JPH08219174A - 変速機用同期リングとその製造方法 - Google Patents

変速機用同期リングとその製造方法

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JPH08219174A
JPH08219174A JP2399895A JP2399895A JPH08219174A JP H08219174 A JPH08219174 A JP H08219174A JP 2399895 A JP2399895 A JP 2399895A JP 2399895 A JP2399895 A JP 2399895A JP H08219174 A JPH08219174 A JP H08219174A
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JP
Japan
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copper
powder
copper alloy
ring
based sintered
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Withdrawn
Application number
JP2399895A
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English (en)
Inventor
Katsuyoshi Kondo
勝義 近藤
由重 ▲高▼ノ
Yoshie Kouno
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Publication date
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Publication of JPH08219174A publication Critical patent/JPH08219174A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

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Classifications

    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16DCOUPLINGS FOR TRANSMITTING ROTATION; CLUTCHES; BRAKES
    • F16D23/00Details of mechanically-actuated clutches not specific for one distinct type
    • F16D23/02Arrangements for synchronisation, also for power-operated clutches
    • F16D23/025Synchro rings

Abstract

(57)【要約】 【目的】 硫黄を含有する潤滑油中で硫化腐食を生じる
ことなく、同期時に0.1を越える安定した摩擦係数を
維持でき、しかも優れた機械的特性を有する変速機用の
2層構造同期リングを経済的に提供する。 【構成】 2層構造同期リングは、鉄系焼結合金のリン
グ本体(11)の内周面上に形成された銅系焼結合金の
テーパーコーン部(13)を含み、鉄系焼結合金は40
0MPa以上の0.2%引張り耐力と80以上のロック
ウェルB硬度を有し、銅系焼結合金は旧複合銅合金粉末
の銅合金素地内に硬質粒子が均一に分散された組織を有
し、テーパーコーン部の摩擦面は潤滑油中で鋼材の相手
テーパーコーン部と同期したときに0.2以上の摩擦係
数を有することを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動車などのMT(マニ
ュアルトランスミッション)に用いられる変速機用同期
リング(シンクロナイザリング)とその製造方法に関
し、特に、銅系焼結合金のリング内周部と鉄系焼結合金
のリング外周部とを含む2層構造同期リングにおける耐
硫化腐食性,耐摩耗性,耐焼付性,および潤滑油中にお
ける摩擦特性の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、高性能化が進められている自動車
用変速機においては高トルクが負荷されるので、その変
速機に使用される部品の材料の改善や設計の見直しが行
なわれている。特に、MTにおいては、シンクロ容量を
向上させるためにダブルタイプやトリプルタイプのよう
なマルチタイプのシンクロナイザリングが採用されてい
る。しかし、マルチタイプの同期リングでは、部品点数
が多くかつ機構が複雑となるので、小型化や軽量化の要
望を満たすことが困難である。
【0003】そこで、シングルタイプの同期リングにお
いて、その内周のテーパーコーン部の摩擦係数μを向上
させてシンクロ容量を改善することによって、マルチタ
イプと同等の性能を実現させる設計が検討されている。
たとえば、溶射材,ペーパー材,樹脂材などの摩擦摺動
部材のライナーを内周部に張付けた同期リングが提案さ
れている。その一例として、特公平6−79835の
「シンクロナイザ・リングの製造方法」は樹脂で含浸さ
れたペーパー材の使用を開示している。また、そのよう
なライナーを使用せずに、鉄系,Al−Si系,アルミ
ニウム青銅系,高力黄銅系の合金の母材中に硬質粒子を
添加して摩擦係数を向上させる方法も知られている。こ
のような硬質粒子を含む合金の例は、特開平1−252
744の「Cu系焼結合金製変速機用同期リング」や特
開平5−331504の「摩擦摺動部材」などにおいて
開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のシング
ルタイプの変速機用同期リングにおいては、以下のよう
な課題(1)〜(5)が存在している。
【0005】(1) 同期リングの内周テーパーコーン
部の摩擦面が潤滑油中において相手鋼材のテーパーコー
ン部に対して摺動するときに0.2を超える摩擦係数μ
を有しないので、マルチタイプの同期リングと同等の特
性をシングルタイプの同期リングで実現させることは困
難である。
【0006】(2) 非常に厳しい使用条件下において
は焼付きや磨耗損傷などを生じ、長期間の使用では摩耗
量が増大したり相手材を攻撃したりするという問題があ
る。
【0007】(3) 摩擦摺動部材として銅系合金が用
いられる場合、潤滑油中に含有されている極圧添加剤で
ある硫黄による硫化腐食が生じ、耐久性が損われる。
【0008】(4) 摩擦材として焼結合金を用いる場
合、摩擦係数を向上させるために添加する硬質粒子は単
純に母合金粉末と混合されて成形と焼結が行なわれるの
で、ミクロ的に見れば硬質粒子は焼結後においても母合
金と反応層を形成しておらず、母合金の旧粉末粒界(特
に粒界の3重点)との間に隙間を有した状態で存在して
いる。したがって、このような焼結合金の摩擦材におい
ては、摺動時に硬質粒子が旧粉末粒界から脱落して摩耗
粉となり、相手材や摩擦材自身を攻撃することによって
焼付きや摩擦損傷を生じるという問題がある。
【0009】(5) 高いμ値を得るために同期リング
の内周テーパーコーン部にペーパーや樹脂からなる摩擦
摺動材のライナーを使用する場合には耐久性に欠けると
いう問題を生じ、また溶射やメッキなどの表面処理を施
す場合には同期リングのコストアップを生じて経済性の
面で問題を生じる。
【0010】以上のような先行技術における課題に鑑
み、本発明は、極圧添加剤の成分である硫黄を含有する
オイル中においても優れた耐硫化腐食性を有し、また、
オイル中において優れた耐摩耗性と耐焼付き性を有する
とともに、先行技術における約0.1程度の摩擦係数を
超える高い摩擦係数を安定して維持し得る銅系焼結摩擦
部材を含む変速機用同期リングとその製造方法を提供す
ることを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明による変速機用同
期リングは、鉄系焼結合金のリング本体と、そのリング
本体の内周面上に形成された銅系焼結合金のテーパーコ
ーン部とを含み、鉄系焼結合金は400MPa以上の
0.2%引張耐力と80以上のロックウェルB硬度を有
し、銅系焼結合金は旧複合銅合金粉末の銅合金素地内に
硬質粒子が均一に分散された組織を有し、銅系焼結合金
のテーパーコーン部の摩擦面は潤滑油中で鋼材の相手テ
ーパーコーン部と同期したときに0.2以上の摩擦係数
を有していることを特徴としている。
【0012】硬質粒子は、30μm以下の最大粒径と1
5μm以下の平均粒径を有していることが好ましい。
【0013】銅系焼結合金は、硬質粒子として、10〜
50重量%の範囲内で鉄系金属間化合物粒子,Mo粒子
およびNi基粒子の少なくとも一種を含むことが好まし
い。
【0014】鉄系金属間化合物粒子としては、FeM
o,FeCr,FeTi,FeW,およびFeBから選
択された少なくとも1つを含み得る。
【0015】Ni基粒子は400以上のマイクロビッカ
ース硬度を有することが望まれる。
【0016】銅合金素地は、好ましくは5〜40重量%
の範囲内でZnとNiの少なくとも一方を含み、優れた
耐硫化腐食性を有している。
【0017】銅合金素地は、好ましくは3〜20重量%
のSnをさらに含み得る。銅合金素地は、好ましくは、
1〜5重量%のSi,0.1〜5重量%のAl,および
0.5〜3重量%のPbのうちの少なくとも1つをさら
に含み得る。
【0018】銅合金素地は、好ましくは5重量%以下の
範囲内で黒鉛,MoS2 ,CaF,WS2 ,およびBN
のうちの少なくとも1つの固体潤滑材をさらに含み得
る。
【0019】本発明による変速機用同期リングの製造方
法では、粒子分散型銅合金粉末の調製においては、好ま
しくは、銅合金粉末と硬質粒子を含む混合粉末が調合さ
れ、混合粉末に機械的合金化法(メカニカルアロイング
法),機械的混合法(メカニカルクライディング法),
および造粒法のうち少なくとも1つの混合粉砕処理を施
すことによって、硬質粒子は30μm以下の最大粒径と
15μm以下の平均粒径を有するように粉砕されるとと
もに銅合金粉末素地内に分散させられる。
【0020】複合銅合金粉末は70%以上の真密度比を
有する圧粉体に成形され、非酸化性雰囲気,還元性雰囲
気および不活性ガス雰囲気のいずれかの雰囲気中でその
圧粉体を600℃以上で銅合金の溶融開始温度以下の温
度で15分間以上焼結することによって銅系焼結合金を
得ることが望まれる。
【0021】銅系焼結合金は、さらに熱間鍛造と熱間押
出の少なくとも1つの熱間塑性加工によって機械的特性
が向上させられてもよい。
【0022】銅系焼結合金はテーパーコーン部に整形さ
れ、そのテーパーコーン部を鉄系焼結合金のリング本体
の内周に圧入し、非酸化性雰囲気,還元性雰囲気および
不活性ガス雰囲気のいずれかの雰囲気中において700
℃以上でかつ銅合金素地の溶融開始温度以下の温度でリ
ング本体とテーパーコーン部とを15分間以上拡散接合
させることが好ましい。
【0023】概略円筒状の空孔を有する金型を準備し、
その円筒状空孔の内周部と外周部にそれぞれ複合銅合金
粉末と鉄系粉末を供給して2層粉体を形成し、その2層
粉体に加圧して2層圧粉成形体を形成し、非酸化性雰囲
気,還元性雰囲気および不活性ガス雰囲気のいずれかの
雰囲気中において1050℃以上でかつ銅合金素地の溶
融開始温度以下の温度で15分間以上その2層圧粉成形
体を焼結してもよい。
【0024】金型は円筒状空孔内を摺動する下パンチを
含み、下パンチは分割された内周部分下パンチと外周部
分下パンチとを含み、内周部分下パンチを下げて外周部
分下パンチを上げた状態で円筒状空孔の内周部に複合銅
合金粉末を供給して第1層目の粉体を形成し、次に外周
部分下パンチを下げた状態で円筒状空孔の外周部に鉄系
粉末を供給して第2層目の粉体を形成することができ
る。
【0025】
【作用】本発明による変速機用同期リングは、リング本
体として鉄系焼結合金のリング外周部を含んでいるの
で、実際のMTの同期時の応力に耐え得る高強度特性を
備えている。その同期リングはまた、旧複合銅合金粉末
素地内に硬質粒子が均一に分散された組織を有する銅系
焼結合金のリング内周部をテーパーコーン部として含ん
でいるので、テーパーコーン部の摩擦面で0.2以上の
摩擦係数を生じ得る。したがって、本発明による2層構
造同期リングをMT装置に用いることにより、部品数が
多くて複雑な機構を有するマルチタイプの同期リングか
ら単純な構造で安価なシングルタイプの同期リングへの
置換えが可能となる。
【0026】上述のような優れた摩擦摺動特性を有する
銅系焼結摩擦材を得るためには、成形されて焼結される
銅合金粉末の内部に事前に微細な硬質粒子を均一に分散
させた硬質粒子分散型の複合銅合金粉末を焼結用の原料
粉末として用いることが有効であることを本発明者たち
が見出した。また、焼結摩擦材に適した硬質粒子の種
類,大きさ,添加量,および分散性や銅合金素地の組
成、さらには複合銅合金粉末の調製に関する適切な条件
が種々の実験と検討によって見出された。それらの条件
の適正な範囲の理由について以下に詳細に説明する。
【0027】まず、銅系焼結摩擦材中の硬質粒子は、そ
の焼結摩擦材の摺動面内に微細かつ均一に分散して常温
や高温における摩擦摺動時に相手材との凝着の発生を抑
制し、耐焼付き性を改善するとともに、相手材の素地表
面と直接接触して摩擦係数を向上させる役割を果たし得
る。ただし、硬質粒子がこのような役割を果たすために
は、摩擦摺動時に硬質粒子が焼結材の摺動面素地から脱
落しないことが必要である。
【0028】そこで、本発明者たちは、硬質粒子に優れ
た効果を発揮させるためには、焼結摩擦材が図1(A)
の模式図に示されているような組織構造を有することが
理想的であろうと考えた。すなわち、所定の組成を有す
る銅合金素地の旧複合銅合金粉末素地内に微細な硬質粒
子が均一に分散し、しかもそれらの硬質粒子が銅合金素
地と強固に結合して固定された組織が望ましい。このよ
うな組織構造を有する焼結摩擦材においては、摩擦摺動
時における硬質粒子の脱落が抑制され、長期間にわたっ
て安定した摩擦摺動状態を得ることが可能になる。すな
わち、そのような銅系焼結摩擦材を含む本発明による2
層構造同期リングの摩擦摺動性能において、優れた耐久
性が実現され得る。
【0029】本発明者たちは、図1(A)に示されてい
るような組織を実現するためには、銅合金粉末の素地中
に微細な硬質粒子を事前に均一に分散させた粒子分散型
銅合金粉末を成形して焼結することが必要であると考え
た。すなわち、硬質粒子分散型銅合金粉末を用いて図1
(A)に示されているような組織構造を有する摩擦材を
含む2層構造同期リングを得ることが本発明の最も重要
な特徴である。
【0030】種々の実験と検討を繰り返した結果、微細
な硬質粒子が均一に分散された粒子分散型銅合金粉末を
経済的に調製する方法として、次のような粉末の機械的
混合粉砕合金化処理を適用するのが有効であることが見
出された。すなわち、メカニカルアロイング法,メカニ
カルクライディング法,および造粒法などを代表とする
粉末の機械的な混合粉砕処理を適用することによって、
初めて、硬質粒子である金属間化合物や金属粒子などを
微細に粉砕すると同時に、銅合金粉末素地中にこれらの
微細硬質粒子を均一に分散し得ることが見出された。
【0031】これらの機械的な粉砕混合処理は、従来の
ボールミルによる粉砕や混合のような湿式法ではなくて
乾式法で行なわれる。また、望まれる場合には、PCA
(プロセス制御剤)としてステアリン酸やアルコールな
どを少量添加することによって、粉末の過度の凝集を防
ぐこともできる。処理装置としては、アトライターやボ
ールミルを好ましく用いることができる。アトライター
は、粉砕効率に優れているので高速処理に適している。
ボールミルは長時間処理が必要となるが、雰囲気制御が
容易であって投入エネルギの設計を適切に行なえば比較
的経済性に優れている。
【0032】なお、別の方法として、硬質粒子を銅合金
の溶湯中に攪拌して分散させ、これをアトマイズ法で噴
霧することによって内部に硬質粒子が分散された複合銅
合金粉末を作製することができる。しかし、アトマイズ
法では硬質粒子を微細化することができないので、事前
に微細な硬質粒子を作製して銅合金の溶湯中に添加する
必要がある。その場合、溶湯内での硬質粒子の偏析や凝
集を防止するために十分な攪拌工程が必要となり、複合
銅合金粉末の製造コストが上昇して経済性において問題
を生じる場合がある。したがって、本発明において用い
られる銅系焼結摩擦材の製造においては、機械的な粉末
混合粉砕処理を用いることが経済性の観点からは望まし
い。
【0033】硬質粒子の望ましい大きさおよび添加量に
関しては、本発明者たちは、所定の組成を有する銅系粉
末について上述の機械的混合粉砕処理を行なう際に種々
の処理条件を変更して評価した結果、上述のような高い
摩擦係数を安定して確保するためには、以下のような硬
質粒子の大きさおよび添加量の適正範囲があることを見
出した。すなわち、30μm以下の最大粒径と15μm
以下の平均粒径を有する硬質粒子を焼結材中の旧複合銅
合金粉末素地内に10〜50重量%の範囲で含ませるこ
とによって、それらの硬質粒子が微細かつ均一に銅合金
素地内に分散して、銅系焼結摩擦材の機械的特性を低下
させることなく安定した高摩擦係数が確保され得ること
が確認された。
【0034】他方、銅系焼結摩擦材における硬質粒子の
含有量が10重量%未満では、オイル中において例えば
SCM420のような鋼材を相手材として摺動した際に
0.2を超えるような高摩擦係数が得られず、耐摩耗性
を向上させる効果も得られない。また、硬質粒子が30
μmを超える最大粒径もしくは15μmを超える平均粒
径を有するかまたはその含有量が焼結摺動材全体の50
重量%を超えれば硬質粒子が亀裂発生の起点となりやす
く、その結果、銅系焼結合金の強度や靱性が低下する。
さらに、50重量%を超える硬質粒子の添加は、相手攻
撃性の観点からも、相手材を激しく摩耗させるので好ま
しくない。
【0035】硬質粒子としては、Mo粒子,Ni基合金
粒子および鉄系金属間化合物粒子の少なくとも一種を含
むことが望ましい。鉄系金属間化合物としては、FeM
o,FeCr,FeTi,FeW,およびFeBから選
択された少なくとも1つを含むことが好ましい。なぜな
らば、これらの鉄系金属間化合物は十分な硬度を有して
いて硬質粒子として適しているとともに、脆性であるの
で粉砕性に優れており、本発明において用いられる機械
的混合粉砕処理に際して硬質粒子の微細化が容易となる
からである。
【0036】Mo粒子とNi基合金粒子も銅系焼結体の
耐摩耗性を向上させるとともに、摩擦係数の向上に寄与
する。Ni基粒子を硬質粒子として用いるためには、そ
のNi基粒子が400以上のマイクロビッカース硬度を
有することが望ましい。なぜならば、その硬度が400
未満の場合には、銅系焼結体の耐摩耗性が十分ではな
く、目標とする高摩擦係数も得られない。このような硬
さを有するNi基粒子としては、Cr,Fe,B,M
o,Mn,W,Cuなどの少なくとも1つの元素を総計
で10重量%以上含有することが好ましい。特に、Cr
とWは、Ni基粒子の硬さの向上に顕著な効果を生じ
る。
【0037】なお、金属間化合物の他にAl2 3 ,S
iO2 ,ZrOなどの金属酸化物やSiC,TiC,A
lN,Si3 4 などのセラミックスも摩擦係数を向上
させる効果を生じるが、これらの粒子は鉄系金属間化合
物に比べて焼結材の被削性を劣化させるので、経済的な
面において問題が生じる場合もある。
【0038】以上要約すれば、本発明の2層構造同期リ
ングに用いられる銅系焼結材の製造に関しては、所定の
組成の銅合金粉末と硬質粒子の混合粉末に機械的な混合
粉砕処理を施すことによって、硬質粒子を30μm以下
の最大粒径と15μm以下の平均粒径の微粒子に粉砕す
ると同時に、それらの微細な硬質粒子が銅合金粉末内
(粉末の素地内)に均一に分散させられる。このような
粒子分散型銅合金粉末を成形して焼結し、またはさらに
熱間鍛造もしくは熱間押出などの塑性加工を施すことに
よって、銅合金素地と硬質粒子の界面に反応層を形成し
て硬質粒子を銅合金素地中に強固に固定するとともに、
2層構造同期リングの内周部のテーパーコーン材として
十分に使用可能な機械的特性を得ることができる。すな
わち、焼結銅合金素地中の硬質粒子は摩擦摺動時に焼結
合金の摺動面素地から脱落することがなく、焼付きや摩
耗損傷が抑制されるとともに潤滑油中で0.2を超える
安定した摩擦係数を得ることができる。
【0039】なお、従来の粉末冶金法による単純な粉末
混合方法では硬質粒子が粉砕されないので、図1(B)
の模式的な組織図に示されているように、硬質粒子は銅
合金粉末に混合された状態のままの粒径を有している。
そこで、事前に微細な硬質粒子を準備して銅合金粉末と
ともに出発原料として用いたところ、硬質粒子の凝集や
偏析による硬質粒子の脱落や、焼結材の耐摩耗性の低下
および機械的特性の低下が生じた。また、従来の単純な
粉末の混合方法においては、硬質粒子は銅合金粉末素地
内部に分散することがない。したがって、このような従
来の粉末冶金法による混合粉末を成形して焼結すれば、
硬質粒子が銅合金素地の旧粉末粒界(特に粒界3重点)
に存在した状態になる。その結果、摩擦摺動時に硬質粒
子が素地から脱落して摩耗粉となり、かえって相手材や
焼結材自身を攻撃したり焼付き現象を誘発するという問
題を生じる。また、焼結摩擦材に応力が負荷されている
場合に、硬質粒子が素地の旧粉末粒界に存在すれば、そ
れが亀裂の発生起点および伝播経路となるので、焼結体
の機械的特性を低下させるという問題を生じる。
【0040】次に、本発明の2層構造同期リングに用い
られる銅系焼結合金の素地(マトリックス)の合金組成
と組織に関する条件を説明する。
【0041】Znは脱酸効果を有し、これを銅合金素地
に添加すれば安定なZnO層を焼結素地の表面全体に均
一に形成することができる。そして、この酸化亜鉛層は
保護膜として働き得るので、硫黄を含む雰囲気中におい
て銅イオンとのSとの反応を阻害し、硫化腐蝕の原因で
ある硫化銅の生成を抑制することができる。他方、銅合
金素地中へのZnの添加量が増大すればβ′相が現れ、
その結果として、銅合金素地は硬くて脆くなり、強度低
下を誘発するとともに冷間加工性が著しく低下するとい
う問題を生じる。
【0042】硫化腐蝕の抑制に必要なZn量は銅合金素
地の5重量%以上であり、また素地の脆化現象を抑制す
るためには40重量%を超えるZnの添加は好ましくな
い。すなわち、銅合金素地におけるZnの好ましい添加
量は5〜40重量%である。
【0043】NiはZnと同様に硫化銅の生成を抑制す
る効果を有するとともに、銅合金素地の硬度を向上さ
せ、さらに、後述するSiとの金属間化合物(珪化ニッ
ケル)を微細な球状粒子として存在せしめ、この珪化ニ
ッケル粒子が摩擦摺動時の抵抗を生じることによって摩
擦係数を向上させる。このような好ましい効果を生じさ
せるためには、銅合金素地中に5重量%以上のNiの添
加が必要である。他方、Ni添加量が40重量%を超え
れば銅合金素地が脆くなり、その結果として冷間および
熱間における加工性が低下するという問題を生じる。す
なわち、銅合金素地における好ましいNiの添加量は5
〜40重量%である。
【0044】銅合金素地中のZnとNiの合計含有量が
40重量%を超えれば焼結素地が著しく硬化して靱性の
低下を誘発し、焼結部材の冷間および熱間における加工
性が低下するという問題を生じる。すなわち、銅合金素
地におけるZnとNiを合わせた好ましい含有量は40
重量%以下である。
【0045】銅合金素地中へのSnの添加はその素地の
高温硬度および靱性を向上させる作用があり、また、高
温における耐焼付性を向上させる効果を生じる。したが
って、摩擦摺動条件が過酷な場合には、銅合金素地中へ
Snを添加することが好ましい。なお、Snの添加量が
3重量%未満では好ましい効果を生じず、20重量%を
超えれば銅合金素地中に硬くて脆い相が析出するために
強度や靱性を低下させる。すなわち、銅合金素地におけ
る好ましいSnの添加量は3〜20重量%である。
【0046】AlはCuと反応してCu6 Al4 等の金
属間化合物を生成して銅合金の硬度を向上させるととも
に、摩擦摺動時における抵抗粒子を形成するので、摩擦
係数を向上させる効果を生じる。しかし、0.1重量%
未満のAlの添加では、十分な硬度および摩擦抵抗性の
改善が得られない。他方、5重量%を超えてAlを添加
すれば、銅合金の脆化を誘発して冷間加工性を低下させ
るとともに、強固な酸化物(Al2 3 )層を形成し、
焼結性を妨げたり銅合金素地の切削性を低下させるとい
う問題を生じる。すなわち、銅合金素地における好まし
いAlの添加量は0.1〜5重量%である。
【0047】上述したように、SiはNiとともに微細
な球状の金属間化合物(珪化ニッケル)を形成し、この
金属間化合物が摩擦摺動時の抵抗となって摩擦係数を向
上させる効果を生じる。1重量%未満のSi添加では摩
擦係数の向上に対する十分な効果が得られず、Siの添
加量が5重量%を超えれば銅合金素地の熱間および冷間
における加工性が低下するという問題を生じる。すなわ
ち、銅合金素地におけるSiの好ましい添加量は1〜5
重量%である。
【0048】Pbは銅合金素地のα相の粒界やデンドラ
イトの間に均一に存在し、素地の切削性や摩擦摺動時の
潤滑性を改善する効果を生じる。そのような効果を得る
ためには0.5重量%以上のPbの添加が必要である
が、3重量%を超えてPbを添加すれば銅合金素地内部
に偏析を生じ、機械的特性を低下させるという問題を生
じる。すなわち、銅合金素地におけるPbの好ましい添
加量は0.5〜3重量%である。
【0049】固体潤滑剤は、より過酷な摩擦摺動条件に
おいて相手材に対する焼結部材の攻撃性を低減するとと
もに、滑り速度や加圧力などの摩擦摺動条件が変動して
もオイル中で約0.2以上の安定した摩擦係数を維持す
る効果を有し、また、摺動面間の潤滑性を改善すること
によって摺動時の振動やビビリなどを抑制する効果をも
生じる。銅系焼結摩擦材においてこのような効果を有す
る固体潤滑成分として、経済的にも好ましい黒鉛,Mo
2 ,CaF2 ,WS2 ,およびBNを用いることがで
きる。このとき、黒鉛,MoS2 ,CaF2 ,WS2
およびBNのうちの少なくとも1つを5重量%以下の範
囲で添加することが好ましい。固体潤滑剤の添加量が5
重量%を超えれば、焼結体の強度や靱性が著しく低下す
るので好ましくない。
【0050】他方、MT用同期リング本体に用いられる
鉄系焼結合金は、優れた摩擦摺動特性を有することを必
要としないが、優れた機械的特性を有することが求めら
れる。すなわち、MTの変速時においてスリーブのスプ
ラインがチャンファを介して同期リングの外周スプライ
ン部と噛み合うので、同期リング本体とその外周歯部は
優れた機械的特性を有することが要求される。より具体
的には、リング本体の割れやリング外周部のスプライン
歯部の摩耗損傷などの問題を防止するためには、リング
本体は400MPa以上の0.2%引張耐力と80以上
のロックウェルB硬度を有することが必要である。この
ような機械的特性を実現するためには、鉄系焼結合金が
0.7重量%以上のCと1.5重量%以上のCuを含有
し、かつ90%以上の真密度比を有することが求められ
る。
【0051】図2は、本発明による2層構造同期リング
を製造する方法を示す工程図である。2層構造同期リン
グは図2中の工程(a)または工程(b)によって製造
され得る。工程(a)による方法を簡単に述べれば、そ
れは、鉄系焼結合金の同期リング本体と銅系焼結合金の
テーパーコーン部を個別に作製し、同期リング本体の内
周内へテーパーコーン部を圧入して得られた2層構造体
を加熱して拡散接合する方法である。他方、工程(b)
は、2層構造用に設計された押型成形金型を用いて、リ
ング本体を形成すべき鉄系粉末とテーパーコーン部を形
成すべき銅形成粉末を含む2層構造の粉体を加圧して2
層構造圧粉体を形成し、この圧粉体を加熱焼結すること
によって2層構造同期リングを得る方法である。
【0052】工程(a)についてさらに詳しく説明すれ
ば、まず銅系焼結合金のテーパーコーン部を形成するた
めに、前述の硬質粒子分散型の複合銅合金粉末が型押成
形された圧粉体にされる。この複合銅合金粉末の圧粉体
は、管理された雰囲気の下において加熱焼結される。
【0053】このとき、複合銅合金の圧粉体は70%以
上の真密度比を有することが望ましい。なぜならば、真
密度比が70%未満であれば十分な圧粉体強度が得られ
ないので、圧粉体を焼結するまでの搬送過程において圧
粉体の欠けや割れを生じてハンドリング性の低下を招く
からである。したがって、量産工程において複合銅合金
粉末の圧粉体が十分なハンドリング性を有するためには
真密度比が70%以上であることが望ましい。
【0054】複合銅合金粉末の圧粉体の加熱焼結条件と
しては、非酸化性雰囲気,還元性雰囲気,または不活性
ガス雰囲気において600℃以上でかつ銅合金の溶融開
始温度以下の温度範囲で15分以上加熱焼結する必要が
ある。加熱温度が600℃未満の場合には、殆ど焼結現
象が進行しない。他方、焼結温度が銅合金の溶融開始温
度を越えれば、銅合金の液相が現れて焼結体が収縮し、
焼結体の寸法精度が低下するという問題を生じる。
【0055】また、後述されるように、銅系焼結体のテ
ーパーコーン部は鉄系焼結体のリング本体内に圧入され
るので、銅系焼結体が十分な機械的特性を有していなけ
れば圧入時にテーパーコーン部に割れや欠けが発生す
る。したがって、銅系焼結体が十分な機械的強度を有す
るためには、複合銅合金粉末の圧粉体は600℃以上で
かつ銅合金の溶融開始温度以下の温度範囲で15分以上
焼結される必要がある。すなわち、加熱時間が15分未
満の場合には、得られる銅系焼結体の強度が十分でな
く、また、2層構造同期リングのテーパーコーン部とし
て使用した場合に相手鋼材との摩擦摺動時に摩耗損傷が
生じる。
【0056】複合銅合金粉末の圧粉体を加熱焼結する雰
囲気が非酸化性雰囲気,不活性ガス雰囲気,または還元
ガス雰囲気のいずれの雰囲気でもない場合、酸化被膜が
粉末表面に形成されて焼結現象が阻害され、銅系焼結体
の機械的特性が低下するという問題を生じる。なお、焼
結を短時間で進行させる方法として、加圧した非酸化性
雰囲気,還元性雰囲気,または不活性ガス雰囲気のいず
れかの雰囲気中において加熱焼結することが有効である
ことが本発明者たちによって見出されている。
【0057】ところで、銅系焼結合金のテーパーコーン
部の機械的特性を向上させるためには、熱間塑性加工を
施すことが好ましい。たとえば、得られた銅系焼結体を
再び上述のような管理された雰囲気中で600℃以上の
温度でかつ銅合金の溶融開始温度以下の温度において5
分以上加熱した後に、その銅系焼結体を閉塞金型内で熱
間鍛造するか、または直接法もしくは間接法によって熱
間押出することによって、銅系焼結合金の機械的特性を
向上させ得る。このとき、銅系焼結体を銅合金の溶融開
始温度を越えて加熱すれば銅合金内で相変化を生じ、焼
結銅合金の特性劣化を生じる可能性がある。また、熱間
加工前の加熱温度が600℃未満の場合には、銅系焼結
体の変形抵抗が大きいので、熱間加工のために高圧力を
付加する大型設備が必要となり、経済性の問題を生じ
る。他方、適切な温度条件の下では、熱間鍛造の場合に
は3t/cm2 以上の鍛造面圧を用い、熱間押出の場合
には6以上の押出比を用いることによって、銅系焼結体
の機械的特性を向上させることができる。
【0058】次に、上述のようにして得られた銅系焼結
合金のテーパーコーン部を個別に作製された鉄系焼結合
金のリング本体内に圧入して拡散接合させる条件につい
て説明する。この圧入の際の圧入代に関して特に制約は
ないが、圧入歪み(=圧入代÷リング本体の内周半径×
100%)が0.1%よりも小さい場合には、リング本
体とテーパーコーン部を拡散接合させるために長時間の
加熱が必要となる。他方、圧入歪みが1%を越えても、
拡散接合時間を15分より短くすることはできない。
【0059】圧入によって得られた2層構造体に含まれ
るリング本体とテーパーコーン部との間の接触界面で金
属学的な接合を生じさせる方法として、この2層構造体
を非酸化性雰囲気,還元性雰囲気,または不活性ガス雰
囲気のいずれかの雰囲気中において700℃以上でかつ
銅合金の溶融開始温度以下の温度において15分以上拡
散接合することが有効である。このような拡散接合によ
って、鉄系焼結体のリング本体と銅系焼結体のテーパー
コーン部とが互いに強固に接合され得る。すなわち、加
熱温度が700℃未満であるか、または加熱時間が15
分未満であれば、鉄系焼結体のリング本体と銅系焼結体
のテーパーコーン部とが十分強固に接合されないので、
同期リングとして使用するときにテーパーコーン部がリ
ング本体から剥離して脱落するという問題が生じる。一
方、加熱温度が銅系焼結合金の溶融開始温度を越えれ
ば、銅合金の液相が現れて銅系焼結体が収縮し、テーパ
ーコーン部の寸法精度が低下するという問題が生じる。
さらに、拡散接合の雰囲気が非酸化性雰囲気,還元性雰
囲気,または不活性ガス雰囲気のいずれの雰囲気でもな
い場合には、リング本体とテーパーコーン部との接触界
面に酸化膜が形成されて拡散接合が阻害され、十分な接
合強度が得られない。
【0060】次に、図2中の工程(b)による製造条件
を説明する。この工程(b)においては、2層構造粉体
の形成用に設計された金型が用いられる。そのような金
型の一例は円筒状の空孔を有し、その空孔内を摺動する
下パンチを含む。下パンチは分割された内周部分下パン
チと外周部分下パンチとを含み、内周部分下パンチを下
げて外周部分下パンチを上げた状態で円筒状空孔の内周
部に前述の複合銅合金粉末を供給して第1層目の粉体が
形成される。次に、外周部下パンチを下げた状態で円筒
状空孔の外周部に鉄系粉末を供給して第2層目の粉体を
形成することによって2層構造の粉体が得られる。鉄系
粉末としては、所定の鉄合金の粉末または鉄粉末と所定
の合金元素粉末とが混合された混合粉末を用いてもよ
い。このようにして得られた2層構造の粉体に加圧する
ことによって、2層構造の圧粉成形体が得られる。2層
構造の圧粉成形体は管理された雰囲気の下で加熱焼結さ
れ、これによって2層構造同期リングが得られる。
【0061】焼結条件としては、非酸化性雰囲気,還元
性雰囲気,または不活性ガス雰囲気のいずれかの雰囲気
において、2層構造圧粉成形体を1050℃以上でかつ
銅合金の溶融開始温度以下の温度範囲で15分以上加熱
する必要がある。加熱温度が1050℃よりも低いかま
たは焼結時間が15分未満であれば、鉄系圧粉体領域に
おいて焼結現象が十分に進行せず、前述のような同期リ
ング本体が備えるべき機械的特性が得られない。他方、
加熱温度が銅合金の溶融開始温度を越えれば、銅系焼結
体中に液相が現れてその銅系焼結体が収縮し、テーパー
コーン部の寸法精度が低下するという問題を生じる。
【0062】2層構造圧粉体を加熱する雰囲気は、非酸
化性雰囲気,還元性雰囲気,または不活性ガス雰囲気で
なければ、酸化被膜が粉末表面に形成されて焼結現象が
阻害され、鉄系焼結体領域と銅系焼結体領域のいずれの
領域においても機械的特性が低下し、リング本体とテー
パーコーン部との間を強固に接合することも困難とな
る。なお、この場合にも、焼結現象を短時間で進行させ
る方法として、加圧された非酸化性雰囲気,還元性雰囲
気,または不活性ガス雰囲気における加熱を用いること
が有効であることを本発明者たちが見い出している。
【0063】
【実施例】
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】表1と表2は、それぞれ、本発明の実施例
と比較例とによる銅系焼結体試料に用いられる硬質粒子
分散型の複合銅合金粉末の組成を示している。これらの
表において、Zn,Ni,Sn,Si,Al,Pb,固
体潤滑材,およびCuに関する数値は、複合銅合金粉末
素地中の重量%を表わしている。他方、硬質粒子に関す
る数値は複合銅合金粉末全体に対する重量%を表わして
いる。また、固体潤滑材を表わす符号A,B,C,D,
およびEは、それぞれ黒鉛,MoS2 ,CaF 2 ,B
N,およびWS2 を表わしている。さらに、鉄系金属間
化合物を表わす符号F,G,H,I,およびJは、それ
ぞれFeMo,FeCr,FeW,FeTi,およびF
eBを表わしている。さらに、硬質粒子としてのNi基
粒子は、重量%基準でNi−17%Cr−12%W−4
%Si−3%B−2%Mo−0.1%Feの組成を有
し、平均で975(最大で1060、最小で910)の
マイクロビッカース硬度を有している。
【0067】表2の備考欄において印*1の付された試
料34においては、機械的混合粉砕処理によって粒子分
散型の複合銅合金粉末が得られているが、その処理条件
を変更することによって硬質粒子の最大粒径が45μm
にされている。
【0068】備考欄において印*2が付された試料35
においては、機械的混合粉砕処理によって複合銅合金粉
末が得られているが、その処理条件を変更することによ
って硬質粒子の平均粒径が30μmにされている。
【0069】備考欄において印*3が付された試料36
においては、機械的混合粉砕処理を用いることなく銅合
金粉末と硬質粒子とが単純に混合された後に成形されて
焼結されている。
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】表3と表4は、表1と表2に示された組成
を有し本発明による前述の製造工程条件に従って得られ
た銅系焼結体試料に関して、硬質粒子の最大粒径と平均
粒径,機械的特性,摩擦摺動特性,および耐硫化腐食性
を示している。ただし、表3と表4の焼結体試料は熱間
塑性加工が施されていない。
【0073】表3において、本発明の実施例による試料
1〜22は、いずれも300MPaを超える引張強度を
有しかつほとんどが3%以上の伸びを示す良好な靱性を
有していることがわかる。これに対して、表4中の比較
試料23〜36においては、ほとんどの試料が300M
Pa未満の引張強度を有するにすぎず、また、1%未満
の伸びしか示さないものが多い。すなわち、本発明の実
施例による銅系焼結合金試料は、比較例による銅系焼結
合金試料に比べて高い強度と高い靱性を有していること
がわかる。
【0074】摩擦摺動特性は、図3に示されているよう
なリングオンディスク式摩擦試験機を用いて測定され
た。ギヤ油(Castrol-15W30 )中において、銅系焼結体
試験片1は鋼材SCM420(浸炭焼入鋼)の相手材2
に対して摺動面Sを介して相対的に摺動させられる。試
験片1は60mmの外径と45mmの内径と5mmの厚
さを有するリング形状であって、図3において一部が切
断されて示されている。相手材2は70mmの直径と5
mmの厚さを有する円板であり、軸3によって矢印のよ
うに回転させられる。試験片1は固定されており、相手
材2に対して80kgf/cm2 の圧力Wが加えられて
いる。摺動面Sにおける試験片1と相手材2の相対摺動
速度は6m/秒であり、摩擦時間は1時間であった。表
3と表4からわかるように、本発明の実施例による銅系
焼結体試料1〜22のほとんどが0.3ないし0.4の
比較的高い安定した定常状態の摩擦係数μを示している
のに対して、比較例の焼結体試料23〜36では定常状
態における摩擦係数μの値がばらついている。特に、約
0.7以上のμ値は、焼付の結果としてのμ値を表わし
ている。
【0075】また、焼結体試験片1と相手材2の摩耗量
に関しては、実施例による試料はいずれも安定して小さ
な摩耗量を示しているのに対して、比較例による試料で
は極めて大きな摩耗量や付着量を示しているものがあ
る。なお、表4中の摩耗量において、マイナス符号の付
されている数字の絶対値は付着による重量増加を表わし
ており、焼付が生じていることを意味する。
【0076】耐硫化腐食性に関しては、140℃に保持
されたオイルCastrol −15W30中に銅系焼結体試料
が24時間浸漬された後に、試料の腐食状況が光学顕微
鏡によって調べられた。表3と表4からわかるように、
実施例の試料ではいずれも腐食に関して異常が認められ
ていないが、比較試料23においては硫化腐食が発生し
ている。
【0077】ここで、比較例の各銅系焼結体試料23〜
37における具体的な欠点を述べれば以下のようであ
る。
【0078】試料23においては、銅合金素地における
ZnとNiの合計含有量が5重量%に達していないの
で、オイル中における焼結体試料の曝露試験で硫化腐食
が生じている。
【0079】試料24においては、銅合金素地における
ZnとNiの合計含有量が40重量%を超えているの
で、焼結体の強度および靱性(伸び)が低下している。
【0080】試料25においては、焼結体における硬質
粒子の含有量が10重量%に達していないので、初期の
μ値が低くて、最終的に相手材と焼付を生じている。
【0081】試料26においては、焼結体が50重量%
を超える55重量%の硬質粒子を含んでいるので、焼結
体の強度と靱性が低下している。
【0082】試料27においては、焼結体中の硬質粒子
の含有量がさらに60重量%に増大しているので、焼結
体の強度がさらに低下している。
【0083】試料28においては、焼結体素地における
Snの含有量が20重量%を超えているので、素地が著
しく硬化して相手材を攻撃し、焼付きを生じている。
【0084】試料29においては、焼結体素地における
Siの含有量が5重量%を超えているので、焼結体の強
度と靱性が低下している。
【0085】試料30においては、焼結体素地中のAl
の含有量が5重量%を超えているので、銅合金が脆化し
て焼結体の強度と靱性が低下している。
【0086】試料31においては、焼結体中のPbの含
有量が3重量%を超えているので、焼結体の内部でPb
が偏析し、その結果として焼結体の強度が低下してい
る。
【0087】試料32においては、焼結体における黒鉛
の固体潤滑材の含有量が5重量%を超えているので、焼
結体の強度と靱性が低下している。
【0088】試料33においては、焼結体におけるMo
2 の固体潤滑材の含有量が5重量%を超えているの
で、焼結体の強度と靱性が低下している。
【0089】試料34においては、硬質粒子の最大粒径
が30μmを超えているので、焼結体の強度と靱性が低
下している。
【0090】試料35においては、硬質粒子の平均粒径
が15μmを超えているので、焼結体の強度と靱性が低
下している。
【0091】試料36においては、機械的な粉砕混合処
理が行なわれずに単に所定の組成の合金粉末と硬質粒子
が混合された後に焼結されているので、焼結材の強度と
靱性が低下し、また硬質粒子と素地との間の反応層が形
成されずかつ粗大な硬質粒子が存在するために、摺動時
に硬質粒子が素地から脱落して相手材と焼付を生じてい
る。
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】表5は、銅系焼結体試料に含まれるNi基
硬質粒子の組成とマイクロビッカース硬度との関係を示
している。表6は、表5に示されたNi基硬質粒子の最
大粒径と平均粒径およびそのような硬質粒子を含む銅系
焼結体試料の摩擦摺動特性を示している。
【0095】表5と表6において、試料41〜48に用
いられた複合銅合金粉末は、重量基準でCu−25%Z
n−8%Niの組成を有する銅合金粉末に25重量%の
Ni基硬質粒子と2重量%のMoS2 固体潤滑剤を添加
して、機械的合金化法によって調製された。そのような
複合銅合金粉末を用いて本発明による製造工程条件に従
って得られた銅系焼結体試料が表3および表4の場合と
同様に摩擦試験された。
【0096】表5および表6から明らかなように、40
0を越える平均マイクロビッカース硬度を有するNi基
粒子を含む銅系焼結体試料41〜44は優れた耐摩耗性
を有しているのに対して、400未満の平均硬度を有す
るNi基粒子を含む試料45〜48においては耐摩耗性
が著しく劣っていることがわかる。
【0097】
【表7】
【0098】表7は、表1ないし表4に示された銅系焼
結体試料を用いて作製されたテーパーコーン部を含む2
層構造同期リングの摩擦摺動特性として、リング内面の
焼付きの有無およびテーパーコーン摩擦面における初期
(300回まで)と安定期の摩擦係数μを示している。
すなわち、表7中の同期リング試料1A〜36Aのそれ
ぞれのテーパーコーン部は、表1ないし表4中の銅系焼
結体試料1〜36を用いて作製されている。
【0099】図4は、表7中の同期リングの各々の断面
構造を示している。図4に示されているような2層構造
同期リングは、スプライン嵌合歯部12を有する鉄系焼
結体のリング本体11の内周面内へ摺動摩擦面14を有
する銅系焼結体のテーパーコーン部13を0.3%の圧
入歪みを生じるように圧入して、水素ガス雰囲気中にお
いて880℃で30分間拡散接合することによって得ら
れた。なお、リング本体の鉄系焼結合金は、重量基準で
Fe−2.0%Cu−0.8%Cの組成,95%の真密
度比,450MPaの0.2%引張耐力,および86の
ロックウェルB硬度を有していた。
【0100】表7中の同期リング試料の各々は、シンク
ロリング単体試験機によって試験された。このときの試
験条件は次のとおりである。
【0101】相手テーパーコーンの材質:SCM420
(浸炭焼入鋼) テーパーコーンの回転数:3500rpm 押付荷重:60kgf/cm2 使用オイル:Castrol −15W30(油温80℃) テーパーコーンの作動:1サイクルに0.8秒間の押付
と1.5秒間の引離しサイクル数:10000サイクル 表7からわかるように、本発明の実施例による同期リン
グ試料1A〜22Aにおいては、リング内周面の焼付き
やリング割れを生じず、0.2ないし0.4の比較的大
きな初期の摩擦係数μを有するのみならず、安定期にお
いてもそれらの好ましい範囲内のμ値を維持している。
【0102】他方、比較試料23A〜36Aにおいて
は、テーパーコーン部の銅系焼結体の組成が適切ではな
かったので、テーパーコーンの摩擦面における焼付きの
発生,同期リングの割れの発生,テーパーコーン部の腐
食の発生,またはテーパーコーン部の著しい摩耗の発生
という問題を生じた。なお、同期リングに割れが生じた
場合には、試験機が停止して摩擦係数の測定が不可能で
あった。また、テーパーコーン部の摩擦面に焼付きを生
じた場合には、摩擦係数が0.7を越える異常値を示し
た。
【0103】
【表8】
【0104】表8は、2層構造同期リングのリング本体
に用いられる鉄系焼結体の組成および真密度比に依存す
る機械的特性が同期リングの性能に及ぼす影響を示して
いる。表8中の同期リング試料51〜56は、表1およ
び表2に示された試料10に対応する銅系焼結体のテー
パーコーン部を含んでいる。すなわち、表8に示されて
いる機械的特性を有する鉄系焼結合金のリング本体の内
周面内へ銅系焼結合金のテーパーコーン部を0.2%の
圧入歪みを生じるように圧入し、水素ガス雰囲気中にお
いて920℃で20分間の拡散接合を行なうことによっ
て、図4に示されているような2層構造同期リングが作
製された。
【0105】表8中の同期リングは、シンクロリング実
機耐久試験機を用いて、手動変速を想定してスリーブの
スプライン部と同期リングの外周歯部とを潤滑油中で1
0000回嵌合させることによって、リングの外周歯部
の摩耗損傷状況が調べられた。表8に示されているよう
に、リング本体の鉄系焼結体が400MPa以上の0.
2%引張耐力と80以上のロックウェルB硬度(HR
B)の十分な機械的特性を有する試料51〜53におい
ては、同期リングの外周歯部に摩耗損傷を生じることは
なかった。他方、試料54〜56においては、鉄系焼結
体の0.2%耐力が400MPa未満、またはそのロッ
クウェル硬度が80未満であったので、同期リングの外
周歯部はスリーブとの繰返しの嵌合によって摩耗損傷を
生じた。
【0106】すなわち、2層構造同期リングのリング本
体に用いられる鉄系焼結合金は、400MPa以上の
0.2%引張耐力と80以上のロックウェルB硬度を有
することが望まれる。
【0107】
【表9】
【0108】表9は、図2の工程(a)における製造条
件がテーパーコーン部用銅系焼結体の機械的特性に及ぼ
す影響を示している。表9中の銅系焼結体試料61〜6
8においては、表1中の試料8の組成に対応する複合銅
合金粉末が用いられ、この粉末の銅合金素地は1065
℃の溶融開始温度を有している。複合銅合金粉末は所定
の面圧でもって所定の真密度比を有する圧粉体に成形さ
れ、その圧粉体は所定の雰囲気中において所定の温度と
時間で焼結された。
【0109】表9からわかるように、本発明によって適
切な圧粉体成形条件および適切な加熱焼結条件によって
作製された試料61〜63に関しては、圧粉体に欠けや
割れを生じることがなく、300MPaを越える引張強
度と3.0%以上の破断伸びを示す良好な機械的特性と
良好な寸法精度を有する銅系焼結体が得られた。
【0110】他方、比較試料64〜68においては、い
くつかの製造条件のうちの少なくとも1つが適切ではな
かったので、具体的に次のような問題を生じた。
【0111】まず、試料64においては、圧粉成形体の
真密度比が70%より小さな61%であったので、圧粉
体の焼結のための搬送過程において圧粉体に割れや欠け
が発生し、焼結体を得ることができなかった。
【0112】試料65においては、焼結温度が600℃
より低い550℃であったので、焼結現象が十分に進行
しない結果として、テーパーコーン部として用い得るよ
うな十分な機械的特性が得られなかった。
【0113】試料66においては、焼結時間が15分未
満の5分であったので、焼結現象が十分に進行しない結
果として、テーパーコーン部として用い得るような十分
な機械的特性が得られなかった。
【0114】試料67においては、焼結が大気中で行な
われたために焼結現象が阻害され、テーパーコーン部と
して用い得るような十分な機械的特性が得られなかっ
た。
【0115】試料68においては、複合銅合金粉末の銅
合金素地の溶融開始温度である1065℃を越える11
00℃において焼結が行なわれたので、焼結中に液相が
発生し、焼結体の寸法精度が著しく劣化した。
【0116】
【表10】
【0117】表10は、鉄系焼結体のリング本体と銅系
焼結体のテーパーコーン部との間の拡散接合の際の温
度,時間,および雰囲気が2層構造同期リングの性能に
及ぼす影響を示している。表10中の同期リング試料7
1〜77の各々において、表1および表3中の試料8に
対応する銅系焼結体のテーパーコーン部が用いられた。
この銅系焼結合金は、1075℃の溶融開始温度を有し
ている。また、リング本体の鉄系焼結合金は、表7の場
合と同様に、重量基準Fe−2.0%Cu−0.8%C
の組成,95%の真密度比,450MPaの0.2%引
張耐力,および86のロックウェルB硬度を有してい
た。
【0118】試料71〜77の各々は、表8の場合と同
様に、シンクロリング実機耐久試験機を用いて、手動変
速を想定してスリーブのスプライン部と同期リングの外
周歯部を潤滑油中で10000回嵌合させて、リング本
体とテーパーコーン部との接合性が評価された。
【0119】表10からわかるように、本発明に従って
適切な拡散接合条件の下に作製された2層構造同期リン
グ試料71〜73においては、鉄系焼結体のリング本体
と銅系焼結体のテーパーコーン部が強固に結合してお
り、実機耐久試験においてリング本体からテーパーコー
ン部が剥離したり脱落することなく10000回の嵌合
試験をクリアした。他方、比較試料74〜77の各々に
おいては、拡散接合の複数の条件のうちの少なくとも1
つが不適切であったので、次のような具体的な問題を生
じた。
【0120】まず試料74においては、拡散接合の温度
が700℃未満の630℃であったので、15回の嵌合
の繰返しの後にテーパーコーン部がリング本体から脱落
した。
【0121】試料75においては、拡散接合時間が15
分未満の5分であったので、180回の嵌合の繰返しの
後にテーパーコーン部が脱落した。
【0122】試料76においては、拡散接合温度が銅系
焼結合金の溶融開始温度を越える温度であったので、銅
系焼結合金中に液相が発生してテーパーコーン部の寸法
精度が劣化した。
【0123】試料77においては、拡散接合が大気中で
行なわれたので、その接合が不十分となって、36回の
嵌合の繰返しの後にテーパーコーン部が脱落した。
【0124】
【表11】
【0125】表11は、図2の工程(b)に従って図4
に示されているような2層構造同期リングを焼結する際
の温度,時間,および雰囲気が同期リングの機械的特性
や性能に及ぼす影響を示している。表11中の同期リン
グ試料81〜86の各々において、表1中の試料15に
対応する組成と1095℃の溶融開始温度を有する複合
銅合金粉末と重量基準でFe−1.8%Cu−0.9%
Cの組成を有する鉄合金粉末が用いられた。
【0126】2層構造同期リング試料81〜86の各々
は、表10の場合と同様に、シンクロリング実機耐久試
験機を用いて10000回の嵌合試験が行なわれ、リン
グ外周部の嵌合歯部の摩擦損傷状況およびリング本体と
テーパーコーン部との接合性が評価された。表11から
わかるように、本発明に従って好ましい焼結条件の下に
作製された同期リング試料81と82においては、良好
な機械的特性と寸法精度が得られ、耐久試験においても
テーパーコーン部の脱落やリング本体の外周部の歯部の
摩耗が生じないことが確認された。
【0127】他方、比較試料83〜86においては、焼
結条件の温度,時間,または雰囲気のいずれかが不適切
であったので、次のような具体的な問題が生じた。
【0128】まず試料83においては、焼結温度が10
50℃未満の950℃であったので鉄系圧粉体において
焼結現象が十分に進行しない結果として、リング本体の
十分な機械的特性が得られなかった。したがって、耐久
試験において同期リングの外周歯部に摩耗が生じた。
【0129】試料84においては、焼結温度が複合銅合
金粉末の溶融開始温度を越える1150℃であったの
で、銅合金焼結体中に液相が発生し、テーパーコーン部
の寸法精度が著しく劣化した。
【0130】試料85においては、焼結時間が15分未
満の5分であったので、鉄系圧粉体において焼結現象が
十分に進行しない結果として、リング本体の機械的特性
が不十分であって外周歯部に摩耗が生じた。
【0131】試料86においては、焼結が大気中で行な
われたので、銅系圧粉体および鉄系圧粉体の両方におい
て焼結現象が阻害されるとともに、両圧粉体間の接合界
面における拡散接合も阻害された。
【0132】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、硫黄を
含有する潤滑油中で硫化腐食を生じることなく、同期時
に0.2を超える比較的高い安定した摩擦係数を維持で
き、しかも優れた機械的特性を有する変速機用の2層構
造同期リングを優れた経済性の下で提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明に従って機械的混合粉砕処理を
利用した銅系焼結体の模式的な組織図であり、(B)は
従来の単純な粉末混合処理を利用した銅系焼結体の模式
的な組織図である。
【図2】本発明による2層構造同期リングを得るための
2通りの製造方法を示す工程図である。
【図3】銅系焼結体の摩擦摺動特性試験を説明するため
の図である。
【図4】2層構造同期リングの一例を示す断面図であ
る。
【符号の説明】
1 焼結体試料 2 相手材 3 軸 S 摺動面 W 圧力荷重 11 鉄系焼結体のリング本体 12 スプライン嵌合歯部 13 銅系焼結体のテーパーコーン部 14 摺動摩擦面

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄系焼結合金のリング本体と、 前記リング本体の内周面上に形成された銅系焼結合金の
    テーパーコーン部とを含み、 前記鉄系焼結合金は400MPa以上の0.2%引張り
    耐力と80以上のロックウェルB硬度を有し、 前記銅系焼結合金は旧複合銅合金粉末の銅合金素地内に
    硬質粒子が均一に分散された組織を有し、 前記銅系焼結合金の前記テーパーコーン部の摩擦面は潤
    滑油中で鋼材の相手コーン部と同期したときに0.2以
    上の摩擦係数を有することを特徴とする変速機用同期リ
    ング。
  2. 【請求項2】 前記硬質粒子は30μm以下の最大粒径
    と15μm以下の平均粒径を有していることを特徴とす
    る請求項1に記載の変速機用同期リング。
  3. 【請求項3】 前記銅系焼結合金は、前記硬質粒子とし
    て、10〜50重量%の範囲内で鉄系金属間化合物粒
    子,Mo粒子およびNi基粒子の少なくとも一種を含ん
    でいることを特徴とする請求項1または2に記載の変速
    機用同期リング。
  4. 【請求項4】 前記鉄系金属間化合物粒子は、FeM
    o,FeCr,FeTi,FeW,およびFeBから選
    択された少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項
    3に記載の変速機用同期リング。
  5. 【請求項5】 前記Ni基粒子は400以上のマイクロ
    ビッカース硬度を有することを特徴とする請求項3に記
    載の変速機用同期リング
  6. 【請求項6】 前記銅合金素地は5〜40重量%の範囲
    内でZnとNiの少なくとも一方を含み、優れた耐硫化
    腐食性を有することを特徴とする請求項1ないし5のい
    ずれかの項に記載された変速機用同期リング。
  7. 【請求項7】 前記銅合金素地は3〜20重量%のSn
    をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の変速機
    用同期リング。
  8. 【請求項8】 前記銅合金素地は、1〜5重量%のS
    i,0.1〜5重量%のAl,および0.5〜3重量%
    のPbのうちの少なくとも1つをさらに含むことを特徴
    とする請求項6または7に記載の変速機用同期リング。
  9. 【請求項9】 前記銅合金素地は、5重量%以下の範囲
    内で黒鉛,MoS2,CaF,WS2 ,およびBNのう
    ちの少なくとも1つの固体潤滑材をさらに含むことを特
    徴とする請求項6ないし8のいずれかの項に記載された
    変速機用同期リング。
  10. 【請求項10】 請求項1に記載の変速機用同期リング
    の製造方法であって、 前記複合銅合金粉末の調製において、銅合金粉末と硬質
    粒子を含む混合粉末が調合され、前記混合粉末に機械的
    合金化法(メカニカルアロイング法),機械的混合法
    (メカニカルグラインディング法),および造粒法のう
    ち少なくとも1つの混合粉砕処理を施すことによって、
    前記硬質粒子は30μm以下の最大粒径と15μm以下
    の平均粒径を有するように粉砕されるとともに前記銅合
    金粉末素地内に分散させられることを特徴とする変速機
    用同期リングの製造方法。
  11. 【請求項11】 前記複合銅合金粉末を70%以上の真
    密度比を有する圧粉体に成形し、非酸化性雰囲気,還元
    性雰囲気および不活性ガス雰囲気のいずれかの雰囲気中
    で前記圧粉体を600℃以上で前記銅合金素地の溶融開
    始温度以下の温度で15分間以上焼結することによって
    前記銅系焼結合金を得ることを特徴とする請求項10に
    記載の変速機用同期リングの製造方法。
  12. 【請求項12】 前記銅系焼結合金は熱間鍛造と熱間押
    出の少なくとも1つの熱間塑性加工によって機械的特性
    が向上させられることを特徴とする請求項11に記載の
    変速機用同期リングの製造方法。
  13. 【請求項13】 前記銅系焼結合金を前記テーパーコー
    ン部に整形し、前記テーパーコーン部を前記鉄系焼結合
    金のリング本体の内周に圧入し、非酸化性雰囲気,還元
    性雰囲気および不活性ガス雰囲気のいずれかの雰囲気中
    において700℃以上で前記銅合金素地の溶融開始温度
    以下の温度で前記リング本体と前記テーパーコーン部と
    を15分間以上拡散接合させることを特徴とする請求項
    11または12に記載の変速機用同期リングの製造方
    法。
  14. 【請求項14】 請求項1に記載の変速機用同期リング
    の製造方法であって、概略円筒状の空孔を有する金型を
    準備し、前記円筒状金型の内周部と外周部にそれぞれ前
    記複合銅合金粉末と鉄系粉末を供給して2層粉体を形成
    し、前記2層粉体に加圧して2層圧粉成形体を形成し、
    非酸化性雰囲気,還元性雰囲気および不活性ガス雰囲気
    のいずれかの雰囲気のもとにおいて1050℃以上でか
    つ前記銅合金素地の溶融開始温度以下の温度で15分間
    以上前記2層圧粉成形体を焼結することを特徴とする請
    求項12記載の変速機用同期リングの製造方法。
  15. 【請求項15】 前記金型は前記円筒状空孔内を摺動す
    る下パンチを含み、前記下パンチは分割された内周部分
    下パンチと外周部分下パンチとを含み、前記内周部分下
    パンチを下げて前記外周部分下パンチを上げた状態で前
    記円筒状空孔の内周部に前記複合銅合金粉末を供給して
    第1層目の粉体を形成し、次に前記外周部下パンチを下
    げた状態で前記円筒状空孔の外周部に前記鉄系粉末を供
    給して第2層目の粉体を形成することによって前記2層
    粉体を形成することを特徴とする請求項14に記載の変
    速機用同期リングの製造方法。
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