JP3637353B2 - 海藻デトライタス飼料及びその製造法 - Google Patents

海藻デトライタス飼料及びその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物プランクトン又はデトライタスを餌料として利用する二枚貝類(アコヤガイ、アサリ、ホタテガイ、カキなど)、動物性プランクトン類(アルテミア、シオミズツボワムシ、コペポーダなど)、魚類仔魚等の水産動物(以下、これらを魚介類ということがある)に用いる飼料及びその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二枚貝類は、海水中に存在する珪藻類などの植物プランクトンやデトライタスと呼ばれる生物の遺骸や糞に由来する懸濁粒子を捕食しており、養殖にあたっては、植物プランクトンを培養して投与するか、或いはネットに収容した貝を海水中に垂下し、天然海水中の植物プランクトンや懸濁物を捕食させているのが現状である。
しかしながら、植物プランクトンの培養は、照明設備、水温調節設備、人手等に多大のコストがかかる。一方、天然海水中に垂下して行うアコヤガイやカキ等の二枚貝類の養殖においては、餌料密度、海水温度等が自然任せになるため、成長速度や生残率が不安定になることが避けられない。これらの問題が、二枚貝の種苗生産・養殖の規模拡大にとっての大きな障壁となっている。そこで、安価で、安定供給できる人工プランクトン餌飼料あるいは、人工デトライタス餌飼料の開発が求められている。
【0003】
一方、雑食性コペポーダ等の動物プランクトンやウナギなど口径の比較的小さな魚類仔魚の一部は、天然で利用している餌料が、未解明ながらも、直径10μm 程度のデトライタス粒子を捕食している可能性が高いとされている。そこで、半消化の状態にある天然デトライタスの性状を模した人工飼料を開発することにより、これらの水産動物の養殖あるいは培養が実現することが期待される。しかし、これまでに直径10μm 程度で安定供給できるという条件を満たすデトライタス餌飼料が開発された例は極めて少なく、海藻を原料とするデトライタス餌飼料としては、本発明者の知る限り特開平8-140588号公報における微小海藻粒子及び本発明者らが特許第 2772772号で発明した海藻デトライタスの2例だけである。このうち前者の例においては、海藻をただ物理的に破砕するだけにより粒径10μm 以下の海藻粒子を得ているので、セルロースの破片等消化の悪い微小な粒子が多数混入することが避けられず、これを飼料として用いた場合、水質の悪化をもたらすという欠点を有する。
【0004】
一方、後者の例において、本発明者らは、アルテロモナス属の細菌を利用して海藻を好気的に分解し、均一な粒子サイズを有する単細胞性のデトライタス粒子(Single cell detritus ; 以下、SCDと呼称する) に変換して餌料として利用するという新しい餌飼料開発の方向を開拓したが、実用化に向けては、さらに、1) SCD粒子の生成効率の向上、2)餌料価値の減耗の抑制 (すなわち、保存性の改良) 、3)餌料調製の目的に使用している海藻分解細菌を環境中に放出した場合の安全性の確認という3つの問題を解決することが求められている。
【0005】
一方、本発明のもう一つの重要な内容である海藻を発酵させるということに関しては、類似の技術として、これまで海藻酒、海藻酢、あるいは海藻飲料という技術が既に特許出願されている。しかし、これらはいずれも目的が、食品利用ということで本発明と大きく異なる。また、従来の技術では、海藻の発酵に使用する微生物として、Saccharomyces cervisiae等の、既に陸上の発酵技術で普遍的に用いられている種を使用しているにすぎない。一方、本発明を完成するためには、海藻の発酵を安定的におこさせることができるスターターとして最も適している微生物群を検索し、見出すことが必要である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、培養に多大なコストがかかり不安定な植物プランクトン餌料に代わり、安価で安定供給できる直径5〜10μm 前後のデトライタス餌飼料とその製造法を提供することにある。また、既に報告された海藻デトライタス餌飼料と異なり、1)単細胞性の粒子の生成効率 (すなわち、粒子数と粒度) と、2)飼料価値の保存性を改良し、3)安全性という3つの課題を解決した海藻デトライタス餌飼料とその製造法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、海藻をセルラーゼを主成分とする糖質分解酵素製剤(以下、糖質分解酵素という)により単細胞化し、しかる後に乳酸菌及び/又は酵母を利用して発酵させることにより調製した単細胞性の海藻デトライタス粒子が、二枚貝類等の植物プランクトン及びデトライタスを捕食する水産動物に対して充分な栄養的価値を有し、保存性も良好であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、海藻類を糖質分解酵素により分解し、単細胞性の粒子に変換するとともに、乳酸菌及び/又は酵母により発酵させることを特徴とする、魚介類等用飼料として利用できる海藻デトライタスの製造方法である。
また本発明は、海藻類を糖質分解酵素により分解し、単細胞性の粒子に変換するとともに、乳酸菌及び/又は酵母により発酵させることにより得られる粒径5.8 〜11.5μm のデトライタス粒子を有効成分とする魚介類用海藻デトライタス飼料である。
なお、本発明における飼料は、二枚貝殻、動物プランクトン、魚類仔魚、その他の水産動物の生きていないえさを意味する。また餌料は生きているえさを意味する。また海藻類を糖質分解酵素により分解し、単細胞性の粒子に変換するとともに、乳酸菌及び/又は酵母により発酵させるとは、糖類分解酵素による分解と、乳酸菌及び/又は酵母による発酵とを同時に行うことばかりでなく、まず、糖類分解酵素による分解を行い、その後乳酸菌及び/又は酵母による発酵を行うことも含めるものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明では、第一段階として、海藻類を糖質分解酵素により分解して、単細胞性の粒子に変化(すなわち、単細胞化)する。本発明に使用する海藻類としては、アオサなどの緑藻類、アマノリなどの紅藻類、ワカメ、マコンブなどの褐藻類が挙げられ、これから選択される1種以上を適宜使用することができる。これらの海藻類は生あるいは乾燥粉末の形態で用いるとができる。上記海藻類の中でも、SCD粒子の生成効率、原料の大量調達の容易さの面から、特にワカメ、アオサを用いるのが好ましい。
【0009】
本発明で使用する糖質分解酵素としては、セルラーゼ、アルギン酸分解酵素、アガラーゼ、キシラナーゼ、細菌由来各種ヘミセルラーゼ、アワビアセトンパウダーなど海藻に含有される多糖を分解しうる諸酵素群の中から1種以上を選択して使用することができるが、多糖分解後に発酵の基質として利用されうる糖質が生成されている必要があるということと、コストの面から、特にセルラーゼを単独あるいは主成分として使用することが好ましい。
【0010】
海藻を単細胞化する過程で使用する酵素の濃度は、高いほど効率が良いが、コストの面から 3.0W/V%(以下、W/V%を%と示す)以下の濃度で用いるのが現実的である。セルラーゼを単独使用する場合、SCD粒子を24時間以内という短時間のうちに得るには0.25〜1%程度、12日という中期間で得るには 0.1〜0.5 %程度の濃度で使用するのが最も好ましい。さらにここで得られる餌料を使用して生物を循環型の水槽で飼育する場合、含有するセルラーゼは、飼育水のアンモニアおよび亜硝酸濃度を高め、水質の悪化につながるので、できるだけセルラーゼ濃度を下げて 0.01 〜0.1 %で使用することが好ましい。
【0011】
海藻を単細胞化する過程での反応温度は、5〜50℃の範囲で効率に大差なく使用できるのでコストの面から、調温設備を必要としない室温で実施するのが好ましい。ただし、セルラーゼ濃度が、0.01〜0.1 %程度の低い場合や後述の塩分濃度が 3.5%未満の低塩分条件下で反応を行う場合、最初に5℃程度の低温下で2日〜2週間程度前培養を行い、発酵基質となる糖質を充分生成させた後に、スターター微生物を多めに入れて、室温下で通常の発酵処理を行うなど腐敗を避けるための工夫をすることが好ましい。
【0012】
海藻を単細胞化する過程での海藻基質の濃度は、高い濃度て調製するほどコストの面から有利である。海藻粉末を原料として使用する場合、最大で10%乾燥重量濃度までなら使用することができる。このとき試料は、ペースト状の強い粘性を有するため、取り扱いに不便を感じる場合は、5 %濃度で調製するのが最も好ましい。
【0013】
海藻を単細胞化する過程において塩分濃度は、0〜10%の範囲で使用することができるが、塩分濃度が 5%を越えると浸透圧の影響で海藻粒子内部の水分が奪われ、海藻固形分と液層の分離が著しく、好ましくない。一方、塩分濃度が 1%以下の場合には、海藻を水溶液に対して懸濁させにくくダマになり易いという不都合を生じる。さらに陸生の菌および海洋性の菌による腐敗を避け、微生物相をコントロールするという効果を考慮して、海水中の塩分濃度より少し高めの 3.5〜5%の濃度に設定するのが最も好ましい。
【0014】
続いて、本発明の第二番目の重要な内容であるSCD化された海藻を発酵させる過程について説明する。本発明での海藻の発酵は、第一段階の糖質分解酵素による分解の結果生じたグルコース等を基質として利用し、嫌気的もしくは微好気的条件下で、乳酸菌及び/又は酵母のはたらきで行われる。本発明では、海藻を発酵させる目的に適した微生物を得るため、鋭意努力し、その結果、幅広い種類の海藻に対して発酵を起こさせることができる微生物群を独自に分離することに成功し、海藻発酵スターターとして完成させた。すなわち、海藻発酵スターターは、以下の過程を経て開発された。
【0015】
まず、本発明者の研究室においてセルラーゼ処理してSCD化したアオサをペットボトルで密封した条件下で1年5ヶ月間、2℃に放置した試料が、発酵臭を発する発酵状態になったことを見出した。この発酵したアオサ試料を新しいアオサ試料にセルラーゼとともに、1%程度の量として植え継ぐと、新たにアオサ試料を発酵状態に誘導できることが観察された。その後さらに約1年間にわたり詳細に、解析をすすめ、塩濃度5%、セルラーゼ濃度1%という条件下において発酵試料を1%接種し、20℃で1週間培養すれば、数ヶ月ごとの植え継ぎでも、海藻を発酵させるスターターとしての能力を保持したままで試料が維持できることがわかった。そこで、この発酵状態にあるアオサ試料より、アオサを発酵させる能力を有する微生物群を得ることとした。継体されたアオサ試料中の微生物相を直接計数法、寒天平板法により詳細に解析し、蛍光顕微鏡による直接計数法からの結果とも照らし合わした結果、この試料中には、1種類の乳酸菌、2種類の酵母、3種類の糸状菌が優占しており、植え継ぎ前後で安定的に菌相が維持されていることが判明した。
【0016】
これらのうち、糸状菌は一般に糖質分解酵素の活性が強く、発酵の基質となる糖の生成段階で有用であるが、本発明の場合には、市販の糖質分解酵素を利用しているので、特に糸状菌を使用する必要はないと判断し、乳酸菌1種類(すなわち、 NRIFS B5201株)と酵母2種類(すなわち、 NRIFS Y5201株及びNRIFS Y5206 株)の合計3種類を分離して発酵スターターとして利用した。これら3種類の微生物の混合体を、新たな海藻試料に対してセルラーゼとともに少量接種したところ、アオサのみならずワカメ、マコンブ等幅広い種類の海藻を発酵状態に誘導するためのスターターとして利用できることが判明した。なお、ここでいう発酵状態とは、海藻試料を、水溶液に懸濁した状態で、20℃下に1週間以上放置しても、腐敗臭が発生しないばかりでなく、フルーティーなエステル様の臭気が発生した状態に誘導されることを意味する。またこのとき試料の上清画分中に、乳酸もしくはエチルアルコールが生成されているという特徴を有する。
【0017】
ここで得られた微生物を Burgey's Manual of Saystematic Bacteriology (N.R. krieg and J.G. Holt, Wiliams & Wilkins 1984) 及び The Yeast 4th edition (Kurtzman, C.P.and Fell, J.W.,Elsevier Science B.V.,1998)に従い同定した結果、乳酸菌 NRIFS B5201株は表1のとおり Lactobacillus brevis、酵母 NRIFS Y5201株及び酵母NRIFS Y5206 株は、表2及び表3のとおり、Debaryomyces hansenii及びCandida zeylanoides であると同定された。
【0018】
【表1】
Figure 0003637353
【0019】
【表2】
Figure 0003637353
【0020】
【表3】
Figure 0003637353
【0021】
以上のような性状を有する3菌株は、前記のように Lactobacillus brevis NRIFS B5201、Debaryomyces hansenii NRIFS Y5201及び Candida zeylanoides NRIFS Y5206 命名され、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号 FERM BP-7301 FERM BP-7302 FERM BP-7303 として寄託されている。
【0022】
本発明で海藻を発酵させる過程で使用する微生物は、Lactobacillus 属の乳酸菌、Debaryomyces属及びCandida 属の酵母からなる1群から選択される1種類以上の微生物を用いることができるが、安定的に乳酸発酵おこし、雑菌の増殖を抑制するとともに発酵物の臭気を改善するという面から、乳酸菌と酵母を同時に使用することが望ましい。特に動物に対する病原性が知られておらず、海藻由来の雑菌を良く抑制することが実験的に確かめられている Lactobacillus brevisDebaryomyces hansenii 及びCandida zeylanoides 、の3種類を同時に添加することが有効である。乳酸菌及び酵母は、海藻を分解する能力が弱く、特許第2772772 号で使用されているアルチロモナス属及びシュードアルテロモナス属のような強力な高分子分解能をもつ菌種を使用して環境に放出する場合に比べ、ノリなどの有用海藻に悪影響を与える危険が小さい。
使用する微生物の接種量としては、少量接種するだけで充分であるが、菌体の懸濁液を濁度OD(660nm) =1の濃度で調製したものを海藻懸濁液に対して1〜0.1 %程度の量で接種するのが特に好ましい。
【0023】
海藻発酵微生物を添加する時期は、海藻をSCD化した後でもよいが、糖質分解酵素を加える第一段階で同時に添加した方が、時間の節約になり望ましい。このように酵素とスターター微生物を同時に加えると、海藻のSCD化と乳酸菌の生育による乳酸の生成が同時進行し、試料のpHが低下し、腐敗しにくくなるという長所もある。
このようにして製造した海藻デトライタスは、直径が5〜10μm 前後で二枚貝類等の植物プランクトン捕食者及びデトライタス捕食者にとって丁度良い大きさを有し、良い餌料となりうる。
【0024】
本発明による海藻デトライタスは、海藻を10%濃度で懸濁して製造した場合、最大で3億個/ml以上の濃度で調製できる。これは同じサイズの餌料植物プランクトンを培養する場合に比べ10倍から 100倍高い濃度に相当する。すなわち、本発明によれば、従来の1/10から1/100 の大きさの空間で等量の飼料を調製することが可能であるため、種苗生産・養殖の規模拡大のために非常に有利である。
この飼料の保存性については、20℃で8ヶ月放置した場合にも腐敗が起こらず、発酵臭を保持しており、粒子数も製造直後の約 236%が残存しており極めて良好である。この試料は20℃保存で7ヵ月経過した時点でアコヤガイ稚貝に投与した場合でも、良好な飼料効果を維持している。
【0025】
以上のように、本発明によれば、照明や温度調節の設備等一切必要とせず、従って安価で安定的に直径5〜10μm 前後の均一な粒径のデトライタス飼料を提供することができる。また既に報告されたデトライタス餌料と異なり、1)単細胞性の粒子の生成効率が高く、2)室温で長期間の保存性が可能であり、3)乳酸菌及び酵母といった安全性の高い微生物を含有した餌料である。このようにして得たデトライタス飼料は単独投与でも飼料効果があるが、既存植物プランクトン餌料と併用して使用することにより、相乗的な効果が得られるので、より好ましい。従って、天然餌料が不足する時期に補足する場合や、あるいは種苗生産・養殖の規模拡大をする場合に安定供給できる飼料として貢献することができる。
【0026】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
市販のワカメ乾燥粉末(商品名、若みどり、理研ビタミン株式会社)10.0g を3.5 %食塩水 180mlに溶解し、セルラーゼ濃度を変えて20℃で静置培養した。発酵の前と後での試料中の海藻デトライタスの直径および粒子数をコールターカウンターで測定した。図1には例としてセルラーゼ濃度 0.1%のときの海藻粒子の重量分布の経時的変化を示した。
【0027】
図1より経時的にワカメ粒子が分解され、5.8 〜11.5μm 単細胞性デトライタス粒子画分(図1における左から2番目と3番目の画分、5.8 〜11.5Mmと記載)の割合 (%) が増加し、ワカメの単細胞性デトライタスが高効率で生成していることがわかる。
次に破片粒子等不純物が多く含まれる 2.9〜5.8 μm 画分を除き、ワカメの一細胞の大きさにほぼ匹敵する5.8 〜11.5μm 画分の粒子数及び割合 (%) とセルラーゼの濃度との関係を図2および図3に示した。
図2及び図3より、ワカメを原料として24時間反応させた場合、セルラーゼ濃度1%でほぼ最大の 5.3×107 個/ml の海藻デトライタス粒子が得られた。また12日間反応させた場合、セルラーゼ濃度0.25%で最大の7.1 ×107 個/mlが得られ、そのうち5.8 〜11.5μm 画分の粒子が71.1%であり、ほぼ均一な粒径の粒子にまで分解されていた。すなわち、最高で5.8 〜11.5μm のSCD画分が全体の70%以上を占めていた。
【0028】
【実施例2】
実施例1と同様の方法により、セルラーゼ濃度を 0.5%として反応温度のみを5〜50℃の範囲で変えて反応させた場合に得られる 5.8〜11.5μm 画分のワカメSCDの数は図4のようであった。
図4より、セルラーゼを 0.5%濃度で使用した場合、SCD産生量は5-50℃の間で大差なく、6日後でほぼ、5×107 個/ml のレベルであった。このときSCDの粒度分布(5.8〜11.5μm 画分の粒子の割合) は49.7〜67.3%であった。
【0029】
【実施例3】
市販のワカメ乾燥粉末(若みどり、理研ビタミン株式会社)20g を2gのセルラーゼオノズカ (ヤクルト社製) 、滅菌済 3.5%食塩水 360mlとともにスクリューキャップ付き 500ml容のポリカーボネート製容器に収容し、よく混合したものを2本調製した。1方には発酵スターターとして Lactobacillus brevis NRIFS B5201株、Debaryomyces hansenii NRIFS Y5201株及び Candida zeylanoides Y5206 株の3株を滅菌水で洗浄後、濁度OD(660) =1の懸濁液として各2ml添加し、キャップを閉めた嫌気的条件下で、20℃で静置培養した (ワカメSCD発酵区)。
もう一方は、発酵スターターを添加せずにすぐに5℃に保存した(ワカメSCD非発酵区)。
【0030】
24日間反応後の試料の餌料粒子数は、発酵区が 1.2×108 個/ml 、平均粒径 9.0μm 、非発酵区が 1.4×108 個/ml 、平均粒径10.1μm であった。これを5℃に移して保存し、アコヤガイ稚貝(平均背縁長4.47mm〜4.95mm) を対象とした飼育試験を実施した。飼育条件は、飼育水温27℃、飼育海水塩分濃度3.2 〜3.3 %、5L海水に15個体を収容して12日間給餌した。給餌条件及び試験結果は表4のとおりである。
【0031】
【表4】
Figure 0003637353
【0032】
表4から、ワカメSCD飼料と Chaetoceres餌料との併用給餌が大きな効果があった。またワカメを発酵させた方が発酵しない場合よりも餌料効果が高かった。
【0033】
【実施例4】
市販のワカメ乾燥粉末(商品名、若みどり、理研ビタミン株式会社)1kg を10g のセルラーゼオノズカ (ヤクルト社製) 、滅菌済3.5 %食塩水 9000 mlとともにスクリューキャップ付き15L 容のポリカーボネート製容器に収容し、よく混合した。 Lactobacillus brevis NRIFS B5201株を濁度OD(660) =1 の懸濁液として100 ml (即ち 1.4×1011細胞相当) 、Debaryomyces hansenii NRIFS B5201株を濁度OD(660) =1 の懸濁液として10ml (すなわち 1.5×108 細胞相当) 、 Candida zeylanoides NRIFS Y5206 株を濁度OD(660) =1 の懸濁液として 100ml (すなわち 3.7×107 細胞相当) 添加し、キャップを閉めた嫌気条件下で、20℃で8日間静置培養した。発酵前、発酵後および20℃保存8ヶ月後の海藻デトライタス試料の性状を、表5に示した。また、このワカメSCD餌料中の微生物相を表6に示した。
【0034】
【表5】
Figure 0003637353
【0035】
【表6】
Figure 0003637353
【0036】
表5のとおり、発酵4日目で、餌料からは発泡が観察され、8日目で発酵臭がするなど発酵の特徴を呈した。8日目では表6のとおり乳酸菌が 1.4×108 cfu/mlのレベルまで増殖し、全菌数の23.7%を占め、乳酸が 1.93 g/l の濃度で産生され、pHが初期値 6.4 から 4.6に下がるなど乳酸発酵が起こっていることが確認された。二枚貝等に対する水産飼料として適した大きさである直径が 2.9〜20.1μm の粒子は、当初の 5.0×107 個/ml(重量割合 16.3 %) から 1.1×108 個/ml(重量割合 77.8 %) に向上した。ほぼ同じサイズの植物プランクトンを培養した場合に、得られる細胞密度は、通常 5×106 〜1 ×107 個/ml であるから、概算で10倍から20倍、高濃度で調製することができた。また、本発明者が以前報告 (Motoharu Uchiba, Ficheries Science 62, pp731-736, 1996) したアルテロモナス属細菌を使用して、ワカメと同じ褐藻類に属するマコブを原料としてデトライタス粒子を調製した例での約 3×106 個/ml の37倍の濃度に相当する。
【0037】
保存性に関しては、20℃で6ヶ月で 3.7×108 個/ml(粒子残存率 336%) 、8 ヵ月で 2.6×108 個/ml(粒子残存率 236%) であり、餌料として好適な粒子の数は、長期間高いレベルを維持しており、室温レベルで保存しても腐敗が起こらず乳酸菌が優占しており、非常に安定であった。
【0038】
飼料としての価値が長期間、継続しているかどうか確認するため、上記で調製した20℃で 7ヶ月経過した試料を使用し、アコヤガイ稚貝を対象として、飼育試験を実施した。試験は、飼育水温27℃、海水塩分濃度3.3 〜3.4 %の条件下で行い、平均背縁長3.40±0.39mmのアコヤ貝15個体を5Lの海水に収容し、12日間給餌した。植物プランクトン区および海藻デトライタス区は、 Chaetoceros及びワカメデトライタスをそれぞれ 3×104 cells/ml/dayの濃度で給餌した。生残率および殻の背縁長の成長率は表7のとおりで、7ヶ月経過したデトライタス飼料を単独投与した場合でも、最高の餌料として知られる Chaetocerosを最適量投与した場合の34%に相当する餌料効果を示し、実施例3の場合の新鮮な発酵餌料を投与した場合に比べても、遜色ない餌料価値を保持していることが示された。
【0039】
【表7】
Figure 0003637353
【0040】
【発明の効果】
本発明によると、培養維持が不安定な植物プランクトンに比べ、生成効果は高く安定供給でき、保存性がよく、しかも、安全な動物性プランクトン、魚類仔魚、二枚貝類、その他の水産動物の飼料を海藻から効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のワカメ乾燥粉末をセルラーゼ 0.1%濃度で添加し、20℃で反応させた場合のデトライタス粒子の重量分布の経時的変化を示すグラフ。
【図1A】:3時間後
【図1B】:24時間後
【図1C】:12日後
【図2】実施例1でセルラーゼ濃度を変えたときのワカメSCD粒子(5.8〜11.5Mm) の生成数の経時的変化。
【図3】実施例1でセルラーゼ濃度を変えたときのワカメSCD粒子(5.8〜11.5Mm) の生成割合の経時的変化。
【図4】実施例2の反応温度を変えたときのワカメSCD粒子(5.8〜11.5Mm) の生成数。

Claims (4)

  1. 海藻類を糖質分解酵素製剤により分解し、単細胞性の粒子に変換するとともに、乳酸菌及び/又は酵母により発酵させることを特徴とする、魚介類用飼料として利用できる海藻デトライタスの製造法。
  2. 乳酸菌及び/又は酵母が、 Lactobacillus属、 Debaryomyces 属、及びCandida 属からなる群から選択される1種以上である請求項1に記載の魚介類用飼料として利用できる海藻デトライタスの製造法。
  3. 乳酸菌及び/又は酵母が、 Lactobacillus brevisDebaryomyces hansenii及び Candida zeylanoides からなる群から選択される1種以上である請求項1又は2に記載の魚介類用飼料として利用できる海藻デトライタスの製造法。
  4. 海藻類を糖質分解酵素製剤により分解し,単細胞性の粒子に変換するとともに、乳酸菌及び/又は酵母により発酵させることにより得られる、粒径5.8 〜11.5μm のデトライタス粒子を有効成分とする魚介類用海藻デトライタス飼料。
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