JPH08200146A

JPH08200146A - 内燃機関のシリンダおよびその製造方法

Info

Publication number: JPH08200146A
Application number: JP3145995A
Authority: JP
Inventors: Masayoshi Suzuoki; 正義鈴置; Yoshinobu Sano; 嘉信佐野
Original assignee: Suzuki Motor Corp
Current assignee: Suzuki Motor Corp
Priority date: 1995-01-27
Filing date: 1995-01-27
Publication date: 1996-08-06

Abstract

(57)【要約】【目的】本発明の目的は、コスト高を招くことなく、
しかも鋳造不良を低く抑えることが可能で、シリンダブ
ロックの摺動面に十分な耐摩耗性を付与した内燃機関の
シリンダおよびその製造方法を提供することにある。【構成】本発明に係る内燃機関のシリンダ２は、鋳造
したアルミニウム製シリンダブロック１の摺動面に、過
共晶ＡｌーＳｉ合金の溶接棒３を用いて肉盛溶接するこ
とにより表面改質層４を形成している。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は内燃機関のシリンダおよ
びその製造方法に係り、特にエンジン部品であるシリン
ダブロックのシリンダスリーブに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】現在、この種のシリンダスリーブは耐摩
耗性が要求されるため、通常は鋳鉄で製造されており、
これをアルミニウム製シリンダブロックに鋳ぐるむか、
あるいは圧入することによってシリンダブロック全体が
構成されている。ところが一部の内燃機関では、当該ス
リーブ部分をアルミニウム化し、シリンダブロック全体
を軽量化することが行われている。

【０００３】しかして、シリンダスリーブをアルミニウ
ム化する方法としては、次のものがある。すなわち、第
一の方法は図５に示す如く、アルミニウム製シリンダブ
ロック５１の摺動面にＮｉーＰーＳｉＣ分散メッキ５２
を施し、耐摩耗性を付与している。なお、シリンダブロ
ック５１に直接メッキを施すのではなく、アルミニウム
製の筒状体に分散メッキを施し、この筒状体をスリーブ
としてシリンダブロック５１に圧入してもよい。

【０００４】また、第二の方法は高圧鋳造法によるセラ
ミックスの複合化である。この方法では、まずセラミッ
クス製プリフォームを作製し、これを金型にセットした
後、アルミニウム合金を高圧鋳造することにより、図６
に示す如く、Ａｌ₂０₃，ＳｉＣ等を強化材とした複合
材のシリンダスリーブ５３に構成している。

【０００５】さらに、第三の方法は、Ｓｉを１３ｗｔ％
以上含むＡｌーＳｉ過共晶合金によってシリンダブロッ
ク全体またはスリーブを鋳造している。このようにする
と、初晶のＳｉによって耐摩耗性が付与されるため、鋳
鉄製スリーブを用いる必要がなくなる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た第一の方法では、分散メッキ５２が鋳巣等の欠陥に敏
感であることから、鋳造したシリンダブロック５１に密
着性の良いメッキを均一に施すのは難しいという不具合
を有していた。また、第二の方法では、プリフォームを
使用しなければならないため、該プリフォームの作製が
面倒である上、高圧鋳造装置等のコスト高を招く要因も
多かった。さらに、第三の方法は、コスト的に有利であ
るが、Ｓｉ濃度が共晶点を過ぎて過共晶になると、鋳造
性が著しく悪くなるので、鋳造欠陥の無い健全なシリン
ダブロックおよびシリンダスリーブを作製するのが困難
であった。

【０００７】本発明はこのような実状に鑑みてなされた
ものであって、その目的は、コスト高を招くことなく、
しかも鋳造不良を低く抑えることが可能で、シリンダブ
ロックの摺動面に十分な耐摩耗性を付与した内燃機関の
シリンダおよびその製造方法を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記従来技術の有する課
題を解決するために、本発明においては、鋳造したアル
ミニウム製シリンダブロックの摺動面に、過共晶Ａｌー
Ｓｉ合金の溶接棒を用いて肉盛溶接することにより表面
改質層を形成している。

【０００９】また、他の本発明においては、アルミニウ
ム製シリンダスリーブの摺動面に過共晶ＡｌーＳｉ合金
の溶接棒を用いて肉盛溶接を行い、鋳造したシリンダブ
ロックに上記シリンダスリーブを圧入し、その後に機械
加工を施してシリンダを製造している。

【００１０】

【作用】本発明に係る内燃機関のシリンダでは、鋳造し
たアルミニウム製シリンダブロックの摺動面に、過共晶
ＡｌーＳｉ合金の溶接棒を用いて肉盛溶接することによ
り表面改質層を形成しているため、メッキと異なり鋳巣
等の微少欠陥に関係なく表面部だけ高い濃度の過共晶Ｓ
ｉ状態に改質することが可能になり、十分な耐摩耗性を
有するシリンダブロックの摺動面が得られることにな
る。

【００１１】また、他の本発明に係る内燃機関のシリン
ダの製造方法では、アルミニウム製シリンダスリーブの
摺動面に過共晶ＡｌーＳｉ合金の溶接棒を用いて肉盛溶
接を行い、鋳造したシリンダブロックに上記シリンダス
リーブを圧入し、その後に機械加工を施してシリンダを
製造しているため、表面改質を施した別体のシリンダス
リーブと比較的大型鋳物のシリンダブロックとを一体化
させることによって、溶接作業を容易に行うことが可能
となる。

【００１２】

【実施例】以下、本発明を図示の実施例に基づいて詳細
に説明する。

【００１３】図１および図２は本発明に係る内燃機関の
シリンダの一実施例を示している。図において、１は鋳
造したアルミニウム製シリンダブロック、２はシリンダ
ブロック１の摺動面に設けられるシリンダであり、該シ
リンダ２内には図示しないピストンが摺動しながら往復
するようになっている。このため、シリンダ２において
は、シリンダブロック１の摺動面に過共晶ＡｌーＳｉ合
金の溶接棒３を用いて肉盛溶接することにより、溶接ビ
ードの表面改質層４が形成されている。なお、肉盛溶接
の作業は溶接トーチ５を用いて行っている。図１におい
て、６はシリンダブロック１に設けられるウォータジャ
ケットである。

【００１４】上記シリンダ２を製造するには、まずＡｌ
鋳造によりシリンダブロック１を作製する。この際の鋳
造方法としては、重力鋳造，低圧鋳造，ダイカスト等、
通常の鋳造方法のいずれでもよい。また、シリンダブロ
ック１の材質は、ＡＣ４Ｃ，ＡＤＣ１２等、アルミニウ
ム構造材として用いられる一般的な鋳造用アルミニウム
合金でよい。

【００１５】そして、粉末冶金法又は鋳造法などにて作
製したＡｌー（１３〜７０ｗｔ％）Ｓｉ合金の棒を溶接
棒３として用い、図１に示す如く、シリンダブロック１
の摺動面に溶接トーチ５で肉盛溶接を行う。すると、当
該シリンダブロック１の摺動面に表面改質層４が形成さ
れ、表面部だけをＳｉ濃度の高い状態に改質したシリン
ダ２が得られる。しかる後、通常の機械加工およびホー
ニング研磨を施せば、シリンダブロック１として使用可
能になる。ここで、溶接棒３を構成するＡｌーＳｉ合金
において、Ｓｉが１３％以下では改質効果が無く、また
７０％以上のものは作製が困難となるので、不適当であ
る。

【００１６】次に、本実施例のシリンダ２を具体例をも
って説明する。重力鋳造にて作製したＡＣ４Ｃ合金（Ｓ
ｉを約７ｗｔ％含有している。）製シリンダブロック１
の摺動面にＡｌー４０ｗｔ％Ｓｉ合金を用いて、電流１
５０〜１８０Ａで、かつ速度６００〜９００ｍｍ／分の
条件下において、ＴＩＧ溶接により溶融させて肉盛溶接
を行った。これによる表面改質部の１％ＨＦ（弗酸）腐
食の金属組織は図２に示す通りである。

【００１７】図２において、写真の上方が鋳物表面側を
表し、写真の下方が鋳物内部側を表している。また、Ａ
領域は溶接による表面改質層４、Ｂ領域は溶接熱影響
部、Ｃ領域はＡＣ４Ｃの基地組織をそれぞれ示してい
る。同図のＡ領域で示すように、溶接による表面改質層
４では、Ｓｉ濃度が高くて過共晶組成であるため、初晶
Ｓｉが晶出しており、耐摩耗性が付与されていることが
判る。また、初晶Ｓｉのサイズは２０〜４０μｍであ
り、適切な粒度であることが判る。

【００１８】本実施例のシリンダ２では、溶接トーチ５
で溶接棒３を溶融させることによってシリンダブロック
１の摺動面に肉盛溶接を行っているため、該シリンダブ
ロック１に鋳巣等の微少欠陥が仮に存在していても、十
分な耐摩耗性を持つ表面改質層４を確実に形成すること
ができる。また、シリンダブロック１としては、ＡＣ４
Ｃ，ＡＤＣ１２等の鋳造性に優れた鋳造用アルミニウム
合金でよいため、鋳造不良を低く抑えることができる。

【００１９】図３および図４は他の本発明に係る内燃機
関のシリンダ製造方法の一実施例を示している。上述し
た発明（図１および図２参照）は、シリンダブロック１
に直接肉盛溶接を行い、スリーブとシリンダブロック１
とが一体となったものであるが、当該シリンダブロック
１は比較的大型鋳物であるため、溶接のワークとしては
ハンドリングしにくい場合がある。そこで、アルミニウ
ム製スリーブを別体に作製し、これに上述と同様の手法
で表面改質を施し、その後にこれらシリンダスリーブと
シリンダブロックとを一体化すれば、溶接作業が容易と
なる。以下に、シリンダ製造方法の一実施例を説明す
る。なお、上述した発明の実施例と同一部材については
同一符号を付して説明を省略する。

【００２０】まず、アルミニウム製シリンダスリーブ７
を鋳造又は展伸材からの機械加工によって円筒状に作製
し、図３に示す如く、当該スリーブ７の摺動面に上述し
た発明の実施例と同様のＡｌー過共晶Ｓｉ合金の溶接棒
３を用いて肉盛溶接を行い、表面部だけを過共晶Ｓｉ状
態に改質した表面改質層４を形成する。また、シリンダ
ブロック１を通常の鋳造法により作製しておく。次い
で、このシリンダブロック１内に上記シリンダスリーブ
７を圧入して両者を一体化し、しかる後に、通常の機械
加工を施せば、当該スリーブ７によって構成されたシリ
ンダ２を有するシリンダブロック１が得られる（図４参
照）。

【００２１】以上、本発明の一実施例につき述べたが、
本発明は既述の実施例に限定されるものではなく、本発
明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能
である。

【００２２】例えば、既述の実施例におけるシリンダス
リーブ７は、圧入工程によりシリンダブロック１と一体
化させているが、必ずしもこの方法による必要はなく、
シリンダブロック１を鋳造する際に、当該シリンダスリ
ーブ７を型内の所定の位置にセットしておき、鋳ぐるみ
によって一体化してもよい。

【００２３】

【発明の効果】上述の如く、本発明に係る内燃機関のシ
リンダは、鋳造したアルミニウム製シリンダブロックの
摺動面に、過共晶ＡｌーＳｉ合金の溶接棒を用いて肉盛
溶接することにより表面改質層を形成しているので、メ
ッキを施す場合と違って、鋳造したシリンダブロックに
鋳巣等の微少欠陥が生じていても、これと無関係に肉盛
溶接を行えることによりシリンダブロックの摺動面に対
して十分な耐摩耗性を確実に付与することができ、耐久
性に優れている。しかも、本発明のシリンダにおいて
は、シリンダブロックとして鋳造性に優れている鋳造用
アルミニウム合金を使用することが可能であるため、鋳
造不良を低く抑えることができ、安定した品質が得られ
る。

【００２４】また、本発明に係る内燃機関のシリンダ製
造方法は、アルミニウム製シリンダスリーブの摺動面に
過共晶ＡｌーＳｉ合金の溶接棒を用いて肉盛溶接を行
い、鋳造したシリンダブロックに上記シリンダスリーブ
を圧入し、その後に機械加工を施してシリンダを製造し
ているので、表面改質を施した別体のシリンダスリーブ
とシリンダブロックとを一体化させることにより溶接作
業が容易となり、作業性向上を図ることができる。それ
に加えて、本発明の製造方法では、製造設備が溶接装置
を通常の設備に加えるだけで済む上、鋳鉄スリーブを必
要としないことから、コスト高を招くことはなく、経済
的にも有利である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係る内燃機関のシリンダに
おいて、シリンダブロックの摺動面に肉盛溶接を行って
いる状態を示す断面図である。

【図２】図１におけるシリンダブロックの摺動面の表面
改質部の金属組織を示す１００倍の顕微鏡写真である。

【図３】他の本発明の一実施例に係るアルミニウム製シ
リンダスリーブの摺動面に肉盛溶接を行っている状態を
示す断面図である。

【図４】図３のスリーブをシリンダブロックに圧入した
状態を示す断面図である。

【図５】従来における内燃機関のシリンダブロックの摺
動面に分散メッキを施した状態を示す断面図である。

【図６】セラミックス製プリフォームとアルミニウム合
金を高圧鋳造にて複合化した従来における内燃機関のシ
リンダブロックを示す断面図である。

【符号の説明】

１シリンダブロック２シリンダ３溶接棒４表面改質層５溶接トーチ７シリンダスリーブ

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】鋳造したアルミニウム製シリンダブロッ
クの摺動面に、過共晶ＡｌーＳｉ合金の溶接棒を用いて
肉盛溶接することにより表面改質層を形成したことを特
徴とする内燃機関のシリンダ。
【請求項２】請求項１のＡｌーＳｉ合金として、Ｓｉ
が１３〜７０ｗｔ％のものを用いたことを特徴とする内
燃機関のシリンダ。
【請求項３】アルミニウム製シリンダスリーブの摺動
面に過共晶ＡｌーＳｉ合金の溶接棒を用いて肉盛溶接を
行い、鋳造したシリンダブロックに上記シリンダスリー
ブを圧入し、その後に機械加工を施してシリンダを製造
したことを特徴とする内燃機関のシリンダ製造方法。