JPH08193242A - 靭性に優れた窒化用鋼 - Google Patents

靭性に優れた窒化用鋼

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JPH08193242A
JPH08193242A JP328295A JP328295A JPH08193242A JP H08193242 A JPH08193242 A JP H08193242A JP 328295 A JP328295 A JP 328295A JP 328295 A JP328295 A JP 328295A JP H08193242 A JPH08193242 A JP H08193242A
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Fukukazu Nakazato
福和 中里
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Abstract

(57)【要約】 【目的】油圧ショベルの油圧ブレーカ内部に組み込まれ
るブッシュ類など、土木建設機械に使用される各種摺動
部品用鋼材に好適な靭性に優れた窒化用鋼を廉価に提供
すること。 【構成】重量%で、C:0.15〜0.35%、Si:
0.10〜1.00%、Mn:0.30〜2.00%、
Cr:1.00〜3.00%、Mo:0.30〜1.2
0%、Ni:2.00%以下、V:0.40%以下、
B:0.0100%以下、Al:0.010〜0.10
0%、N:0.0150%以下を含有し、残部はFeお
よび不可避不純物からなり、かつ、(2/3) %Cr +(1/3) %
Mo + %Al-25 %N の値が0.85〜2.00%である靭
性に優れた窒化用鋼。但し、 %Xは元素Xの重量%であ
る。これらの成分に加えて更に、Nb、Ti、S、P
b、Te、Bi、Caのうちの1種以上を含有していて
も良い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、靭性に優れた窒化用鋼
に関する。更に詳しくは、油圧ショベルの油圧ブレーカ
内部に組み込まれるブッシュ類など、土木建設機械に使
用される各種摺動部品用鋼材に好適な靭性に優れた窒化
用鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】油圧ショベルの油圧ブレーカ内部に組み
込まれるブッシュ類を始めとして、土木建設機械に使用
される各種摺動部品は、ピストンやチゼルなどと激しく
摺動するため、耐摩耗性が必要とされる。一方、土木建
設機械はその使用中に激しい衝撃を受ける。従って、前
記の各種摺動部品には優れた耐衝撃特性が同時に要求さ
れる。
【0003】一般に、土木建設機械用の各種摺動部品の
耐摩耗性向上のためには窒化処理が施される。しかし、
上記したように優れた耐衝撃特性も要求されるため、代
表的な窒化用鋼であるSACM645鋼(JIS G 4202(1
979))などの耐衝撃特性に劣る鋼は使用されず、もっぱ
らSCM435鋼やSCM440鋼(いずれもJIS G410
5(1979))更には、SNCM420鋼(JIS G 4103(197
9))を用いてこれらの鋼に窒化処理を施したものが、前
記の各種摺動部品として使用されてきた。
【0004】ところが、前記のSCM435鋼、SCM
440鋼およびSNCM420鋼はいずれも窒化特性に
劣るため、窒化のために長時間を要して生産性が悪いと
ともに費用が嵩むという問題を有していた。更に、SC
M440鋼やC含有量の高いSCM435鋼の場合に
は、耐衝撃特性の点で問題となることもあった。
【0005】特開昭49−101216号公報にはVを
含有する迅速窒化鋼が提案されている。この鋼は耐摩耗
性と耐疲労性には優れていると思われるが、耐衝撃特性
に関しては全く考慮がなされていない鋼である。従っ
て、この鋼を窒化処理して土木建設機械用の各種摺動部
品に用いると、使用中の激しい衝撃に耐えきれないと思
われる。
【0006】そのためユーザからは、土木建設機械用の
各種摺動部品を廉価でしかも効率良く生産できるよう
に、窒化特性に優れるとともに耐衝撃特性をも有し、か
つ廉価な鋼の開発が待望されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、土木
建設機械用の各種摺動部品用鋼材に好適な耐衝撃特性と
窒化特性に優れた鋼、すなわち靭性に優れた窒化用鋼、
就中、油圧ショベルの油圧ブレーカ内部に組み込まれる
ブッシュ類用鋼材などに好適な靭性に優れた窒化用鋼を
廉価に提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記の課題を
達成するため検討を重ねた結果、下記(a)〜(g)の
知見を得た。
【0009】(a)窒化特性を著しく向上させる元素と
して良く知られているAlを、重量%で、0.100%
を超えて含有させると酸化物系の介在物が凝集粗大化し
て、靭性が大きく低下すること。
【0010】(b)窒化特性には鋼のN含有量が大きく
影響し、重量%で、0.0150%を超えて含有する
と、窒化特性は著しく低下すること。
【0011】(c)AlとNの含有量がそれぞれ、重量
%で、0.100%以下および0.0150%以下の範
囲の鋼にあっては、CrとMoの含有量を特定の範囲に
制御すると、窒化層の特性(「窒化層最高硬さ」と「窒
化層深さ」)は下記の式で表わされるfn1の値で整理
でき、その値が0.85%以上の場合に良好な窒化層特
性が得られること。
【0012】 fn1=(2/3) %Cr +(1/3) %Mo + %Al -25 %N ここで %Cr はCr含有量の重量%を意味し、 %Mo 、
%Al および %N についても同様である。
【0013】(d)前記の窒化層特性として、窒化層の
最高硬さがHv で700以上あり、かつHv 500まで
の窒化層深さが0.3mm以上あれば、充分な耐摩耗性
が得られること。
【0014】(e)土木建設機械用の各種摺動部品には
所謂「キャビテーション」が生じる。
【0015】キャビテーションとは作動油(ピストンを
作動させるための油)の激しい流れや圧力変化によって
生じる腐食現象の1種である。一般に、キャビテーショ
ンが生じると、各種摺動部品の寿命は極端に短くなるこ
とが知られているが、たとえキャビテーションが生じて
も、前記部品の芯部硬さがHv で250以上であれば、
各種摺動部品の寿命低下を抑制できること。
【0016】(f)実機に組み込んだ予備テストの結
果、各種摺動部品が使用中の衝撃に充分耐えて折損しな
いためには、部品芯部の靭性としてJIS3号試験片で
の常温における衝撃値が120J/cm2 以上あればよ
いこと。
【0017】(g)窒化処理後の部品芯部に前記衝撃値
を確保させるためには、鋼の成分としてのC、Si、M
nおよびAlの含有量、就中、Alの含有量を厳密に制
御する必要があること。
【0018】上記知見に基づく本発明は下記(1)〜
(4)に示す化学組成を有する靭性に優れた窒化用鋼を
要旨とする。
【0019】(1)重量%で、C:0.15〜0.35
%、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.30〜
2.00%、Cr:1.00〜3.00%、Mo:0.
30〜1.20%、Ni:2.00%以下、V:0.4
0%以下、B:0.0100%以下、Al:0.010
〜0.100%、N:0.0150%以下を含有し、残
部はFeおよび不可避不純物からなり、かつ、前記fn
1の値が0.85〜2.00%である靭性に優れた窒化
用鋼。
【0020】(2)上記(1)に記載の成分に加えて更
に、重量%で、0.005〜0.050%のNbおよび
0.01〜0.10%のTiのうちの1種以上を含有
し、かつ、前記fn1の値が0.85〜2.00%であ
る靭性に優れた窒化用鋼。
【0021】(3)上記(1)に記載の成分に加えて更
に、重量%で、0.005〜0.100%のS、0.0
1〜0.30%のPb、0.005〜0.100%のT
e、0.01〜0.30%のBiおよび0.0005〜
0.0100%のCaのうちの1種以上を含有し、か
つ、前記fn1の値が0.85〜2.00%である靭性
に優れた窒化用鋼。
【0022】(4)上記(1)に記載の成分に加えて更
に、重量%で、0.005〜0.050%のNbおよび
0.01〜0.10%のTiのうちの1種以上、並びに
0.005〜0.100%のS、0.01〜0.30%
のPb、0.005〜0.100%のTe、0.01〜
0.30%のBiおよび0.0005〜0.0100%
のCaのうちの1種以上を含有し、かつ、前記fn1の
値が0.85〜2.00%である靭性に優れた窒化用
鋼。
【0023】
【作用】以下に、本発明における鋼の化学組成を上記の
ように限定する理由について説明する。なお、「%」は
「重量%」を意味する。
【0024】C:Cは所望の強度を確保するのに有効な
元素であるが、反面靭性を低下させる元素でもある。す
なわち、芯部硬さを確保してキャビテーションによる寿
命低下を抑制し、かつ芯部靭性の確保により激しい衝撃
を吸収して耐折損性を向上させるためには、強度(硬
さ)と靭性のバランスが必要で、最低限の硬さ(芯部硬
さでHv 250以上)を得るためには、0.15%以上
が必要である。一方、0.35%を超えて含有させると
靭性が低下し、所定の靭性(芯部の靭性としてJIS3
号試験片での常温における衝撃値が120J/cm2
上)を得ることができない。従って、Cの含有量は、
0.15〜0.35%とした。
【0025】Si:Siは鋼の脱酸に必要であるととも
に、所定の強度(硬さ)を付与するのに必要な元素であ
る。しかし、その含有量が0.10%未満では所望の効
果が得られず、1.00%を超えると靭性が著しく劣化
するようになり所定の靭性を確保できないので、その含
有量を0.10〜1.00%とした。
【0026】Mn:Mnは脱酸に必要であるとともに、
焼入れ性を高めて硬さと靭性を向上させる作用がある。
しかし、その含有量が0.30%未満では所望の効果が
得られず、2.00%を超えると粒界に偏析しかえって
靭性が劣化し、所望の靭性が得られないので、その含有
量を0.30〜2.00%とした。
【0027】Cr:Crは窒化特性を向上させるととも
に、焼入れ性を高めて硬さと靭性の向上に有効な元素で
ある。しかし、その含有量が1.00%未満では所望の
効果が得られず、3.00%を超えて含有してもその効
果は飽和し経済性を損なうことになるので、その含有量
を1.00〜3.00%とした。
【0028】Mo:Moは焼入れ性を向上させて硬さと
靭性を高めるとともに、窒化特性を向上させるのに有効
な元素である。しかし、その含有量が0.30%未満で
は所望の効果が得られず、一方1.20%を超えて含有
してもその効果は飽和し、コストのみが上昇することに
なるので、その含有量を0.30〜1.20%とした。
【0029】Ni:Niは添加しなくても良い。添加す
れば強度を向上させ、更に靭性を大きく向上させる効果
がある。この効果を確実に得るには、Niは0.05%
以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有
量が2.00%を超えると前記効果が飽和し、またコス
トが嵩むばかりとなる。従って、Niの含有量を2.0
0%以下とした。
【0030】V:Vは添加しなくても良い。添加すれば
強度を向上させるとともに、窒化特性を向上させる作用
も有する。これらの効果を確実に得るには、Vは0.0
5%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その
含有量が0.40%を超えるとV炭窒化物が凝集粗大化
し、靭性が低下する。従って、Vの含有量を0.40%
以下とした。なお、より一層の靭性確保のためにはV含
有量は0.20%未満とすれば良い。
【0031】B:Bも添加しなくても良い。添加すれば
焼入れ性が向上する効果がある。この効果を確実に得る
には、Bは0.0005%以上の含有量とすることが望
ましい。
【0032】しかし、その含有量が0.0100%を超
えると、熱間加工性が低下する。従って、B含有量の上
限を0.0100%とした。
【0033】Al:Alは本発明において重要な元素で
あり、これを適正量含有させることによって窒化特性
(換言すれば耐摩耗性)と靭性が共に向上する。すなわ
ち、窒化特性に関しては、後述するようにCr、Moお
よびNの含有量とあわせてその量を制御すれば、良好な
窒化層特性が得られて耐摩耗性が向上する。更に、適正
量のC、SiおよびMnとの複合添加で靭性が大きく向
上し、使用時の激しい衝撃を吸収して耐折損性を向上さ
せる。しかし、その含有量が0.010%未満では所望
の効果を得ることができず、0.100%を超えると酸
化物系介在物が凝集粗大化してかえって靭性を著しく損
ない所定の靭性(芯部の靭性としてJIS3号試験片で
の常温における衝撃値が120J/cm2 以上)を確保
できないこととなるので、その含有量を0.010〜
0.100%とした。
【0034】N:Nは窒化層の特性を整理可能な前記の
fn1の式からも明らかなように、窒化層特性に対して
悪影響を及ぼすため含有させなくとも良い。しかし、製
鋼段階で完全に脱N処理を行うことは不可能であるし、
また逆に、含有させれば窒化物を形成して結晶粒を微細
にし靭性を向上させる効果を有する。この靭性向上に対
する効果を確実に得るには、Nは0.0020%以上の
含有量とすることが望ましい。しかし、その含有量が
0.0150%を超えると、窒化処理の前に鋼中に窒化
物が多量に生成してしまい、耐摩耗性向上のために行う
窒化処理の際にはかえって窒化物生成能が低下して窒化
特性が劣化し耐摩耗性が低下することとなる。
【0035】従って、N含有量の上限を0.0150%
とした。
【0036】fn1:AlとNの含有量がそれぞれ0.
100%以下および0.0150%以下の鋼において、
CrとMoの含有量を前記した範囲に制御すると、 %X
を元素Xの含有量(重量%)とした時、既に述べたよう
に窒化層の特性はfn1=(2/3) %Cr+(1/3) %Mo + %Al
-25 %N なる式の値で整理でき、このfn1の値が0.
85%未満の場合には良好な窒化層特性が得られない。
すなわち、窒化層の最高硬さがHv で700以上、かつ
Hv 500までの窒化層深さが0.3mm以上という所
望の窒化層特性が得られず、耐摩耗性が劣化する。一
方、この値が2.00%を超えると前記効果は飽和し経
済性を損なうようになる。従って、fn1の値は0.8
5〜2.00%とした。
【0037】本発明の靭性に優れた窒化用鋼には、上記
の成分に加えて、更にNb、Tiのうちの1種以上およ
び/またはS、Pb、Te、Bi、Caのうちの1種以
上を含んでいても良い。これらの合金元素の作用効果と
望ましい含有量は下記の通りである。
【0038】NbおよびTi:NbおよびTiは炭窒化
物を生成して結晶粒を微細化し、靭性を向上させる効果
を有する。従って、NbおよびTiは必要に応じて一方
または両方を添加しても良い。しかし、Nbの場合に
は、0.005%未満の含有量では所望の効果が得られ
ず、0.050%を超えて含有すると靭性の低下をきた
して耐折損性の劣化を招く。一方、Tiの場合には、
0.01%未満の含有量では所望の効果が得られず、
0.10%を超えて含有するとかえって結晶粒が粗大化
し靭性の低下をきたして耐折損性の劣化を招く。従っ
て、これらの合金元素を1種以上添加する場合には、N
b:0.005〜0.050%、Ti:0.01〜0.
10%の含有量とするのが良い。
【0039】S、Pb、Te、BiおよびCa:S、P
b、Te、BiおよびCaには被削性を向上させる作用
がある。従って、S、Pb、Te、BiおよびCaは必
要に応じて1種以上を添加しても良い。
【0040】但し、Sの場合には0.005%未満の含
有量では所望の効果が得られず、0.100%を超えて
含有すると靭性の著しい低下をきたす。また、Pbの場
合には、0.01%未満の含有量では所望の効果が得ら
れず、0.30%を超えて含有すると靭性の低下をきた
す。Teの場合には0.005%未満の含有量では所望
の効果が得られず、0.100%を超えて含有すると熱
間加工性が劣化する。一方、Biの場合は、0.01%
未満の含有量では所望の効果が得られず、0.30%を
超えて含有すると靭性が劣化する。更に、Caの場合に
も、0.0005%未満の含有量では所望の効果が得ら
れず、0.0100%を超えて含有すると靭性の低下を
きたす。従って、これらの合金元素を1種以上添加する
場合は、S:0.005〜0.100%、Pb:0.0
1〜0.30%、Te:0.005〜0.100%、B
i:0.01〜0.30%およびCa:0.0005〜
0.0100%の含有量とするのが良い。
【0041】上記の化学組成を有する鋼は通常の方法で
溶製された後、例えば、熱間で圧延または鍛造され、そ
の後必要に応じて焼準され、しかる後に所望の部品形状
に加工され、通常の方法で調質処理(焼入れ焼戻し処
理)ならびに窒化処理を施される。あるいは、前記の熱
間での圧延または鍛造後、必要に応じて焼準され、しか
る後に通常の方法で調質処理され、所望の部品形状に加
工されてから通常の方法で窒化処理を施される。なお、
調質処理において焼入れは850〜950℃程度の温度
に加熱後水や油で冷却すれば良く、焼戻しはAc1変態点
以下の温度で、窒化処理した後で所望の芯部強度(硬
さ)と芯部靭性の得られるような温度範囲、例えば55
0〜600℃程度の温度で行えば良い。焼戻し後の冷却
は加速冷却や放冷など適当な方法を選択すれば良い。更
に、窒化処理は520〜540℃程度の温度で行えば良
い。
【0042】
【実施例】
(実施例1)表1、2に示す化学組成を有する鋼を通常
の方法により500kg試験炉を用いて溶製した。表1
における鋼1〜15は本発明鋼、表2における鋼16〜
32は成分のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲
から外れた比較鋼である。なお表2における比較鋼のう
ち鋼29、30、31、32はそれぞれSCM435
鋼、SCM440鋼、SNCM420鋼、SACM64
5鋼に相当するものである。
【0043】次いで、これらの本発明鋼および比較鋼を
通常の方法によって30mmφの丸棒に鍛造し、その後
これらの供試鋼材に、870℃で1時間加熱して水焼入
れを行い次いで600℃で6時間の焼戻しを行って空冷
する調質処理を施した。この後に前記処理材を素材とし
て直径25mmで長さが300mmの窒化処理用試験片
を削り出し、この試験片に530℃で60時間の窒化処
理を行った後、空冷処理した。
【0044】こうして得られた窒化処理後の25mmφ
試験片の図1に示した長さ方向の位置から25mmφの
硬さ試験片およびJIS3号シャルピー衝撃試験片を切
り出し、常温での芯部硬さと芯部靭性ならびに窒化層の
特性を調査した。その結果を表3、4に示す。
【0045】本発明鋼である鋼1〜15はいずれも極め
て良好な窒化層の特性(窒化層の最高硬さがHv で70
0以上、Hv 500までの窒化層深さが0.3mm以上)
ならびに良好な常温での芯部硬さ(Hv で250以上)
と芯部靭性(120J/cm2 以上)を有することが明
らかである(表3参照)。
【0046】これに対して、成分のいずれかが本発明で
規定する含有量の範囲から外れた比較鋼である鋼16〜
32では、窒化層特性、常温での芯部硬さと芯部靭性の
いずれかにおいて前記の値を満足していない(表4参
照)。
【0047】(実施例2)前記の表1および表2に記載
した本発明鋼である鋼5、鋼10および比較鋼である鋼
24、鋼30を素材として通常の方法で油圧ショベルの
油圧ブレーカ用ブッシュ(外径:150mm、内径:1
10mm、長さ:500mm)を各鋼種5個ずつ製作
し、実機に組み込んで100時間のフィールドテストを
行った。なお、調質処理および窒化処理は前記の実施例
1における処理と同一とした。
【0048】実機によるフィールドテストの結果、本発
明鋼である鋼5と鋼10鋼を用いたブッシュはいずれも
耐摩耗性、耐衝撃特性とも問題はなく、100時間の実
機使用後も健全な状態であった。他方、比較鋼である鋼
24と鋼30を用いたブッシュは耐摩耗性と耐衝撃特性
のいずれかまたは両方に問題があり、全て100時間に
達する前に折損や摩耗が生じ、製品寿命は短いものであ
った。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【発明の効果】本発明によれば、油圧ショベルの油圧ブ
レーカ内部に組み込まれるブッシュ類など、土木建設機
械に使用される各種摺動部品用鋼材に好適な靭性に優れ
た窒化用鋼を廉価に得ることが可能で、産業上の効果は
極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いた試験片の長さ方向の切り出し位
置を示す図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.15〜0.35%、S
    i:0.10〜1.00%、Mn:0.30〜2.00
    %、Cr:1.00〜3.00%、Mo:0.30〜
    1.20%、Ni:2.00%以下、V:0.40%以
    下、B:0.0100%以下、Al:0.010〜0.
    100%、N:0.0150%以下を含有し、残部はF
    eおよび不可避不純物からなり、かつ、下記fn1の値
    が0.85〜2.00%である靭性に優れた窒化用鋼。 fn1=(2/3) %Cr +(1/3) %Mo + %Al -25 %N 但し、 %X は元素Xの重量%である。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の成分に加えて更に、重量
    %で、0.005〜0.050%のNbおよび0.01
    〜0.10%のTiのうちの1種以上を含有し、かつ、
    下記fn1の値が0.85〜2.00%である靭性に優
    れた窒化用鋼。 fn1=(2/3) %Cr +(1/3) %Mo + %Al -25 %N 但し、 %X は元素Xの重量%である。
  3. 【請求項3】請求項1に記載の成分に加えて更に、重量
    %で、0.005〜0.100%のS、0.01〜0.
    30%のPb、0.005〜0.100%のTe、0.
    01〜0.30%のBiおよび0.0005〜0.01
    00%のCaのうちの1種以上を含有し、かつ、下記f
    n1の値が0.85〜2.00%である靭性に優れた窒
    化用鋼。 fn1=(2/3) %Cr +(1/3) %Mo + %Al -25 %N 但し、 %X は元素Xの重量%である。
  4. 【請求項4】請求項1に記載の成分に加えて更に、重量
    %で、0.005〜0.050%のNbおよび0.01
    〜0.10%のTiのうちの1種以上、並びに0.00
    5〜0.100%のS、0.01〜0.30%のPb、
    0.005〜0.100%のTe、0.01〜0.30
    %のBiおよび0.0005〜0.0100%のCaの
    うちの1種以上を含有し、かつ、下記fn1の値が0.
    85〜2.00%である靭性に優れた窒化用鋼。 fn1=(2/3) %Cr +(1/3) %Mo + %Al -25 %N 但し、 %X は元素Xの重量%である。
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