JP2961666B2 - 耐温間へたり性に優れたばね用鋼の製造方法 - Google Patents
耐温間へたり性に優れたばね用鋼の製造方法Info
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- JP2961666B2 JP2961666B2 JP15879090A JP15879090A JP2961666B2 JP 2961666 B2 JP2961666 B2 JP 2961666B2 JP 15879090 A JP15879090 A JP 15879090A JP 15879090 A JP15879090 A JP 15879090A JP 2961666 B2 JP2961666 B2 JP 2961666B2
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- temperature
- carbides
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- resistance
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Description
【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は,温間で使用されるばね材料,例えば自動車
のクラッチに組み込まれるダイアフラムスプリング等,
に適した耐温間へたり性に優れたばね用鋼の製造方法に
関するものである。
のクラッチに組み込まれるダイアフラムスプリング等,
に適した耐温間へたり性に優れたばね用鋼の製造方法に
関するものである。
最近,装置の大型化高出力化に伴って,これらに組み
込まれるばねの使用雰囲気温度が,従来では常温であっ
たのに対し温間といえる高い温度にまで上昇しつつあ
る。一例として,自動車のクラッチに組み込まれるダイ
アフラムスプリングと呼ばれる皿ばねが挙げられる。自
動車のエンジンの高出力化,足廻りの4WD化に伴い,こ
の2つの接点であるクラッチにかけられる負荷は大きく
なりつつある。その結果,このばね材料の使用雰囲気温
度は従来最高150℃程度であったのに対して250〜350℃
程度まで上昇している。
込まれるばねの使用雰囲気温度が,従来では常温であっ
たのに対し温間といえる高い温度にまで上昇しつつあ
る。一例として,自動車のクラッチに組み込まれるダイ
アフラムスプリングと呼ばれる皿ばねが挙げられる。自
動車のエンジンの高出力化,足廻りの4WD化に伴い,こ
の2つの接点であるクラッチにかけられる負荷は大きく
なりつつある。その結果,このばね材料の使用雰囲気温
度は従来最高150℃程度であったのに対して250〜350℃
程度まで上昇している。
ダイアフラムスプリング用として,現在S70CやSK5等
の炭素鋼が多く使用されてきた。しかし,これらの鋼は
温度の上昇とともに,ばねのへたりは急激に進行する。
の炭素鋼が多く使用されてきた。しかし,これらの鋼は
温度の上昇とともに,ばねのへたりは急激に進行する。
他方,鋼中のSi含有量を増加させると耐へたり性が向
上することが知られている。このため,JIS G 4801に規
定されているSUP6や,さらにSi含有量の多いSUP7等が耐
へたり性を要求されるばね材料に使用されている。しか
し,これらの鋼は室温での耐へたり性は優れているが、
温間での耐へたり性は捗々しくない。
上することが知られている。このため,JIS G 4801に規
定されているSUP6や,さらにSi含有量の多いSUP7等が耐
へたり性を要求されるばね材料に使用されている。しか
し,これらの鋼は室温での耐へたり性は優れているが、
温間での耐へたり性は捗々しくない。
したがって,本発明の目的とするところは使用温度が
高くてもへたりが生じない耐温間へたり性に優れたばね
用鋼を提供することにある。
高くてもへたりが生じない耐温間へたり性に優れたばね
用鋼を提供することにある。
本発明者らは耐温間へたり性に及ぼす鋼中合金元素の
作用並びに製造条件の影響などを総合的に研究した結
果,C,Si,Mn,Cr,Mo等を適量に含有させた鋼について,そ
の炭化物の固溶・析出の形態制御を適切に行なうことに
より,温間での耐へたり性が非常に優れた鋼を製造でき
ることを見出した。
作用並びに製造条件の影響などを総合的に研究した結
果,C,Si,Mn,Cr,Mo等を適量に含有させた鋼について,そ
の炭化物の固溶・析出の形態制御を適切に行なうことに
より,温間での耐へたり性が非常に優れた鋼を製造でき
ることを見出した。
すなわち本発明は,重量%において,C:0.4〜0.8%,S
i:1.0〜2.5%,Mn:0.5〜2.0%,Cr:0.1〜1.5%,Mo:0.1〜
0.5%を含み,残部がFeおよび不可避的不純物からなる
焼鈍済熱延鋼帯から圧延率10〜80%の冷間圧延とAc1変
態点以下の温度での焼鈍を少なくとも1回行なう冷間圧
延工程を経て微細な球状炭化物が析出した焼鈍済冷延鋼
帯を製造し,この材料をAc3変態点以上の温度であって
該球状炭化物が固溶するに十分な時間加熱保持したあと
下部臨界冷却速度以上で冷却し,次いで450〜600℃の温
度範囲で加熱保持して炭化物を析出させたあと常温に冷
却することからなる350℃以下の使用雰囲気温度での耐
温間へたり性に優れたばね用鋼の製造方法を提供するも
のである。ここで下部臨界冷却速度とは、オーステナイ
ト相がマルテンサイト相に変態するか否かの境となる冷
却速度を意味し,下部臨界冷却速度以上であればマルテ
ンサイトに変態する。
i:1.0〜2.5%,Mn:0.5〜2.0%,Cr:0.1〜1.5%,Mo:0.1〜
0.5%を含み,残部がFeおよび不可避的不純物からなる
焼鈍済熱延鋼帯から圧延率10〜80%の冷間圧延とAc1変
態点以下の温度での焼鈍を少なくとも1回行なう冷間圧
延工程を経て微細な球状炭化物が析出した焼鈍済冷延鋼
帯を製造し,この材料をAc3変態点以上の温度であって
該球状炭化物が固溶するに十分な時間加熱保持したあと
下部臨界冷却速度以上で冷却し,次いで450〜600℃の温
度範囲で加熱保持して炭化物を析出させたあと常温に冷
却することからなる350℃以下の使用雰囲気温度での耐
温間へたり性に優れたばね用鋼の製造方法を提供するも
のである。ここで下部臨界冷却速度とは、オーステナイ
ト相がマルテンサイト相に変態するか否かの境となる冷
却速度を意味し,下部臨界冷却速度以上であればマルテ
ンサイトに変態する。
本発明法によれば,最終熱処理工程において炭化物特
にMo炭化物が微細に析出し,これによって温間へたりの
原因である転位の移動が阻止される。この最終熱処理工
程は,450〜600℃の温度範囲であって微細炭化物が析出
するに十分な時間加熱保持したあと常温に冷却する処理
であり,通常の焼戻し温度よりも高い温度に加熱し,ま
た炭化物の析出を伴う処理であるが,以後の説明におい
て,この最終熱処理工程を単に焼戻しと略称することが
ある。
にMo炭化物が微細に析出し,これによって温間へたりの
原因である転位の移動が阻止される。この最終熱処理工
程は,450〜600℃の温度範囲であって微細炭化物が析出
するに十分な時間加熱保持したあと常温に冷却する処理
であり,通常の焼戻し温度よりも高い温度に加熱し,ま
た炭化物の析出を伴う処理であるが,以後の説明におい
て,この最終熱処理工程を単に焼戻しと略称することが
ある。
この焼戻し前には,Ac3変態点以上の温度であって前
工程で析出させた球状炭化物が固溶するに十分な時間加
熱保持したあと下部臨界冷却速度以上で冷却するという
熱処理を行なうわけであるが以後の説明においてこの熱
処理を単に焼入れと略称することがある。
工程で析出させた球状炭化物が固溶するに十分な時間加
熱保持したあと下部臨界冷却速度以上で冷却するという
熱処理を行なうわけであるが以後の説明においてこの熱
処理を単に焼入れと略称することがある。
前記の成分組成になる鋼を,焼入れ時に炭化物がオー
ステナイト中に固溶しやすいように,冷間圧延,焼鈍に
より炭化物を球状にコントロールしておき,また,焼入
れた後に特定の温度範囲で焼戻して炭化物を析出させる
と温間での耐へたり性が著しく向上することがわかっ
た。
ステナイト中に固溶しやすいように,冷間圧延,焼鈍に
より炭化物を球状にコントロールしておき,また,焼入
れた後に特定の温度範囲で焼戻して炭化物を析出させる
と温間での耐へたり性が著しく向上することがわかっ
た。
数多くの実験の結果,焼戻した後の強度が同一の場
合,600℃以下の温度範囲ではより高温で焼戻して転位密
度を減少させ,温間で歪が加わった際に可動な転位を少
なくすれば耐温間へたり性は向上し,一方,強度の上昇
によっても耐温間へたり性が向上することがわかった。
また,焼戻し時に微細な炭化物を析出させることにより
転位の移動を妨げることができ,これによって耐温間へ
たり性が向上する結果が得られた。以上の3点を同時に
達成するように,S70CやSK5等に比べてより高温で焼戻
し,なおかつその際に焼戻し軟化抵抗を高め,ばねとし
ての必要な強度を持ち合わせ,同時に微細な炭化物が析
出するように,合金成分と焼戻し温度をコントロールす
ることにより,著しく耐温間へたり性に優れる鋼が得ら
れることを見出した。
合,600℃以下の温度範囲ではより高温で焼戻して転位密
度を減少させ,温間で歪が加わった際に可動な転位を少
なくすれば耐温間へたり性は向上し,一方,強度の上昇
によっても耐温間へたり性が向上することがわかった。
また,焼戻し時に微細な炭化物を析出させることにより
転位の移動を妨げることができ,これによって耐温間へ
たり性が向上する結果が得られた。以上の3点を同時に
達成するように,S70CやSK5等に比べてより高温で焼戻
し,なおかつその際に焼戻し軟化抵抗を高め,ばねとし
ての必要な強度を持ち合わせ,同時に微細な炭化物が析
出するように,合金成分と焼戻し温度をコントロールす
ることにより,著しく耐温間へたり性に優れる鋼が得ら
れることを見出した。
より高温で焼戻しても,ばねとしての必要な硬さはSi
の添加によって確保できる。Si添加による黒鉛化および
内部酸化の発生はCrを添加することにより防止できる。
またMoを添加し焼戻し時にMo炭化物を微細に析出させ,
へたりの原因である転位の移動を阻止することにより耐
へたり性を向上させることができる。焼戻し時にMo炭化
物を析出させるためには450℃以上の温度で焼戻す必要
がある。焼戻し温度については,ばねとしての必要な強
度を確保し,かつMo炭化物を析出させるためには,450〜
600℃という特定の温度範囲で行う必要がある。また,V,
Nbを添加することにより,オーステナイト粒の粗大化防
止とMo同様の焼戻し炭化物の生成により耐温間へたり性
はいっそう向上する。
の添加によって確保できる。Si添加による黒鉛化および
内部酸化の発生はCrを添加することにより防止できる。
またMoを添加し焼戻し時にMo炭化物を微細に析出させ,
へたりの原因である転位の移動を阻止することにより耐
へたり性を向上させることができる。焼戻し時にMo炭化
物を析出させるためには450℃以上の温度で焼戻す必要
がある。焼戻し温度については,ばねとしての必要な強
度を確保し,かつMo炭化物を析出させるためには,450〜
600℃という特定の温度範囲で行う必要がある。また,V,
Nbを添加することにより,オーステナイト粒の粗大化防
止とMo同様の焼戻し炭化物の生成により耐温間へたり性
はいっそう向上する。
Mo,添加による耐へたり性向上の効果を得るために
は,焼入れ前のAc3変態点以上の加熱時にこれらの合金
元素がオーステナイト中に固溶することが重要であり,
焼入れ前の冷間圧延,焼鈍により炭化物が球状化してい
るように管理することが肝要である。
は,焼入れ前のAc3変態点以上の加熱時にこれらの合金
元素がオーステナイト中に固溶することが重要であり,
焼入れ前の冷間圧延,焼鈍により炭化物が球状化してい
るように管理することが肝要である。
以下に本発明で規定する化学成分値および製造条件の
作用と限定理由について個別に説明する。
作用と限定理由について個別に説明する。
Cは,鋼の強度を高めるのに有効であるが,焼入れ,
焼戻しによりばね鋼として必要な強度を得るには少なく
とも0.4%以上含有させる必要がある。しかし,Cを含有
し過ぎると焼割れが生じやすくなるばかりでなく,靭性
が劣化するので上限を0.8%とする。
焼戻しによりばね鋼として必要な強度を得るには少なく
とも0.4%以上含有させる必要がある。しかし,Cを含有
し過ぎると焼割れが生じやすくなるばかりでなく,靭性
が劣化するので上限を0.8%とする。
Siは本発明において重要な元素である。すなわち本発
明法では高温で焼戻すので,高温で焼戻してもばねとし
て必要な強度を確保するために,焼戻し軟化抵抗を高め
る元素であるSiを添加する。この効果を得るためには1.
0%以上含有させる必要がある。しかし,2.5%を越えて
含有させると,ばね用鋼として有害な内部酸化や脱炭が
生じやすくなるばかりでなく,熱間圧延,焼鈍において
黒鉛化を促進するので上限を2.5%とする。
明法では高温で焼戻すので,高温で焼戻してもばねとし
て必要な強度を確保するために,焼戻し軟化抵抗を高め
る元素であるSiを添加する。この効果を得るためには1.
0%以上含有させる必要がある。しかし,2.5%を越えて
含有させると,ばね用鋼として有害な内部酸化や脱炭が
生じやすくなるばかりでなく,熱間圧延,焼鈍において
黒鉛化を促進するので上限を2.5%とする。
Mnは鋼の脱酸に有効であると同時に,鋼の焼入れ性を
向上させる元素であり,これらの効果を得るには0.5%
以上含有させる必要がある。しかし2.0%を越えて含有
させると,焼入れ,焼戻し後の靭性の劣化が著しくなる
ので上限を2.0%とする。
向上させる元素であり,これらの効果を得るには0.5%
以上含有させる必要がある。しかし2.0%を越えて含有
させると,焼入れ,焼戻し後の靭性の劣化が著しくなる
ので上限を2.0%とする。
Crは,Siを含有することにより促進される黒鉛化およ
び内部酸化を抑制すると同時に,Mnと同様に焼入れ性を
向上させるのに有効な元素である。これらの効果を得る
には0.1%以上含有させる必要がある。しかし,1.5%を
超えて含有させると,焼入れ,焼戻し後の靭性の劣化が
著しいので上限を1.5%とする。
び内部酸化を抑制すると同時に,Mnと同様に焼入れ性を
向上させるのに有効な元素である。これらの効果を得る
には0.1%以上含有させる必要がある。しかし,1.5%を
超えて含有させると,焼入れ,焼戻し後の靭性の劣化が
著しいので上限を1.5%とする。
Moは,本発明に従う冷延・焼鈍工程を経たあとにおい
て鋼中で炭化物を形成しているが,これはAc3変態点以
上の温度に加熱された際にオーステナイト中に固溶し,
したがって焼入れ後にはマルテンサイト中に固溶してい
る。そして高温焼戻し時に炭化物として微細に析出す
る。これによって耐温間へたり性を著しく向上させる。
これらの効果を得るには0.1%以上のMoを含有させる必
要がある。しかし0.5%を超えて含有させると,Ac3変態
点以上の温度に加熱された際に,オーステナイト中に固
溶されない比較的粗大な未溶解炭化物量が増大し,非金
属介在物と同様に疲労強度を低下させるので上限を0.5
%とした。
て鋼中で炭化物を形成しているが,これはAc3変態点以
上の温度に加熱された際にオーステナイト中に固溶し,
したがって焼入れ後にはマルテンサイト中に固溶してい
る。そして高温焼戻し時に炭化物として微細に析出す
る。これによって耐温間へたり性を著しく向上させる。
これらの効果を得るには0.1%以上のMoを含有させる必
要がある。しかし0.5%を超えて含有させると,Ac3変態
点以上の温度に加熱された際に,オーステナイト中に固
溶されない比較的粗大な未溶解炭化物量が増大し,非金
属介在物と同様に疲労強度を低下させるので上限を0.5
%とした。
製造条件については次のとおりである。
冷間圧延工程において,圧延率が10%未満ではAc1変
態点以下での焼鈍の際に,炭化物粒径が粗大化し,Ac3
変態点以上の温度への加熱時に炭化物をオーステナイト
に固溶させるのに長時間を要するために著しく脱炭が進
行し,ばねとしての特性が劣化する。また,圧下率が80
%を超える冷間圧延を施すと加工硬化が著しく耳割れな
どの形状不良が発生するので上限を80%とする。
態点以下での焼鈍の際に,炭化物粒径が粗大化し,Ac3
変態点以上の温度への加熱時に炭化物をオーステナイト
に固溶させるのに長時間を要するために著しく脱炭が進
行し,ばねとしての特性が劣化する。また,圧下率が80
%を超える冷間圧延を施すと加工硬化が著しく耳割れな
どの形状不良が発生するので上限を80%とする。
冷延後の焼鈍をAc1変態点以上で行うと,球状化され
た炭化物粒径は粗大になり,Ac3変態点以上の温度への
加熱時に炭化物をオーステナイトに固溶されるのに長時
間を要するために脱炭が著しく進行しばねとしての特性
が劣化する。したがって冷延後の焼鈍はAc1変態点以下
で行う。
た炭化物粒径は粗大になり,Ac3変態点以上の温度への
加熱時に炭化物をオーステナイトに固溶されるのに長時
間を要するために脱炭が著しく進行しばねとしての特性
が劣化する。したがって冷延後の焼鈍はAc1変態点以下
で行う。
冷間圧延,焼鈍を経て製造された焼鈍済冷延鋼帯は,
ばねとして必要な強度を得るために,Ac3変態点以上の
温度であって該球状炭化物が固溶するに十分な時間加熱
保持したあと下部臨界冷却速度以下で冷却(焼入れ)
し,次いで450〜600℃の温度範囲であって微細炭化物が
析出するに十分な時間加熱保持したあと常温に冷却する
(焼戻しする)。焼入れにおいては,Ac3変態点以上に
加熱することにより母相の組織をオーステナイトとし,
球状炭化物を固溶させ,下部臨界冷却速度以上の冷却速
度で冷却することにより,Cや合金元素を固溶したマルテ
ンサイトを得ることができる。次いで,450℃以上で焼戻
すと耐温間へたり性に有効であるMo,の炭化物がマルテ
ンサイトから微細に析出する。しかし,600℃を超えた温
度で焼戻しを行うとMo,の炭化物は粗大化し,へたりの
原因である転位の移動を阻止できず同時に強度の低下も
著しくなるのでそのい上限は600℃とする。
ばねとして必要な強度を得るために,Ac3変態点以上の
温度であって該球状炭化物が固溶するに十分な時間加熱
保持したあと下部臨界冷却速度以下で冷却(焼入れ)
し,次いで450〜600℃の温度範囲であって微細炭化物が
析出するに十分な時間加熱保持したあと常温に冷却する
(焼戻しする)。焼入れにおいては,Ac3変態点以上に
加熱することにより母相の組織をオーステナイトとし,
球状炭化物を固溶させ,下部臨界冷却速度以上の冷却速
度で冷却することにより,Cや合金元素を固溶したマルテ
ンサイトを得ることができる。次いで,450℃以上で焼戻
すと耐温間へたり性に有効であるMo,の炭化物がマルテ
ンサイトから微細に析出する。しかし,600℃を超えた温
度で焼戻しを行うとMo,の炭化物は粗大化し,へたりの
原因である転位の移動を阻止できず同時に強度の低下も
著しくなるのでそのい上限は600℃とする。
以上の述べた各元素の成分量と製造方法が組み合わさ
れてはじめて耐温間へたり性に優れたばね鋼を製造する
ことができる。
れてはじめて耐温間へたり性に優れたばね鋼を製造する
ことができる。
次に,本発明の実施例について説明する。
第1表に供試材の化学成分を示す。
これらの鋼のうちA鋼とF鋼について,通常の熱間圧
延により3.5mmtの熱延板とし,熱延板焼鈍を施したの
ち,圧延率5〜90%の冷間圧延を行い,その後Ac1変態
点以下の温度である700℃で均熱10時間の焼鈍を行っ
た。次いでAc3変態点以上の温度である900℃で残留炭化
物率が重量比で1%以下となる時間均熱したのち,油焼
入れを行った。冷間圧延後の耳割れ発生の有無と,焼入
れ後の脱炭深さを測定した結果を第2表に示した。
延により3.5mmtの熱延板とし,熱延板焼鈍を施したの
ち,圧延率5〜90%の冷間圧延を行い,その後Ac1変態
点以下の温度である700℃で均熱10時間の焼鈍を行っ
た。次いでAc3変態点以上の温度である900℃で残留炭化
物率が重量比で1%以下となる時間均熱したのち,油焼
入れを行った。冷間圧延後の耳割れ発生の有無と,焼入
れ後の脱炭深さを測定した結果を第2表に示した。
第2表の結果から明らかなように,圧延率が80%を超
えると耳割れが発生する。また,圧延率が10%未満であ
ると,炭化物が粗大化するために,炭化物をオーステナ
イト中に固溶させるのに長時間を要し,その結果として
脱炭深さが著しく深くなることがわかる。
えると耳割れが発生する。また,圧延率が10%未満であ
ると,炭化物が粗大化するために,炭化物をオーステナ
イト中に固溶させるのに長時間を要し,その結果として
脱炭深さが著しく深くなることがわかる。
次に,A〜Fの各鋼について3.5mmtの熱延板に通常の焼
鈍を施したのち,圧延率35%の冷間圧延を行って2.3mmt
の冷延板とし,700℃で10時間の焼鈍を1回行った。次い
でAc3変態点以上の温度である850〜900℃で10分間加熱
後,油焼入れし,続いて420〜630℃の温度で30分間焼戻
したのち,リラクセーション試験により温間へたり性を
評価した。リラクセーション試験は,試験温度を350
℃,初期歪を1.0%,保持時間を12時間とし,試験前後
での荷重の低下率をリラクセーション率とした。結果を
第3表に示した。また硬さ(Hv)も併せて示した。
鈍を施したのち,圧延率35%の冷間圧延を行って2.3mmt
の冷延板とし,700℃で10時間の焼鈍を1回行った。次い
でAc3変態点以上の温度である850〜900℃で10分間加熱
後,油焼入れし,続いて420〜630℃の温度で30分間焼戻
したのち,リラクセーション試験により温間へたり性を
評価した。リラクセーション試験は,試験温度を350
℃,初期歪を1.0%,保持時間を12時間とし,試験前後
での荷重の低下率をリラクセーション率とした。結果を
第3表に示した。また硬さ(Hv)も併せて示した。
第3表の結果に見られるように,比較例のGはC含有
量が,同IはSi含有量が,同JはMn含有量が,また同K
はCr含有量がそれぞれ本発明で規定するよりも低いの
で,強度が低くこのためリラクセーション率は高くなっ
ている。C含有量の高い比較例Hもリラクセーション率
はさほど低い値とならない。比較例LはMoが添加されて
おらず,耐温間へたり性に有効であるMo炭化物が生成し
ないため,リラクセーション率は著しく高い。また,化
学成分値は本発明で規定する範囲にあるA鋼でも,焼戻
し温度が本発明範囲を外れる420℃や630℃という温度で
は,リラクセーション率はさほど低い値とはならない
(第3表の下欄の比較例)。
量が,同IはSi含有量が,同JはMn含有量が,また同K
はCr含有量がそれぞれ本発明で規定するよりも低いの
で,強度が低くこのためリラクセーション率は高くなっ
ている。C含有量の高い比較例Hもリラクセーション率
はさほど低い値とならない。比較例LはMoが添加されて
おらず,耐温間へたり性に有効であるMo炭化物が生成し
ないため,リラクセーション率は著しく高い。また,化
学成分値は本発明で規定する範囲にあるA鋼でも,焼戻
し温度が本発明範囲を外れる420℃や630℃という温度で
は,リラクセーション率はさほど低い値とはならない
(第3表の下欄の比較例)。
これに対して,化学成分値,焼入れ温度,焼戻し温度
がともに本発明範囲内にある時は,リラクセーション率
は比較例に比べて著しく低い値を示し,耐温間へたり性
に優れたいることは明らかである。
がともに本発明範囲内にある時は,リラクセーション率
は比較例に比べて著しく低い値を示し,耐温間へたり性
に優れたいることは明らかである。
以上の実施例から明らかなように,本発明によれば,
温間で使用されるばねとしてもっとも重要な特性の1つ
である耐へたり性が著しく優れたばねを製造することが
でき,温間での耐へたり性が要求される用途,例えば自
動車のクラッチに組み込まれるダイアフラム等の材料と
して非常に有用である。
温間で使用されるばねとしてもっとも重要な特性の1つ
である耐へたり性が著しく優れたばねを製造することが
でき,温間での耐へたり性が要求される用途,例えば自
動車のクラッチに組み込まれるダイアフラム等の材料と
して非常に有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 8/00 C22C 38/00 - 38/60
Claims (1)
- 【請求項1】重量%において,C:0.4〜0.8%,Si:1.0〜2.
5%,Mn:0.5〜2.0%,Cr:0.1〜1.5%,Mo:0.1〜0.5%を含
有し,残部がFeおよび不可避的不純物からなる焼鈍済熱
延鋼帯から、圧延率10〜80%の冷間圧延とAc1変態点以
下の温度での焼鈍を少なくとも1回行う冷間圧延を経て
微細な球状炭化物が析出した焼鈍済冷延鋼帯を製造し,
この材料をAc3変態点以上の温度であって該球状炭化物
が固溶するに十分な時間加熱保持したあと下部臨界冷却
速度以上で冷却し,次いで450〜600℃の温度範囲で加熱
保持して炭化物を析出させたあと常温に冷却することか
らなる350℃以下の使用雰囲気温度での耐温間へたり性
に優れたばね用鋼の製造方法。
Priority Applications (6)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP15879090A JP2961666B2 (ja) | 1990-06-19 | 1990-06-19 | 耐温間へたり性に優れたばね用鋼の製造方法 |
AU78373/91A AU633737B2 (en) | 1990-06-19 | 1991-06-13 | Method of making steel for springs |
CA002044639A CA2044639C (en) | 1990-06-19 | 1991-06-14 | Method of making steel for springs |
DE69121982T DE69121982T2 (de) | 1990-06-19 | 1991-06-17 | Wärmebehandlungsverfahren für Stahl, insbesondere von Stahl für Federn |
EP91305456A EP0462779B1 (en) | 1990-06-19 | 1991-06-17 | Method of making steel useful in springs |
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