JPH08201Y2 - アンチスキッド制御装置 - Google Patents

アンチスキッド制御装置

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JPH08201Y2
JPH08201Y2 JP3823789U JP3823789U JPH08201Y2 JP H08201 Y2 JPH08201 Y2 JP H08201Y2 JP 3823789 U JP3823789 U JP 3823789U JP 3823789 U JP3823789 U JP 3823789U JP H08201 Y2 JPH08201 Y2 JP H08201Y2
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【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案はアンチスキッド制御装置に関するものであ
り、特に、アンチスキッド制御中に車輪の接する路面の
摩擦係数が急増した場合や、ブレーキ操作力が急減した
場合に制動距離が延びることを防止する技術に関するも
のである。
〔従来の技術〕 アンチスキッド制御は、車両の制動時に車輪に加えら
れる制動トルクが路面の摩擦係数との関係において過大
であるために、車輪がロックして路面上を滑ることを防
止する制御である。そして、このアンチスキッド制御が
可能なアンチスキッド制御装置の一つとして次のものが
既に知られている。車輪の回転を抑制するブレーキを作
動させるホイールシリンダをマスタシリンダとリザーバ
とに択一的に連通させる電磁弁装置と、車輪に過大なス
リップが生じれば、少なくとも減圧モードと緩増圧モー
ドとを含む複数のモードにより電磁弁装置を介してホイ
ールシリンダの液圧を増減させる単位制御を複数回実行
するアンチスキッド制御を行う電気的制御装置とを備え
たものが知られているのである。
なお、マスタシリンダは、ブレーキペダル等のブレー
キ操作部材の操作に応じたブレーキ液圧を発生させるも
のである。
また、緩増圧モードは例えば次のようにして実現する
ことができる。電磁弁装置が少なくとも、ホイールシリ
ンダをリザーバから遮断してマスタシリンダに連通させ
る増圧状態とマスタシリンダから遮断してリザーバに連
通させる減圧状態とを持つ場合には、電磁弁装置を増圧
状態と減圧状態とに交互に複数回切り換えることによっ
て実現することができ、また、電磁弁装置がホイールシ
リンダをマスタシリンダに絞った液通路で連通させる緩
増圧状態を持つ場合には、電磁弁装置を緩増圧状態に継
続的に切り換えることによって実現することができるの
である。電磁弁装置が増圧状態と減圧状態とに加えて、
ホイールシリンダをリザーバにもマスタシリンダにも連
通させない保圧状態を持つ場合には、増圧状態と保圧状
態とに交互に複数回切り換えることによって実現するこ
ともできる。
路面の摩擦係数は毎回のアンチスキッド制御の間で一
定であるとは限らず、むしろ変動するのが普通である。
そのため、ホイールシリンダ液圧を制御するための各モ
ードの制御特性を全てのアンチスキッド制御の間で等し
くなるように固定したのでは、ホイールシリンダ液圧の
制御精度を十分高めることができず、制動距離が延び
る。
このような事態の発生を回避するための一対策とし
て、前記電気的制御装置を、各回の単位制御における複
数のモードの少なくとも一つのモードの制御特性を前回
の単位制御の実行結果に基づいて修正しつつアンチスキ
ッド制御を行うものに変更するという対策が既に知られ
ている。本出願人の出願に係る特開昭62-1666号公報に
記載のアンチスキッド制御装置もその対策が施された一
例である。
〔考案が解決しようとする課題〕
路面の摩擦係数は各アンチスキッド制御中には多く変
化しないのが普通である。このような事情から、従来の
アンチスキッド制御装置は、通常のアンチスキッド制御
においてホイールシリンダ液圧が高い精度で制御される
ように、各回の単位制御における制御特性(以下、単位
制御を省略して単に各回の制御特性という)を通常のア
ンチスキッド制御に好適な通常規則に従って修正してい
た。この通常規則は、例えば、前回の単位制御の実行結
果がアンチスキッド制御に対して予め定められる制御目
標から外れていれば、今回の制御特性を、その制御特性
で今回の単位制御を実行すればそれの実行結果が制御目
標に近づくと推定される方向に、比較的少ない一定量だ
け修正する規則であって、前回の単位制御の実行結果と
制御目標との差、すなわち前回の制御特性の誤差によっ
ては修正量が変化しない規則である。前回の制御特性の
誤差の多少とは無関係に、各回の制御特性を一律に修正
する規則なのである。
アンチスキッド制御中に車輪の接する路面が例えば凍
結路から乾燥したアスファルト路へ突然変化し、路面の
摩擦係数が急増することがある。この場合でも、従来の
アンチスキッド制御装置は各回の制御特性を通常規則に
従って修正するため、制御特性が実際の路面に適した制
御特性に修正されるまでに時間がかかる。そして、その
修正が完了するまでの間、ホイールシリンダ液圧が実際
の路面に適した制御特性より低μ路側にずれた制御特性
に従って制御されることとなるため、緩増圧モードの継
続時間である緩増圧時間が長くなって、ホイールシリン
ダ液圧の不足傾向が生じ、制動距離が長くなるという問
題があった。
また、通常のアンチスキッド制御においては、ブレー
キ操作部材の操作力であるブレーキ操作力も大きく変化
しないのが普通であるが、何らかの事情でブレーキ操作
力が大きく減少する場合がある。アンチスキッド制御装
置には、アンチスキッド制御中にブレーキ操作力が減少
すると、ホイールシリンダ液圧の不足傾向が生じる特性
を有するものが存在し、この種のアンチスキッド制御装
置においては、アンチスキッド制御中に路面の摩擦係数
が急増した場合のみならず、ブレーキ操作力が急減した
場合にも制動距離が長くなるという問題がある。
本考案は、通常規則とは別に、アンチスキッド制御中
に路面の摩擦係数が急増したり、ブレーキ操作力が急減
したために緩増圧時間が通常より長くなった特定時に好
適な制御特性の修正規則を定めることにより上記問題を
解決することを課題として為されたものである。
〔課題を解決するための手段〕
本考案は、前述の電磁弁装置と、車輪に過大なスリッ
プが生じれば、少なくとも減圧モードと緩増圧モードと
を含む複数のモードにより電磁弁装置を介してホイール
シリンダの液圧を増減させる単位制御を複数回実行し、
かつ、前回の単位制御の実行結果がアンチスキッド制御
に対して予め定められる制御目標から外れていた場合
に、今回の単位制御における前記複数のモードの少なく
とも一つのモードの制御特性を、その制御特性で今回の
単位制御を実行すればそれの実行結果が制御目標に近づ
くと推定される方向に、予め定められた一定量だけ修正
する通常規則に従って修正しつつアンチスキッド制御を
行う電気的制御装置とを含むアンチスキッド制御装置
に、前回の単位制御における緩増圧モードの継続時間が
予め定められた最大時間に達した特定時には、今回の単
位制御における前記制御特性を、前記通常規則における
前記一定量より大きい量修正する特定規則に従って修正
する制御特性修正手段を設けたことを要旨とする。
〔作用〕
本考案装置は、アンチスキッド制御中に路面の摩擦係
数が急増したり、ブレーキ操作力が急減したために前回
の緩増圧時間が最大時間に達し、今回の制御特性を通常
規則に従って緩やかに修正したのでは制動距離が長くな
る可能性のある場合には、今回の制御特性を通常規則と
は異なる特定規則に従って修正する。
この特定規則は例えば、今回の制御特性を、通常規則
での修正量より大きな修正量で修正する規則とすること
ができる。このようにすれば、各回の制御特性が路面の
摩擦係数とブレーキ操作力とに適した値に修正されるま
でに必要な時間が短縮されることとなって、制動距離の
延びが抑制される。
また、特定規則は、今回の制御特性を、車輪が接する
ことを予定された路面の中で最大あるいはそれに近い摩
擦係数を有する基準路面に適した制御特性に設定する規
則とすることもできる。今回の制御特性を前回の制御特
性に準じたものとするのではなく、基準路面に適した制
御特性とするのであり、この場合にも、制御特性は通常
規則に従って修正量より大きい量修正されるのが普通で
ある。ごく特殊な場合、すなわち、そのときの制御特性
が既に上限に達している場合には、特定規則に従った修
正量は0となり、またそのときの制御特性と上限との差
が通常規則における一定の修正量より小さい場合には、
特定規則に従った修正量が通常規則における一定の修正
量より小さくなるが、可能である限り、制御特性が通常
規則に従った修正量より大きい量修正されるのである。
特定規則に従って修正した場合の制御特性の誤差が、通
常規則に従って修正した場合の制御特性の誤差より大き
くなり、制御特性が路面の摩擦係数とブレーキ操作力と
に適した適正制御特性に修正されるまでに必要な時間が
長くなる可能性がある。しかし、この場合、その修正が
完了するまでの間、ホイールシリンダ液圧が適正制御特
性より高μ路側にずれた制御特性に従って制御されるこ
ととなるため、ホイールシリンダ液圧の不足傾向が生じ
ず、制動距離の延びが抑制される。
電気的制御装置と制御特性修正手段とによって修正さ
れる制御特性として例えば、緩増圧モードの一制御特性
であるホイールシリンダ液圧の緩増圧勾配を選ぶことが
できる。例えば、通常規則においては緩増圧勾配を一定
量ずつ増大させ、あるいは減少させるようにしておき、
特定規則においては緩増圧勾配を上記一定量より大きい
量増大させるのである。このようにしてもアンチスキッ
ド制御中の路面の急増等に良好に対処することができ
る。
また、電気的制御装置が減圧モードと緩増圧モードと
に加えて、ホイールシリンダ液圧を緩増圧モードの場合
より速やかに増大させる急増圧モードを有しており、ホ
イールシリンダ液圧を減圧モードと緩増圧モードとでそ
れぞれ制御する期間の間に、ホイールシリンダ液圧を急
増圧モードで設定時間の間増大させる形式である場合に
は、例えば、急増圧モードの一制御特性である設定時間
やホイールシリンダ液圧の急増圧勾配を修正すべき制御
特性を選ぶこともできる。特定規則に従って修正される
制御特性として設定時間を選ぶ場合には、例えば後に実
施例の説明において詳述するように、通常規則において
は予め定められた一定量ずつ修正されるのを、一挙に最
高μ路に適した長さに変更したり、通常規則に従う場合
より大きい量長くしたりするのである。また、急増圧勾
配を選ぶ場合には、通常規則に従う場合より大きい量増
大させたりするのであり、いずれにしても、通常規則に
従って制御特性を修正したのではホイールシリンダの液
圧が不足気味になってしまうのを、回避する方向に制御
特性を通常規則に従う場合より大きく修正すればよいの
である。
〔考案の効果〕
以上の説明から明らかなように、本考案に従えば、ア
ンチスキッド制御中に路面の摩擦係数が急増した場合
や、ブレーキ操作力が急減した場合に制動距離の延びが
小さく抑えられるという効果が得られる。
〔実施例〕
以下、本考案を4輪自動車用アンチスキッド型液圧ブ
レーキ装置に適用した場合の一実施例を図面に基づいて
詳細に説明する。
第2図において、符号10はタンデム型ブレーキマスタ
シリンダ(以下、単にマスタシリンダという)を示す。
マスタシリンダ10は、ブレーキペダル12の操作力に応じ
て2つの独立した加圧室に等しい高さの液圧を発生させ
る。一方の加圧室の液圧は左右前輪にそれぞれ設けられ
たブレーキのホイールシリンダに伝達され、他方の加圧
室の液圧は左右後輪のホイールシリンダに伝達される。
第2図にはそのうち左前輪のホイールシリンダ14のみが
図示されており、以下の説明は左前輪についてのみ行
う。ホイールシリンダ14は液通路18,20によってマスタ
シリンダ10に接続されており、その途中に電磁弁装置と
しての2位置弁22が設けられている。
2位置弁22はリザーバ通路26によってリザーバ28と接
続されている。2位置弁22は常には液通路20をリザーバ
通路26から遮断して液通路18に連通させ、マスタシリン
ダ10の液圧がホイールシリンダ14に伝達されることを許
容する増圧位置にあるが、ソレノイド32が励磁された場
合には、液通路20を液通路18から遮断してリザーバ通路
26に連通させ、ホイールシリンダ14内のブレーキ液がリ
ザーバ28へ排出されることを許容する減圧位置となる。
リザーバ28に排出されたブレーキ液はモータ34によって
駆動されるポンプ36によって汲み上げられて液通路18へ
戻される。液通路18と20には、ホイールシリンダ14から
2位置弁22をバイパスしてマスタシリンダ10へブレーキ
液が還流することを許容する還流通路38が接続されてい
る。還流通路38にはブレーキ液の逆流を防止する逆止弁
40が設けられている。符号42,44は逆止弁である。
ソレノイド32はコンピュータを主体とするコントロー
ラ50によって制御される。コントローラ50には、左前輪
と共に回転するディスクロータ52の回転速度、すなわ
ち、左前輪の回転を検出する回転センサ54と、左前輪以
外の車輪の回転を検出する回転センサと、ブレーキペダ
ル12の踏込みを検出するブレーキスイッチ58とが接続さ
れている。なお、コントローラ50は必要に応じて上記モ
ータ34を発停させる機能をも有する。
コントローラ50はまた、第3図にフローチャートで示
すメインプログラムを始め、各種制御プログラムを記憶
している。それら制御プログラムの実行によりアンチス
キッド制御が行われる。
アンチスキッド制御が実行される様子を説明する。な
お、左前輪に対するアンチスキッド制御についてのみ説
明し、他の車輪に対する制御については説明を省略す
る。
車両のイグニッションスイッチが操作されない状態で
は、2位置弁22が増圧位置にあり、マスタシリンダ10の
液圧が2位置弁22を経てホイールシリンダ14に伝達され
る。
イグニッションスイッチが操作されれば、第3図のメ
インプログラムの実行が開始される。まず、ステップS1
(以下単にS1という。他のステップについても同じ)に
おいて初期設定が行われ、これにより、アンチスキッド
フラグ,第1および第2急増フラグ(路面の摩擦係数が
急増したことを表すフラグ)ならびに急減フラグ(路面
の摩擦係数が急減したことを表すフラグ)が共にがリセ
ットされるとともにnの値が0にセットされる。S2にお
いて、回転センサ54等から信号が取り込まれて、その検
出結果から左前輪の現在の車輪速度VW,車輪加速度GW
よび推定車速VSOが演算されるとともに、その推定車速V
SOに所定のスリップ率を見込んで基準速度VSNが演算さ
れる。
S3において、ブレーキスイッチ58によってブレーキペ
ダル12の踏込みが検出されたか否かが判定され、S4にお
いて、アンチスキッド制御を許可する状態であるか否
か、すなわち、推定車速VSOが予め定められた制御許可
速度VL(例えば時速数kmというように小さい速度)以上
であるか否かを判定される。現在ブレーキペダル12が踏
み込まれていないか、あるいは踏み込まれたがそのとき
の推定車速VSOが小さい場合いは、S5においてアンチス
キッドフラグ,第1および第2急増フラグならびに急減
フラグが共にリセットされ、S6においてnの値が0にセ
ットされる。そして、S6aにおいて後述の修正比率γが
1にセットされ、S7において2位置弁22に消磁指令が出
されることにより2位置弁22が増圧位置に保たれ、その
後、S2に戻る。
これに対して、ブレーキペダル12が踏み込まれ、推定
車速VSOが制御許可速度VL以上である場合には、S3およ
びS4の判定結果が共にYESとなり、S8が実行される。
S8において、左前輪に強いロック傾向が生じたか否
か、すなわち、本実施例においては、左前輪の車輪速度
VWが基準速度VSN以下となり、かつ車輪加速度GWが負の
第1基準加速度G1以下となったか否かが判定される。ブ
レーキペダル12の現在の踏力が路面の摩擦係数との関係
において適正であり、左前輪に強いロック傾向が生じな
い場合には、左前輪についてアンチスキッド制御を行う
必要がなく、S8の判定結果がNOとなり、S9において第1
急増フラグがセットされているか否かがを判定される。
今回はセットされていないから、S9の判定結果がNOとな
り、S10において、アンチスキッドフラグがセットされ
ているか否かが判定される。今回はセットされていない
から、S10の判定結果がNOとなり、S5以後のステップが
実行される。
これに対して、ブレーキペダル12の現在の踏力が路面
の摩擦係数との関係において高過ぎ、左前輪に強いロッ
ク傾向が生じた場合には、S8の判定結果がYESとなり、
以後アンチスキッド制御が実行される。以下、アンチス
キッド制御が実行される様子を詳細に説明するが、ま
ず、通常のアンチスキッド制御を、推定車速VSO,基準
速度VSN,左前輪の車輪速度VWおよび車輪加速度GWなら
びにホイールシリンダ液圧が変化する様子の一例を示す
第4図(a)ないし(c)のグラフを参照しつつ説明す
る。
まず、概略的に説明する。
左前輪に強いロック傾向が生じた場合には、まず、ホ
イールシリンダ液圧が急速に、すなわち減圧モードで減
圧される。この減圧によって左前輪にロック傾向の解消
傾向が生じれば、ホイールシリンダ液圧の保圧と緩増圧
とのいずれかが行われる。保圧はホイールシリンダ液圧
を一定に保つことであり、緩増圧はホイールシリンダ液
圧を緩増圧モードで増圧することである。左前輪に生じ
たロック傾向が極めて強い場合には保圧が行われ、そう
でない場合には緩増圧が行われる。なお、第4図の例
は、初回の単位制御におけるロック傾向は極めて強かっ
たが2回目の単位制御におけるロック傾向はそれ程では
なかった場合の一例である。
保圧または緩増圧によって左前輪のロック傾向が解消
されれば、ホイールシリンダ液圧が急速に、すなわち急
増圧モードで増圧される。この急増圧は可変の設定時間
TCSの間行われる。その設定時間TSCは基本時間TCFと前
記修正比率γとの積として決定される。それら設定時間
TCS,基本時間TCFおよび修正比率γについては後に後述
する。急増圧の終了後、緩増圧が行われ、この緩増圧に
よってホイールシリンダ液圧が回復し、再び左前輪に強
いロック傾向が生じれば、次回の減圧が行われる。通常
のアンチスキッド制御においては、それら減圧,保圧
(または緩増圧),急増圧および緩増圧が順次行われる
単位制御が複数回繰り返されることとなる。
なお、本実施例においては、2位置弁22をそれぞれ増
圧位置と減圧位置とに保つことによって減圧モードと急
増圧モードとを得ている。
また、2位置弁22を増圧位置と減圧位置とに交互に一
定時間ずつ切り換えるデューティサイクルを何回も繰り
返すことによって保圧モードと緩増圧モードとを得てい
る。各デューティサイクルにおける増圧位置と減圧位置
との継続時間比率が、保圧の場合にはホイールシリンダ
液圧をほぼ一定に保つ大きさに設定され、緩増圧の場合
にはホイールシリンダ液圧を急増圧の場合より緩やかに
増大させる大きさに設定されているのである。ただし、
保圧モードにおいては増圧位置および減圧位置の順に切
り換えられるのに対し、緩増圧モードにおいてそれとは
逆に減圧位置および増圧位置の順に切り換えられるよう
になっている。
次に、通常のアンチスキッド制御が実行される様子を
第3図のフローチャートに基づいて具体的に説明する。
まず、S11においてアンチスキッドフラグがセットさ
れ、その後、S12において左前輪にロック傾向の解消傾
向が生じたか否か、すなわち、本実施例においては、左
前輪の車輪加速度GWが減少傾向から増大傾向に転じたか
否かが判定される。現在、左前輪の車輪加速度GWには減
少傾向が生じているから、S12の判定結果がNOとなる。
その後、S13において急減フラグがセットされているか
否かが判定される。今回はセットされていないから判定
結果がNOとなり、S15において2位置弁22が励磁されて
減圧位置に切り換えられ、S16において第1急増フラグ
がリセットされる。なお、このS16の実行は通常のアン
チスキッド制御においては意味を持たず、アンチスキッ
ド制御中に路面の摩擦係数が急増した場合に意味を持
つ。アンチスキッド制御中に路面の摩擦係数が急増した
場合については後に詳述する。
以後、S2およびS4,S8,S11ないしS13,S15およびS16か
ら成るループが何回も実行され、左前輪にロック傾向の
解消傾向が生じたためにS12の判定結果がYESとなること
によって、そのループの実行が終了させられる。S12の
判定結果がYESとなるまで、2位置弁22が減圧位置に保
たれる結果、ホイールシリンダ14内のブレーキ液がリザ
ーバ28へ継続的に排出され、これにより、ホイールシリ
ンダ液圧が減圧モードで減圧されるのである。
そして、左前輪にロック傾向の解消傾向が生じたため
にS12の判定結果がYESとなったならば、S17において、
今回の単位制御における減圧の減圧時間TAが予め定めら
れた判定値より長かったか否かが判定されることによ
り、今回の減圧開始時に左前輪に生じたロック傾向が極
めて強かったか否かが判定される。減圧時間TAが判定値
より長かった場合にはロック傾向が極めて強かったと判
定され、判定値以下であった場合にはそうでないと判定
される。
以下、ロック傾向が極めて強かったと判定して説明す
る。この場合には、S17の判定結果がYESとなり、S18に
おいてホイールシリンダ液圧が保圧モードで制御され
る。保圧の開始当初であって、左前輪に強いロック傾向
が生じているS8の判定結果がYESである間は、S18,S2な
いしS4,S8,S11,S12およびS17から成る第1ループが繰り
返し実行される。その後、左前輪に強いロック傾向が生
じなくなってS8の判定結果がNOとなった後には、S2ない
しS4,S8ないしS10,S18aおよびS18から成る第2ループが
繰り返し実行される。S18aにおいて、左前輪のロック傾
向が解消されたか否か、すなわち、本実施例において
は、左前輪の車輪加速度GWが増大して正の第2基準加速
度G2を超え、その後、車輪加速度GWが減少して第2基準
加速度G2を下回ったか否かが判定される。左前輪のロッ
ク傾向が解消されたためにS18aの判定結果がYESとなれ
ば、第2ループの実行が終了させられる。
左前輪のロック傾向が解消され、S18aの判定結果がYE
Sとなったならば、S19以後のステップの実行によりホイ
ールシリンダ液圧が急増圧モードで増圧される。
具体的には、S19において急減フラグがセットされ、S
20において、今回の急増圧が今回のアンチスキッド制御
において初回であるか否かが判定される。今回はそうで
あるから判定結果がYESとなり、S20aにおいてそのステ
ップの今回の実行が今回の急増圧において初回であるか
否かが判定される。今回はそうであるから判定結果がYE
Sとなり、S21が実行される。
S21においては前記基本時間TCFが演算される。基本時
間TCFは、左前輪の、今回の単位制御において生じた車
輪加速度GWの最大値(以下、ピークGという)を変数す
る関数fn(nは番号を表し、前述のnと一致する)の値
と、今回の単位制御における前記減圧時間TAとの積とし
て求められる。関数fnは関数f0から関数fmまでのm+1
個の関数fnから選出される。各関数fnの値は第5図に示
すように、ピークGの増大につれて0から増大し、やが
て一定値に収束する特性を有する。また、関数f0の値
は、左前輪が接することを予定された路面の中で最も大
きな摩擦係数を有する路面、すなわち最高μ路に適した
値に定められているのに対し、関数fmの値は、最も小さ
な摩擦係数を有する路面、すなわち最低μ路に適した値
に定められている。そして、関数f0から関数fmまでの各
関数fnの値は、nの値が増大する程小さくなるように定
められている。つまり、nの値が大きい関数fnほど路面
の摩擦係数が小さい場合に好適な関数fnとなっているの
である。
そして、具体的には、S21において、関数fn(現在n
は0)に今回のピークGが代入されることによって関数
fnの値が演算され、その値と今回の減圧時間TAとの積が
今回の基本時間TCFとして格納される。基本時間TCFが今
回の急増圧に好適な時間として求められたのである。
各単位制御におけるピークGは第4図の一例に示すよ
うに、その単位制御において急増圧が開始されるまでに
発生するのが普通である。したがって、今回の急増圧が
今回のアンチスキッド制御において初回であっても、そ
の急増圧の開始前に減圧時間TAもピークGも判る。しか
し、現在の路面に適するnの値は正確に把握することは
困難である。そこで、本実施例においては、S6において
nの値を0とすることにより、今回はm+1個の関数fn
の中から関数f0を選出するようになっている。本実施例
においては、各アンチスキッド制御の開始に先立ってS6
が実行され、nの、各アンチスキッド制御の初回の単位
制御における値(以下、nの初期値という)が0に設定
されるようになっているのである。初回の急増圧が、最
高μ路に適した関数f0にピークGを代入することによっ
て得られた値と減圧時間TAとの積に等しい時間行われる
こととなるのであり、現在の路面が最低μ路であっても
ホイールシリンダ液圧の不足傾向は生じない。
その後、S22において基本時間TCFと修正比率γとの積
が今回の急増圧の設定時間TCSとして格納される。現
在、修正比率γは1であるから、結局、基本時間TCF
設定時間TCSとして格納されることになる。
S23において設定時間TCSが上限時間TCHより長いか否
かが判定され、長いならばS24において上限時間TCHが設
定時間TCSとして格納される。これに対して、設定時間T
CSが上限時間TCHを超えておらず、S23の判定結果がNOで
あれば、S25において設定時間TCSが下限時間TCLより短
いか否かが判定される。短いならばS26において下限時
間TCLが設定時間TCSとして格納される。これらS23ない
しS26の実行により、設定時間TCSが上限時間TCHと下限
時間TCLとによって画定される許容範囲から逸脱しない
ように調整されるのである。
その後、S27において、設定時間TCSが満了したか否
か、すなわち、今回の急増圧モードの実際の継続時間で
ある急増圧実時間TCAが設定時間TCSと一致したか否かが
判定される。今回の実行は今回の急増圧において初回で
あるから、設定時間TCSが満了していないのが普通であ
って、S27の判定結果がNOとなるため、S7において2位
置弁22が励磁されて増圧位置に切り換えられる。ホイー
ルシリンダ液圧が急増圧モードで増圧される状態へ移行
させられるのである。
その後、S2以後が実行されれば、現在、左前輪に強い
ロック傾向が生じていないためにS8の判定結果がNOとな
り、第1急増フラグはセットされていないためにS9の判
定結果がNOとなり、アンチスキッドフラグはセットされ
ているためにS10の判定結果がYESとなる。その後、S18a
が実行される。S18aは、左前輪のロック傾向が解消され
た場合のみならず、左前輪に強いロック傾向が生じてい
ない場合にも判定結果がYESとなるように定められてい
るから、S18aの判定結果がYESとなってS19が実行され
る。
S19において再び急減フラグがセットされ、S20におい
て、今回の急増圧が今回のアンチスキッド制御において
初回であるか否かが判定される。今回もまたそうである
からS20の判定結果がYESとなり、S20aにおいてそのステ
ップの今回の実行が今回の急増圧において初回であるか
否かが判定される。今回は2回目であって、初回ではな
いから判定結果がNOとなり、設定時間TCSの演算が省略
されて、直ちにS27へ移行する。
その後、S27において設定時間TCSが満了したか否かが
判定される。現在満了していないと仮定すれば、S27の
判定結果がNOとなり、再びS7以後のステップが実行され
る。S7,S2ないしS4,S8ないしS10,S18a,S19,S20,S20aお
よびS27から成るループが繰り返し実行され、設定時間T
CSが満了したためにS27の判定結果がYESとなれば、その
ループの実行が終了させられる。
その後、S28において急減フラグがリセットされる。
今回の急増圧が設定時間TCSの間行われた場合には、今
回の急増圧中に路面の摩擦係数が急減しなかったと判定
され、S28において急減フラグがリセットされるが、今
回の急増圧が設定時間TCSの満了前に終了させられた場
合には、路面の摩擦係数が急減したと判定され、急減フ
ラグがセットされたままとされる。なお、路面の摩擦係
数が急減した場合についても後に詳述する。
その後、S29においてホイールシリンダ液圧が緩増圧
モードに増圧される。現在、左前輪に強いロック傾向が
生じていないためにS8の判定結果もS18aの判定結果もNO
となり、その結果、S29,S30,S2ないしS4,S8ないしS10,S
18aおよびS17から成るループが繰り返し実行される。S3
0においては、緩増圧の実際の継続時間である緩増圧実
時間TBが予め定められた最大時間TBMAX以上であるか否
かが判定される。本実施例においては、最大時間TBMAX
が、緩増圧がこれ以上長く行われると今回の単位制御に
おける制動距離が延びるとともに、次回の急増圧の設定
時間TCSを通常のアンチスキッド制御における場合と同
じ規則に従って修正したのでは、次回の単位制御におけ
る制動距離が延びるのと推定される長さに定められてい
る。今はアンチスキッド制御が通常のアンチスキッド制
御であると仮定しているから、今回のアンチスキッド制
御の各単位制御においては、緩増圧実時間TBが最大時間
TBMAXに達しないうちに、すなわち、S30の判定結果がYE
Sとなることなく、左前輪に強いロック傾向が生じてS8
の判定結果がYESとなることにより、上記ループの実行
が終了させられる。つまり、S30の実行は、通常のアン
チスキッド制御においては意味を持たず、路面の摩擦係
数が急増した場合に意味を持つのである。
そして、今回の緩増圧によって再び左前輪に強いロッ
ク傾向が生じたならば、2回目の単位制御が行われる。
今回の単位制御においても初回の単位制御とほぼ同様に
ホイールシリンダ液圧が制御されるのであるが、急増圧
の実行される様子が前回の場合と異なる。
今回の急増圧においては、S19において前回の場合と
同様に急減フラグがセットされた後に行われるS20の判
定結果がNOとなり、S30aが実行される。ここではS30aの
判定結果がYESとなり、S30bにおいて第2急増フラグが
セットされているか否かが判定される。今回はセットさ
れていないからS30bの判定結果がNOとなり、S31以後の
ステップが実行される。
S31において、前回の単位制御における緩増圧の緩増
圧実時間TBがそれの適正範囲の上限時間TBHを超えたか
否かが判定される。上限時間TBHは前記最大時間TBMAX
り短く定められている。緩増圧実時間TBが上限時間TBH
を超えたならば、S32において関数fnの番号であるnの
値が1だけ減少させられる。これにより、前回の関数fn
より1ランクだけ最高μ路側の関数fn-1が今回の関数fn
として選出されることになる。これに対して、緩増圧実
時間TBが上限時間TBHを超えていなければ、S33において
緩増圧実時間TBが適正範囲の下限時間TBLを下回ったか
否かが判定される。下限時間TBLを下回ったならば、S34
において関数fnの番号であるnの値が1だけ増大させら
れる。これにより、前回の関数fnより1ランクだけ最低
μ路側の関数fn+1が今回の関数fnとして選出されること
になる。
その後、S33においてnの値が0より小さいか否かが
判定される。0より小さい場合には、S36において0が
nの値として格納され、S36aにおいて修正比率γが1に
セットされる。一方、nの値が0以上である場合には、
S37においてnの値がmより大きいか否かが判定され
る。そうであれば、S38においてmの値がnとして格納
される。nの値が必ず0とmとの間の値を取るようにさ
れるのである。以後、2回目の急増圧が初回の急増圧と
同様に実行される。
以上、左前輪に生じロック傾向が極めて強かった場合
を説明したが、次に、それ程強くはなかった場合を説明
する。
左前輪に強いロック傾向が生じたためにホーイルシリ
ンダ液圧の減圧が開始され、その減圧によって左前輪に
ロック傾向の解消傾向が生じたためにS12の判定結果がY
ESとなれば、S17においてロック傾向が極めて強かった
か否かが判定される。ここではそうでないと仮定してい
るから、判定結果がNOとなり、S29においてホイールシ
リンダ液圧が緩増圧モードで増圧される。
今回の緩増圧は先に説明した緩増圧、すなわち急増圧
と減圧との間に行われる緩増圧とは実行終了の条件が異
なる。緩増圧が開始された当初は、左前輪に強いロック
傾向は生じているがそれの解消傾向も生じているから、
S8の判定結果がYESとなるとともにS12の判定結果がYES
となる。そのため、S29,S30,S2ないしS4,S8,S11,S12お
よびS17から成る第1ループが繰り返し実行される。そ
の後、左前輪に強いロック傾向は生じなくなったがそれ
が解消されていない状態となれば、S8の判定結果がNOと
なるとともにS18aの判定結果がNOとなり、その結果、S2
9,S30,S2ないしS4,S8ないしS10,S18aおよびS17から成る
第2ループが繰り返し実行される。そして、第2ループ
の実行は、先に説明した緩増圧のように、左前輪に強い
ロック傾向が生じたときにS8の判定結果がYESとなるこ
とによって終了させられるのではなく、左前輪のロック
傾向が解消されたときにS18aの判定結果がYESとなるこ
とによって終了させられる。
以上説明した減圧,保圧(または緩増圧),急増圧お
よび緩増圧が順に行われる単位制御が複数回実行される
ことにより、左前輪のスリップが適正範囲に保たれる。
そして、ブレーキペダル12の踏込みが解除されたために
S3の判定結果がNOとなるか、あるいは推定車速VSOが制
御許可速度VLより小さくなってS4の判定結果がNOとなっ
たならば、S5においてアンチスキッドフラグ,急減フラ
グ,第1急増フラグおよび第2急増フラグが共にリセッ
トされ、S6においてnの値が0にセットされ、S6aにお
いて修正比率γが1にセットされ、S7において2位置弁
22に消磁指令が出されて増圧位置に切り換えられること
によって今回のアンチスキッド制御が終了させられる。
次に、アンチスキッド制御中に路面の摩擦係数が急増
した場合を第1図のグラフを参照しつつ説明する。な
お、このグラフは、アンチスキッド制御の第l回目の緩
増圧が最低μ路で開始されたがその途中で突然最高μ路
へ移行した場合におけるホイールシリンダ液圧の変化の
一例を表す。
この場合には、緩増圧によって左前輪に強いロック傾
向が生じるのに時間がかかる。そのため、第l回目の緩
増圧が通常より長く行われて、緩増圧実時間TBが最大時
間TBMAXに達する。したがって、今回のアンチスキッド
制御において、緩増圧を行うための、第3図のS29,S30,
S2ないしS4,S8ないしS10,S18aおよびS17から成るループ
の実行が、S30の判定結果がYESとなることによって終了
させられる。
その後、S40において第1および第2急増フラグが共
にセットされた後、S7において2位置弁22が増圧位置に
切り換えられる。これにより、ホイールシリンダ液圧が
急増圧モードで増圧される。現在、左前輪に強いロック
傾向が生じていないためにS8の判定結果がNOとなるとと
もに、第1急増フラグがセットされているためにS9の判
定結果がYESとなるから、S7,S2ないしS4,S8およびS9か
ら成るループが繰り返し実行される。急増圧によって左
前輪に強いロック傾向が生じたためにS8の判定結果がYE
Sとなれば、上記ループの実行が終了させられる。
その後、第l+1回目の減圧および保圧が順次実行さ
れ、左前輪のロック傾向が解消されれば、S19以後の実
行により、ホイールシリンダ液圧が急増圧モードで増圧
される。
S20において今回の急増圧が今回のアンチスキッド制
御において初回であるか否かが判定される。今回はl+
1回目であって、初回ではないから判定結果がNOとな
り、S30aにおいてそのステップの今回の実行が今回の急
増圧において初回であるか否かが判定される。今回はそ
うであるから判定結果がYESとなる。その後、S30bにお
いて第2急増フラグがセットされているか否かが判定さ
れる。今回はセットされているから判定結果がYESとな
り、S40aにおいて第2急増フラグがリセットされた後、
S41においてnの値が0にセットされる。nの値が前回
の値とは無関係に0、すなわち前記nの初期値に復帰さ
せられるのであり、今回の単位制御においては最高μ路
に適した関数f0が選出されることになる。S41aにおいて
は修正比率γが1にセットされる。
その後、S21ないしS26の各ステップが実行され、S27
において設定時間TCSが満了したか否かが判定される。
現在、設定時間TCSが満了していないのが普通であるか
ら、S27の判定結果がNOとなり、S7が実行される。
その後、S2ないしS4,S8ないしS10,S18a,S19およびS20
が順次実行され、再びS30aにおいてそのステップの今回
の実行が今回の急増圧において初回であるか否かが判定
される。今回は2回目であって、初回ではないから判定
結果がNOとなり、直ちにS27へ移行する。したがって、
以後、S7,S2ないしS4,S8ないしS10,S18a,S19,S20,S30a
およびS27から成るループが繰り返し実行され、設定時
間TCSが満了したためS27の判定結果がYESとなることに
よって、そのループの実行が終了させられる。その後、
S28において急減フラグがリセットされる。
なお、第2急増フラグはS40aにおいてリセットされた
のに対し、第1急増フラグは未だリセットされていない
が、第1急増フラグは今回の急増圧の後に行われる減圧
時に、S16の実行によってリセットされる。
以上の説明から明らかなように、本実施例において
は、通常のアンチスキッド制御であるために前回の緩増
圧実時間TBが最大時間TBMAXに達しなかった場合には、
その緩増圧実時間TBが上限時間TBHより長ければnの値
が前回より1だけ小さい関数fn-1を、下限時間TBLより
短ければnの値が前回より1だけ大きい関数fn+1を選出
するという、通常のアンチスキッド制御における関数fn
の通常選出規則に従って今回の関数fnが選出されるのに
対し、前回の緩増圧実時間TBが最大時間TBMAXに達した
場合には、nの値を初期値である0に復帰させ、最高μ
路に適した関数f0を選出するという特定選出規則に従っ
て今回の関数fnが選出される。そのため、緩増圧実時間
TBが最大時間TBMAXに達し、急増圧の設定時間TCSが実際
の路面に適した適正時間から大きく外れることとなって
も、設定時間TCSが適正時間に修正されるまでの間、急
増圧が適正時間より長い時間行われるから、次回の単位
制御において、ホイールシリンダ液圧の不足傾向は生じ
ず、制動距離の延びが抑制される。
次に、アンチスキッド制御中に路面の摩擦係数が急減し
た場合を第6図のグラフを参照しつつ説明する。なお、
このグラフは、アンチスキッド制御の第l回目の急増圧
が最高μ路で開始されたがその途中で突然最低μ路へ移
行した場合におけるホイールシリンダ液圧の変化の一例
を表す。
この場合には、第l回の急増圧時に左前輪に強いロッ
ク傾向が生じる。そのため、今回の急増圧は、設定時間
TCSが満了して第3図のS27の判定結果がYESとなること
によって終了させられるのではなく、S8の判定結果がYE
Sとなることによって終了させられる。その後、ホイー
ルシリンダ液圧が減圧モードで減圧される。そして、S1
3において急減フラグがセットされているか否かが判定
されれば、前回の急増圧時にはS28が実行されず、急減
フラグがリセットされなかったから、急減フラグはセッ
トされたままであって、S13の判定結果がYESとなる。
その後、S42においてそのステップの今回の実行が今
回の減圧において初回であるか否かが判定される。今回
は初回であるから、S42の判定結果がYESとなり、S42aお
よびS43が順に実行される。S42aにおいては修正比率修
正係数Δγ(以下、単位Δγという)の値が演算され、
S43においてはそのΔγと修正比率γの現在値(前回の
値)との積が今回の修正比率γとして格納されるのであ
る。
Δγは0から1までの値を取り得るものであり、その
値は関数gによって限定される。関数gの値は第7図に
示すように、前回の急増圧時間TCAを前回の基本時間TCF
で割算した値を変数とし、その変数が増大するにつれて
増大するように定められている。つまり、基本時間TCF
に対して急増圧実時間TCAが短い程、Δγの値が小さく
なるように定められているのである。
したがって、第6図の例のように、第l回目の急増圧
実時間TCAが設定時間TCSすなわち基本時間TCFより短
く、直ちに第l+1回目の減圧へ移行させられた場合に
は、Δγが1より小さくされるから、そのΔγが修正比
率γの前回の値に乗じられれば、修正比率γの値が前回
よりちいさくなる。
ところで、路面の摩擦係数が減少した場合には、前回
の緩増圧実時間TBが0であって、下限時間TBLより短い
ために前回より1ランクだけ最低μ路側の関数fnが選出
されるから、今回の関数fnの値が前回より減少する。し
たがって、Δγを1より小さくせず、1のままにしてお
いても基本時間TCFひいては設定時間TCSが前回より短い
値に修正される。しかし、今回は、路面の摩擦係数が前
回より大きく減少しているのであるから、今回選出され
た関数fnが現在の路面に適しておらず、基本時間TCF
おける修正量(基本時間TCFの前回の値と今回の値との
差)、すなわち、Δγが1である場合における設定時間
TCSの修正量が少なく、この設定時間TCSで急増圧を行っ
ても、前回と同様に今回も急増圧が設定時間TCSの満了
前に終了させられ、今回の単位制御から次回の単位制御
への移行が予定より早い時期に行われる可能性が高い。
そのため、本実施例においては、路面の摩擦係数が急減
した場合には、基本時間TCFを通常のアンチスキッド制
御の場合と同様に短縮するのに加えて、補助的に修正比
率γを1より小さくすることにより、設定時間TCSを通
常のアンチスキッド制御の場合より大きく短縮し、急増
圧が設定時間TCSの間行われる状態、すなわち、急増圧
と緩増圧とによってホイールシリンダ液圧が回復させら
れる状態に早期に戻り得るようになっており、これによ
り、ホイールシリンダ液圧の制御精度低下が抑制され
る。
なお付言すれば、減圧が第4図の例における初回の減
圧時のように急増圧の終了により開始する場合と、同例
における2回目の減圧時のように緩増圧の終了により開
始する場合とがある。前者の場合には、減圧位置継続時
間、すなわち、2位置弁22が実際に継続的に減圧位置に
あった時間と、減圧モード継続時間、すなわち、ホイー
ルシリンダ液圧が減圧モードで減圧された時間とが一致
するのに対し、後者の場合には、減圧モード継続時間が
減圧位置継続時間より短くなることがある。緩増圧の終
了時期に2位置弁22が減圧位置にあり、そのまま減圧モ
ードに移行して2位置弁22が減圧位置に保たれる場合が
あるのである。そのため、今回の単位制御が上記2つの
場合のいずれに該当するかとは無関係に、減圧モード継
続時間に基づいて基本時間TCFを演算するとした場合に
は、常に基本時間TCFを高い精度で求めることができな
い。
そこで、本実施例においては、今回の減圧が急増圧に
続いて行われた場合でも、緩増圧に続いて行われた場合
でも、減圧位置継続時間を減圧時間TAとみなし、その減
圧時間TAに基づいて基本時間TCFを演算するようにされ
ている。したがって、本実施例においては、基本時間T
CFの算出精度が向上し、ひいては、ホイールシリンダ液
圧の制御精度が向上するという効果が得られる。
また、本実施例においては、今回の緩増圧実時間TB
最大時間TBMAXに達した場合には、通常のアンチスキッ
ド制御の場合と同様に当該緩増圧を継続することによっ
てホイールシリンダ液圧を回復させるのではなく、直ち
に急増圧へ移行するというように、ホイールシリンダ液
圧を緩増圧の場合より大きな液圧勾配で増圧することに
よってホイールシリンダ液圧を早期に回復させる。した
がって、本実施例においては、今回の緩増圧実時間TB
最大時間TBMAXに達した場合には、緩増圧を続行するこ
とによってホイールシリンダ液圧を回復させた場合に比
べて、今回の単位制御における制動距離の延びが抑制さ
れる。つまり、本実施例においては、今回の緩増圧実時
間TBが最大時間TBMAXに達した場合には、今回の単位制
御において、その緩増圧を中止してホイールシリンダ液
圧を速やかに増大させることによって今回の単位制御に
おける制動距離の延びを抑制するとともに、次回の単位
制御において、関数fnを特定するnの値を初期値に復帰
させ、急増圧の設定時間TCSを最高μ路に適した時間に
修正することによってその当該単位制御における制動距
離の延びを抑制し、アンチスキッド制御全体として制動
距離の延びを一層抑制し得るようになっているのであ
る。
また、前記実施例の説明においては、緩増圧実時間TA
が最大時間TBMAXに達した原因が、アンチスキッド制御
中に路面の摩擦係数が急増したことである場合について
述べたが、その他の原因で緩増圧実時間TAが最大時間T
BMAXに達することがある。
例えば、アンチスキッド制御中にブレーキペダル12の
踏力が何らかの事情で大きく減少したことが原因で緩増
圧実時間TAが最大時間TBMAXに達することもある。本実
施例においては、マスタシリンダ10からのブレーキ液が
2位置弁22を経てホイールシリンダ14に直接供給される
ため、アンチスキッド制御中にブレーキペダル12の踏力
が大きく減少した場合にはホイールシリンダ液圧の増圧
勾配が緩やかとなるからである。しかし、この場合にも
路面の摩擦係数が急増した場合と同様に、関数fnを特定
するnの値が初期値に復帰させられ、急増圧の設定時間
TCSが最高μ路に適した値に修正されるため、制動距離
の延びが抑制される。なお、この場合には、急増フラグ
がアンチスキッド制御中にブレーキペダル12の踏力が急
減したことを表すフラグとして機能することとなる。
また、何らかの事情でホイールシリンダ液圧の緩増圧
における制御精度が低下し、ホイールシリンダ液圧が予
定より低くなったことが原因で緩増圧実時間TAが最大時
間TBMAXに達することもあると考えられる。
本実施例においては、電磁弁装置が増圧位置と減圧位
置としか持たない2位置弁22であるために、2位置弁22
を増圧位置と減圧位置とに交互に切り換えることによっ
て緩増圧モードを実現している。緩増圧モードを増圧位
置と減圧位置との組合せによって実現する場合にはホイ
ールシリンダ液圧の制御精度を十分に高めることが困難
であると言われる。そのため、2位置弁22に代えて次の
ような電磁弁装置が用いられており、本考案の実施に当
たってもこれらの電磁弁装置を採用することができる。
例えば、増圧位置と減圧位置とに加えて保圧位置を持つ
3位置電磁弁装置や、増圧位置として、ホイールシリン
ダ14をマスタシリンダ10に十分な流路面積で連通させる
急増圧位置と、ホイールシリンダ14をマスタシリンダ10
に絞りを経て連通させる緩増圧位置とを有するととも
に、減圧位置として、ホイールシリンダ14をリザーバ28
に十分な流路面積で連通させる急減圧位置と、ホイール
シリンダ14を絞りを経てリザーバ28に連通させる緩減圧
位置とを有する4位置電磁弁装置である。しかし、これ
ら電磁弁装置は切換位置が2位置弁22より多いために高
価であり、また、制御が複雑であるという問題がある。
つまり、本実施例は、2位置弁22の安価さを享受しつ
つ、2位置弁22の特性が原因でホイールシリンダ液圧の
制御精度が低下し、緩増圧実時間TBが最大時間TBMAX
達することがあっても、ホイールシリンダ液圧の不足傾
向が生じることなくアンチスキッド制御の実行を可能と
することにより、安価に制動距離の延びを抑制すること
を実現しているのである。
以上詳記した実施例においては、ブレーキスイッチ58
と、回転センサ54と、コントローラ50の2位置弁22を制
御する部分とが電気的制御装置を構成している。また、
コントローラ50のうち、第3図のS30,S40,S30b,S40a,S4
1およびS41aを実行する部分が制御特性修正手段を構成
している。
以上、本考案の一実施例を図面に基づいて詳細に説明
したが、本考案はその他の態様で実施することができ
る。
例えば、本実施例においては、車輪に生じたロック傾
向が極めて強い場合には、減圧モードと急増圧モードと
の間に保圧モードが実現されるが、この保圧モードを、
ホイールシリンダ液圧に減圧モードより緩やかに減圧す
る緩減圧モードに変えてもよい。
また、本実施例においては、緩増圧モードにおける2
位置弁22の増圧位置と減圧位置との継続時間比率が不変
とされていたが、本出願人が先に出願した特願昭63-312
190号記載の発明装置と同様に、緩増圧実時間TBが予め
定められた目標時間と等しくなるように継続時間比率を
修正してもよい。この場合、緩増圧実時間TBを最大時間
TBMAXに達した場合には、継続時間比率をそれの初期
値、すなわち最高μ路に合わせて設定された継続時間比
率に復帰させてもよい。
また、本実施例は、ホイールシリンダ液圧が2位置弁
22によって直接制御されるいわゆる還流式のアンチスキ
ッド型液圧ブレーキ装置に本考案を適用したものであっ
たが、2位置弁22とホイールシリンダ14とを液圧制御弁
を経て接続し、この液圧制御弁の作動液の液圧を2位置
弁22により制御することによって、ホイールシリンダ液
圧を間接的に制御するいわゆる容積式のアンチスキッド
型液圧ブレーキ装着に本考案を適用することもできる。
その他、当業者の知識に基づいて種々の変形,改良等
を施した態様で本考案を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本考案の一実施例である4輪自動車用アンチ
スキッド型液圧ブレーキ装置において、アンチスキッド
制御中に路面の摩擦係数が急増した場合におけるホイー
ルシリンダ液圧の制御の一例を示すグラフ、第2図は、
上記ブレーキ装置の系統図、第3図は、上記ブレーキ装
置のコンピュータに記憶されている制御プログラムを表
すフローチャート、第4図(a)ないし(c)はそれぞ
れ、上記ブレーキ装置における通常のアンチスキッド制
御時の車輪速度VW,車輪加速度GWおよびホイールシリン
ダ液圧の各特性の一例を示すグラフ、第5図は、上記ブ
レーキ装置に設けられた関数fnの特性を示すグラフ、第
6図は、上記ブレーキ装置において、アンチスキッド制
御中に路面の摩擦係数が急減した場合におけるホイール
シリンダ液圧の制御の一例を示すグラフ、第7図は上記
ブレーキ装置に設けられた関数gの特性を示すグラフで
ある。 10:マスタシリンダ、12:ブレーキペダル 14:ホイールシリンダ、22:2位置弁 50:コントローラ、54:回転センサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 小松崎 康介 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)考案者 濱田 千章 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内

Claims (1)

    【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】車輪のブレーキを作動させるホイールシリ
    ンダをマスタシリンダとリザーバとに択一的に連動させ
    る電磁弁装置と、 前記車輪に過大なスリップが生じれば、少なくとも減圧
    モードと緩増圧モードとを含む複数のモードにより前記
    電磁弁装置を介して前記ホイールシリンダの液圧を増減
    させる単位制御を複数回実行し、かつ、前回の単位制御
    の実行結果がアンチスキッド制御に対して予め定められ
    る制御目標から外れていた場合に、今回の単位制御にお
    ける前記複数のモードの少なくとも一つのモードの制御
    特性を、その制御特性で今回の単位制御を実行すればそ
    れの実行結果が制御目標に近づくと推定される方向に、
    予め定められた一定量だけ修正する通常規則に従って修
    正しつつアンチスキッド制御を行う電気的制御装置と を含むアンチスキッド制御装置において、 前回の単位制御における緩増圧モードの継続時間が予め
    定められた最大時間に達した特定時には、今回の単位制
    御における前記制御特性を、前記通常規則における前記
    一定量より大きい量修正する特定規則に従って修正する
    制御特性修正手段を設けたことを特徴とするアンチスキ
    ッド制御装置。
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