JPH08168318A - 耐りん酸性を有するva菌根菌グロムス・エスピー r10とこれを用いた植物の栽培方法 - Google Patents
耐りん酸性を有するva菌根菌グロムス・エスピー r10とこれを用いた植物の栽培方法Info
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Abstract
揮しうる耐りん酸性を有するVA菌根菌を提供すること
を目的とするものである。さらに、本発明は、高りん酸
土壌においても効果を発揮しうる耐りん酸性を有するV
A菌根菌を用いて、効率良く植物を栽培する方法を提供
することを目的とするものである。 【構成】 本発明は、耐りん酸性を有するVA菌根菌で
あって、グロムス属に属するものを施用することを特徴
とする植物の栽培方法を提供すると共に、耐りん酸性を
有するVA菌根菌であって、グロムス属に属するグロム
ス・エスピー( Glomus sp. )R10を提供する。
Description
も効果を発揮しうる耐りん酸性を有するVA菌根菌グロ
ムス・エスピー( Glomus sp. )R10と、これを用い
た植物の栽培方法に関するものであって、農業や園芸業
等の分野で有効に利用することができる。
orrhizae )は種々の植物に感染して、共生することによ
って、該植物の生長促進や耐病性を向上させることが知
られており(小川 眞著,「VA菌根とその働き、森林
立地」,第30(2)巻,第57〜65頁,1988
年;「農業及び園芸」,第62巻,第8号,930〜9
37頁,1987年;「植物防疫」,第42巻,第5
号,259〜266頁,1988年)、農業生産上非常
に有用な微生物である。
中のりん酸濃度の上昇によって、胞子の発芽や菌糸の伸
長、植物への感染が阻害され、また植物の成長促進もあ
まり認められなくなることが知られている( Trans. B
r. mycol Soc., 80,487,1983;New Phytol, 87,695,1981
)。日本の農業は、世界的にも例を見ない多肥農法であ
り、特に肥料障害の出にくいりん酸については、可給態
りん酸量が乾燥土壌(乾土)100gあたり100mg
を超えるところも数多く存在する。このような場所で
は、従来知られているVA菌根菌を施用しても、期待す
る効果が安定して現れず、このような土壌環境において
も充分に期待する効果を発揮しうる、耐りん酸性を有す
るVA菌根菌が望まれていた。しかしながら、今日まで
にこのような目的でVA菌根菌の選抜を行なった例はな
く、耐りん酸性を有するVA菌根菌は知られていなかっ
た。
壌においても効果を発揮しうる耐りん酸性を有するVA
菌根菌を提供することを目的とするものである。さら
に、本発明は、高りん酸土壌においても効果を発揮しう
る耐りん酸性を有するVA菌根菌を用いて、効率良く植
物を栽培する方法を提供することを目的とするものであ
る。
ん酸性を有するVA菌根菌であって、グロムス属に属す
るものを施用することを特徴とする植物の栽培方法を提
供するものである。
ん酸量が土壌(乾土)100gあたり500mg(P2
O5 )程度含まれる土壌においても感染率が10%以上
あることを意味している。
ん酸性を有するVA菌根菌であって、グロムス属に属す
るものを施用することを特徴とするものである。このよ
うなものとしては、例えば本発明者が採取した千葉県袖
ケ浦市の水田土壌から分離した、耐りん酸性を有するV
A菌根菌であるグロムス・エスピー( Glomus sp. )R
10が挙げられる。
る。 色:淡黄色〜茶色 胞子直径:50μm〜280μm(亜球形や長楕円形
の胞子も多い) 胞子は寄り集まって、ゆるいクラスターを形成する。 のう状体を部分的に高密度に形成する(根1cmあた
り30個以上)
っていることであり、土壌(乾土)100gあたりの可
給態りん酸量が500mg(P2 O5 )程度含まれる土
壌においても植物に充分感染し、生長促進効果を示す。
但し、土壌(乾土)100gあたりの可給態りん酸量が
250mg(P2 O5 )程度以下の土壌に適用すること
が特に好ましい。
( Glomus )属に属する菌株と考えられ、「マニュアル
・フォー・ジ・アイデンティファイケーション・オブ・
ブイエイ・マイコリーザル・ファンジャイ( MANUAL FO
R THE IDENTIFICATION OF VA MICORRHIZAL FUNGI ) よ
り検索した結果、グロムス・ファシキュレータム( Glo
mus fasciculatum )やグロムス・イントララディクス
( Glomus intraradix )が近縁種として挙げられる。本
菌とこれらの菌株のうち、本菌とグロムス・ファシキュ
レータム( Glomusfasciculatum )とは、胞子がクラス
ターを形成する点と、根の中に部分的に高密度にのう状
体を形成する点でよく一致するが、胞子の大きさと色が
異なる。また、本菌とグロムス・イントララディクス
( Glomus intraradix )とは、胞子の色や大きさの点で
よく一致するが、胞子の細胞壁の構造が異なる。さら
に、本菌が高い耐りん酸性を有しているのに対して、他
のグロムス属の菌株が耐りん酸性を有していない点で異
なる。従って、本発明者は、本菌をグロムス属に属する
新菌株と判断し、グロムス・エスピー( Glomus sp. )
R10と命名した。本菌は、米国のアメリカン・タイプ
・カルチャー・コレクション( AMERICAN TYPE CULTURE
COLLECTION ; ATCC )において受理されており、その番
号はATCC 74311である。また、本菌は、工業
技術院生命工学工業技術研究所においては、植物絶対共
生菌であるとして受託を拒否された。
において高い感染率と植物の生長促進効果を示すだけで
なく、他のVA菌根菌が殆ど感染しない条件である、土
壌(乾土)100gあたりの可給態りん酸量が500m
g(P2 O5 )程度含まれる土壌においても植物に充分
感染し、生長促進効果を示す。
っても、例えばグロムス・カレドニウム( Glomus cal
edonium )やグロムス・エツニカタム( Glomus etunic
atum)は、りん酸濃度の高い土壌においては感染率が低
下し、特に可給態りん酸量が土壌(乾土)100gあた
り600mg(P2 O5 )以上含まれる土壌において
は、全く感染しなくなってしまうので、好ましくない。
なお、VA菌根菌は、土壌中に存在する接合菌の一種で
あり、その菌糸が様々な植物の根について菌根を形成
し、両者が共生することが知られている。このVA菌根
菌は、植物と共生し、これに感染した植物の生長を促進
したり、耐病性を向上させる働きがあることが知られて
いる。
根菌を感染させることができる植物であればよく、アブ
ラナ科,アカザ科を除く殆ど全ての栽培作物に適用する
ことが可能である。特にナス科植物、バラ科植物、ウリ
科植物、ユリ科植物或いは柑橘が好適である。具体的に
は、例えばナス,トマト,ピーマン,シシトウなどのナ
ス科植物、イチゴなどのバラ科植物、キュウリ,メロン
などのウリ科植物、ネギ,ニラなどのユリ科植物、ミカ
ン,カラタチなどの柑橘が挙げられる。
あたり、前記した如き耐りん酸性を有するVA菌根菌で
あって、グロムス属に属するもの、特に耐りん酸性を有
するVA菌根菌であるグロムス・エスピー( Glomus s
p. )R10(ATCC 74311)を施用する。本
発明においては、水田土壌等から分離した、耐りん酸性
を有するVA菌根菌、例えばグロムス・エスピー( Glo
mus sp. )R10を、そのまま用いてもよいし、或いは
VA菌根菌接種物とされたもの(製剤化されたもの)を
用いてもよい。
は、自然界から篩を用いて集める方法(鈴木達彦,VA
菌根に関する諸問題5、農業および園芸,第62巻,第
3号,p28〜33,1987年)や遠心分離による方
法(特開昭63−309178号公報)が知られてい
る。また、栄養薄膜培養法(特開昭55−118390
号公報)や器官培養した根を使用する方法(特公昭62
−49037号公報)等により無菌的にVA菌根菌を増
殖させ、胞子を形成させる方法もあるが、収集方法に特
に制限はない。上記した如く、耐りん酸性を有するVA
菌根菌であるグロムス・エスピー( Glomus sp. )R1
0は、千葉県袖ケ浦市で採取した水田土壌から分離した
ものである。
剤化されたもの)を用いる場合には、その起源は特に制
限はなく、市販品を用いることもできるが、例えば次の
ようにして製造されたVA菌根菌接種物を用いるのが好
ましい。すなわち、上記した如き種々の方法により集め
られたVA菌根菌胞子を用い、これをVA菌根菌培養の
ための宿主植物に感染させ、VA菌根菌を増殖させ、V
A菌根菌接種物を得、これを用いる。例えば、採取した
水田土壌等から分離した、耐りん酸性を有するVA菌根
菌グロムス・エスピー( Glomus sp. )R10を用い、
これをVA菌根菌培養のための宿主植物に感染させ、V
A菌根菌を増殖させ、VA菌根菌接種物を得、これを用
いる。ここでVA菌根菌を感染させる植物、すなわちV
A菌根菌培養のための宿主植物としては、生長が速く、
根がよく張る植物であって、かつVA菌根菌が感染しや
すい植物であれば特に制限はなく、例えばメヒシバ,ト
ウモロコシ,ソルゴー,ムギ,芝草,スダングラス等の
イネ科植物、ナス,トマト,ピーマン,シシトウ等のナ
ス科植物、大豆,カラスノエンドウ,マングビーン,ピ
ーナツ,アルファルファ,クローバー等の豆科植物、マ
リーゴールド,ヒマワリ,サイネリア,キク等のキク科
植物、ネギ,玉ネギ等のユリ科植物などが挙げられる。
これらの植物は、実生苗、播種して育苗後、移植して栽
培したり、栄養繁殖したり、挿し芽,挿し木,接ぎ木,
球根等により増殖,栽培したりして用いられる。
は特に限定はなく、播種,育苗苗,挿し芽,挿し木,接
ぎ木,球根,植物組織など、様々な態様で行なうことが
できる。VA菌根菌の植物への感染方法について述べる
と、施用方法としては、用土と混合したり、種子や芽の
下層に層状に施用したり、或いは定植時の植え穴の中に
施用したりすることが好ましい。用土としては、土壌や
人工培土などを用いればよい。VA菌根菌の植物への感
染方法は、既知の方法により行なえば良く、例えば、温
度は10〜50℃、好ましくは15〜40℃、土壌のp
Hは3〜9.5、好ましくは4〜8の条件で行なわれ
る。なお、VA菌根菌を感染させる際に用いられる栽培
培地(用土)としては、無機質であり、かつ水を含むこ
とにより崩壊しにくいものであれば特に制限はないが、
土着の雑菌の混入防止と言う観点から、滅菌処理(焼成
処理も含む)したものが好ましく、具体的には例えば、
焼成赤玉土,焼成アタパルジャイト,焼成モンモリロナ
イト,焼成珪藻土,珪藻土,ゼオライト,軽石等が特に
好ましい。これらは、具体的には、後述するものと同様
のものである。
が成立する。本発明においては、このようにしてVA菌
根菌に感染した植物を、担体を含む培地で栽培して、V
A菌根菌を増殖させ、得られたVA菌根菌接種物(VA
菌根菌製剤)を用いることが好ましい。ここで用いられ
る培地は、担体、特に多孔性担体を含む培地である。担
体としては、焼成赤玉土,焼成アタパルジャイト,焼成
モンモリロナイト,焼成珪藻土,珪藻土,ゼオライト,
軽石等が挙げられ、特に焼成赤玉土,焼成赤玉土と焼成
アタパルジャイトとの混合物等が好ましい。
ト,焼成モンモリロナイト,焼成珪藻土としては、それ
ぞれ赤玉土,アタパルジャイト,モンモリロナイト,珪
藻土を、焼成温度200〜1300℃、好ましくは30
0〜1000℃にて焼成処理したものが用いられる。ま
た、必要に応じて、アルミナ等のバインダーも使用して
造粒も可能である。これらの粒径は通常、10mm以
下、好ましくは5mm以下である。なお、宿主植物の栽
培は通常の条件で行なえばよい。宿主植物の生育に伴
い、VA菌根菌も増殖する。通常、温度は5〜60℃で
あり、必要に応じて灌水や液肥等を施用すればよい。通
常、栽培し始めてから、2〜5ヶ月程度経過して、宿主
植物が充分に生育したところで、水などの供給を絶ち、
暫く放置すると、VA菌根菌は胞子を形成する。そこで
形成したVA菌根菌の菌糸や胞子の付着した培地を常法
により回収しVA菌根菌接種物(VA菌根菌製剤)とす
る。
得られたVA菌根菌の菌糸や胞子の付着した培地につい
て、目開き1.0mmの篩を通過し、目開き0.035
mmの篩を通過しない画分、好ましくは目開き0.85
mmの篩を通過し、目開き0.1mmの篩を通過しない
画分に分級し、この画分をVA菌根菌接種物とすること
もできる。さらに、このVA菌根菌接種物は、担体を含
んだものが好ましい。ここで担体としては、VA菌根菌
の菌糸や胞子の付着した培地から得られる画分と同程度
の粒径のものとすることが好ましい。担体はVA菌根菌
胞子の保存性を高め、生長促進効果を維持する役割の
他、増量剤としての役割をも有する。従って、担体とし
ては、粒径が2mm未満、特に0.09〜1.4mm程
度のものを用いることが好ましい。このような担体とし
ては、赤玉土,アタパルジャイト,モンモリロナイト,
焼成赤玉土,焼成アタパルジャイト,焼成モンモリロナ
イト,焼成珪藻土,珪藻土,ゼオライト,軽石等が挙げ
られ、特に崩壊のしにくさや雑菌が少ないことなどの点
から、焼成アタパルジャイト或いは焼成モンモリロナイ
ト、さらにはこれらの混合物を主成分とするものが好ま
しく、特に焼成アタパルジャイトを主成分とするものが
好ましい。なお、焼成アタパルジャイト,焼成モンモリ
ロナイトとしては、それぞれアタパルジャイト,モンモ
リロナイトを、焼成温度200〜1300℃、好ましく
は300〜800℃にて焼成処理したものが用いられ
る。また、必要に応じて、アルミナ等のバインダーも使
用して造粒も可能である。
根菌接種物としては、水分含量が5〜30重量%、特に
10〜25重量%としたものが好ましい。水分含量がこ
の範囲外であると、活性が低下するため好ましくない。
本発明において用いられるVA菌根菌接種物としては、
VA菌根菌胞子を含む画分と、上記の如き担体との混合
割合は特に制限はないが、通常、担体1g当り、1〜5
00胞子、好ましくは5〜300胞子である。
るVA菌根菌であって、グロムス属に属するものとして
は、上記したように、任意の手段により集められた耐り
ん酸性を有するVA菌根菌であって、グロムス属に属す
るものの胞子をそのまま用いてもよいし、或いは上記の
ようにしてVA菌根菌接種物(VA菌根菌製剤)とされ
たものを用いてもよい。
性を有するVA菌根菌であって、グロムス属に属するも
のを植物に施用する。施用方法について述べると、VA
菌根菌の処理(施用)時期としては、その播種時、仮植
時、定植時のいずれの時期であってもよい。また、処理
(施用)の方法としては、用土(培土)と混合する、
株元に施用する、根に付着させるなどの方法があ
り、いずれの方法でもよい。
物の栽培は通常の条件で行なえばよい。適宜、灌水した
り、肥料などを与えたりすればよい。植物の発根と共
に、VA菌根菌の感染が成立する。感染の条件等につい
ては、VA菌根菌接種物(VA菌根菌製剤)の製造に関
しての説明中で説明したと同様である。VA菌根菌感染
植物の生育に伴い、VA菌根菌も旺盛に繁殖し、さらに
VA菌根菌の繁殖に伴い、VA菌根菌感染植物も一層生
長が促進される。本発明において用いる、耐りん酸性を
有するVA菌根菌であって、グロムス属に属するグロム
ス・エスピー( Glomus sp. )R10は、りん酸濃度の
低い土壌条件において高い感染率と植物の生長促進効果
を示すだけでなく、他のVA菌根菌が殆ど感染しない条
件である、土壌(乾土)100gあたりの可給態りん酸
量が500mg(P2 O5 )程度含まれる土壌において
も植物に充分感染し、生長促進効果を示す。
る。 製造例(VA菌根菌接種物の製造) (1)VA菌根菌分離源土壌の採取 1992年6月から8月にかけて、日本各地の21個所
の水田土壌を採取した。 (2)VA菌根菌の増殖 1リットルあたり化成肥料(8−8−8)を2gと、過
りん酸石灰150gを含む、粒径4mm以下の焼成赤玉
土を、8号鉢の上から10cmのところまで敷き詰め、
その上に採取した水田土壌300gを乗せた。さらに、
鉢の上から5cmのところまで、同じ焼成赤玉土を敷き
詰めた後、鉢中央の表面から3cmのところにトウモロ
コシ(デントコーンDK649、カネコ種苗製)を2粒
播種した。この鉢を、温度を20〜32℃に維持した温
室にて3ヶ月間栽培した後、水切りを行ない、1ヶ月間
放置することが胞子形成を行なわせた。 (3)VA菌根菌の純系化 胞子形成の終了した鉢の土壌を、流水中にて目開き1m
mの篩を通過し、目開き90μmの篩に残った画分を回
収した。上記画分から同一形状の胞子を顕微鏡下でパス
ツールピペットにて80胞子拾い集め、超音波洗浄機に
数秒間浸し、胞子表面をきれいにしたものを純系株の接
種源とした。
mの焼成アタパルジャイトを敷き詰め、その上に、分離
した80胞子を置いた。さらに、同じ焼成アタパルジャ
イトで覆土を行なった後、深さ1cmのところにトウモ
ロコシ(デントコーンDK649、カネコ種苗製)を1
粒播種した。このポットを、温度を20〜32℃に維持
した温室にて1ヶ月間栽培し、VA菌根菌感染苗を得
た。上記VA菌根菌感染苗を、化成肥料(8−8−8)
を1リットルあたり2g含む粒径0.3〜0.7mmの
焼成アタパルジャイトを敷き詰めた8号中鉢に移植し、
同温室内でさらに3ヶ月間栽培した。その後、水切りを
行ない、1ヶ月間放置することで胞子形成を行なわせ、
グロムス属に属するVA菌根菌であるグロムス・エスピ
ー( Glomus sp. )R10(ATCC 74311)の
接種物を得た(以下、この接種物をVA菌根菌接種物
という。)。また、同様の増殖方法にて、グロムス・カ
レドニウム( Glomus caledonium)とグロムス・エツ
ニカタム( Glomus etunicatum )についても増殖を行
ない、グロムス・カレドニウム( Glomus caledonium
)の接種物(以下、この接種物をVA菌根菌接種物
という。)とグロムス・エツニカタム( Glomus etunic
atum )の接種物(以下、この接種物をVA菌根菌接種
物という。)をそれぞれ得た。
4g、りん酸1.5g、カリ0.4g、苦土0.2g/
kg)を使用した。この土壌のりん酸吸収係数は、19
60(乾物試料5gに対し2.5%りん安液50mlで
測定した。)であり、可給態りん酸量は43mg(P2
O5 )/乾土100gであった。この土壌に第1表に示
すように、過りん酸石灰を添加し、可給態りん酸量が異
なる土壌(土壌A〜D)を調製した。
ビニールポットに3鉢ずつ詰め、鉢中央の深さ5cmの
ところに、VA菌根菌接種物を置いた。この上に播種
後、24日経過したピーマンの苗(品種:エース)を移
植した(実施例1〜4)。同様にしてVA菌根菌接種物
接種区(比較例1〜4)、VA菌根菌接種物接種区
(比較例5〜8)、VA菌根菌接種物無接種区(比較例
9〜12)を設定した。これらを、温度20〜34℃に
維持した温室にて1ヶ月間栽培した後、感染率、生体重
を測定した。結果を第2表に示す。なお、感染率につい
ては、回収した苗の根から、培土を水で丁寧に洗い流
し、根部を以下に示す方法で染色を行ない、感染率を求
めた。各処理区につき10鉢ずつ行ない、その平均値を
第2表に示した。
色した。 (ア)感染させた植物根を水できれいに洗った。 (イ)水を切った根をビーカーに入れ、10%KOH溶
液を30分間弱く沸騰させながら煮沸した。このとき上
部を覆った。また、煮沸は湯煎でもよい。 (ウ)根が着色している場合には、10%KOH溶液を
水ですすいで除去した後、10倍に薄めた過酸化水素
(約3%)液で5分間脱色し、さらに水洗した。なお、
根の着色が少ないときには省略してもよい。 (エ)さらに、下記に示す組成を有するラクトフェノー
ル−トリパンブルー染色液に根を浸し、5〜30分間弱
く沸騰させて染色した。 *ラクトフェノール−トリパンブルー染色液の組成 石炭酸(フェノール) 200ml 蒸留水 200ml 乳酸 200ml グリセリン 400ml トリパンブルー 1g 合計 1000ml (オ)染色した根を水洗いし、染色液を洗い流した。 (カ)水を張ったシャーレに根を入れ、実体顕微鏡で観
察した。
た。1cm間隔のグリッドの上に、上記のようにして染
色したサンプルを載せ、実体顕微鏡により、グリッド上
100箇所の中、染色した箇所を計数して感染率とし
た。
ムス・エスピー( Glomus sp. )R10を接種した区
(VA菌根菌接種物接種区)(実施例1〜4)は、高
りん酸条件下においても感染率が高く、また生体重が重
いことが分かる。グロムス属に属するグロムス・エスピ
ー( Glomus sp. )R10は、高りん酸条件下において
も高い感染性を示し、生長促進効果を示したことから、
耐りん酸性を有するVA菌根菌であると判断される。
も効果を発揮しうる耐りん酸性を有する、グロムス属に
属するVA菌根菌が提供される。特に耐りん酸性を有す
るVA菌根菌であって、グロムス属に属するグロムス・
エスピー( Glomus sp. )R10(ATCC 7431
1)は、りん酸濃度の低い土壌条件において高い感染率
と植物の生長促進効果を示すだけでなく、他のVA菌根
菌が殆ど感染しない条件である、土壌(乾土)100g
あたりの可給態りん酸量が500mg(P2 O5 )程度
含まれる土壌においても植物に充分感染し、生長促進効
果を示す。また、本発明の方法によれば、高りん酸土壌
においても効果を発揮しうる耐りん酸性を有するグロム
ス属に属するVA菌根菌を用いることにより、効率良く
植物を栽培することができる。すなわち、本発明の方法
によれば、通常の栽培土壌においてに高い感染を示し、
植物の生長促進効果や果実の収量増加が安定して現れ
る。さらに、本発明の方法によれば、りん酸濃度の高い
栽培土壌においても確実に植物に感染し、植物の生長促
進や果実の収量増加を図ることができる。従って、本発
明は農業や園芸等の分野で極めて有効に用いることがで
きる。
りである。 (1).耐りん酸性を有するVA菌根菌であって、グロ
ムス属に属するものを施用することを特徴とする植物の
栽培方法。
が、グロムス・エスピー( Glomus sp.)R10(AT
CC 74311)である前記(1)記載の方法。
物、ウリ科植物、ユリ科植物或いは柑橘である前記
(1)又は(2)に記載の方法。
ピーマン,シシトウ,キュウリ,メロン,イチゴ,ネ
ギ,ニラ,ミカン又はカラタチである前記(3)記載の
方法。
あって、グロムス属に属するグロムス・エスピー( Glo
mus sp. )R10(ATCC 74311)。
Claims (4)
- 【請求項1】 耐りん酸性を有するVA菌根菌であっ
て、グロムス属に属するものを施用することを特徴とす
る植物の栽培方法。 - 【請求項2】 グロムス属に属するVA菌根菌が、グロ
ムス・エスピー( Glomus sp. )R10(ATCC 7
4311)である請求項1記載の方法。 - 【請求項3】 植物が、ナス科植物、バラ科植物、ウリ
科植物、ユリ科植物或いは柑橘である請求項1又は2に
記載の方法。 - 【請求項4】 耐りん酸性を有するVA菌根菌であっ
て、グロムス属に属するグロムス・エスピー( Glomus
sp. )R10(ATCC 74311)。
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