JPH08131084A - 麻痺性貝毒の除去方法及びそれに用いる微生物 - Google Patents
麻痺性貝毒の除去方法及びそれに用いる微生物Info
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- JPH08131084A JPH08131084A JP6303208A JP30320894A JPH08131084A JP H08131084 A JPH08131084 A JP H08131084A JP 6303208 A JP6303208 A JP 6303208A JP 30320894 A JP30320894 A JP 30320894A JP H08131084 A JPH08131084 A JP H08131084A
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Abstract
分解能を有するエンテロバクター属に属する微生物菌体
もしくは該微生物菌体含有物、又は該微生物から得られ
る酵素もしくは該酵素含有物を貝類に対して与えること
により、貝類に含まれるゴニオトキシン類及び/又はサ
キシトキシンを分解することを特徴とする麻痺性貝毒の
除去方法。 【効果】 貝の味、肉質、鮮度に影響を与えたり、貝を
死なせることなく、麻痺性貝毒を除去することができ
る。
Description
に関し、更に詳しくは、麻痺性貝毒であるゴニオトキシ
ン類及び/又はサキシトキシンを微生物等を用いて分解
する方法とその微生物に関する。
ている。その背景には、水産物の輸入の増加、沿岸養殖
漁業の発達による漁業形態の変化、消費者の安全意識の
向上等の社会的要因が考えられる。
P:paralytic shellfish poison)は、渦鞭毛藻のAlex
andrium tamarensis、A. catenella、Gymnodinium cate
natum、Pyrodnium bahamense var.compressa. (以下有
毒プランクトンという)等が産生する猛毒で、食物連鎖
によってまず貝類が毒化し、ついでヒトがこれを食べて
中毒を起こす。最近日本では、このPSPによる種々の
貝類の毒化が全国的に発生しており問題となっている。
また、世界的にみてもアジア諸国を初め、北米大陸、北
海沿岸諸国、ボルネオ、パプアニューギニア、南米のヴ
ェネズエラ、チリなどで報告され、PSPの貝類毒化は
増加傾向にある。このPSPの主体は、ゴニオトキシン
類、サキシトキシンと考えられている。
が提案したホタテガイの減毒方法である用水のろ過・オ
ゾン殺菌処理と無毒藻類の投与方法(養殖 Vol.30, N
o.2,P.74-77, (1993))があるが、設備が大型化した
り、処理期間に1〜4週間程度要するなどの問題があっ
た。このPSPは加熱などに対しても安定であり、100
〜120℃で3時間処理(J. Food Sci., VOL.56, No.6,
P.1572-1575 (1991))しても、ある程度しか減毒できな
い。そのうえ貝肉の味・肉質が変化したり、生では食べ
られない等の問題があった。また、ホタテガイなどで
は、一般的にウロと呼ばれる中腸腺を摘出する物理的な
方法も取られているが、毒が水溶性のため作業途中に可
食部が汚染を受けるなど、必ずしも安全な方法ではなか
った。このようにPSPを除去する方法は非常に困難で
あり、十分な方法がないのが現状である。
は、貝の味、肉質、鮮度に影響を与えるような過激な処
理をすることなく、かつ貝を死なせることなくPSPを
食用可能な規制値(出荷の自主の規制値:4マウスユニ
ット(MU);1MUは、体重20gのマウスを15分間で
死亡させる毒量と定義され、約0.2μgのサキシトキシ
ン様物質に相当する。(昭和53年水研第963号水産庁長
官通達))以下にする穏和な貝毒除去方法を提供するこ
とである。
の結果、本発明者は、エンテロバクター属に属する微生
物のうち、麻痺性貝毒であるゴニオトキシン類及び/又
はサキシトキシンを分解するものがあること、及び該微
生物又は該微生物から得られる酵素を貝類に対して与え
ることにより、麻痺性貝毒を除去できることを見出し、
本発明を完成した。
又はサキシトキシン分解能を有するエンテロバクター属
に属する微生物菌体もしくは該微生物菌体含有物、又は
該微生物から得られる酵素もしくは該酵素含有物を貝類
に対して与えることにより、貝類に含まれるゴニオトキ
シン類及び/又はサキシトキシンを分解することを特徴
とする麻痺性貝毒の除去方法である。また、本発明は、
ゴニオトキシン類及び/又はサキシトキシン分解能を有
するエンテロバクター・クロアカエである。以下、本発
明を詳細に説明する。
キシンが主に知られている。本発明者は、PSPを分解
する酵素を生産する微生物を捜すため、PSPで毒化し
た貝、たとえばホタテガイと同一の海域に棲息し、かつ
同様の食餌性(好餌性)を有して有毒プランクトンを補
食するにもかかわらず毒化しない魚類、たとえば北海道
噴火湾沿岸に棲息するアイナメ(Hexagrammos otakii)
の消化管から、PSPと炭素源及び窒素源とを含む培地
で増殖する貝毒分解微生物を分離した。
その結果蓄積されるPSPが分解を受けていると思われ
る魚の消化管を菌の起源とし、分離培地としてYPGN
培地(脱イオン水1リットル中に、酵母エキス2.5g、
ペプトン5g、グルコース1g及び塩化ナトリウム30g
を含み、固形培地の場合はさらに寒天15gを含む。pH
は5.5である。)に、実施例1に記載した方法で調製し
たPSP粗精製画分を容量比で10%添加したものを用
い、PSPと炭素源及び窒素源とを含む培地で生育でき
る微生物のみを検索した。培養温度としては、魚の体
温、棲息海域の水温に近い23℃付近とし、この温度で分
離した。
類及び/又はサキシトキシン、更に好ましくはゴニオト
キシン−2、ゴニオトキシン−3を分解する酵素を有
し、表1、表2、表3、表4及び図1の顕微鏡写真に示
すような微生物学的性状を有する。
P分解能を有する微生物(以下、PSP分解菌という)
の分類学的地位をバージェイズ・マニュアル・オブ・シ
ステマティック・バクテテリオロジー(Bergey's Manua
l of Systematic Bacteriology Volume 1 (1989))の記
載と分類項目を参照したところ、エンテロバクター・ク
ロアカエ(Enterobacter cloacae)に属する新菌株と同
定し、エンテロバクター・クロアカエ 1029株と命
名した。なお、本菌は平成6年11月8日に日本国茨城県
つくば市の工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM B
P-4877として寄託されている。
培養は、YPGN培地やPSP粗精製画分を含む滅菌海
水などを用いて、23℃程度で行うことができる。特に好
ましくは、既報(日本農芸化学会誌 Vol.65, No.12,
P.1753-1760, (1991)、食品衛生学雑誌 Vol.33, No.3,
P.223-230, (1992) )及び田沢らによって報告された
方法(北海道衛生研究所報告書 Vol.38, P.60-62, (19
88) )を以下のように改変して培養する。すなわち、毒
化した試料ホタテガイの中腸腺約20gに20mlの0.1N塩
酸を加え、テフロンホモジナイザーにて室温で3分間ホ
モジナイズした後、沸騰湯上で熱抽出する。抽出液をワ
ットマンNo.1ろ紙でろ過し、得られたPSP粗画分
を上記培地に容量比で10%程度添加するのが特に好まし
い。
シン、更に好ましくはゴニオトキシン−2及び/又はゴ
ニオトキシン−3を除去する方法としては、毒化した貝
が生育する海域、又は貝を養殖する海域や蓄養池、養殖
用水槽等において、上記のように培養したPSP分解菌
の生菌や、該PSP分解菌の菌体含有物、あるいはPS
P分解菌から分離精製したPSP分解酵素、該酵素含有
物などを単独で又は組み合わせて給餌させたり、賦形剤
や無毒プランクトン等と混合して投与し、捕食させる方
法等が挙げられる。
2トンをはり、その中に、毒化した平均貝長15±2cm、
平均貝重150±50g、中腸腺中のPSP量が約300MUの
ホタテガイ400枚を入れ、その中に本PSP分解菌を乾
燥重量として約15〜20g程度添加し、12〜60時間程度培
養する。菌体含有物としては、PSP分解生菌、PSP
分解生菌と動・植物プランクトン等との混在物、菌体破
砕物等が挙げられる。
て行えばよく、例えば、菌体破砕液をそのまま、特に好
ましくは硫酸アンモニウムを添加して0〜40%飽和画分
とすればよい。
酵素とともに使用する。補酵素としては、ジチオスレイ
トール(DTT)、還元型ニコチンアミドアデニンジヌ
クレオチド(NADH)、還元型ニコチンアミドアデニ
ンジヌクレオチドリン酸塩(NADPH)、フラビンア
デニンジヌクレオチド(FAD)、フラビンモノヌクレ
オチド(FMN)等が挙げられ、それらの中でも特にD
TTを含めて用いるのが好ましい。
イソウ土等であればよく、特に限定されない。また、混
合投与に用いる無毒プランクトンとしては、例えば、カ
エトセロス属、スケレトネマ属、タラシオシラ属等の珪
藻類に属する植物プランクトンや、ユーグレナ属等の緑
藻類に属する動物(植物)プランクトン等が挙げられ
る。これら無毒プランクトンとPSP分解菌との混合比
率は、特に限定されないが1:1〜1:5程度が好まし
い。混合方法としては、PSP分解菌と無毒プランクト
ンを別々に培養した後混合する方法がある。以上のよう
な方法により、北海道噴火湾のホタテガイに夏場発生す
るPSPの最高値300MU付近のものを、自主規制値で
ある4MU以下に減毒、又は除去できた。
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。
齢ホタテガイ(Patinopecten yessoensis 、平均貝長:
96±11mm、平均重量:98±16g)をPSP抽出のための試
料貝として用いた。これらはいずれもマウス致死法(Sch
antz, J., McFarren, F., Schafer, C., and Lewis, H:
J. Assoc. Off. Chem., No.41, p.160-172, (1958))に
よる定量で規定値を越える毒性値が検出されたもので、
この毒化した貝からのPSP粗画分(ゴニオトキシン
類、サキシトキシン及びその他のPSP成分の混合画
分)の抽出は、既報(日本農芸化学会誌 Vol.65, No.1
2, P.1753-1760, (1991)、食品衛生学雑誌 Vol.33, N
o.3, P.223-230, (1992) )及び田沢らによって報告さ
れた方法(北海道衛生研究所報告書 Vol.38, P.60-62,
(1988) )を以下のように改変して行った。
に20mlの0.1N塩酸を加え、テフロンホモジナイザーに
て室温で3分間ホモジナイズした後、沸騰湯上で熱抽出
した。抽出液をワットマンNo.1ろ紙及びSep-PackC
18(Waters社製)でろ過後、さらに限外ろ過(ろ過膜:
UT3TGC、ミリポア社製)してPSP粗画分とした。
びサキシトキシンの検出と同定は、既報(日本農芸化学
会誌 Vol.65, No.12, P.1753-1760, (1991)、食品衛生
学雑誌 Vol.33, No.3, P.223-230, (1992) など)に従
って薄層クロマトグラフィー及びろ紙電気泳動によって
行った。PSPの定量は、安元と大島による高速液体ク
ロマトグラフィー法(Kotaki Y.,Oshima, Y.,and Yasum
oto, T.:Bull. Jpn. Soc. Sci. Fish.,Vol.51, No.6,
p.1009-1013 (1985) 、安元 健「化学と生物」Vol.27,
No.6, P.401-406 (1992))を以下のように改変して行
った。
カラム(4.6×250mm)に負荷し、ゴニオトキシン類につ
いては1−ヘプタスルホン酸ナトリウム2mMを含む10mM
リン酸アンモニウム溶液(pH7.2)を移動層として溶
出し、またサキシトキシンについてはこの移動層にアセ
トニトリルを容量比で10%添加した溶液で溶出した。
mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)で標識し、0.5M
酢酸で中和した後、励起波長330nm、発光波長390nmで各
PSP成分を検出し、そのピーク高さからゴニオトキシ
ン類及びサキシトキシンを定量した。なお、サキシトキ
シン標準品は米国食品医薬品局(F.D.A)のS.H
all博士から譲渡されたものを使用し、ゴニオトキシ
ン標準品は東北大学農学部大島康克博士から譲渡された
ものを使用した。
ニオトキシン−2が約150MU及びゴニオトキシン−3
が約50MUの粗画分得られた。
ナメ(Hexagrammos otakii)から摘出した消化管約20g
に30mlの滅菌海水を加え、ブレンダーミルによって室温
で5分間ホモジナイズした後、3,000r.p.m. で10分間遠
心分離した。上清液をYPGN培地(脱イオン水1リッ
トル中に、酵母エキス2.5g、ペプトン5g、グルコー
ス1g及び塩化ナトリウム30gを含み、固形培地の場合
はさらに寒天15gを含む。pHは5.5である。)で希釈
し、常法に従って固形YPGN培地表面に分散接種し
た。23℃で一夜培養して出現するコロニーのそれぞれを
YPGN培地に釣菌接種し、再度23℃で一夜培養した。
これら分離微生物のそれぞれを、上記で得られた約200
MUのPSP粗画分を含む10mlの滅菌海水に接種し、23
℃で振盪培養した。微生物の増殖を波長590nmにおける
比濁度にて測定し、貝毒を含む栄養源として良好に生育
する微生物1株を得た。
除去方法]
スコに100ml入れ、綿栓後、オートクレーブにて121℃で
20分殺菌した。PSP粗画分はオートクレーブにて110
℃で15分間別殺菌後、上記培地に混ぜた。本培地に、別
の斜面培地においてあらかじめ培養したPSP分解菌を
1白金耳接種し、23℃にて24時間培養した。得られた培
養液を3,000r.p.m.で30分遠心分離し、上澄みを廃棄
後、pH5.5の10mM酢酸緩衝液で撹拌洗浄し、さらに10,
000r.p.m.で20分間遠心分離し、この操作を2回繰り返
しPSP分解菌を得た。
緩衝液20mlに懸濁し、この懸濁液とともに、毒化したホ
タテガイ(平均貝長及び平均貝重は同前)6枚を、海水
30リットルを満たした水槽(大きさ37×25×50cm、容量
約38リットル)中で蓄養した。水温は14℃に維持しなが
ら、菌液浸漬により6時間、その後普通海水により18時
間処理した。同様の処理を3日間続けた(添加区)。ま
た、菌体を加えない以外、同様にしてホタテガイ6枚を
蓄養した(無添加区)。
経過後に添加区及び無添加区のホタテガイ各2枚を取り
出し、各ホタテガイの中腸腺約10gに10mlの0.1N塩酸
を加え、テフロンホモジナイザーにて室温で3分間ホモ
ジナイズした後、沸騰湯上で熱抽出した。抽出液をワッ
トマンNo.1ろ紙及びSep-PackC18(Waters社製)で
ろ過後、さらに限外ろ過(ろ過膜:UT3TGC、ミリポア社
製)して分析用サンプルとした。PSPの定量は、実施
例1と同様の方法で行った。結果を図2に示す。図2か
ら明らかなように、PSP分解菌体添加区のホタテガイ
は、無添加区に比べてPSP量が著しく低下し、出荷規
制値4MU以下となった。
分のPSP除去方法]試験管内での前記の方法で得たP
SP生菌体のPSP画分に対する効果について検討し
た。23℃で好気的に反応させた後、残存する各毒性成分
を高速液体クロマトグラフィーで定量した。結果を図3
に示す。
ニオトキシン類の高さはいずれも反応時間の経過に伴な
って減少し、特に我国における養殖ホタテガイの主要貝
毒性成分であるゴニオトキシン−2のピークは反応開始
後16時間で完全消失した。また、ゴニオトキシン−2の
異性体であるゴニオトキシン−3のピーク高さの減少は
ゴニオトキシン−2のピーク高さの減少に遅れ、ゴニオ
トキシン−3のピークが完全に消失するためには24時間
以上の反応が必要であった。更に、反応時間の経過に伴
ってサキシトキシンの毒性値は10MUから3MUに減少
した。
SP除去方法]前記の方法で得たPSP分解生菌体1.8
gをpH5.5の10mM酢酸緩衝液約20mlに懸濁し、毒化し
たホタテガイ(同前)6枚から摘出した中腸腺6個(平
均重量約10g)に、濾過海水(水温14℃)500ml中で8
時間作用させた。その後、中腸腺約10gに10mlの0.1N
の塩酸を加え、テフロンホモジナイザーにより室温下で
3分間ホモジナイズした後、沸騰湯上で熱抽出した。抽
出液をワットマンNo.1ろ紙及びSep-PackC18(Wate
rs社製)でろ過後、さらに限外ろ過(ろ過膜:UT3TGC、
ミリポア社製)して分析用サンプルとした。PSPの定
量は、実施例1と同様の方法で行った。結果を図4に示
す。
後、中腸腺中のゴニオトキシン類(特にゴニオトキシン
−2及びゴニオトキシン−3)が分解されている。よっ
て、本発明のPSP分解菌は、貝に捕食されてPSPの
蓄積されている中腸腺に進入しなくても、直接中腸腺な
どの組織内に進入し、PSPを分解できることがわかっ
た。
ン−2の分解反応]北海道噴火湾沿岸で採取した2年齢
ホタテガイ(Patinopecten yessoensis 、平均貝長:96
±11mm、平均重量:98±16g)をPSP抽出のための試料
貝として用いた。これらはいずれもマウス致死法(Schan
tz, J.,McFarren, F.,Schafer, C.,and Lewis, H:J. As
soc. Off. Chem., 41, 160-172) による定量で規定値を
越える毒性値が検出されたもので、この毒化した貝から
のPSP粗画分(ゴニオトキシン類、サキシトキシン及
びその他のPSP成分の混合画分)の抽出と、この画分
からのゴニオトキシン−2の部分精製は、既報(日本農
芸化学会誌 Vol.65, No.12, P.1753-1760, (1991)、食
品衛生学雑誌 Vol.33, No.3, P.223-230, (1992) )及
び田沢らによって報告された方法(北海道衛生研究所報
告書 No.38,P.60-62, (1988))を以下のように改変し
て行った。
20mlの0.1N塩酸を加え、テフロンホモジナイザーにて
室温で3分間ホモジナイズした後、沸騰湯上で熱抽出し
た。抽出液をワットマンNo.1ろ紙及びSep-PackC18
(Waters社製)でろ過後、さらに限外ろ過(ろ過膜:UT
3TGC、ミリポア社)してPSP粗画分とした。
50cm)に負荷し、脱イオン水で洗浄した後、0.03M酢酸
で溶出される画分を集めて濃縮した。その後これをBio-
Rex70カラム(H+型、1.7×16cm)に負荷し、脱イオン
水で洗浄した後、0.03M酢酸で溶出された画分を集めて
これをゴニオトキシン−2部分精製画分とした。
施例2に記載した方法に従って反応を行い、反応生成物
の検討を行った。反応生成物の検出は、コンウェイ微量
拡散法(Kikuchi,S. and Ishimoto, M. :Zeitshrift fu
r Allgemeine MikrobiologieNo.20, p.405-413 (198
0))によって行った。結果を図5に示す。図5より、ゴ
ニオトキシン−2の減少量に比例して生成するアンモニ
ア量が増加していることから、ゴニオトキシン−2のア
ンモニアの遊離を伴う分解経路が推定される。
Pの除去方法]実施例1の方法にて得られたPSP分解
生菌体を、DTTを含む50mMリン酸緩衝液(pH6.8)
に懸濁した後、超音波によって破砕した。その後、10,0
00r.p.mで20分間遠心分離し、常法に従い上清液(粗酵
素画分)を得た。この粗画分を部分精製するために、常
法に従って硫安分画を行い、I:0〜40%、II:40〜70
%、III :70〜90%、IV:90%の4分画を得た。各分画
に対し、補酵素としてA:DTT(Dithiothreitol)を
1mM、B:NADH(Redused Nicotinamide adenine d
inucleotide)を100μM、C:NADPH(Redused Ni
cotinamide adenine dinucleotide phsphate)を100μ
M、D:FAD(Flavin adenine dinucleotide)及び
FMN(Flavine mononucleotide)をそれぞれ20μM添
加した。これを約200MUのPSP粗画分とともに1時
間反応させ、各補酵素の影響を調べた。硫安分画Iの結
果を表6に示す。
PSPを分解するにはDTTが必須であることが分かっ
た。更に、その他の補酵素を加えると分解が促進され
た。次に、各硫安画分におけるゴニオトキシン−2の分
解活性について調べた。各硫安画分にDTTを1mM添加
し、実施例2において部分精製したゴニオトキシン−2
を基質として反応させた。実施例1と同様にして高速ク
ロマトグラフィーにより反応後に残存するゴニオトキシ
ン−2量を定量した。結果を図6に示す。
オトキシン−2はほとんど分解されておらず、酵素活性
が見られない。これに対し、画分I及び画分IIではゴニ
オトキシン−2の残量が少なく、酵素の主体が画分I及
び画分IIに分画されていることが分かる。
よるホタテガイ生体のPSP除去方法]実施例1の方法
で得られたPSP分解生菌体を、1010個/ml(乾燥重量
約1.7g)の濃度になるように10mMの酢酸緩衝液300ml
(pH5.5)に懸濁した。一方、カエトセロス属、スケ
レトネマ属及びタラシオシラ属の珪藻類に属するプラン
クトン、並びにユーグレナ属の緑藻類に属するプランク
トンの生菌体を108個/ml(乾燥重量約2g)の濃度に
なるように同緩衝液300mlに懸濁した。
に、毒化したホタテガイ(平均貝長及び平均貝重は同
前)6枚を、海水30リットルを満たした水槽(同前)中
で蓄養した。水温は14℃に維持しながら、菌液浸漬によ
り6時間、その後普通海水により18時間処理した。同様
の処理を3日間続けた。
経過後にホタテガイ各2枚を取り出し、各ホタテガイの
中腸腺約10gに10mlの0.1N塩酸を加え、テフロンホモ
ジナイザーにて室温で3分間ホモジナイズした後、沸騰
湯上で熱抽出した。抽出液をワットマンNo.1ろ紙及
びSep-PackC18(Waters社製)でろ過後、さらに限外ろ
過(ろ過膜:UT3TGC、ミリポア社)して分析用サンプル
とした。PSPの定量は実施例1と同様にして行った。
結果を図7に示す。なお、各実施例に示したように、P
SPを出荷規制値に以下にまで減毒あるいは除去するこ
とが可能であり、かつホタテガイの味と肉質における品
質の劣化もなかった。
影響を与えたり、貝を死なせることなく、麻痺性貝毒を
除去することができる。
1029を示す顕微鏡写真である。
Pの量の経時変化を示すグラフである。
ィーで定量した結果を示すグラフである。
ィーで定量した結果を示すグラフである。
量を示すグラフである。
を示すグラフである。
の反応における、各反応時間でのPSP相対残存量を示
すグラフである。
Claims (8)
- 【請求項1】 ゴニオトキシン類及び/又はサキシトキ
シン分解能を有するエンテロバクター属に属する微生物
菌体もしくは該微生物菌体含有物、又は該微生物から得
られる酵素もしくは該酵素含有物を貝類に対して与える
ことにより、貝類に含まれるゴニオトキシン類及び/又
はサキシトキシンを分解することを特徴とする麻痺性貝
毒の除去方法。 - 【請求項2】 エンテロバクター属に属する微生物がエ
ンテロバクター・クロアカエである請求項1記載の麻痺
性貝毒の除去方法。 - 【請求項3】 エンテロバクター属に属する微生物がエ
ンテロバクター・クロアカエ 1029株である請求項
1記載の麻痺性貝毒の除去方法。 - 【請求項4】 ゴニオトキシン類及び/又はサキシトキ
シンを生体蓄積する貝がホタテガイである請求項1記載
の麻痺性貝毒の除去方法。 - 【請求項5】 ゴニオトキシン類及び/又はサキシトキ
シン分解能を有するエンテロバクター属に属する微生物
菌体もしくは該微生物菌体含有物、又は該微生物から得
られる酵素もしくは該酵素含有物を、動物及び/又は植
物プランクトンに混合して貝類に捕食させることによ
り、貝類に含まれるゴニオトキシン類及び/又はサキシ
トキシンを分解することを特徴とする麻痺性貝毒の除去
方法。 - 【請求項6】 蓄養池内にて捕食させることを特徴とす
る請求項5記載の麻痺性貝毒の除去方法。 - 【請求項7】 ゴニオトキシン類及び/又はサキシトキ
シン分解能を有するエンテロバクター・クロアカエ。 - 【請求項8】 ゴニオトキシン類及び/又はサキシトキ
シン分解能を有するエンテロバクター・クロアカエ 1
029株。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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