JPH08209687A - 部分ケーシング杭工法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 環境汚染を起す恐れのあるセメント分や薬剤
を含有する土砂の排出をできるだけ抑制するための事前
掘削を部分ケーシングの保護の下に行なう際の部分ケー
シング圧入の施工性を高め、鉛直精度よく圧入するとと
もに部分ケーシング引き抜きの際に周辺地盤に薬液を注
入して杭の安定性を向上させる。 【構成】 （Ａ）先端に削孔刃およびフリクションカッ
ターを備え、外周面に薬液注入管を備えた鋼管よりなる
部分ケーシングを円周方向に回転させて地盤中に圧入し
た後、部分ケーシング内を掘削して掘削土を排出する工
程、（Ｂ）常法のプレボーリング埋め込み工法により部
分ケーシング下方地盤を地盤安定液を注入しながら削孔
して支持層に達する既製杭を設置する工程、（Ｃ）部分
ケーシングを円周方向に回転させて引き抜きながら薬液
注入管の先端より周辺地盤に薬液を注入する工程、の各
工程より構成される。なお、プレボーリング埋め込み工
法による既製杭の設置に代えて、ソイルセメント杭工法
によりソイルセメント杭を構築してもよい。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は無騒音・無振動の杭工法
に関する。

【０００２】

【従来の技術】無騒音・無振動の杭工法の一つとして既
製杭埋め込み工法としてのプレボーリング埋め込み工
法、場所打ち杭工法の一つとしてのソイルセメント杭工
法があるが、これらの工法では埋め込まれる既製杭や地
盤に注入した各種薬剤の容積に相当する容量の土砂が地
盤中から溢出する。そして、この土砂はセメント分や薬
剤を含んでいるので、流出した土砂は環境を汚染するた
め産業廃棄物とし処理されることとなり、処分に費用が
かかり、コスト高を招く。この対策として本出願人はソ
イルセメント杭工法において、地盤表層部を空掘りして
注入するセメントミルクの容量に相当する容量の土砂を
予め掘削孔外に排出しておく工法を先に提案した。（特
開平４−４９３１４号公報参照）

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】先に提案した工法では
注入するセメントミルクの容量が大きくなればなる程、
事前掘削により排出しておく土砂の容量は増大し掘削孔
径も大きくなるため、孔壁の崩壊が懸念され、それを防
止するため部分ケーシング（部分ケーシングとは杭の全
長にわたってケーシングによって地盤の崩壊を防止しな
がら削孔するオールケーシングに対比される語で、地盤
表層部を削孔する際に、その表層部に設置するケーシン
グを意味する。）を圧入してその内部を空掘りすること
が必要となる。通常ケーシングの圧入は単にケーシング
を揺動しながら行うものであり、地盤によっては圧入が
難かしく鉛直精度も不良となる。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は環境汚染を起す
恐れのあるセメント分や薬剤を含有する土砂の排出をで
きるだけ抑制するための事前掘削を部分ケーシングの保
護の下に行なうもので、その際の部分ケーシング圧入の
施工性を高め、鉛直精度よく圧入するとともに部分ケー
シング引き抜きの際に周辺地盤に薬液を注入して杭の安
定性を向上させることを目的とするものである。

【０００５】本発明はプレボーリング埋め込み工法とソ
イルセメント杭工法との２つの杭工法を対象とする。

【０００６】プレボーリング埋め込み工法を対象とする
場合は、本発明は（Ａ）先端に削孔刃およびフリクショ
ンカッターを備え、外周面に薬液注入管を備えた鋼管よ
りなる部分ケーシングを円周方向に回転させて地盤中に
圧入した後、部分ケーシング内を掘削して掘削土を排出
する工程、（Ｂ）常法のプレボーリング埋め込み工法に
より部分ケーシング下方地盤を地盤安定液を注入しなが
ら削孔して支持層に達する既製杭またはソイルセメント
杭を設置する工程、（Ｃ）部分ケーシングを円周方向に
回転させて引き抜きながら薬液注入管の先端より周辺地
盤に薬液を注入する工程、の各工程から構成される。

【０００７】ソイルセメント杭工法を対象とする場合
は、本発明は（Ａ）先端に削孔刃およびフリクションカ
ッターを備え、外周面に薬液注入管を備えた鋼管よりな
る部分ケーシングを円周方向に回転させて地盤中に圧入
した後、部分ケーシング内を掘削して掘削土を排出する
工程、（Ｂ）常法のソイルセメント杭工法により部分ケ
ーシング下方地盤を削孔、攪拌しながらセメントミルク
またはセメントモルタルを注入して支持層に達するソイ
ルセメント杭を構築する工程、（Ｃ）部分ケーシングを
円周方向に回転させて引き抜きながら薬液注入管の先端
より周辺地盤に薬液を注入する工程、の各工程から構成
される。

【０００８】本発明の要点は（１）先端に削孔刃および
フリクションカッターを備え、外周面に薬液注入管を備
えた部分ケーシングを使用する点、（２）その部分ケー
シングを円周方向に回転させながら地盤に圧入する点、
および（３）その部分ケーシングの引き抜きは円周方向
に回転させながら行い、その際薬液注入管の先端より周
辺地盤に薬液を注入する点にある。

【０００９】本発明で使用する部分ケーシングは上記の
構成となっているので、円周方向に回転させることで精
度よく鉛直に圧入することができる。この圧入の際、地
盤との摩擦が大きく圧入抵抗の大きい場合には外周面に
取りつけた薬液注入管を利用してその先端から注水して
摩擦を切れば圧入は一層容易になる。部分ケーシングを
鉛直精度よく圧入することができるので、これをガイド
として削孔することにより以深の削孔を鉛直精度よく行
うことができる。

【００１０】既製杭またはソイルセメント杭の設置後の
部分ケーシングの引き抜きに際しては通常の地盤であれ
ば薬液注入管の先端から周辺固定液（セメントミルク、
セメントモルタルなど）を既設杭の周辺地盤に注入す
る。地盤沈下によるネガチブフリクションの懸念される
地盤であれば薬液注入管の先端からネガチブフリクショ
ンカット材（アスファルト分散液、ウレタン樹脂プレポ
リマー分散液など）を既設杭の周辺地盤に注入する。ま
た、深度により通常の地盤層と地盤沈下層とがある場合
には深度に応じて周辺固定液とネガチブフリクションカ
ット材を切り替えて両者を注入する。

【００１１】本発明はこのように部分ケーシングの使用
によって、（１）セメント分や地盤安定液を含む公害型
土砂の排出量削減のための空掘りによる事前掘削を容易
に行うとともに（２）使用した部分ケーシングの引き抜
き作業を利用して設置杭の周辺地盤との摩擦性能の改良
を行うものである。

【００１２】杭工法としてソイルセメント杭工法を採用
する場合はソイルセメント杭構築のために注入するセメ
ントミルクやセメントモルタルの容積と空掘りによる事
前掘削部の容積とを同程度にすることでセメントミルク
やセメントモルタルを含む公害型土砂の排出量を皆無に
することは比較的容易である。

【００１３】しかし、プレボーリング埋め込み工法の場
合には大容積の既製杭に見合う容積の空掘り部を事前掘
削することは部分ケーシングの使用のみでは困難である
ため、既製杭設置時には地盤安定液（ベントナイトスラ
リーやこれにセメントを添加したものなど）を含む公害
型土砂の大部分は既製杭の中空部に保留されるが１部分
が地上に溢出するのは避けられない。この溢出液はポン
プ輸送などによりタンクに保管し、再使用に供されるか
公害型廃棄物として処理される。この場合、公害型廃棄
物として処理される量は空掘りによる事前掘削を行わな
い場合に比して大幅に減少する。

【００１４】

【実施例】以下本発明の実施例を図面を参照しながら説
明する。

【００１５】図１は本発明で使用する部分ケーシングの
１例の先端部を示し、（ａ）は底面図、（ｂ）は側面図
である。

【００１６】図２は本発明をプレボーリング埋め込み工
法により実施する工程縦断面図であり、図３は本発明を
ソイルセメント杭工法により実施する工程縦断面図であ
る。

【００１７】図１に示す部分ケーシング１は鋼管１Ａの
先端に複数個の鋼板（この例では６個）が帯状に溶接さ
れてフリクションカッター１Ｂを形成し、鋼管１Ａの外
周面に複数（この例では６本）の薬液注入管１Ｃが長手
方向に溶接されている。そして、鋼管１Ａの先端および
フリクションカッター１Ｂの先端は鋭利な凹凸となり、
削孔刃１Ｄを形成している。

【００１８】プレボーリング埋め込み工法による施工手
順の例を図２により説明する。

【００１９】（１）部分ケーシング１の上端をスイベル
３を介して回転装置２に取付け、円周方向に回転させな
がら地盤中に圧入する。（図２（ａ）） （２）回転装置２より部分ケーシング１を取り外し、代
わりにアースオーガーなどの掘削機４を取付けて部分ケ
ーシング１内の地盤を所定の深さまで掘削し、掘削機４
を引き上げて部分ケーシング１内の土砂５を地上に排出
する。（図２（ｂ）） （３）掘削機４を降ろし部分ケーシング１下の地盤を地
盤安定液６を注入しながら支持層に達するまで削孔し、
掘削機４を引き上げる。（図２（ｃ）） （４）掘削孔底に杭先端根固め液８（セメントミルクま
たはセメントモルタル）を注入し固化しない中に既製杭
７を掘削孔底まで挿入する。既製杭７によって追い出さ
れる地盤安定液６は大部分既製杭７の中空部に保留され
るが、一部は地上に溢出するので、溢出液は速やかにポ
ンプによりタンクに送られる。（図２（ｄ）） （５）再び、部分ケーシング１の上端をスイベル３を介
して回転装置２に取付け、円周方向に回転させながら部
分ケーシング１を引き上げる。この回転・引き上げの途
中、部分ケーシング１に取りつけた薬液注入管１Ｃの先
端から周辺固定液やネガチブフリクションカット材など
の薬液９を既製杭７の周辺地盤に注入する。（図２
（ｅ）） ソイルセメント杭工法による施工手順の例を図３により
説明する。

【００２０】（１）部分ケーシング１の上端をスイベル
３を介して回転装置２に取付け、円周方向に回転させな
がら地盤中に圧入する。（図３（ａ）） （２）回転装置２より部分ケーシング１を取り外し、代
わりにアースオーガーなどの掘削機４を取付けて部分ケ
ーシング１内の地盤を所定の深さまで掘削し、掘削機４
を引き上げて部分ケーシング１内の土砂５を地上に排出
する。（図３（ｂ））。以上の（１）、（２）の手順は
プレボーリング埋め込み工法の場合と同じである。

【００２１】（３）掘削機４を降ろし部分ケーシング１
下の地盤を削孔しながら掘削機４先端部より削孔内にセ
メントミルク１０を注入する。この際、削孔内の土砂と
注入したセメントミルク１０とをよく攪拌する。セメン
トミルク１０の注入につれて削孔内の混練物の表面は段
々上昇してくるので、この混練物の表面が地表付近の所
定の高さに到達するとセメントミルク１０の注入を停止
する。（図３（ｃ）） （４）支持層まで削孔した後、攪拌を続けながら掘削機
４を引き上げる。この間、混練を十分に行いたい場所に
おいては必要に応じ掘削機の前進・後退を繰り返してソ
イルセメント杭１１を構築する。（図３（ｄ））。この
ソイルセメント杭１１の構築時に、目的によってＨ型鋼
や鉄筋籠などが挿入されたり、されなかったりする。

【００２２】（５）再び、部分ケーシング１の上端をス
イベル３を介して回転装置２に取付け、円周方向に回転
させながら部分ケーシング１を引き上げる。この回転・
引き上げの途中、部分ケーシング１に取りつけた薬液注
入管１Ｃの先端から周辺固定液やネガチブフリクション
カット材などの薬液９をソイルセメント杭１１の周辺地
盤に注入する。（図３（ｅ））

【００２３】

【発明の効果】本発明は、削孔刃および薬液注入管を備
えた部分ケーシングを使用し、部分ケーシング内を空掘
りすることによって（１）セメント分や地盤安定液を含
む公害型土砂の排出量を皆無もしくは大幅に削減でき
る。（２）部分ケーシング圧入の鉛直精度が向上し、掘
削孔の鉛直精度が向上する。（３）部分ケーシングの引
き抜き作業を利用して設置杭の周辺地盤の改良を容易に
行うことができる。などの効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明で使用する部分ケーシングの１例の先端
部を示し、（ａ）は底面図、（ｂ）は側面図である。

【図２】本発明をプレボーリング埋め込み工法により実
施する工程縦断面図である。

【図３】本発明をソイルセメント杭工法により実施する
工程縦断面図である。

【符号の説明】

１・・部分ケーシング、１Ａ・・鋼管、１Ｂ・・フリク
ションカッター、１Ｃ・・薬液注入管、１Ｄ・・削孔
刃、２・・回転装置、３・・スイベル、４・・掘削機、
５・・土砂、６・・地盤安定液、７・・既製杭、８・・
杭先端根固め液、９・・薬液、１０・・セメントミル
ク、１１・・ソイルセメント杭。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 （Ａ）先端に削孔刃およびフリクション
   カッターを備え、外周面に薬液注入管を備えた鋼管より
   なる部分ケーシングを円周方向に回転させて地盤中に圧
   入した後、部分ケーシング内を掘削して掘削土を排出す
   る工程、（Ｂ）常法のプレボーリング埋め込み工法によ
   り部分ケーシング下方地盤を地盤安定液を注入しながら
   削孔して支持層に達する既製杭を設置する工程、（Ｃ）
   部分ケーシングを円周方向に回転させて引き抜きながら
   薬液注入管の先端より周辺地盤に薬液を注入する工程、
   よりなる部分ケーシング杭工法。
2. 【請求項２】 （Ａ）先端に削孔刃およびフリクション
   カッターを備え、外周面に薬液注入管を備えた鋼管より
   なる部分ケーシングを円周方向に回転させて地盤中に圧
   入した後、部分ケーシング内を掘削して掘削土を排出す
   る工程、（Ｂ）常法のソイルセメント杭工法により部分
   ケーシング下方地盤を削孔、攪拌しながらセメントミル
   クまたはセメントモルタルを注入して支持層に達するソ
   イルセメント杭を構築する工程、（Ｃ）部分ケーシング
   を円周方向に回転させて引き抜きながら薬液注入管の先
   端より周辺地盤に薬液を注入する工程、よりなる部分ケ
   ーシング杭工法。