JPH0819462B2 - 耐孔食性に優れた2相ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents

耐孔食性に優れた2相ステンレス鋼板の製造方法

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JPH0819462B2
JPH0819462B2 JP1215685A JP21568589A JPH0819462B2 JP H0819462 B2 JPH0819462 B2 JP H0819462B2 JP 1215685 A JP1215685 A JP 1215685A JP 21568589 A JP21568589 A JP 21568589A JP H0819462 B2 JPH0819462 B2 JP H0819462B2
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邦明 長田
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、従来よりも一層優れた耐孔食性を有する
フェライト相およびオーステナイト相の2相混合組織を
有する高Cr2相ステンレス鋼(以下、2相ステンレス鋼
という)板の製造方法に関するものである。
〔従来の技術〕
一般に、2相ステンレス鋼は耐食性および機械的性質
に優れているところから化学プラントなどに用いられて
おり、またSUS329 J1およびSUS329 J2LとしてJIS化もさ
れている。この2相ステンレス鋼の特性をさらに改善す
るために、今までは主として成分組成の面から種々検討
がなされ、特公昭51−43807号公報、特開昭52−716号公
報、特開昭51−117916号公報などに示される2相ステン
レス鋼が提案され、本発明者も、特公昭59−14099号公
報で提案している。
一方、従来、2相ステンレス鋼の製造法として、精練
−連続鋳造−熱間圧延−熱処理−冷間圧延−熱処理とい
う工程がとられ、材料の特性が成分のみならずその製造
方法にも大きく影響されることもまた周知である。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、従来、2相ステンレス鋼の耐孔食性を
成分組成の調整により改善しようとする提案は多数なさ
れているが、上記2相ステンレス鋼の耐孔食性を組織制
御により改善しようとする提案はなされておらず、上記
成分組成の調整のみによる2相ステンレス鋼の耐孔食性
の向上には限界があった。
〔課題を解決するための手段〕
そこで、本発明者は、2相ステンレス鋼の組織と耐孔
食性についての研究を行っていたところ、下記の知見を
得たのである。
(1) 従来、2相ステンレス鋼はフェライト基地中に
オーステナイト相が分散した微細組織を有しており、上
記オーステナイト相の平均結晶粒径は通常10〜50μm程
度であるが、上記オーステナイト相を、これよりも一層
微細な平均粒径:5μm以下にすると、通常の成分組成か
ら予想される耐孔食性よりもはるかに優れた耐孔食性を
もつ、 (2) 3〜20容量%のσ相を含む2相ステンレス鋼の
出発材に冷間あるいは温間で総圧下率40%以上の圧延を
施した2相ステンレス鋼圧延材を、 750〜950℃の温度域を全熱処理時間の1/3以下の時間
をかけて連続的に昇温しながら通過し、ついで980℃〜1
100℃の範囲内の所定の温度で全熱処理時間の1/6以下の
時間をかけて均熱処理したのち、急冷するとフェライト
基地中に分散するオーステナイト相の平均粒径は5μm
以下となる、 という知見を得たのである。
この発明は、かかる知見にもとづいてなされたもので
あって、 3〜20容量%のσ相を含む2相ステンレス鋼出発材に
総圧下率:40%以上の冷間または温間圧延を施した2相
ステンレス鋼圧延材を750〜950℃の温度域を全熱処理時
間の1/3以下の時間をかけて連続的に昇温しながら通過
せしめ、980℃〜1100℃の範囲内の所定の温度で全熱処
理時間の1/6以下の時間をかけて均熱処理し、ついで、
急冷する耐孔食性に優れた2相ステンレス鋼の製造方
法、 に特徴を有するものである。
この発明の耐孔食性に優れた2相ステンレス鋼の製造
方法で用いる素材としては、JISで規定されるSUS329
J1,SUS329 J2Lなどでよく、特に限定されるものではな
いが、特公昭59−14099号公報に記載の、重量%で、 C:0.02%以下、Si:2.0%以下、 Mn:3.0%以下、Ni:3〜10%、 Cr:20〜35%、Mo:0.5〜6.0%、 N:0.08〜0.3%、 W,Vの何れか少なくとも1種:0.03〜2.0%、 B:0.0005〜0.01%、S:0.005%以下、 を含有し、さらに必要に応じて Cu:2.0%以下、 を含有し、残部実質的にFeよりなる2相ステンレス鋼を
用いると、成分組成の効果と微細なオーステナイト相と
が相乗的に作用し、最も好ましい効果が得られる。
さらに、この発明においては、上記2相にさらにσ相
が3〜20容量%含有した3相混在のステンレス鋼を出発
材として用いることが必要である。上記σ相を含む3相
混在のステンレス鋼を出発材として用いると、σ相はビ
ッカース硬度が300以上と非常に硬いため、フェライト
相およびオーステナイト相のマトリックスとの硬度差が
大きく、またすべり系が異なるのでその後の圧延時にσ
相の周囲に多量の歪が導入され、σ相の存在しない出発
材よりも多くエネルギーを導入することができる。しか
し、このσ相は、その後の熱処理時に大きな歪量によっ
て促進される拡散によって急速に消滅し、温度:980〜11
00℃で均熱処理することにより完全にフェライト相およ
びオーステナイト相からなる微細2相組織となるのでσ
相が残留することはない。上記3相混在組織に含まれる
σ相を3〜20容量%に限定した理由は、3容量%未満で
はσ相の存在による歪の導入が十分ではなく、20容量%
を越えるとσ相脆化が著しくなり、圧延そのものが不可
能になるからである。上記出発材の組織をフェライト
相、オーステナイト相およびσ相の3相混在組織とする
ためには、熱間圧延コイルの冷却を制御することで可能
となる。
フェライト相、オーステナイト相およびσ相の3相混
在組織を有するステンレス鋼の出発材を、まず、圧下
率:40%以上、好ましくは60%以上で冷間または温間圧
延して厚さ:tmmの圧延材を製造する。ここで温間圧延と
は、温度:50〜350℃で圧延を施すことをいう。上記圧下
率を40%以上とした理由は、圧下率が40%未満であると
上記圧延材に導入される歪量が十分でなく、その後の熱
処理において微細組織を得ることが不可能となるためで
ある。
上記厚さ:tmmの圧延材は、その後、熱処理されるが、
上記熱処理は、上記圧延材を、 常温から750〜950℃の温度域に加熱する工程、 上記750〜950℃の温度域を連続的に昇温せしめる工
程、 980〜1100℃の温度域で均熱処理する工程、および 上記均熱処理後、冷却速度:100℃/秒以上で急冷する
工程、 から構成され、上記熱処理するに必要な全熱処理時間を
T秒とすると、Tは、100t秒を越え200t秒未満、すなわ
ち100t<T<200t(但し、tは圧延材の厚さ)に制限さ
れる。全熱処理時間Tが100t秒以下であると回復および
再結晶が十分でなく、一方、200t秒以上であると結晶粒
が粗大化するために好ましくない。
上記750〜950℃の温度域は、σ相析出温度域に相当
し、この温度域を連続的に昇温させながら上記圧延材を
通過せしめることが必要であり、上記温度域のある所定
の温度に保持しながら通過せしめることは好ましくな
い。上記圧延材を上記750〜950℃の温度域に全熱処理時
間Tの1/3を越えて長時間存在すると、σ相の析出ある
いはσ相が析出しない場合でもσ相析出の前段階として
粗な変調構造をとることが考えられ、このとき圧延によ
って導入された歪エネルギーがこれらの作用のために一
部あるいはすべて解放されてしまい、目的である平均結
晶粒径:5μm以下の微細なオーステナイト相がフェライ
ト基地中に均一に再結晶することができなくなる。した
がって、上記750〜950℃の温度域の滞留時間は、全熱処
理時間Tの1/3以下、好ましくは1/20以上1/3以下に定め
た。
さらに、上記980〜1100℃の温度域は、2相ステンレ
ス鋼の通常の焼鈍温度域であり、この温度域を全熱処理
時間Tの1/6以下の時間で均熱処理すると再結晶終了
後、結晶粒成長を生ずる前に熱処理を終了させることが
でき、全熱処理時間Tの1/6を越える時間で均熱処理す
ると再結晶後、結晶粒の粗大化が生じるので好ましくな
い。
したがって、上記980〜1100℃の温度域における均熱
処理時間は、全熱処理時間の1/6以下、好ましくは1/20
以上1/6以下に定めた。
上記980〜1100℃の温度域で均熱処理したのち、100℃
/秒以上の冷却速度で急冷する。この急冷は具体的には
水冷が好ましく、上記冷却速度が100℃/秒未満では再
結晶後の結晶粒の粗大化を短時間で阻止することができ
ないので好ましくない。
このようにして製造された2相ステンレス鋼のフェラ
イト基地中に分散する微細なオーステナイト相結晶粒の
平均結晶粒径は、5μm以下となり、この2相ステンレ
ス鋼は、通常の成分組成から予想される耐孔食性よりも
はるかに優れた耐孔食性を有する。その理由として、 (1) 微細で均一にオーステナイト相が分散した2相
組織であるために、2相ステンレス鋼特有の相間の電気
化学的作用が有効に働く。
(2) フェライト相およびオーステナイト相の成分バ
ランスが耐孔食性向上に都合のよいように、すなわち巨
視的に平均化された成分偏析が寄与している。
の2点が考えられる。
しかし、2相ステンレス鋼をこの発明の製造方法で製
造しても、微細なオーステナイト相の平均結晶粒径を0.
1μm未満とすることは極めて正確な制御を必要とする
ためにまた、このような組織を安定して再現することは
非常に困難であるために工場生産には適さず経済的では
ない。したがって、この発明の耐孔食性に優れた2相ス
テンレス鋼の微細なオーステナイト相の平均結晶粒径
は、実用的には0.1μm以上5μm以下とするのが好ま
しい。
〔実施例〕
つぎに、この発明を実施例にもとづいて具体的に説明
する。
原料を60トン電気炉にて溶解し、真空脱ガス処理した
のち、連続鋳造し、第1表に示される成分組成を有する
供試材のスラブを製造した。
上記供試材のスラブを第2表に示される履歴で圧延
し、第2表に示される板厚を有する2相ステンレス鋼出
発材を製造し、この2相ステンレス鋼出発材のσ相の割
合の画像処理により測定してその結果を第2表に示し
た。かかる2相ステンレス鋼出発材を第2表に示される
条件で圧延して板厚:tmmの圧延材を製造し、この圧延材
を第2表に示される熱処理条件にて熱処理し、第2表に
示される本発明2相ステンレス鋼板1〜11および比較2
相ステンレス鋼板1〜6を製造した。
さらに、第1表の供試材Aを通常の熱間圧延し、その
後圧延および熱処理を施さない出発材を従来2相ステン
レス鋼板として用意した。
上記本発明2相ステンレス鋼板1〜11、比較2相ステ
ンレス鋼板1〜6および従来2相ステンレス鋼板を金属
顕微鏡により組織観察し、フェライト基地中に分散して
いるオーステナイト相の平均結晶粒径を画像処理により
測定してその結果を第2表に示し、ついで、これら2相
ステンレス鋼板の耐食性を評価するために、温度:70
℃,濃度:3.5%のNaCl溶液における孔食電位を測定し、
それらの結果を第2表に示した。
また、第2表の本発明2相ステンレス鋼板1および比
較2相ステンレス鋼板1の金属組織を400倍の顕微鏡写
真に撮り、これら写真をそれぞれ第1図および第2図に
示した。
上記第2表に示される結果並びに第1図および第2図
の金属顕微鏡組織写真から、この発明の条件をみたす圧
延および熱処理した本発明2相ステンレス鋼板1〜11
は、いずれも圧延および熱処理を施さない従来2相ステ
ンレス鋼板よりも、フェライト基地中に分散するオース
テナイト相の平均結晶粒径が小さく、孔食電位を高いこ
とから耐孔食性が優れていることがわかる。また、この
発明の条件から外れた条件(第2表において、この発明
の条件から外れた値に※印を付して区別した)で圧延お
よび熱処理しても、平均結晶粒径:5μm以下の微細なオ
ーステナイト相は得られないこともわかり、平均結晶粒
径:5μmを越えるオーステナイト相を有する比較2相ス
テンレス鋼板1〜6は、いずれも孔食電位が相対的に低
く耐孔食性が劣ることがわかる。
〔発明の効果〕
この発明の2相ステンレス鋼板は、従来よりも一層優
れた耐孔食性を示すことから、各種プラントおよび各種
機器の材料に使用されて、長期にわたって優れた 効果を奏し、産業の発展に大いに貢献しうるものであ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明2相ステンレス鋼板1の金属顕微鏡組
織写真、 第2図は、比較2相ステンレス鋼板1の金属顕微鏡組織
写真。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】3〜20容量%のσ相を含む2相ステンレス
    鋼の出発材を総圧下率:40%以上の冷間または温間圧延
    して板厚:tmmの圧延材を製造し、この板厚:tmmの圧延材
    を、100t秒を越え200t秒未満の全熱処理時間で熱処理す
    る耐孔食性に優れた2相ステンレス鋼板の製造方法であ
    って、上記熱処理は、 750〜950℃の温度域を連続的に昇温しながら上記全熱処
    理時間の1/3以下の時間で通過せしめる工程、 980〜1100℃の温度域で上記全熱処理時間の1/6以下の時
    間をかけて均熱処理する工程、 および、100℃/秒以上の冷却速度で急冷する工程、 を含むことを特徴とする耐孔食性に優れた2相ステンレ
    ス鋼板の製造方法。
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