JP4094441B2 - 電子楽器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子楽器に関し、特に、CD(Compact Disk)の再生楽音に合わせて、鍵が自動的且つ擬似的に押鍵又は離鍵される電子楽器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、機器本体や記憶媒体に記憶された押鍵及び離鍵情報、又は、外部から入力されるMIDIデータ等による押鍵及び離鍵情報に基づいて、演奏者が鍵を弾いているかのように自動的に押鍵又は離鍵させることにより自動演奏を行う自動演奏ピアノが知られている。例えば、MIDIデータ(演奏データ)に基づく押鍵又は離鍵動作とスピーカからの楽音の放音(発音)とのタイミングを合わせて、鍵の動きと発音される楽音とが一致して見えるような自動演奏ピアノが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、市販の音楽CDの楽曲データと、その楽曲の押鍵及び離鍵情報(MIDIデータ)とを、その互いの対応関係に基づいて同期させて出力することにより、CDの再生に伴って発生される楽音に合わせて、押鍵及び離鍵情報に基づいて演奏が行われる自動演奏ピアノが知られている(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−266354号公報(請求項1など)
【特許文献2】
特開2002−215143号公報(請求項1、段落[0043]など)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの自動演奏ピアノで鍵を駆動させるためには、MIDIデータ等の押鍵及び離鍵情報を予め準備する必要があり、そのような押鍵及び離鍵情報を入手できなければ自動的に鍵を駆動させることができないという問題点がある。一方、押鍵及び離鍵情報の利用ではなく、CDの楽音からピッチを検出し、その結果に基づいて鍵を駆動させることを試みても、CDに記録されている楽曲の多くは多数の楽音で構成されるので、その多数の楽音の中からピッチを検出するには大規模な装置が必要となり、実用的でないという問題点がある。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、特別な押鍵及び離鍵情報を必要とすることなく、市販のCDの楽曲を演奏させると、その楽曲が演奏されているかのように鍵が動作する電子楽器を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1記載の電子楽器は、複数の鍵を備える鍵盤と、その鍵盤の各鍵を駆動させる鍵駆動手段と、楽音信号を入力する楽音信号入力手段と、その楽音信号入力手段により入力された楽音信号における隣接する複数の鍵に対応する周波数帯域毎の楽音のレベルを検出する帯域レベル検出手段と、その帯域レベル検出手段により検出された結果に基づいて、前記鍵盤の鍵に対し、前記鍵駆動手段により駆動させる鍵を割り当てる鍵割当手段と、その鍵割当手段により割り当てられた鍵を駆動させるように前記鍵駆動手段を制御する鍵駆動制御手段とを備えている。
【0008】
この請求項1記載の電子楽器によれば、楽音信号入力手段によって楽音信号が入力されると、先ず、入力された楽音信号における隣接する複数の鍵に対応する周波数帯域毎の楽音のレベルが帯域レベル検出手段により検出される。次いで、その帯域レベル検出手段の検出結果に基づいて、鍵盤における複数の鍵に対し、鍵割当手段によって、鍵駆動手段により駆動される鍵が割り当てられ、その割り当てられた鍵が駆動されるように、鍵駆動制御手段により鍵駆動手段が制御される。
【0009】
請求項2記載の電子楽器は、請求項1記載の電子楽器において、前記帯域レベル検出手段の検出結果に基づいて、前記鍵盤の所定領域における押鍵数を決定する押鍵数決定手段を備え、前記鍵割当手段は、前記押鍵数決定手段により決定された押鍵数に応じて、前記鍵盤の所定領域において駆動される鍵を割り当てる。
【0010】
請求項3記載の電子楽器は、請求項1又は2記載の電子楽器において、鍵駆動制御手段により押鍵状態に駆動された鍵に対し、押鍵に基づく楽音を非生成とするよう制御する楽音制御手段を備えている。
【0011】
請求項4記載の電子楽器は、請求項1から3のいずれかに記載の電子楽器において、帯域レベル検出手段によりレベルを検出した後に、楽音入力手段により入力された楽音の発生を所定時間遅延させるよう制御する遅延手段を備えている。
【0012】
【発明の効果】
本発明の電子楽器によれば、CD再生等によって入力された楽音信号における隣接する複数の鍵に対応する周波数帯域毎の楽音のレベル(例えば、音量レベル)が検出され、その検出結果に応じて駆動される鍵が割り当てられる。よって、MIDIデータ等の押鍵及び離鍵情報を必要とすることなく、市販のCD等、楽音が記録されている記憶媒体を再生するだけで鍵を動作させることができる。また、周波数帯域毎の音量レベルに応じて押鍵数が決定されるので、市販のCDに記録されている楽音の音程や強弱を模倣した鍵の動きを実施できる。更に、押鍵に基づく発音が生成しないよう構成され、又、楽音のレベルの検出後に楽音の発生を遅延させるよう構成されているので、擬似的な動作であってもCDに記録されている楽曲を自動演奏しているかのように見せることができる。その結果、聴者を、聴覚的だけでなく視覚的にも楽しませることができるという効果がある。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施例における電子楽器1の電気的構成を概略的に示したブロック図である。
【0014】
電子楽器1には、CPU10と、ROM11と、RAM12と、鍵盤13と、各種操作子14と、音源15と、DSP16と、これらの構成間を接続するバスライン(BUS)17と、CDを再生するためのCDプレーヤ18と、CDプレーヤ18から入力されたアナログ信号を、DSP16で処理するためにディジタル信号に変換するA/Dコンバータ(A/D)19と、DSP16から入力されたディジタル信号を、スピーカー等(図示せず)から楽音として放音するために、アナログ信号に変換するD/Aコンバータ(D/A)20とが主に搭載されている。
【0015】
CPU10は、電子楽器1全体を制御する中央演算処理装置であり、ROM11には、このCPU10により実行される各種の制御プログラムや、その実行の際に参照される固定値データが格納されている。RAM12は、CPU10で実行される制御プログラムに必要な各種レジスタ群などが設定されたワーキングエリアや、処理中のデータを一時的に格納するテンポラリエリア等を有しランダムにアクセスできる書き換え可能なメモリである。
【0016】
鍵盤13は、複数の鍵を備えて構成され、鍵操作に応じて楽音の発音又は消音等の指示を行うものである。鍵盤13を構成する各鍵毎にソレノイドコイル(図示せず)及びセンサ(図示せず)が備えられている。奏者が押鍵又は離鍵操作を行うと、センサがその操作を検出し、CPU10の制御下において、音源15において押鍵又は離鍵動作に基づく楽音のディジタル信号が生成され、DSP16でその生成楽音が処理された後、D/Aコンバータ20でアナログ信号に変換されることにより、楽音が発音又は消音される。一方、後述する自動演奏ピアノとしての動作時(CD演奏モード時)には、CPU10が、押鍵又は離鍵情報に基づいて、ソレノイドコイルに印加すべき駆動電圧を制御することにより、押鍵又は離鍵動作が実施される。
【0017】
各種操作子14としては、CDプレーヤ18を操作するためのCD操作ボタン31(図2)や、電子楽器1の各種操作(音色選択等)を行うための種々の操作子や、電子楽器1の動作モード(通常演奏モード又はCD演奏モード)を表示するモード表示LED30(図2)等が含まれる。
【0018】
DSP16は、ディジタル信号の楽音データを処理するための演算装置(Digital Signal Processor)であり、音源15又はA/Dコンバータ19から入力されるディジタル信号を電子楽器1の動作モードに応じた楽音データに変換するものである。DSP16には、図5に示すフローチャートの制御プログラム等を記憶するプログラムデータメモリや、その制御プログラム実行時に必要となるワーキングレジスタ等を含むRAMが内蔵されている。なお、本実施例の電子楽器1においては、DSP16では、後述するように、CDプレーヤ18の再生に伴う入力楽音を複数の周波数帯域に分割して、各周波数帯域毎の音量レベルを求めて内蔵のレジスタに記憶させたり、該入力楽音に遅延処理を施してD/Aコンバータへ出力させたり等の処理(DSP処理(図5))が行われる。
【0019】
CDプレーヤ18は、楽音を記録した記憶媒体であるCDの再生装置であり、CPU10から出力ポート(図示せず)を介して接続され、CD操作ボタン31(図2)の操作に基づいて、CPU10によって再生、停止等が制御される。また、CDプレーヤ18でCDを再生することによって発生するアナログ信号の楽音は、DSP処理(図5)を行うためのディジタル信号に変換するためにA/Dコンバータ19へ出力される。
【0020】
次に、図2を参照して、各種操作子15が設けられた操作パネルについて説明する。図2は、操作パネルを部分的に示した図である。この操作パネルには、各種操作子として、電子楽器1の動作モード設定を表示するモード表示LED30と、CDを演奏させる際に操作されるCD操作ボタン類31とが配設されている。
【0021】
モード表示LED30は、通常演奏モードLED30aとCD演奏モードLED30bとから構成され、電子楽器1が、通常演奏モードにある場合、CD演奏モードにある場合にそれぞれのLEDが発光する。ここで、「通常演奏モード」とは、電子楽器1に備えられている鍵を押鍵又は離鍵操作することにより発音又は消音させる(演奏する)モードであり、電源投入時又はSTOPボタン31aの操作時に起動するモードである(図3参照)。一方、「CD演奏モード」とは、CDの再生による発音に合わせて、擬似的に押鍵又は離鍵動作を行うモードであり、CDプレーヤー18にCDを配置し、PLAYボタン31bを操作することにより起動するモードである(図3参照)。なお、図2では、電子楽器1が通常演奏モードにあり、通常演奏モードLED30aが発光した状態を図示している。
【0022】
CD操作ボタン群31は、電子楽器1でCDに記録された楽曲の演奏(CDの再生)を行うための操作ボタン類であり、CDの再生を停止するためのSTOPボタン31aと、CDの再生を開始するためのPLAYボタン31bと、1つ前の曲を再生させる場合に操作する曲選択−ボタン31cと、1つ次の曲を再生させる場合に操作する曲選択+ボタン31dとから構成される。
【0023】
次に、図3を参照して、本実施例の電子楽器1のCPU10で実行されるメイン処理について説明する。この処理プログラムは、電源が投入されている間、CPU10によって繰り返し実行される。
【0024】
電源が投入(ON)されると、CPU10においてこのメイン処理を実行するプログラムが起動し、先ず初期化としてMODEの値を「通常」とする処理が行われる(S101)。ここで、MODEは、電子楽器1が通常演奏モードにあるか、CD演奏モードにあるかを記憶しておくレジスタであり、通常演奏モードにある場合は「通常」、CD演奏モードにある場合は「CD」という値を持つ。
【0025】
S101の処理において初期化が完了すると、次に、操作子(各種操作子14)が操作されたか否かを確認する(S102)。ここで、操作子の操作が確認されると(S102:Yes)、操作された操作子がSTOPボタン31aか否かを確認する(S103)。S103で確認した結果、操作された操作子がSTOPボタン31aであれば(S103:Yes)、再生中(演奏中)のCDの停止処理を行うと共に、MODEの値を「通常」とし(S108)、後述するS112の処理へ移行する。
【0026】
一方、S103の処理で確認した結果、操作された操作子がSTOPボタン31aでなければ(S103:No)、次に、PLAYボタン31bが操作されたか否かを確認する(S104)。なお、CDが停止状態、即ち、MODEが「通常」である状態でSTOPボタン31aが操作されたとしても、STOPボタン31aの操作は無効であるものとする。この場合も、S103からS104へ処理を移行する。
【0027】
S104の処理で確認した結果、PLAYボタン31bが操作されていれば(S104:Yes)、CDの再生開始処理を行うと共に、MODEの値を「CD」とし(S109)、後述するS112の処理へ移行する。
【0028】
一方、S104の処理で確認した結果、操作された操作子がPLAYボタン31bでなければ(S104:No)、次に、曲選択−ボタン31cが操作されたか否かを確認する(S105)。なお、CDが再生(演奏)中、即ち、MODEが「CD」である状態でPLAYボタン31bが操作されたとしても、PLAYボタン31bの操作は無効であるものとする。この場合も、S104からS105へ処理を移行する。
【0029】
S105の処理で確認した結果、曲選択−ボタン31cが操作されていれば(S105:Yes)、1つ前の曲を選択し(S110)、後述するS112の処理へ移行する。
【0030】
一方、S105の処理で確認した結果、操作された操作子が曲選択−ボタン31cでなければ(S105:No)、曲選択+ボタン31dが操作されたか否かを確認する(S106)。S106の処理で確認した結果、曲選択+ボタン31dが操作されていれば(S106:Yes)、1つ後の曲を選択し(S111)、後述するS112の処理へ移行する。
【0031】
S106の処理で確認した結果、操作された操作子が曲選択+ボタン31dでなければ(S106:No)は、他の操作子(例えば、ボリューム調整操作子、音色を選択するための操作子等)に対応した処理を行い(S107)、S112の処理へ移行する。
【0032】
S102〜S111の処理により、電子楽器1における動作モード(MODEの値)の設定と再生を行う楽曲の設定とが終了したら、次いで、MODEの値が「CD」であるか否かを確認する(S112)。S112の処理で確認した結果、MODEの値が「CD」でなければ(S112:No)、この場合はMODEの値が「通常」、即ち、電子楽器1は通常演奏モードにあるので、鍵盤入力があればそれに基づいて発音消音処理が行われ、楽音が発音又は消音される(S113)。
【0033】
一方、S112の処理で確認した結果、MODEの値が「CD」であれば(S112:Yes)、CDの楽音に合わせて鍵を自動的に押鍵又は離鍵動作させるための自動押鍵離鍵処理(S114)を行う。
【0034】
ここで、図4を参照して、自動押鍵離鍵処理(S114)について説明する。自動押鍵離鍵処理(S114)では、周波数帯域毎の音量レベルに応じて、押鍵又は離鍵動作を行わせるための処理が行われる。なお、本実施例では、後述するように5オクターブ(C2〜B6)の鍵域を5つの周波数帯域(即ち、1つの周波数帯域が1オクターブに相当する)に分割して、各周波数帯域毎に自動押鍵離鍵処理を行う。
【0035】
先ず、処理する周波数帯域を選択する(S201)。即ち、分割された5つの周波数帯域の内の1つが選択される。次いで、S201で選択された周波数帯域について、DSP処理(図5)のS303にて検出された音量レベルを、DSP16内のレジスタから読み込む(S202)。選択された周波数における音量レベルが読み込まれると、以降のS203〜S205の処理により、その音量レベルの大きさが判断され、その音量レベルの大きさに基づいて更にS206〜S209の処理により押鍵数が決定される。
【0036】
S203〜S209の処理について具体的に説明する。S202の処理後、レジスタから読み込んだ音量レベル(DSP処理で検出された音量レベル)が第1所定値より小さいか否か、即ち、DSP処理で検出された音量レベル<第1所定値であるかどうかを確認する(S203)。なお、第1所定値とは、音量レベルの大きさを区分するための閾値である。本実施例では、音量レベルの大きさを4段階に区分するために第1〜第3所定値を設定し、これらの所定値と検出された音量レベルとを比較する。
【0037】
S203の処理で確認した結果、検出された音量レベルが第1所定値より小さければ、即ち、DSP処理で検出された音量レベル<第1所定値であれば(S203:Yes)、RAM12内のレジスタ「新押鍵数」に「0」を書き込む(S207)。
【0038】
一方、S203の処理で確認した結果、DSP処理で検出された音量レベルが、第1所定値以上(第1所定値≦検出された音量レベル)であれば(S203:No)、検出された音量レベルが第2所定値より小さいか否か、即ち、第1所定値≦検出された音量レベル<第2所定値であるか否かを確認する(S204)。S204の処理により、第1所定値≦検出された音量レベル<第2所定値であることが確認されると(S204:Yes)、「新押鍵数」に「1」を書き込む(S208)。
【0039】
また、S204の処理で確認した結果、DSP処理で検出された音量レベルが、第2所定値以上(第2所定値≦検出された音量レベル)であれば(S204:No)、検出された音量レベルが第3所定値より小さいか否か、即ち、第2所定値≦検出された音量レベル<第3所定値であるか否かを確認する(S205)。S205の処理により、第2所定値≦検出された音量レベル<第3所定値であることが確認されると(S205:Yes)、「新押鍵数」に「2」を書き込む(S209)。
【0040】
更に、S205の処理で確認した結果、DSP処理で検出された音量レベルが、第3所定値以上(第3所定値≦検出された音量レベル)であれば(S205:No)、「新押鍵数」に「3」を書き込む(S206)。
【0041】
S203〜S209の処理により、音量レベルに応じた値が「新押鍵数」に記憶されると、次に、その「新押鍵数」の値と、RAM12内に周波数帯域毎に設けられたレジスタ「現在の押鍵数」の内、選択された周波数帯域に対する「現在の押鍵数」の値とを比較し、両者が同じ値(「新押鍵数」=「現在の押鍵数」)であるか否かを確認する(S210)。ここで、「新押鍵数」の値と「現在の押鍵数」の値とが同じでなければ(S210:No)、「新押鍵数」の値が「現在の押鍵数」の値より大きい(「現在の押鍵数」<「新押鍵数」)か否かを確認する(S211)。
【0042】
S211の処理で確認した結果、「新押鍵数」の値が「現在の押鍵数」の値より大きい、即ち、「現在の押鍵数」<「新押鍵数」であれば(S211:Yes)、S201の処理で選択された周波数帯域に対応する鍵に対し、乱数を発生させて音名を決定し、決定された音名の鍵を押鍵動作させ、その処理を新たに増加した鍵数(「新押鍵数」−「現在の押鍵数」)分だけ行なった後、選択された周波数帯域に対する「現在の押鍵数」を「新押鍵数」の値で上書きする(S212)。なお、S212の処理により押鍵動作された鍵に基づく発音処理は行われない。その結果、CDの楽音に対して正確な押鍵動作でなくても、聴者に、CDの楽曲を演奏しているかのように見せることができる。
【0043】
ここで、乱数の発生は、一般的な疑似乱数生成法等の方法を利用することができる。また、S211の処理で決定された音名が、現在押鍵されている鍵の音名と同じ場合には、その音名の鍵を一度離鍵させた後再度押鍵させても、乱数を再度発生させて音名を決定し直しても良い。
【0044】
一方、S211で確認した結果、「新押鍵数」の値が「現在の押鍵数」の値より小さい、即ち、「現在の押鍵数」>「新押鍵数」であれば(S211:No)、S201の処理で選択された周波数帯域に対応する鍵であって、所定値(例えば、64分音符に相当する時間)以上の押鍵時間を越えて押されている鍵の内、押鍵時間の長いものから順に、減少した鍵数(「現在の押鍵数」−「新押鍵数」)分だけ離鍵動作をさせ、選択された周波数帯域に対する「現在の押鍵数」を「新押鍵数」の値で上書きする(S213)。なお、押鍵時間が所定時間を超えない鍵については、離鍵動作をさせないものとする。ここで、押鍵時間が所定時間を超える鍵の数が、離鍵動作を行うべき数(即ち、「現在の押鍵数」−「新押鍵数」)よりも少ない場合、離鍵動作の行われなかった数を「新押鍵数」の値に加算する。例えば、「新押鍵数」の値が「2」で、「現在の押鍵数」の値が「3」であるが、所定時間を越えて押鍵されている鍵の数が「0」である場合、「新押鍵数」の値には「1」が加算される。
【0045】
ここで、所定時間を越える押鍵状態にあり、且つ、一番長く押鍵時間にある鍵を検出する方法としては、例えば、S212の押鍵処理時に、押鍵された音名と押鍵時の絶対時刻(電子楽器1の内部で管理される時刻)を押鍵順に記憶するテーブルをRAM12内に作成し、そのテーブルを利用して押鍵時間を判定する方法がある。この方法では、S213の離鍵処理時における絶対時刻と、テーブルの一番先頭の音名における絶対時刻(即ち、一番長く押鍵状態にある音名が、押鍵された時の絶対時刻)との差(即ち、押鍵時間)を求め、その差が所定時間より長いか否かが判断される。
【0046】
S210の処理で確認した結果、「新押鍵数」の値が「現在の押鍵数」の値と同じであれば(S210:Yes)、S201の処理で選択された周波数帯域の鍵に対しては、押鍵動作又は離鍵動作のいずれも行なわず、後述するS214の処理へ移行する。
【0047】
S210〜S213の処理により、検出された音量レベルに基づいて決定された押鍵数に応じて押鍵又は離鍵動作が行われることとなる。上述したように、押鍵数はCD楽音の音量レベルに応じて決定されるものであり、音量レベルが高い(音が大きい)と多くの鍵が押され、音量レベルが低い(音が小さい)と押鍵数も少なくなるので、聞いた感じに対してバランスの取れた押鍵又は離鍵動作を行わせることができる。
【0048】
S210〜S213の処理の後、この押鍵又は離鍵動作が全ての周波数帯域に対して行われたかどうかを確認する(S214)。S214の処理で、全ての周波数帯域に対して押鍵又は離鍵動作が行われたことが確認されれば(S214:Yes)、この自動押鍵離鍵処理(S114)を終了し、リターンする。一方、S214の処理で確認した結果、全ての周波数帯域の処理が終了してしていないのであれば(S214:No)、S201の処理に移行し、全ての周波数帯域に対してこの自動押鍵離鍵処理を繰り返す。本実施例では、5つの周波数帯域に分割されているので、この自動押鍵離鍵処理(S114)が5回繰り返されることになる。
【0049】
図3に戻って説明する。S113の処理で「通常演奏モード」における押鍵又は離鍵に基づく発音消音処理、又は、S114の自動押鍵離鍵処理により「CD演奏モード」におけるCDの演奏(再生)とそれに合わせた押鍵又は離鍵動作とを行った後は、その他の処理(例えば、電子楽器1の表示装置への表示処理等)を行った後(S115)、S102の処理へ移行する。
【0050】
次に、図5のフローチャートを参照して、DSP16で実行されるDSP処理について説明する。この処理では、CDプレーヤ18で再生されるCDの楽音の音量レベルを周波数帯域毎に検出する処理、及び、CDの再生に基づく楽音の発生と押鍵又は離鍵とのタイミングを合わせるために、CD楽音発生の遅延処理が行われる。尚、この処理は、実際にはサンプリング周期毎に時分割で行われる処理であるが、本実施例では、その概念的な処理の形で示してある。
【0051】
まず、処理する周波数帯域を選択し(S301)、S301の処理により選択された周波数帯域に対して帯域通過フィルタ処理を行う(S302)。本実施例では、押鍵又は離鍵動作をさせる上で視覚的効果の高い鍵域である5オクターブ(C2〜B6)を1オクターブ(C〜B)毎に5分割し、各周波数帯域それぞれにおいて、F#付近を中心周波数(92.5、185、370、740、1480Hz)とし、且つ、Qが2〜6程度である帯域通過フィルタが設定されている。
【0052】
S302の処理後、帯域通過フィルタを通過した楽音の音量レベルを検出し(S303)、ここで検出された音量レベルは、DSP16内に設けた帯域毎のレジスタに記憶される(S304)。S304の処理でレジスタに記憶された音量レベルは、CPU10により読み出され、図4に示す自動押鍵離鍵処理(S114)により、対応する周波数帯域における押鍵数が決定されることとなる。
【0053】
S304の処理後、再生されたCDの楽音における全ての帯域について処理が終了したかどうかを判断する(S305)。S305の処理により、全ての帯域の処理が終了していないと判断された場合(S305:No)、S301の処理に戻り、次の周波数帯域を選択する。
【0054】
S301〜S304の処理は、DSP16へ入力されたCDの楽音における全ての帯域に対して行われ、S305の処理により、全ての周波数帯域に対して処理が行われたと判断されると(S305:Yes)、押鍵又は離鍵動作時間に相当する時間分だけ、CDの楽音信号を遅延する処理を行う(S306)。S306の処理により、押鍵又は離鍵のタイミングと、楽音の発生又は消音のタイミングとをほぼ一致させることができる。この遅延処理が行われた後、S301の処理に戻り、次にサンプリングされた楽音データに対して同様の処理を行う。
【0055】
以上説明したように、本実施例の電子楽器1によれば、CDの楽音における複数の周波数帯域の音量レベルを検出し、その検出結果に応じて押鍵又は離鍵動作を行う、即ち、高い音量レベルが検出された周波数帯域では、その周波数帯域の押鍵数も多く、一方、低い音量レベルが検出された周波数帯域では、その周波数帯域の押鍵数が少なくなるよう自動的に押鍵又は離鍵動作が行われる。また、その自動的な押鍵又は離鍵動作に基づく楽音の発生が生じないよう構成され、更に、CDの再生に基づく発音とその押鍵又は離鍵動作とがほぼ一致するように制御されるので、聴者には、この電子楽器1がCDに記録されている楽曲を自動演奏しているかのように見せることができる。
【0056】
なお、請求項1記載の鍵盤としては鍵盤13が該当し、鍵駆動手段としては、「鍵盤13の各鍵に備えられた図示されないソレノイド」が該当し、楽音入力手段としては、CDプレーヤ18及びA/Dコンバータ19が該当し、帯域レベル検出手段としては、DSP16で実行されるDSP処理(図5)におけるS301〜S303の処理が該当し、鍵割当手段としては、CPU10で実行される自動押鍵離鍵処理(図4)におけるS210〜S213の処理が該当し、鍵駆動制御手段としては、CPU10が該当する。
【0057】
請求項2記載の押鍵数決定手段としては、CPU10で実行される自動押鍵離鍵処理(図4)におけるS203〜S209の処理が該当する。請求項3記載の楽音制御手段としては、CPU10で実行されるメイン処理(図3)における、S112及びS114の処理が該当する。請求項4記載の遅延手段としては、DSP16で実行されるDSP処理(図5)におけるS306の処理が該当する。
【0058】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定される物ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0059】
例えば、上記実施例では、押鍵する音名を決定するために乱数を用いたが、この乱数に対して調性などの音楽的情報による重み付け、例えば、調性に基づいて次に押鍵される可能性の高い鍵を予想する等をしても良い。また、乱数でなく、予め定られた音列の順に従うように音名を決定しても良い。これにより、より音楽的に自然な感じで、疑似的な押鍵又は離鍵動作を行い得る。
【0060】
また、上記実施例の方法に加え、CDにより再生される楽音のピッチを検出するピッチ検出手段を併用するように構成しても良い。ピッチ検出手段を併用することによって、単音の多い楽音信号に対しては、より楽音信号に近い状態の押鍵又は離鍵動作を行い得る。
【0061】
また、上記実施例において、フーリエ変換等によって得られる周波数スペクトルに基づいて、対応する鍵を押鍵するようにしても良い。
【0062】
また、上記実施例では、周波数帯域毎の音量レベルの閾値を、第1〜第3所定値の3種類としたが、この閾値は3種類より多くても、3種類より少なくても良い。更に、この閾値及び閾値の数をユーザーによって可変できるように構成したり、複数の閾値の組からユーザーが選択できるように構成しても良い。
【0063】
また、上記実施例では、いずれの周波数帯域に対しても同じ閾値を用いたが、周波数帯域別に異なる閾値を用いても良い。
【0064】
また、上記実施例では、周波数帯域毎の音量レベルに応じて押鍵数が決定されたが、更に狭帯域の帯域通過フィルタを設け、それぞれの出力に対して1つの鍵を割り当てるように構成しても良い。これにより、より楽曲に近い形の疑似的な押鍵又は離鍵動作を行い得る。
【0065】
また、上記実施例では、音量レベルを検出するための周波数帯域の数を5と設定したが、その数を更に増やしても良い。また、押鍵対象とする鍵域についても、5オクターブ(1オクターブ×5)に限らず88鍵全域としても良い。
【0066】
また、上記実施例では、CD演奏モード時には押鍵動作による発音はされないものとしたが、CD演奏モード時であっても演奏者により押鍵された鍵に対しては発音されるよう構成しても良い。
【0067】
また、上記実施例では、CDプレーヤ18は電子楽器1に内蔵されているが、外付けのCDプレーヤを使用できるように構成しても良い。
【0068】
また、上記実施例では、CDプレーヤ18から入力される信号をアナログ信号としたが、CDプレーヤ18から直接デジタル信号が入力されるように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施例の電子楽器の電気的構成を概略的に示したブロック図である。
【図2】 本実施例の電子楽器の操作パネル部分の正面図である。
【図3】 CPUにより実行されるメイン処理のフローチャートである。
【図4】 CPUにより実行される自動押鍵離鍵処理のフローチャートである。
【図5】 DSPにより実行されるCD楽音処理のフローチャートである。
【符号の説明】
1 電子楽器
10 CPU(帯域レベル検出手段の一部、鍵割当手段の一部、鍵駆動制御手段の一部、押鍵数決定手段の一部、楽音制御手段の一部)
13 鍵盤
16 DSP(帯域レベル検出手段の一部、遅延手段の一部)
18 CDプレーヤ(楽音入力手段の一部)
19 A/Dコンバータ19(楽音入力手段の一部)
Claims (4)
- 複数の鍵を備える鍵盤と、
その鍵盤の各鍵を駆動させる鍵駆動手段と、
楽音信号を入力する楽音信号入力手段と、
その楽音信号入力手段により入力された楽音信号における隣接する複数の鍵に対応する周波数帯域毎の楽音のレベルを検出する帯域レベル検出手段と、
その帯域レベル検出手段により検出された結果に基づいて、前記鍵盤の鍵に対し、前記鍵駆動手段により駆動させる鍵を割り当てる鍵割当手段と、
その鍵割当手段により割り当てられた鍵を駆動させるように前記鍵駆動手段を制御する鍵駆動制御手段とを備えていることを特徴とする電子楽器。 - 前記帯域レベル検出手段の検出結果に基づいて、前記鍵盤の所定領域における押鍵数を決定する押鍵数決定手段を備え、
前記鍵割当手段は、前記押鍵数決定手段により決定された押鍵数に応じて、前記鍵盤の所定領域において駆動される鍵を割り当てることを特徴とする請求項1記載の電子楽器。 - 前記鍵駆動制御手段により押鍵状態に駆動された鍵に対し、押鍵に基づく楽音を非生成とするよう制御する楽音制御手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の電子楽器。
- 前記帯域レベル検出手段によりレベルを検出した後に、前記楽音信号入力手段により入力された楽音の発生を所定時間遅延させるよう制御する遅延手段を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子楽器。
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