JPH08226446A - 転がり軸受および転がり軸受の潤滑薄膜形成方法 - Google Patents

転がり軸受および転がり軸受の潤滑薄膜形成方法

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JPH08226446A
JPH08226446A JP3079895A JP3079895A JPH08226446A JP H08226446 A JPH08226446 A JP H08226446A JP 3079895 A JP3079895 A JP 3079895A JP 3079895 A JP3079895 A JP 3079895A JP H08226446 A JPH08226446 A JP H08226446A
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豊田  泰
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Abstract

(57)【要約】 【目的】転がり軸受において、発塵の抑制および潤滑性
の向上を図り、長寿命を達成できるようにすること。 【構成】転がり軸受Aの構成要素である内・外輪1,
2、転動体3および保持器4が耐食性材料で形成されて
いるとともに、それらの転動、摺動部位に官能基を有す
る含フッ素重合体からなる潤滑薄膜5が付着されてい
る。つまり、潤滑薄膜5として、従来の固体潤滑剤のコ
ーティング膜のような剥離や欠落の他、摩耗のない流動
性を有するものとしている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、転がり軸受および転が
り軸受の潤滑薄膜形成方法に係り、特に通常のグリース
やオイルの使用ができない真空環境、清浄環境および腐
食環境等で用いるのに好適な転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】前述の環境として、例えば半導体製造装
置内部に配設される搬送系などが挙げられるが、このよ
うな環境では、転がり軸受の潤滑剤としてグリースを用
いていると、グリースの油分が蒸発することにより、潤
滑機能の劣化や使用環境の汚染といった不具合が発生す
る。
【0003】このような場合、従来では、主として、軌
道輪の軌道面、転動体の表面あるいは保持器のポケット
面の少なくともいずれかに、金、銀、鉛、銅などの軟質
金属、カーボンや二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤を
膜状にコーティングすることが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前述の固体
潤滑剤からなるコーティング膜では、このコーティング
膜が転動体との接触により僅かずつ剥がれるなど、発塵
状況がグリース使用時に比べると低レベルになるもの
の、特に清浄環境では不適合となるレベルである。特
に、高荷重条件においては発塵量が増大する。
【0005】また、本願出願人は、バインダーにふっ素
系樹脂を混合した固体潤滑剤を軌道輪や保持器にコーテ
ィングすることを行っており、この場合には、先の従来
例よりも発塵を桁違いに減らせるようになる。しかしな
がら、コーティング膜でも、比較的大きなアキシャル荷
重がかかる状況において、剥離や欠落の他、摩耗による
発塵が著しく増加し、発塵寿命が短くなる。
【0006】しかも、前述のようなコーティング膜の剥
離、欠落が発生すると、軸受構成要素間での潤滑作用が
低下して、金属どうしの接触となるなど凝着しやすくな
る他、軸受構成要素の摩耗が促進されるなど、寿命とい
う点において問題がある。
【0007】また、腐食性ガスがある環境では、前述の
ようにコーティング膜の剥離、欠落箇所の軸受構成要素
が腐食されることになる。
【0008】したがって、本発明の目的は、転がり軸受
において、発塵の抑制および潤滑性の向上を図り、長寿
命を達成できるようにすることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の転がり軸受は、
内・外輪が金属で形成されているとともに、それらの少
なくとも軌道面に、官能基を有する含フッ素重合体から
なる潤滑薄膜が形成されている。
【0010】本発明の転がり軸受は、内・外輪が金属で
形成されているとともに、転動体がセラミックスで形成
されており、少なくとも内・外輪の軌道面に、官能基を
有する含フッ素重合体からなる潤滑薄膜が形成されてい
る。
【0011】なお、前述の薄膜は、0.2μm以下でそ
の近傍に設定するのが好ましい。この場合の薄膜は、パ
ーフルオロポリエーテル(PFPE)あるいはその誘導
体との混合物を希釈溶媒で0.25mass%にまで希
釈した潤滑油により形成することができる。
【0012】本発明の転がり軸受の潤滑薄膜形成方法
は、内・外輪、転動体および保持器を組み立てた転がり
軸受においてそれら各要素の少なくとも転動、摺動部位
に、官能基を有する含フッ素重合体からなる潤滑油を膜
状に付着させる工程と、膜状とした潤滑油を加熱するこ
とにより、それに含まれる混合物を除去する工程とを含
む。
【0013】
【作用】本発明の転がり軸受では、潤滑要素として、従
来の固体潤滑剤のコーティング膜のように剥離、欠落の
他、摩耗が起こらない流動性を有する潤滑薄膜としてい
る。しかも、この潤滑薄膜は、従来のように転がり軸受
内部に潤滑油を封入するといった形態でもないので、そ
れらの外部漏洩の心配もない。
【0014】このような本発明の潤滑薄膜では、比較的
大きなアキシャル荷重がかかる状況でも、各構成要素間
での摺接が金属どうしの無潤滑の接触状態とならず、常
に構成要素の表面全面に途絶えることなく付着する状態
が維持されるから、軸受構成要素それぞれの転動、摺動
が常に潤滑油を介して行われるようになり、特に転がり
要素間での潤滑作用が安定的に維持されるようになる。
【0015】特に、薄膜の膜厚を特定すると、発塵性と
潤滑性との両方に関して優れた結果が得られるようにな
る。この膜厚については、薄膜を形成するベースとなる
潤滑油を特定すれば、容易に設定できるようになる。
【0016】また、本発明の転がり軸受の潤滑薄膜形成
方法では、油膜形成対象部位に対して、官能基を有する
含フッ素重合体からなる潤滑薄膜を発塵性と潤滑性との
両方に優れた膜厚で、良好に形成することが可能とな
る。
【0017】
【実施例】以下、本発明の詳細を図面に示す実施例に基
づいて説明する。図1は本発明の一実施例にかかり、転
がり軸受の上半分の縦断面図である。
【0018】図中、Aは深溝型玉軸受などの転がり軸
受、1は内輪、2は外輪、3は球状の転動体、4はプレ
ス製の波形の保持器、5は潤滑油の薄膜である。
【0019】具体的に、内・外輪1,2、転動体3およ
び保持器4は、耐食性材料により形成されている。この
耐食性材料としては、例えばJIS規格SUS440C
などのマルテンサイト系ステンレス鋼、例えばJIS規
格SUS630などの析出硬化型ステンレス鋼に適当な
硬化熱処理を施した金属材などが挙げられる。また、軽
荷重用途では、例えばJIS規格SUS304などのオ
ーステナイト系ステンレス鋼でもよい。
【0020】なお、内・外輪1,2および転動体3に関
する耐食性材料としては金属材の他にもセラミックス材
とすることができる。このセラミックス材としては、焼
結助剤として、イットリア(Y23)およびアルミナ
(Al23)、その他、適宜、窒化アルミ(AlN)、
酸化チタン(TiO2)、スピネル(MgAl24)を
用いた窒化けい素(Si34)を主体とするものの他、
アルミナ(Al23)や炭化けい素(SiC)、ジルコ
ニア(ZrO2)、窒化アルミ(AlN)などを用いる
ことができる。また、保持器4は、例えばJIS規格S
US304の他、黄銅、チタン材などが好適に用いられ
るが、合成樹脂材料とすることもできる。この合成樹脂
材料としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(以
下、PTFEと略称する)、エチレンテトラフルオロエ
チレン(ETFE)などのふっ素系樹脂やポリエーテル
エーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファ
イド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、
ナイロン46などのエンジニアリングプラスチックスな
どの使用も可能である。これらの樹脂にはガラス繊維な
どの強化繊維が添加されていてもよい。保持器4の形式
としては、波形の他に、冠形、もみ抜き形のものとする
ことができる。
【0021】潤滑薄膜5は、官能基を有する含フッ素重
合体からなり、図示するように、内・外輪1,2、転動
体3および保持器4の転動、摺動部位に被覆形成されて
いる。この含フッ素重合体としては、フルオロポリエー
テル重合体またはポリフルオロアルキル重合体が好まし
い。フルオロポリエーテル重合体は、−CX2X−O−
という一般式(Xは1〜4の整数)で示される単位を主
要構造単位とし、いずれも数平均分子量が1000〜5
0000の重合体とするものが挙げられる。ポリフルオ
ロアルキル重合体は、下記化学式1に示すものが挙げら
れる。また、前述の官能基は、金属に対して親和性の高
いもの(例えばエポキシ基、アミノ基、カルボキシル
基、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基、スルフ
ォン基またはエステル基など)が好ましく、例えば下記
化学式2,3に示すものが挙げられる。このような含フ
ッ素重合体は、単独で用いるか、または2種以上を併用
して用いてもよい。その場合は、より耐摩耗性の優れた
薄膜が得られるように、組み合わされた基が互いに反応
して重合体をより高分子量化させるように配慮するのが
望ましい。
【0022】
【化1】
【0023】
【化2】
【0024】
【化3】
【0025】前述の薄膜5として、より詳しくは、パー
フルオロポリエーテル(PFPE)あるいはその誘導体
との混合物、具体的に例えばモンテカチーニ社の商品名
フォンブリン(FONBLIN)Yスタンダード、フォンブリ
ンエマルジョン(FE20、EM04など)またはフォンブリン
Z誘導体(FONBLIN Z DEAL、FONBLIN Z DIAC、FONBLIN
Z DISOC、FONBLIN Z DOL、FONBLIN Z DOLTX2000、FONBL
IN Z TETRAOLなど)が好適に用いられる。これら例示し
たものは、いずれも濃度が濃く、金属に対する親和性が
きわめて悪いので、そのままでは膜状に付着させること
が困難である。そのため、薄膜5の形成は、下記するよ
うな方法が適用される。なお、前述のフォンブリンZ誘
導体は、真空環境で用いると、真空排気系に対して害を
及ぼす可能性があるので、使用環境を考慮するのが好ま
しい。
【0026】次に、前述の潤滑薄膜5の形成方法の一例
を説明する。
【0027】(a) 内・外輪1,2、転動体3および
保持器4をそれぞれ組み立てて転がり軸受Aの完成状態
としてから、この内・外輪1,2間で転動体3の存在す
る箇所において、用意した潤滑油をスポイドなどにより
数滴、注入し、数回回転させることにより、潤滑油を膜
状に内・外輪1,2、転動体3および保持器4の転動、
摺動部位に被覆させる(供給処理)。この潤滑油の供給
はスプレーより塗布してもよいし、また、潤滑油の貯溜
槽に浸漬してもよい。ここで用意した潤滑油は、例えば
フォンブリンエマルジョンFE20(フォンブリン濃度
20mass%の)を適当な希釈溶媒でフォンブリン濃
度を0.25mass%にまで希釈したものである。な
お、前述の希釈溶媒は、メタノール溶液、アルコール溶
液や水などの揮発性のものとすることができる。
【0028】(b) 前記潤滑油を塗布した転がり軸受
Aの全体を40〜50度で約3分間加熱し、潤滑油に含
むメタノール溶液など溶媒を除去する(乾燥処理)。
【0029】(c) この後、軸受使用環境での雰囲気
温度に応じて、例えば150〜300度で15〜30分
間、加熱する(仕上げ乾燥処理)。
【0030】なお、(a)、(b)は必要に応じて数回
繰り返すようにしてもよく、最終的には、潤滑薄膜5の
膜厚を例えば0.2μm以下に設定する。
【0031】このようにすれば、転がり軸受Aの構成要
素において互いに接触する部位に潤滑薄膜5を好適な膜
厚で形成することができる。そして、前述したように溶
媒を除去しておけば、転がり軸受Aの動作時の不要な発
塵成分がなくなる。また、潤滑薄膜5の膜厚をきわめて
薄く設定しているから、油成分による発塵もほとんどな
くなる。さらに、最終の加熱処理により、使用環境での
発塵をもなくせるようになる。
【0032】そして、上述した潤滑油について、希釈
濃度と転がり軸受における回転初期の発塵量との関係、
薄膜5を形成するときの供給処理および乾燥処理の繰
返回数(ディッピング回数)と転がり軸受における回転
初期の発塵量との関係、誘導体分子の有無と発塵寿命
との関係をそれぞれ調べているので、説明する。
【0033】この試験では、図2に示す装置を用いてい
る。図中、50,50は試験対象となる転がり軸受、5
1は回転軸、52はケーシング、53は磁性流体シー
ル、54は発塵個数計測装置(パーティクルカウンタ
ー)、55は計測結果記録機(レコーダ)、56は軸受
ハウジング、57はアキシャル荷重付加用のコイルバネ
である。
【0034】試験軸受50は、呼び番号SE608(φ
8×φ22×7)で、内・外輪および転動体をJIS規
格SUS440C、保持器(波形タイプ)をJIS規格
SUS304としている。
【0035】試験条件は、下記のとおり。
【0036】・回転速度:200rpm ・荷重 :アキシャル荷重(20N,100N) ・雰囲気 :大気、クリーンベンチ内(クラス10) ・環境温度:室温 ・計測条件:粒子径0.1μm以上、0.3μm以上の
発塵粒子数 試験時間は、回転初期10時間(h)とする。潤滑
油は、フォンブリンエマルジョンFE20のフォンブリ
ン濃度(mass%)を、“5”、“2”、“0.
5”、“0.25”の4段階に希釈溶媒(エチルアルコ
ールまたは水)で希釈したものを用いている。薄膜5の
形成方法は、前述した方法とする。但し、供給処理およ
び乾燥処理を二回繰り返してから、仕上げ乾燥(170
℃、15分間)を施す。
【0037】結果は、下記表1に示すように、0.25
mass%とした場合の発塵量が、他に比べて格段に少
なくなっている。
【0038】
【表1】
【0039】 試験時間は、回転初期10時間(h)
とする。供給処理および乾燥処理の繰り返し回数は、
“4”、“3”、“2”、“1”の4段階としている。
潤滑油は、前述ので述べたもの(フォンブリンエマル
ジョンFE20のフォンブリン濃度を0.25mass
%に希釈したもの)を用いる。
【0040】結果は、下記表2に示すように、繰り返し
回数を2回以下とした場合の発塵量が、他に比べて格段
に少なくなっている。
【0041】
【表2】
【0042】上記での繰り返し回数別の薄膜5それぞ
れの膜厚について、転動体の質量増加量に基づいて推定
した。この場合、薄膜5を得た後で、転がり軸受を分解
し、転動体の質量増加量を測定している。結果を、下記
表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】・膜の比重:1.88g/cm3 ・転動体の表面積:0.495cm2 この結果と、上記,の結果とに鑑み、薄膜5の膜厚
については0.2μm以下とするのが好ましいと言え
る。但し、0.2μm以下と言えどもあまり薄くしすぎ
ると、金属材どうしの摺接部位における潤滑性が低下す
るおそれがあるので、0.2μm以下でその近傍に設定
するのが好ましいと言える。
【0045】 試験時間を発塵寿命とするので、限定
しない。発塵寿命は、二つの軸受50,50からの総発
塵量が1000個/0.1cf以上となる状況を、連続
10回測定した時点までの時間を計測している。なお、
測定は6分間隔とする。
【0046】試験軸受は、三つの実施例品、比較品、従
来品を用いている。実施例品は、フォンブリンエマルジ
ョンFE20を希釈溶媒(エチルアルコールまたは水)
でフォンブリン濃度を0.25mass%にまで希釈し
た潤滑油を用いており、同一仕様のものを三つ用いてい
る。比較品は、フォンブリンZ25を希釈溶媒(ガルデ
ンSV90)でフォンブリン濃度を0.25mass%
にまで希釈した潤滑油を用いている。つまり、実施例品
の潤滑油は誘導体を含み、比較品の潤滑油は誘導体を含
まない。従来品は、内・外輪および保持器全面にコーテ
ィング膜を形成したものとする。このコーティング膜
は、熱硬化性合成樹脂からなるバインダー中にポリテト
ラフルオロエチレン(PTFE)を分散混合したもので
ある。
【0047】結果は、下記表4に示すように、アキシャ
ル荷重を100Nとした場合、実施例品が比較品および
従来品に比べ、約10倍と耐荷重性が大幅に向上してお
り、特に高荷重条件下で用いる場合に優位であると言え
る。ちなみに、従来品で用いたコーティング膜は、他の
一般的な固体潤滑剤のコーティング膜に比べると発塵量
が格段に少ない。このような結果が得られる理由は、本
実施例品である潤滑薄膜5が流動性を有していて、内・
外輪、転動体および保持器の摺接が常に潤滑油を介する
状態となり、従来品である固体潤滑剤のコーティング膜
のような剥離や欠落の他、摩耗が発生しないからと言え
る。
【0048】
【表4】
【0049】なお、実施例品と比較品とにおける回転初
期10時間の発塵量は、下記表5に示すように、ほとん
ど差がなかった。
【0050】
【表5】
【0051】このの結果より、薄膜5を形成する潤滑
油としても、誘導体分子を含むものとするのが特に耐荷
重性において優れることが判った。
【0052】以上〜の各試験における結果が示すよ
うに、薄膜5としては、使用潤滑油の性状、薄膜形成方
法や生成後の膜厚などを、ある程度、特定することが、
発塵性、耐荷重性において重要となることが判るであろ
う。
【0053】ところで、前述した潤滑油(フォンブリン
エマルジョンFE20を希釈したもの)からなる薄膜5
を形成した転がり軸受Aにおいて、内・外輪1,2およ
び転動体3を耐食性金属材料としたものの場合、偏荷重
などが作用したりすると、はなはだしい場合に摺接部位
において腐食が発生する可能性があると考えられる。と
いうのは、偏荷重などが作用したときに、薄膜5の一部
がかきとられてしまうと、内・外輪1,2および転動体
3の表面(金属面上の酸化面)が露出することになっ
て、ここで金属材どうしの凝着摩耗が発生するようにな
るが、このような凝着摩耗が発生すると、内・外輪1,
2および転動体3の表面でも新生面(酸化されていない
純粋の金属面)が露出することになるため、この新生面
が潤滑油の成分中のフッ素と反応し、腐食されることが
起こりうるのである。また、凝着摩耗時の触媒作用によ
りフッ素成分のガスを発生することも起こりうる。これ
に対して、転がり軸受Aにおいて少なくとも転動体3を
セラミックス材とすれば、前述したような凝着摩耗が発
生せずに済むので、前述したような腐食やガス発生とい
った心配がなくなる。したがって、転がり軸受Aの構成
を、少なくとも転動体3についてセラミックス材で形成
したものの方がすべて金属材とするものに比べて優れて
いると言える。
【0054】なお、本発明は上記実施例のみに限定され
ない。例えば、実施例では、軸受形式として深溝型玉軸
受を引用しているが、その他の種類の転がり軸受に本発
明を適用できる。
【0055】
【発明の効果】本発明の転がり軸受では、従来の固体潤
滑剤のコーティング膜のような剥離や欠落の他、摩耗が
ない流動性を有する潤滑薄膜を用いるから、比較的大き
なアキシャル荷重がかかる状況でも、軸受構成要素間で
の摺接が金属どうしの無潤滑の接触状態とならず、常に
潤滑油を介して摺接する状態となり、発塵が格段に少な
くなって潤滑性が格段に向上するようになる。このよう
に、潤滑薄膜からの発塵だけでなく、軸受構成要素から
の発塵を抑制できるとともに、動作安定性の向上に貢献
できる。
【0056】したがって、例えば半導体製造過程のよう
に高精度な加工が要求されるところに本発明の転がり軸
受を用いると、清浄雰囲気を阻害しにくくなるので、半
導体製造品の歩留まり向上に貢献できる。
【0057】特に、薄膜の膜厚を特定すると、発塵性と
潤滑性との両方に関して優れた結果が得られるようにな
る。この膜厚については、薄膜を形成するベースとなる
潤滑油を特定すれば、容易に設定できるようになる。
【0058】また、本発明の転がり軸受の潤滑薄膜形成
方法では、油膜形成対象部位に、官能基を有する含フッ
素重合体からなる潤滑油の薄膜を発塵とならない量でか
つ潤滑作用を妨げない量として良好に付着させることが
できるから、発塵がほとんどなくて、しかも軸受構成要
素間での潤滑作用を安定的に得ることができて、軸受の
長寿命化を達成できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例にかかる転がり軸受の上半分
の縦断面図。
【図2】同軸受の発塵量測定に用いる試験装置の概略
図。
【符号の説明】
A 転がり軸受 1 内輪 2 外輪 3 転動体 4 保持器 5 潤滑薄膜

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内・外輪が金属で形成されているととも
    に、それらの少なくとも軌道面に、官能基を有する含フ
    ッ素重合体からなる潤滑薄膜が形成されている、ことを
    特徴とする転がり軸受。
  2. 【請求項2】 内・外輪が金属で形成されているととも
    に、転動体がセラミックスで形成されており、少なくと
    も内・外輪の軌道面に、官能基を有する含フッ素重合体
    からなる潤滑薄膜が形成されている、ことを特徴とする
    転がり軸受。
  3. 【請求項3】 前記薄膜の膜厚が、0.2μm以下でそ
    の近傍に設定されている、ことを特徴とする請求項1ま
    たは2の転がり軸受。
  4. 【請求項4】 前記薄膜が、パーフルオロポリエーテル
    (PFPE)あるいはその誘導体との混合物を希釈溶媒
    で0.25mass%にまで希釈した潤滑油により形成
    されてなる、ことを特徴とする請求項3の転がり軸受。
  5. 【請求項5】 内・外輪、転動体および保持器を組み立
    てた転がり軸受においてそれら各要素の少なくとも転
    動、摺動部位に、官能基を有する含フッ素重合体からな
    る潤滑油を膜状に付着させる工程と、 膜状とした潤滑油を加熱することにより、それに含まれ
    る混合物を除去する工程と、 を含むことを特徴とする転がり軸受の潤滑薄膜形成方
    法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001082480A (ja) * 1999-09-17 2001-03-27 Koyo Seiko Co Ltd 歯車装置
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