JPH08133978A - 不安関連障害治療剤 - Google Patents

不安関連障害治療剤

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JPH08133978A
JPH08133978A JP6274759A JP27475994A JPH08133978A JP H08133978 A JPH08133978 A JP H08133978A JP 6274759 A JP6274759 A JP 6274759A JP 27475994 A JP27475994 A JP 27475994A JP H08133978 A JPH08133978 A JP H08133978A
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JP
Japan
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dehydroepiandrosterone
therapeutic agent
preventive
anxiety
active ingredient
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JP6274759A
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English (en)
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Satoshi Uehara
聡 上原
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Daiichi Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Daiichi Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 デヒドロエピアンドロステロン、例えばデヒ
ドロエピアンドロステロン硫酸等のデヒドロエピアンド
ロステロン誘導体、及び該誘導体の生理学的に許容され
る塩からなる群から選ばれる物質を有効成分とする恐慌
性障害(パニック・ディスオーダー)等の不安関連障害
の予防・治療剤。 【効果】 恐慌性障害などの不安関連障害の発症には、
血中のデヒドロエピアンドロステロン硫酸などの濃度低
下が関与していることが強く示唆されるので、不安関連
障害の原因・病態に基づいた原因治療及び/又は予防を
可能にする有用な医薬が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は不安関連障害の予防・治
療剤に関する。さらに詳しくいえば、本発明は、恐慌性
障害などの不安関連障害の予防及び/又は治療に有用な
医薬に関するものである。
【0002】
【従来の技術】不安発作を主症状とする不安関連障害
は、臨床の場でしばしば認められる疾患の一つである。
ウィルカーソン・グループ (Wilkerson Group, 1988
年) の統計では、1987年の米国における不安関連障害の
罹患数は1億 700万人と報告されている。恐慌性障害
(パニック・ディスオーダーあるいはパニック発作)は
不安関連障害に分類される代表的な疾患として知られて
おり、精神症状としての恐怖、不快感が存在し、死、発
狂、自制不能といった自己の存続を脅かす観念を症状と
して取り入れていることを特徴とする疾患である。恐慌
性障害の発生機序(生物学的要因)については種々の仮
説が提唱されているが、未だ十分な解明がなされている
とはいえないのが現状である(総説として、神経精神薬
理, 13(2), pp.157-164, 1991 を参照)。
【0003】このような恐慌性障害の薬物療法には、イ
ミプラミン (imipramine) やクロミプラミン (clomipra
mine) 等の三環系抗うつ剤、フェネルジン (phenelzin
e) 等のMAO 阻害剤、ジアゼパム (diazepam) やアルプ
ラゾラム (alprazolam) 等のベンゾジアゼピン系抗不安
薬が広く用いられている。しかしながら、これらの薬剤
による治療は高い頻度での副作用発現を伴い、特に、薬
剤に対する耐性と精神的依存性が出現することがあるの
で、臨床上しばしば大きな問題となっていた。また、抗
不安薬の投与は、発熱に対する解熱薬の投与と同じよう
に対症療法的な色彩が強いので、不安関連障害の原因・
病態に基づいた原因治療を可能にする薬物の開発が切望
されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、恐慌
性障害などの不安関連障害の治療や予防に有用な医薬を
提供することにある。また、本発明の別の目的は、副作
用が少ない不安関連障害の治療剤や予防剤を提供するこ
とにある。さらに本発明は、恐慌性障害などの不安関連
障害の原因・病態に基づいた原因治療を可能にする不安
関連障害の治療剤や予防剤を提供することを目的として
いる。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題
を解決すべく、ストレス疾患の病態生理に関する免疫神
経内分泌学的研究を鋭意進めた結果、副腎皮質から分泌
されるステロイドホルモンであるデヒドロエピアンドロ
ステロンの血中濃度が、恐慌性障害の患者では有意に低
いことを見出した。この結果は、恐慌性障害の患者では
デヒドロエピアンドロステロンの分泌動態に異常があ
り、その異常が疾患の病因や病態生理に関与しているこ
とを強く示唆するものであった。このような所見を基に
して、本発明者は、恐慌性障害の患者にデヒドロエピア
ンドロステロンを投与し、デヒドロエピアンドロステロ
ンが恐慌性障害の治療に極めて優れた有効性を示すこと
を見出した。本発明は上記の知見を基にして完成された
ものである。
【0006】すなわち、本発明の第一の態様によれば、
デヒドロエピアンドロステロン、デヒドロエピアンドロ
ステロン誘導体、及び該誘導体の生理学的に許容される
塩からなる群から選ばれる物質を有効成分とする不安関
連障害の予防・治療剤が提供される。この発明の好まし
い態様によれば、恐慌性障害の予防・治療に使用する上
記予防・治療剤;該誘導体がデヒドロエピアンドロステ
ロンと酸化合物とによって形成されたエステル化合物で
ある上記予防・治療剤;デヒドロエピアンドロステロン
硫酸である上記予防・治療剤;有効成分がデヒドロエピ
アンドロステロン硫酸ナトリウムである上記予防・治療
剤;経口剤の形態である上記予防・治療剤;非経口剤の
形態である上記予防・治療剤;及び静脈内投与用製剤の
形態である上記予防・治療剤が提供される。
【0007】また、本発明の第二の態様によれば、デヒ
ドロエピアンドロステロン及び/又はデヒドロエピアン
ドロステロン誘導体の生体内濃度、好ましくは血中濃度
を上昇させる物質を有効成分とする不安関連障害の予防
・治療剤が提供される。この発明の好ましい態様によれ
ば、恐慌性障害の予防・治療に使用する上記予防・治療
剤;該誘導体がデヒドロエピアンドロステロンと酸化合
物とによって形成されたエステル化合物である上記予防
・治療剤;および、デヒドロエピアンドロステロン硫酸
の生体内濃度、好ましくは血中濃度を上昇させる物質を
有効成分とする上記予防・治療剤が提供される。
【0008】また本発明は、デヒドロエピアンドロステ
ロン、デヒドロエピアンドロステロン誘導体、及び該誘
導体の生理学的に許容される塩からなる群から選ばれる
有効成分を含む医薬組成物を恐慌性障害の患者に投与す
る工程を含む恐慌性障害の予防・治療方法を提供するも
のである。上記の発明の好ましい態様によれば、該誘導
体がデヒドロエピアンドロステロンと酸化合物とによっ
て形成されたエステル化合物である上記予防・治療方
法;有効成分がデヒドロエピアンドロステロン硫酸であ
る上記予防・治療方法;有効成分がデヒドロエピアンド
ロステロン硫酸ナトリウムである上記予防・治療方法;
経口剤の形態の医薬組成物を投与する工程を含む上記予
防・治療方法;非経口剤の形態の医薬組成物を投与する
工程を含む上記予防・治療方法;および、静脈内投与用
製剤の形態の医薬組成物を投与する工程を含む上記予防
・治療剤が提供される。
【0009】本発明の不安関連障害の予防・治療剤の有
効成分の一つであるデヒドロエピアンドロステロン (de
hydroepiandrosterone: DHEA; 3 β-hydroxy-5-androst
en-17-one )は、副腎皮質由来のステロイドホルモンと
して公知の化学物質である。本発明の予防・治療剤の有
効成分として用いるデヒドロエピアンドロステロン誘導
体としては、例えば、硫酸とのエステルであるデヒドロ
エピアンドロステロン硫酸 (dehydroepiandrosterone s
ulfate: DHEAS)、アルキル硫酸、炭酸、酢酸、クエン
酸、グルクロン酸などの酸化合物とのエステルである化
合物などを挙げることができる。本発明の予防・治療剤
の有効成分としては、デヒドロエピアンドロステロン又
はその誘導体、あるいはその両者を組み合わせて用いて
もよい。デヒドロエピアンドロステロン誘導体を2種以
上を組み合わせて用いてもよい。
【0010】これらの有効成分のうち、デヒドロエピア
ンドロステロン硫酸は本発明の予防・治療剤の有効成分
として好ましい物質である。もっとも、上記に例示した
以外の誘導体も、治療の目的や疾患の種類に応じて当業
者に適宜選択可能であり、本発明の有効成分は上記の例
示化合物あるいはその他の公知の誘導体に限定されるこ
とはない。例えば、それ自体は弱い抗不安関連障害作用
を有するか、あるいは全く抗不安関連障害作用を有しな
い誘導体であっても、生体内で容易に加水分解されてデ
ヒドロエピアンドロステロンあるいは強い不安関連障害
作用を有するその誘導体を与えるデヒドロエピアンドロ
ステロン誘導体は、いわゆるプロドラッグとして好まし
い誘導体である。
【0011】さらに、デヒドロエピアンドロステロン硫
酸など、デヒドロエピアンドロステロンと酸化合物との
エステルである化合物は、使用する酸の性質によりこの
部分で塩基付加塩や酸付加塩を形成できる場合があるの
で、このような誘導体の生理学的に許容される塩を本発
明の予防・治療剤の有効成分として用いてもよい。この
ようなデヒドロエピアンドロステロンのエステル型誘導
体の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、
カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミン塩などの塩
基付加塩や、塩酸塩、硫酸塩等の酸付加塩を例示するこ
とができる。これらのうち、デヒドロエピアンドロステ
ロン硫酸のナトリウム塩 (sodium dehydroepiandroster
one sulfate)は、本発明の予防・治療剤の有効成分とし
て好ましい物質である。さらに、本発明の予防・治療剤
の有効成分としては、上記物質の無水物または任意の水
和物を用いることができる。
【0012】本発明の予防・治療剤には、有効成分であ
る上記の物質をそのまま用いてもよいが、好ましくは、
上記の有効成分に対して製剤用添加物を配合し、医薬組
成物の形態の製剤を製造して投与することが好ましい。
薬理学的、製剤学的に許容しうる製剤用添加物として、
例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑
沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤な
いし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射
剤、及び粘着剤等を用いることができる。経口投与に適
する製剤の例としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散
剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、又はシロップ剤等を挙げる
ことができる。非経口投与に適する製剤としては、例え
ば、注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、又は貼付剤等を挙
げることができる。
【0013】経口投与、あるいは経皮又は経粘膜投与に
適する製剤には、薬理学的、製剤学的に許容しうる添加
物として、例えば、ブドウ糖、乳糖、D-マンニトール、
デンプン、又は結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシ
メチルセルロース、デンプン、又はカルボキシメチルセ
ルロースカルシウム等の崩壊剤又は崩壊補助剤;ヒドロ
キシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセ
ルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチン等の結
合剤;ステアリン酸マグネシウム又はタルク等の滑沢
剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリ
エチレングリコール又は酸化チタン等のコーティング
剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコー
ル、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハ
ードファット等の基剤を用いることができる。また、フ
ロン,ジエチルエーテル、又は圧縮ガス等の噴射剤;ポ
リアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、メチ
ルセルロース、ポリイソブチレン、ポリブテン等の粘着
剤;木綿布又はプラスチックシート等の基布等の製剤用
添加物を用いて製剤を製造してもよい。
【0014】注射あるいは点滴用に適する製剤には、注
射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の水
性あるいは用時溶解型注射剤を構成しうる溶解剤又は溶
解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D-マンニトー
ル、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩
基又は有機塩基等のpH調節剤等の製剤用添加物を添加し
てもよい。
【0015】なお、デヒドロエピアンドロステロン硫酸
は、妊娠末期の子宮頸管の熟化に影響を与えることが認
められており、分娩過程を改善する薬剤としてすでに開
発・市販されている。このような製剤として、例えば、
デヒドロエピアンドロステロン硫酸ナトリウム(一般名
「プラステロン硫酸ナトリウム」: sodium prasterone
sulfate)の製剤が臨床に提供されているので(「マイリ
ス注」:カネボウ薬品株式会社販売)、このような製剤
をそのまま本発明の予防・治療剤として用いることもで
きる。
【0016】本発明の予防・治療剤の投与量は対象とな
る疾患の種類や症状、患者の年齢など種々の条件に応じ
て適宜増減されるべきであるが、一般には、成人一日あ
たり50〜1,000 mg程度、好ましくは 200〜400 mg程度
を、例えば静脈内投与などの非経口投与あるいは経口投
与により患者に投与すればよい。また、症状の改善度を
観察しつつ適宜投与量を増減し、 1〜2 週間投与を継続
することも好ましい。さらに、非経口的に投与する場合
には、例えば、デヒドロエピアンドロステロン硫酸ナト
リウムなどの水溶性の塩の製剤を用いることが好ましい
が、経口的に投与する場合には、デヒドロエピアンドロ
ステロンを用いることが好ましい場合もあるので、投与
経路に応じて適宜使用する有効成分を選択すべきであ
る。
【0017】なお、本発明の予防・治療剤の有効成分
は、本来的に生体内生理活性物質であり、非常に安全性
の高い物質である。例えば、デヒドロエピアンドロステ
ロン硫酸ナトリウムは、上記のとおりすでに医薬品とし
て臨床に供されている物質であり、マウス(雄性)を用
いた急性毒性試験により LD50 値が 10 g 以上(経
口)、899 mg/kg (皮下注)、274 mg/kg (静注)であ
ることが確認されている。
【0018】本発明の第二の態様によれば、デヒドロエ
ピアンドロステロン及び/又はデヒドロエピアンドロス
テロン誘導体の生体内濃度、好ましくは血中濃度を上昇
させる物質を有効成分とする不安関連障害の予防・治療
剤が提供される。いかなる特定の理論に拘泥するわけで
はないが、不安関連障害の患者では、デヒドロエピアン
ドロステロンあるいはその誘導体の血中濃度が減少して
いることが確認されており、本発明の予防・治療剤は、
デヒドロエピアンドロステロンあるいはその誘導体の生
体内濃度を高めることにより、不安関連障害の症状を軽
減ないしは消失させ、あるいは不安関連障害の症状の発
現予防に有効性を示すものである。
【0019】不安関連障害の患者において生体内濃度を
上昇させるべきデヒドロエピアンドロステロンの誘導体
としては、好ましくはデヒドロエピアンドロステロン硫
酸を例示することができる。例えば、デヒドロエピアン
ドロステロン硫酸などの誘導体は、血中においてナトリ
ウム塩などの塩の状態で存在する場合があるが、本発明
において生体内濃度を上昇させるべきデヒドロエピアン
ドロステロンの誘導体は、このような塩の形態であって
も遊離の形態であってもよい。もっとも、一般には、生
体内濃度が上昇したデヒドロエピアンドロステロン誘導
体がいかなる塩を形成しているかは同定が困難である場
合が多いので、本明細書においてデヒドロエピアンドロ
ステロン誘導体の生体内濃度が上昇するとは、当該物質
の遊離又は種々の塩の形態、あるいはそれらの任意の混
合物の生体内濃度、好ましくは血中濃度が上昇すること
であると理解されるべきである。
【0020】本発明の第二の態様の予防・治療剤の有効
成分としては、例えば、上記のデヒドロエピアンドロス
テロン、デヒドロエピアンドロステロン誘導体、及び該
誘導体の生理学的に許容される塩などを用いることがで
き、これらの有効成分は、好ましくは、すでに説明した
製剤の形態で患者に投与することができる。上記の予防
・治療剤の有効成分としては、これらのもの以外に、デ
ヒドロエピアンドロステロンあるいはデヒドロエピアン
ドロステロンと酸化合物とにより形成されるエステル化
合物などの誘導体、好ましくはデヒドロエピアンドロス
テロン硫酸の生体内濃度、好ましくは血中濃度を高める
作用を有するものならば、いかなるものを用いてもよ
い。また、これらの化合物の他に、ある種のペプチドホ
ルモンまたは生理活性ペプチドなどの投与によって生体
内デヒドロエピアンドロステロン濃度を上昇させること
ができるので、このようなペプチド類を投与して不安関
連障害の予防および治療を行うこともできる。
【0021】なお、デヒドロエピアンドロステロンある
いはその誘導体、好ましくはデヒドロエピアンドロステ
ロン硫酸の血中濃度は、例えば、関原らにより開発され
たラジオ・イムノ・アッセイ法 (Sekihara H. et al.,
Steroids, 20, 813, 1972)、あるいはその改良法 (加藤
ら、日内泌誌、49, 323, 1973)により、極めて正確に測
定することができる。本発明の第二の態様に係る予防・
治療剤の投与方法、投与経路は上記第一の態様の場合と
同様であるが、好ましくは、投与に先立って、あるいは
投与期間中及び/または投与終了後に、生体内濃度を上
昇させるべきデヒドロエピアンドロステロンあるいはそ
の誘導体の生体内濃度、好ましくは血中濃度を、上記の
方法によりモニターすべきである。
【0022】本発明の予防・治療剤は、不安関連障害の
予防及び/又は治療に有用である。本発明の予防・治療
剤の対象疾患である不安関連障害としては、恐慌性障害
を例示することができる。この疾患は、従来、不安神経
症の一過性症状として考えられていた不安発作につい
て、新たな定義付けにより独立の疾患として取り扱うよ
うになったものである。この他、恐慌性障害に類似した
疾患である過換気性症候群、不安神経症、発作性心拍症
等も本発明の予防・治療剤の対象疾患である。
【0023】恐慌性障害についてより具体的に説明する
と、この疾患の診断基準は DSM-III(Diagnostic and St
astical Manual of Mental Disorders, American Psych
iatric Association)で定義されたとおり、(1) 以下の
恐怖,不快感の症状が少なくとも4項目以上みられるこ
と:呼吸促進(呼吸困難),息苦しい感じ;めまい感,
ふらつき感;心悸亢進,頻脈;身震い,振戦;発汗;窒
息感;嘔気,腹部の不調;離人感,非現実感;しびれ
感,うずき感(知覚異常);紅潮,冷感;胸痛,胸部不
快感;死への恐怖;発狂恐怖,自制不能恐怖、(2) さら
に、それらの症状が 10 分以内に現れ、その強度が増す
こと、および(3) 発作の出現が1カ月に4回以上おこっ
たか、再発の恐怖心が1カ月以上持続することである。
【0024】患者が上記の不安関連障害に罹患している
か否かは、熟練した医師の診断により、自覚症状、他覚
的症状、及び不安尺度を定量化する心理テスト等の客観
的な指標に基づいて正確に判断することができる。この
ような指標として、ステート−トレイト・アンクザイエ
ティ・インベントリー (State-Trait Anxiety Inventor
y: STAI)に従うスコアーを用いることができる(この方
法の詳細については、「STAI」使用手引、三京房発行、
1991年を参照のこと)。なお、不安関連障害に包含され
る上記の各疾患は、着眼点の相違などにより別の疾患名
(又は診断名)で呼ばれる場合があるが、不安関連障害
の診断基準を実質的に満たすものは、いずれも本発明の
予防・治療剤の対象疾患である。以下、実施例により本
発明をさらに具体的に説明する。
【0025】
【実施例】本発明の治療剤として、デヒドロエピアンド
ロステロン硫酸ナトリウム製剤である「マイリス注」
(カネボウ薬品株式会社:1バイアル中、デヒドロエピ
アンドロステロン硫酸ナトリウム無水物を 100 mg 含
有)を用い、この製剤を点滴投与することにより恐慌性
障害の患者3名の治療を行った。最初の2週間は、デヒ
ドロエピアンドロステロン硫酸ナトリウムを 200 mg ず
つ連日投与し、以後は、デヒドロエピアンドロステロン
硫酸の血中濃度をモニターしながら、投与量を漸減し
た。臨床的効果は、自覚症状、他覚的所見、および STA
I のスコアにて判定した。
【0026】症例1:32歳(女性) 主訴 :動悸、頭痛、めまい、空気飢餓感、嘔気 現病歴:小学生の時より腹痛などの理由で学校を休みが
ちであった。この頃より動悸、嘔気、発汗の発作が著し
くなり、一人で外出することができなくなった。その後
も、同様な不安発作は年に数回みられたが、 18 歳の時
に食中毒を契機に52 kgあった体重が 42 kgになり、再
び増加することなく 30 歳の時には 39 kgまで減少した
ため、外来で受診し、その1カ月後には入院となった。
入院時、体重減少に対しては IVHによる栄養補給を行
い、不安発作に対しては抗不安薬による薬物療法と不安
階層表を用いた行動拡大療法を行った。入院2カ月後に
は一人で院内の売店で買物ができるようになり、退院と
なった。その約1年後、感冒、父親の病気、知人の入院
が重なり、動悸、頭痛、めまい、空気飢餓感、死の恐
怖、嘔気が10分以内に突然誘因なく生じる不安発作が週
に1回ほど生じるようになり、2ヶ月目に入っても症状
の改善がなく、恐慌性障害と診断され入院となった。
【0027】治療と経過:不安発作に対しては抗不安薬
の投与、自律訓練法、不安階層表を作成した行動拡大療
法を再び行った。さらに、血中デヒドロエピアンドロス
テロン硫酸の低値を認めたため、本発明の治療剤を一日
あたり 200 mg の投与量で2週間にわたり連日投与し、
その後、同量を週3回の割合で投与した。投与2週目よ
り不安感は激減し、心理テスト (STAI) でも不安スコア
の著明な低下が認められた。また歩数の増加、行動範囲
の拡大もみられ、投与4週目には一人で院内の売店で買
物ができるようになり、約2カ月後に退院となった。
【0028】症例2:54歳(女性) 主訴 :動悸、ふらつき、冷汗、頸部の苦しさ・しび
れ、空気飢餓感、手のふるえ 現病歴:約9カ月ほど前よりときどき動悸を認めた。そ
の後、姑の干渉、実母の死亡、精神遅滞の息子の入院、
夫の入院が重なり、心労が絶えず動悸症状が次第に増悪
した。その約1カ月後から、前兆なく動悸、ふらつき、
冷汗、頸部の苦しさ・しびれ、空気飢餓感、手のふるえ
の症状が発作的に出現するようになったため、他院外来
で診察を受け循環器を主とする精査を受けたが、異常な
しとされた。約5カ月前に外来受診。抗不安薬による薬
物治療を開始したが、外来治療では症状の改善がなく、
その約3ヶ月後に入院となった。
【0029】治療と経過:血中デヒドロエピアンドロス
テロン硫酸が低下していたので、入院6日目より本発明
の治療剤を1日あたり 200 mg の投与量で2週間にわた
り連日投与し、その後、同量を週3回の割合で投与し
た。投与1週目よりふらつきが軽減し、動悸などの発作
もほぼ消失した。心理テストでも不安スコアの劇的な減
少が認められた。入院時はふらつきが強く壁づたいに歩
行していたが、本発明の治療剤の投与4週後には、単独
で院内を自由に歩行できるまで改善したため、約1カ月
後に退院となった。
【0030】症例3:27歳(女性) 主訴 :動悸、手足のしびれ、窒息感、嘔気、発汗、不
眠、下痢と便秘 現病歴:約2年前に離婚を契機として、動悸、手足のし
びれ、窒息感、嘔気、発汗、不眠、下痢と便秘といった
不安発作が出現。その4ヶ月ほど後に、食欲不振と3カ
月で7 kgの体重減少が出現したため、他院外来で受診し
抗不安薬を処方された。しかし、その後の3ヶ月間に不
安発作のために夜間急病センターを5回受診した。約1
年2ヶ月前に下痢と便秘、不安発作の治療を希望して外
来受診し、漢方薬、止痢剤の投与で経過観察した。約1
年前に可愛がってくれた祖父の死亡を契機に不安発作が
1カ月の間に5回みられた。その後も月1回程度の不安
発作で経過していた。約3カ月ほど前に再婚を契機に不
安発作が1カ月に7回みられた。心理テストで強い不安
傾向がみられたため、約1ヶ月ほど前より外来にて本発
明の治療剤の投与を開始した。 治療と経過:本発明の治療剤の投与中は不安発作の出現
はなく、現在良好に経過中である。心理テストでも不安
スコアの減少が認められている。
【0031】以上のとおり、3症例とも自覚的・他覚的
症状および心理テストにおいて劇的な改善が得られた。
これらの結果より、本発明の予防・治療剤が不安関連障
害の代表的な疾患である恐慌性障害に極めて有効である
ことが明らかである。なお、以下の表1に、症例1〜3
についての血中デヒドロエピアンドロステロン硫酸血中
濃度 (表1中、「DHEAS 」, 単位: ng/ml)、 STAI-特性
不安スコア(表中、「特性」)、及び STAI-状態不安ス
コア(表中、「状態」)を示す。
【0032】
【表1】 ─────────────────────────────────── 検査日 症例1 症例2 症例3 (週) DHEAS 特性 状態 DHEAS 特性 状態 DHEAS 特性 状態 ─────────────────────────────────── -5 - - - 310 - - 1280 - - -3 - - - 320 44 58 - - - -2 - - - - - - 930 66 63 -1 680 - - - - - - - - 0 790 72 68 440 46 34 1130 53 45 1 3130 64 40 1710 33 27 3340 47 30 2 3000 45 30 1770 37 35 2862 43 28 3 1080 46 36 1020 34 26 1865 38 28 4 2530 47 43 490 29 24 1689 36 27 ───────────────────────────────────
【0033】
【発明の効果】本発明により、不安関連障害の予防・治
療剤が提供された。恐慌性障害などの不安関連障害の発
症には、血中のデヒドロエピアンドロステロンまたはそ
の誘導体の濃度低下、あるいはこれらの生理活性物質の
分泌不全が関与していることが強く示唆されるので、本
発明の予防・治療剤は不安関連障害の原因・病態に基づ
いた原因治療および/または予防を可能にするので、極
めて有用な医薬である。

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 デヒドロエピアンドロステロン、デヒド
    ロエピアンドロステロン誘導体、及び該誘導体の生理学
    的に許容される塩からなる群から選ばれる物質を有効成
    分とする不安関連障害の予防・治療剤。
  2. 【請求項2】 恐慌性障害の予防・治療に使用する請求
    項1に記載の予防・治療剤。
  3. 【請求項3】 該誘導体がデヒドロエピアンドロステロ
    ンと酸化合物とによって形成されたエステル化合物であ
    る請求項1または2に記載の予防・治療剤。
  4. 【請求項4】 有効成分がデヒドロエピアンドロステロ
    ン硫酸である請求項1または2に記載の予防・治療剤。
  5. 【請求項5】 有効成分がデヒドロエピアンドロステロ
    ン硫酸ナトリウムである請求項1または2に記載の予防
    ・治療剤。
  6. 【請求項6】 経口剤の形態である請求項1ないし5の
    いずれか1項に記載の予防・治療剤。
  7. 【請求項7】 非経口剤の形態である請求項1ないし5
    のいずれか1項に記載の予防・治療剤。
  8. 【請求項8】 静脈内投与用製剤の形態である請求項7
    記載の予防・治療剤。
  9. 【請求項9】 デヒドロエピアンドロステロン及び/又
    はデヒドロエピアンドロステロン誘導体の生体内濃度を
    上昇させる物質を有効成分とする不安関連障害の予防・
    治療剤。
  10. 【請求項10】 恐慌性障害の予防・治療に使用する請
    求項9に記載の予防・治療剤。
  11. 【請求項11】 該誘導体がデヒドロエピアンドロステ
    ロンと酸化合物とによって形成されたエステル化合物で
    ある請求項9に記載の予防・治療剤。
  12. 【請求項12】 デヒドロエピアンドロステロン硫酸の
    生体内濃度を上昇させる物質を有効成分とする請求項9
    に記載の予防・治療剤。
  13. 【請求項13】 ペプチドホルモンまたは生理活性ペプ
    チドを有効成分とする請求項9に記載の予防・治療剤。
  14. 【請求項14】 デヒドロエピアンドロステロン、デヒ
    ドロエピアンドロステロン誘導体、及び該誘導体の生理
    学的に許容される塩からなる群から選ばれる有効成分を
    含む医薬組成物を恐慌性障害の患者に投与する工程を含
    む恐慌性障害の予防・治療方法。
  15. 【請求項15】 該誘導体がデヒドロエピアンドロステ
    ロンと酸化合物とによって形成されたエステル化合物で
    ある請求項14に記載の予防・治療方法。
  16. 【請求項16】 有効成分がデヒドロエピアンドロステ
    ロン硫酸である請求項14に記載の予防・治療方法。
  17. 【請求項17】 有効成分がデヒドロエピアンドロステ
    ロン硫酸ナトリウムである請求項14に記載の予防・治療
    方法。
  18. 【請求項18】 経口剤の形態の医薬組成物を投与する
    工程を含む請求項14ないし17のいずれか1項に記載の予
    防・治療方法。
  19. 【請求項19】 非経口剤の形態の医薬組成物を投与す
    る工程を含む請求項14ないし17のいずれか1項に記載の
    予防・治療方法。
  20. 【請求項20】 静脈内投与用製剤の形態の医薬組成物
    を投与する工程を含む請求項19に記載の予防・治療剤。
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