JP3773000B2 - 転がり軸受および転がり軸受の耐食膜形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に、腐食環境等で用いるのに好適な転がり軸受ならびに、転がり軸受の耐食膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば半導体製造装置の特にドライエッチング装置のチャンバ内や、半導体製造関連の洗浄装置の薬液容器内など、腐食性成分が存在するような環境では、転がり軸受の軌道輪や転動体を耐食性に優れたJIS規格SUS440C、SUS630などのステンレス鋼や、セラミックスなどで形成するようにしている。
【0003】
なお、前述のドライエッチング装置のチャンバ内では、腐食性雰囲気の他、高温、真空とされるため、通常のグリースやオイルを用いることができないので、軌道輪の軌道面、転動体の表面あるいは保持器のポケット面の少なくともいずれかに、金、銀、鉛、銅などの軟質金属、あるいはカーボンや二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤を膜状にコーティングして、摺接部分の潤滑を行うようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、腐食性の強い雰囲気では、耐食性に優れた材料であっても、構成要素の露出表面が腐食されやすく、しかも、転がり軸受の場合では、種々な転動、摺動動作などを伴うため、使用経過に伴い該転動、摺動部位が腐食されやすくなる。なお、転動、摺動部位に潤滑膜を形成しているが、この潤滑膜についても剥離や欠落の他、摩耗による発塵が著しく増加するため、それらによる軸受構成要素の保護作用が極めて短いことが指摘される。
【0005】
このことから、本願出願人は、転がり軸受の全構成要素の表面に、バインダーにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)などのふっ素系樹脂を混合した固体潤滑剤を、耐食膜を兼用させる意味で、コーティングすることを考えている。しかしながら、このようなコーティング膜は、発塵が少なくて潤滑性に優れているものの、微視的にポーラスであるために、使用経過に伴い腐食性成分が浸透することがある。
【0006】
したがって、本発明は、転がり軸受において、耐腐食性の向上を図り、長寿命を達成できるようにすることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の転がり軸受は、その構成要素の露出表面に、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物の固体状耐食膜が形成されている。
【0008】
なお、前述の固体状耐食膜は、分子間が結合した3次元の網状構造を有するものとするのが好ましい。また、固体状耐食膜は、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない流動可能な含ふっ素重合体を分散添加するのが好ましい。さらに、この末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない流動可能な含ふっ素重合体としては官能基を有していないもの、例えば官能基なしのパーフルオロポリエーテルなどの含ふっ素重合体とするのが好ましい。
【0009】
本発明の第1の転がり軸受の耐食膜形成方法は、官能基としてイソシアネート基を有する含ふっ素重合体を溶媒中に希釈してなる溶液を用いて、軸受構成要素の露出表面に液状膜を付着させる工程と、前記付着した液状膜を硬化させることにより、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物の固体状耐食膜を形成する工程とを含む。
【0011】
本発明の第2の転がり軸受の耐食膜形成方法は、官能基としてイソシアネート基を有する含ふっ素重合体を溶媒中に希釈してなる溶液に、官能基を有しない含ふっ素重合体を加えた溶液を用いて、軸受構成要素の露出表面に液状膜を付着させる工程と、前記付着した液状膜を部分的に硬化させることにより、官能基を有しない含ふっ素重合体を流動性を有したまま分散させた、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物の固体状耐食膜を形成する工程とを含む。
【0012】
このような本発明では、分子間が密に詰まった均質な構造の固体状耐食膜を用いているから、この固体状耐食膜を腐食性成分が浸透しにくくなる。つまり、本発明の転がり軸受を腐食性雰囲気に配置した状況において、転がり軸受の固体状耐食膜で覆われている各構成要素の露出表面が腐食性雰囲気に直接触れずに済むようになる。
【0013】
しかも、該固体状耐食膜は、従来例のコーティング膜に比べて潤滑性、耐摩耗性が格段に優れているから、転がり軸受の各構成要素間の転動、摺動動作を長期にわたって安定化するとともに、使用環境の清浄化を図ることができる。また、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物の固体膜に、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない含ふっ素重合体を流動可能な状態で分散添加している場合では、この末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない流動可能な含ふっ素重合体が膜表面から滲み出て潤滑作用に寄与する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の詳細を図1ないし図7に示す実施例に基づいて説明する。
【0015】
図1ないし図7は本発明の一実施例にかかり、図1は、転がり軸受の上半分の縦断面図、図2は、図1の転がり軸受に形成した固体状耐食膜の構造を模式的に表した構造図、図3は、固体状耐食膜の硬化前の状態での性状分析結果を示すグラフ、図4は、固体状耐食膜の硬化後の状態での性状分析結果を示すグラフ、図5は、同軸受の耐食試験に関する試験結果を示すグラフ、図6は、大気環境で用いる試験装置の概略図、図7は、真空環境で用いる試験装置の概略図である。
【0016】
図中、Aは深溝型玉軸受などの転がり軸受、1は内輪、2は外輪、3は玉からなる転動体、4はプレス製の波形の保持器、5は末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物の固体状耐食膜である。
【0017】
内・外輪1,2、転動体3および保持器4は、耐食性材料により形成される。この耐食性材料としては、例えばJIS規格SUS440Cなどのマルテンサイト系ステンレス鋼、例えばJIS規格SUS630などの析出硬化型ステンレス鋼に適当な硬化処理を施した金属材などが挙げられる。
【0018】
なお、内・外輪1,2および転動体3に関する耐食性材料としては金属材の他にもセラミックス材とすることができる。このセラミックス材としては、焼結助剤として、イットリア(Y2O3)およびアルミナ(Al2O3)、その他、適宜、窒化アルミ(AlN)、酸化チタン(TiO2)、スピネル(MgAl2O4)を用いた窒化けい素(Si3N4)を主体とするものの他、アルミナ(Al2O3)や炭化けい素(SiC)、ジルコニア(ZrO2)、窒化アルミ(AlN)などを用いることができる。また、保持器4は、JIS規格SUS304などのステンレス鋼、黄銅、チタン材などが好適に用いられるが、合成樹脂材料とすることもできる。この合成樹脂材料としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略称する)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)などのふっ素系樹脂やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ナイロン46などのエンジニアリングプラスチックスなどの使用も可能である。これらの樹脂にはガラス繊維などの強化繊維が添加されていてもよい。保持器4の形式としては、波形の他に、冠形、もみ抜き形のものとすることができる。
【0019】
そして、内・外輪1,2、転動体3および保持器4の表面全面には、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物の固体状耐食膜5が形成されている。
【0020】
末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物の固体状耐食膜5は、−CXF2X−O−という一般式(Xは1〜4の整数)で示される単位を主要構造単位とし、いずれも平均分子量が数百万以上で硬化反応により分子間が結合した3次元の網状構造を有している。3次元の網状構造とは、化学構造上の表現であって、膜の断面が網状になっているのではなく、分子間が網状のように連続してつながって密に詰まった均質な構造になっていることを意味している。このような化合物としては、下記化学式1に示すような末端がイソシアネートの官能基付き含ふっ素重合体を用いて、化学構造を変化させたものとすることができる。前述の末端がイソシアネートの官能基付き含ふっ素重合体としては、パーフルオロポリエーテル(PFPE)の誘導体、具体的に例えばモンテカチーニ社の商品名フォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DISOCなど)が好適に用いられる。
【0021】
【化1】
【0022】
次に、前述の固体状耐食膜5の形成方法の一例を説明する。
【0023】
(a) 末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物の固体状耐食膜5を得るための溶液を用意し、この溶液中に内・外輪1,2、転動体3および保持器4をそれぞれ個別に浸漬するか、あるいはそれらを組み立てた完成状態の転がり軸受Aを浸漬して数回回転させることにより、内・外輪1,2、転動体3および保持器4の表面全面に液状膜を付着させる(付着処理)。ここで用意する溶液は、末端がイソシアネートの官能基付き含ふっ素重合体〔フォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DISOC)〕を希釈溶媒(ふっ素系溶剤SV90D)で含ふっ素重合体の濃度を1mass%にまで希釈したものとする。
【0024】
(b) 液状膜を付着した転がり軸受Aの全体を、40〜50℃で約1分間加熱し、液状膜に含む溶媒を除去する(乾燥処理)。この時点では、液状膜のままであり、流動性を有している。
【0025】
(c) この後、例えば100〜200℃で20時間、加熱する(硬化処理)。これにより、液状膜の化学構造が変化することにより硬化反応して、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物の固体状耐食膜5が得られる。ちなみに、この硬化処理では、液状膜に存在している官能基付き含ふっ素重合体の個々について、下記化学式2〜5に示すような4種の硬化反応でもって末端のイソシアネート(NCO)が消失し、各官能基付き含ふっ素重合体が互いに結合することにより3次元の網状構造となる。この結合は、化学式2,3に示すような硬化反応でもって、図2(a)に模式的に示すように直線的に架橋するとともに、化学式4,5に示すような硬化反応でもって、図2(b)に模式的に示すように3次元方向で架橋する。なお、図2では、下記化学式6に示すように、上記化学式1を簡略化して模式的に表している。
【0026】
【化2】
【0027】
【化3】
【0028】
【化4】
【0029】
【化5】
【0030】
【化6】
【0031】
このようにすれば、転がり軸受Aの構成要素において互いに接触する部位に、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物の固体状耐食膜5を好適な膜厚で形成することができる。なお、(a)、(b)は必要に応じて数回繰り返すようにしてもよく、最終的には、用途に応じて、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物の固体膜5の膜厚を例えば0.05〜5μmの範囲で適宜に設定することができる。
【0032】
ここで、(a)で用意した溶液を濃縮乾燥しただけの状態(流動性がある状態)と、(a)で用意した溶液をステンレス鋼板などの試料に付着して硬化した状態とについて、その性状を分析したので説明する。
【0033】
前者は、FT−IR法(フーリエ変換−赤外分光、液膜法)で分析している。その結果は、図3のグラフに示すように、ふっ素系のピーク以外にNH(3300cm-1)、N=C=O(2279cm-1)、NHC=O(1712cm-1,1546cm-1)、ベンゼン(1600cm-1)などのピークが見られ、ベンゼン環、NHC=O結合、イソシアネートが官能基として存在していることが確認できる。ここでは、薄膜と厚膜との場合についてそれぞれ調べているが、膜厚に関係なく分析が行えた。後者は、FT−IR法(フーリエ変換−赤外分光、高感度反射法)で分析している。その結果は、図4のグラフに示すように、ベンゼン環やNHC=O結合のピークが見られるが、イソシアネートのピークが見られない。つまり、これらの結果に基づき、上記化学式2〜5に示す硬化反応による官能基の化学構造変化が確認される。
【0034】
以上説明した固体状耐食膜5は、非常に緻密な3次元の網状構造をもって、被覆対象上に緻密に被覆されているから、この固体状耐食膜5を腐食性成分が浸透しにくくなる。つまり、この転がり軸受Aを腐食性雰囲気に配置した状況において、転がり軸受Aの固体状耐食膜5で覆われている各構成要素が腐食性雰囲気に直接触れずに済むようになる。しかも、固体状耐食膜5は、転がり軸受Aの各構成要素間の転動、摺動時において、摩擦抵抗が小さくて剥離や摩耗が発生しにくいなど、潤滑性、発塵性も優れているので、該転動、摺動動作を長期にわたって安定化するとともに、使用環境の清浄化を図ることができる。
【0035】
ここで、耐食試験を行ったので、説明する。試験は、実施例、比較例1,2について行っている。実施例は、全構成要素に固体状耐食膜5を形成した転がり軸受A、比較例1は全構成要素に下記する被膜をコーティングした転がり軸受、比較例2は被膜を形成していない転がり軸受である。
【0036】
比較例1の被膜は、熱硬化性合成樹脂からなるバインダー中にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を分散混合したものである。実施例での固体状耐食膜5の膜厚は1μmに、また、比較例1での被膜の膜厚は4μmに設定している。
【0037】
試験に用いた転がり軸受Aは、実施例、比較例のいずれも、呼び番号#608(φ8×φ22×7)とし、内輪1、外輪2、転動体3および保持器4をJIS規格SUS440Cとしている。
【0038】
試験は、腐食性ガス雰囲気にした密封容器内に所要時間放置し、試験前後での転がり軸受Aの重量差を質量減少量として測定している。なお、腐食性ガスを飽和状態のHBrとし、密封容器内を大気圧とし、雰囲気温度を室温としている。試験後は、純水中に浸漬して、超音波洗浄してから、重量測定を行う。
【0039】
結果としては、図5のグラフに示すように、8時間経過時点、24時点経過時点、48時間経過時点のいずれにおいても、実施例のものが比較例1,2に比べて優れていた。
【0040】
また、上述した固体状耐食膜5についての発塵寿命、トルク寿命を調べているので、説明する。試験は、上記実施例と比較例1とについて行っており、試験に用いる軸受Aも上記耐食試験と同じものとしている。
【0041】
まず、大気環境での試験には、図6に示す装置を、また、真空環境での試験には、図7に示す装置を用いている。図中、Aは試験軸受、51は回転軸、52はケーシング、53は磁性流体シール、54は発塵個数計測装置(パーティクルカウンター)、55は計測結果記録機(レコーダ)、56は軸受ハウジング、57はアキシャル荷重付加用のコイルバネである。
【0042】
試験条件は、下記のとおり。
【0043】
▲1▼ 発塵寿命試験では、雰囲気を大気、環境温度を室温、アキシャル荷重を100Nとしている。発塵寿命試験では、総発塵量が1000個/0.1cf以上となる状況を、連続10回測定した時点までの時間を計測している。なお、測定は10分間隔とする。
【0044】
結果としては、比較例1で4時間、実施例で6時間となり、実施例のほうが比較例に比べて優れる。つまり、実施例の固体状耐食膜5では、超高分子化されていて、結合が強固であるから、転がり軸受の各構成要素間での転動、摺動時において、剥離や摩耗が発生しにくくなるのである。
【0045】
▲2▼ トルク寿命試験では、雰囲気を真空、環境温度を室温とし、アキシャル荷重を25N、50Nとしている。実施例では、600時間で打ち切っているが、アキシャル荷重25Nでトルク4.5〜6N・m、アキシャル荷重50Nで7.5〜9N・mと軽減できたが、比較例1では、アキシャル荷重25Nでトルク8〜10N・m、アキシャル荷重50Nでトルク12〜15N・mとなる。このように、実施例は比較例1に比べてトルクを約3/4と軽減できるようになる。
【0046】
また、雰囲気を真空、環境温度を高温(200℃)とし、アキシャル荷重を50Nとした場合、比較例1だと10時間でトルクが著しく大きくなったが、実施例だと、60時間を越えても何の問題もなく、現在も継続中である。このように、トルク寿命は、環境温度の高低に関係なく、比較例に比べて格段に優れた結果となった。
【0047】
このように、固体状耐食膜5は、耐腐食性だけでなく、潤滑性、発塵性も優れていることが判る。
【0048】
ところで、本発明の他の実施例として、上記実施例で説明した、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物の固体状耐食膜5について、分子間が結合した3次元の網状構造中に、フルオロポリエーテルなどの、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない含ふっ素重合体を流動可能に分散添加した構造とすることもできる。この場合、具体的に、上記実施例での形成方法の(a)の付着処理において、用意する溶液を、末端がイソシアネートの官能基付き含ふっ素重合体〔例えば商品名フォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DISOCなど)〕と、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない含ふっ素化合物として官能基なし含ふっ素重合体〔例えば商品名フォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z-60など)〕とを所定の割合で混合したものとすればよい。この場合では、(c)の硬化処理において、官能基なし含ふっ素重合体が、官能基付き含ふっ素重合体と結合しないので、これが、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物の固体状耐食膜5の内部において流動可能となり、膜表面から滲み出るなどして潤滑作用を発揮することになる。
【0052】
なお、本発明は上記実施例のみに限定されるものではなく、種々な応用や変形が考えられる。
【0053】
(1) 上記実施例では、軸受形式として深溝型玉軸受を引用しているが、その他の種類の転がり軸受に本発明を適用できる。また、保持器を省略した転がり軸受に本発明を適用することもできる。
【0054】
(2) 上記実施例において(c)の硬化処理については、加熱に代えて、紫外線、赤外線、γ線、電子線などの電磁波(光)のエネルギーを利用することができる。
【0055】
(3) 上記実施例において(b)の乾燥処理は、省略してもよい。
【0056】
(4) 上記実施例では、固体状耐食膜5を内・外輪1,2、転動体3および保持器4のすべてに形成しているが、内・外輪1,2および転動体3だけに形成することができる。
【0057】
【発明の効果】
本発明の転がり軸受では、非常に緻密な末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物からなる固体状耐食膜を用いるから、この固体状耐食膜から腐食性成分が浸透して転がり軸受の各構成要素に触れるのを効果的に阻止することができて、各構成要素の耐腐食性を向上できるようになる。
【0058】
しかも、該固体状耐食膜は、転がり軸受の各構成要素間の転動、摺動時において、摩擦抵抗が小さくて剥離や摩耗が発生しにくくなるなど、潤滑性、発塵性も優れているので、該転動、摺動動作を長期にわたって安定化するとともに、使用環境の清浄化を図ることができる。また、前記固体状耐食膜に、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない含ふっ素重合体を流動可能な状態で分散添加している場合では、この末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない流動可能な含ふっ素重合体が膜表面から滲み出て潤滑作用に寄与するので、より一層の動作安定化に貢献できる。
【0059】
このように、本発明の転がり軸受は、例えば半導体製造装置の特にドライエッチング装置のチャンバ内や、半導体製造関連の洗浄装置の薬液容器内など、腐食性成分を用いる環境において好適に使用できるようになる。しかも、耐腐食性だけでなく、潤滑性、発塵性に優れているから、腐食性雰囲気の他に、高温、真空などの条件が加えられても、好適に使用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例にかかる転がり軸受の上半分の縦断面図
【図2】図1の転がり軸受に形成した固体状耐食膜の構造を模式的に表した構造図
【図3】固体状耐食膜の硬化前の状態での性状分析結果を示すグラフ
【図4】固体状耐食膜の硬化後の状態での性状分析結果を示すグラフ
【図5】同軸受の耐食試験に関する試験結果を示すグラフ
【図6】大気環境で用いる試験装置の概略図
【図7】真空環境で用いる試験装置の概略図
【符号の説明】
A 転がり軸受
1 内輪
2 外輪
3 転動体
4 保持器
5 固体状耐食膜
Claims (6)
- 転がり軸受の構成要素の露出表面に、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物の固体状耐食膜が形成されている、ことを特徴とする転がり軸受。
- 前記固体状耐食膜は、分子間が結合した3次元の網状構造を有している、請求項1に記載の転がり軸受。
- 前記固体状耐食膜は、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない流動可能な含ふっ素重合体が分散添加されている、請求項1または2に記載の転がり軸受。
- 前記末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない流動可能な含ふっ素重合体が官能基を有していない、請求項3に記載の転がり軸受。
- 官能基としてイソシアネート基を有する含ふっ素重合体を溶媒中に希釈してなる溶液を用いて、軸受構成要素の露出表面に液状膜を付着させる工程と、
前記付着した液状膜を硬化させることにより、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物の固体状耐食膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする転がり軸受の耐食膜形成方法。 - 官能基としてイソシアネート基を有する含ふっ素重合体を溶媒中に希釈してなる溶液に、官能基を有しない含ふっ素重合体を加えた溶液を用いて、軸受構成要素の露出表面に液状膜を付着させる工程と、
前記付着した液状膜を部分的に硬化させることにより、官能基を有しない含ふっ素重合体を流動性を有したまま分散させた、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物の固体状耐食膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする転がり軸受の耐食膜形成方法。
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