JPH08144908A - スタータ - Google Patents

スタータ

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JPH08144908A
JPH08144908A JP7239884A JP23988495A JPH08144908A JP H08144908 A JPH08144908 A JP H08144908A JP 7239884 A JP7239884 A JP 7239884A JP 23988495 A JP23988495 A JP 23988495A JP H08144908 A JPH08144908 A JP H08144908A
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starter
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gear
clutch
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Tsutomu Shiga
志賀  孜
Nobuyuki Hayashi
信行 林
Masanori Omi
正昇 大見
Yasuhiro Nagao
長尾  安裕
Mitsuhiro Murata
村田  光広
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NipponDenso Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】ロ−ラの磨耗を、大幅に低減することができ、
かつトルク伝達が確実に行われる信頼性の高いスタータ
用オ−バ−ランニングクラッチを提供する。 【解決手段】スタ−タがエンジンによりオ−バ−ランさ
れた時に、モ−タ500とピニオンギヤ210との回転
差を吸収するようにクラッチアウタ351であるインタ
−ナルギヤ340がクラッチインナ352に対し空転す
ると、ロ−ラ353はその遠心力を受けてクラッチイン
ナ352の外周面から離脱し、ロ−ラ353やクラッチ
インナ352の外周面の異常磨耗を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、オーバーランニングク
ラッチを有する遊星歯車減速機構付スタータに関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来の実開昭52−19528号公報に
示す遊星歯車減速機構付スタータにおいては、遊星歯車
減速機構のインターナルギヤの外周面と、この遊星歯車
減速機構を収容する固定側をなすケーシングの内周面と
の間にオーバーランニングクラッチを配設することを開
示している。
【0003】上述の従来のものでは、遊星歯車減速機構
の外周にオーバーランニングクラッチが配設されている
ので、オーバーランニングクラッチの占有する軸方向の
スペースが不要となり、デッドスペースが小さく、重量
増加による製造コストのアップが小さくてすむという利
点がある。また、高負荷のオーバーランニングクラッチ
として直径が大きな動力伝達部を必要とする場合にも、
遊星歯車減速機構の外周を利用できる利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来のものでは以下のような問題点がある。このクラ
ッチのクラッチアウタ(ローラカム)はフロントブラケ
ットに嵌着されており、スタータがエンジンによりオー
バーランされたとき、その回転をスタータモータに伝達
しないようにするために、エンジンにより回されるピニ
オンギヤとスタータモータの回転差を吸収すべくリング
ギヤ(クラッチインナ)が回転する。このとき、このク
ラッチインナである遊星歯車減速装置のリングギヤ外周
にローラを常に接するように構成しているので、周速が
大きいクラッチインナ円周上をローラが転動することに
なり、ローラが摩耗しやすいという問題がある。
【0005】また、オーバーランニングクラッチ部分が
遊星歯車減速装置の外周に配設されているので、必然的
にクラッチインナの径は大きくなってしまうが、このこ
とは以下のような問題をも生じさせる。例えばクラッチ
インナの肉厚を、上述のスタータ出力軸上に配設された
ローラ式オーバーランニングクラッチのクラッチインナ
の肉厚と同じにした場合と比較すると、本公報によるク
ラッチではクラッチインナ外径に対する肉厚の比が小さ
くなり、クラッチインナの円環としての強度が低下し
て、クラッチインナのローラ接触部にかかる内径方向の
力に対し、クラッチインナの変形量が大きくなって、ト
ルク伝達のために必要な接触面の抗力が得られなくな
り、高トルクの伝達ができなくなるという問題がある。
また、これを解決するためにクラッチインナの肉厚を確
保すると、内歯歯車の内径は内包する遊星歯車等の寸法
や減速比による歯数で決められているので、おのずと外
径を大きくするしかなく、遊星歯車減速装置部分だけが
他の部分より径大となってしまうという問題もある。
【0006】さらに、このオーバーランニングクラッチ
は、クラッチアウタである固定側のブラケットの内周に
設けられた、周方向に傾斜したカム状の溝と、クラッチ
インナである遊星歯車減速機構の内歯歯車外周とで形成
された楔状空間の狭小方向にローラが食い込んで回転力
を伝達する機構であるので、スタータがオーバーランさ
れる時には、クラッチインナをなす内歯歯車は高速回転
させられ、その素材が金属であり重量物であることか
ら、回転時の慣性エネルギーが大きく、オーバーラン状
態から急激にエンジン駆動状態に移行したときに、他の
クラッチ部品に与える衝撃が増加したり、回転時のアン
バランスを発生したりして、装置の破損や駆動時の異音
が生じるという問題があった。
【0007】
【発明の目的】本発明は、上記の事情に鑑みてなされた
もので、第1の目的は、ローラの磨耗を、大幅に低減で
きるスタータ用オーバーランニングクラッチを提供する
ことにある。さらに、第2の目的は、トルク伝達が確実
に行われる、信頼性の高いスタータ用オーバーランニン
グクラッチを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明のオーバーランニ
ングクラッチを有するスタータは、次の技術的手段を採
用した。請求項1のスタータは、遊星歯車減速装置の内
歯歯車に設けられた第1の円筒部をクラッチアウタとな
し、固定側をなす第2の円筒部をクラッチインナとする
とともに、クラッチアウタの内周にクラッチインナの外
周面との間でローラを係止するローラ係合面を有するロ
ーラ溝を形成するとともに、該ローラ溝にローラを収納
したときに、ローラがクラッチインナの外周面に接しな
いようにローラ収納部が連設されているので、スタータ
がエンジンを駆動しているときには、固定側であるクラ
ッチインナに対してクラッチアウタは拘束されて、スタ
ータモータの動力はドライブシャフトに伝達され、スタ
ータがエンジンによりオーバーランされた時、スタータ
モータとピニオンギヤとの回転差を吸収するようにクラ
ッチアウタである内歯歯車がクラッチインナに対し空転
するため、ローラはその遠心力を受けてクラッチインナ
外周面から離脱し、ローラやクラッチインナ外周面の異
常磨耗が防止される。
【0009】請求項2のスタータは、第2の円筒部に
も、ローラの一部を収容する溝部を設け、そこにローラ
を介在させて、ローラ収納部及び溝部のローラ接触面で
トルク伝達方向前後から挟み込むようにしているので、
それぞれの接触面とローラとの接触部に、楔効果を利用
したローラ式オーバーランニングクラッチのような大き
な応力がかからず、トルク容量の大きなオーバーランニ
ングクラッチが供給できる。
【0010】請求項3のスタータは、溝部の数を、収納
部の数より多くしているので、スタータを始動させる
時、ローラがローラ溝部に係合していない状態から起動
したり、スタータがオーバーランされた状態から急にエ
ンジンが停止して再度エンジン駆動状態に移行する場合
など、ローラをローラ溝部に再係合する時に、第1およ
び第2の円筒部の空転距離が少なくなり、滑らかで確実
にローラとクラッチインナが係合でき、係合時に発生す
る衝撃を低く抑えることができる。
【0011】請求項4のスタータは、ローラ係合面をロ
ーラの半径と略同一の曲率半径を有する曲面としている
ので、トルクの伝達面が広くなり、さらにトルク容量の
大きなクラッチを供給できる。この結果スタータをます
ます小型化することができる。なお、ここで述べる略同
一の曲率半径とはローラの中心と同じ側に中心を持ち半
径がローラの半径と同じかそれ以上であることを意味し
ている。
【0012】請求項5のスタータは、クラッチアウタの
内周に収納溝を採用しているため、大きな応力を生じる
ことなく、クラッチアウタやクラッチインナに特に高強
度材料を使用しなくても確実なトルク伝達ができるの
で、加工方法が簡単な樹脂や非鉄金属材料が採用でき
る。そのため、例えば鉄鋼材料より材料費、加工費が安
価で軽量な材料を使用することも可能で、低コストで、
軽量なオーバーランニングクラッチを提供できる。ま
た、内歯歯車と同時に、樹脂によって一体に形成するこ
とができる。
【0013】請求項6のスタータでは、前記第2の円筒
部は、前記ドライブシャフトを回転自在に保持する中間
ブラケットに一体で設けていることで、部品点数を少な
くすることができる。請求項7のスタータでは、前記ド
ライブシャフトの一端に形成され、前記遊星歯車を回転
自在に支持する径大部の外周側に少なくとも一部が重な
って配置された第2の円筒部を有することで、第2の円
筒部およびローラを径大部の外周のわずかな空間を利用
して、配置することができる。それによって、スタータ
全体の軸方向長を少なくすることかできる。
【0014】
【実施例】次に、本発明装置スタータを、図1ないし図
11に示す一実施例に基づき説明する。スタータは、エ
ンジンに配設されたリングギヤ100に噛み合うピニオ
ン200や遊星歯車減速機構300を内包するハウジン
グ400と、モータ500と、マグネットスイッチ60
0を内包するエンドフレーム700とに大別される。ま
た、スタータの内部では、ハウジング400とモータ5
00との間がモータ隔壁800によって区画され、モー
タ500とエンドフレーム700との間がブラシ保持部
材900によって区画されている。
【0015】(ピニオン200の説明)図1または図2
に示すように、ピニオン200には、エンジンのリング
ギヤ100に噛合するピニオンギヤ210が形成されて
いる。ピニオンギヤ210の内周面には、出力軸220
に形成されたヘリカルスプライン221に嵌まり合うピ
ニオンヘリカルスプライン211が形成されている。
【0016】ピニオンギヤ210の反リングギヤ側に
は、ピニオンギヤ210の外径寸法よりも大径なフラン
ジ213が環状に形成されている。このフランジ213
の外周には、全周に亘ってピニオンギヤ210の外歯枚
数よりも多い凹凸214が形成されている。この凹凸2
14は、後述するピニオン回転規制部材230の規制爪
231が嵌まり合うためのものである。ワッシャ215
は、ピニオンギヤ210の後端に形成した円環部216
を外周側へ曲げ込むことにより、フランジ213の後面
において回転自在で、且つ軸方向へ抜けない構造として
いる。
【0017】一方、ピニオンギヤ210は、圧縮コイル
バネよりなるリターンスプリング240により、常に出
力軸220の後方へ付勢されている。リターンスプリン
グ240は、直接ピニオンギヤ210を付勢するのでは
なく、本実施例では、ハウジング400の開口部410
を開閉する後述するシャッタ420のリング体421を
介してピニオンギヤ210を付勢する。
【0018】(ピニオン回転規制部材230の説明)回
転規制部232の一端には、ピニオンギヤ210のフラ
ンジ213に形成された多数の凹凸214に嵌まり合う
軸方向にのびる規制部をなす規制爪231が設けられて
いる。この規制爪231は、ピニオンギヤ210の凹凸
214に嵌合するとともに、規制爪231の剛性を向上
するために、軸方向に長く形成されるとともに、径方向
内側に折り曲げられ、断面L字状に形成されている。
(棒状となっている) ピニオン回転規制部材230の作動を説明する。紐状部
材680は、マグネットスイッチ600の作動を規制爪
231に伝達する伝達手段で、マグネットスイッチ60
0の作動によって、回転規制部232を下方へ引き、規
制爪231と、ピニオンギヤ210のフランジ213の
凹凸214とを係合させる。その際、復帰バネ部233
の一端部236が、位置の規制のための規制棚362に
当接されており、復帰バネ部233がたわむこととな
る。規制爪231がピニオンギヤ210の凹凸214に
係合しているので、モータ500のアーマチャシャフト
510及び遊星歯車減速機構300を介して、ピニオン
ギヤ210を回転させようとすると、ピニオンギヤ21
0が出力軸220のヘリカルスプライン221に沿っ
て、前進する。ピニオンギヤ210が、リングギヤ10
0に当接し、ピニオンギヤ210の前進が防止される
と、出力軸210の更なる回動力により、ピニオン回転
規制部材230自身がたわんで、ピニオンギヤ210が
わずかに回動し、リングギヤ100に噛み合う。そし
て、ピニオンギヤ210が前進すると、規制爪231が
凹凸214から外れ、規制爪231がピニオンギヤ21
0のフランジ213の後方に落ち込み、規制爪231の
前端がワッシャ215の後面に当たり、ピニオンギヤ2
10がエンジンのリングギヤ100の回転を受けて後退
するのを防ぐ。
【0019】(ピニオン係止リング250の説明)ピニ
オン係止リング250は、出力軸220の周囲に形成さ
れた断面矩形の環状溝内に固定されている。このピニオ
ン係止リング250は、断面矩形の鋼材を丸め加工して
形成したもので、両端のそれぞれには、図4ないし図6
に示すように、略S字状の凹凸251(係合手段の一
例)が形成され、一方の凸部が他方の凹部に係合し、他
方の凸部が一方の凹部に係合している。
【0020】(遊星歯車減速機構300の説明)遊星歯
車減速機構300は、図1に示すように、後述するモー
タ500の回転数を減速して、モータ500の出力トル
クを増大する減速手段である。遊星歯車機構300は、
モータ500のアーマチャシャフト510(後述する)
の前側外周に形成されたサンギヤ310と、このサンギ
ヤ310に噛合し、このサンギヤ310の周囲で回転す
る複数のプラネタリーギヤ320と、このプラネタリー
ギヤ320をサンギヤ310の周囲で回転自在に支持す
る出力軸220と一体形成されたプラネットキャリア3
30と、プラネタリーギヤ320の外周においてプラネ
タリーギヤ320と噛合する筒状で、かつ樹脂からなる
インターナルギヤ340とからなる。
【0021】(オーバーランニングクラッチ350の説
明)図3に示すように、オーバーランニングクラッチ3
50は、インターナルギヤ340を、一方向のみ(エン
ジンの回転を受けて回転する方向のみ)回転可能に支持
されている。(図7はオーバーランニングクラッチ35
0の部分拡大図である。)オーバーランニングクラッチ
350は、インターナルギヤ340の前側に一体形成さ
れた第1の円筒部をなすクラッチアウタ351と、遊星
歯車機構300の前方を覆う固定側をなすセンターブラ
ケット360の後面に形成され、クラッチアウタ351
の内周と対抗して配置された第2の円筒部をなす環状の
クラッチインナ352と、クラッチアウタ351の内周
面に傾斜して形成されたローラ収納部351aに収納さ
れるローラ353とを有している。このローラ収納部3
51aは周方向に傾斜しており、スタータ駆動時にロー
ラ353と係合するローラ係合面351bを有してい
る。
【0022】クラッチインナ352の外周面には、周方
向に複数個のローラ溝部355が形成されている。この
ローラ溝部355はスタータ駆動時にローラ353を係
合するローラ係合面352bと、このローラ収納部35
2bに導くローラガイド面352cとを有している。ま
た、ローラ収納部351aのローラ係合面351bの対
面側には、スタータオーバーラン時に、ローラ353を
ローラ収納部351aにすくい上げる働きをするローラ
収納ガイド部351dを備える。ここで、ローラ溝部3
55は、クラッチアウタ351のローラ収納部351a
より多く形成しているが、少なくとも、同じ数だけ形成
し、ローラを介在させれば、クラッチのトルク伝達容量
の等しいクラッチが構成できるのは明白である。
【0023】クラッチアウタ351のローラ係合面35
1bと、クラッチインナ352のローラ係合面352b
との位置関係は、スタータ駆動時にローラ353をそれ
ぞれの面でトルク伝達方向前後から挟み込みように構成
されている。また、クラッチアウタ351のローラ収納
部351aは、スタータオーバーラン時に、ローラ35
3を収納した際に、ローラ353の最内径がクラッチイ
ンナ352の最外径より若干大きくなるように設定され
ている。
【0024】このように構成すれば、遊星歯車機構30
0のインターナルギヤ340に設けられた第1の円筒部
をクラッチアウタ351となし、固定側をなす第2の円
筒部をクラッチインナ352とするともに、クラッチア
ウタ351の内周にローラ353のローラ収納部351
aを形成しているので、スタータがエンジンによりオー
バーランされた時に、モータ500とピニオンギヤ21
0との回転差を吸収するようにクラッチアウタ351で
あるインターナルギヤ340がクラッチインナ352に
対し空転すると、ローラ353はその遠心力を受けてク
ラッチインナ352外周面から離脱し、ローラ353や
クラッチインナ352外周面の異常摩耗が防止できる。
【0025】また、第2の円筒部をなすクラッチインナ
352にも、ローラ係合面352bとローラ353との
接触部に、楔効果を利用したローラ式一方向クラッチの
ような大きな応力がかからず、トルク容量の大きな一方
向クラッチが供給できる。さらに、オーバランニングク
ラッチ350は、出力軸220を軸受370を介して回
転自在に支持するセンターブラケット360を利用して
いるので、軸方向長も長くすることをなし、小型化を計
ることができる。
【0026】(センターブラケット360の説明)セン
ターブラケット360は、図4および図5に示すもの
で、ハウジング400の後側の内部に配置されている。
ハウジング400とセンターブラケット360とは、一
端がハウジング400に係止され、他端がセンターブラ
ケット360に係止されたリングバネ390によって連
結され、オーバーランニングクラッチ350を構成する
クラッチインナ352の受ける回転反力をリングバネ3
90で吸収し、反力が直接ハウジング400に伝わらな
いように設けられている。
【0027】また、センターブラケット360の前面に
は、ピニオン回転規制部材230を保持する2本の支持
腕361と、ピニオン回転規制部材230の下端が搭載
される規制棚362が設けられている。さらに、センタ
ーブラケット360の周囲には、ハウジング400の内
側の凸部(図示しない)と嵌まり合う切欠部363が複
数形成されている。また、センターブラケット360の
下端には、紐状部材680(後述する)を軸方向に挿通
する凹部364が形成されている。
【0028】(プラネットキャリア330の説明)プラ
ネットキャリア330は、後端に、プラネタリーギヤ3
20を支持するために径方向に伸びるフランジ形突出部
331を備える。このフランジ形突出部331には、後
方に伸びるピン332が固定されており、このピン33
2がメタル軸受333を介してプラネタリーギヤ320
を回転自在に支持している。
【0029】また、プラネットキャリア330は、前側
端部がハウジング400の前端内部に固定されたハウジ
ング軸受440と、センターブラケット360の内周の
内側筒部365内に固定されたセンターブラケット軸受
370とによって、回転自在に支持されている。このプ
ラネットキャリア330は、内側筒部365の前端位置
に環状溝334を備え、この環状溝334には、止め輪
335が嵌め合わされている。この止め輪335と内側
筒部365の前端との間には、プラネットキャリア33
0に対して回転自在に装着されたワッシャ336が設け
られており、止め輪335がワッシャ336を介して内
側筒部365の前端に当接することにより、プラネット
キャリア330が後方に移動することが規制される。ま
た、プラネットキャリア330の後側を支持するセンタ
ーブラケット軸受370の後端は、内側筒部365の後
端と、フランジ形突出部331との間に挟まれるフラン
ジ部371を備え、フランジ形突出部331がフランジ
部371を介して内側筒部365の後端に当接すること
により、プラネットキャリア330が前方に移動するこ
とが規制される。
【0030】なお、プラネットキャリア330の後面に
は、軸方向に伸びる凹部337を備え、この凹部337
内に配置されるプラネットキャリア軸受380を介して
アーマチャシャフト510の前端を回転自在に支持して
いる。 (ハウジング400の説明)ハウジング400は、ハウ
ジング400の前端内部に固定されたハウジング軸受4
40で出力軸220を軸支するとともに、開口部410
からの雨水等の進入を極力低減するために、開口部41
0の下部においてハウジング400とピニオンギヤ21
0の外径との隙間を極力小さくする遮水壁460を備え
ている。また、ハウジング400の前端の下部には、軸
方向に伸びる2つのスライド溝450が設けられ、この
スライド溝450に後述するシャッタ420が配設され
る。
【0031】(シャッタ420の説明)シャッタ420
は、樹脂性部材(例えばナイロン)からなり、出力軸2
20の周囲に装着され、リターンスプリング240とピ
ニオンギヤ210との間に挟持されるリング体421
と、ハウジング400の開口部410を開閉する遮水部
422とからなる。
【0032】シャッタ420の作動は、スタータが起動
してピニオンギヤ210が出力軸220に沿って前方へ
移動すると、リング体421がピニオンギヤ210とも
に前方へ移動する。すると、リング体421と一体の遮
水部422が前方へ移動し、ハウジング400の開口部
410を開く。スタータの作動が停止してピニオンギヤ
210が出力軸220に沿って後方へ移動すると、リン
グ体421もピニオンギヤ210とともに後方へ移動す
る。すると、リング体421と一体の遮水部422も後
方へ移動し、ハウジング400の開口部410を閉じ
る。この結果、開閉手段をなすシャッタ420は、スタ
ータの非作動時には、リングギヤ100の遠心力等によ
って飛散する雨水等が遮水部422によってハウジング
400内に進入するのを防ぐ。
【0033】(シール部材430の説明)シール部材4
30は、端面に環状溝430aが配設され、この環状溝
430aに、リターンスプリング240の一端が配置さ
れる。このシール部材430は、出力軸220の周囲を
シールするもので、ハウジング400の開口部410よ
り進入した雨水や塵等が、ハウジング400の前端のハ
ウジング軸受440へ進入するのを阻止している。
【0034】(モータ500の説明)モータ500は、
ヨーク501、モータ隔壁800、後述するブラシ保持
部材900に囲まれて構成される。なお、モータ隔壁8
00は、センターブラケット360との間で遊星歯車機
構300を収納するもので、遊星歯車機構300内の潤
滑油がモータ500に進入するのを防ぐ役目も果たす。
【0035】モータ500は、図1に示すように、アー
マチャシャフト510、このアーマチャシャフト510
に固定されて一体に回転する電機子鉄心520および電
機子コイル530から構成されるアーマチュア540
と、アーマチュア540を回転させる固定磁極550と
から構成され、固定磁極550はヨーク501の内周に
固定される。
【0036】(アーマチャシャフト510の説明)アー
マチャシャフト510は、プラネットキャリア330の
後内部のプラネットキャリア軸受380、およびブラシ
保持部材900の内周に固着されたブラシ保持部材軸受
564によって回転自在に支持される。このアーマチャ
シャフト510の前端は、遊星歯車機構300の内側に
挿通されるとともに、上述のように、アーマチャシャフ
ト510の前端外周には遊星歯車機構300のサンギヤ
310が形成されている。
【0037】(電機子コイル530の説明)電機子コイ
ル530は、本実施例では複数(例えば25本)の上層
コイルバー531と、この上層コイルバー531と同数
の下層コイルバー532とを用い、それぞれの上層コイ
ルバー531と下層コイルバー532とを径方向に積層
した2層巻コイルを採用する。そして、各上層コイルバ
ー531と各下層コイルバー532とを組み合わせ、各
上層コイルバー531の端部と各下層コイルバー532
の端部とを電気的に接続して環状のコイルを構成してい
る。
【0038】(上層コイルバー531の説明)上層コイ
ルバー531は、電導性に優れた材質(例えば銅)より
なり、固定磁極550に対して平行に伸び、スロット5
24の外周側に保持される上層コイル辺533と、この
上層コイル辺533の両端から内側に曲折され、アーマ
チャシャフト510の軸方向に対して垂直方向に伸びる
2つの上層コイル端534とを備える。なお、上層コイ
ル辺533および2つの上層コイル端534は、冷間鍛
造によって一体成形したものであっても、プレスによっ
てコ字状に曲折して形成したものであっても、別部品で
形成した上層コイル辺533と2つの上層コイル端53
4とを溶接等の接合技術で接合して形成したものであっ
ても良い。
【0039】(下層コイルバー532の説明)下層コイ
ルバー532は、上層コイルバー531と同様、電導性
に優れた材質(例えば銅)よりなり、固定磁極550に
対して平行に伸び、スロット524の内側に保持される
下層コイル辺536と、この下層コイル辺536の両端
から内側に曲折され、シャフト510の軸方向に対して
垂直方向に伸びる2つの下層コイル端537とを備え
る。なお、下層コイル辺536および2つの下層コイル
端537は、上層コイルバー531と同様、冷間鋳造に
よって一体成形したものであっても、プレスによってコ
字状に曲折して形成したものであっても、別部品で形成
した下層コイル辺536と2つの下層コイル端537と
を溶接等の接合技術で接合して形成したものであっても
良い。
【0040】なお、各上層コイル端534と各下層コイ
ル端537との絶縁は、絶縁スペーサ560によって確
保され、各下層コイル端537と電機子鉄心520との
絶縁は、樹脂製(例えばナイロンやフェノール樹脂)の
絶縁リング590によって確保される。また、2つの上
層コイル端534の内周端部には、軸方向に伸びる上層
内部延長部538を備える。この上層内部延長部538
の内周面は、前述した下層コイルバー532の内端に設
けられた下層内部延長部539の外周に重ね合わされ、
溶接等の接合技術で電気的、且つ機械的に接続される。
また、上層内部延長部538の外周面は、アーマチャシ
ャフト510に圧入固定された固定部材570の外周環
状部571の内面に、絶縁キャップ580を介して当接
する。
【0041】このアーマチャ540においては、電機子
コイル530を構成する上層コイルバー531の両端の
上層コイル端534、および下層コイルバー532の両
端の下層コイル端537が、それぞれアーマチャシャフ
ト510の軸方向に対して、垂直に設けられているた
め、アーマチャ540の軸方向寸法を短くできるため、
モータ500の軸方向寸法も短くでき、この結果、スタ
ータを従来に比較して小型化できる。
【0042】(固定磁極550の説明)固定磁極550
は、固定磁極550の内周に配置される固定スリーブ5
53によって、ヨーク501の内部に固定され、本実施
例では永久磁石を用いたものであるが、永久磁石の代わ
りに通電によって磁力を発生するコイルを用いても良
い。
【0043】(マグネットスイッチ600の説明)マグ
ネットスイッチ600は、図1に示すように、後述する
ブラシ保持体900に保持されて、後述するエンドフレ
ーム700内に配置され、アーマチャシャフト510に
対して略垂直方向になるように固定されている。マグネ
ットスイッチ600は、通電によって、プランジャ61
0を上方へ駆動し、プランジャ610と一体に移動する
2つの接点(下側可動接点611と上側可動接点61
2)を、順次、端子ボルト620の頭部621および固
定接点630の当接部631に当接させるものである。
なお、端子ボルト620には、図示されないバッテリケ
ーブルが接続されている。
【0044】プランジャ610の上側には、プランジャ
610の上方へ伸びるプランジャシャフト615が固定
されている。このプランジャシャフト615は、ステー
ショナリコア642の中央に設けられた貫通穴から上方
に突出している。このプランジャシャフト615のステ
ーショナリコア642の上側には、上側可動接点612
がプランジャシャフト615に沿って上下方向に摺動自
在に挿通されている。この上側可動接点612は、図7
に示すように、プランジャシャフト615の上端に取り
付けられた止め輪616によって、プランジャシャフト
615の上端より上方に移動しないように規制されてい
る。この結果、上側可動接点612は、止め輪616と
ステーショナリコア642の間においてプランジャシャ
フト615に沿って上下方向に摺動自在とされている。
なお、上側可動接点612は、プランジャシャフト61
5に取り付けられた板バネよりなる接点圧スプリング6
70によって、常に上方へ付勢されている。
【0045】上側可動接点612は、銅など導電性に優
れた金属よりなり、上側可動接点612の両端が上側に
移動した際、固定接点630に設けられた2つの当接部
631に当接する。また、上側可動接点612には、一
対のブラシ910の各リード線910aが、カシメや溶
接等によって、電気的、且つ機械的に固定されている。
さらに、上側可動接点612の溝部には、複数(本実施
例では2つ)の制限手段をなす抵抗体617の端部が、
挿入され、電気的、且つ機械的に固定されている。
【0046】なお、上側可動接点612にはブラシ91
0の各リード線910aが、カシメや溶接等によって電
気的、且つ機械的に固定されているが、上側可動接点6
12とブラシ910の各リード線910aとを一体形成
しても良い。抵抗体617は、スタータの起動初期時
に、モータ500の回転を低速回転させるためのもの
で、抵抗値の大きな金属線を複数巻いて構成されてい
る。抵抗体617の他端には、端子ボルト620の頭部
621の下側に位置する下側可動接点611がカシメ等
によって固定されている。
【0047】下側可動接点611は、銅など導電性に優
れた金属よりなり、マグネットスイッチ600が停止し
て、プランジャ610が下方に位置する際にステーショ
ナリコア642の上面に当接し、抵抗体617がプラン
ジャシャフト615の移動に伴って上方に移動する際、
上側可動接点612が固定接点630の当接部631に
当接する前に、端子ボルト620の頭部621に当接す
るように設けられている。
【0048】(エンドフレーム700の説明)エンドフ
レーム700は、図8に示すように、樹脂製(例えばフ
ェノール樹脂)のマグネットスイッチカバーで、内部に
マグネットスイッチ600を収容する。エンドフレーム
700の後面には、ブラシ910を前方へ付勢する圧縮
コイルバネ914を保持するバネ保持柱710が、ブラ
シ910の位置に応じて前方に突出して設けられてい
る。
【0049】(ブラシ保持体900の説明)ブラシ保持
体900は、ヨーク501の内部とエンドフレーム70
0の内部とを区画してアーマチャシャフト510の後端
をブラシ保持体軸受564を介して回転自在に支持する
役目のほか、ブラシホルダの役目、マグネットスイッチ
600を保持する役目、および紐状部材680を案内す
る滑車690を保持する役目を果たす。なお、ブラシ保
持体900には、紐状部材680が通る図示されない穴
部を有している。
【0050】ブラシ保持体900は、アルミニウム等の
金属を鋳造技術によって成形した隔壁で、図9および図
10に示すように、ブラシ910を軸方向に保持するブ
ラシ保持穴911、912を複数(本実施例では上側に
2つ、下側に2つ)備える。上側のブラシ保持穴911
は、プラス電圧を受けるブラシ910を保持する穴で、
この上側のブラシ保持穴911は、樹脂製(例えばナイ
ロン、フェノール樹脂)の絶縁筒913を介してブラシ
910を保持する。また、下側のブラシ保持穴912
は、アース接地されるブラシ910を保持する穴で、こ
の下側のブラシ保持穴912は、穴の内部で直接ブラシ
910を保持する。
【0051】このように、ブラシ保持体900によっ
て、ブラシ910を保持させることにより、スタータに
独立したブラシホルダを設ける必要がない。このため、
スタータの部品点数を低減し、組付工数を低減すること
ができる。また、ブラシ910は、圧縮コイルバネ91
4によって、前端面が電機子コイル530の後側の上層
コイル端534の後面に付勢される。
【0052】〔実施例の作動〕次に、上記スタータの作
動を図11(a)ないし(c)の電気回路図に従い、説
明する。乗員によって、キースイッチ10がスタート位
置に設定されると、バッテリ20から、マグネットスイ
ッチ600の吸引コイル650に通電される。吸引コイ
ル650が通電されると、吸引コイル650の発生する
磁力にプランジャ610が引き寄せられ、プランジャ6
10が下方位置から上方へ上昇する。
【0053】プランジャ610が上昇を開始すると、プ
ランジャシャフト615の上昇に伴って上側可動接点6
12および下側可動接点611が上昇するとともに、紐
状部材680の後端も上方に上昇する。紐状部材680
の後端が上昇すると、紐状部材680の前端は下方に引
かれ、ピニオン回転規制部材230が下降する。ピニオ
ン回転規制部材230の下降によって、規制爪231が
ピニオンギヤ210の外周の凹凸214に嵌まり合う時
点で、下側可動接点611が端子ボルト620の頭部6
21に当接する(図11(a)参照)。端子ボルト62
0には、バッテリ20の電圧が印加されており、端子ボ
ルト620の電圧が、下側可動接点611→抵抗体61
7→上側可動接点612→リード線910aを介して上
側のブラシ910に伝えられる。つまり、抵抗体617
を介した低電圧が上側のブラシ910を介して電機子コ
イル530に伝えられる。そして、下側のブラシ910
は、ブラシ保持体900を介して常にアース接地されて
いるため、各上層コイルバー531と各下層コイルバー
532とを組み合わせてコイル状に構成された電機子コ
イル530が低電圧で通電される。すると、電機子コイ
ル530が比較的弱い磁力を発生し、この磁力が固定磁
極550の磁力に作用(吸着あるいは反発)して、アー
マチャ540が低速回転する。
【0054】アーマチャシャフト510が回転すると、
遊星歯車機構300のプラネタリーギヤ320が、アー
マチャシャフト510の前端のサンギヤ310によって
回転駆動される。プラネタリーギヤ320がプラネット
キャリア330を介してリングギヤ100を回転駆動す
る方向の回転トルクをインターナルギヤ340に与える
場合は、オーバーランニングクラッチ350の作動によ
って、インターナルギヤ340の回転が規制される。つ
まり、インターナルギヤ340は回転しないため、プラ
ネタリーギヤ320の回転によって、プラネットキャリ
ア330が減速回転する。プラネットキャリア330が
回転すると、ピニオンギヤ210も回転しようとする
が、ピニオンギヤ210はピニオン回転規制部材230
によって回転が規制されているため、ピニオンギヤ21
0は出力軸220のヘリカルスプライン221に沿って
前進する。
【0055】ピニオンギヤ210の前進に伴い、シャッ
タ420も前進し、ハウジング400の開口部410を
開く。そして、ピニオンギヤ210の前進によって、ピ
ニオンギヤ210がエンジンのリングギヤ100に完全
に噛合し、その後、ピニオン係止リング250に当接す
る。また、ピニオンギヤ210が前進すると、規制爪2
31がピニオンギヤ210の凹凸214から外れ、その
後、規制爪231の前端が、ピニオンギヤ210の後面
に設けられたワッシャ215の後側に落ち込む。
【0056】一方、ピニオンギヤ210が前進した状態
で、上側可動接点612が固定接点630の当接部63
1に当接する。すると、端子ボルト620のバッテリ電
圧が、上側可動接点612→リード線910aを介して
直接上側のブラシ910に伝えられる。つまり、各上層
コイルバー531および各下層コイルバー532よりな
る電機子コイル530に高い電流が流れ、電機子コイル
530が強い磁力を発生し、アーマチャ540を高速回
転する。
【0057】アーマチャシャフト510の回転は、遊星
歯車機構300によって減速されて回転トルクが増大
し、プラネットキャリア330を回転駆動する。このと
き、ピニオンギヤ210は、前端がピニオン係止リング
250に当接して、プラネットキャリア330と一体に
回転する。そして、ピニオンギヤ210は、エンジンの
リングギヤ100に噛合しているため、ピニオンギヤ2
10は、リングギヤ100を回転駆動して、エンジンの
出力軸を回転駆動する。
【0058】さらに、オーバーランニングクラッチ35
0について詳しく言うと、オーバーラン時に、エンジン
の駆動力は出力軸220から、プラネタリーギヤ320
に伝達されるが、この時ピニオンギヤ210の回転数は
アーマチャ540による回転数より高くなり、プラネタ
リーギヤ320が噛み合うインターナルギヤ340と一
体のクラッチアウタ351は図7の矢印C方向へ回り出
す。すると、その遠心力により、ローラ353はローラ
収納ガイド部351dとローラガイド部352cによっ
て、クラッチインナ352のローラ収納部352b内に
収納され、クラッチアウタ351はクラッチインナ35
2の外周を空転する。
【0059】このようにしてクラッチアウタ351、す
なわちインターナルギヤ340が空転することにより、
アーマチャシャフト510に形成されたサンギヤ310
へのエンジン駆動力の伝達が遮断され、アーマチャ54
0が過回転するのを防止する。次に、エンジンが始動
し、エンジンのリングギヤ100がピニオンギヤ210
の回転よりも速く回転すると、ヘリカルスプラインの作
用によって、ピニオンギヤ210に後退力が生じる。し
かるに、ピニオンギヤ210の後方に落ち込んだ回転規
制爪231によって、ピニオンギヤ210の後退が阻止
され、ピニオンギヤ210の早期離脱を防止して、エン
ジンを確実に始動することができる(図11(b)参
照)。また、エンジンの始動によって、エンジンのリン
グギヤ100がピニオンギヤ210の回転よりも速く回
転されると、リングギヤ100の回転によってピニオン
ギヤ210が回転駆動される。すると、リングギヤ10
0からピニオンギヤ210に伝えられた回転トルクは、
プラネットキャリア330を介してプラネタリーギヤ3
20を支持するピン332に伝えられる。つまり、プラ
ネットキャリア330によってプラネタリーギヤ320
が駆動される。すると、インターナルギヤ340には、
エンジン始動時とは逆回転のトルクがかかるため、オー
バーランニングクラッチ350がリングギヤ100の回
転を許す。つまり、インターナルギヤ340にエンジン
始動時とは逆回転のトルクがかかると、オーバーランニ
ングクラッチ350のローラ353が、クラッチインナ
352の凹部355の外側へ離脱し、インターナルギヤ
340の回転が可能になる。
【0060】つまり、エンジンが始動して、エンジンの
リングギヤ100がピニオンギヤ210を回転駆動する
相対回転は、オーバーランニングクラッチ350で吸収
され、エンジンによってアーマチャ540が回転駆動さ
れることがない。エンジンが始動すると、乗員によって
キースイッチ10がスタート位置から外され、マグネッ
トスイッチ600の吸引コイル650への通電が停止さ
れる。吸引コイル650の通電が停止されると、プラン
ジャ610が圧縮コイルバネ660の作用によって、下
方に戻される。
【0061】すると、上側可動接点612が固定接点6
30の当接部631から離れるとともに、その後下側可
動接点611も端子ボルト620の頭部621から離
れ、上側のブラシ910への通電が停止する。また、プ
ランジャ610が下方に戻されると、ピニオン回転規制
部材230の復帰バネ部236の作用によって、ピニオ
ン回転規制部材230が上方に復帰し、規制爪231が
ピニオンギヤ210の後方から離脱する。すると、ピニ
オンギヤ210は、戻しバネ240の作用によって後方
に戻され、ピニオンギヤ210とエンジンのリングギヤ
100との噛み合いが外れるとともに、ピニオンギヤ2
10の後端が出力軸220のフランジ形突出部222に
当接する。つまり、ピニオンギヤ210が、スタータの
始動前に戻される(図11(c)参照)。
【0062】さらに、プランジャ610が下方に戻され
ることにより、下側可動接点611が、マグネットスイ
ッチ600のステーショナリコア642の上面に当接
し、上側のブラシ910のリード線が、上側可動接点6
12→抵抗体617→下側可動接点611→ステーショ
ナリコア642→マグネットスイッチカバー640→ブ
ラシ保持体900の順に導通する。つまり、上側のブラ
シ910と下側のブラシ910とが、ブラシ保持体90
0を介して短絡する。一方、アーマチャ540の惰性回
転により電機子コイル530には、起電力が生じる。そ
して、この起電力が、上側のブラシ910、ブラシ保持
体900、下側のブラシ910を介して短絡するため、
アーマチャ540の惰性回転に制動力が与えらえる。こ
の結果、アーマチャ540は急速に停止する。
【0063】(実施例の効果)遊星歯車機構300のイ
ンターナルギヤ340に設けられた第1の円筒部をクラ
ッチアウタ351をなし、固定側をなす第2の円筒部を
クラッチインナ352とするともに、クラッチアウタ3
51の内周にローラ353のローラ収納部351aを形
成しているので、スタータがエンジンによりオーバーラ
ンされた時に、モータ500とピニオンギヤ210との
回転差を吸収するようにクラッチアウタ351であるイ
ンターナルギヤ340がクラッチインナ352に対し空
転すると、ローラ353はその遠心力を受けてクラッチ
インナ352外周面から離脱し、ローラ353やクラッ
チインナ352外周面の異常摩耗が防止できる。
【0064】また、第2の円筒部をなすクラッチインナ
352にも、ローラ353の一部を収納するローラ溝部
355を設け、そこにローラ353を介在させて、ロー
ラ収納部351a及びローラ溝部355のローラ接触面
でトルク伝達方向前後から挟み込むようにしているの
で、それぞれの接触面とローラ353との接触部に、楔
効果を利用したローラ式一方向クラッチのような大きな
応力がかからず、トルク容量の大きな一方向クラッチが
供給できる。
【0065】さらに、オーバランニングクラッチ350
は、出力軸220を軸受370を介して回転自在に支持
するセンターブラケット360の外周側の空間を有効利
用しているので、軸方向長も長くすることをなし、小型
化を計ることができる。また、クラッチインナ352
は、センターブラケット360に一体に形成しているこ
とで部品点数の低減を計ることができる。
【0066】さらに、この実施例では、クラッチアウタ
351のローラ収納部351aの数を、クラッチインナ
352の溝部352aの数より多くしたものである。こ
のようにすれば、スタータを始動させる時、ローラ35
3がローラ収納部351aに係合していない状態から起
動したり、スタータがオーバーランされた状態から急に
エンジンが停止して再度エンジン駆動状態に移行する場
合など、ローラ353をローラ収納部351aに再係合
する時に、クラッチインナ352の空転距離が少なくな
り、係合時に発生する衝撃を低く抑えることができる。
【0067】(実施例2)実施例2を図12を参照して
説明する。この実施例2は、クラッチアウタ351が樹
脂成形により内歯歯車340と一体で形成されており、
クラッチインナ352はアルミニウムで形成されている
ものである。そして、ローラ係合面351b、352b
が軸心からの半径線とのなす角度を一般的な平歯車の圧
力角である20°程度に形成しているものである。これ
は、一般的にスタータの遊星歯車減速装置に採用されて
いる樹脂製の内歯歯車340の圧力角が20°であり、
圧力角20°の金属製歯車と組み合わせた噛合でも充分
耐久性があることから、この圧力角と同じ角度を有する
ローラ係合面であれば、そのまま一体でクラッチアウタ
やクラッチインナとして使用できることを意味するもの
である。また、樹脂だけでなく一般に鉄鋼材料より低強
度の非鉄金属材料も使用可能であり、いわゆる加工方法
が簡単な素材を使用できることになる。
【0068】本実施例では、例として平歯車の圧力角と
同等の圧力角を有するローラ係合面を示したが、これに
限らず全実施例に示されるように、内歯歯車とスタータ
静止部材とに形成されたクラッチインナとクタッチアウ
タのローラ係合面で、トルク伝達方向前後からローラを
挟み込むようにしているので、楔状空間の狭小方向にロ
ーラが食い込んでトルクを伝達するローラ式一方向クラ
ッチのように、クラッチインナ、クラッチアウタ、ロー
ラのそれぞれの接触面に大きな応力がかからないこと
は、本実施例のように、クラッチインナやクラッチアウ
タの素材に樹脂や非鉄金属材料などの低強度材料が使用
できることであり、耐久性は充分確保しつつ、安価で軽
量な一方向クラッチを供給できる。
【0069】(実施例3)この実施例3は、図13に示
すように、ローラ353をクラッチインナ352のロー
ラ溝部352a方向に押圧するように、ローラ押しバネ
356をクラッチアウタ351のローラ収納部351a
に配設するとともに、ローラ押しバネ356の一端を収
納するローラ押しバネ収納部351eをローラ収納部3
51aに併設したものである。さらに、クラッチアウタ
351とクラッチインナ352に設けられたローラ係合
面351b、352bを、ローラ353の半径と略同一
の曲率半径を有する曲面で構成したものである。これに
より、トルクの伝達面が広くなり、さらにトルク容量の
大きなクラッチを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明スタータの実施例1を示す側面断面図で
ある。
【図2】(a)及び(b)は、ピニオン回転規制部材を
ピニオン部に組付けた際の正面図及び一部断面側面図で
ある。
【図3】オーバーランニングクラッチの要部を示す断面
図である。
【図4】センターブラケットの後面図である。
【図5】センターブラケットの側面断面図である。
【図6】アーマチュアの側面断面図である。
【図7】マグネットスイッチのプランジャーを示す斜視
図である。
【図8】エンドフレームおよびブラシスプリングを示す
断面図である。
【図9】ブラシ保持体を示す縦断面図である。
【図10】ブラシ保持体を示す横断面図である。
【図11】(a)、(b)及び(c)は、ピニオンの作
動状態を示してある、電気回路図である。
【図12】実施例2のクラッチの要部拡大断面図であ
る。
【図13】実施例3のクラッチの要部拡大断面図であ
る。
【符号の説明】
100 リングギヤ 200 ピニオン 220 出力軸 300 遊星歯車減速機構 310 サンギヤ 320 プラネタリギヤ 340 インターナルギヤ 350 オーバーランニングクラッチ 351 クラッチアウタ 351a 収納部 352 クラッチインナ 352a 溝部 353 ローラ 360 センターブラケット 500 スタータモータ 510 シャフト 550 固定磁極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 長尾 安裕 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本電 装株式会社内 (72)発明者 村田 光広 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本電 装株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スタータモータのアーマチャシャフトの
    外周に形成されたサンギヤと、 前記アーマチャシャフトの同一軸心上に配置されるドラ
    イブシャフトの一端に枢支され、前記サンギヤと噛合す
    るプラネタリーギヤと、 このプラネタリーギヤと噛合するインターナルギヤとを
    有する遊星歯車減速装置を備えたスタータにおいて、 前記インターナルギヤに設けられ、軸方向にのびる第1
    の円筒部と、前記第1の円筒部の内周と所定の間隔を介
    し配置され、固定側をなす第2の円筒部と、前記第1の
    円筒部と前記第2の円筒部との間に配置されるローラと
    を備え、前記第1の円筒部の内周に、前記第2の円筒部
    との間で前記ローラを係止するローラ係合面を有するロ
    ーラ溝を形成すると共に、該ローラ溝には前記ローラを
    収納したときに前記第2の円筒部の外周に接しないよう
    に収納部が連設されているオーバーランニングクラッチ
    を有するスタータ。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のスタータにおいて、 前記第2の円筒部の外周には、前記ローラの一部のみが
    入り込む溝部が設けられていることを特徴とするスター
    タ。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載のスタータにおいて、 前記溝部の数は、前記収納部の数よりも多いことを特徴
    するスタータ。
  4. 【請求項4】 請求項2もしくは3に記載のスタータに
    おいて、 前記溝部の前記ローラを係止する面は、前記ローラの半
    径と略同一の曲率半径を有することを特徴とするスター
    タ。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載のス
    タータにおいて、 前記インターナルギヤ及び第1の円筒部は、樹脂、また
    は非鉄金属材料で一体に形成されていることを特徴とす
    るスタータ。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし6のいずれかに記載のス
    タータにおいて、 前記第2の円筒部は、前記ドライブシャフトを回転自在
    に保持し、かつ前記遊星歯車減速機構を覆うセンタブラ
    ケットに一体で設けられていることを特徴とするスター
    タ。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし6のいずれかに記載のス
    タータにおいて、 前記ドライブシャフトの一端に形成された径大部を有
    し、この径大部に前記遊星歯車を回転自在に支持すると
    共に、前記第2の円筒部は、前記径大部の外周側に少な
    くとも一部が重なって配置されていることを特徴とする
    スタータ。
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