JPH0811034A - 工業用スクレーパ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 工業用スクレーパの取付作業が短時間で済
み、適度の押さえ代の目視確認が簡単に行える工業用ス
クレーパを提供する。 【構成】 互いに摺動する摺動部材の一方に対して取り
付けられる取付部２と、該取付部２から斜めに突設さ
れ、他方の摺動部材の摺動面に向かって押し付けられる
リップ部３と、該リップ部３が傾斜する側と前記取付部
２との境界付近に沿って設けられ、押し付け量によって
その開口の幅が変わる溝４と、を備えてなる工業用スク
レーパにおいて、前記溝４に互いに噛み合い可能な一対
の凹凸部５，６を設け、溝４の開口が狭くなる方向に押
し込むと変わる一対の凹凸部５，６の噛み合い程度によ
って所定の押さえ代を目視で検査できるようにした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、工作機械等の如く互い
に摺動する摺動部材を有するものにおいて、一方の摺動
部材に取り付けられ、他方の摺動部材の摺動面に接触し
て、摺動面上の切り屑や切削油等を掻き取り、摺動面に
傷が付くのを防止し、摺動面の精度を常に最高に保つよ
うにするために用いられる工業用スクレーパに関する。

【０００２】

【従来の技術】この種の工業用スクレーパとしては、出
願人が先に提案した実開平２−８５５４８号公報及び実
開平３−１９６５３号公報に開示されるものが知られて
いる。図７に示されるように、この工業用スクレーパ１
は、取付部２と、リップ部３と、溝部４とを備えてなる
ものである。

【０００３】取付部２は、摺動部材の一方であるサドル
１１に対してボルト１３等で取り付けられる部分であ
り、ＮＢＲやポリウレタン等の如く硬度７０〜９０°の
合成ゴムからなる弾性部材２ａの表面に剛性部材として
の金属板２ｂを加硫接着等で張り付けて形成されてい
る。金属板２ｂはボルト１３の締付力が長手方向に均一
に伝わる当て板としての役割を果たしている。なお、こ
の金属板２ｂを弾性部材で一体成形されるスクレーパ本
体とは別部品とし、ボルト１３による取付時に重ね合わ
せて用いるものとすることもできる。

【０００４】リップ部３は、弾性部材２ａから６０〜３
０°の角度θで斜めに突設されたものであり、弾性部材
２ａと一体成形されている。このリップ部３の先端は取
付部２の取付面と略平行な垂直面となっており、エッジ
部３ａが形成されている。このエッジ部３ａが摺動部材
の他方である摺動ベッド１２の摺動面に接触する。

【０００５】溝部４は、取付部２とリップ部３の境界付
近に沿って設けられ、リップ部３の適度の湾曲変形を可
能にしている。この溝部４によって、リップ部３の上方
への湾曲変形がし易く、リップ部３がめくれるような下
方への湾曲変形がしにくくなっている。

【０００６】このような形状を有する工業用スクレーパ
１は、図示のように、取付部２の部分でサドル１１に取
り付けられ、リップ部３の部分が摺動ベッド１２の摺動
面に接触している。そして、サドル１１が摺動ベッド１
２に対して矢印ａのように往復動すると、摺動ベッド１
２の上にある切り屑や切削油等がリップ部３のエッジ部
３ａで掻き取られて、摺動ベッド１２の摺動面に対する
切り屑等のカミ込みが起こらず、一対の摺動部材による
摺動精度が損なわれない。

【０００７】ところで、このような、リップ部３の掻き
取り機能を確実なものとするためには、リップ部３が摺
動ベッド１２の摺動面に対して所定の押し付け力Ｐとな
るように取り付けられている必要がある。この押し付け
力Ｐを得るために、工業用スクレーパ１を矢印ｂ方向に
所定の押さえ代で押し込み、この押さえ代が得られた状
態でボルト１３等にて固定する。

【０００８】このような押さえ代を得るための従来の取
付方法を、図８により説明する。図８（ａ）のように、
工業用スクレーパ１をサドル１１にボルト１３で仮止め
し、リップ部３のエッジ部３ａが摺動ベッド１２に僅か
に接触する状態にする。そして、針の方向が押し込み方
向になるようにダイヤルゲージ１４をサドル１１側に固
定し、ダイヤルゲージ１４の目盛りをゼロにする。つぎ
に、図８（ｂ）のように、取付部２を摺動ベッド３に向
かって押し込み、リップ部３を取付部２の側に湾曲変形
させる。この時の押さえ代εはダイヤルゲージ１４の目
盛りに表示される。このダイヤルゲージ１４の目盛りを
チェックしながら、所定の押さえ代εにした後、ボルト
１３を本締めして、工業用スクレーパ１の取付を完了す
る。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】上述した工業用スクレ
ーパの良好な性能は適度の押さえ代によって得られるよ
うになっており、取付時には所定の押さえ代を確保する
必要がある。この押さえ代は小さな値であり、ダイヤル
ゲージ１４のような測定器具を用いることになる。しか
しながら、ダイヤルゲージ１４を使った取付作業は確実
であるものの、ダイヤルゲージ１４による測定工程を組
み込むために取付に時間がかかるという問題点がある。
また、工作機械のように複雑に入り組んだところに摺動
部材がある場合、ダイヤルゲージ１４をセットし、その
目盛りを読むためのスペースが確保できない場合もあ
る。

【００１０】本発明は、従来の技術の有するこのような
問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすると
ころは、工業用スクレーパの取付作業が短時間で済み、
適度の押さえ代の目視確認が簡単且つ確実に行える工業
用スクレーパを提供することにある。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の請求項１記載の発明は、互いに摺動する摺動部材の一
方に対して取り付けられる取付部２と、該取付部２から
斜めに突設され、他方の摺動部材の摺動面に向かって押
し付けられるリップ部３と、該リップ部３が傾斜する側
と前記取付部２との境界付近に沿って設けられ、押し付
け量によってその開口の幅が変わる溝４と、を備えてな
る工業用スクレーパにおいて、前記溝４に互いに噛み合
い可能な一対の凹凸部５，６を設けたものである。

【００１２】また、請求項２記載の発明のように、前記
一対の凹凸部５，６の一方の先端５ａと他方の先端６ａ
とは、押し付け前には所定間隔だけ隔てており、押し付
け後には略一直線に揃うようにしたものが好ましい。

【００１３】さらに、請求項３記載の発明のように、平
面形状が直線の長尺状に形成され、取付前に適宜長さで
切断される工業用スクレーパであって、前記凹凸部は前
記溝の全長にわたって設けられているものが好ましい。

【００１４】

【作用】請求項１記載の発明において、使用時に摺動面
のデコボコによってリップ部３が湾曲変形し、溝４の開
口の幅が小さくなる場合であっても、前記溝４における
互いに噛み合い可能な一対の凹凸部５，６の噛み合い程
度が変わるだけで、自由な湾曲変形を阻害せず、湾曲変
形を容易とする本来の溝４の機能が維持される。取付時
に、所定の押さえ代とするために、溝４の開口が狭くす
る方向に押し込むことでも、一対の凹凸部５，６の噛み
合い程度が変わる。この噛み合い程度は相対的なもので
あるため、目視で確認可能であり、所定の押さえ代を目
視で検査できる。

【００１５】請求項２記載の発明において、所定の押さ
え代が、一対の凹凸部５，６の一方の先端５ａと他方の
先端６ａとが略一直線に揃った時に得られるようにする
と、目視確認がし易くなる。

【００１６】請求項３記載の発明において、前記凹凸部
５，６は前記溝４の全長にわたって設けられおり、何処
で切断されても前記凹凸部５，６が一様に存在し、取付
時にどの様な角度からでも噛み合い程度が目視確認でき
る。

【００１７】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ説
明する。図１は本発明の工業用スクレーパの取付前の状
態を示す図であり、図２は本発明の工業用スクレーパの
取付時の状態を示す図である。図１及び図２において、
（ａ）は正面図、（ｂ）はＸ−Ｘ断面図、（ｃ）はＹ−
Ｙ断面図を示す。

【００１８】この工業用スクレーパ１が、取付部２と、
リップ部３と、溝４とを有する基本構造は図７で説明し
たものと同様であり、同じ符号を付してその説明を省略
する。図７と異なる点は、溝４に噛み合い可能な一対の
凹凸部５，６が設けられた点である。

【００１９】一方の凹凸部５は、溝４の取付部２側に一
体成形で設けられたものであり、正面から見ると角張っ
た下向きの凹凸状であって、下向きの突出部５ａを所定
ピッチＰで底部５ｂに対して突設したものである。

【００２０】他方の凹凸部６は、溝４のリップ部３側に
一体成形で設けられたものであり、一方の凹凸部５と同
様に正面から見ると角張った上向きの凹凸状であって、
上向きの突出部６ａを所定ピッチＰで底部６ｂに対して
突設したものである。

【００２１】そして、一方の凹凸部５の突出部５ａの配
設ピッチＰと他方の凹凸部６の突出部６ａの配設ピッチ
ＰとはほぼＰ×１／２だけずらされており、溝４の開口
が狭くなる方向に押さえられた場合、一方の凹凸部５の
突出部５ａが他方の凹凸部６の底部６ａに向かい、他方
の凹凸部６の突出部６ａが一方の凹凸部５の底部５ａに
向かう噛み合い状態になる。したがって、取付前の状態
では、溝４の開口幅Ｗは凹凸部５，６の存在にもかかわ
らず、長手方向において略一定であり、リップ部３の湾
曲変形に図７のものと同等である。

【００２２】この凹凸部５，６は溝４の一部長にわたっ
て設けられるものでもよいが、平面形状が直線の長尺状
に形成され、取付前に適宜長さで切断される工業用スク
レーパ１の場合には、何処で切断されるか判らないの
で、溝４の全長にわたって凹凸部５，６を設ける。な
お、取付時にボルトを通す孔も、切断後に加工される。

【００２３】つぎに、上述した構造を有する工業用スク
レーパ１の取付作業を説明する。まず、摺動ベッドの摺
動面に沿うような長さに工業用スクレーパ１を切断し、
所定の位置にボルトを通す孔を加工する。摺動面のコー
ナー部が９０°又は６０°で曲がっている場合には、工
業用スクレーパ１を斜めに切断し、突き合わせた場合に
摺動面に沿って９０°又は６０°に折り曲がるようにす
る。

【００２４】そして、切断された工業用スクレーパ１を
そのリップ部３が摺動ヘッド１２に接触する状態になる
ように、図示されないボルト等で仮止めする。取付部２
の上から矢印ｂのように押し込むと、リップ部３が湾曲
変形し、溝４の開口幅はスモールｗのように小さくな
る。ラージＷマイナススモールｗが押さえ代となる。所
定の押さえ代になると、図１（ａ）及び図２（ａ）の対
比から明瞭なように、一対の凹凸溝５，６の噛み合い程
度が変わり、噛み合い程度の変化の状態から押さえ代を
目視で推定できる。

【００２５】特に、所定の押さえ代で、一方の凹凸溝５
の突出部５ａの先端と他方の凹凸溝６の突出部６ａの先
端とが長手方向で一直線に揃うようにすると、目視確認
の方向が斜めであっても、一目瞭然で確認できる。そし
て、所定の押さえ代を目視確認した後、取付部２をボル
ト等で本締めする。

【００２６】このように、取付時の押さえ代の確認が目
視でできるため、ダイヤルゲージのような測定機器を使
用する必要がなく、取付作業が迅速に行われる。さら
に、ダイヤルゲージが取り付けられないような狭い場所
での取付作業も、噛み合い程度の目視確認ができる限り
は確実に行うことができる。

【００２７】図３は一対の凹凸溝の他の形状を示す正面
図である。凹凸溝はパルス状に限らず、図３（ａ）のよ
うに、三角波を噛み合い可能に配設したものや、図３
（ｂ）のようにサインカーブを噛み合い可能に配設した
もの等種々のものが考えられる。要は、溝４の開口幅Ｗ
が確保され、噛み合いによって開口幅Ｗが狭くなり、噛
み合い程度が一目瞭然に判るものであればよい。

【００２８】図４は保護板７を有する工業用スクレーパ
１の側面図である。工業用スクレーパ１の構造は図１で
説明したものと同様であり、溝４に噛み合い可能な一対
の凹凸溝５，６が設けられている。保護板７は燐青銅製
であり、発熱した切り屑が合成ゴム製のリップ部３に直
接触れる恐れがあるような使用例に用いられる。この保
護板７は工業用スクレーパ１と一体で形成されている
と、取付時に溝４の凹凸部５，６の噛み合い程度の目視
確認ができなくなるので、工業用スクレーパ１の取付後
にボルト１５等によって後付け可能に構成されている。

【００２９】摺動ヘッドのＬ字型コーナーやＺ型コーナ
ーに対しては、図１の工業用スクレーパ１を斜めに切断
して突き合わせてＬ字型又はＺ型にすることができる
が、図５のように、Ｌ字型コーナー部２１として一体成
形することもできる。この場合、取付状態が決まってい
るため、見やすい部分の溝４にだけ、一点鎖線で囲った
２か所の凹凸部５，６を設けることとすることができ
る。

【００３０】さらに、摺動ベッドの形状に合わせて、特
殊な形状を有する一体成形品の工業用スクレーパ１を図
６の如く成形できる。図示例の工業用スクレーパ２２は
合成ゴムと当て板代わりの金属板とを加硫接着により一
体的に成形したものである。摺動部に沿って溝４が設け
られており、矢印ｃ方向の押し込み量のバランスは、溝
２３，２４の押し込み量が等分されることで決まり、２
か所の二点鎖線２５，２６における凹凸部の噛み合い程
度が等しくなるように調整し、矢印ｄ方向の押し込み量
のバランスは、溝２７，２８の押し込み量が等分される
ことで決まり、２か所の二点鎖線２９，３０における凹
凸部の噛み合い程度が等しくなるように調整する。この
ように、凹凸部を溝に対して部分的に設けることもでき
る。

【００３１】

【発明の効果】本発明は以上述べた構成を有するもので
あり、以下に述べる優れた効果を奏する。まず、工業用
スクレーパの取付時における重要な押さえ代の調整が特
別の測定器具を用いることなく、目視確認で行えるた
め、取付作業が迅速に行われる。特に、一対の凹凸部
５，６の一方の先端５ａと他方の先端６ａとが略一直線
に揃った時に、所定の押さえ代が得られるようにする
と、押さえ代が１ｍｍ前後という微小なものであって
も、更に目視確認の方向が異なっていても、容易に確認
することができ、押さえ代の過不足という事態が生じな
い。

【００３２】つぎに、一対の凹凸部５，６の噛み合い程
度で押さえ代を目視確認するため、工作機械のように複
雑に機器が組み込まれており、狭い場所に取り付けられ
る工業用スクレーパであっても、スペースの制限を受け
ることなく、一対の凹凸部５，６の噛み合い程度が見え
るという条件さえ満足すると、調整可能である。特に、
溝４の全長にわたって凹凸部５，６が設けられている
と、どのような角度からも目視確認ができ、入り組んだ
場所に取り付けられる工業用スクレーパに適している。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の工業用スクレーパの取付前の状態を示
す図である。

【図２】本発明の工業用スクレーパの取付時の状態を示
す図である。

【図３】溝における一対の凹凸部の他の形状を示す正面
図である。

【図４】保護板付工業用スクレーパの側面図である。

【図５】Ｌ字型工業用スクレーパの斜視図である。

【図６】一体成形による工業用スクレーパの正面図であ
る。

【図７】従来の工業用スクレーパの斜視図である。

【図８】従来の工業用スクレーパの取付状態を示す図で
ある。

【符号の説明】

１ 工業用スクレーパ ２ 取付部 ３ リップ部 ４ 溝 ５，６ 一対の凹凸部

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 互いに摺動する摺動部材の一方に対して
   取り付けられる取付部と、 該取付部から斜めに突設され、他方の摺動部材の摺動面
   に向かって押し付けられるリップ部と、 該リップ部が傾斜する側と前記取付部との境界付近に沿
   って設けられ、押し付け量によってその開口の幅が変わ
   る溝と、 を備えてなる工業用スクレーパにおいて、 前記溝に互いに噛み合い可能な一対の凹凸部を設けたこ
   とを特徴とする工業用スクレーパ。
2. 【請求項２】 前記一対の凹凸部の一方の先端と他方の
   先端とは、押し付け前には所定間隔だけ隔てており、押
   し付け後には略一直線に揃うようにした請求項１記載の
   工業用スクレーパ。
3. 【請求項３】 平面形状が直線の長尺状に形成され、取
   付前に適宜長さで切断される工業用スクレーパであっ
   て、前記凹凸部は前記溝の全長にわたって設けられてい
   る請求項１又は２記載の工業用スクレーパ。