JPH08105390A - ギアポンプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 逃げ溝の形状や溝の深さを変えることによ
り、残水が溜りにくいギアポンプを得る。 【構成】 仮想線１６に近い方向の端面１０、１１か
ら、しかも噛合中心線８を対称軸として吐出側１４およ
び吸込み側１５に向かってケース面に掘られた逃げ溝に
おいて、逃げ溝は端面１０、１１の位置で深く掘られ、
吐出側１４および吸込み側１５に向かって次第に浅く形
成される。この結果、仮想面１６から遠くに離れて行く
に従って残水が溜る容積は小さくなる。この結果、逃げ
溝をはじめケース内部を腐食させにくくあるいは水の劣
化をさせにくくすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は液体を搬送するギアポン
プに関するものである。更に詳述すると、水を搬送する
逃げ溝を形成したギアポンプに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来から一対のギアを噛合させ回転する
ことにより、流体を圧送するように構成されたギアポン
プが知られている。このギアポンプは、例えば冷蔵庫の
自動製氷装置などに適応されている。

【０００３】図４はギアポンプの閉じ込み部の容積変化
と、その容積変化を逃げる逃げ溝の効果の説明図であ
る。まず、図４（ｄ）によれば、ケース１内面を摺動回
転する１対のギア２、２が噛合するとき閉じ込み部３が
生じ、この閉じ込み部はギアの回転に伴って移動し、閉
じ込み部に閉じ込まれた液体は搬送される。図４（ａ）
は閉じ込み開始点、図４（ｃ）は閉じ込み終了点、図４
（ｂ）はその中間の状態である。この閉じ込みは相互の
歯の接点Ａ、Ｂの接動によって起るもので、この結果、
閉じ込み部分の容積ｖは図５に示すように、閉じ込み開
始してから閉じ込み中間までの間においては次第に減少
し、閉じ込み中間位置で最小ｖ_min となり、それを過ぎ
ると次第に増加する。つまり、回転に伴う容積の変動が
ある。

【０００４】水や油などの液体は加圧や減圧に対して物
体の膨縮性がないためポンプギアの閉じ込み部の容積が
減少するときは非常な高圧となり、閉じ込み中間位置を
過ぎて逆に閉じ込み部の容積が増加するときは真空状態
となる。このため閉じ込み容積が減少するとき、軸動力
および軸受負荷が増加する一方、閉じ込み容積が増加し
真空状態となるときは液体に溶解している気体の蒸気圧
が見かけ上低下して沸騰状態に近づき気泡を発生する。
ギアの回転に伴って、閉じ込み部の圧力変動が断続的に
起こるので、ギアは振動し、振動に伴って騒音を発する
だけではなく、吐出圧力を不規則に脈動させ、ポンプ寿
命を短縮する原因となる。

【０００５】この容積変動を防ぐ方法の一つとして、閉
じ込み部の容積変動を逃がす逃げ溝をギア側面のポンプ
ケース部に設ける方法がある。すなわち、前記図５に示
した、閉じ込み部の容積が減少する区間に対応する位置
に、閉じ込み部にある液体を逃がす逃げ溝を設けて、閉
じ込み部と逃げ溝を連通しておけば、閉じ込み容積が減
少するさいの過剰容積Δｖ₁ は逃げ溝４を通じて吐出側
に送りだされて異常な圧力上昇を起こさない。中間状態
を過ぎて、閉じ込み部の容積が増加し始めたならば、閉
じ込み部を別の逃げ溝５によって吸込み側と通じさせれ
ば閉じ込み膨張のさいの不足容積Δｖ₂ は吸い込み側か
ら供給されて真空を発生しない。

【０００６】この方法は公知であるが、従来の逃げ溝は
２つのギアの噛合の中心線に対して垂直方向の線の１対
のギア中心軸に近い線を一辺として吐出口６、吸込み口
７に向かって各々矩形状にケース側面に同じ深さで溝を
掘り下げて逃げ溝４、５としていた。この方式では確か
に閉じ込み部の液体は逃げ溝４、５を通って吐出側もし
くは吸込み側に移動し過剰容積Δｖ₁ および不足容積Δ
ｖ₂ を構成する変動容積Δｖの増減を緩和することがで
きるが、ギアポンプの停止後モータを逆回転させポンプ
内の残水を排水するとき、この溝部に残水が溜り易く、
残水が溜った状態で放置するとこの溝部をはじめケース
内部に腐食が生じるだけではなく、次回使用の際、赤錆
を含む水が吐出してしまう。また、残水自身の劣化（雑
菌の繁殖など）が生じ、再始動後に吸入された水が汚染
されてしまう。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、上記
実状に鑑み、溝部の形状や溝部の深さを変えることによ
り、上記残水が溜りにくくし、溝部を始めケース内部を
腐食あるいは残水の水劣化をさせないようにしようとす
るものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明の請求項１のギア
ポンプは、噛合する２つのギアを囲繞するケースとから
なり、前記２つのギアの側面と対向する前記ケースの壁
に圧送する液体の逃げ溝を形成したギアポンプにおい
て、前記逃げ溝の容積が、前記２つのギアポンプの中心
軸が含まれる仮想面に対して前記仮想面から近い側を大
きく且つ前記仮想面から遠い側を小さく形成したもので
ある。

【０００９】請求項２のギアポンプは、前記逃げ溝の底
部をテーパー状に形成し、前記仮想面から近い側の前記
底部を深く、前記下層面から遠ざかるに従って浅く形成
したものである。

【００１０】請求項３のギアポンプは、前記逃げ溝を略
三角形状に形成し、前記仮想面から近い側を前記略三角
形状の底辺側としたことを要旨とする。

【００１１】

【作用】ケースに掘る逃げ溝の深さもしくは容積を、ギ
アの２つの噛合中心線に対して垂直な方向のギアの２つ
の中心軸に近い所を深くもしくは広くし、吐出側もしく
は吸込み側に向かって次第に浅くもしくは小さくするこ
とにより、逃げ溝の効果を保持しながら、残水を溜りに
くすることができる。この結果、溝部を始めケース内部
を腐食させにくくあるいは水の劣化をさせにくくするこ
とができる。

【００１２】

【実施例】図１（ａ）は本発明に関わるギアポンプを構
成する少なくと１つのケースのケース内平面図の一実施
例であり、図１（ｂ）は上記平面図に一対のギアを載せ
た図である。図４と同じ作用効果を示す部材には同じ符
号を表示し、重複する説明は省く。

【００１３】図１おいて、８は一対のギアが噛合したさ
いに形成される噛合中心線であり、９は一対のギアの中
心間を結ぶ中心軸である。この中心軸が形成する中心線
の紙面垂直方向を仮想面１６とする。１２、１３は仮想
面１６に近い方向を端面１０、１１として端面１０、１
１から、しかも噛合中心線８を対称軸として吐出側１４
および吸込み側１５に向かってケース面に掘られた逃げ
溝である。逃げ溝１２、１３は断面Ａ−Ａに示すよう
に、端面１０、１１の位置で深く掘られ、吐出側１４お
よび吸込み側１５に向かって次第に浅く形成されてい
る。

【００１４】逃げ溝の容積を仮想面１６に近い端面側を
大きくし、仮想面から離れて行くに従って次第に小さく
形成しているので、仮想面から遠くに行くに従って残水
が溜る容積は小さくなる。このことは残水が溜りにくく
なることを意味し、この結果、逃げ溝をはじめケース内
部を腐食させにくくあるいは水の劣化をさせにくくする
ことができる。

【００１５】ここで端面は各種の位置を取ることが想定
されるが、図４に対照される図２において、閉じ込み開
始位置図２（ａ）では、逃げ溝効果があるのは増大する
閉じ込み面積に対応する図示ｐの範囲であり吐出側では
殆ど効果がなくなる。また、閉じ込み中間位置図２
（ｂ）では、仮想面から形成される逃げ溝の端面は相互
の歯の接点Ａ、Ｂがなす噛合中心線の垂直方向位置、図
示Ｐ、Ｑが限界で、これより仮想面側にくると閉じ込み
部が形成されずポンプとしての働きがなくなる。従っ
て、逃げ溝を形成する端面の位置は重要で逃げ溝効果の
ある範囲で任意設定される。これに反して、上記図２
（ａ）で説明したように吸込み側および吐出側では殆ど
効果がなくなるため、噛合中心線８を逃げ溝の端面から
遠ざかる方向にいくに従って逃げ溝が構成する体積を縮
小しても逃げ溝の効果を軽減することはない。

【００１６】このことは逃げ溝として従来例に示した矩
形以外に噛合中心線を逃げ溝の端面から遠ざかる方向で
縮小する各種の形状を取れることを意味する。図３はこ
の例であり、図３（ａ）、図３（ｂ）、図３（ｃ）およ
び図３（ｄ）などに示した各種の形状をとることができ
る。これ以外にも上記に説明したように、逃げ溝の端面
から遠ざかる方向で縮小する形状であれば直線や曲線の
みから構成された形状でなくてよい。また、その断面
も、図３（ｅ）に示す公知のケース面から同一に掘り下
げたもの以外に、図３（ｆ）に示す、端面から吸込み側
もしくは吐出側に行くに従って次第に浅くなるテーパー
をつけた方式をとることができる。これらは上記のよう
に逃げ溝の効果を保持しながらしかも残水を減少するも
のである。

【００１７】また、逃げ溝の容積が、前記仮想面から近
い側を大きく且つ前記仮想面から遠い側を小さく形成す
ることにより、ギアによる水の閉じ込み部の水の排水が
容易になるのは、仮想面１６から見て、閉じ込み部３と
仮想面から近い側の逃げ溝が重なっており、この重なっ
た部分の逃げ溝の深さの深い方が水の排水が容易になる
ためでもある。

【００１８】本発明によるギアアンプは水の圧送以外に
他の液状物質の搬送にも用いることができる。例えば、
水と油の混合したエマルジョンや液状スラッジなどの搬
送にも使うことができ、この場合にも腐食の低減に効果
的に作用するものである。

【００１９】

【発明の効果】以上に述べたように本発明により、従来
の逃げ溝に較べて逃げ溝残水を少なくすることができ
る。しかも、閉じ込み部の容積変動をなくすることがで
きる。この結果、ギアアンプは騒音を発しないばかりで
なく長期に亘って安定して使用できるのでに経済性の高
いものになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１（ａ）は本発明に関わるギアポンプを構成
するケース内平面図の一実施例であり、図１（ｂ）は上
記内平面図に一対のギアを載せた図である。

【図２】端面と閉じ込み開始との関係を示す図である。

【図３】本発明に関わる他の逃げ溝の形状を示す図であ
る。

【図４】ギアポンプの閉じ込みとその圧力変化を逃げる
逃げ溝を設けた理由を説明する図である。

【図５】閉じ込み部分の容積変動を示す図である。

【符号の説明】

３ 閉じ込み部 １０ 端面 １１ 端面 １２ 逃げ溝 １３ 逃げ溝 １４ 吐出側 １５ 吸込み側 １６ 仮想面

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 噛合する２つのギアと、これらギアを囲
   繞するケースとからなり、前記２つのギアの側面と対向
   する前記ケースの壁に圧送する液体の逃げ溝を形成した
   ギアポンプにおいて、 前記逃げ溝の容積が、前記２つのギアポンプの中心軸が
   含まれる仮想面に対して前記仮想面から近い側を大きく
   且つ前記仮想面から遠い側を小さく形成したことを特徴
   とするギアポンプ。
2. 【請求項２】 前記逃げ溝の底部をテーパー状に形成
   し、前記仮想面から近い側の前記底部を深く形成したこ
   とを特徴とする請求項１記載のギアポンプ。
3. 【請求項３】 前記逃げ溝を略三角形状に形成し、前記
   仮想面から近い側を前記略三角形状の底辺側としたこと
   を特徴とする請求項１記載のギアポンプ。