JPH08128099A - 流体加熱貯槽におけるバイメタルスイッチ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 水等の流体を加熱してこれを溜めておく各種
の加熱貯槽において、検知すべき流体の温度をより一層
精度高く検出して最適な作動が可能なバイメタルスイッ
チを提供すること。 【構成】 水等の流体を加熱する加熱手段を設けた貯槽
に備えられ、異常高温時に加熱手段への通電を切るバイ
メタルスイッチを、貯槽の内部側に臨む位置に設けたバ
イメタルと、これを封入して先端側を貯槽の内部側に突
き出る形状とし且つ基端側を貯槽への固定部としたキャ
ップとから構成する。キャップは、バイメタルが貯槽の
内部側を臨む部分から先端までを中空のプローブとして
その内在空気バイメタルへの熱伝達媒体とするほか、プ
ローブを貯槽の内部の流体中のの低温境界層より内部の
恒温層に届く長さとする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、バイメタルスイッチに
係り、特に水を加熱してこれを溜めておく温水タンク等
の貯槽において温度検知精度を向上させたバイメタルス
イッチに関する。

【０００２】

【従来の技術】水を加熱して温水を溜めておく温水タン
クやその他の加熱機器には、ヒータによる過熱や設定温
度以上の温水とならないようにするための安全装置とし
てバイメタルスイッチが広く利用されている。

【０００３】たとえば、温水洗浄便座の一つの機能とし
て広く知られている人体局部洗浄装置についても、実公
平３−４９１７８号公報に記載されているように、局部
洗浄用の温水を溜めておく温水タンクにバイメタルスイ
ッチが組み込まれている。

【０００４】温水洗浄便座は、図５に示すように、便器
本体５０に固定した便座５１ａ及び便蓋５１ｂ付きのケ
ーシング５１にノズル装置５２と温水の供給配管系及び
洗浄後の乾燥のための温風乾燥装置等を収納したもので
ある。そして、このノズル装置５２への洗浄水の供給系
は、図６に示すように、水道配管に接続した側から開閉
・調圧弁５３，温水タンク１及び流量調整と流路切換え
のためのバルブユニット５４を順に配置し、バルブユニ
ット５４からノズル装置５２に浄水を供給可能としてい
る。温水タンク１での温水の加熱具合やノズル装置５２
の作動は全てはコントローラ５５によって制御される。

【０００５】温水タンク１には、加熱用のヒータや温度
検知のためのサーミスタを利用した温度センサや空焚き
防止のためのフロートスイッチ等を備え、更に異常高温
になったときにヒータへの通電を停止させるバイメタル
スイッチが設けられる。

【０００６】図７の（ａ）はバイメタルスイッチの取付
け構造の詳細を示す要部の縦断面図である。

【０００７】バイメタルスイッチ２０は、温水タンク１
の蓋１ａに開けた取付け口１ｂの中に組み込まれ、この
取付け口１ｂにシール嵌合した受座２１に密着させて固
定されている。受座２１は、取付け口１ｂの中に落とし
込まれ、その下面を温水タンク１内に臨ませた姿勢に固
定されている。

【０００８】このようなバイメタルスイッチ２０の取付
け構造では、受座２１からの熱伝導によってバイメタル
スイッチ２０が加熱され、洗浄用の温水としての好適上
限温度を越えるとバイメタルスイッチ２０によってヒー
タへの通電が停止される。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】ところが、温水タンク
１内に溜まっている温水は、ヒータによって一定温度に
維持されるように保温されているものの、温水タンク１
の表面からの放熱によって、温水自身の温度分布は一様
ではない。すなわち、図７の（ｂ）に示すように、温水
タンク１の表面からの放熱によって、図中の一点鎖線の
領域で示す部分の内部温度のほうが、表面側の温度より
も高い傾向にある。

【００１０】このような温度分布であれば、同図の
（ａ）のように受座２１が蓋１ａの下面に沿う構造の場
合、温水には接しているものの実際には放熱の激しい低
温域の温水から受座２１に伝熱されることになる。した
がって、温水タンク１内の実際の温水温度よりも低い温
度がバイメタルスイッチ２０に伝達されることになり、
温度感知精度は必ずしも良好とはいえない。

【００１１】また、受座２１はバイメタルスイッチ２０
をシール下で蓋１ａに装着するための部材でもあるが、
温水からの熱伝達はこの受座２１を介在させて行われ
る。このため、バイメタルスイッチ２０は受座２１とバ
イメタルスイッチ２０自身の金属性のハウジングの２層
を伝熱帯として含むことになり、バイメタルスイッチ２
０への熱伝導率の低下は避けられない。したがって、温
水の温度の変動に対するバイメタルスイッチ２０の感応
度にも上限があり、良好な作動に支障を与える可能性も
ある。

【００１２】このような問題は、温水タンクだけでな
く、その他の加熱機器においても同様に発生し得るもの
であり、バイメタルスイッチの作動精度への影響は大き
い。

【００１３】本発明において解決すべき課題は、検知す
べき流体の温度をより一層精度高く検出して最適な作動
が可能なバイメタルスイッチを提供することにある。

【００１４】

【課題を解決するための手段】本発明は、水等の流体を
加熱する加熱手段を設けた貯槽に備えられ、異常高温時
に前記加熱手段への通電を切るバイメタルスイッチであ
って、前記バイメタルスイッチは、前記貯槽の内部側に
臨む位置に設けたバイメタルと、該バイメタルを封入し
て先端側を前記貯槽の内部側に突き出る形状とし且つ基
端側を前記貯槽への固定部としたキャップとから構成し
てなることを特徴とする。

【００１５】キャップは、バイメタルが貯槽の内部側を
臨む部分から先端までを中空のプローブとすれば、この
プローブ内の空気をバイメタルへの熱伝達媒体とするこ
とができる。

【００１６】また、プローブは、貯槽の内部の流体中で
あって、貯槽の壁近傍の低温境界層より内部の恒温層に
届く長さとした構成としたほうがよいが、このプローブ
は短くとも熱伝導率分の精度向上は可能である。

【００１７】

【作用】バイメタルスイッチのバイメタルは貯槽への固
定部材ともなるキャップによって封入されているのみで
あり、このキャップは貯槽の内部側に突き出て流体中に
浸漬させることができるので、バイメタルへの熱伝達は
キャップが介在するだけの条件で行われる。

【００１８】バイメタルからキャップの先端までを中空
のプローブとすることで、バイメタルへの温水の熱伝達
はプローブ内の空気を伝熱媒体として行うことができ、
２層以上の金属板の重合による伝熱に比べると熱伝導率
の向上が可能となる。

【００１９】また、プローブを貯槽内流体の恒温層まで
到達する長さとすれば、温度検知の精度が向上すると同
時に内在空気による境界層側への熱伝達の促進が抑えら
れるので、境界層部分での吸熱を抑制した熱伝達が可能
となる。

【００２０】

【実施例】図１は本発明のバイメタルスイッチを温水タ
ンクに組み込んだときの要部の縦断面図、図２は図１の
Ａ−Ａ線矢視による縦断面図である。なお、実施例で
は、従来技術の項で説明した温水洗浄便座の温水タンク
用のバイメタルスイッチの例とし、図７の（ｂ）に示し
た温水タンク１の蓋１ａに装着したものとして説明す
る。

【００２１】バイメタルスイッチ２は、図２に示すよう
に本体ブロック３とその下部に一体に接合した金属製の
キャップ４とによって、その外郭を構成したものであ
る。

【００２２】本体ブロック３の内部には、従来周知の構
造と同様にバイメタル３ａ，接点部３ｂ及びこれらの間
に介装したピン３ｃを備え、上端には一対の端子３ｄ，
３ｅを設けたものである。バイメタル３ａは、本体ブロ
ック３の下端に位置して蓋１ａの取付け口１ｂに固定し
たときには、このバイメタル３ａは温水タンク１の内部
に臨む姿勢となる。そして、温度上昇によるバイメタル
３ａの変形よってピン３ｃを駆動し、異常高温となった
時点で接点部３ｂを解離させることで、ヒータ（図示せ
ず）への通電が停止される。

【００２３】キャップ４は本体ブロック３の下端部周り
に嵌合する嵌合環４ａとその上端に設けたフランジ４ｂ
を備え、更に嵌合環４ａの下には軸線を長くした中空の
プローブ４ｃを形成したものである。プローブ４ｃは、
図２に示すように、バイメタル３ａによって上端が閉塞
されが中空室を形成し、内部の空気を介してバイメタル
３ａに熱伝達される。

【００２４】本体ブロック３に一体に接合されたキャッ
プ４は図１に示すようにシール用のパッキン５をフラン
ジ４ｂの下面に当て、嵌合環４ａから下を取付け口１ｂ
に差し込んで組み込まれる。そして、フランジ４ｂの上
面に載る環状の押さえプレート６をビス６ａによって蓋
１ａに連結することによって、バイメタルスイッチ２が
温水タンク１に固定される。

【００２５】ここで、図３は温水タンク１内で加熱され
て溜まっている温度の分布を説明するものである。

【００２６】図７の（ｂ）によって説明したように、温
水タンク１内の温水の温度分布は、温水タンク１の表面
からの放熱による影響を受けるので、中心側の温度の方
が表面側よりも高い。そして、図中の温度分布曲線で示
すように、表面に近い部分は温度勾配が大きな境界層で
あり中央部は一様な恒温層として捉えることができる。

【００２７】このような温度分布から、恒温層に属する
温水の容積が境界層のそれよりも大きい、すなわち温水
タンク１の要領がある臨界値よりも大きな場合であれ
ば、恒温層の温度を検出に反映させない限り正確な温度
検知は不可能である。

【００２８】これに対し、蓋１ａに装着したバイメタル
スイッチ２のプローブ４ｃが恒温層の中に入り込める程
度の長さを持つものとすれば、この恒温層からバイメタ
ル３ａに熱伝達することができる。したがって、本発明
では、蓋１ａに固定したバイメタルスイッチ２のプロー
ブ４ｃは、このような熱伝達が可能な条件を満たす長さ
を持つものとする。

【００２９】以上のことから、バイメタル３ａへ恒温層
からの熱伝達が行えるものであれば、表面側の低温の温
度による温度感知についての障害は解消される。そし
て、本発明では、プローブ４ｃを中空としてその内部の
空気によってバイメタル３ａへの熱伝達を行う構成であ
るが、単にバイメタル３ａへの熱伝導を中実体で行う場
合ではやはり表面の低温部での吸熱によって感知温度が
低下してしまう。

【００３０】図４はこのような現象を説明するものであ
り、同図の（ａ）は本発明におけるプローブ４ｃに相当
する部材を中実の伝熱棒１０とし、これに直にバイメタ
ル３ａを面接触させた概略図である。

【００３１】伝熱棒１０は図３で示した恒温層に達する
長さを持ち、この恒温層での温水からの熱伝導による伝
熱量がバイメタル３ａ側に熱伝達されようとする。とこ
ろが、伝熱棒１０は低温の境界層を突っ切って恒温層ま
で延びていることから、この境界層部分では恒温層から
の伝熱量の一部が境界層側に吸熱されてしまう。このた
め、バイメタル３ａには恒温層の温度に相当する熱伝達
量は到達し得ず、実際の温度より少し低い温度として感
知されることになる。

【００３２】これに対し、同図の（ｂ）に示す本発明の
バイメタルスイッチ２では、プローブ４ｃが中空体であ
ることから、恒温層から受ける熱や空気を伝熱媒体とし
てバイメタル３ａに熱伝達される。そして、この空気を
媒体とするときでも、境界層部分では外部温度が低いこ
とから同様に吸熱が生じる。この吸熱は、空気からキャ
ップ４の２層の伝熱であり、しかも空気の熱伝導率は金
属製の伝熱棒１０よりも格段に低いので、中実体の伝熱
棒１０に比べると境界層側への放熱が大幅に抑えられ
る。

【００３３】以上のことから、プローブ４ｃを中空体と
してその内部の空気によってバイメタル３ａに熱伝達す
るようにすれば、恒温層の温度に見合う熱量のバイメタ
ル３ａへの熱伝達が可能であり、より一層感知精度を上
げることができ、バイメタルスイッチ２の動作の最適化
が図れる。

【００３４】また、従来構造では取付け口１ｂに組み込
んだ受座の上にバイメタルスイッチを載せ、この受座を
伝熱体としてバイメタルに熱伝達する構造であった。こ
れに対し、本発明では、キャップ４を受座に代わるもの
として機能させるので、部品点数も削減され、蓋１ａへ
の固定構造も簡単になる。

【００３５】以上の実施例では、温水洗浄便座の温水タ
ンク１を例にして説明したが、その他の各種の電気機器
における加熱流体用の貯槽に対しても本発明が適用でき
ることは無論である。

【００３６】

【発明の効果】本発明では、貯槽に対して固定部材とな
るキャップから直接バイメタルに熱伝達するので、従来
のように受座を介してバイメタルスイッチのハウジング
に伝熱する構造に比べると、熱伝導率の向上が図られ、
バイメタルスイッチの感温感度を高く維持した良好な作
動が可能となる。

【００３７】また、キャップの一部を中空のプローブと
してその内在空気をバイメタルに対する熱伝達媒体とす
ることでも、同様に感温感度の向上が図られる。

【００３８】そして、プローブを貯槽内流体の恒温層ま
で届く長さとすれば、低温の境界層部分での吸熱は内在
空気による熱伝導率が低いために抑えられ、恒温層の温
度をより精度高く感知した作動が可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のバイメタルスイッチを温水タンクの蓋
に備えた例を示す要部の縦断面図である。

【図２】図１のＡ−Ａ線矢視による縦断面図である。

【図３】温水タンク内での温水の恒温層及び境界層の分
布とその温度分布を示す図である。

【図４】恒温層からバイメタルまでの熱伝達の間の境界
層での吸熱を説明する図であって、同図の（ａ）は中実
体の伝熱棒とした場合、同図の（ｂ）は本発明の中空の
プローブを持つ場合をそれぞれ示す。

【図５】温水洗浄便座を備えた便器装置を示す図であ
る。

【図６】洗浄用ノズルへの温水の供給系統を示す図であ
る。

【図７】温水タンクに設ける従来のバイメタルスイッチ
であって、同図の（ａ）はその要部の縦断面図、同図の
（ｂ）は温水タンク内での温水の温度分布を併せて示す
温水タンクの概略図である。

【符号の説明】

１ 温水タンク（流体加熱貯槽） ２ バイメタルスイッチ ３ 本体ブロック ３ａ バイメタル ４ キャップ ４ａ 嵌合環 ４ｂ フランジ ４ｃ プローブ ５ パッキン ６ 押さえプレート

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 水等の流体を加熱する加熱手段を設けた
   貯槽に備えられ、異常高温時に前記加熱手段への通電を
   切るバイメタルスイッチであって、前記バイメタルスイ
   ッチは、前記貯槽の内部側に臨む位置に設けたバイメタ
   ルと、該バイメタルを封入して先端側を前記貯槽の内部
   側に突き出る形状とし且つ基端側を前記貯槽への固定部
   としたキャップとから構成してなる流体加熱貯槽におけ
   るバイメタルスイッチ。
2. 【請求項２】 前記キャップは、前記バイメタルが前記
   貯槽の内部側を臨む部分から先端までを中空のプローブ
   とし、該プローブ内の空気を前記バイメタルへの熱伝達
   媒体としてなる請求項１記載の流体加熱貯槽におけるバ
   イメタルスイッチ。
3. 【請求項３】 前記プローブは、前記貯槽の内部の流体
   中であって、前記貯槽の壁近傍の低温境界層より内部の
   恒温層に届く長さとしてなる請求項２記載の流体加熱貯
   槽におけるバイメタルスイッチ。