JPH08177844A - 内燃機関の潤滑システム - Google Patents

内燃機関の潤滑システム

Info

Publication number
JPH08177844A
JPH08177844A JP32333194A JP32333194A JPH08177844A JP H08177844 A JPH08177844 A JP H08177844A JP 32333194 A JP32333194 A JP 32333194A JP 32333194 A JP32333194 A JP 32333194A JP H08177844 A JPH08177844 A JP H08177844A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
connecting rod
bearing
rod bearing
crankpin
overlay layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP32333194A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenji Ushijima
研史 牛嶋
Shunichi Aoyama
俊一 青山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nissan Motor Co Ltd filed Critical Nissan Motor Co Ltd
Priority to JP32333194A priority Critical patent/JPH08177844A/ja
Publication of JPH08177844A publication Critical patent/JPH08177844A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【目的】 内燃機関の潤滑システムにおいて、高回転数
域における潤滑条件の改善する。 【構成】 コンロッド軸受32の軸受表面にクランクピ
ン35より熱伝導率の高いオーバレイ層を全周に渡って
形成し、コンロッド軸受隙間55をその周方向について
ロッド中心線Y−Yから離れた部位で大きくなるように
形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、内燃機関のコンロッ
ド軸受構造に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の自動車用機関等にあっては、機関
の高速化がはかられる一方で、ウォータジャケットの小
型化に伴って機関を循環する潤滑油の平衡温度が例えば
130°程度と上昇する傾向にあるため、コンロッド軸
受とクランクピン間に介在する潤滑油膜の放熱性を高め
て潤滑性を維持することが要求される。
【0003】内燃機関のクランクシャフトには、メイン
ギャラリからシャフトの主軸受に供給された潤滑油は、
クランクシャフトの内部通路を通ってクランクピンと軸
受メタルの隙間に送り込まれ、主軸受ならびにコンロッ
ド軸受の潤滑が行われる。
【0004】この潤滑によって冷却も行われるのである
が、そのクランクピン摺動面の温度特性を図17に示す
測定装置(熱電対72,73をクランクピン71の摺動
面中央に埋め込んである)によって測定してみると、図
18に示すように機関の回転数と共に急激に上昇し、特
にクランクピン71の内側つまりクランクシャフト74
の中心側の摺動面の温度上昇が大となっている。
【0005】この理由は、機関の高回転時には、ピスト
ン、コンロッド等の慣性力が回転数の2乗に比例して増
大するため、クランクピン71の内側に荷重がかかる割
合が大となり、潤滑油膜が薄くなり、発熱が増加すると
共に、冷却作用もはたしている潤滑油のクランクピン7
1の内側への供給量が制約されることによる。
【0006】コンロッド軸受の耐久性は温度への依存度
が高く、クランクピン71の内側の温度レベルによっ
て、回転数の上限が決められたり、あるいはオイルクー
ラ等の装着が必要とされ、クランクピン71の内側の温
度レベルが潤滑性能を確保する上でのポイントとなって
いる。
【0007】そこで、このクランクピンの内側部分の冷
却を強化するものとして、例えば実開昭63ー2891
3号公報に示されたように、クランクピン部分に潤滑油
を送るオイル通路をクランクピンの内側(クランクシャ
フトの中心側)の摺動面近くに設けて、摺動面に潤滑油
を供給すると共に、クランクピンの内側を冷却するよう
にしたものが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来装置にあっては、オイル通路を流れる潤滑油に
よってそれなりの冷却効果はあるが、コンロッド側との
わずかな隙間(例えば50ミクロン程度)から摺動面に
流出されるつまり洩れる油量だけでは、実際オイル通路
を流れる潤滑油量も少なく、このためクランクピンの内
側の冷却効果に限界があった。
【0009】この場合、冷却効果を増大させようとし
て、オイル通路を流れる潤滑油量を増やすように摺動面
の隙間を拡大したのでは、軸受メタルの打音の問題がト
レードオフとして発生してくる。
【0010】また、従来のコンロッド軸受は、例えば図
19に示すように、クランクピンに対する焼き付きを防
ぐなじみ性、異物の埋収性を確保するために、その軸受
表面に鉛(Pb)を主成分とする鉛合金からなるオーバ
レイ層81が形成されている。
【0011】しかしながら、本出願人は、軸受部に関す
る実験および解析から以下のような見地を得た。すなわ
ち、鉛合金からなるオーバレイ層81は、鋼材からなる
クランクピンより熱伝導率が大幅に低いため、後述する
ように潤滑油膜において瞬時的な荷重下で昇温、昇圧す
る最小油膜部から発生する摩擦発熱がコンロッド軸受側
に逃がされることが抑えられ、最小油膜部の粘度を著し
く上昇させてクランクピンに付与されるフリクションを
増大させている可能性がある。
【0012】本発明は上記の問題点を解消し、高回転数
域における潤滑条件を改善することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の内燃機関
の潤滑システムは、ピストンの往復動をクランクシャフ
トの回転運動に変換するコンロッドを備え、コンロッド
にクランクシャフトのクランクピンを回転可能に支承す
るコンロッド軸受を備え、コンロッド軸受の軸受表面に
クランクピンより熱伝導率の高いオーバレイ層を全周に
渡って形成し、クランクシャフト内部に、オイルポンプ
から吐出する潤滑油をコンロッド軸受隙間に供給するク
ランク内部通路を形成し、ピストンピンの中心軸とクラ
ンクピンの中心軸を結ぶ線分をロッド中心線とし、コン
ロッド軸受隙間をその周方向についてロッド中心線から
離れた部位で大きくなるように形成する。
【0014】請求項2記載の内燃機関の潤滑システム
は、請求項1記載の発明において、筒形のコンロッド軸
受メタルをコンロッド軸受とクランクピンの間に介装
し、コンロッド軸受メタルの肉厚をその周方向について
ロッド中心線の近傍で大きく形成する。
【0015】請求項3記載の内燃機関の潤滑システム
は、ピストンの往復動をクランクシャフトの回転運動に
変換するコンロッドを備え、コンロッドにクランクシャ
フトのクランクピンを回転可能に支承するコンロッド軸
受を備え、機関本体に対してクランクシャフトのジャー
ナル部を回転可能に支承する主軸受を備え、コンロッド
軸受の軸受表面にクランクピンより熱伝導率の高いオー
バレイ層を全周に渡って形成し、クランクシャフト内部
に、オイルポンプから吐出する潤滑油を主軸受隙間から
コンロッド軸受隙間に供給するクランク内部通路を形成
し、コンロッド軸受の軸方向の幅をその直径で割った値
を、主軸受の軸方向の幅をその直径で割った値より小さ
く設定する。
【0016】請求項4記載の内燃機関の潤滑システム
は、請求項1から3のいずれか1つに記載の発明におい
て、コンロッド軸受の軸受面側に裏金より硬度の低いメ
タル層を銅と鉛を主成分とする合金により形成し、コン
ロッド軸受の軸受表面にクランクピンより熱伝導率の高
いオーバレイ層をアルミニウムと錫を主成分とする合金
により全周に渡って形成する。
【0017】請求項5記載の内燃機関の潤滑システム
は、請求項1から4のいずれか1つに記載の発明におい
て、クランクピンにマイクロフィニッシュ仕上げ加工を
施す。
【0018】
【作用】請求項1記載の内燃機関の潤滑システムにおい
て、オイルポンプから吐出する潤滑油はクランク内部通
路を通ってコンロッド軸受隙間に供給される。この潤滑
油によってコンロッド軸受とクランクピンの摺接部が潤
滑されるとともに、冷却される。
【0019】機関の高回転時には、ピストン、コンロッ
ド等の慣性力が回転数の2乗に比例して増大するため、
クランクピンの摺動面のうちクランクシャフトの中心側
に位置する内側領域に常に荷重がかかるようになって潤
滑油膜が薄くなる最小油膜部が生じる可能性がある。最
小油膜部は、その油膜厚さが例えば1〜2ミクロン程度
となると、圧力の上昇により潤滑油の粘度が著しく高く
なり、液膜のせん断率が高くなって、摩擦損失が急増す
る。
【0020】クランクピンは最小油膜部に対して常にそ
の内側領域が対峙する一方、コンロッド軸受が最小油膜
部に対峙する部位はクランクピンの回転に伴って略全周
に渡って周方向に移動する。
【0021】コンロッド軸受の軸受表面となるオーバレ
イ層を全周に渡ってクランクピンより熱伝導率の高い材
質により形成したため、コンロッド軸受からクランクピ
ンに懸かる荷重としてピストン、コンロッド等の慣性力
が支配的になる高回転数域において、瞬時的な荷重下で
昇温、昇圧する最小油膜部からの熱を熱伝導率の高いオ
ーバレイ層を介してコンロッド軸受に速やかに流入させ
る。続いて、コンロッド軸受の最小油膜部から熱を吸収
した部位が、クランクピンの回転により周方向に移動し
て最小油膜部から外れるのに伴って、コンロッド軸受に
吸収された熱は再び潤滑油に流入(オーバレイ層の熱伝
導率が高いために、これも速やかに行われる)し、潤滑
油と共にコンロッド軸受の外側に逃がされ、最小油膜部
とこれに常に面するクランクピンの内側領域の温度上昇
を抑えられる。
【0022】こうしてクランクピンの最小油膜部近傍の
温度上昇が抑えられることにより、最小油膜部近傍の潤
滑油粘度が低下することが抑えられ、最小油膜部の油膜
厚さを確保し、最小油膜部における液膜のせん断率が著
しく高くなって摩擦損失が急増することを防止できる。
【0023】そして本発明では、上記した熱伝導率の高
いオーバレイ層による油膜の温度上昇抑制効果を有効に
発揮させるため、コンロッド軸受隙間をその周方向につ
いてロッド中心線から離れた部位で大きくなるように形
成して、クランク内部通路からコンロッド軸受隙間に供
給される潤滑油量を確保している。
【0024】オーバレイ層の高熱伝導率化に伴いクラン
クピンから潤滑油を経てコンロッド軸受側へ伝わる熱流
速が高められる作用と、周方向について部分的に拡大し
たコンロッド軸受隙間によって潤滑油量が増加する作用
が相俟って、クランクシャフトの回転に伴って負荷が軽
減している間にオーバレイ層からその表面を流れる潤滑
油に伝わる熱流速が高まり、クランクピンの冷却効果が
大きくなる。
【0025】さらに、コンロッド軸受の摩擦発熱が減少
することにより、コンロッドの大端部の温度が降下し、
コンロッドの高温強度が高まる分、コンロッドの断面積
を削減して軽量化がはかれる。コンロッドの軽量化がは
かれることにより、往復運動部分の慣性荷重が減少し、
軸受荷重が減少し、さらにコンロッド軸受の摩擦発熱が
減少し、クランクピンの冷却効果が大きくなる。
【0026】コンロッド軸受隙間は、ロッド中心線に近
接する部位で小さくなるように形成されいるため、コン
ロッド軸受に対するクランクピンの打音が発生すること
を防止できる。
【0027】請求項2に記載の内燃機関の潤滑システム
において、コンロッド軸受メタルの肉厚をその周方向に
ついてロッド中心線の近傍で大きく形成する構造によ
り、コンロッド軸受隙間をその周方向についてロッド中
心線から離れた部位で大きくなるように形成して、クラ
ンク内部通路からコンロッド軸受隙間に供給される潤滑
油量を確保している。
【0028】請求項3に記載の内燃機関の潤滑システム
において、オイルポンプから吐出する潤滑油は主軸受隙
間からクランク内部通路を通ってコンロッド軸受隙間に
供給される。この潤滑油によってコンロッド軸受とクラ
ンクピンの摺接部が潤滑されるとともに、冷却される。
【0029】軸受の軸方向の幅をその直径で割った値を
小さくするほど、軸受隙間からクランク室に流出する油
量が大きくなる。このため、コンロッド軸受の軸方向の
幅をその直径で割った値を、主軸受の軸方向の幅をその
直径で割った値より小さく設定することにより、主軸受
隙間からクランク室に流出する潤滑油量を減らし、主軸
受隙間からクランク内部通路を通ってコンロッド軸受隙
間に供給される潤滑油量を十分に確保できる。
【0030】オーバレイ層の高熱伝導率化に伴いクラン
クピンから潤滑油を経てコンロッド軸受側へ伝わる熱流
速が高められる作用と、コンロッド軸受隙間に供給され
る潤滑油量が十分に確保される作用が相俟って、クラン
クシャフトの回転に伴って負荷が軽減している間にオー
バレイ層からその表面を流れる潤滑油に伝わる熱流速が
高まり、クランクピンの冷却効果が大きくなる。
【0031】さらに、コンロッド軸受の摩擦発熱が減少
することにより、コンロッドの大端部の温度が降下し、
コンロッドの高温強度が高まる分、コンロッドの断面積
を削減して軽量化がはかれる。コンロッドの軽量化がは
かれることにより、往復運動部分の慣性荷重が減少し、
軸受荷重が減少し、さらにコンロッド軸受の摩擦発熱が
減少し、クランクピンの冷却効果が大きくなる。
【0032】請求項4記載の内燃機関の潤滑システムに
おいて、コンロッドベアリングはオーバレイ層をアルミ
ニウムと錫を主成分とする合金により形成する構造のた
め、潤滑油膜からオーバレイ層への熱伝導量を確保する
とともに、本発明の効果が発揮される高速時に要求され
る耐面圧性能を確保することができる。さらに、コンロ
ッドベアリングはメタル層を銅と鉛を主成分とする合金
により形成したため、本発明の効果が発揮される高速時
に要求される耐荷重性を確保することができる。
【0033】請求項5記載の内燃機関の潤滑システムに
おいて、マイクロフィニッシュ仕上げ加工が施されたク
ランクピンは、ラッピング仕上げ加工が施されたクラン
クピンよりも、機関の高速域で熱伝導率の高いオーバレ
イ層に支承されるクランクピンの温度が低下する。
【0034】この理由は、マイクロフィニッシュ仕上げ
加工が施されたクランクピンの平滑な軸受表面に支持さ
れる油膜は、高温高圧下で薄くなっても流体潤滑状態が
保たれ、局所的に高粘度化した潤滑油の影響を受けやす
くなるためである。
【0035】したがって、マイクロフィニッシュ仕上げ
加工を施されたクランクピンが、熱伝導率の高いオーバ
レイ層に支承される構造により、機関の高速域まで流体
潤滑状態が維持され、最小油膜部における液膜のせん断
率が著しく高くなって摩擦損失が急増することを防止で
きる。
【0036】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて
説明する。
【0037】図2に示すように、定容量型オイルポンプ
1は機関により駆動され、オイルパン2からストレーナ
3を介して吸い上げた潤滑油を吐出し、オイルポンプ1
から吐出される潤滑油はリリーフバルブ4、オイルフィ
ルタ5を経てメインギャラリ6とヘッドギャラリ7の2
系等に分流する。
【0038】オイルポンプ1から吐出される潤滑油は、
ヘッドギャラリ7を通って図示しないカムシャフト等の
摺動部に供給される。
【0039】オイルポンプ1から吐出される潤滑油は、
メインギャラリ6を通って図示しないクランクシャフト
を支承する各主軸受8に供給される。
【0040】図3に示すように、クランクシャフト30
は、機関本体の主軸受8に支承されるジャーナル部33
と、コンロッド31のコンロッド軸受32に支承される
クランクピン35を有する。
【0041】この4気筒機関はクランクシャフト30の
各ジャーナル部33を支承する5つの主軸受8を備え
る。各主軸受8にはジャーナル部33に摺接する軸受メ
タル23が介装される。
【0042】コンロッド31のコンロッド軸受32には
クランクピン35に摺接する上下の軸受メタル22,2
1が介装される。
【0043】クランクシャフト30の内部には各ジャー
ナル部12とクランクピン5を結ぶクランク内部通路2
9が形成される。オイルポンプ1から吐出される潤滑油
は、機関本体のメインギャラリ6から分岐する供給路3
6を通って各主軸受8に供給され、軸受メタル23のグ
ルーブ37から各クランク内部通路29を通って各クラ
ンクピン35に供給される。
【0044】図4に示すように、コンロッド軸受32に
介装される軸受メタル22,21は、半割り形をした円
筒状の裏金56を主体として形成される。裏金56は鋼
材により形成される。クランクピン35は鋼材または鋳
鉄材により形成される。
【0045】図5において、51は軸受メタル22,2
1の裏金56の軸受面側に形成されるメタル層である。
このメタル層51は銅(Cu)と鉛(Pb)を主成分と
するケルメット合金により、300μmの厚さをもった
層状に形成される。なお、このメタル層51の熱伝導率
は130W/mK程度に設定される。
【0046】軸受メタル22,21のクランクピン35
に摺接する軸受表面には、メタル層51より硬度の低い
オーバレイ層52が形成される。軸受メタル22,21
のクランクピン35に摺接する軸受表面に、メタル層5
1に比べて柔らかい材質でオーバレイ層52が形成され
ることにより、クランクピン35に対する初期なじみ
性、異物の埋収性が確保される。
【0047】この実施例では、メタル層51とオーバレ
イ層52の間にニッケル(Ni)を主成分とする材質に
よって中間層53が、1μm程度の厚さをもって層状に
形成される。なお、この中間層53の熱伝導率は70W
/mK程度である。
【0048】オーバレイ層52はクランクピン35より
熱伝導率の高い材質として、アルミニウム(Al)と錫
(Zn)を主成分とする合金により形成される。鉄(F
e)を主成分とするクランクピン35の熱伝導率が50
W/mK程度であるのに対して、オーバレイ層52の熱
伝導率は120W/mK程度に設定される。
【0049】このオーバレイ層52は、上下の軸受メタ
ル22,21の全周に渡って、20ミクロン程度の厚さ
で層状に形成される。
【0050】なお、本実施例では、主軸受8に介装され
る軸受メタル23の軸受表面にもアルミニウム−錫系の
オーバーレイ層が施される。
【0051】一方、クランクピン35の摺動面は、図6
に示すような加工精度と真円度を有するマイクロフィニ
ッシュ仕上げ加工が施され、通常のラッピン仕上げ加工
に対してその表面粗度を小さくするとともに、その真円
度を高めている。なお、図6には、一般的に施されるラ
ッピング仕上げ加工の加工精度と真円度を同時に示して
ある。
【0052】図1に示すように、コンロッド31はピス
トン側に連結されるロッド41と、ロッド41との間に
クランクピン35を支承するキャップ42に分割して形
成される。キャップ42はロッド41の大端部に対して
半割り状に分割される。
【0053】ロッド41とキャップ42は2本のボルト
43とナット44を介して締結される。ロッド41とキ
ャップ42の間に上下の軸受メタル22,21が介装さ
れる。
【0054】図1において、Y−Y線はクランクピン3
5の中心軸とピストンピン15の中心軸を結ぶロッド中
心線である。ロッド41とキャップ42が互いに接合す
る面は、Y−Y線に直交し、クランクピン35の中心軸
と交差する平面に沿って形成される。
【0055】各ボルト43は、ロッド中心線Y−Yと平
行に配置され、ロッド41とキャップ42が互いに接合
する面に対して直交する方向からそれぞれの軸力が作用
するようになっている。
【0056】高回転時にコンロッド軸受隙間55に供給
される潤滑油量を確保するために、コンロッド軸受隙間
55がその周方向についてロッド中心線Y−Yから離れ
た部位で大きくなるように形成される。コンロッド軸受
隙間55はロッド中心線Y−Yと交差する部位で最小と
なり、上下の軸受メタル22,21の端部(Y−Y線に
直交するクランクピン35の中心線と交差する部位)で
最大となるように、周方向について次第に変化してい
る。なお、図1に示した各部の寸法差は、便宜上実際よ
りも誇張して大きくしてある。
【0057】上下の軸受メタル22,21はその外周面
を正円形に形成され、その内周面がロッド中心線Y−Y
に直交する方向に長径を持つ長円形に形成される。すな
わち、軸受メタル22,21の肉厚を、その周方向につ
いてロッド中心線Y−Yの近傍に位置する中央部で最大
となり、ロッド中心線Y−Yから離れたそれぞれの端部
で最小となるように、周方向について次第に変化させ
る。
【0058】クランクピン35をマイクロフィニッシュ
仕上げ加工を施して、その真円度を高めることにより、
上記軸受メタル22,21の肉厚変化によるコンロッド
軸受隙間55の周方向における分布精度を高められる。
【0059】以上のように構成され、次に作用について
説明する。
【0060】図12は、オーバレイ層が熱伝導率の低い
ケルメット合金で形成された従来の軸受メタルに支承さ
れるクランクピン35に付与される摩擦損失を、軸表面
温度に応じて測定した結果を示す。このデータから、摩
擦損失は軸表面の温度が上昇するのに伴って、100°
C程度に達するまでは減少するが、100°C程度を越
えてからは逆に増大する特性があることがわかる。
【0061】この摩擦損失が潤滑油温度に応じて変化す
る現象は、一般に、潤滑油温度が上昇して100°C程
度に達するまでは、潤滑油の粘度が低下して摩擦損失が
減少する一方、潤滑油温度が100°C程度を越えてか
らは、潤滑油の粘度がさらに低下して油膜の厚さが減少
し、潤滑状態が流体潤滑から固体表面どうしの接触と液
膜せん断(流体潤滑)が共存する混合潤滑に移行するも
のと考えられていた(参考資料…機械学会論文 講演前
刷り 71期1993年 332〜334貢)。
【0062】しかし、本出願人は、潤滑油の温度が10
0°C程度を越えて上昇するような高温高荷重潤滑条件
になると、最も薄い油膜厚さは1〜2ミクロン程度とな
り、圧力の上昇により潤滑油の粘度が高くなり、油膜の
薄い部分は液膜のせん断率が高くなって、摩擦損失が急
増するものと考えている。
【0063】図13〜図15は、静荷重が懸かる条件に
おいて軸受フリクション特性を計算した結果を示してい
る。油膜中の粘度μは、次のBrausの式を用いて計
算した。ただし、pを圧力、μ0を大気圧粘度、αを圧
力・粘度係数とする。
【0064】μ=μ0e×p(αP) …(1) 軸受のレイノルズ方程式は静荷重下の有限幅理論を用
い、粘度分布を考慮して上記(1)式と連立し、数値計
算により解いて、油膜圧力、フリクションを計算した。
低温の潤滑油を用いた潤滑条件と、これより粘度(大気
圧条件)が1/10に低下した潤滑油を用いた潤滑条件
を比較している。
【0065】図13〜図15によれば、荷重の大きい条
件では油温が上昇するのに伴って摩擦損失が大きくな
る。この理由は、高温の場合、最小油膜厚さが小さくな
るために、油膜圧力は大となり、圧力による粘度上昇を
考慮すると、最小油膜部の潤滑油粘度は高温条件の方が
逆に高くなり、油膜厚さが薄いためにせん断率が高いこ
ともあって、軸受全体としては摩擦損失が増大する傾向
がある。
【0066】そこで、こうした高温高荷重潤滑条件にお
いて摩擦損失を低減するために、瞬時的な荷重下で昇
温、昇圧して粘度が高くなる油膜の薄い部分(以下、最
小油膜部54と呼ぶ)から熱を速やかに逃がし、潤滑油
の昇温を抑制する必要がある。
【0067】また、図4に示すように、クランクピン3
5は最小油膜部54に対して常にその内側領域35aが
対峙する。一方、上下軸受メタル22,21が最小油膜
部54に対峙する部位はクランクピン35の回転に伴っ
て、図16に示すように、刻々略全周に渡って移動す
る。
【0068】最小油膜部54は軸受側からみれば、瞬時
的に発生し、位置が刻々と変化する現象であり、軸と軸
受の相対回転に起因する油膜せん断により、摩擦トルク
が発生するが、最小油膜部54で発生した熱はクランク
ピン35より熱伝導率の高いオーバレイ層52に速やか
に流入し、最小油膜部54に対峙する部位はクランクピ
ン35の回転に伴って図4に矢印で示すように周方向に
移動して最小油膜部54から外れることにより、上下軸
受メタル22,21に吸収された熱が再びコンロッド軸
受隙間55に介在する潤滑油に流入する。この結果、オ
ーバレイ層に熱伝導率の低い鉛合金で形成された軸受メ
タルに比べて、(最小)潤滑油膜からの放熱性が高めら
れる。
【0069】オーバレイ層52の厚さは20μm程度で
あるのに対して、最小油膜部54の厚さが数μm程度で
あり、両者の熱容量に大差がある。さらに、最小油膜部
54は移動する瞬時現象であり、オーバレイ層52に流
入する熱量が増大しても、温度が急上昇して、熱的に飽
和することがなく、潤滑油の温度に与える影響は大き
い。
【0070】前記図19に示す従来のオーバレイ層81
を鉛合金で形成した軸受メタルにあっては、オーバレイ
層81の熱伝導率が30W/mK程度であり、鉄を主成
分とするクランクピンの熱伝導率が50W/mKである
のに比べて大幅に低いため、最小油膜部54で発生する
摩擦熱の大半はクランクピン35に流入し、クランクピ
ン35の内側領域35aの局所的な温度上昇を招いて、
油膜の温度を上昇させて、最小油膜部54で発生する摩
擦熱が増大するという悪循環に陥る。
【0071】図7は、鉛合金製オーバレイ層を有する従
来の軸受メタルと、アルミニウム合金製オーバレイ層を
有する本発明の軸受メタルについて、軸表面の温度に応
じて摩擦損失を測定した結果を示している。このデータ
から、軸表面の温度が高まるのに伴って、鉛合金製オー
バレイ層の摩擦損失が増大するのに対して、アルミニウ
ム合金製オーバレイ層の摩擦損失が低下することがわか
る。この理由としては、アルミニウム合金製オーバレイ
層の熱伝導率が120W/mKと高いため、高温領域で
最小油膜部において発生する摩擦熱の大半が軸受メタル
側に流入したためであると考えられる。
【0072】図8,9は、実際の機関においてモータリ
ングによりクランクシャフト30を回転させてクランク
ピン35の温度を測定した結果を示している。図8に示
すデータからラッピング仕上げ加工が施されたクランク
ピンよりも、図9に示すようにマイクロフィニッシュ仕
上げ加工が施されたクランクピンの方が軸受メタルの材
質変更による温度降下が大きいことがわかる。この理由
は、マイクロフィニッシュ仕上げ加工が施されたクラン
クピンの平滑な軸受表面に支持される油膜は高温高圧下
で薄くなっても流体潤滑状態が保たれ、局所的に高粘度
化した潤滑油の影響を受けやすくなるためである。
【0073】図10は、鉛合金製オーバレイ層を有する
軸受メタルと、アルミニウム合金製オーバレイ層を有す
る軸受メタルのそれぞれについて、ラッピング仕上げ加
工が施された軸と、マイクロフィニッシュ仕上げ加工が
施された軸の表面温度に応じて摩擦損失を測定した結果
を示している。このデータから、ラッピング仕上げ加工
が施されたクランクピンよりも、マイクロフィニッシュ
仕上げ加工が施されたクランクピンの方が軸受メタルの
材質変更による摩擦損失の降下が大きいことがわかる。
【0074】これらのことから、流体潤滑性能を拡大で
きるマイクロフィニッシュ仕上げ加工が施されたクラン
クピン35に、クランクピン35より熱伝導率の高いア
ルミニウム合金製オーバレイ層52を形成した上下軸受
メタル22,21で支承する構造が、ケルメットメタル
本来の特徴である高耐荷重性、耐熱性等のメリットを発
揮することがわかる。
【0075】図11は、鉛合金製オーバレイ層を有する
軸受メタルと、アルミニウム合金製オーバレイ層を有す
る軸受メタルと、クランクピン35と同じ材質である鉄
を主成分とするオーバレイ層を有する軸受メタルについ
て、軸表面の温度に応じて摩擦損失を測定した結果を示
している。このデータから、軸表面の温度が高まるのに
伴って、鉛合金製オーバレイ層の摩擦損失が増大し、ア
ルミニウム合金製オーバレイ層の摩擦損失が低下するの
に対して、鉄製オーバレイ層の場合はその中間となり、
摩擦損失がほとんど変化しないことがわかる。
【0076】このことから、上下軸受メタル22,21
のオーバレイ層52をクランクピン35に比べて熱伝導
率の高い材質で形成することにより、高温となりやすい
最小油膜部54で発生した熱は一旦オーバレイ層52に
流入することが促され、クランクピン35の温度上昇が
抑えられ、最小油膜部54で発生する摩擦熱を減少させ
て、さらにクランクピン35の温度を下げる循環になる
と考えられる。
【0077】したがって、オーバレイ層52の材質は、
アルミニウム−錫系のアルミニウム合金に限らず、クラ
ンクピン35の材質とする鉄に比べて熱伝導率の高い材
質として、アルミニウム−錫−鉛系等のアルミニウム合
金としたり、あるいはニッケル系、銅系の金属とするこ
とも考えられる。また、製作コストアップを考慮しなけ
れば、アルミニウム合金より熱伝導率の高い銀(Ag)
とすることも考えられる。
【0078】本発明の構成とは異なるが、上下軸受メタ
ルのメタル層51をアルミニウム−錫系等のアルミニウ
ム合金で形成して、オーバレイ層を持たない構造でも、
高温となりやすい最小油膜部54で発生した熱が軸受メ
タルのメタル層51に流入することが促される。
【0079】しかしながら、上下軸受メタルのメタル層
51をアルミニウム合金で形成する構造は、耐面圧性能
が、ケルメット合金からなるメタル層51を備える上下
軸受メタル22,21に対して80%以下に低下し、本
発明の効果が発揮される高速域に対応して耐久性を十分
に確保することができない。
【0080】また、従来の運転領域が低中速域に限定さ
れる大型ディーゼル機関にあっては、耐面圧性能を確保
するために、上下軸受メタルのうち、ピストンが受ける
燃焼圧力が作用する上軸受メタルのみにケルメット合金
製メタル層とアルミニウム合金製オーバレイ層を施した
構造が適用されている。
【0081】しかしながら、この機関が高回転域で運転
された場合、高温となりやすい最小油膜部で発生した熱
が、下軸受メタルのオーバレイ層が摺接する回転範囲で
クランクピンの方に流入してしまい、クランクピンの温
度上昇が十分に抑えられず、摩擦損失が大きくなる。
【0082】そして本発明では、上記した熱伝導率の高
いオーバレイ層52による油膜の温度上昇抑制効果を、
高回転時に有効に発揮させるため、コンロッド軸受隙間
55をその周方向についてロッド中心線Y−Yから離れ
た部位で大きくなるように形成して、クランク内部通路
29からコンロッド軸受隙間55に供給される潤滑油量
を確保している。
【0083】コンロッド軸受隙間55は、ロッド中心線
Y−Y方向における直径隙間の拡大幅が比較的小さいこ
とにより、高回転時に軸受メタル22,21に対するク
ランクピン35の打音が発生することを防止できる。
【0084】コンロッド軸受32のクランクピン35に
対する摺動面積が、燃焼圧力が働くロッド中心線Y−Y
の近傍部分で削減されることがなく、面圧が過大になる
ことを防止できる。
【0085】コンロッド軸受隙間55を循環する潤滑油
量が増大することは、潤滑油の粘度が一定であると考え
ると、流体潤滑を悪化させる要因になるが、コンロッド
軸受隙間55を循環する潤滑油量が増大することは、潤
滑油による冷却効果が高まり、クランクピン35の温度
上昇が抑えられる。摩擦発熱により発生した熱量の70
〜80%が潤滑油によって持ち去られるという推定も知
られている。
【0086】オーバレイ層52の高熱伝導率化に伴いク
ランクピン35から潤滑油を経てコンロッド軸受32側
へ伝わる熱流速が高められる作用と、周方向について部
分的に拡大するコンロッド軸受隙間55による潤滑油量
が増加する作用が相俟って、負荷が軽減している間にオ
ーバレイ層52からその表面を流れる潤滑油に伝わる熱
流速が高まり、クランクピン35の冷却効果が大きくな
る。
【0087】コンロッド軸受32の摩擦発熱が減少する
ことにより、コンロッド31の大端部の温度が降下し、
高温強度が高まる分、コンロッド31の断面積を削減し
て軽量化がはかれる。コンロッド31の軽量化がはかれ
ることにより、往復運動部分の慣性荷重が減少し、軸受
荷重が減少し、さらにコンロッド軸受32の摩擦発熱が
減少し、クランクピン35の冷却効果が大きくなる。
【0088】次に、他の実施例として、コンロッド軸受
32の軸方向の幅をその直径で割った値を、主軸受8の
軸方向の幅をその直径で割った値より小さく設定しても
よい。
【0089】軸受の軸方向の幅をその直径で割った値を
小さくするほど、軸受隙間からクランク室に流出する油
量が大きくなる。このため、コンロッド軸受32の軸方
向の幅をその直径で割った値を、主軸受8の軸方向の幅
をその直径で割った値より小さく設定することにより、
主軸受8の軸受隙間からクランク室に流出する潤滑油量
を減らし、主軸受8の軸受隙間からクランク内部通路2
9を通ってコンロッド軸受隙間55に供給される潤滑油
量を十分に確保できる。
【0090】オーバレイ層52の高熱伝導率化に伴いク
ランクピン35から潤滑油を経てコンロッド軸受32側
へ伝わる熱流速が高められる作用と、コンロッド軸受隙
間55に供給される潤滑油量が十分に確保される作用が
相俟って、クランクシャフト30の回転に伴って負荷が
軽減している間にオーバレイ層52からその表面を流れ
る潤滑油に伝わる熱流速が高まり、クランクピン35の
冷却効果が大きくなる。
【0091】さらに、コンロッド軸受32の摩擦発熱が
減少することにより、コンロッド31の大端部の温度が
降下し、コンロッド31の高温強度が高まる分、コンロ
ッド31の断面積を削減して軽量化がはかれる。コンロ
ッド31の軽量化がはかれることにより、往復運動部分
の慣性荷重が減少し、軸受荷重が減少し、さらにコンロ
ッド軸受32の摩擦発熱が減少し、クランクピン35の
冷却効果が大きくなる。
【0092】
【発明の効果】以上説明したように請求項1記載の内燃
機関の潤滑システムは、ピストンの往復動をクランクシ
ャフトの回転運動に変換するコンロッドを備え、コンロ
ッドにクランクシャフトのクランクピンを回転可能に支
承するコンロッド軸受を備え、コンロッド軸受の軸受表
面にクランクピンより熱伝導率の高いオーバレイ層を全
周に渡って形成し、クランクシャフト内部に、オイルポ
ンプから吐出する潤滑油をコンロッド軸受隙間に供給す
るクランク内部通路を形成し、ピストンピンの中心軸と
クランクピンの中心軸を結ぶ線分をロッド中心線とし、
コンロッド軸受隙間をその周方向についてロッド中心線
から離れた部位で大きくなるように形成したため、クラ
ンクピンの打音が発生することを防止しつつ、クランク
内部通路からコンロッド軸受の摺動面に供給される潤滑
油量が増やされることにより、この高回転数域で大量に
発生する摩擦熱が熱伝導率の高いオーバレイ層を介して
潤滑油によって速やかにもち去られ、最小油膜部の油膜
厚さを維持して、フリクションの低減がはかれるととも
に、耐久性の向上がはかれる。
【0093】請求項2記載の内燃機関の潤滑システム
は、請求項1記載の発明において、筒形のコンロッド軸
受メタルをコンロッド軸受とクランクピンの間に介装
し、コンロッド軸受メタルの肉厚をその周方向について
ロッド中心線の近傍で大きく形成したため、コンロッド
軸受隙間をその周方向についてロッド中心線から離れた
部位で大きくなるように形成して、クランク内部通路か
らコンロッド軸受隙間に供給される潤滑油量を確保でき
る。
【0094】請求項3記載の内燃機関の潤滑システム
は、ピストンの往復動をクランクシャフトの回転運動に
変換するコンロッドを備え、コンロッドにクランクシャ
フトのクランクピンを回転可能に支承するコンロッド軸
受を備え、機関本体に対してクランクシャフトのジャー
ナル部を回転可能に支承する主軸受を備え、コンロッド
軸受の軸受表面にクランクピンより熱伝導率の高いオー
バレイ層を全周に渡って形成し、クランクシャフト内部
に、オイルポンプから吐出する潤滑油を主軸受隙間から
コンロッド軸受隙間に供給するクランク内部通路を形成
し、コンロッド軸受の軸方向の幅をその直径で割った値
を、主軸受の軸方向の幅をその直径で割った値より小さ
く設定したため、クランク内部通路からコンロッド軸受
の摺動面に供給される潤滑油量が確保されることによ
り、この高回転数域で大量に発生する摩擦熱が熱伝導率
の高いオーバレイ層を介して潤滑油によって速やかにも
ち去られ、最小油膜部の油膜厚さを維持して、フリクシ
ョンの低減がはかれるとともに、耐久性の向上がはかれ
る。
【0095】請求項4記載の内燃機関の潤滑システム
は、請求項1から3のいずれか1つに記載の発明におい
て、コンロッド軸受の軸受面側に裏金より硬度の低いメ
タル層を銅と鉛を主成分とする合金により形成し、コン
ロッド軸受の軸受表面にクランクピンより熱伝導率の高
いオーバレイ層をアルミニウムと錫を主成分とする合金
により全周に渡って形成したため、潤滑油膜からオーバ
レイ層への熱伝導量を確保するとともに、本発明の効果
が発揮される高速時に要求される耐面圧性能を確保する
とともに、耐荷重性を確保することができる。
【0096】請求項5記載の内燃機関の潤滑システム
は、請求項1から4のいずれか1つに記載の発明におい
て、クランクピンにマイクロフィニッシュ仕上げ加工を
施すことにより、機関の高速域まで流体潤滑状態が維持
され、最小油膜部における液膜のせん断率が著しく高く
なって摩擦損失が急増することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示すコンロッドの正面図。
【図2】同じく潤滑油経路図。
【図3】同じくクランクシャフト等の断面図。
【図4】同じくコンロッド軸受構造の断面図。
【図5】同じく軸受メタルの断面図。
【図6】軸の表面粗度を示す表。
【図7】オーバレイ層の材質に応じて高温域の摩擦損失
低減効果を示す特性図。
【図8】ラッピング軸においてオーバレイ層の材質に応
じてクランクピン温度が降下する様子を示す特性図。
【図9】マイロフィニッシュ軸においてオーバレイ層の
材質に応じてクランクピン温度が降下する様子を示す特
性図。
【図10】マイロフィニッシュ軸との組み合わせにより
オーバレイ層の材質に応じて高温域の摩擦損失低減効果
を示す特性図。
【図11】オーバレイ層の材質に応じて高温域の摩擦損
失低減効果を示す特性図。
【図12】ケルメット軸受メタルのフリクション特性を
示す図。
【図13】最大油膜圧力、最小油膜厚さの計算結果を示
す特性図。
【図14】最大油膜圧力下における粘度特性を示す図。
【図15】フリクションの計算結果を示す特性図。
【図16】クランクピンに懸かる荷重の作用点が移動す
る様子を示す図。
【図17】クランクピン摺動面の温度測定図。
【図18】クランクピン摺動面の温度特性図。
【図19】従来の軸受メタルの断面図。
【符号の説明】
1 オイルポンプ 2 オイルパン 4 リリーフバルブ 6 メインギャラリ 8 主軸受 21 軸受メタル 22 軸受メタル 30 クランクシャフト 31 コンロッド 32 コンロッド軸受 33 ジャーナル部 35 クランクピン 41 ロッド 42 キャップ 43 ボルト 51 メタル層 52 オーバレイ層 53 中間層 54 最小油膜部 55 コンロッド軸受隙間

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ピストンの往復動をクランクシャフトの回
    転運動に変換するコンロッドを備え、 コンロッドにクランクシャフトのクランクピンを回転可
    能に支承するコンロッド軸受を備え、 コンロッド軸受の軸受表面にクランクピンより熱伝導率
    の高いオーバレイ層を全周に渡って形成し、 クランクシャフト内部に、オイルポンプから吐出する潤
    滑油をコンロッド軸受隙間に供給するクランク内部通路
    を形成し、 ピストンピンの中心軸とクランクピンの中心軸を結ぶ線
    分をロッド中心線とし、コンロッド軸受隙間をその周方
    向についてロッド中心線から離れた部位で大きくなるよ
    うに形成したことを特徴とする内燃機関の潤滑システ
    ム。
  2. 【請求項2】筒形のコンロッド軸受メタルをコンロッド
    軸受とクランクピンの間に介装し、 コンロッド軸受メタルの肉厚をその周方向についてロッ
    ド中心線の近傍で大きく形成したことを特徴とする請求
    項1記載の内燃機関の潤滑システム。
  3. 【請求項3】ピストンの往復動をクランクシャフトの回
    転運動に変換するコンロッドを備え、 コンロッドにクランクシャフトのクランクピンを回転可
    能に支承するコンロッド軸受を備え、 機関本体に対してクランクシャフトのジャーナル部を回
    転可能に支承する主軸受を備え、 コンロッド軸受の軸受表面にクランクピンより熱伝導率
    の高いオーバレイ層を全周に渡って形成し、 クランクシャフト内部に、オイルポンプから吐出する潤
    滑油を主軸受隙間からコンロッド軸受隙間に供給するク
    ランク内部通路を形成し、 コンロッド軸受の軸方向の幅をその直径で割った値を、
    主軸受の軸方向の幅をその直径で割った値より小さく設
    定したことを特徴とする内燃機関の潤滑システム。
  4. 【請求項4】コンロッド軸受の軸受面側に裏金より硬度
    の低いメタル層を銅と鉛を主成分とする合金により形成
    し、 コンロッド軸受の軸受表面にクランクピンより熱伝導率
    の高いオーバレイ層をアルミニウムと錫を主成分とする
    合金により全周に渡って形成したことを特徴とする請求
    項1から3のいずれか1つに記載の内燃機関のコンロッ
    ド軸受構造。
  5. 【請求項5】クランクピンにマイクロフィニッシュ仕上
    げ加工を施したことを特徴とする請求項1から4のいず
    れか1つに記載の内燃機関のコンロッド軸受構造。
JP32333194A 1994-12-26 1994-12-26 内燃機関の潤滑システム Pending JPH08177844A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32333194A JPH08177844A (ja) 1994-12-26 1994-12-26 内燃機関の潤滑システム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32333194A JPH08177844A (ja) 1994-12-26 1994-12-26 内燃機関の潤滑システム

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH08177844A true JPH08177844A (ja) 1996-07-12

Family

ID=18153608

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP32333194A Pending JPH08177844A (ja) 1994-12-26 1994-12-26 内燃機関の潤滑システム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH08177844A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE10305461A1 (de) * 2003-02-04 2004-08-12 Federal-Mogul Wiesbaden Gmbh & Co. Kg Pleuelstange mit einer optimierten Lagerung, insbesondere für Verbrennungskraftmaschinen
JP2015500367A (ja) * 2011-12-09 2015-01-05 トータル・マーケティング・サービシーズ ハイブリッド車両用またはマイクロハイブリッド車両用のエンジン潤滑剤

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE10305461A1 (de) * 2003-02-04 2004-08-12 Federal-Mogul Wiesbaden Gmbh & Co. Kg Pleuelstange mit einer optimierten Lagerung, insbesondere für Verbrennungskraftmaschinen
JP2015500367A (ja) * 2011-12-09 2015-01-05 トータル・マーケティング・サービシーズ ハイブリッド車両用またはマイクロハイブリッド車両用のエンジン潤滑剤

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPH08277831A (ja) 内燃機関のクランク潤滑装置
JP3890495B2 (ja) 内燃機関用摺動部品及びそれを用いた内燃機関
JP2008095721A (ja) 摺動部材
JPH08210343A (ja) 内燃機関のコンロッド軸受構造
US10072699B2 (en) Bearing apparatus of crankshaft for internal combustion engine
EP0176614A1 (en) Offset wall bearing
JPH08177844A (ja) 内燃機関の潤滑システム
JPH08177845A (ja) 内燃機関の潤滑システム
JPH08151915A (ja) 内燃機関の潤滑システム
JPH08177846A (ja) 内燃機関の潤滑システム
JP3045000B2 (ja) すべり軸受の加工装置
US8109244B1 (en) Crankdisk bearing alternatives for the Waissi type opposed piston internal combustion engine
JPH08261227A (ja) 内燃機関のコンロッド軸受構造
JPH0752415Y2 (ja) コンロッド軸受の潤滑装置
JPH0988534A (ja) 内燃機関の潤滑システム
JP3094741B2 (ja) 内燃機関の軸受メタル
JPH074424A (ja) エンジンのクランク潤滑装置
JP6632922B2 (ja) すべり軸受
US11261904B2 (en) Half bearing and sliding bearing
JP5429026B2 (ja) ラジアルすべり軸受及び回転軸の軸受構造
JP2745792B2 (ja) 内燃機関のプレーンベアリング
JPH08177843A (ja) 内燃機関の潤滑システム
JPH06330932A (ja) クランクシャフトの軸受構造
JPH09229070A (ja) 内燃機関のクランク軸受構造
JPH09242745A (ja) 内燃機関の軸受装置