JPH08141377A - 多孔質分離膜 - Google Patents

多孔質分離膜

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JPH08141377A
JPH08141377A JP28818094A JP28818094A JPH08141377A JP H08141377 A JPH08141377 A JP H08141377A JP 28818094 A JP28818094 A JP 28818094A JP 28818094 A JP28818094 A JP 28818094A JP H08141377 A JPH08141377 A JP H08141377A
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membrane
water
separation membrane
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porous separation
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JP28818094A
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Akiyoshi Shimoda
晃義 下田
Hiroshi Yatani
広志 八谷
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 芳香族ポリエ−テルケトンと吸水性高分子か
らなる多孔質分離膜に関する。 【構成】 芳香族ポリエ−テルケトンと吸水性高分子か
らなる多孔質膜において、該多孔質分離膜100重量部
に対し、芳香族ポリエ−テルケトンが50〜99.99
重量部、吸水性高分子が0.01〜50重量部からな
り、空孔率が40〜98%であることを特徴とする。 【効果】 耐熱性、耐薬品性に優れ、かつ蛋白質等の吸
着が少なく、耐ファウリング性に優れるため、高度な性
能が要求される分野での濾過用途に好適に用いられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は芳香族ポリエ−テルケト
ン(以下、PEKと略す。)と吸水性高分子からなる多
孔質分離膜に関する。さらに詳しくは、耐熱性、耐薬品
性に優れ、かつ蛋白等の吸着による濾過性能の低下が少
なく、透水性に優れた限外濾過膜や精密濾過膜として有
用なPEKと吸水性高分子からなる多孔質分離膜に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、半導体等の電子工業用超純水、医
薬用途、食品用途等のろ過や滅菌、工業化学品精製や排
水処理、火力発電所および原子力発電所の高温の復水の
濾過等に高分子系多孔質分離膜が広く用いられており、
その用途分野と使用量は拡大の傾向にある。それととも
に、膜性能においても耐薬品性、耐熱性、および透水性
に優れた多孔質分離膜が要求されている。特に、蛋白質
やパイロジェン等が濾過すべき液体に含まれている場
合、例えば、血液透析膜、血漿分離膜、医薬品合成の精
製分離工程、食品精製工程等に分離膜を用いた場合、近
年では、分離膜を繰り返し使用するために、膜に対して
100℃以上、特に125℃以上でのスチ−ムや熱水に
よる殺菌、アルカリ等の薬品、電離放射線等による滅菌
が行われている。
【0003】一方、多孔質分離膜素材としては、従来よ
りセルロ−スアセテ−ト等のセルロ−ス誘導体、ポリア
クリロニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリメタク
リル酸メチル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフッ化
ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の高分子が
限外濾過膜や精密濾過膜として広く用いられている。し
かしながら、前述した近年の分離膜への要求の高度化に
対して、これらの素材は滅菌後に物性の変化が起こりや
すく、耐熱性および耐薬品性を満足できるものではな
く、要求される性能面において十分ではない。
【0004】さて、PEKは耐熱性、耐薬品性、低溶出
性に極めて優れた樹脂として注目されており、多孔質分
離膜への応用が試みられている。例えば、特開平2−2
37628号公報、および特公平3−47889号公報
では、PEK系樹脂の1つであるポリエ−テルエ−テル
ケトンのスルホン化物を材料とした分離膜が提案されて
いる。しかしながら、スルホン化された膜は、水中で膨
潤することが知られており(Macromolecul
es、86p、18(1985)参照)、例えば60℃
以上の熱水中では強度が著しく低下する。
【0005】スルホン化されていないPEK膜も提案さ
れている。例えば、特開平3−174321号公報で
は、特定構造を有するPEK類を用いた半透性薄膜を提
案している。しかしながら、この膜に関しての耐熱性は
例示されていない。また、この膜は、PEKのみを原料
とするため疎水性が高く、蛋白質等が膜に吸着してファ
ウリングを起こしやすいために、経時的に透水性が低下
する傾向にあった。
【0006】また、特開平3−56129号公報、およ
び特開平5−192550号公報では、部分的に結晶質
のPEK非対称膜およびその製造方法について記載され
ている。しかしながら、この膜に関しても、PEKだけ
を原料とするために疎水性が高く、蛋白質の吸着等のフ
ァウリングを起こしやすい傾向にあった。ところで、高
分子膜へ蛋白質が付着するという課題を解決する手段と
しては、一般的に、膜に親水性を持たせることが有用だ
と考えられている。例えば、特公平2−18695号公
報には、疎水性高分子膜であるポリスルホンやポリエ−
テルスルホンに親水性高分子であるポリビニルピロリド
ン(以下、PVPと略す。)を5〜70重量%含有させ
ることにより、膜の親水性を高め、膜への蛋白質の吸着
を低減させる方法が記載されている。しかしながら、P
EKに関する記載はなく、ポリスルホンやポリエ−テル
スルホンは上記に示した、近年要求されている膜性能の
面で十分ではない。
【0007】したがって、PEKを膜素材とした耐熱
性、耐薬品性に優れ、かつ耐ファウリング性に優れた多
孔質分離膜は未だ得られていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、耐熱性、耐
薬品性に優れ、かつ耐ファウリング性に優れた、蛋白質
等の吸着の少ないPEKと吸水性高分子からなる多孔質
分離膜を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、耐熱性、
耐薬品性に優れる多孔質分離膜を研究していたが、PE
Kが非常に疎水性が高く、ある程度の蛋白質を吸着する
傾向があることを見出した。そこで本発明者らは鋭意検
討した結果、PEKと、該PEKと比較して耐熱性や耐
薬品性が低い吸水性高分子とを、特定の組成比で製造し
た多孔質膜が、親水性はもとより、驚くべきことに、本
来、PEKが有する優れた耐熱性、耐薬品性、耐放射線
性等の特性を損なうことなく、さらに蛋白質等の付着に
よるファウリングが少なく、優れた膜性能を保つことを
見出し、本発明に至った。
【0010】すなわち、本発明は、 [1]PEKと吸水性高分子からなる多孔質分離膜にお
いて、該多孔質分離膜100重量部に対して、PEKが
50〜99.99重量部、吸水性高分子が0.01〜5
0重量部からなり、空孔率が40〜98%であることを
特徴とする多孔質分離膜 [2]膜表面における吸水性高分子の存在率が0.05
〜50重量%であることを特徴とする[1]記載の多孔
質分離膜 [3]吸水性高分子がPVPであることを特徴とする
[1]記載の多孔質分離膜 [4]PEKが少なくとも15%以上の結晶化度を有す
ることを特徴とする[1]記載の多孔質分離膜 [5]膜断面の構造が膜表面から膜内部にかけて孔径が
異なる非対称膜構造であることを特徴とする[1]記載
の多孔質分離膜 [6]膜形状が中空糸状であることを特徴とする[1]
記載の多孔質分離膜に関する。
【0011】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で
いうPEKとは下記式で示される繰り返し単位を有する
重合体を意味する。 −O−Ar−(O−Ar’−)n 〔式中、ArおよびAr’は芳香族残基。Arは少なく
とも1つのジアリ−ルケトン結合を有し、ArおよびA
r’は芳香族炭素原子を介してエ−テル基に共有結合し
ている。nは0、1または2。〕 また、下記一般式(1)〜(16)の繰り返し単位から
なることが好ましい。
【0012】
【化1】
【0013】これらの繰り返し単位の単独重合体であっ
ても良いし、これら2つ以上の繰り返し単位を有する共
重合体であっても良い。また、上記の繰り返し単位を構
成するフェニレン基に低級アルキル基、ハロゲン基、ニ
トロ基、ニトリル基、アミノ基、フェノキシ基、フェニ
ル基、ビフェニル基、および下記式で表される置換基等
が含まれていてもかまわない。
【0014】
【化2】
【0015】また、上記のような単独重合体または共重
合体の一部に、該重合体が持つ本来の特性を著しく低下
させない範囲で、他の繰り返し単位を含む共重合体であ
ってもよい。例えばそのような共重合単位としては、
【0016】
【化3】
【0017】等が挙げられる。本発明に用いられるPE
Kは既知の重合方法によって製造でき、特に限定されな
い。例えば、フリ−デルクラフト法が挙げられる。関連
する合成法は、米国特許第3085205号、第344
2857号、第3441538号および第366805
7号明細書、ドイツ特許出願公開第2206836号明
細書およびJ.Poly.Soi.,55p.741
(1961)(米)に記載されている。また、他に重縮
合法によるものがある。例えば、芳香族ジハロゲン化合
物とジフェノ−ル類をアルカリ塩の存在下で重合させる
方法や、芳香族ジハロゲン化合物と炭酸塩とを重合させ
る等の方法がある。前者の重合法は、特公昭57−22
938号公報、米国特許第4113699号明細書、特
開昭54−90296号公報に記載されており、後者の
重合法は特開昭62−85708号公報、特開昭62−
85709号公報に記載されている。また、本発明で用
いられるPEKの重合度は特に限定されない。PEKの
重合度は、濃硫酸中で濃度0.1%(PEKの重量/濃
硫酸の容量)の溶液としたとき、25℃でオストワルド
粘度管によって測定された還元粘度で表される。一般
に、還元粘度が0.5〜2.5dl/gの範囲のPEK
が用いられる。例えば、還元粘度が0.7〜2.5dl
/gのものが好適に使用され、還元粘度0.8〜2.5
dl/gのものがさらに好適に用いられる。
【0018】本発明で用いられるPEKは実質的にスル
ホン化されていないものが好ましい。ここでいう実質的
にスルホン化されていないとは、PEKのイオン交換容
量が0〜0.5ミリ当量/gの範囲であることを意味す
る。0.5ミリ当量/gのイオン交換容量とは、1つの
フェニレン基をモノスルホン化されたPEKの繰り返し
単位が約19%存在することに相当する。本発明におい
ては、特に0〜0.1ミリ当量/gの範囲が好ましい。
かかるイオン交換容量は、本発明の実施例に述べる測定
法で測定する。
【0019】さらに、本発明の多孔質分離膜を構成する
PEKは、非晶状態であっても結晶化していてもかまわ
ない。結晶化している方が、熱安定性や耐薬品性が高く
好ましい。本発明において、好ましい結晶化度は15重
量%以上、特に好ましくは25重量%以上である。本発
明でいう結晶化度は、BlundellおよびOsbo
rnにより報告されている広角X線回折で測定される
(Polymer、24、953、1983参照)。
【0020】本発明でいう吸水性高分子とは、水溶性、
もしくは25℃の水中浸漬での平衡吸水率が3%以上の
高分子化合物をいう。具体的には、例えばポリエチレン
グリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレン
グリコ−ルアルキルエ−テル、ポリプロピレングリコ−
ルアルキルエ−テル、ポリビニルアルコ−ル、ポリビニ
ルアルキルエ−テル、デキストリン、ポリアクリル酸お
よびその誘導体、ポリスチレンスルホン酸およびその誘
導体、セルロ−スおよびその誘導体、アルギン酸および
その誘導体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポ
リビニルピロリドン、スルホン化ポリエ−テルエ−テル
ケトン、スルホン化ポリエ−テルスルホン、スルホン化
ポリエ−テルエ−テルスルホン、またはこれらの混合物
を意味する。膜性能を損なわない範囲で、共重合されて
いてもよい。これらの中でも、PVPが好ましい。
【0021】本発明に用いられるPVPは下記の繰り返
し単位からなり、性能を損なわない範囲で共重合されて
いてもよい。例えば、それらの共重合体としては、ビニ
ルピロリドン−ジメチルアミノエチルメタクリレート共
重合体、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ビニ
ルピロリドン−スチレン共重合体、ビニルピロリドン−
ビニルアルコール共重合体等である。さらに、本発明で
用いられるPVPは、下記の繰り返し単位の複素環がス
ルホン化していてもよい。
【0022】
【化4】
【0023】PVPの分子量は特に制限はないが、重量
平均分子量において500〜1,000,000の範囲
にあるものが一般に用いられる。望ましくは重量平均分
子量の範囲が1,000〜800,000である。さら
に、本発明においては、膜中に含まれる吸水性高分子
が、溶媒に溶解しない程度に架橋していることも好まし
い。さらに、本発明の多孔質分離膜は、PEKと吸水性
高分子が化学結合によって架橋していてもよい。
【0024】本発明の多孔質分離膜は、該多孔質分離膜
100重量部に対して、PEK50〜99.99重量
部、吸水性高分子0.01〜50重量部の比率である。
好ましくは、PEK70〜99.99重量部、吸水性高
分子0.01〜30重量部である。吸水性高分子が0.
01重量部未満の場合は、膜の水に対する親和性が低く
なる傾向にあり、蛋白質が吸着してファウリングが起こ
りやすい。また、50重量部を越える場合には、親水性
が高くなり、ファウリングは起こりにくくなる傾向にあ
る。しかし、濾過条件にも左右されるが、濾過使用時に
濾液中に吸水性高分子が溶出する場合があるので好まし
くない。
【0025】本発明の多孔質分離膜中のPEKと吸水性
高分子の比率は、赤外吸収スペクトル等の分析によって
測定される。特に、吸水性高分子がPVPである場合
は、その含有率は、微量窒素分析装置(三菱化成社製、
TN−10)を用いて測定され、多孔質分離膜を燃焼さ
せた際に発生する窒素濃度からPVP重量を算出し、用
いた多孔質分離膜の重量との比として求められる。
【0026】本発明の多孔質分離膜において、膜中の組
成分布は製法等により異なっていてもよい。膜中におけ
る吸水性高分子の分布は、膜表面から膜内部にかけて均
一な比率で構成されている場合、膜表面から膜内部にか
けてその比率が連続的に変化している場合、膜表面にの
み存在する場合等の状態である。さらに、例えば膜内部
に孔径が1μmをこえるようなボイドが存在する場合に
は、その壁面に分布していてもよい。本発明の多孔質分
離膜では、吸水性高分子が膜表面に存在することが好ま
しく、逆に、膜内部の一部にだけ局所的に存在する場合
は望ましくない。これら膜中における吸水性高分子の分
布は、吸水性高分子の分子量、製膜条件、および製膜後
の膜の洗浄等の後処理工程によって制御される。例え
ば、本発明の多孔質分離膜を相転換により得る場合に
は、製膜原液中の吸水性高分子の濃度および分子量を高
くすることにより、膜中の該高分子の含有量を高めるこ
とができ、膜表面に存在する該高分子の存在率をも高め
ることが出来る。さらに、該原液を凝固させる速度を調
整することにより、また、凝固に用いる凝固液への吸水
性高分子の溶解度を調整することにより、膜中における
吸水性高分子の含有量、および分布状態を制御できる。
さらには、膜を各種溶剤で処理するような後処理を行う
ことによって、膜中の吸水性高分子を溶解、または分解
し、該吸水性高分子の含有量を制御できる。 本発明に
おいては、膜表面における吸水性高分子の存在率が0.
01〜50重量%であることが好ましい。さらに好まし
くは、0.1〜30重量%である。本発明において、膜
表面における吸水性高分子の存在率は、例えば反射式顕
微赤外吸収スペクトル測定装置(堀場社製、FT−53
0)を用いて、膜表面の赤外吸収スペクトルを測定し、
該吸水性高分子とPEKの各特徴的な吸収スペクトルの
比から求めることができる。また、吸水性高分子がPV
Pの場合には、X線光量子スペクトル(X−ray p
hotoelectron spectroscop
y、以下、XPSと略す。)による硫黄の分析からも求
めることができる。膜表面における吸水性高分子の存在
率が0.01重量%未満の場合は、膜の疎水性が高くな
る傾向にあり、蛋白質が吸着してファウリングが起こり
やすい。また、50重量%を越える場合は、該膜を濾過
に使用した場合、濾液に吸水性高分子が溶出する危険性
があるため、好ましくない。
【0027】本発明の多孔質分離膜においては、吸水性
高分子が0.01〜50重量%存在する膜表面は、該多
孔質分離膜の片方の表面だけであってもよいし、両表面
であってもかまわない。特に、濾過すべき液に接してい
る膜表面に、吸水性高分子が存在していることが望まし
い。本発明の多孔質分離膜は、その空孔率が40%以
上、98%以下である。好ましくは50%以上、95%
以下、特に好ましくは60%以上、95%以下である。
空孔率が40%未満の場合は透水性能が低く、限外濾過
膜や精密濾過膜としての使用に適さない。また、空孔率
が98%を越える場合は、膜強度が著しく低くなる。本
発明でいう空孔率とは、あらかじめ膜を水性液体に浸漬
し、その後乾燥してその前後の重量変化から測定された
ものである。ここで水性液体とは、水に可溶な有機溶媒
または該有機溶媒と水との混合物である。該有機溶媒と
は、例えばメタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブ
タノ−ル、アセトン、メチルエチルケトン、エチレング
リコ−ル等である。空孔率は、主に膜を製膜する工程に
おいて制御でき、例えば、本発明の多孔質分離膜を相転
換によって得る場合には、製膜原液中のPEK濃度を低
くし、吸水性高分子の濃度を高めることにより、空孔率
を大きくすることができる。また、製膜する工程のう
ち、該製膜原液を凝固する条件によっても空孔率を制御
することが可能であり、凝固速度を非常に遅くした場合
には、空孔率が低下する傾向にある。また、製膜後の加
熱処理や、延伸等においても空孔率を制御することは可
能である。
【0028】本発明の多孔質分離膜の形状は、平膜状、
中空糸状等特に制限はないが、中空糸状が最も好まし
い。また、本発明の多孔質分離膜の構造は、膜表面から
膜内部にかけて孔径が異なる非対称膜構造であってもよ
いし、膜表面から膜内部にかけて孔径が均一なスポンジ
状の構造であってもよい。特に本発明においては、膜表
面と膜内部において孔径が異なる非対称膜構造が好まし
い。また、非対称膜構造の場合は、膜表面から膜内部に
かけて孔径が徐々に増大するような構造であることが望
ましい。また、膜表面から膜内部にかけて孔径が徐々に
小さくなるような構造であってもよい。さらに、非対称
膜構造の場合は、その表面近傍の構造が、膜表面に平均
孔径が50nm以下である緻密層を有していてもよい
し、走査型電子顕微鏡で観察できる程度の0.01〜数
μm程度の開口が存在してもよい。また該緻密層は、膜
の一方の表面に存在してもよいし、膜の両面に存在して
いても構わない。これら膜構造は、例えば本発明の多孔
質分離膜を相転換により得る場合には、製膜原液組成、
および凝固液等の凝固条件により制御できる。また、溶
融法により本発明の多孔質分離膜を製造する場合も、溶
融時の高分子組成、温度、および冷却速度等で膜構造を
制御できるが、通常、該方法で均一膜が得られる傾向に
ある。
【0029】本発明においては、多孔質膜の構造が膜表
面に緻密層を有し、膜内部に行くに従って孔径が大きく
なるような非対称膜の場合には、特に緻密層を有する膜
表面側に吸水性高分子が0.05〜50重量%存在して
いることが望ましい。この理由はまだよくわかっていな
いが、一般に、膜構造が非対称膜の場合には、濾過使用
時に濾過すべき液体が該緻密層にまず接触する。この
際、濾過するべき液体中には蛋白質等のファウリングの
原因となる物質が含まれているので、孔径の最も小さい
緻密層でファウリングが発生しやすい。このため、この
緻密層にPVPを存在させることにより、該緻密層の親
水化が促進され、ファウリングが起こりにくいものと考
えられる。
【0030】本発明の多孔質分離膜は、透水性に特に制
限はない。通常、透水量が10リットル/m2 ・hr・
kg/cm2 以上が好ましい。ここでいう透水量とは、
25℃、1kg/cm2 の圧力で蒸留水を濾過したとき
に、膜を透過してくる水の体積を10分間測定し、その
値をリットル/m2 ・hr・kg/cm2 に換算した値
である。
【0031】本発明の多孔質分離膜を得るには、例え
ば、従来より一般的に知られている技術である相転換を
利用した湿式製膜技術が使用できる。該相転換はLeo
bおよびSourirajanにより、セルロ−スにお
いて十分に確立された方法であり(Adv,Chem.
Ser.38,117,1963参照)、この方法は重
合体を溶剤に溶解した溶液を製膜原液とし、ついで所望
の形状に成形された製膜原液を重合体に対する非溶剤に
浸漬して多孔質膜を得る方法である。
【0032】本発明の多孔質分離膜を湿式法により得る
方法としては、例えば、PEKと吸水性高分子を、PE
Kを実質的にスルホン化しない強酸に溶解したものを製
膜原液とし、該製膜原液を所望の形状に成形し、PEK
に対する非溶剤に浸漬することにより凝固し、ついで該
強酸を膜から洗浄除去する。該湿式法によって本発明の
多孔質膜を得る場合、該多孔質膜中の吸水性高分子の含
有量は、用いる吸水性高分子の分子量、凝固に用いた非
溶剤の吸水性高分子に対する溶解性、または製膜後に加
熱処理等の後処理を行うことにより吸水性高分子を架橋
させる方法等によりコントロ−ルできる。
【0033】本発明の多孔質分離膜を製造するに当た
り、製膜原液に用いられる強酸は、PEKを実質的にス
ルホン化せず、かつ均一に溶解できるものであるならば
特に制限はない。通常、硫酸、メタンスルホン酸、フロ
ロメタンスルホン酸、ジフロロメタンスルホン酸、トリ
フロロメタンスルホン酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢
酸、トリフロロ酢酸、液状フッ化水素等が用いられる。
特に操作上、硫酸が望ましい。また、硫酸でスルホン化
されるPEKの場合は、製膜原液を15℃以下で調整、
製膜することが望ましい。
【0034】本発明の多孔質分離膜を得るにあたり、上
記製膜原液の組成は、通常、製膜原液100重量部に対
して、PEK4〜20重量部、吸水性高分子0.1〜2
5重量部、強酸55〜95.9重量部の範囲にある。製
膜原液調整の際、溶解する吸水性高分子の分子量は、大
きい方が膜により多く存在する傾向にある。さらに上記
製膜原液中には、膜の孔径をコントロ−ルする目的で、
無機塩等の無機物、有機低分子量物質、有機高分子量物
質等を含有していてもよい。また、該製膜原液の溶解時
の温度は、通常、90℃以下で製膜原液が液状を保つ範
囲である。製膜原液は溶解中または製膜直前に減圧法等
により脱泡することが望ましい。
【0035】本発明の多孔質分離膜は、上記のように調
整された製膜原液を所望の形状、例えば平膜状、中空糸
膜状に成形し、PEKに対する非溶剤に浸漬し、さらに
強酸を洗浄除去することにより得られる。本発明で好ま
しい中空糸膜状の場合は、同軸2重管からなる紡口の外
側の環状部分から製膜原液を押し出し、同時に中心部に
液体もしくは気体である内部凝固剤を吐出、該紡口の下
方に設置したPEKの非溶剤からなる凝固浴に浸漬させ
て膜を沈澱凝固させ、ついで強酸を洗浄除去する。
【0036】上記内部凝固剤や、凝固浴に用いる非溶剤
に特に制限はないが、通常、水、希硫酸、酢酸、酢酸エ
ステル、アルコ−ル類、多価アルコ−ル類、ポリエチレ
ングリコ−ル類、アセトンおよびこれらの混合物等が用
いられる。また、内部凝固剤や凝固浴に用いる非溶剤中
に無機塩や塩基を添加しておくことも可能である。これ
ら内部凝固剤や凝固浴に用いる非溶剤は、製膜された膜
の多孔度に関係し、得られる多孔質分離膜の透水量や分
画性に大きい影響を与える。
【0037】また、膜に残留する強酸を洗浄除去するに
当たっては、水、アルコ−ル類、ケトン類、アルカリ性
媒体等が用いられる。さらに、本発明において吸水性高
分子にPVPを用いた場合、特にその溶出が懸念される
場合は、濾過使用時にPVPが溶出しないレベルにま
で、例えば次亜塩素酸ナトリウム水溶液等で洗浄を行う
ことも有用である。
【0038】また、本発明において多孔質分離膜のPE
Kの結晶化度を高め、安定性を向上させる場合は、通
常、用いたPEKのガラス転移点以上融点以下の温度で
加熱処理が行われる。該加熱処理温度は、通常150℃
〜320℃の範囲である。また、該加熱処理は、上記洗
浄後に、膜を乾燥させずに膜内部および膜表面に存在す
る凝固剤または洗浄剤を熱安定化溶媒に置換し、つい
で、熱安定化溶媒に浸漬された状態で、上記温度範囲に
おいて行われる。ここでいう熱安定化溶媒とは、上記加
熱処理温度において安定な有機溶媒であればよく、通
常、ブタンジオ−ル、エチレングリコ−ル、ジエチレン
グリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、テトラエチレン
グリコ−ル、プロピレングリコ−ルジプロピレングリコ
−ル、トリプロピレングリコ−ル、グリセリン、ポリエ
チレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、N,N
−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミ
ド、N−メチル−2−ピロリドン、およびこれらの混合
物が好ましく用いられるが、この限りではない。
【0039】本発明において該加熱処理が行われた場合
には、通常、熱安定化溶媒の洗浄除去を行うが、濾過使
用時において、残留する熱安定化溶媒が濾過使用に影響
を与えない場合は該洗浄を省くことができる。上記加熱
処理により結晶化度が高められた本発明の多孔質分離膜
は、特に膜表面が乾燥されることなく、濾過使用時まで
水、アルコ−ル類、多価アルコ−ル類、ホルマリン、お
よびそれらの混合物等により濡れた状態で保存されるこ
とが好ましい。
【0040】また、本発明の多孔質分離膜を得る他の方
法として、例えば、PEKからなる多孔質膜に後工程と
して吸水性高分子を付与させることも可能である。例え
ば、湿式法や溶融法により得られたPEK多孔質膜の表
面に、液状低分子量吸水性高分子や、溶媒に吸水性高分
子を溶解した溶液を該多孔質膜に含浸させ、熱または電
離放射線によって該吸水性高分子を架橋やグラフト等で
膜に固定させる方法がある。また、電離放射線を用いる
場合は、膜表面や膜内部に含浸させる吸水性高分子は、
モノマ−やオリゴマ−レベルの低分子量物質でもよく、
含浸後電離放射線で重合させる方法であってもかまわな
い。用いられる電離放射線は、通常、アルファ線、ベ−
タ線、ガンマ−線、加速電子線、X線等である。
【0041】また、上記溶融法でPEK多孔質膜を得る
方法は、PEKと他の高分子量物質や低分子量物質を混
練溶融して膜の形状に成形し、冷却後に該高分子量物質
や低分子量物質を洗浄除去して多孔質膜を得る方法であ
る。関連する製膜方法は特開平3−106424号公
報、特開平3−174228号公報、特開平2−371
42号公報、特開平4−293533号公報、特開平4
−506675号公報に記載されている。
【0042】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に述べる
が、いずれも本発明を限定するものではない。まず、本
発明の実施例および比較例で使用した各測定方法につい
て述べる。 透水量(膜形状が中空糸膜状の場合) 30cmの中空糸膜単糸の膜内部に、25℃の蒸留水を
1kg/cm2 の圧力で加えたとき、膜外部に透過して
きた蒸留水の体積を10分間測定し、その値をリットル
/m2 ・hr・kg/cm2 に換算して求めた。ただ
し、膜面積は中空糸膜内部の面積を用いた。本実施例に
おいては、透水量を8時間測定し、測定開始直後の透水
量に対する8時間後の透水量保持率を算出した。 結晶化度の広角X線回折 マックサイエンス社製のX線回折装置MXP−18を用
い、加速電圧50kv、加速電流200mA、Cuタ−
ゲットにより発生したX線をNiモノクロメ−タ−によ
り単色化して使用した。試料は、繊維試料台を用いて透
過方式により測定を行った。試料より発生される散乱X
線を12゜〜32゜まで走査し、1゜あたり50ポイン
トを採り、かつ1ポイントあたり1.2秒計量した。 イオン交換容量 塩化ナトリウム5gを全体で100mlになるように蒸
留水に溶解した溶液に、得られた中空糸膜約0.1gを
入れた。室温で2時間撹拌後、該膜を取り出し、該塩化
ナトリウム水溶液を0.025規定の水酸化ナトリウム
水溶液で滴定を行った。また、取り出した該中空糸膜に
0.1規定の50mlを加え、室温で2時間放置した。
そして該膜を取り出し、純水で中性になるまで洗浄後、
減圧下において50℃で約24時間乾燥し、その重量を
測定した。上記方法により得られた滴定量、および膜重
量から、下記の式により中空糸膜のイオン交換容量を算
出した。ただし下式の膜重量は該多孔質膜中の吸水性高
分子重量を差し引いた値である。 イオン交換容量(ミリ当量/g)=滴定量(ml)×
0.025÷膜重量(g) 蛋白質吸着量 ph7.2のリン酸緩衝溶液に、牛のγ−グロブリンを
10mg/mlの濃度になるように溶解した。該溶液に
得られた中空糸膜を37℃で2時間浸漬後、該中空糸膜
を1%濃度のラウリル硫酸ナトリウムリン酸緩衝溶液に
4時間浸漬した。かかる後、該ラウリル硫酸ナトリウム
リン酸緩衝溶液にBCA蛋白質定量試薬(フルカ社製)
を加え、562nmでの吸光度測定を行った。吸光度か
ら得られた値は膜面積で規格化し、比較例1の蛋白質吸
着量を100として、各実施例の蛋白質吸着量を換算
し、蛋白質吸着指数を算出した。ただし、蛋白質溶液か
ら多孔質膜を取り出す際、膜表面での蛋白質溶液の付着
状態の違いにより測定値にばらつきがあるため、各5回
測定を行って、その平均値を用いた。 デキストラン排除率 蒸留水中にデキストラン(ファルマシア社製)を加え、
0.5重量%の濃度になるように調整した溶液を原液と
した。この原液を、30cmの中空糸膜内部に25℃、
線速1m/秒、平均濾過圧1kg/cm2 の圧力で加え
たとき、膜外部に透過してきた濾液を10分間採取し、
下式から求めた。
【0043】 排除率(%)=(1−C/C0 )×100 (ただし、Cは採取した濾液濃度、C0 は原液濃度を表
す。)
【0044】
【実施例1】97.5%濃硫酸900gに、還元粘度
1.0dl/gで式(1)の繰り返し単位からなるPE
K100g、重量平均分子量10,000のPVP60
g加え、26℃で減圧法によって脱泡しながら攪拌し
て、製膜原液とした。同軸2重管の中空糸製造用紡口か
ら内部凝固剤として26℃の水を吐出させながら、該製
膜原液を同時に吐出させた。該製膜原液は紡口より10
cm下方にもうけられた25℃の水浴中に浸漬し、凝固
した後、巻き取られた。巻き取られた中空糸膜は、室温
のイオン交換水の流水に10時間、25℃のエタノ−ル
に10時間浸漬して洗浄を行った。
【0045】得られた中空糸状多孔質膜は、内径720
μm、膜厚150μmであった。走査型電子顕微鏡によ
る観察の結果、膜断面の構造は、内表面および外表面に
緻密相を有し、膜内部に行くに従って孔径が大きくなる
非対称膜構造であった。また、この中空糸状多孔質膜の
イオン交換容量は0.0以下、空孔率は78%であり、
微量窒素分析による該膜中のPVP含有量は、該膜10
0重量部に対して4.3重量部であった。さらに、内表
面および外表面におけるPVPの存在率はそれぞれ2
0.2重量%、18.6重量%であった。表1に透水量
保持率と蛋白質吸着指数を示した。
【0046】
【実施例2】実施例1で得られた中空糸状多孔質膜を、
90℃のジエチレングリコ−ルに1時間浸漬後、200
℃のトリエチレングリコ−ルに30分間浸漬して加熱処
理を行い、かかる後にエタノ−ルにより洗浄を行った。
得られた中空糸状多孔質膜の空孔率は74%、PVP含
有量は3.0重量部であった。また、内表面および外表
面におけるPVPの存在率はそれぞれ3.3重量%、
3.1重量%、結晶化度は26重量%であった。表1に
透水量保持率と蛋白質吸着指数を示した。
【0047】
【実施例3】還元粘度1.1dl/gで式(5)の繰り
返し単位からなるPEKを用いた以外は、実施例1と同
様の方法で中空糸状多孔質膜を得た。得られた中空糸状
多孔質膜は、内径740μm、膜厚145μmであっ
た。走査型電子顕微鏡による観察の結果、膜断面の構造
は、内表面および外表面に緻密相を有し、膜内部に行く
に従って孔径が大きくなる非対称膜構造であった。ま
た、この中空糸状多孔質膜のイオン交換容量は0.0以
下、空孔率は74%であり、PVP含有量は5.1重量
部であった。また、内表面および外表面におけるPVP
の存在率はそれぞれ23.0重量%、21.2重量%で
あった。表1に透水量保持率と蛋白質吸着指数を示し
た。
【0048】
【実施例4】実施例3で得られた中空糸状多孔質膜を用
いて、実施例2と同様に行った。得られた中空糸状多孔
質膜の空孔率は72%、PVP含有量は3.2重量部で
あった。また、内表面および外表面におけるPVPの存
在率はそれぞれ4.2重量%、3.1重量%、結晶化度
は28重量%であった。表1に透水量保持率と蛋白質吸
着指数を示した。
【0049】
【比較例1】製膜原液にPVPを用いなかった以外は、
実施例1と同様に行った。得られた中空糸状多孔質膜
は、内径710μm、膜厚155μmであった。走査型
電子顕微鏡による観察の結果、膜断面の構造は、内表面
および外表面に緻密相を有し、膜内部に行くに従って孔
径が大きくなる非対称膜構造であった。また、この中空
糸状多孔質膜のイオン交換容量は0.0以下、空孔率は
76%であった。表1に透水量保持率を示した。
【0050】
【比較例2】比較例1で得られた中空糸状多孔質膜を用
いて、実施例2と同様に行った。得られた中空糸状多孔
質膜の空孔率は71%、結晶化度は27重量%であっ
た。表1に透水量保持率を示した。
【0051】
【実施例5】還元粘度1.1dl/gで式(5)の繰り
返し単位からなるPEK100g、重量平均分子量10
0,000のPVP25gを用いた以外は、実施例1と
同様の方法で行った。得られた中空糸状多孔質膜は、内
径810μm、膜厚170μmであった。走査型電子顕
微鏡による観察の結果、膜断面の構造は、内表面および
外表面に緻密相を有し、膜内部に行くに従って孔径が大
きくなる非対称膜構造であった。また、この中空糸状多
孔質膜のイオン交換容量は0.0以下、空孔率は77%
であり、PVP含有量は18.4重量部であった。さら
に、内表面および外表面におけるPVPの存在率はそれ
ぞれ31.4重量%、29.2重量%であった。表1に
透水量保持率と蛋白質吸着指数を示した。
【0052】
【実施例6】実施例5で得られた中空糸状多孔質膜を、
26℃の濃度2000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水
溶液に10時間、室温のイオン交換水に5時間浸漬した
後、エタノ−ル中に保存した。得られた中空糸状多孔質
膜は、空孔率81%、PVP含有量は4.2重量部であ
った。また、内表面および外表面におけるPVPの存在
率はそれぞれ3.8重量%、2.6重量%であった。表
1に透水量保持率と蛋白質吸着指数を示した。
【0053】
【実施例7】還元粘度1.1dl/gで式(5)の繰り
返し単位からなるPEK100g、重量平均分子量1
0,000のPVP5gを用いた以外は、実施例1と同
様に行った。得られた中空糸状多孔質膜は、内径690
μm、膜厚130μmであった。走査型電子顕微鏡によ
る観察の結果、膜断面の構造は、中空糸膜内表面および
外表面に緻密相を有し、膜内部に行くに従って孔径が大
きくなる非対称膜構造であった。また、この中空糸状多
孔質膜のイオン交換容量は0.0以下、空孔率は77%
であり、PVP含有量は0.5重量部であった。さら
に、内表面および外表面におけるPVPの存在率はそれ
ぞれ1.2重量%、1.0重量%であった。表1に透水
量保持率と蛋白質吸着指数を示した。
【0054】
【参考例1】実施例2で得られた中空糸状多孔質膜を、
150℃の蒸留水中に5時間浸漬し、その前後の透水量
を測定した結果、殆ど透水量に変化はなかった。さら
に、該膜の微量窒素分析の結果、PVPの組成は該膜1
00重量部に対して3.0重量部であり、熱水中にPV
Pが溶出していなかった。
【0055】
【参考例2】実施例2で得られた中空糸状多孔質膜を用
いて、重量平均分子量10,000のデキストランに対
する排除率を求めた。その結果、排除率は87%であ
り、分離膜として有用な値を示した。
【0056】
【表1】
【0057】
【発明の効果】本発明の多孔質分離膜は、PEKと吸水
性高分子を膜素材として用いたことにより、耐熱性、耐
薬品性はもとより、蛋白質の吸着が少なく、耐ファウリ
ング性にも優れ、しかも透水量の低下が少なく、濾過使
用において寿命の長い高性能な分離膜を提供できるた
め、高性能な限外濾過膜や精密濾過膜として有用であ
る。
【0058】本発明の多孔質分離膜は、高度な性能が要
求される分野、例えば半導体等の電子工業用超純水、医
療器用途、医薬用途、食品用途等での濾過や滅菌、さら
には火力発電所や原子力発電所の復水の浄化のような1
00℃を越える高温濾過用途にも好適に用いられる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芳香族ポリエ−テルケトンと吸水性高分
    子からなる多孔質分離膜において、該多孔質分離膜10
    0重量部に対して、芳香族ポリエ−テルケトンが50〜
    99.99重量部、吸水性高分子が0.01〜50重量
    部からなり、空孔率が40〜98%であることを特徴と
    する多孔質分離膜。
  2. 【請求項2】 膜表面における吸水性高分子の存在率が
    0.05〜50重量%であることを特徴とする請求項1
    記載の多孔質分離膜。
  3. 【請求項3】 吸水性高分子がポリビニルピロリドンで
    あることを特徴とする請求項1記載の多孔質分離膜。
  4. 【請求項4】 芳香族ポリエ−テルケトンが少なくとも
    15%以上の結晶化度を有することを特徴とする請求項
    1記載の多孔質分離膜。
  5. 【請求項5】 膜断面の構造が膜表面から膜内部にかけ
    て孔径が異なる非対称膜構造であることを特徴とする請
    求項1記載の多孔質分離膜。
  6. 【請求項6】 膜形状が中空糸状であることを特徴とす
    る請求項1記載の多孔質分離膜。
JP28818094A 1994-11-22 1994-11-22 多孔質分離膜 Withdrawn JPH08141377A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005334318A (ja) * 2004-05-27 2005-12-08 Toyobo Co Ltd 高強度高透水性中空糸膜型血液浄化器

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2005334318A (ja) * 2004-05-27 2005-12-08 Toyobo Co Ltd 高強度高透水性中空糸膜型血液浄化器

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