JPH08104714A - 二官能性アクリレート化合物重合体及びその用途 - Google Patents

二官能性アクリレート化合物重合体及びその用途

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JPH08104714A
JPH08104714A JP7090031A JP9003195A JPH08104714A JP H08104714 A JPH08104714 A JP H08104714A JP 7090031 A JP7090031 A JP 7090031A JP 9003195 A JP9003195 A JP 9003195A JP H08104714 A JPH08104714 A JP H08104714A
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伸也 松比良
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正郎 小川
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 一般式(I)で示される化合物の単独重合
体、共重合体、前記化合物からなる架橋剤、前記化合物
を含有する組成物を硬化させてなる硬化組成物。 【化1】 (式中、R1 、R2 、R3 及びR4 はそれぞれ独立し
て、水素原子またはメチル基を表わし、m及びnはそれ
ぞれ独立して2または3を表わし、k及びlはそれぞれ
独立して0または1〜4の整数を表わす。) 【効果】 一般式(I)で示される化合物を含有する組
成物を硬化させてなる硬化組成物は、塗料用、接着剤
用、成形材料用、インキ用、電気絶縁材料用、光学材料
用、ホトレジスト用、写真材料用、刷版材料用、歯科材
料用、繊維処理剤用、医療材料用等の分野に利用でき
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な二官能性アクリ
レート化合物の重合体及びその用途に関する。さらに詳
しく言えば、下記一般式(I)で表わされる二官能性ア
クリレート化合物の単独重合体、共重合体、及びその架
橋剤としての用途、並びに硬化組成物としての種々の用
途に関する。
【0002】
【化2】 (式中、R1 、R2 、R3 及びR4 はそれぞれ独立し
て、水素原子またはメチル基を表わし、m及びnはそれ
ぞれ独立して2または3を表わし、k及びlはそれぞれ
独立して0または1〜4の整数を表わす。)
【0003】
【従来の技術】従来より各種の多官能性アクリレート化
合物が知られている。例えば、エチレングリコールジ
(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メ
タ)アクリレート、ビスフェノール−Aジ(メタ)アク
リレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリ
レート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレー
ト等が、一般的に架橋剤あるいは各種合成樹脂原料とし
て用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
多官能性モノマーを重合させようとする場合、酸素によ
って著しく阻害作用をうけるため、空気と接触している
部分が硬化しにくく、また架橋剤として用いる場合に、
架橋密度を上げて行くとそれだけ硬くはなるが、一方で
脆くなるという問題点を有している。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究
の結果、酸素による重合阻害作用を受けにくく、かつ架
橋剤として用いた場合に架橋密度を上げて硬度を増して
脆くならない新規な二官能性アクリレート化合物を得る
に至った。この化合物は特に架橋剤として有用であり、
インキ、塗料、接着剤、各種被覆剤、成型用樹脂等の原
料として用いることができ、具体例としては下記の表1
に示すものが挙げられる。
【0006】
【表1】
【0007】
【製造方法】一般式(I)の化合物は一般式(II)
【化3】 (式中、R3 及びR4 はそれぞれ独立して、水素原子ま
たはメチル基を表わし、k及びlはそれぞれ独立して0
または1〜4の整数を表わす。)で示される2,2−ビ
ス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパ
ンまたはそのアルキレングリコールエーテルと、一般式
(III )
【化4】 及び/または一般式(IV)
【化5】 (式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立して水素原子ま
たはメチル基を表わし、m及びnはそれぞれ独立して2
または3の整数を表わす。但し、R1 =R2 のときには
m≠n、m=nのときにはR1 ≠R2 であることを条件
とする。)で示されるイソシアナートアルキル(メタ)
アクリレートとを反応させることによって製造すること
ができる。
【0008】製造方法について更に具体的に説明する
と、例えば、一般式(II)で示される2,2−ビス
(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパ
ン、またはその(ポリ)アルキレングリコールエーテル
と、一般式(II)の化合物の−OH基に相当する量、あ
るいはわずかに過剰量のイソシアナートアルキル(メ
タ)アクリレート(一般式(III )及び/または一般式
(IV)の化合物)を無溶媒下、または溶媒中で反応させ
ることにより、対応するウレタン化合物(I)を得るこ
とができる。
【0009】R1 ≠R2 及び/またはm≠nであるウレ
タン化合物(I)を合成する場合には、一般式(II)の
化合物と一般式(III )の化合物をまず反応させ、生成
物の中から対称型の化合物(I)と未反応の化合物(I
I)を除き、次いで残ったOH基に相当する量、あるい
はその量よりもわずかに過剰量の一般式(IV)の化合物
を反応させる。この場合、最初に反応させる一般式(II
I )の化合物の量は、化合物(II)のOH基の1/2に
相当する量でもよいが、30%程度少ない量か、あるい
は逆に多い量を反応させる方が次の分離が容易である。
すなわち、水と混じり合わない溶媒中で、化合物(II)
とそのOH基の1/2の130%に相当する量の化合物
(III )とを反応させ、次いでOH基をNa塩として水
で抽出し、次に酸で中和して逆に有機溶媒で抽出し、水
分を除いた後、残りのOH基に相当する量あるいはわず
かに過剰量の化合物(IV)と反応させる。
【0010】上記の製造方法では、生成物が常温で固体
であるため、ジクロロメタン、ジクロロエタンのような
塩化物系、ベンゼン、トルエンのような芳香族炭化水素
等の、イソシアナートに対して不活性な溶媒中で反応を
行なうのが生成物の取り出しに便利である。
【0011】この時反応を速やかに進行させるために、
触媒を用いるのがよい。触媒としては、錫化合物、例え
ばジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート
等、あるいは三級アミン、例えばDABCO(1,4−
ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)等が用いられ
る。使用する触媒の量は、イソシアナート中の加水分解
性塩素の量によっても異なるがイソシアナート(メタ)
アクリレートの0.1 〜1.5 重量%が適当である。
【0012】また反応工程中での重合を防止するため、
重合禁止剤としてBHT(2,6−ジ−tert−ブチル−
4−ヒドロキシトルエン)またはフェノチアジンを用い
ることが望ましい。重合禁止剤の量としては、イソシア
ナートアルキル(メタ)アクリレートの200〜2000p
pm程度が適当である。
【0013】本反応は、極めて選択性の高い反応であ
り、また例えばエステル化反応のような生成水を除去す
る設備も必要としないので、工業的に容易に目的物
(I)を高い収率で得ることができる。このようにして
得られた二官能性アクリレート化合物(I)はそのまま
で重合原料として用いることができるが、必要に応じて
ジクロルメタンのような溶媒に溶かしてアルカリ水及び
/または水で洗浄してから用いることもできる。また溶
液の形で得られる生成物は、水洗した後蒸発乾固による
か溶媒を卑溶媒と置き換えることにより析出させて純度
のよいものとすることができる。
【0014】
【用途】一般式(I)で示される新規な二官能性アクリ
レート化合物は、単独で重合させて強度、光沢、透明性
に優れた本発明の重合体を製造することができるが、反
応性希釈剤としての他のモノマーと共重合させて共重合
体としてもよく、また一般式(I)の化合物を少量架橋
剤として用いても優れた特性を示す。具体的には、表面
処理剤、例えば塗料、インキ、被覆材料、繊維処理剤、
紙加工剤その他各種のコーティング材料、インキ、接着
剤、シーリング剤、光学材料、歯科材料、医療材料、ホ
トレジスト、写真材料、電気絶縁材料、成形用樹脂等の
原料として使用することができる。
【0015】コモノマーの種類、組成 一般式(I)の化合物と共重合させられるコモノマーの
種類は用途分野により異なり、共重合可能なモノマーは
すべて使用できるが、例えば(メタ)アクリル酸メチ
ル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブ
チル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸
ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アク
リル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)
アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メ
タ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキ
サデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルのような(メ
タ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル
酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、
(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸
アダマンチルのような(メタ)アクリル酸シクロアルカ
ンエステル類、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、
(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アク
リル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキ
シヘキシル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール
エステル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール
エステル、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール
エステル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコー
ルエステルのような(メタ)アクリル酸のヒドロキシア
ルキルエステル類またはポルエーテルポリオールエステ
ル類、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル
酸フェネチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、
(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコールエ
ステル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシ−3−フ
ェノキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸ベンゾ
イルオキシエステル、(メタ)アクリル酸シンナミルの
ような芳香環を含む(メタ)アクリル酸エステル類、
(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)
アクリル酸グリシジルのような環状エーテル基を含む
(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸−
2−アジリジニルエチルエステル、(メタ)アクリル酸
−2−イソシアナートエチルエステル、(メタ)アクリ
ル酸−N,N−ジメチル(またはジエチル)アミノエチ
ルエステル、(メタ)アクリル酸−N−ヒドロキシエチ
ルアミノエチルエステルのような含窒素(メタ)アクリ
ル酸エステル類、(メタ)アクリル酸−2,2,2−ト
リフルオロエチルエステル、(メタ)アクリル酸−1,
1,2,2−テトラヒドロパーフルオロオクチルエステ
ル、(メタ)アクリル酸−1,1,2,2−テトラヒド
ロパーフルオロデシルエステル、(メタ)アクリル酸−
1,1,2,2−テトラヒドロパーフルオロドデシルエ
ステル、(メタ)アクリル酸−1,1−ジヒドロパーフ
ルオロオクチルエステル、(メタ)アクリル酸−1,1
−ジヒドロパーフルオロデシルエステル、(メタ)アク
リル酸−1,1−ジヒドロパーフルオロドデシルエステ
ルのような(メタ)アクリル酸フロロアルキルエステル
類、(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェー
ト、(メタ)アクリル酸スルホプロピルエステルのよう
な無機酸のエステル部分を含む(メタ)アクリル酸エス
テル類、(メタ)アクリル酸トリメトキシ(またはエト
キシ)シリルプロピルエステル、(メタ)アクリル酸ポ
リジメチルシロキサニルプロピルエステルのような(メ
タ)アクリル酸の含珪素エステル類、(メタ)アクリロ
ニトリル、(メタ)アクリルアマイドのような(メタ)
アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル化合物、ス
チレン、(o−,m−,またはp−)ビニルトルエン、
N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、メチ
ルビニルケトン、エチルビニルケトン、酢酸ビニル、塩
化ビニル、塩化ビニリデン等のビニル化合物等が挙げら
れる。またこのようなC=C二重結合を一つだけ含むモ
ノマーのほかに、エチレングリコールジ(メタ)アクリ
レート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオ
ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレ
ングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオー
ルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパント
リ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ
(メタ)アクリレート、ペンタエルスリトールテトラ
(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒ
ドロキシペンタ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)
アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ジビニル
ベンゼン等のようにC=C二重結合を複数個もつモノマ
ーも用いられる。また、共重合に際しては上記モノマー
のみならず、メタクリル樹脂シロップのように予め部分
的に重合させたものを用いることもできる。一般式
(I)の化合物の使用量は用途により異なるが重合体
(組成物)全体の0.5 〜100重量%の範囲で用いられ
る。
【0016】重合法 塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合のような各種
の形態の重合法が可能である。ラジカル発生方法からみ
ると、過酸化ベンゾイルのような過酸化物、クミルヒド
ロペルオキシドのようなヒドロペルオキシド、過硫酸
塩、過酸化水素のような無機系、アゾビスイソブチロニ
トリル(AIBN)のようなアゾ系等の重合開始剤を用
いる重合法、光重合法、電子線重合法等の放射線重合法
等が採用される。重合開始剤を用いる場合その添加量
は、重合成分全体の 0.01 〜10重量%程度、好ましく
は 0.05 〜5重量%である。0.01 重量%より少ないと
十分硬化させることはむずかしく、また10重量%より
多すぎてもポリマーの分子量が低くなり効果は期待でき
ない。
【0017】開始剤は単独で用いてもよいが、場合によ
っては複数のものを組み合わせて(例えばアゾビス系と
ペルオキシド系等)用いることもできる。開始剤は溶媒
またはモノマーに溶かして原料仕込み前に反応器に仕込
んでおくのが普通であるが、重合を完結させるために途
中で最初の仕込み量の5〜10%を数次にわたって加え
ることもある。光重合の場合も開始剤(光増感剤)を加
えて行なうのが普通で、光開始剤としては各種市販され
ているものが使用できるが、α,β−ジケトン類、ベン
ゾイン類(ベンゾイン、2−メチルベンゾインなど)及
びそのアルキルエーテル類(ベンゾインメチルエーテ
ル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエー
テルなど)、フェニルイソプロピルケトンやそれに各種
の置換基がついたもの、ベンゾフェノン、ミヒラーズケ
トンのような特殊なケトン類等が代表的なものとして挙
げられる。また、これらと少量のアミンなどの増感助剤
を併用してもよい。
【0018】重合温度、及び時間については用いる開始
剤の種類、希望するポリマーの性質などによって適宜選
ばれるが、一般的に低温でゆっくり重合させるほど高分
子量のポリマーが得られる傾向にある。
【0019】以下、一般式(I)の化合物の用途につい
て詳述する。一般式(I)の化合物を、例えば架橋剤と
して用いて各種用途に有用な重合体組成物を調製するこ
とができる。
【0020】特に架橋剤としての一般式(I)の化合物
の特徴を挙げれば以下のとおりである。 架橋剤として用いた場合、架橋密度を上げて硬度を増
しても伸び特性が落ちない。通常用いられている架橋
剤、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリ
レート、エチレングリコールジ(メタ)アクレレート、
ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート等を用い
た場合には架橋剤の量を増して硬度を上げようとすると
伸び特性が悪くなり、脆くなるという問題点を有してい
るが、一般式(I)の化合物をこれらの代わりに架橋剤
として用いると、伸び特性を犠牲にせずに硬度を上げる
ことができる。
【0021】酸素による重合阻害効果を受けにくい。
従来よく使われるメタクリル酸系架橋剤の場合、空気と
接触している部分が硬化しにくく、例えば表面が硬化す
るのに長時間を要するとか、型にいれて硬化して成形物
を得ようとする場合に、空気に接触している縁の部分が
硬化しないなどの問題点があるが、一般式(I)の化合
物を架橋剤として用いると、空気と接触している部分で
も阻害作用を受けにくく、比較的短時間で硬化させるこ
とができる。
【0022】具体的適用例 以下、一般式(I)の化合物の適用例について個別に具
体的に説明する。 (1)塗料 一般式(I)の化合物は溶剤型塗料、海洋構築物用塗
料、UV硬化型塗料等各種の塗料用として用いることが
できる。 (イ)溶剤型塗料としては次のような処方がある(な
お、以下に示す処方において部は重量部を表わす。)。 メチルメタアクリレート 37部 スチレン 37部 エチルメタクリレート 15部 化合物 No.1 (表1参照) 4部 ヒドロキシエチルアクリレート 7部 過酸化ベンゾイル 1.5部 上記の混合物を105〜110℃に保ったキシレン80
部中に撹拌しながら2時間かけて滴下する。更に1時間
後、過酸化ベンゾイルを 0.1 部追加し2時間後に再び
過酸化ベンゾイルを 0.1 部追加して反応させると、光
沢、耐摩耗性、耐衝撃性に優れた塗膜を形成するアクリ
ル樹脂が得られる。
【0023】(ロ)海洋構築物用塗料に使用される例と
しては次のような処方がある。 ヒドロキシエチルメタクリレート 38.5部 チタンホワイト 27部 上記の混合物に ヒドロキシエチルメタクリレート 38.5部 化合物 No.1 0.2部 コバルトナフテネート 0.1部 tert−ブチルパーオクタネート 0.3部 の混合物を添加し、よく混合すると粘着性のシロップが
得られる。これを例えば船体に塗布し、20〜30℃で
硬化させると長時間水中にあっても生体が付着せず、更
に水の抵抗が少なくなる。以上のように一般式(I)の
化合物は過酸化物で硬化させる塗料に使用できるが、特
徴がより発揮できるのは光硬化性塗料の分野である。
【0024】(ハ)光硬化性塗料としては、例えば真空
蒸着加工用下地及びトップコート、オーバープリントワ
ニス、木工用塗料、塩ビタイル用クリヤーコート、プラ
スチック用ハードコート、缶詰缶用エナメル等の諸用途
に用いられる。油性インキのオーバープリントワニスは
互着を防いでスプレーパウダーなしでも積重ねることが
できるようにし、さらに耐摩擦性を向上させるために用
いられるもので、例えばアルキッド樹脂をベンゼン存在
下、トルエンスルホン酸を触媒としてアクリル酸を作用
させて得られるアクリル変性アルキッド樹脂に一般式
(I)の化合物を少量混合した紫外線硬化ワニスがロー
ル・コーターなどで塗布される。
【0025】木工用としては、目止め剤、ハードコート
剤として利用されている。ポリエチレングリコールある
いはポリプロピレングリコールのようなポリエーテルポ
リオールまたはポリヒドロキシエチルメタクリレートの
ようなアクリルポリオールとジイソシアナート(トルイ
レンジイソシアナート、メチレンジフェニルジイソシア
ナート、キシリレンジイソシアナート、イソホロンジイ
ソシアナート、水素化メチレンジフェニルジイソシアナ
ート、1,3−または1,4−ビスイソシアナートメチ
ルシクロヘキサンなど)とから得られるウレタンプレポ
リマーに2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させ
てウレタンアクリレートとし、これに1,6−ヘキサン
ジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジア
クリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート
などのジアクリレート類と一般式(I)の化合物を混合
したものを塗布し、紫外線で硬化させる。一般式(I)
の化合物を用いると表面硬度が上がると共に耐衝撃性も
向上する。
【0026】塩ビタイル用クリヤーコートは耐汚染性、
耐擦過傷性、耐火傷性、耐溶剤性を付与し、またワック
スがけ不要のメンテナンスフリータイプとするために利
用されるもので、上記のウレタンアクリレートとテトラ
ヒドロフルフリルアクリレート及び一般式(I)の化合
物を混合したクリヤーコーティング剤が用いられる。
【0027】プラスチック用ハードコートはプラスチッ
ク、特にメタクリル樹脂やポリカーボネート樹脂の表面
硬度を高め、耐擦過傷性を向上するために使用されるも
ので、例えばペンタエリスリトールテトラアクリレート
60部、化合物 No.1 20部、N−ビニルピロリドン
20部を混合したものは耐摩耗性、耐衝撃性、透明性に
すぐれている。
【0028】食缶用としては、缶の外側の下塗用ホワイ
トエナメル、及びオフセット印刷後のオーバーコートに
利用することができる。
【0029】化粧品容器のキャップ、家電用部品、自動
車ヘッドライト、装飾グラス等、プラスチック形成品を
真空蒸着加工したものが最近広く用いられるようになっ
てきたが、この場合の下地用及びオーバーコートとして
用いられる紫外線硬化性塗料に一般式(I)の化合物を
利用すると、蒸着面の鏡面性、表面硬度、密着性に優れ
たものが得られる。
【0030】紫外線硬化性塗料の代表例として、以下に
食缶用ホワイトエナメル用及び真空蒸着加工用の処方例
を示す。
【0031】 [食缶用ホワイトエナメル] ジペンタエルスリトールヘキサアクリレート 8.5部 化合物 No.1 16.9部 メタクリロイルオキシエチルイソシアナートとメチルエチルケトキシムの付加物 21.7部 チタンホワイト 52.2部 ジメチルアミノ安息香酸イソアミル 1.3部 ベンゾフェノン 1.3部
【0032】上記組成物を鋼板上に20〜30μの膜厚
に塗布し、室温で2時間放置して溶媒を蒸発させた後、
紫外線で硬化させると地下層が形成される。この上にオ
フセット印刷により紫外線硬化性インキを印刷し、最終
仕上げ工程で熱硬化型アクリル系ワニスをオーバーコー
トし、190℃で2分間キュアリングする。
【0033】 [プラスチック真空蒸着加工用塗料] ウレタンアクリレート* 16部 ペンタエリスリトールテトラアクリレート 30部 化合物 No.1 19部 ジメトキシフェニルアセトン 5部 混合アルコール溶剤** 30部 *) 分子量=1000、OH価=500のポリエステルポリ
オールと2−メタクリロイロキシエチルメタクリレート
との付加物。 **) メチルアルコール50%、イソプロピルアルコール
25%、n−ブチルアルコール25%からなる混合アル
コール。
【0034】上記混合物からなる紫外線硬化性塗料をプ
ラスチック成形品表面に塗布して硬化させ、その上に金
属を蒸着し、さらにその上にまた紫外線硬化性塗料を塗
布して硬化させると表面が堅くなると共に蒸着面の剥離
が防止されるようになる。
【0035】(2)インキ インキ分野においてはオフセット印刷用インキ、フォー
ム印刷用インキ、グラビヤ印刷用インキなどのほか、ソ
ルダーレジストインキ、陶磁器用絵付けインキ、ノンカ
ーボン紙用減感インキ等の特殊なインキ用に用いられ
る。
【0036】(イ)オフセット印刷用インキ アルキッド樹脂をアクリル酸で処理してアクリル変性ア
ルキッド樹脂とし、これにジペンタエリスリトールヘキ
サアクリレート及び一般式(I)の化合物を架橋剤とし
て加え、光硬化速度の速いインキを作ることができる。
【0037】(ロ)ソルダーレジストインキ ソルダーレジストインキとしては、ビスフェノール型エ
ポキシアクリレート、ノボラック型エポキシアクリレー
トなどに一般式(I)の化合物を少量混合したものが用
いられる。
【0038】(ハ)陶磁器用絵付けインキ 陶磁器の絵付け用転写紙は台紙のうえに、絵柄インキ層
とカバーコート層をスクリーン印刷したものであるが、
この絵柄インキ及びカバーコート用インキに一般式
(I)の化合物が利用される。絵柄インキには低分子量
ポリエステルを中心に、一般式(I)の化合物及び他の
(メタ)アクリル酸エステル類を組み合わせて用いる。
カバーコート用インキには(メタ)アクリル酸エステル
共重合体及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート、一
般式(I)の化合物の組合せが用いられる。特に一般式
(I)の化合物を用いたカバーコート用インキは焼成時
の分解性がよく、クラックや絵柄の飛びの無い美しい仕
上がりとなる。
【0039】(ニ)減感インキ ノーカーボン感圧複写紙の発色を防止する目的で使われ
る減感インキとして、第4級アンモニウム塩、ウレタン
アクリル、一般式(I)の化合物、チタンホワイトなど
からなる組成物が利用できる。
【0040】インキ分野での応用の具体例として、オフ
セット印刷用インキ、絵付け用カバーコートインキ、減
感インキの処方例を以下に示す。
【0041】 [オフセット印刷用インキ] 脂肪酸変性アルキッド樹脂* 78.0部 アクリル酸 12.3部 ベンゼン 9.0部 p−トルエンスルホン酸 0.6部 ハイドロキノン 0.1部 *) アマニ油脂肪酸、トリメチロールプロパン、無水フ
タル酸より合成。 よりなる組成の混合物を水分を除きながら加熱還流して
アクリル変性アルキッド樹脂を得る。得られた組成物1
00部に対し化合物 No.1 6部、ジペンタエルスリト
ールヘキサアクリレート4部を加えてインキ用バインダ
ーが得られる。
【0042】 [絵付け用カバーコートインキ] メタクリル酸メチル・アクリル酸メチル・アクリル酸ブチル共重合体(MW=70 000) 35部 2−ヒドロキシエチルメタクリレート 50部 化合物 No.1 5部 ベンゾインブチルエーテル 10部 なる組成物は分解性のよい紫外線硬化インキとなる。デ
キストリン液を塗布した紙に、紫外線硬化インキを用い
て絵柄を印刷し、硬化させた後、この上にカバーコート
として上記組成物を印刷して紫外線硬化させると転写紙
ができる。この転写紙の絵柄を陶器に転写し、850℃
で焼成するとカバーコート層は消失し、クラックや絵柄
の飛びのない美しい絵付けができる。
【0043】 [減感インキ] エポキシ化大豆油をアクリル酸で処理したものにメタクリロイロキシエチルイソ シアナートを反応させた生成物 41部 ポリプロピレングリコールジアクリレート 28部 化合物 No.1 5部 チタンホワイト 22部 2,4−ジエチルチオキサントン 2部 p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル 2部 なる組成物をノーカーボン紙の中葉紙上に塗布し、紫外
線硬化させて塗膜を形成させると、その部分は圧力がか
かっても発色が防止される。
【0044】(3)接着剤 近年、第2世代の接着剤といわれるものが注目されるよ
うになってきた。この接着剤はアクリルモノマー、触
媒、エラストマーからなり、モノマーが重合する過程で
エラストマーとのグラフト重合が起こりアクリルポリマ
ーとエラストマーとが化学的に結合した硬化物になる。
一般式(I)の化合物をこの第2世代の接着剤の1成分
として利用すると、剥離・衝撃強度の優れた接着層が得
られる。例えば、メタクリル酸メチル、一般式(I)の
化合物、クロルスルホン化ポリエチレン、反応開始剤の
混合物を接着すべき一方の面に塗り、もう一方の面に還
元性促進剤を塗って、両面を軽く擦り合わせるようにし
て密着させると短時間で硬化する。このほか、マイクロ
カプセル型アクリル系接着剤の主剤の1成分としても利
用される。例えば、メタクリル酸メチルのポリマー、ト
リエチレングリコールジメタクリレート、一般式(I)
の化合物、N,N−ジメチル−p−トルイジンの混合物
に重合開始剤の溶液を含むマイクロカプセルを配合し、
一液型のマイクロカプセル型アクリル系樹脂が得られ
る。
【0045】また、紫外線硬化接着剤にも用いられる。
例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルの共重合
体にタッキファイヤーを加えて固形分が46%になるよ
うにトルエンで希釈する。これにOH価=500のアジ
ピン酸−1,6−ヘキサンジオール−ポリエステルのジ
アクリレートを20%、一般式(I)の化合物を10
%、ベンゾフェノンを 0.8%添加して紫外線硬化接着剤
を得る。これをポリエステルフィルムに塗布して乾燥す
る。得られた粘着フィルムをガラス面に張り付け、ガラ
ス面の反対側から、またはポリエステルフィルムの裏面
から紫外線を照射すると粘着層が硬化しガラス面に固着
する。この技術は金属板やアート紙の転写によるコーテ
ィングにも応用できる。接着剤関係の具体例として、第
2世代接着剤の処方例を以下に示す。
【0046】 (a)メタクリル酸メチル 45部 化合物 No.1 8部 エチレングリコール1モルとメタクリロイロキシエチルイソシアナート 2モルの付加物 5部 クロロスルホン化ポリエチレン 40部 キュメンハイドロパーオキサイド 2部 (b)N,N−ジメチルアニリン 2部 ナフテン酸コバルト 1部 トルエン 97部 組成(a)の主剤を接着面の一方に塗り、もう一方の面
に組成(b)のプライマーを塗って両者を軽く擦り合わ
せるようにして密着させると5〜6分間で硬化する。但
し完全に硬化して本来の強度を示すようになるには1時
間を要する。
【0047】(4)ホトレジスト [ソルダーレジスト] オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量=230) 58部 メチルエチルケトン 42部 なる組成の溶液100部中に アクリル酸 38.5部 塩化ベンジルトリメチルアンモニウム 4部 p−メトキシフェノール 1.5 部 メチルエチルケトン 56部 なる組成の溶液10部を60℃で加え、80℃に昇温し
て15時間反応させ、更に 2−メタクリロイロキシエチルイソシアナート 41部 ジブチル錫ジラウレート 0.15部 メチルエチルケトン 26部 化合物 No.1 33部 なる組成の溶液21部を3時間かけて滴下する。続けて
5時間撹拌したのちこれにメチルアルコール0.5 部を加
えて更に1時間反応させる。
【0048】得られた組成物73部、2,4−ジエチル
チオキサントン 1.3 部、安息香酸イソブチルエステル
1.7 部、直径 1.5 μのタルク粉24部を配合し、よ
く混合分散させると感光性樹脂組成物が得られる。この
感光性樹脂組成物を銅張り積層板に塗布し、乾燥して感
光層を形成し、ネガマスクを通して、露光、現像する
と、寸法精度、耐熱衝撃性のよいソルダーマスクが得ら
れる。
【0049】 [プリント配線用ドライフィルム] メタクリル酸メチル・アクリロニトリル・グリシジルメタクリレート共重合体 11部 メタクリル酸メチル・2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体 5部 化合物 No.1 3部 tert−ブチルアントラキノン 1.2 部 2,2′−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール) 0.3 部 エチルバイオレット染料 0.025部 メチルエチルケトン 79.5部 なる組成物をポリエチレンテレフタレート透明フィルム
上に塗布し乾燥させたものを、表面を清浄にした銅被覆
エポキシ・ガラス繊維板に張り付ける。導電部のパター
ンが透明でバックグラウンドが不透明な画像フィルムを
通して光を照射し、導電部を硬化させる。ポリエチレン
テレフタレート透明フィルムを剥し、未硬化の部分を洗
い流し、塩化第二鉄溶液でエッチングする。最後にレジ
ストを取り除くとプリント配線板が得られる。
【0050】(5)刷版材 紫外線硬化樹脂を用いた刷版材を使う場合は鉛板、ゴム
版を使った場合と比べ製版工程のシステム化が容易なこ
とから、広く用いられるようになっている。これらの印
刷版としては平板、凸版、スクリーン印刷版、フレキソ
印刷版などがある。一般式(I)の化合物を水なし平板
に利用した例としては、不飽和ポリエステル、一般式
(I)の化合物、エチレングリコールジメタクリレー
ト、光開始剤(ベンゾフェノンなど)からなる接着剤を
アルミニウム板に塗布し、これにシリコーンゴム層を5
μの厚さに塗布した透明ポリプロビレンフィルムを張り
付ける。ポリプロピレンフィルムの上にポジフィルムを
置いて露光すると接着剤が硬化し、シリコーンゴム層が
固着する。現像液でシリコーンゴムを膨潤させてこすり
とると、光の当たった部分のみが残って、インキ反発層
を形成する。
【0051】スクリーン印刷版も同様に、ポバール、一
般式(I)の化合物、光開始剤、メタノール、水からな
る溶液をスクリーンに塗布して乾燥させたものにポジフ
ィルムを通して露光したのち未硬化部分を洗い流すもの
である。凸判に利用する場合は、ボバールのような可溶
性のポリマー、一般式(I)の化合物、光開始剤、熱重
合禁止剤(p−メトキシフェノールなど)等の混合物を
ベースフィルム上に一定の厚さに圧廷し、ネガフィルム
を通して露光した後未硬化部分を洗い流して印刷版を作
成する。
【0052】印刷版への応用の具体例として、以下に凸
判に利用する処方例を示す。 ポバール(鹸化度85、平均重合度500) 34.6部 2−ヒドロキシエチルメタクリレート 34.6部 化合物 No.1 2.1部 ベンゾインブチルエーテル 0.9部 p−メトキシフェノール 0.1部 ローズベンガル5%水溶液 0.2部 水 27.5部 なる組成の感光性混合液をポリエステルフィルム上で一
定の厚さの感光層に圧廷し、金属版にラミネートしたの
ち加熱、乾燥して板状にする。露光後、水で洗いだし現
像し、加熱して画像を硬化させると凸版が得られる。
【0053】(6)光学材料 光学材料分野としてはレンズ用素材、光学繊維用芯材及
び鞘材(コーティング剤)、鏡材等に用いられる。
【0054】(イ)レンズ用の材料のプラスチックに一
般式(I)の化合物を用いると、硬度が高く、かつ
脱型時の脆さが無い、ガラスモールドとの密着性がよ
い、耐衝撃性がよいなどの特徴をもった材料が得ら
れ、薄くて軽量のレンズを作ることができる。レンズ用
材料の具体例を挙げると、例えば一般式(I)の化合
物、トリメチロールプロパントリアクリレート、ビス
(2−ヒドロキシエチル)スルフィドに2−メタクリロ
イロキシエチルイソシアナート2モルを付加した化合
物、光開始剤からなる組成物をガラスモールドに注入
し、光硬化させると上記のような特徴をもつレンズが得
られる。
【0055】コンタクトレンズ用材料としては、一般に
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの共重合物が
用いられているが、通常これのみでは強度が不足するた
め架橋剤として多官能性モノマーを用いるのが普通であ
る。架橋剤用多官能性モノマーとしては、ネオペンチル
グリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリト
ールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ
(メタ)アクリレート、1,6ヘキサングリコールジ
(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ
(メタ)アクリレート等が一般に用いられている。しか
し、これら従来の架橋剤では強度を上げようとしてその
使用量を増すと伸びが悪くなるのが普通であった。
【0056】これに代わる架橋剤として一般式(I)の
化合物と、次式(VI)
【化6】 (式中、R5 及びR6 は各々独立して水素原子またはメ
チル基を表わす。)で表わされるヒドロキシアルキル
(メタ)アクリレートとを含む硬化性組成物を用いると
伸び特性を悪くせずに強度を上げることができる。
【0057】この硬化性組成物は式(I)の化合物と式
(VI)で表わされるヒドロキシアルキル(メタ)アクリ
レートのほかに炭素−炭素二重結合をもつ他のモノマー
を含んでいてもよい。この二重結合をもつモノマーとし
ては、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、エ
チルヘキシルアクリレート、アクリロニトリル、パーフ
ルオロアルキル(メタ)アクリレート、スチレン等、各
種の物が使用でき、用途によって適当なものを選ぶこと
ができる。式(VI)で表わされるヒドロキシアルキル
(メタ)アクリレートと式(I)の化合物の使用割合は
重量比で、300:1〜4:1、特に好ましくは10
0:1〜10:1がよい。この範囲外でも効果が全くな
いというわけではないが、式(I)の化合物が少なすぎ
ると十分な強度が得られず、一方、多すぎる場合は得ら
れる樹脂が硬くなり過ぎるうえ、式(I)の化合物は比
較的高価であるから、経済的にみても適当ではない。
【0058】(ロ)光学繊維の芯材としては、メタクリ
ル酸メチル(またはこれと他のアクリルモノマー、例え
ばアクリル酸エチルとの混合物)に一般式(I)の化合
物を架橋剤として加えて繊維を作ると機械的性質に優れ
た繊維が得られる。
【0059】(ハ)光学繊維用コーティング剤 一般式(I)の化合物をコモノマーとして含む光学繊維
用コーティング剤は優れた耐久性と耐磨耗性を示す。光
伝送用媒体として使用される光学繊維は、一般的に脆
く、傷つきやすいため従来被覆用樹脂、例えば、エポキ
シ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性
樹脂で表面を被覆しているが、硬化に長時間を要するた
め、(a)生産性が低い、(b)硬化不良を起しやすい
などの問題点を有している。
【0060】近年、これらに代えて、エポキシアクリレ
ートやウレタンアクリレート等の紫外線硬化型樹脂を用
いることが考えられているが、強度を上げるために架橋
点を増すと伸びが不足するという一般的な傾向がある。
これに対して、化合物(I)と、他のビニル重合性モノ
マー及び重合開始剤からなる混合物を光学繊維表面に塗
布した後、加熱あるいは紫外線や電子線の照射処理を施
すと、速やかに硬化させることができるうえ、得られた
硬化物は光学繊維との密着性がよく、かつ伸びと引張強
さや、引張弾性率の如き機械的強度とを共に満足して強
靭性に優れたものになる。
【0061】ここで式(I)で表わされる化合物と共重
合させられる他のビニル重合物モノマーとしては、例え
ばメチルメタクリレート、ブチルアクリレート、エトキ
シエチルアクリレートの如き(メタ)アクリレート類、
スチレン、N−ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタ
ム等を挙げることができる。式(I)の化合物と他のビ
ニル重合物モノマー使用割合は、前者2〜40モル%、
好ましくは5〜25%、後者が98〜60%、好ましく
は95〜75%である。
【0062】また、式(I)で表わされる化合物はフッ
素を含むため光の屈折率が低く、この点でも光学繊維用
被覆材料として好ましいが、更に屈折率を下げるため、
下記式(V)
【化7】 (式中、R7 は水素原子またはメチル基を表わし、rは
0または1を表わし、pは6〜10の偶数を表わす。)
で示される2−パーフルオロアルキルエチル(メタ)ア
クリレートや、2−パーフルオロアルキルエタノールと
2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートとの付
加反応生成物のようなフッ素含有モノマーを全体の10
〜60重量%用いることができる。
【0063】光学繊維被覆材料では、これらの成分の他
に必要に応じ、各種変性用樹脂(例えば、ポリエステル
樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン
樹脂、ポリウレタン樹脂など)や界面活性剤の如き添加
剤を配合してもよく、全体の粘度として、1,000 〜 10,
000 mPa・sの範囲に調整することが望ましい。
【0064】(7)写真材料 写真材料分野において、式(I)の化合物を被覆材原料
の成分として用いると、通常両立し難い「耐折強度」に
優れ、かつ「かぶり発生」の少ない印画紙用原紙が得ら
れる。以下にその処方例を示す。 両末端にOHをもつポリブタジエンと2−メタクリロイロキシエチルイソシアナ ート2モルとの付加物 21部 化合物 No. 1 11部 ウレタンアクリレート* 11部 ポリエステルジアクリレート** 30部 チタンホワイト 27部 * )PEG−400と過剰の1,3−ビス(イソシアナ
ートメチル)シクロヘキサンを反応させた後2−ヒドロ
キシエチルアクリレートでアクリル変性したもの。 **)分子量1000、OH価500のアジピン酸とプロピレ
ングリコールのポリエステルの両末端をアクリル酸エス
テルとしたもの。 なる組成物を写真用原紙の片面に30g/m2 の厚さで
塗布し、0.5 Mradの電子線を照射して硬化させ印画
紙用原紙を得る。
【0065】(8)繊維処理剤 従来よりアクリル酸エステルを主成分とする共重合体が
繊維コーティング剤分野に広く使用されている。この場
合、共重合体中にカルボキシル基、OH基、エポキシ
基、メチロール基等の官能性基を有する共重合体成分を
少量含有するものが用いられており、これらの官能基を
エポキシ樹脂、イソシアナート化合物等と反応させるこ
とによって架橋させている。しかし、これらの各成分を
含有する架橋性組成物はポットライフが極めて短いた
め、使用直前に調製しなければならない(2液性)とい
う不便さがあった。これを解消するために各種の1液性
の架橋性組成物が考案されているが、一般式(I)の化
合物はこの1液性の架橋性組成物の成分として用いられ
る。以下その処方例を示す。
【0066】 エチルアクリレート 39部 2−ヒドロキシエチルアクリレート 1部 トルエン 60部 なる混合物に重合度調節剤としてn−ドデシルメルカプ
タン 0.004 部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロ
ニトリル 0.04 部を加え、系内を窒素置換した後、80
〜90℃で6時間重合させた。得られた共重合体溶液に
2−メタクリロイロキシエチルイソシアナート1.2 部、
ジブチル錫ジラウレート0.01部を加えて70℃で3時間
反応させた。この反応生成物溶液88部に化合物 No.1
10部、ベンゾインエチルエーテル2部、及びp−メ
トキシフェノール0.02部を加えて光架橋性コーティング
剤を得る。このコーティング剤は光を当てない限り安定
で、硬化させたもは耐洗濯性に優れている。
【0067】(9)医療材料 治療用薬剤を含む粘着テープを皮膚に張り付けて、皮膚
から徐々に薬剤を吸収させる治療用感圧接着テープに一
般式(I)の化合物が利用できる。以下にその処方例を
示す。
【0068】 (a)2−ヒドロキシエチルメタクリレート 130部 化合物 No.1 0.65部 アゾビスイソブチロニトリル 0.05部 酢酸エチル 40部 なる組成物を50℃で撹拌しながら60時間重合させ
る。粘度が上昇するので酢酸エチルを随時加え、またア
ゾビスイソブチロニトリルを 0.1 部ずつ2回追加す
る。その後温度をあげ、8時間還流下で反応させて重合
を完結させる。最終的なポリマー濃度は18%である。
【0069】 (b)2−エチルヘキシルアクリレート 40部 アクリル酸ブチル 100部 アゾビスイソブチロニトリル 0.08部 酢酸エチル 30部 なる組成物を(a)と同様にして重合させる(但し、最
終的なポリマー濃度は30%になるように酢酸エチル量
を加減する。)。(a)と(b)のポリマー溶液を3:
2の割合で混合し、これに皮膚浸透性の薬剤を添加して
ポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、その上
にシリコーン離型紙を張り付けて治療用感圧接着テープ
が得られる。
【0070】(10)歯科材料 歯科材料としては、修復材、充填材、コーティング剤、
接着剤等に用いられる。 (イ)修復材用には、例えば、一般式(1)の化合物、
エチレングリコールジメタクリレートの3:1〜1:3
の混合物3部に対し、硼硅酸ガラスの微粉末7部を調合
する。これに重合触媒としてベンゾイルペルオキシド−
三級アミン(N,N−ジメチル−p−トルイジンなど)
の組合せを添加すると数分以内に重合する。
【0071】(ロ)充填材に利用する例としては、一般
式(1)の化合物とトリエチレングリコールジメタクリ
レートの混合物に光開始剤、熱重合禁止剤を加え、シラ
ンカップリング剤(3−メタクリロイロキシプロピルト
リメトキシシランのような)で表面処理されたシリカ粉
またはガラス粉と混合してペースト状にする。これを孔
に詰め、歯科用ランプで照射することにより硬化させる
ことができる。
【0072】(ハ)コーティング剤 プラスチック製義歯は陶製のものに比べて製作が容易で
あり、また価格も安いということもあって、広く採用さ
れるようになってきているが、ポリメタクリル酸メチル
やポリカーボネート樹脂等で作られた義歯は陶製のもの
に比べて表面光沢、硬度が劣るため、美観上及び使用感
上問題がある。これを補うため多官能(メタ)アクリレ
ートを主成分とするコーティング組成物を義歯上に塗布
し硬化させて、表面に光沢、硬度に優れる塗膜を形成さ
せることが行われている。しかしながら、表面硬度、基
材との接着性、耐摩耗性等の面で従来のものは必ずしも
十分満足できるものとは云い難かった。
【0073】一般式(I)の化合物とメタクリル酸エス
テルからなる混合物、及び該混合物100重量部当り
0.001〜40重量部の光重合開始剤を配合した硬化性組
成物は歯科用表面被覆に好適であり、密着性、強度に優
れた義歯用コーティング剤が得られる。すなわち、式
(I)で示される二官能性モノマーは光により架橋硬化
して、硬度、伸び率共に優れた重合物を与え、さらに通
常、重合阻害効果をもつ酸素の存在下でも良好な光硬化
性を示す。ここでメタクリル酸エステルとしては、メタ
クリル酸メチルが代表的なものであり、その他メタクリ
ル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチ
ル、メタクリル酸ラウリル等が用いられる。またこれら
メタクリル酸エステルを予め30〜40%重合させたメ
タクリル樹脂シロップの状態で用いることもできる。光
重合開始剤としては通常の光重合開始剤が用いられる
が、可視光で反応するものが特に好ましく、例えば、ア
セチルベンゾイル等のα−ジケトン類、ケトクマリン
類、ベンゾインエーテル類、またはそれらとp−メルカ
プト安息香酸、メルカプトジフェニルカルボン酸等の芳
香族メルカプトカルボン酸との組合せが用いられる。硬
化性組成物を硬化させるために照射する光としては、ハ
ロゲン灯、キセノン灯、水銀灯、螢光灯等から発せられ
る波長330〜800nmの光線を利用することができ
る。
【0074】(ニ)歯科用接着剤には、2−ヒドロキシ
エチルメタクリレート、一般式(I)の化合物、2−メ
タクリロイロキシエチルフェニルアシッドフォスフェー
ト、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、重合禁
止剤、レドックス重合開始剤(例えば、ベンゾイルペル
オキシド)の混合溶液と、シランカップリング剤(3−
メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランのよう
な)で表面処理されたシリカ粉またはガラス粉、レドッ
クス重合促進剤(N,N−ジエタノール−p−トルイジ
ンのような3級アミン)、ベンゼンスルフィン酸ナトリ
ウムの混合物を使用直前に混ぜ合わせて用いる。
【0075】次に、歯科材料への応用の具体例として歯
科用コーティング剤の処方例を示す 。化合物 No.1 30部 重合度35%のメタクリル酸メチル樹脂シロップ 70部 アセチルベンゾイル 5部 メルカプトジフェニルカルボン酸 5部 なるコーティング組成物をプラスチック義歯に塗り、歯
科用ランプを用いて光を照射して硬化させると、表面硬
度、基材との接着性、耐磨耗性、光沢に優れた塗膜を形
成する。
【0076】(11)成形材料 一般式(I)の化合物は各種成形用樹脂のコモノマーと
して用いたり、成形用樹脂の改質にもちいることもでき
る。
【0077】(イ)塩化ビニル樹脂の改質 塩化ビニル樹脂は機械的性質や耐薬品性に優れているた
め、最も広く用いられている樹脂の一つであるが、耐衝
撃性、加工性に問題があるため種々の改質剤が用いられ
る。その一つとしてSBRにメタクリル酸メチルとスチ
レンをグラフト重合させたものが用いられるが、一般式
(I)の化合物を架橋剤として少量添加することにより
透明性、耐衝撃性、耐候性、加工性を付与することがで
きる。すなわち、まずブタジエン、スチレン、一般式
(I)の化合物を共重合させ(重量比で8:2:0.05程
度)、これにスチレン、メタクリル酸メチル、一般式
(I)の化合物(1:1:0.01 程度)、重合開始剤の
混合物を加えて激しく撹拌しながら更に重合させる。得
られた樹脂と塩化ビニル樹脂を混合、ロール練り、プレ
スして改質塩化ビニル樹脂を得る。
【0078】(ロ)合成ゴムの加硫 アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレン
ジエンターポリマーゴム、アクリルゴム、クロロプレン
ゴムなどの架橋に一般式(I)の化合物を用いると腐食
性、老化性の改良、硬度、耐薬品性の向上が見られる。
【0079】(ハ)その他 一般にビニルポリマーの架橋剤として用いると優れた機
械的性質を示す。
【0080】(12)電気絶縁材料 従来、コイル部品の含浸絶縁処理等には、ラジカル重合
性を有する熱硬化性樹脂、例えば不飽和ポリエステル樹
脂や1,2−ポリブタジエン樹脂をスチレン等のビニル
モノマーで希釈し、レドックス触媒を加えた電気絶縁ワ
ニスが一般に用いられているが、空気の存在下では硬化
が阻害されやすく、また低温では表面の粘着性がなくな
るのが遅いため、高温で長時間硬化させる必要があっ
た。一般式(I)の化合物を利用すると空気中での硬化
性がよく、また絶縁特性、機械的特性も優れた絶縁材料
を得ることが出来る。
【0081】以下に電気絶縁ワニスの処方例を示す。 石油樹脂(日本石油化学(株)製,OH価=81) 30.1部 2−メタクリロイロキシエチルイソシアナート 6.9部 BHT 0.015部 ジブチル錫ジラウレート 0.01部 を反応させたものに、 一般式(I)の化合物 6部 スチレンモノマー 55部 トリメチロ−ルプロパントリメタクリレート 2部 tert−ブチルパーベンゾエート 2部 6%ナフテン酸コバルト溶液 0.5部 BHT 0.05部 を加えてワニスとする。
【0082】
【実施例】以下、本発明を実施例、参考例及び比較例を
以って説明するが、本発明はこれら実施例によって限定
されるものではない。なお、以下に示す各例において部
は重量を基準としている。
【0083】参考例1 2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフル
オロプロパン168部、2−イソシアナートエチルメタ
クリレート(BHT200ppmを含む。)162.6 部、
DABCO 0.17 部を撹拌装置付のガラス製反応器に仕
込み、80℃に昇温し80〜90℃に保ちながら25分
撹拌したところ、黄褐色のオイル状の生成物が得られ
た。これをジクロルメタン300mlに溶かし1Nの水
酸化ナトリウム水溶液300mlで1回、水300ml
で2回洗浄を行なった後、ジクロルメタンを蒸発除去し
たところ、化合物 No.1に相当する生成物(式(I):
1=R2 =CH3 ,m=n=2,k=l=0)の白色
半透明結晶(298部)が得られた。このものの赤外吸
収スペクトル及び核磁気共鳴スペクトルをそれぞれ図1
及び図2に示す。
【0084】参考例2 2−イソシアナートエチルメタクリレートの代りに2−
イソシアナートエチルアクリレート148部、BHT
0.15 部を用いた以外は参考例1と同様の実験を行な
い、化合物 No.2に相当する生成物(式(I):R1
2 =H,m=n=2、k=l=0)288部を得た。
【0085】参考例3 2−イソシアナートエチルメタクリレートの代りに2−
イソシアナートプロピルメタクリレート177部とフェ
ノチアジン 0.2 部を用いた以外は参考例1と同様の実
験を行ない、化合物 No.3に相当する生成物(式
(I):R1 =R2 =CH3 ,m=n=3,k=l=
0) 299部を得た。
【0086】参考例4
【化8】
【0087】で表わされる2,2−ビス(4′−ヒドロ
キシフェニル)ヘキサフルオロプロパンのプロピレング
リコールエーテル 168.7 部、トルエン300ml、ジ
ブチルスズジラウレート 0.22 部、及びBHT 0.11 部
を撹拌器及び滴下ロート付のガラス製反応器に仕込み、
80℃に加温しておき、2−イソシアナートエチルメタ
クリレート 110.3 部を30分かけて滴下した。滴下終
了後更に80℃でIRスペクトルにイソシアナートの吸
収が見られなくなるまで(約2時間)撹拌を続けた。反
応終了後、減圧下でトルエンを蒸発させて除き化合物 N
o.4に相当する生成物(式(I):R1 =R2 =C
3 ,R3 =R4 =CH3 ,m=n=2,k=2,l=
1)279部を得た。
【0088】参考例5
【化9】
【0089】で表わされる2,2−ビス(4′−ヒドロ
キシフェニル)ヘキサフルオロプロパンのテトラエチレ
ングリコールエーテル 82.6 部、2−イソシアナトエチ
ルメタクリレート 37.8 部、ジブチルスズジラウレート
0.08 部、及びBHT 0.04 部を撹拌装置付ガラス製反
応器に仕込み、60℃に加温した油浴中でよく撹拌する
と、10分程度で温度が83℃まで上昇した。こののち
温度が下り始めたので油浴の温度を80℃にセットし、
IRスペクトルにイソシアナートの吸収がなくなるま
で、約 1.5 時間撹拌を続けた。その結果化合物 No.5
に相当する生成物(式(I):R1 =R2 =CH3 ,R
3 =R4 =H,m=n=2,k=l=4)と思われる油
状物を 120.5 部を得た。
【0090】実施例1 メチルメタアクリレート(MMA)9.9 部、参考例1で
得られた化合物(化合物 No.1)0.1 部及びα,α−ジ
エトキシアセトフェノン 0.05 部を25ml丸底フラス
コに仕込み、液体窒素浴につけて真空ポンプで5分間引
いた。次に常温にもどして窒素で常圧にもどした。この
操作を5回繰返した後、窒素置換したドライボックス中
で内容物を石英ガラス製の型に入れて蓋をし、紫外線ラ
ンプで照射して硬化させた。同様にMMAを 9.8 部及
び 9.7 部、参考例1の生成物をそれぞれ 0.2 部及び
0.3 部にした実験を行ない硬化物を得た。得られた硬
化物の強度と脆さを見るため、間接引張試験を行なった
(装置:島津製作所製オートグラフIS−500)。そ
の結果は図3(図中、白三角は引張強さ、白丸は比例限
度を表わす。)に示すとおりであり、比例限度は添加量
によってあまり変化していない。
【0091】比較例1 参考例1で得られた生成物(化合物 No.1)の代りに、
2,2−ビス(4′−メタクリロイルオキシフェニル)
ヘキサフルオロプロパンを用いた他は、実施例1と同様
の実験を行なった。結果を図3(図中、黒三角は引張強
さ、黒丸は比例限度を表わす。)に示す。
【0092】実施例2 参考例5で得られた生成物(化合物 No.5)をトルエン
に溶かして50%溶液とし、これにα,α−ジエトキシ
アセトフェノンを溶液の 2.5 重量%加えガラス板上に
塗布し2KW紫外線照射ランプで照射したところ、照射
線量600mJ/cm2で硬化した。
【0093】比較例2 参考例5で得られた生成物(化合物 No.5)の代りに、
ネオペンチルグリコールジアクリレートを用いた以外
は、実施例2と同様の実験を行なった。紫外線を3,000m
J/cm2 照射したが、硬化しなかった。
【0094】実施例3 参考例1で得られた生成物(化合物 No.1)15部、
1,1,2,2−テトラヒドロパーフルオロデシルアク
リレート55部、n−ブチルアクリレート30部、ベン
ゾフェノン3部、ジエチルアミノエタノール1部の混合
物をガラス板上にスピンコートし、高圧水銀ランプ(8
0w/cm)を用いて硬化させたところ約300mJ/cm
2 の照射量で硬化した。硬化被膜の引張強さは450kg
f/cm2 、伸び(比例限)は10%であった。
【0095】比較例3 参考例1で得られた生成物(化合物 No.1)の代りに、
ヘキサフルオロビスフェノール―Aジメタクリレートを
用いた以外は、実施例3と同様の実験を行なった。その
結果、照射量300mJ/cm2で硬化せず、約1,000mJ/cm2
の照射でようやく硬化した。
【0096】実施例4 直径 0.05 mmのメチルメタクリレート・エチルアクリ
レート(87:13)共重合体のファイバーに実施例3
で調製した被覆材を塗布し、高圧水銀ランプを用いて硬
化させた。この鞘−芯フィラメントは優れた耐久性と耐
摩耗性を示し、光伝送度は50cm当り70%であっ
た。
【0097】実施例5 参考例2で得られた生成物(化合物 No.2)30部、N
−ビニルピロリドン10部、PEG−200のアクリル
酸エステル60部、ベンゾフェノン3部、エチルアミノ
エタノール1部からなる被覆材混合物を直径125μm
の光学繊維(ガラス)の表面に塗布し、高圧水銀ランプ
を用いて硬化させた。得られた光学繊維被覆体を直径3
0cmのドラムヘボビン巻きした状態と巻く前の状態と
の間の光伝送損失を比較したが、ボビン巻き状態でも伝
送損失の増加は認められなかった。また#150のサン
ドペーパー2枚の間に、光学繊維被覆体を挟み、荷重を
かけた状態で伝送損失の増加を調べたが増加は認められ
なかった。
【0098】比較例4 比較例3で調製した被覆材料を用いて実施例5と同様の
実験を行なったが、いずれの測定でも光伝送損失の著し
い増加が認められた。
【0099】実施例6 参考例1で得られた生成物(化合物 No.1)30部、メ
タクリル酸メチル70部、アセチルベンゾイル5部、メ
ルカプトジフェニルカルボン酸5部からなる組成物をポ
リメタクリル酸メチル製義歯に塗布し、水銀灯で3mm
の距離から50秒間照射した。得られた硬化塗膜の性能
を表2に示す。
【0100】
【表2】
【0101】実施例7 参考例1で得られた生成物(化合物 No.1)30部、重
合度35%のメタクリル酸メチル樹脂シロップ70部、
アセチルベンゾイル5部、メルカプトジフェニルカルボ
ン酸5部からなる組成物をポリカーボネート製義歯に塗
布し、実施例6と同様に光を照射した。得られた硬化塗
膜性の性能を表2に示す。
【0102】比較例5 参考例1で得られた生成物(化合物 No.1)の代わりに
メタクリル酸メチルを用いたほかは実施例6と同様の実
験を行なった。得られた硬化塗膜性の性能を表2に示
す。
【0103】比較例6 参考例1で得られた生成物(化合物 No.1)の代わりに
ネオペンチルグリコールジメタクリル酸エステルを用い
た以外は実施例6と同様の実験を行なった。得られた硬
化塗膜性の性能を表2に示す。
【0104】実施例8 2枚の強化ガラス板(200×200×5mm)を軟質
塩化ビニル樹脂チューブでわくどりして留金で3mm厚と
なるように固定し、これに2−ヒドロキシエチルメタク
リレート95部、参考例1で得られた生成物(化合物 N
o.1)5部、アゾビスイソブチロニトリル 0.05 部の混
合物を静かに気泡が入らないように注意して注入した。
次いで注入口を上にして水浴中に懸乗し、40℃から1
00℃まで1℃/時間の割合で昇温しながら重合させ、
さらに100℃で30時間重合させた。留金をはずし、
冷水をガラス板の両面に流してポリマーを離型した。得
られたポリマーの引張強度、伸度を測定したところ、引
張強度=42.5kgf/cm2 、伸度=180.3 %であった。
【0105】実施例9 2−ヒドロチシエチルメタクリレート80部、2−ヒド
ロキシプロピルメタクリレート17部、参考例1で得ら
れた生成物(化合物 No.1)3部及びアゾビスイソブチ
ロニトリル 0.05 部を混合し、実施例8と同様にして重
合させ、得られたポリマーの引張強度、伸度を測定した
ところ、引張強度=32.5kgf/cm2 、伸度=200.8 %であ
った。
【0106】実施例10 2−ヒドロキシエチルアクリレート99部、参考例1で
得られた生成物(化合物 No.1)1部、アゾビスイソブ
チロニトリル 0.05 部を混合し、実施例8と同様の実験
を行なった。得られたポリマーの引張強度、伸度はそれ
ぞれ 21.3kgf/cm2、185.1 %であった。
【0107】実施例11 2−ヒドロキシエチルメタクリレート80部、n−ブチ
ルアクリレート20部、参考例1で得られた生成物(化
合物 No.1)3部、アゾビスイソブチロニトリル0.05部
を混合し、実施例8と同様の実験を行なった。得られた
ポリマーの引張強度、伸度はそれぞれ 28.3kgf/cm2、20
9.7 %であった。
【0108】比較例7 参考例1で得られた生成物(化合物 No.1)の代わりに
ネオペンチルジメタクリレートを用いた以外は実施例8
と同様の実験を行なった。得られたポリマーの引張強
度、伸度はそれぞれ 15.0kgf/cm2、120.5 %であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)
ヘキサフルオロプロパンと2−イソシアナートエチルメ
タクリレートの1:2の反応生成物の赤外線吸収スペク
トルを示すグラフである。
【図2】 2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)
ヘキサフルオロプロパンと2−イソシアナートエチルメ
タクリレートの1:2の反応生成物の核磁気共鳴スペク
トルを示すグラフである。
【図3】 2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)
ヘキサフルオロプロパンと2−イソシアナートエチルメ
タクリレートの1:2の反応生成物の引張試験の結果を
示すグラフである。

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I) 【化1】 (式中、R1 、R2 、R3 及びR4 はそれぞれ独立し
    て、水素原子またはメチル基を表わし、m及びnはそれ
    ぞれ独立して2または3を表わし、k及びlはそれぞれ
    独立して0または1〜4の整数を表わす。)で示される
    化合物の単独重合体。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の一般式(I)で示される
    化合物及び該化合物と共重合し得る、少なくとも1種の
    モノマー化合物との共重合体。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の一般式(I)で示される
    化合物を含有する硬化性組成物。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の一般式(I)で示される
    化合物からなる架橋剤。
  5. 【請求項5】 塗料用である請求項3記載の硬化性組成
    物。
  6. 【請求項6】 接着剤用である請求項3記載の硬化性組
    成物。
  7. 【請求項7】 成形材料用である請求項3記載の硬化性
    組成物。
  8. 【請求項8】 インキ用である請求項3記載の硬化性組
    成物。
  9. 【請求項9】 電気絶縁材料用である請求項3記載の硬
    化性組成物。
  10. 【請求項10】 光学材料用である請求項3記載の硬化
    性組成物。
  11. 【請求項11】 ホトレジスト用である請求項3記載の
    硬化性組成物。
  12. 【請求項12】 写真材料用である請求項3記載の硬化
    性組成物。
  13. 【請求項13】 刷版材料用である請求項3記載の硬化
    性組成物。
  14. 【請求項14】 歯科材料用である請求項3記載の硬化
    性組成物。
  15. 【請求項15】 繊維処理剤用である請求項3記載の硬
    化性組成物。
  16. 【請求項16】 医療材料用である請求項3記載の硬化
    性組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009149840A (ja) * 2007-11-29 2009-07-09 Fujifilm Corp インクジェット記録用インク組成物、インクジェット記録方法および印刷物
AT516904A1 (de) * 2015-03-05 2016-09-15 Engel Austria Gmbh Faserverbundbauteil und Verfahren zur Herstellung
JP2017039796A (ja) * 2015-08-17 2017-02-23 日立化成株式会社 接合部材形成用組成物、接合部材、接合体、及び接合部材を製造する方法
JP2017105940A (ja) * 2015-12-10 2017-06-15 日立化成株式会社 粘着剤、及び粘着シート
JP2018059118A (ja) * 2017-11-27 2018-04-12 Jsr株式会社 重合体
JP2019189788A (ja) * 2018-04-27 2019-10-31 株式会社リコー インク、インク収容容器、記録装置、記録方法、及び記録物

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