JPH08115082A - 電子鍵盤楽器 - Google Patents

電子鍵盤楽器

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JPH08115082A
JPH08115082A JP6248062A JP24806294A JPH08115082A JP H08115082 A JPH08115082 A JP H08115082A JP 6248062 A JP6248062 A JP 6248062A JP 24806294 A JP24806294 A JP 24806294A JP H08115082 A JPH08115082 A JP H08115082A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 実際のアコースティックピアノで発生する反
射音を再現して、方向移動感を得ることのできる電子鍵
盤楽器を提供する。 【構成】 鍵盤装置の押鍵位置に応じて左右2系統の楽
音信号Lin,Rinを生成し、各楽音信号Lin,R
inを、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)3
5,D/A変換器37,及びアンプ43a,43bを介
して、左右のスピーカ45a,45bへ夫々出力する電
子ピアノにおいて、DSP35を、各楽音信号Rin,
Linから、夫々、所定周波数成分F1,F2を抽出す
るフィルタ47,53と、各フィルタ47,53の出力
を、夫々、所定時間T1,T2だけ遅延して出力する遅
延素子49,55と、遅延素子49の出力を本来の左系
統の楽音信号Linに加算して出力する加算器51と、
遅延素子55の出力を本来の右系統の楽音信号Rinに
加算して出力する加算器57と、から構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鍵盤操作に応じて電気
的に楽音を発生する電子鍵盤楽器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、この種の電子鍵盤楽器とし
て、鍵盤装置の押鍵位置に応じて電気的に楽音波形を生
成し、その楽音波形に応じた楽音をスピーカから出力す
るようにした電子ピアノが知られている。
【0003】そして従来より、このような電子ピアノに
おいては、スピーカを前面パネル等の左右両側に一対で
設けると共に、鍵盤装置の押鍵位置に応じて左右のスピ
ーカから出力させる楽音に音量差を設ける、所謂パンニ
ング処理を施すことにより、アコースティックピアノ
(以下、実際のピアノという)を演奏した場合に押鍵位
置に対応した弦から発せられる直接音によって感じる方
向感を再現できるようにしていた。
【0004】つまり、鍵盤装置の中央よりも右寄りの鍵
が押された場合には、右側のスピーカへ出力する楽音波
形を左側のスピーカへ出力する楽音波形よりも音量が大
きくなるように加工し、また逆に、左寄りの鍵が押され
た場合には、左側のスピーカへ出力する楽音波形を右側
のスピーカへ出力する楽音波形よりも音量が大きくなる
ように加工することにより、1つの楽音波形を生成する
だけで、実際のピアノに近い方向感が得られるようにし
ていた。
【0005】一方、実際のピアノを演奏した際の音を左
右のスピーカ用に夫々サンプリングして、これをPCM
波形データとしてメモリに格納しておき、鍵盤装置の押
鍵位置に応じて、この左右2系統のPCM波形データを
読み出し、左右のスピーカから楽音を夫々出力させるよ
うにした装置も提案されている。そして、このような装
置によれば、実際のピアノを演奏した場合とほぼ同様の
音が左右のスピーカからステレオ音として出力されるこ
ととなるため、実際のピアノにより近い広がり感を実現
することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ここで、上記前者のパ
ンニング処理を行う装置によれば、比較的簡単な構成で
実際のピアノに近い方向感を得ることができるものの、
実際のピアノでは、弦からの直接音と、その音がピアノ
の内部を反射して聞こえてくる反射音とによって方向移
動感が得られるようになっており、上記前者の装置で
は、この方向移動感までは再現することができなかっ
た。
【0007】また、上記後者の装置によれば、実際のピ
アノに近い方向感及び方向移動感を再現することができ
るものの、PCM波形データをピアノの全鍵分、且つ各
スピーカ毎に対応してメモリに格納しておかなければな
らず、膨大な記憶容量が必要となってコストが大きくな
ってしまうという問題がある。
【0008】本発明は、こうした問題に鑑みなされたも
のであり、簡単な構成で実際のピアノに近い方向移動感
を得ることのできる電子鍵盤楽器を提供することを目的
としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
になされた請求項1に記載の本発明は、複数の鍵が並設
された鍵盤装置と、前記鍵の並設方向に並べられ、外部
から夫々入力される楽音波形に応じた楽音を出力する複
数の発音装置と、前記鍵盤装置の押鍵位置を検出する鍵
盤操作検出手段と、該鍵盤操作検出手段により検出され
た押鍵位置に応じて、前記各発音装置から夫々出力すべ
き音及びその大きさに対応する楽音波形を夫々生成し、
該各楽音波形を対応する前記各発音装置に出力する楽音
波形出力手段と、該楽音波形出力手段から出力された複
数の楽音波形のうち所定の2つ1組の楽音波形に対して
設けられ、一方の楽音波形から所定周波数成分を抽出す
ると共に該周波数成分を所定時間遅延して他方の楽音波
形に加算する楽音波形合成手段と、を備えたことを特徴
とする電子鍵盤楽器を要旨としている。
【0010】また、請求項2に記載の本発明は、請求項
1に記載の電子鍵盤楽器において、前記発音装置を、少
なくとも前記鍵盤装置の中央に対して左右側に夫々設け
ると共に、前記楽音波形合成手段を、前記左側の発音装
置に対応する楽音波形と前記右側の発音装置に対応する
楽音波形とに対し、互いの所定周波数成分が所定時間遅
延されて相手側に加算されるように、少なくとも2つ設
け、更に、前記各楽音波形合成手段が抽出する前記所定
周波数成分及び前記各楽音波形合成手段が遅延する前記
所定時間を夫々異なる値に設定したこと、を特徴とする
電子鍵盤楽器を要旨としている。
【0011】また更に、請求項3に記載の本発明は、請
求項1又は請求項2に記載の電子鍵盤楽器において、前
記楽音波形出力手段が、前記鍵盤操作検出手段により検
出された押鍵位置に応じて1つの楽音波形を生成する楽
音波形生成手段と、該楽音波形生成手段によって生成さ
れた楽音波形を、前記各発音装置から夫々出力される楽
音の音量が前記検出された押鍵位置に近い発音装置ほど
大きくなるように調整して、前記各発音装置へ夫々出力
する楽音波形調整手段と、を備えたこと、を特徴とする
電子鍵盤楽器を要旨としている。
【0012】
【作用及び発明の効果】上記のように構成された請求項
1に記載の電子鍵盤楽器においては、鍵盤装置に設けら
れた鍵の並設方向に、複数の発音装置が並べられてお
り、各発音装置は、外部から夫々入力される楽音波形に
応じた楽音を出力する。
【0013】そして、鍵盤操作検出手段が、鍵盤装置の
押鍵位置を検出し、楽音波形出力手段が、鍵盤操作検出
手段により検出された押鍵位置に応じて、各発音装置か
ら夫々出力すべき音及びその大きさに対応する楽音波形
を夫々生成し、その生成した各楽音波形を対応する発音
装置に出力する。
【0014】そして更に、楽音波形出力手段から出力さ
れた複数の楽音波形のうち所定の2つ1組の楽音波形に
対して設けられた楽音波形合成手段が、一方の楽音波形
から所定周波数成分を抽出すると共にその周波数成分を
所定時間遅延して他方の楽音波形に加算する。
【0015】すると、上記他方の楽音波形に対応した発
音装置以外の発音装置からは、楽音波形出力手段からの
楽音波形に応じた音が出力されこととなるが、上記他方
の楽音波形に対応した発音装置からは、楽音波形出力手
段から出力された本来の楽音波形に上記一方の楽音波形
の所定周波数成分が所定時間だけ遅延されて加算された
楽音波形に応じた音が出力されることとなる。
【0016】つまり、実際のピアノでは、鍵盤の鍵を押
すと、まず、その押鍵位置に対応した方向から打弦によ
って生じた直接音が聞こえ、その後、この直接音がピア
ノの内部で反射した反射音が聞こえることとなる。そし
て、この反射音は、ピアノの内壁に当たった後に聞こえ
る音であるため、直接音とは離れた位置に定位すると共
に、直接音に対して周波数特性が変化し遅延も生じる。
【0017】そこで、請求項1に記載の電子鍵盤楽器に
おいては、所定の2つの発音装置に夫々出力される1組
の楽音波形について、一方の楽音波形から抽出した所定
周波数成分を所定時間遅延して他方の楽音波形に加算す
るようにしており、これによって、一方の楽音波形に対
応した発音装置から出力される音が、他方の楽音波形に
対応した発音装置から、あたかも反射音の如く聞こえて
くるようにしている。
【0018】従って、請求項1に記載の電子鍵盤楽器に
よれば、楽音波形合成手段によって所定周波数成分が抽
出される楽音波形及びその周波数成分が加算される楽音
波形、即ち楽音波形合成手段を設ける楽音波形の組み合
せと、楽音波形合成手段が抽出する所定周波数成分及び
遅延する時間とを、夫々、実際のピアノにおいて発生す
る反射の特性に応じて設定することにより、既述した従
来装置のように実際のピアノ音を複数のスピーカ用に夫
々サンプリングしてメモリに格納しておくといった複雑
且つ高価な構成を採ることなく、実際のピアノに近い方
向移動感を得ることができるようになる。
【0019】尚、楽音波形合成手段は、楽音波形から所
定周波数成分を抽出した後、その周波数成分を遅延する
ように構成してもよいし、また逆に、楽音波形を遅延し
た後、その波形から所定周波数成分を抽出するように構
成してもよい。また、楽音波形合成手段は、1組の楽音
波形に対してだけではなく、複数組の楽音波形に対して
夫々設けることができる。
【0020】次に、請求項2に記載の電子鍵盤楽器で
は、請求項1に記載の電子鍵盤楽器において、発音装置
を、少なくとも鍵盤装置の中央に対して左右側に夫々設
けると共に、楽音波形合成手段を、左側の発音装置に対
応する楽音波形と右側の発音装置に対応する楽音波形と
に対し、互いの所定周波数成分が所定時間遅延されて相
手側に加算されるように少なくとも2つ設け、更に、各
楽音波形合成手段が抽出する所定周波数成分と各楽音波
形合成手段が遅延する所定時間とを夫々異なる値に設定
するようにしている。
【0021】つまり、発音装置の数と楽音波形合成手段
の数は必要に応じて設定すればよいのであるが、実際の
ピアノでは、通常、図6(A)に例示するように、鍵盤
Kの左側で生じた直接音TO1に対応する反射音HO1
は右側に定位し、図6(B)に例示するように、鍵盤K
の右側で生じた直接音TO2に対する反射音HO2は左
側に定位する。
【0022】そこで、請求項2に記載の電子鍵盤楽器に
おいては、発音装置を鍵盤装置の中央に対して左右側に
夫々設けると共に、左側の発音装置に対応する楽音波形
の所定周波数成分が所定時間遅延されて右側の発音装置
に対応する楽音波形に加算され、右側の発音装置に対応
する楽音波形の所定周波数成分が所定時間遅延されて左
側の発音装置に対応する楽音波形に加算されるようにし
ている。
【0023】そして、このように構成された請求項2に
記載の電子鍵盤装置によれば、発音装置及び楽音波形合
成手段を少なくとも夫々2つずつ設けるだけで、実際の
ピアノに近い方向移動感を得ることができるようにな
る。しかも、請求項2に記載の電子鍵盤装置では、各楽
音波形合成手段が抽出する所定周波数成分と各楽音波形
合成手段が遅延する所定時間とを夫々異なる値に設定し
ているため、左右の発音装置からは、互いに異なる特性
の音が重畳されて出力されることとなり、より臨場感の
ある音を出力することができる。
【0024】次に、請求項3に記載の電子鍵盤楽器にお
いては、楽音波形出力手段が、楽音波形生成手段と楽音
波形調整手段とを備えている。そして、楽音波形生成手
段が、鍵盤操作検出手段により検出された押鍵位置に応
じて1つの楽音波形を生成し、楽音信号調整手段が、楽
音波形生成手段により生成された楽音波形を、各発音装
置から夫々出力される楽音の音量が押鍵位置に近い発音
装置ほど大きくなるように調整して、各発音装置へ夫々
出力するようにしている。
【0025】そして、このような電子鍵盤楽器によれ
ば、1つの楽音波形を生成するだけで、各発音装置へ押
鍵位置に応じた音量を表す楽音波形を出力することがで
き、より簡単な構成で、実際のピアノに近い方向感及方
向移動感を再現することができるようになる。
【0026】
【実施例】以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説
明する。まず、図1は本実施例の電子ピアノEPの概略
構成を示すブロック図である。本電子ピアノEPは、8
8鍵の鍵11aを備える鍵盤装置11と、鍵盤装置11
における鍵11aの操作状態を検出するキーセンサ2
1,22と、電源スイッチやモード切替スイッチなど種
々のスイッチを備えたパネル部23と、キーセンサ2
1,22及びパネル部23からの信号を入力するための
インタフェイス(I/F)25と、I/F25を介して
入力された信号に基づき各種制御処理を実行するCPU
27と、CPU27が実行する制御処理のためのプログ
ラムが格納されたROM29と、CPU27が処理する
データを一時記憶するためのRAM31と、CPU27
からの指示に従って、後述するように左右2系統(左系
統及び右系統)の楽音波形(以下、楽音信号という)を
発生する、楽音波形出力手段としての楽音信号発生部3
3と、楽音信号発生部33から発生した各楽音信号に対
して後述するように所定の処理加工を施すディジタルシ
グナルプロセッサ(DSP)35と、DSP35から出
力された2系統の楽音信号を夫々アナログ信号に変換し
て出力するD/A変換器(DAC)37と、I/F2
5,CPU27,ROM29,RAM31,楽音信号発
生部33,DSP35,及びDAC37を相互に接続す
るシステムバス39と、を備えている。
【0027】そして、楽音信号発生部33には波形メモ
リ41が接続されており、この波形メモリ41には、実
際のピアノにおいて演奏した場合の波形をサンプリング
した結果に基づくモノラル音の波形データが、各鍵11
aの鍵番号毎に対応して格納されている。また、DAC
37から出力される2系統のアナログ信号は、夫々、ア
ンプ43a,43bによって増幅された後、発音装置と
してのスピーカ45a,45bによって音として出力さ
れるように構成されている。
【0028】尚、スピーカ45a,45bは、鍵盤装置
11の中央に対して左右側、即ち演奏者から見て左右側
に夫々位置するように、当該電子ピアノEPの所定位置
に設けられている。ここで、キーセンサ21,22及び
関連する構成について図2を参照して説明しておく。図
2に示すように、各鍵11aの下面には段付シャッタ2
0と、キーセンサ21,22とが配設されている。キー
センサ21,22は共に、それぞれが発光素子と受光素
子とを一組として構成されており、両素子の間が段付シ
ャッタ20によって遮られるとオン信号を発するように
構成されている。また、段付シャッタ20は、鍵11a
が押された際に、その押鍵速度に応じた時間差をもって
キーセンサ21の光路とキーセンサ22の光路とを順次
遮るようになっている。
【0029】そして、CPU27は、オン信号を発した
キーセンサ21,22を識別することにより、演奏者に
よって押鍵された鍵11aを検出すると共に、キーセン
サ21とキーセンサ22とがオン信号を出力した時間差
から、押鍵速度、延いては音量に対応する打鍵強度を検
出する。
【0030】次に、DSP35について説明する。図3
に示すように、DSP35は、楽音信号発生部33から
出力された左右2系統の楽音信号のうち、右系統の楽音
信号Rinにおける所定周波数成分F1のみを通過させ
るフィルタ47と、フィルタ47の出力信号を所定時間
T1だけ遅延して出力する遅延素子49と、遅延素子4
9からの出力信号と楽音信号発生部33から出力された
左系統の楽音信号Linとを加算して、この加算後の楽
音信号LoutをDAC37に出力する加算器51と、
楽音信号発生部33から出力された左系統の楽音信号L
inにおける所定周波数成分F2のみを通過させるフィ
ルタ53と、フィルタ53の出力信号を所定時間T2だ
け遅延して出力する遅延素子55と、遅延素子55から
の出力信号と楽音信号発生部33から出力された右系統
の楽音信号Rinとを加算して、この加算後の楽音信号
RoutをDAC37に出力する加算器57と、から構
成されている。
【0031】尚、本実施例において、フィルタ47は3
00Hz以下の周波数成分だけを通過させるローパスフ
ィルタであり、フィルタ53は500Hz以上の周波数
成分だけを通過させるハイパスフィルタである。また、
遅延素子49の遅延時間T1は30msに設定されてお
り、遅延素子55の遅延時間T2は10msに設定され
ている。そして、本実施例においては、フィルタ47,
遅延素子49,及び加算器51と、フィルタ53,遅延
素子55,及び加算器57とが、夫々楽音波形合成手段
に対応している。
【0032】次に、このように構成された電子ピアノE
Pの動作について、CPU27が実行する発音処理を表
すフローチャートに沿って説明する。尚、この発音処理
は、パネル部23に設けられた電源スイッチがオンされ
ると所定時間毎に繰り返して実行される。
【0033】図4に示すように、発音処理の実行が開始
されると、まず、ステップ(以下、単にSと記す)11
0にて、キーセンサ21,22からの検出信号に基づ
き、何れかの鍵11aが押された否か(オンイベントが
あったか否か)を判定する。そして、オンイベントがあ
った場合には、続くS120にて、キーセンサ21,2
2からの検出信号に基づいて、押された鍵11aの鍵番
号や打鍵強度を検出し、それらを表す押鍵データを楽音
信号発生部33に出力する、鍵盤操作検出手段としての
処理を実行する。
【0034】すると、楽音信号発生部33は、その鍵番
号に対応する波形データを波形メモリ41から読み出し
て打鍵強度に応じた同じ音量の左右2系統の楽音信号を
生成する、楽音波形生成手段としての動作を行い、更
に、この2系統の楽音信号にパンニング処理を施す、楽
音波形調整手段としての動作を行う。
【0035】ここで、楽音信号発生部33で行われるパ
ンニング処理とは、CPU27から指令された鍵番号
(即ち押鍵された鍵11aの位置)に応じて、左右2系
統の楽音信号における音量の割合を変化させるものであ
り、鍵盤号が鍵盤装置11において中央よりも右側の鍵
11aを示すものであれば、右系統の音量を左系統の音
量よりも大きく設定し、逆に、鍵盤号が鍵盤装置11に
おいて中央よりも左側の鍵11aを示すものであれば、
左系統の音量を右系統の音量よりも大きく設定する、と
いった手順で実行される。
【0036】そして、このように楽音信号発生部33に
よって2系統の楽音信号が生成されると、CPU27
は、続くS130にて、2系統の楽音信号をDSP35
に出力し、後述するように、DSP35,DAC37,
及びアンプ43a,43bを経てスピーカ45a,45
bからの発音を開始させる。
【0037】一方、S110でオンイベントがないと判
定した場合には、S140に移行して、キーセンサ2
1,22からの検出信号に基づき、何れかの鍵11aが
放されたか否か(オフイベントがあったか否か)を判定
し、オフイベントがあったと判定した場合には、その鍵
番号に対応する発音を停止するためのリリースデータを
楽音信号発生部33に出力して本処理を一旦終了する。
尚、楽音信号発生部33は、このリリースデータを受け
ると、そのデータが表す鍵番号に対応した楽音信号の出
力を所定の減衰パターンで停止し、これによって、その
鍵盤号に対応する発音が停止されることとなる。
【0038】また、S140にて、オフイベントがない
と判定した場合、即ちオンベントもオフイベントもなか
った場合には、何もせず当該発音処理を一旦終了する。
ここで、楽音信号発生部33からDSP35へ出力され
た2系統の楽音信号が如何に処理されてスピーカ45
a,45bから発音されるかについて説明する。
【0039】図3に示すように、DSP35において
は、フィルタ47によって右系統の楽音信号Rinから
300Hz以下の周波数成分が抽出され、その周波数成
分が遅延素子49によって30ms遅延された後、加算
器51に入力される。そして、加算器51は、遅延素子
49から出力された周波数成分と楽音信号発生部33か
ら出力された左系統の楽音信号Linとを加算して、そ
の加算した楽音信号LoutをDAC37に出力する。
【0040】また、DSP35においては、フィルタ5
3によって左系統の楽音信号Linから500Hz以上
の周波数成分が抽出され、その周波数成分が遅延素子5
5によって10ms遅延された後、加算器57に入力さ
れる。そして、加算器57は、遅延素子55から出力さ
れた周波数成分と楽音信号発生部33から出力された右
系統の楽音信号Rinとを加算して、その加算した楽音
信号RoutをDAC37に出力する。
【0041】すると、DAC37は、DSP35からの
各楽音信号Lout,Routをアナログ信号に変換し
て、夫々アンプ43a,43bに出力し、アンプ43
a,43bによって夫々増幅されたアナログ信号に応じ
てスピーカ45a,45bが楽音を出力する。
【0042】つまり、本実施例の電子ピアノEPにおい
ては、楽音信号発生部33から出力された左系統の楽音
信号Linに、右系統の楽音信号Rinにおける300
Hz以下の周波数成分を30msだけ遅延して加算し、
その加算後の楽音信号Loutに応じた楽音を左側のス
ピーカ45aから出力すると共に、楽音信号発生部33
から出力された右系統の楽音信号Rinに、左系統の楽
音信号Linにおける500Hz以上の周波数成分を1
0msだけ遅延して加算し、その加算後の楽音信号Ro
utに応じた楽音を右側のスピーカ45bから出力する
ようにしている。
【0043】以上のように構成された本実施例の電子ピ
アノEPにおいては、左右のスピーカ45a,45bか
ら出力する楽音の音源としてモノラル音を使用している
にも関わらず、楽音信号発生部33が、生成した2系統
の楽音信号にパンニング処理を施すようにしているた
め、例えば鍵盤装置11の左側の鍵11aを押した際に
は左側のスピーカ45aから出力される音の方が右側の
スピーカ45bから出力される音よりも大きくなって、
実際のピアノに近い方向感を得ることができる。
【0044】しかも、本実施例の電子ピアノEPにおい
ては、左側のスピーカ45aからは、楽音信号発生部3
3から出力された本来の左系統の楽音信号Linに右系
統の楽音信号Rinにおける300Hz以下の周波数成
分が30ms遅延されて加算された楽音信号Loutに
応じた音が出力され、また、右側のスピーカ45bから
は、楽音信号発生部33から出力された本来の右系統の
楽音信号Rinに左系統の楽音信号Linにおける50
0Hz以上の周波数成分が10ms遅延されて加算され
た楽音信号Routに応じた音が出力されるように構成
されている。
【0045】よって、鍵盤装置11の左側の鍵11aを
押した際には、左側のスピーカ45aから大きく出力さ
れる音が、右側のスピーカ45bから実際のピアノにお
ける反射音の如く聞こえてくることとなり、また、右側
の鍵11aを押した際には、右側のスピーカ45bから
大きく出力される音が、左側のスピーカ45aから反射
音の如く聞こえてくることとなる。
【0046】従って、本実施例の電子ピアノEPによれ
ば、実際のピアノ音を複数のスピーカ用に夫々サンプリ
ングしてメモリに格納しておくといった複雑且つ高価な
構成を採ることなく、実際のピアノに近い方向移動感を
得ることができるようになる。
【0047】尚、本実施例のDSP35においては、楽
音信号発生部33からの各楽音信号Rin,Linを、
フィルタ47,53を介して遅延素子49,55へ入力
するようにしたが、フィルタ47,53と遅延素子4
9,55の順序を逆にしてもよい。
【0048】また、本実施例においては、フィルタ47
を300Hz以下のローパスフィルタとし、フィルタ5
3を500Hz以上のハイパスフィルタとしたが、各フ
ィルタ47,53の特性は適宜設定することができる。
また更に、遅延素子49,55の遅延時間も各フィルタ
47,53の特性と共に、適宜設定すればよい。
【0049】一方、上記実施例では、波形メモリ41に
予め各鍵11a毎の波形データを格納しておき、楽音信
号発生部33が、その波形データを用いて楽音信号を生
成するようにしたが、波形データを用いずに楽音信号を
直接生成するようにしてもよい。
【0050】また、上記実施例では、楽音信号発生部3
3が2系統の楽音信号をモノラル音で生成し、それにパ
ンニング処理を施すようにしたが、例えば、2系統の楽
音信号がモノラル音でなく、互いの音が異なるステレオ
音であっても、DSP35におけるフィルタ47,53
及び遅延素子49,55の特性を適宜設定することによ
り、実際のピアノにより近い音の広がり感を得ることが
できる。
【0051】ここで、上記実施例の電子ピアノEPは、
2個のスピーカを備えたものであったが、スピーカの数
は適宜増やしてもよい。例えば、スピーカを左右及びそ
の中心位置に設けた場合には、楽音信号発生部33を、
各スピーカに夫々対応した3系統の楽音信号を発生する
ように構成すればよく、また、DSP35は、図5に例
示する如く構成すればよい。
【0052】即ち、3系統の楽音信号(左系統の楽音信
号Lin,中系統の楽音信号Cin,右系統の楽音信号
Rin)における全ての6つの組み合せ(Lin→Ri
n,Lin→Cin,Cin→Lin,Cin→Ri
n,Rin→Cin,Rin→Lin)について、夫
々、フィルタ59a〜59f及び遅延素子61a〜61
fを設け、加算器63a〜63cによって、各楽音信号
に他の楽音信号から抽出した所定周波数成分を所定時間
遅延して加算するように構成すればよい。
【0053】そして、この場合にも、各フィルタ59a
〜59fの特性FL1,FL2〜FR1,FR2、及び
各遅延素子61a〜61fの遅延時間TL1,TL2〜
TR1,TR2を適宜設定することにより、実際のピア
ノに近い方向移動感を得ることができる。
【0054】また、図5において、フィルタ59a〜5
9f及び遅延素子61a〜61fのうち、何れかを排除
してDSPを構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の電子ピアノの概略構成を示すブロッ
ク図である。
【図2】 電子ピアノに設けられたキーセンサの構成を
説明する説明図である。
【図3】 電子ピアノに設けられたディジタルシグナル
プロセッサ(DSP)の構成を示すブロック図である。
【図4】 電子ピアノのCPUが実行する発音処理を表
すフローチャートである。
【図5】 他の実施例におけるディジタルシグナルプロ
セッサ(DSP)の構成を示すブロック図である。
【図6】 アコースティックピアノにおいて発生する反
射音を説明する説明図である。
【符号の説明】
EP…電子ピアノ 11…鍵盤装置 11a…鍵 21,22…キーセンサ 27…CPU 29…R
OM 31…RAM 33…楽音信号発生部 35…ディジタルシグナルプ
ロセッサ(DSP) 37…D/A変換器(DAC) 41…波形メモリ 43a,43b…アンプ 45a,45b…スピーカ 47,53,59a〜59f…フィルタ 49,55,61a〜61f…遅延素子 51,57,63a〜63c…加算器

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の鍵が並設された鍵盤装置と、 前記鍵の並設方向に並べられ、外部から夫々入力される
    楽音波形に応じた楽音を出力する複数の発音装置と、 前記鍵盤装置の押鍵位置を検出する鍵盤操作検出手段
    と、 該鍵盤操作検出手段により検出された押鍵位置に応じ
    て、前記各発音装置から夫々出力すべき音及びその大き
    さに対応する楽音波形を夫々生成し、該各楽音波形を対
    応する前記各発音装置に出力する楽音波形出力手段と、 該楽音波形出力手段から出力された複数の楽音波形のう
    ち所定の2つ1組の楽音波形に対して設けられ、一方の
    楽音波形から所定周波数成分を抽出すると共に該周波数
    成分を所定時間遅延して他方の楽音波形に加算する楽音
    波形合成手段と、 を備えたことを特徴とする電子鍵盤楽器。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の電子鍵盤楽器におい
    て、 前記発音装置を、少なくとも前記鍵盤装置の中央に対し
    て左右側に夫々設けると共に、 前記楽音波形合成手段を、前記左側の発音装置に対応す
    る楽音波形と前記右側の発音装置に対応する楽音波形と
    に対し、互いの所定周波数成分が所定時間遅延されて相
    手側に加算されるように、少なくとも2つ設け、 更に、前記各楽音波形合成手段が抽出する前記所定周波
    数成分及び前記各楽音波形合成手段が遅延する前記所定
    時間を夫々異なる値に設定したこと、 を特徴とする電子鍵盤楽器。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の電子鍵盤
    楽器において、 前記楽音波形出力手段が、 前記鍵盤操作検出手段により検出された押鍵位置に応じ
    て1つの楽音波形を生成する楽音波形生成手段と、 該楽音波形生成手段によって生成された楽音波形を、前
    記各発音装置から夫々出力される楽音の音量が前記検出
    された押鍵位置に近い発音装置ほど大きくなるように調
    整して、前記各発音装置へ夫々出力する楽音波形調整手
    段と、 を備えたこと、 を特徴とする電子鍵盤楽器。
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