させながら染色する方法やオーバーマイヤーの
如き被染物を固定し染液を循環させる方法などによって
行われる。しかし、ナイロン６繊維の場合、染色あるい
はその後の乾燥などの工程において熱履歴を受けるとカ
ールが発生するという問題があった。この結果、植毛密
度を上げることが難しく、電気植毛時に植毛斑が生じた
り、また、上端面が不揃いとなり易く、粗悪品のイメー
ジの強い最終製品となって商品価値を低減せしめるとい
うトラブルが生じ易かった。この傾向は特に単糸繊度が
細くなるほど強くなり、２デニール以下になると特に顕
著であった。

【０００８】この問題を回避するためには繊維を製造す
る際の延伸倍率を上げればよいが、逆にカット性が悪化
し、トウをカットする際の刃の寿命すなわち切れ味が著
しく低下することとなり、切れ味を回復させるための再
研磨の回数が増大し生産性低下につながるという問題を
引起す。

【０００９】また、特公昭４８−１７６０７号公報に開
示されているように、延伸後に水分を含む状態でリラッ
クス熱処理する方法もあるが、工程が複雑で生産適用は
困難である。また、この方法でも、カット時の刃寿命を
向上させるために延伸倍率を低下させるとカール状態が
甚だしく悪くなり不満足な製品となる。

【００１０】そこで、本発明は、上述のような従来技術
の問題点を解消し、染色あるいはその後の乾燥などの熱
履歴を受ける工程において生ずるカールを抑制すること
ができ、かつ、カット性が良好で、短くカットする際の
刃の寿命低下を招かず、電気植毛用の短繊維とするのに
好適なナイロン６トウを、生産性よくかつ容易に製造で
きる方法の提供を主な目的とする。

【００１１】以下本発明法について詳細に説明する。

【００１２】本発明法で用いるナイロン６ポリマはナイ
ロン６を主成分とするナイロン６系ポリマ、即ち、｛Ｎ
Ｈ（ＣＨ₂) ₅ＣＯ｝の繰返し単位を９０％以上含有す
るポリマである。このポリマを用いて溶融紡糸しナイロ
ン６繊維を製造する。

【００１３】この溶融紡糸は通常のナイロン６トウの溶
融紡糸と同様に行えばよい。即ち、チップ状のナイロン
６ポリマをエクストルーダやプレッシャメルタ方式の紡
糸機で溶融させて紡糸口金を通して吐出させ繊維状物を
得る。その際の繊維断面形状は特に限定されるものでは
なく、丸断面でも変形断面でも中空断面でもよい。

【００１４】このようにして得られた未延伸トウを、ド
ラムに巻取るか、又は、缶に収納するかの方法により、
一旦引取る。その引取り速度は３００〜２０００ｍ／分
程度であればよい。その際に紡糸油剤を付与する。その
油剤濃度は特に限定するものではないが、コスト面およ
び引取り時のトウ収縮挙動などを考慮すると１０重量％
以下、特に５重量％以下であることが好ましい。

【００１５】引取られた未延伸トウは、その後延伸され
るが、本発明法ではその延伸の前に未延伸トウをガラス
転移点以上の温度の温水浴中で熱処理することが重要で
ある。ナイロン６のガラス転移点が４０〜４５℃である
ことから温水浴温度は４５℃以上であることが好まし
い。この温水浴による熱処理は、紡糸油剤付与及び未延
伸糸引取りの前かつ延伸の前に行われる。

【００１６】この温水浴としては、所定温度に加熱され
た温水も用い得るが、油剤が少量含有された温水液が好
ましく、その油剤濃度は５．０重量％以下であればよ
い。

【００１７】この温水浴中に含有させる油剤成分として
は、水系油剤液とできる成分であれば特に限定されるも
のではない。例えば、高級脂肪酸のカルボン酸塩、高級
アルコールや高級アルキルエーテルの硫酸エステル塩、
アルキルベンゼンスルフォン酸塩、パラフィンスルフォ
ン酸塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルキル
燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付
加物燐酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ベタ
イン型両性界面活性剤、硫酸エステル型両性界面活性剤
等の両性界面活性剤、ポリエチレン型やグリコール型、
多価アルコール型等の非イオン系界面活性剤等が使用さ
れる。この界面活性剤は必要に応じて２種以上を混合し
て用いてもよいし、また、上記以外に、カチオン系界面
活性剤やポリシロキサン系界面活性剤を含有させてもよ
い。

【００１８】温水浴中で熱処理する際の熱処理時間は実
質的に０．５秒以上であればよく、未延伸トウを温水浴
中に浸漬させつつ走行させる手段などにより行えばよ
い。ここで、温水用中での熱処理時間は、トウにガラス
転移点以上の温水が多量に接触した状態にある間のトウ
走行時間を意味するものであり、例えば、トウが温水浴
中を走行し、温水浴から出た後に温水を多量に付着した
状態で走行し、次にニップローラで付着水分を除去され
るという工程の場合は、温水浴中にトウが入ってからニ
ップローラで水分除去されるまでの時間をいう。

【００１９】この温水浴中での熱処理により、延伸・カ
ットしてなる短繊維を染色処理する際のストレート性が
確保できるようになる。その理由は必ずしも明確ではな
いが、紡糸時に水系油剤を付与する際に発生する繊維軸
方向の結晶化斑が延伸前の温水浴での熱処理により低減
されるためと考えられる。

【００２０】しかる後、延伸することによって電気植毛
用ナイロン６トウを製造する。その際の延伸倍率は
〔４．０−Ａ／１００〕倍以下（Ａは引取り時の紡糸速
度（ｍ／分）である）であることが好ましい。延伸倍率
が〔４．０−Ａ／１０００〕倍を越えると、トウを短く
カットする際の刃の寿命の低下に悪影響を与える。

【００２１】さらに、その延伸倍率は延伸して得られる
ナイロン６トウのヤング率が１３ｇ／ｄ以下、特に６〜
１３ｇ／ｄとなるような倍率であることが好ましい。ヤ
ング率は植毛製品の風合いに影響し、１３ｇ／ｄを越え
ると粗硬な風合いの植毛製品となり易く、植毛用として
好ましくない。

【００２２】このナイロン６トウは単糸繊度が２デニー
ル以下と細いことが好ましい。２デニールを越える場合
は、ソフトな風合いの植毛製品を得にくくなるので好ま
しくない。

【００２３】本発明のトウを構成するナイロン６繊維の
光沢は特に限定するものではないが、最終製品の光沢的
風合いを改良するために、二酸化チタン、炭酸カルシウ
ムなどの無機微粒子を繊維中に含んでいてもよい。ただ
し、これら無機微粒子は、カット性に影響するので０．
５重量％以下のように少ないことが好ましく、艶消剤と
しての二酸化チタンの量は０．２〜０．５重量％程度が
好ましい。

【００２４】本発明のトウの製造方法に用いるトウの繊
度は、操業性、生産性、梱包形態の観点から太い方が好
ましいが、通常の電気植毛用トウと同程度であればよ
く、一般的に延伸後のトウ繊度が１０〜１００万デニー
ルであればよい。

【００２５】

【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。

【００２６】なお、各特性値は次の方法により測定され
た。

【００２７】(1) トウ総繊度（ｄ）、単繊維繊度
（ｄ）：ＪＩＳＬ１０１５−７−５−ＩＡの方法
に準じて測定する。

【００２８】(2) 単繊維の強度（ｇ／ｄ）、切断伸度
（％）：ＪＩＳＬ１０１５−７−７−１の方法に
準じて測定する。

【００２９】(3) ヤング率（ｇ／ｄ）：ＪＩＳＬ
１０１５−７−１１の方法に準じて測定する。

【００３０】(4) 沸水処理後の曲率半径（mm）：試料
を１mm長にカットし、“Palatine Fast Black WAN ”１
％ owf. の染液中に、１mm長にカットした試料を約０．
１ｇ入れ、１００℃に加熱しスターラーで撹拌しつつ１
０分間沸水処理する。沸水処理後、濾紙で試料の水を切
り乾燥させ、顕微鏡で８．１２５倍の拡大写真を撮る。
試料の状態は次の方法で測定する。写真上からランダム
にサンプリングした１００本の繊維のカールした状態を
曲率半径（mm）として測定し、平均値を８．１２５で除
し曲率半径（mm）を算出する。

【００３１】(5) カット時の刃寿命（分）：ギロチン
型カッターにより約８００万デニールのトウを刃回転数
２００rpm でカットした際のカット可能時間である。こ
のカット可能時間は短繊維のカットされた部分の融着状
態、カット時のトウの逃げなどから判断する。

【００３２】(6) 植毛製品の品位：植毛密度、植毛
斑、発色性および感触（ソフト感）から、良否を相対的
に評価する。

【００３３】［実施例１］二酸化チタンを０．３５重量
％含有し、９８％硫酸相対粘度ηｒが２．６であるナイ
ロン６チップを溶融させ、２６５℃に加熱した５００孔
の紡糸口金から吐出量２３０ｇ／分で繊維状に溶融吐出
し、冷却固化させた後、油剤濃度が２重量％の水系の紡
糸油剤を付与し、続いて未延伸トウとして紡糸速度１３
００ｍ／分で缶中に引取った。

【００３４】得られた未延伸トウを延伸後の総繊度が４
０万デニールとなるように複数本引き揃えた後、６０℃
の油剤濃度４．０重量％の水系油剤浴中に１．０秒間浸
漬させ、続いて２．３倍に延伸しナイロン６トウを製造
した。

【００３５】得られたトウの物性は表１のとおりであっ
た。このナイロン６トウは、沸水処理後の曲律半径から
３．５mmと大きくストレート性に優れていた。しかも、
カット時の刃寿命が７０分とカット性も良好であった。

【００３６】このトウを平均繊維長１．０mmにカットし
て短繊維とし、通常の方法で染色した後、布帛上に電気
植毛した。得られた植毛製品は植毛密度が高く、発色
性、ソフト性も優れ、品位良好なものであった。

【００３７】［比較例１］延伸前の水系油剤浴の温度を
２０℃とした以外は実施例１と同じ方法でナイロン６ト
ウを製造し、植毛製品とした。得られたトウの沸水処理
後の曲率半径は１．５mmと小さかった。このトウを用い
て、実施例１と同様にカットし染色したパイルは、スト
レート性が悪く、得られた植毛製品の植毛密度は低く、
粗悪な品位であった。

【００３８】［比較例２］延伸前の水系油剤浴の温度を
２０℃とし、かつ、延伸倍率を３．０倍とした以外は、
実施例１と同じ方法でナイロン６トウを製造し、植毛製
品とした。

【００３９】得られたトウの物性は表１のとおりであ
り、カット時の刃寿命が２０分と極端に短かった。しか
も、得られたトウのストレート性が悪く、植毛密度の低
い品位の悪い植毛製品となった。

【００４０】［実施例２］延伸前の水系油剤の温度を４
５℃とし、かつ、延伸倍率を２．４倍とした以外は実施
例１と同じ方法でナイロン６トウを製造し、植毛製品と
した。

【００４１】得られたトウはストレート性もカット性も
ともに良好であり、品位良好な植毛製品が得られた。

【００４２】

【表１】

【００４３】

【発明の効果】本発明法により得られる電気植毛用トウ
は、カット後の染色時や乾燥時におけるストレート性が
良好である。さらに、カットする際のカット性が良好で
あるので、カッターの刃寿命が長く、切れ味を回復させ
るための再研磨回数を減らすことができ生産性が上が
る。またミスカットなどによる不良部分も少なくなる。

【００４４】従って、本発明法による電気植毛用トウを
用いれば、発色性が良くソフトな風合いを有し、しか
も、植毛斑がなく植毛密度が高い高級感のある植毛製品
を得ることができる。

【００４５】また、本発明法によると生産性良くかつ容
易に、高品質の電気植毛用トウを製造することができ
る。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】溶融紡糸し、冷却固化したナイロン６未
延伸トウを、ガラス転移点以上の温度の温水浴中で熱処
理した後、延伸することを特徴とする電気植毛用ナイロ
ン６トウの製造方法。
【請求項２】温水浴中での熱処理時間が、実質的に
０．５秒以上であることを特徴とする請求項１記載の電
気植毛用ナイロン６トウの製造方法。
【請求項３】温水浴中に、油剤が含有されることを特
徴とする請求項１記載の電気植毛用ナイロン６トウの製
造方法。
【請求項４】温水浴が、加熱された油剤濃度５．０重
量％以下の水系油剤液であることを特徴とする請求項１
記載の電気植毛用ナイロン６トウの製造方法。
【請求項５】未延伸トウの引取り速度が、３００〜２
０００ｍ／分であることを特徴とする請求項１記載の電
気植毛用ナイロン６トウの製造方法。
【請求項６】延伸倍率が〔４．０−Ａ／１０００〕倍
以下（Ａは引取り時の紡糸速度（ｍ／分）である）であ
ることを特徴とする請求項１記載の電気植毛用ナイロン
６トウの製造方法。
【請求項７】単糸繊度が２デニール以下、かつ、ヤン
グ率が１３ｇ／ｄ以下となる延伸倍率で延伸することを
特徴とする請求項１記載の電気植毛用ナイロン６トウの
製造方法。