JPH08100693A - 内燃機関の始動時燃料供給制御装置 - Google Patents

内燃機関の始動時燃料供給制御装置

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JPH08100693A
JPH08100693A JP7106470A JP10647095A JPH08100693A JP H08100693 A JPH08100693 A JP H08100693A JP 7106470 A JP7106470 A JP 7106470A JP 10647095 A JP10647095 A JP 10647095A JP H08100693 A JPH08100693 A JP H08100693A
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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 燃焼室壁面から剥離したカーボン堆積物の吸
排気弁への噛み込みにより機関始動不能が生じることを
防止する。 【構成】 機関1始動時に燃料供給を制御する制御回路
10を設ける。制御回路は機関クランキング中のバッテ
リ12端子電圧変動から、カーボン噛み込みによる吸排
気弁の作動不良が生じたことを検出すると、燃料噴射弁
7からの燃料噴射量を減量する。これにより吸排気弁の
作動不良が生じていても気筒内混合気の空燃比は可燃範
囲に調節され機関の始動が行われる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、機関始動操作時の機関
への燃料供給を制御することにより機関の始動信頼性を
向上させる内燃機関の始動時燃料供給制御装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】内燃機関の始動操作時に通常運転時とは
異なる燃料供給制御を行い、機関の始動の信頼性を向上
させる始動時燃料供給制御装置が種々考案されている。
この種の装置の例としては、例えば特開昭63−235
632号公報に記載されたものがある。
【0003】同公報の装置は、機関の始動時に機関温度
とバッテリ電圧とに基づいて燃料噴射弁からの燃料噴射
時間を設定するようにしている。すなわち、同公報の装
置は機関温度が低い場合やバッテリ電圧の低下により燃
料噴射弁の機能が低下している場合に燃料噴射時間を通
常の運転時より長く設定して機関への燃料供給量を増大
(あるいは供給量が低下することを防止)するものであ
る。
【0004】また、特公平6−39939号公報には、
前回の機関始動から停止までの運転時間と、運転停止後
今回の始動操作を開始するまでの停止時間とを計測し、
上記運転時間と停止時間との両方がともに所定値以下で
ある場合に今回の始動操作における燃料噴射量を減量補
正するようにした始動時燃料供給制御装置が記載されて
いる。
【0005】例えば、前回運転時に機関始動直後に機関
を停止したような場合には、始動時に供給された燃料が
機関吸気系に残留しているため、今回の始動操作時に通
常の始動時と同じ量の燃料を機関に供給すると燃料供給
量が全体として過大になり燃焼室内の混合気空燃比が過
濃となって機関の始動ができなくなる場合が生じる。上
記特公平6−39939号公報の装置は、この問題を防
止するため前回の始動後短時間で機関が停止され吸気系
に始動時の燃料が残留しており、しかも前回の機関停止
から短時間で今回の始動が行われ上記吸気系に残留した
燃料が蒸発せずに残っているような場合に始動時の燃料
供給量を減量して混合気が過濃になることを防止したも
のである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記公報に記載された
装置は、いずれも機関各部分が正常に機能している場合
の機関始動性の向上を目的としたものである。ところ
が、実際には機関始動時に機関の一部、例えば吸排気弁
などが正常に機能しなくなる場合が生じ得る。例えば、
内燃機関の運転中には燃焼によりカーボン粒子が発生し
燃焼室壁面に堆積して薄い層を形成している。このカー
ボン層は機関運転中に剥離、堆積を繰り返しているが、
機関運転中に剥離を生じた場合には剥離したカーボンは
既燃ガスとともに排気通路に排出され問題を生じること
はない。
【0007】しかし、機関始動時などにカーボンの剥離
が生じると剥離したカーボン粒子が吸排気バルブの弁体
とバルブシートとの間に噛み込んでしまい、吸排気弁の
閉弁不良を生じる場合がある。例えば、始動後極めて短
時間で機関を停止したような場合、燃焼室内には未燃燃
料や水分が残留するが、この状態である程度の時間(数
十分から数時間程度)が経過すると燃焼室壁面に堆積し
たカーボンに未燃燃料や水分が浸透して堆積したカーボ
ンは非常に剥離し易い状態になる。このようにカーボン
が剥離しやすくなった状態で機関を始動すると、始動時
の機械的衝撃で堆積したカーボンが一挙に剥離して吸排
気弁に噛み込む場合がある。このようにカーボンが噛み
込んだ状態では、吸排気弁の閉弁不良により気筒内の圧
縮圧力(コンプレッション)が低下するのみならず、燃
焼室内の混合気空燃比が過濃となって可燃限界を越えて
しまうため機関が始動不能となる問題が生じる。
【0008】吸排気弁が閉弁不良となった場合に燃焼室
内の混合気空燃比が過濃となるのは以下の理由による。
すなわち、吸気弁が閉弁不良となると気筒の圧縮行程時
には気筒内の空気は吸気通路に吹き戻されることにな
る。このため、気筒内に吸入された燃料の一部が吸気通
路に吹き返され、次の吸入行程で新たに供給された燃料
とともに気筒内に吸入されるようになり気筒内には過剰
な燃料が供給されて混合気が過濃となる。このように、
燃焼室内の混合気の吸気通路への吹き返しと再吸入によ
る燃焼室内の過濃混合気形成は、吸気通路の容積が比較
的小さい場合、例えば各気筒が独立した吸気通路とスロ
ットル弁とを有する、いわゆる独立吸気機関において特
に生じやすくなる。
【0009】一方、排気弁が閉弁不良となった場合には
圧縮行程時に気筒内の空気は排気通路に排出されるが、
供給された燃料の一部は燃焼室壁面に付着して残留する
ため、圧縮上死点付近では燃焼室内に残留した燃料量に
較べて燃焼室内の空気が極めて少ない状態になり、上記
と同様燃焼室内の混合気が過濃となるのである。実際に
は、上記のように堆積したカーボンが剥離しやすい状態
で機関が始動されて燃焼室壁面のカーボンが一挙に剥離
すると、殆どの場合吸気弁と排気弁との両方に噛み込み
を生じる。また、通常このような場合には全部の気筒で
同時に吸排気弁の噛み込みが生じることになるため機関
全体が始動不能になる。
【0010】上記特開昭63−235632号公報と特
公平6−39939号公報とに記載された装置は、上述
のカーボン剥離による吸排気弁の閉弁不良が生じた場合
を対象としたものではなく、このような場合の機関始動
不能の問題を解決することはできない。本発明は上記問
題に鑑み、機関始動時に燃焼室内に堆積したカーボンが
剥離したような場合でも機関の始動を可能とする内燃機
関の始動時燃料供給制御装置を提供することを目的とし
ている。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明に
よれば、内燃機関始動操作時の機関への燃料供給を制御
する始動時燃料供給制御装置であって、機関始動操作中
の気筒圧縮圧力が所定値より低下したことを検出するコ
ンプレッション低下検出手段と、前記コンプレッション
低下検出手段により前記圧縮圧力の低下が検出されたと
きに、始動操作時の機関への燃料供給量を前記圧縮圧力
の低下が検出されないときに較べて減量する減量手段
と、を備えた内燃機関の始動時燃料供給制御装置が提供
される。
【0012】請求項2に記載の発明によれば、請求項1
の始動時燃料供給制御装置において、前記コンプレッシ
ョン低下検出手段は、機関始動操作開始後の時間を計時
する計時手段と、前回までの機関始動操作時に計時し
た、機関始動操作開始から機関が始動するまでの時間に
基づいて通常の機関始動に要する時間を算出する通常始
動時間算出手段と、機関始動操作時に前記計時手段の計
時した時間が前記通常の機関始動に要する時間を越えた
場合に気筒圧縮圧力が所定値より低下したと判定する判
定手段と、を備えた内燃機関の始動時燃料供給制御装置
が提供される。
【0013】請求項3に記載の発明によれば、内燃機関
始動操作時の機関への燃料供給を制御する始動時燃料供
給制御装置であって、前回の機関始動から停止までの機
関運転時間に基づいて、機関燃焼室壁面に堆積したカー
ボン堆積物が今回の始動操作時に剥離するか否かを予測
する予測手段と、前記予測手段により前記カーボン堆積
物の剥離が予測されるときに、始動操作時の機関への燃
料供給量を前記剥離が予測されないときに較べて減量す
る減量手段と、を備えた内燃機関の始動時燃料供給制御
装置が提供される。
【0014】請求項4に記載の発明によれば、内燃機関
始動操作時の機関への燃料供給を制御する始動時燃料供
給制御装置であって、前記機関の吸気通路に燃料を噴射
する燃料噴射弁と、該燃料噴射弁からの燃料噴射を制御
する燃料噴射制御手段とを備え、前記燃料噴射制御手段
は機関始動操作中に、機関始動操作開始後第1の所定期
間が経過するまでは機関始動条件から定まる所定量の燃
料を前記燃料噴射弁から噴射し、前記第1の所定期間経
過後第2の所定期間が経過するまでは前記燃料噴射弁か
らの燃料噴射を停止し、前記第1の所定期間は、正常な
機関の始動操作が完了するのに十分な時間である、内燃
機関の始動時燃料供給制御装置が提供される。
【0015】請求項5に記載の発明によれば、内燃機関
始動操作時の機関への燃料供給を制御する始動時燃料供
給制御装置であって、内燃機関の各気筒の吸気ポートに
燃料を噴射する燃料噴射弁と、前記それぞれの燃料噴射
弁からの燃料噴射時期を制御する制御手段とを備え、前
記制御手段は、機関始動操作時に各気筒の圧縮行程終了
後かつ吸気行程開始前にそれぞれの気筒の燃料噴射弁か
ら燃料を噴射する、内燃機関の始動時燃料供給制御装置
が提供される。
【0016】
【作用】前述のように、始動時のカーボン剥離による吸
排気弁の閉弁不良が生じた場合でも点火時に燃焼室内の
混合気空燃比を可燃範囲に調整することができれば、燃
焼室内で混合気を燃焼させることができる。また、一旦
燃焼室内で混合気の燃焼が生じれば、燃焼により発生し
た燃焼ガスにより吸排気弁に噛み込んだカーボンを吹き
飛ばすことができるため、吸排気弁の作動は正常に行わ
れるようになり、機関を始動させることができる。各請
求項に記載の発明は、カーボン剥離による吸排気弁の閉
弁不良が生じた場合でも、機関始動のためのクランキン
グ中(すなわち始動操作中)に機関燃焼室内の混合気空
燃比を可燃範囲に調整し、機関始動を可能とするもので
ある。
【0017】すなわち、請求項1に記載の発明では、機
関始動時に燃焼室内のカーボン剥離が生じて気筒内の圧
縮圧力が低下すると、コンプレッション低下検出手段に
よりこの圧縮圧力の低下が検出される。減量手段はコン
プレッション低下検出手段により圧縮圧力が低下したこ
とが検出されると、始動操作時の機関への燃料供給量を
通常の始動操作時(圧縮圧力の低下が検出されないとき
の始動操作時)の燃料供給量より減量する。これにより
機関燃焼室に供給される燃料量が減少するため、吸排気
弁の閉弁不良が生じていても燃焼室内の混合気空燃比は
可燃範囲内になり、混合気の燃焼が生じ機関の始動が行
われる。
【0018】請求項2に記載の発明では、請求項1のコ
ンプレッション低下検出手段は、通常始動時間算出手段
により前回までの機関始動操作時に機関始動に要した時
間から通常の機関始動時間を算出するとともに、判定手
段により、計時手段で計時した今回の機関始動操作の時
間が上記通常の機関始動時間を越えても機関が始動しな
い場合には、気筒内圧縮圧力が所定値より低下したと判
定する。通常始動時間算出手段により、前回までの個々
の機関における通常の機関始動時間が設定されるため、
機関毎の始動時間のばらつき等に影響を受けない気筒内
圧縮圧力の低下の検出が行われる。
【0019】また、請求項3に記載の発明では、予測手
段は前回の機関始動から停止までの運転時間に基づいて
燃焼室内のカーボン堆積物が今回の始動操作時に剥離す
るか否かを予測する。例えば、前回機関始動後短時間で
機関が停止されているような場合には、燃焼室内に残留
した未燃燃料や水分により燃焼室のカーボン堆積物が剥
離しやすくなっており、今回の始動操作時にカーボン堆
積物が剥離することが予測される。減量手段は、予測手
段によりカーボン剥離が予測された場合には始動操作時
の機関への燃料供給量をカーボン剥離が予測されない場
合に較べて減量する。これにより、機関燃焼室に供給さ
れる燃料量が減少するため、カーボン噛み込みによる吸
排気弁の閉弁不良が生じていても燃焼室内の混合気空燃
比は可燃範囲内になり、混合気の燃焼が生じ機関の始動
が行われる。
【0020】請求項4に記載の発明では、燃料噴射制御
手段は、機関始動操作開始後第1の所定期間が経過する
まで機関温度、回転数等の運転条件から定まる所定量の
燃料を燃料噴射弁から噴射する。すなわち機関始動操作
開始後第1の所定期間が経過するまではカーボン噛み込
みによる吸排気弁の閉弁不良が生じていない場合の始動
操作時に必要とされる量の燃料が機関に供給される。上
記第1の所定期間は正常な機関の始動操作が完了するの
に十分な時間に設定されているため、実際にカーボン噛
み込みによる吸排気弁の閉弁不良が生じていない場合に
は、この第1の所定期間内に機関の始動が行われる。
【0021】また、実際にカーボンの噛み込みが生じて
いた場合には、上記第1の所定期間が経過しても機関は
始動せず、この間に燃焼室に供給された燃料により燃焼
室内の混合気は過濃になっている。しかし、本発明で
は、燃料噴射制御手段は第1の所定期間が経過しても機
関が始動せず機関の始動操作が継続していた場合には、
第2の所定期間の間燃料噴射弁からの燃料噴射を停止す
る。これにより、機関燃焼室や吸気通路に残留した燃料
は吸気により排気通路に排出され、燃焼室内の混合気空
燃比は徐々に増大(希薄側に移行)する。従って、カー
ボン噛み込みによる吸排気弁の閉弁不良が生じていて
も、燃料噴射が停止される第2の所定期間内に燃焼室内
の混合気空燃比は可燃範囲内になり、混合気の燃焼が生
じ機関の始動が行われる。
【0022】請求項5に記載の発明では、各気筒の吸気
ポートに燃料を噴射する個別の燃料噴射弁が設けられ、
制御手段は各気筒の圧縮行程終了後に燃料噴射弁から各
気筒の吸気ポートに燃料を噴射する。吸気弁にカーボン
の噛み込みが生じていると、気筒圧縮行程中に気筒内の
空気が吸気ポートに吹き返されるため、圧縮行程以前に
吸気ポートに燃料を噴射すると噴射された燃料は圧縮行
程時に気筒から吹き返す空気により吸気通路に吹き戻さ
れ、吸入行程にある他の気筒に吸入されることになり、
この吸入行程にある気筒内の混合気空燃比が更に過濃と
なる。本発明では、圧縮行程終了後かつ吸気行程開始前
に各気筒の吸気ポートに燃料を噴射するため、噴射され
た燃料は吸気通路に吹き戻されることなく吸気行程中に
それぞれの気筒に吸入される。これにより、カーボン噛
み込みが生じた場合でも各気筒の混合気空燃比はより可
燃空燃比に近くなり燃焼が生じやすくなる。
【0023】
【実施例】以下、添付図面を用いて本発明の実施例を説
明する。図1は本発明の始動時燃料供給制御装置を適用
する内燃機関の全体概略図である。図1において、1は
内燃機関本体、14は機関の吸気弁、15は排気弁、2
は吸気通路、16は運転者のアクセルペダルの操作に応
じた開度をとるスロットル弁、3は吸気通路2のサージ
タンク12内の吸気管圧力に応じた出力電圧を発生する
吸気管圧力センサである。吸気管圧力センサ3の出力
は、後述する制御回路10のマルチプレクサ内蔵A/D
変換器101に入力される。
【0024】機関1のディストリビュータ4には、その
軸がたとえばクランク角に換算して720°毎に基準位
置検出用パルス信号を発生するクランク角センサ5、お
よびクランク角に換算して30°毎にクランク角検出用
パルス信号を発生するクランク角センサ6がそれぞれ設
けられている。これらクランク角センサ5、6のパルス
信号は制御回路10の入出力インターフェイス102に
供給され、このうちクランク角センサ6の出力はCPU
103の割込み端子に供給される。
【0025】さらに、吸気通路2には各気筒毎に燃料供
給系から加圧燃料を吸気ポートへ供給するための燃料噴
射弁7が設けられている。また、吸気通路2のスロット
ル弁16には、スロットル弁開度に応じた電圧信号を発
生するスロットル開度センサ17が設けられている。ス
ロットル開度センサ17の出力もA/D変換器101に
入力される。
【0026】機関本体1のシリンダブロックのウォータ
ジャケット8には、冷却水の温度を検出するための水温
センサ9が設けられている。水温センサ9は冷却水の温
度に応じた電圧信号を発生する。この出力信号も制御回
路10のA/D変換器101に入力される。また、図1
に12で示すのは、機関のバッテリ(図示せず)の端子
電圧を検出するバッテリ電圧センサである。バッテリ電
圧センサ12の出力も制御回路10のA/D変換器10
1に入力される。
【0027】さらに、機関のスタータスイッチ13から
は、機関始動操作時(クランキング時)に入出力インタ
フェイス102にスタータON信号が入力される。制御
回路10は、たとえばマイクロコンピュータとして構成
され、A/D変換器101、入出力インターフェイス1
02、CPU103の他に、ROM104、RAM10
5、バックアップRAM106、クロック発生回路10
7等が設けられている。
【0028】制御回路10の入出力インタフェイス10
2は、駆動回路110を介して各吸気ポートの燃料噴射
弁7に接続されており、燃料噴射弁7の作動を制御して
いる。すなわち、制御回路10は各気筒の燃料噴射時期
毎に別途計算される燃料噴射時間(燃料噴射量)TAU
だけ燃料噴射弁7を開弁する。これにより、各気筒の吸
気ポートにはTAUに比例する量の燃料が噴射される。
【0029】また、制御回路10の入出力インタフェイ
ス102は図示しない点火回路を介して各気筒の点火プ
ラグに接続され、所定の点火時期毎に各気筒の点火プラ
グを放電させて各気筒の点火を行う。吸気管圧力センサ
3の吸気管圧力データ、冷却水温度センサ9の冷却水温
データ、スロットル開度センサ17のスロットル開度デ
ータ、バッテリ電圧センサ12のバッテリ電圧データは
機関始動操作時に所定時間毎に実行されるA/D変換ル
ーチンによって取込まれてRAM105の所定領域に格
納される。つまり、RAM105における吸入空気量デ
ータおよび冷却水温データは所定時間毎に更新されてい
る。また、回転速度データはクランク角センサ6の30
°CA(クランク角)毎の割込みによって演算されてR
AM105の所定領域に格納される。
【0030】次に、本実施例の機関始動操作について説
明する。本実施例では、制御回路10は機関始動操作
中、すなわち機関のクランキング中に機関のコンプレッ
ションを監視し、コンプレッションが低下したときに燃
焼室内のカーボン剥離により吸排気弁の作動不良が生じ
たと判断して燃料噴射弁7の噴射時間TAUを低減す
る。これにより、始動操作時に機関に供給される燃料が
減量され、機関燃焼室内の混合気空燃比が可燃範囲に調
整される。
【0031】機関コンプレッション低下の検出は種々の
方法により行うことができるが、本実施例では、バッ
テリ電圧変化に基づく検出、吸気管圧力の変動に基づ
く検出、各気筒上死点における吸気管圧力に基づく検
出、始動操作開始後の経過時間に基づく検出、機関
連爆の有無に基づく検出、のうちいずれか1つ、または
それ以上の組合せによりコンプレッションの低下を検出
する。
【0032】以下、それぞれの方法について説明する。 バッテリ電圧変化に基づくコンプレッション低下検出 機関クランキング中、スタータモータの負荷は気筒内の
圧縮圧力の上昇のため各気筒の圧縮上死点付近で急激に
増大する。このため、バッテリ端子電圧は各気筒の圧縮
上死点近傍で急激に低下する。ところが、カーボン噛み
込みにより吸排気弁の閉弁不良が生じると気筒内圧縮圧
力が低下するため各気筒の圧縮上死点付近でのスタータ
モータの負荷が減少し、圧縮上死点付近でのバッテリ端
子電圧の低下が少なくなる。従って各気筒の圧縮上死点
付近でのバッテリ端子電圧の変化を監視することにより
カーボン噛み込みによるコンプレッション低下を検出す
ることができる。
【0033】図2(A) 、(B) は機関が正常な場合(図2
(A) )とカーボン噛み込みによるコンプレッション低下
が生じた場合(図2(B) )の機関クランキング中のバッ
テリ端子電圧変化を示す図である。図2(A) に示すよう
に、機関が正常な場合、すなわちコンプレッションが低
下していない場合にはクランキング中のバッテリ端子電
圧は各気筒の圧縮上死点(図2(A) にTで示す)で急激
に低下する周期的な変化を示している。一方、カーボン
噛み込みによる吸排気弁の閉弁不良が生じると、図2
(B) に示すようにクランキング中のバッテリ端子電圧の
圧縮上死点における電圧低下は小さくなり、バッテリ電
圧の変動幅が図2(A) に較べて小さくなる。
【0034】図3は上記バッテリ変化に基づいたコンプ
レッション低下検出動作を示すフローチャートである。
本ルーチンは図1制御回路10により一定クランク回転
角度(例えば30度)毎に実行される。本ルーチンで
は、機関始動操作中の各気筒の圧縮上死点におけるバッ
テリ端子電圧VTDC を求め、クランク回転角30度毎に
検出される他のタイミングにおけるバッテリ端子電圧V
とVTDC との比が所定値より高い(VTDC >K・V、こ
こでKは定数(本実施例ではK=0.8)である)場
合、すなわち圧縮上死点におけるバッテリ端子電圧の低
下が小さい場合にカーボン噛み込みによるコンプレッシ
ョン低下が生じたと判定している。
【0035】図3においてルーチンがスタートすると、
ステップ301では機関が始動操作中か否かが判定され
る。ここで、機関が始動操作中か否かは機関回転数Nが
所定値以下(例えばN≦400rpm)か否かにより判
断する。N>400rpmの場合には機関始動操作が終
了して機関が既に始動しているためステップ315に進
みルーチンを終了する。
【0036】ステップ301で機関が始動操作中である
場合には、ステップ303でクランク回転角センサ5、
6の出力から現在のクランク回転角を求め、現在いずれ
かの気筒が圧縮上死点にあるか否かが判断される。ステ
ップ303で気筒のいずれかが圧縮上死点にある場合に
は、ステップ305に進みバッテリ電圧センサの出力V
B をA/D変換して読み込み、圧縮上死点におけるバッ
テリ端子電圧VTDC としてRAM105の所定領域に記
憶する。また、ステップ303でいずれの気筒も圧縮上
死点にない場合には、ステップ307に進みバッテリ電
圧センサの出力VB をA/D変換して読み込み、バッテ
リ電圧VとしてRAM105の所定領域に記憶する。
【0037】これにより、VTDC の値はいずれかの気筒
が圧縮上死点に到達する毎に更新される。次いで、ステ
ップ309では上記により求めたVTDC とVB との値か
ら機関コンプレッションが低下しているか否かが判定さ
れる。すなわちステップ309でVTDC >K・V(K=
0.8)が成立する場合には、圧縮上死点におけるバッ
テリ端子電圧の低下が小さくコンプレッション低下が生
じていると考えられるため、ステップ311でフラグF
の値を1にセットしてルーチンを終了する。また、ステ
ップ309でVTDC ≦K・Vであった場合には、コンプ
レッションは低下していないと考えられるため、ステッ
プ313でフラグFの値を0にセットしてステップ31
5でルーチンを終了する。上記ルーチン実行により、カ
ーボン噛み込みによるコンプレッション低下が生じてい
る場合にはフラグFが1にセットされる。
【0038】吸気管圧力変動に基づくコンプレッショ
ン低下検出 図4は機関が正常な場合のクランキング中の吸気管圧力
PMの変動を示している。機関正常時には、吸気管圧力
は各気筒の吸気行程毎に低下する規則的な変動を示し、
吸気管圧力の最小値(図4にPMMIN で示す)は略一様
となっている。また、図5はカーボン噛み込みによる吸
排気弁の閉弁不良が生じた場合の吸気管圧力PMの変動
を示す。カーボン噛み込みが生じると、各気筒の圧縮行
程時に気筒内の空気が吸気通路に吹き返され、次の吸気
行程時に気筒内に再吸入されるため各気筒の吸気行程時
の吸気管圧力PMは図5に示すように不規則な変動を繰
り返すようになる(図5PMMIN )。このため、各気筒
の吸気行程中の最小圧力を計測し、この最小圧力のばら
つきを監視することによりコンプレッション低下が生じ
ているか否かを判定することができる。
【0039】上記の検出を行うためには、例えば、制御
回路10はクランク回転角30度毎に吸気管圧力センサ
3から吸気管圧力PMを読み込み、各気筒の吸気行程毎
(例えば4気筒機関の場合にはクランク回転角180度
毎)にこれらの吸気管圧力PMの最小値PMMIN を求
め、RAM105に記憶する。また、機関1行程サイク
ル毎に(クランク回転角720度毎に)上記により記憶
した各気筒の吸入行程時の最低吸気圧力PMMIN を比較
して、各気筒のPMMIN が所定範囲を越えてばらついて
いる場合に、カーボン噛み込みによるコンプレッション
低下が生じていると判断して前述のフラグFの値を1に
セットするようにする。
【0040】各気筒上死点における吸気管圧力に基づ
くコンプレッション低下検出 前述の図4に示したように、機関が正常であれば機関ク
ランキング中は吸気管圧力は常に大気圧以下になってお
り、吸気管圧力PMは大気圧以上になることはない。一
方、カーボン噛み込みによる吸排気弁の閉弁不良が生じ
ると各気筒の圧縮行程中に気筒内の空気が吸気通路に吹
き返される。このため、図5にPTDC で示すように各気
筒の圧縮行程終了時(圧縮上死点付近)では吸気管圧力
は一時的に大気圧より高くなる。このため、機関クラン
キング中に各気筒の上死点における吸気管圧力を監視す
ることにより、機関のカーボン噛み込みによるコンプレ
ッション低下を検出することができる。
【0041】この場合、制御回路10は機関クランキン
グ中にクランク回転角センサ5、6の出力信号から各気
筒の圧縮上死点を検出し、各圧縮上死点毎に吸気管圧力
センサ3から吸気管圧力PMを読み込む。そして、この
PMか大気圧以上になっている場合にはカーボン噛み込
みによるコンプレッション低下が生じていると判断して
前述のフラグFの値を1にセットする。
【0042】始動操作開始後の経過時間に基づくコン
プレッション低下検出 クランキング開始後所定時間経過しても機関が始動しな
い場合には、カーボン噛み込みよりコンプレッション低
下が生じていると考えられる。このため機関始動操作時
のクランキング時間からカーボン噛み込みによるコンプ
レッション低下を検出することができる。
【0043】この場合、制御回路10は機関始動操作開
始からの経過時間を計測し、この時間が正常な機関が始
動するのに十分な時間(例えば数秒程度)以上になった
ときにカーボン噛み込みによるコンプレッション低下が
生じたと判断して前述のフラグFの値を1にセットす
る。なお、機関が正常であっても、例えば始動時の機関
温度やバッテリ電圧(スタータモータ回転数)により機
関始動時間が変化するため、上記の判定時間は一定値と
せずに、始動時の機関温度やバッテリ電圧(またはクラ
ンキング時の機関回転数)に応じて設定するようにして
も良い。また、後述する図14から16の実施例のよう
に、前回までの機関始動操作時に機関始動に要した時間
に基づいて機関が正常な場合に始動に要する時間を設定
するようにすることも可能である。
【0044】機関連爆の有無に基づくコンプレッショ
ン低下の検出 カーボン噛み込みによる吸排気弁の閉弁不良以外の原因
による機関始動不良では殆どの場合機関始動操作中に各
気筒の爆発が生じるが、カーボン噛み込みによる吸排気
弁の作動不良が生じると、一般に作動不良を生じた気筒
での爆発は全く生じなくなる。このため、クランキング
中に各気筒の連続した爆発が生じていない場合にカーボ
ン噛み込みによるコンプレッション低下が生じていると
判断するようにしてもよい。
【0045】また、各気筒での爆発の有無はクランキン
グ中の回転速度変化から検出することができる。すなわ
ち、機関の各気筒で燃焼が正常に行われている場合、各
気筒の爆発行程ではトルクが発生するため機関回転速度
が上昇する。このため、爆発行程で機関回転速度が上昇
しない気筒では燃焼が生じていないと判断することがで
きる。
【0046】この場合、制御回路10はクランク回転角
センサ5の回転角パルス信号の間隔からクランキング中
に各気筒の爆発行程における機関回転速度を算出し、こ
の回転速度が所定値以下の場合に気筒内で爆発が生じて
いないと判断する。また、クランキング中に爆発が全く
生じていない気筒がある場合には、カーボン噛み込みに
よるコンプレッション低下が生じたと判断して前述のフ
ラグFの値を1にセットする。
【0047】次に、本実施例の上記のコンプレッション
低下検出結果に基づく始動時の燃料供給制御について説
明する。本実施例では、制御回路10は機関始動操作時
には機関冷却水温度THW、スロットル開度THA、機
関回転数Nから始動時の燃料供給量TAUSTを算出す
る。また、制御回路10は、機関始動操作時に前記か
らに説明した方法によりカーボン噛み込みによるコン
プレッション低下が生じているか否かを判定し、カーボ
ン噛み込みによるコンプレッション低下が生じている場
合には、上記により算出した始動時の燃料供給量TAU
STを所定量減量する。
【0048】これにより、カーボン噛み込みによる吸排
気弁の閉弁不良が生じている場合でも、各気筒に供給さ
れる燃料が減量され燃焼室内の混合気空燃比が可燃範囲
に調節される。図6は上記始動時燃料供給制御を示すフ
ローチャートである。本ルーチンは制御回路10により
一定時間または一定クランク回転角度毎に実行される。
【0049】図6においてルーチンがスタートすると、
ステップ601では現在機関が始動操作中か否かが判定
される。この判定は図3ステップ301と同様現在の機
関回転数が所定値以上か否かにより行われる。現在機関
の始動が完了している場合には、ルーチンはステップ6
13に進み、通常運転時の燃料噴射量TAUが演算さ
れ、通常運転時の燃料供給制御が実行される。なお、通
常運転時の燃料噴射量の演算は公知の方法により行われ
るため、詳細については省略する。
【0050】また、ステップ601で現在機関が始動操
作中と判定された場合には、次にステップ603で機関
冷却水温度THW、機関回転数Nのデータが制御回路1
0のRAM105から読み込まれ、ステップ605では
始動時の燃料噴射量TAUSTが演算される。ここで、
始動時燃料噴射量TAUSTは以下の式により計算され
る。
【0051】TAUST=TAUST0 ×β ここで、TAUST0 は機関冷却水温度THWから定ま
る始動時の基本燃料噴射量であり、図7(A) に示すよう
に、冷却水温度THWが低い程大きな値に設定される。
また、βは機関回転数Nに応じて決まる定数であり、例
えば図7(B) に示すように回転数Nが低い程大きな値に
設定される。
【0052】次いで、ステップ607では、機関にカー
ボン噛み込みによるコンプレッション低下が生じている
か否かを判定する。コンプレッション低下の有無は前述
のからのいずれかの方法により設定されるフラグF
の値により行う。F≠1の場合には、カーボン噛み込み
によるコンプレッション低下は生じていないので、ステ
ップ611に進み、ステップ605で算出したTAUS
Tを燃料噴射弁7の駆動回路にセットしてルーチンを終
了する。これにより、別途実行される図示しない燃料噴
射ルーチンにより所定の燃料噴射時期になると各気筒の
燃料噴射弁7がTAUSTの時間だけ開弁され、TAU
STに比例した量の燃料が各気筒の吸気ポートに噴射さ
れる。
【0053】一方、ステップ607でF=1、すなわち
機関にカーボン噛み込みによるコンプレッション低下が
生じていると判定された場合には、ステップ609に進
み、ステップ605で算出したTAUSTの値に所定の
係数Rを乗じた値をTAUSTとして設定し、ステップ
611に進みこの減量したTAUSTの値を燃料噴射弁
7の駆動回路にセットしてルーチンを終了する。なお、
上記係数Rの値は1より小さい一定値であり、本実施例
では、例えばR=0.5とされる。
【0054】上記ルーチン実行により、機関始動操作時
には始動時の燃料供給量TAUSTが演算され、機関に
カーボン噛み込みによるコンプレッション低下が生じて
いない場合には上記により演算したTAUSTの量の燃
料が機関に供給されるが、機関にカーボン噛み込みによ
るコンプレッション低下が生じていると判断された場合
には、上記により演算された燃料量TAUSTは所定量
減量されるようになる。
【0055】次に、本発明の始動時燃料供給制御の別の
実施例について説明する。上述の実施例では、機関始動
操作開始後、すなわち機関のクランキング中にコンプレ
ッション低下の有無を検出することにより吸排気弁への
カーボン噛み込みの有無を判定しており、カーボン噛み
込みが検出されるまでは通常の始動時の量の燃料が機関
に供給される。これに対して、以下に説明する実施例で
は、前回の機関始動から停止までの時間に基づいて今回
始動時にカーボン噛み込みによる吸排気弁の作動不良が
生じるか否かを予測し、カーボン噛み込みが生じること
が予測される場合には機関始動操作開始時から機関への
燃料供給量を減量するようにした点が相違している。
【0056】前述のように、始動後短時間で機関が停止
されると、特に機関の冷間始動の場合等では機関停止時
の燃焼室壁面温度が低いため燃焼内の未燃燃料や水分が
燃焼室壁面に液体の形で凝結する。これらの液状の未燃
燃料や水分は燃焼室壁面のカーボン堆積物の層に浸透
し、カーボン堆積物を壁面から浮き上がらせるためカー
ボン堆積物は壁面から剥離しやすい状態になる。機関が
比較的長時間運転された後に停止された場合には燃焼室
壁面温度は十分に高くなっており、燃焼室壁面への燃料
や水分の凝結は生じない。このため、前回機関始動後、
極めて短時間(例えば10秒程度)で機関が停止されて
いる場合には燃焼室壁面のカーボン堆積物が極めて剥離
しやすい状態になっており、今回の始動操作中にカーボ
ン堆積物の剥離が生じて吸排気弁への噛み込みが生じる
ことが予測される。
【0057】本実施例は、このようにカーボン堆積物の
剥離が予測される場合には始動操作開始時から機関への
燃料供給量を減量することにより、吸排気弁へのカーボ
ン噛み込みにより燃焼室内の混合気が過濃となることを
防止して機関を始動可能とするものである。なお、前述
の特公平6−39929の装置も前回の機関始動後、機
関停止までの時間が短い場合には今回の始動時の燃料噴
射量が減量される場合があるが、上記公報の装置は機関
が始動後短時間で停止された場合に吸気系に残留する燃
料により今回の始動時に混合気が過濃になることを防止
するものであり、本実施例のようにカーボン剥離を予測
するものではない。このため、上記公報の装置では、例
えば機関始動後短時間で機関が停止された場合であって
も、停止後再始動までの時間が長ければ始動操作時の燃
料は減量されず、吸排気弁へのカーボン噛み込みにより
混合気が過濃となることを防止し得ない。
【0058】図8は、本実施例の上記燃料供給制御を示
すフローチャートである。本ルーチンは制御回路10に
より一定時間または一定クランク回転角度毎に実行され
る。図8においてルーチンがスタートすると、ステップ
801では現在機関始動操作中か否かが判定され、現在
機関始動操作中であった場合にはステップ803から8
11で機関始動時の燃料供給量制御が実行される。すな
わち、始動時の燃料供給量TAUSTが機関冷却水温度
THWと機関回転数Nとに基づいて演算され(ステップ
805)、フラグFの値が1にセットされている場合に
は所定量減量される。ステップ801から811は、図
6のステップ601からステップ611と同一であるた
め、ここでは説明は省略する。
【0059】ここで、本実施例ではフラグFは機関燃焼
室のカーボンの剥離が生じることが予測されるか否かを
示すフラグであり、F=1はカーボンの剥離が予測され
ることを表している。フラグFの値は前回機関始動の際
に、後述するステップ815から821により設定さ
れ、制御回路10のバックアップRAM106に格納さ
れているものが使用される。
【0060】ステップ801で、機関始動操作が完了し
ていた場合、すなわち機関が始動していた場合には、ス
テップ815で通常運転時の燃料噴射量TAUを演算し
て、通常運転時の燃料供給制御を実行したあと、ステッ
プ817から821では次回の機関始動操作に備えてフ
ラグFの値が設定される。すなわち、ステップ817で
は、フラグFの値が1にセットされ、この値がバックア
ップRAM106に格納される。次いで、ステップ81
9ではフラグFTの値が1か否かが判定される。フラグ
FTは別途実行される図示しないルーチンで設定される
フラグであり、フラグFTの値は機関始動完了後所定時
間(本実施例では10秒)の間だけ0に設定され、所定
時間経過後は1に設定される。
【0061】ステップ819で機関始動完了後所定時間
が経過していない場合にはルーチンはステップ823に
進み、そのまま終了する。この場合、ステップ817で
バックアップRAM106に格納されたフラグFの値
(F=1)は変更されない。また、ステップ819で機
関始動後所定時間が経過していた場合には、ルーチンは
ステップ821に進み、バックアップRAM106に格
納されたフラグFの値は0に変更される。すなわち、ス
テップ817から821の実行により、機関始動完了後
所定時間が経過する前に機関が停止された場合には、バ
ックアップRAM106にはフラグFの値としてF=1
が記憶される。一方、所定時間経過後に機関が停止され
た場合にはバックアップRAM106にはフラグFの値
としてF=0が記憶される。従って、今回機関始動後極
めて短時間で機関が停止され、燃焼室壁面のカーボンが
剥離しやすい状態になった場合には、バックアップRA
M106にはフラグFの値としてF=1が記憶されるた
め、次回の機関始動時には図8ステップ809が実行さ
れて始動時の燃料供給量が減量されるため、カーボン剥
離が生じた状態でも機関の始動が可能となる。
【0062】次に、本発明の上記とは別の実施例につい
て説明する。上述の実施例は、いずれも燃焼室のカーボ
ン剥離が生じた場合または生じることが予測される場合
に通常の始動操作時とは異なる燃料供給制御を実施する
ことにより機関の始動を可能とするものである。しか
し、本実施例ではカーボン剥離による吸排気弁の閉弁不
良の有無にかかわらず同一の始動時燃料供給制御を行
い、機関の始動を可能としている点が前述の実施例と相
違している。
【0063】本実施例では、機関始動操作開始後第1の
所定期間の間は、前述の実施例のステップ605(図
6)またはステップ805(図8)にて計算されるのと
同じ通常の始動操作時の量の燃料を機関に供給する。こ
こで、上記第1の所定期間は機関が正常な場合(すなわ
ちカーボン噛み込みによる吸排気弁の閉弁不良が生じて
いない場合)に始動を完了するのに必要な十分な時間と
される。このため、機関にカーボン噛み込みによる吸排
気弁の閉弁不良が生じていない場合にはこの期間中に機
関の始動が行われる。
【0064】機関始動操作中に上記第1の所定期間が経
過した場合、すなわち上記第1の所定期間が経過しても
機関の始動が完了しない場合には、上記第1の所定期間
に続いて第2の所定期間の間機関への燃料供給が停止さ
れる。上記第1の期間に機関の始動が完了しなかった場
合には、カーボンの噛み込みにより吸排気弁の閉弁不良
が生じていると考えられ、各気筒の燃焼室内の混合気は
可燃範囲を越えて過濃になっている。しかし、上記第1
の所定期間経過後機関への燃料供給を停止することによ
り、燃焼室には空気のみが供給されることになる。これ
により、燃焼室内に残留した過濃混合気は吸入空気によ
り徐々に希釈され、混合気の空燃比は徐々に可燃範囲に
調整される。このため、カーボン噛み込みによる吸排気
弁の閉弁不良が生じており、混合気空燃比が過濃になっ
て上記第1の所定期間内に機関が始動しなかった場合で
も、上記第1の所定期間経過後の第2の所定期間内に燃
焼室内の混合気空燃比は可燃範囲に調整され、機関の始
動が可能となる。
【0065】ここで、上記第1の所定期間は前述のよう
に正常な機関の始動に必要とされる十分長い時間とする
必要があるが、第1の所定期間の設定を長く設定しすぎ
ると、この期間に気筒内に残留する燃料の量が多くなり
第1の所定期間に続く第2の所定期間で燃焼室内の混合
気空燃比が可燃範囲に調整されるまでの時間が長くなり
機関始動時間が長くなる。このため、上記第1の所定期
間は正常な機関の始動に必要とされる最小限の時間(例
えば2秒程度)とすることが好ましい。また、第2の所
定期間は、第1の所定期間内に機関に供給されて過濃と
なった燃焼室内の混合気が希釈されて可燃空燃比範囲に
なるのに十分な時間に設定する必要があり、第2の所定
期間を第1の所定期間より長く設定することが好まし
い。
【0066】上記第2の所定期間が経過しても機関の始
動が完了しない場合には、再度第1の所定期間の燃料供
給と、第2の期間の燃料供給停止とが繰り返される。図
9は本実施例の上記始動時燃料供給制御を示すフローチ
ャートである。本ルーチンは制御回路10により機関始
動操作中の所定時間毎または所定クランク回転角毎に実
行される。
【0067】図9においてルーチンがスタートすると、
ステップ901では現在機関始動操作中か否かが判定さ
れ、現在機関始動操作が完了しており機関が既に始動し
ている場合にはステップ903に進み、通常運転時の燃
料噴射量TAUを演算して通常時の燃料噴射制御を行っ
てからステップ921で後述するカウンタTCの値を0
にリセットしてステップ923でルーチンを終了する。
【0068】また、ステップ901で現在機関始動操作
中であった場合にはステップ905に進み現在スタータ
スイッチがONになっているか否か(すなわちクランキ
ング中か否か)が判定され、スタータスイッチがONに
なっていない場合にはステップ923に進み、そのまま
ルーチンを終了する。ステップ905でスタータスイッ
チがONになっていた場合には、ステップ907でカウ
ンタTCの値をプラス1カウントアップしてからステッ
プ909でカウンタTCの値が前述の第1の所定期間に
相当する値t1 以上になったか否かを判定する。
【0069】カウンタTCの値はバックアップRAM1
06に格納されており、後述するように、TCは始動操
作開始後第2の所定期間t2 が経過した場合、または始
動操作が完了した場合にステップ921でゼロにリセッ
トされる。ステップ907でTC<t1 である場合、す
なわち第1の所定期間が経過していない場合には、ステ
ップ911で冷却水温度THW、機関回転数Nを読み込
んでステップ913にて始動時燃料供給量TAUSTを
演算し、ステップ919にて燃料噴射弁7の駆動回路に
演算したTAUSTをセットしてからステップ923で
ルーチンを終了する。これにより、別途実行される燃料
噴射制御ルーチンにより、燃料噴射弁7からは所定のク
ランク回転角毎に各気筒の吸気ポートにTAUSTに相
当する量の燃料が噴射される。ここで、ステップ91
1、913、919は図6のステップ603、605、
611と同様であるのでここでは説明を省略する。
【0070】一方、ステップ909で既に第1の所定期
間t1 が経過していた場合には、ステップ915に進み
第1の所定時間t1 経過後、更に第2の所定期間が経過
しているか否かが判定され、第1の所定期間経過後第2
の所定期間が経過していない場合(TC<t1 +t2
には、ステップ917でTAUSTがゼロに設定され
る。これにより、燃料噴射弁7からの燃料噴射が停止さ
れる。
【0071】また、ステップ915で第1の所定期間経
過後第2の所定期間が経過していた場合(TC≧t1
2 )には、ステップ921でカウンタTCの値はゼロ
にリセットされ、この値がバックアップRAM106に
格納される。図10は上記ルーチン実行による始動時の
燃料噴射量の変化を示す図である。図10に示すよう
に、機関始動操作開始後第1の所定期間t1 が経過する
までは機関には通常の始動操作時の量の燃料が供給され
(ステップ909、911、913)、第1の所定期間
1 内に機関の始動が完了しない場合には、第1の所定
期間に続く第2の所定期間t2 の間機関への燃料供給が
停止される(ステップ915、917)。第2の所定機
関が経過しても機関の始動が完了しない場合にカウンタ
TCの値はゼロにリセットされ、上記第1の所定期間の
操作と第2の所定期間の操作とが繰り返される。
【0072】また、第1の所定期間中または第2の所定
期間中のいずれかに機関が始動した場合には直ちに通常
の燃料噴射制御が開始される(ステップ901、90
3)とともに、カウンタTCの値はゼロにリセットされ
る。上記実施例では、図10に示したように機関始動操
作時に燃料噴射弁7から通常の始動時燃料量を噴射する
期間(t1 )と燃料噴射を完全に停止する期間(t 2
とが機関が始動するまで交互に繰り返されることにな
る。しかし、図10のように、通常量の燃料を噴射する
期間と燃料噴射を停止する期間とを交互に繰り返す代わ
りに、図11に示すように燃料噴射量を徐々に増加及び
減少させる変化を繰り返すようにしても良い。図11の
ように燃料噴射量を徐々に増減することにより、燃焼室
内の混合気空燃比の変化は図10の場合に較べて緩やか
になる。このため、カーボン噛み込みによる吸排気弁閉
弁不良が生じて過濃になった混合気が希釈されて可燃空
燃比範囲を通過する際に可燃空燃比範囲にとどまってい
る時間が長くなり、機関の始動性が更に向上する。
【0073】図12は、図11の始動時燃料供給制御を
示すフローチャートである。本ルーチンは制御回路10
により一定時間毎または一定クランク回転角毎に実行さ
れる。図12においてルーチンがスタートすると、ステ
ップ1201では機関始動操作中か否かが判定され、始
動操作が完了している場合にはステップ1203で通常
運転時の燃料供給制御を行い、ステップ1231でカウ
ンタTCをゼロにリセットしてステップ1235でルー
チンを終了する。また、機関始動操作中である場合に
は、ステップ1205でスタータモータがONになって
いるか否かを判断し、ONの場合には機関冷却水温度T
HWと機関回転数Nとを読み込んで、ステップ1209
で始動時の基本燃料噴射量TAU0を演算する。ここ
で、ステップ1201からステップ1209は、図9ス
テップ901から905、及び911、913と同様な
操作である。また、ステップ1209で演算するTAU
0は図9ステップ913で演算されるTAUSTと同一
である。
【0074】上記によりTAU0演算後、ステップ12
11では図9と同様カウンタTCの値がプラス1カウン
トアップされる。ステップ1213ではカウンタTCの
値がt1 以上か否か、すなわち第1の所定期間が経過し
ているか否かが判断され、第1の所定期間t1 が経過し
ていない場合には、ステップ1215で、始動時の燃料
供給量TAUSTが前回ルーチン実行時よりTAU0/
1 だけ増大される、ステップ1217、1219では
TAUSTの最大値がTAU0に制限される。このた
め、ステップ1213で第1の所定期間が経過していな
い場合には始動時燃料供給量TAUSTは初期値ゼロか
らTAU0まで、ルーチン実行毎にTAU0/t1 づつ
増大される。
【0075】ステップ1213で第1の所定期間t1
経過していた場合には、次にステップ1221で第1の
所定期間経過後更に第2の所定期間t2 が経過している
か否かが判定される。第2の所定期間t2 が経過してい
ない場合には、ステップ1223から1225が実行さ
れ、前述の第1の所定期間中に増大された始動時燃料供
給量TAUSTはルーチン実行毎にTAU0/t2 ずつ
ゼロになるまで減量される。
【0076】また、ステップ1221で第2の所定期間
が経過していた場合には、ステップ1229で第2の所
定期間経過後更に第3の所定期間が経過しているか否か
が判断され、第3の所定期間が経過していない場合に
は、TAUSTはゼロにセットされる。更に、第3の所
定期間が経過後は、ステップ1231でカウンタTCは
ゼロにリセットされる。
【0077】上記ステップのいずれかで始動時燃料量T
AUSTが計算された後、ステップ1233で計算され
たTAUSTが燃料噴射弁7の駆動回路にセットされル
ーチンは終了する。上記ルーチン実行により、図11に
示すように機関始動時の燃料噴射量は始動操作開始後第
1の所定期間t1 の間はルーチン実行毎に増大され、第
1の所定期間経過後は第2の所定期間t2 の間ルーチン
実行毎ち減量される。また、第2の所定期間経過後は第
3の所定期間t3 の間燃料噴射が停止される。
【0078】なお、図9と図12の始動時燃料供給制御
は、カーボン噛み込みによる吸排気弁閉弁不良の有無に
かかわらず実行しているが、図6、図8の制御と同様に
コンプレッション低下やカーボン剥離が予測される始動
時のみに図9または図12の制御を実行するようにして
も良い。次に、本発明の始動時燃料供給制御の更に別の
実施例について説明する。
【0079】前述のように、カーボン噛み込みにより吸
気弁の閉弁不良が生じると気筒内の混合気が圧縮行程中
に吸気通路に吹き返される。この場合、燃料噴射弁から
の燃料噴射が圧縮行程中に行われていると、圧縮行程中
に吸気ポートに噴射された燃料が吸気弁から洩れる混合
気とともに吸気通路に吹き戻され、吸気行程にある他の
気筒に吸入される場合が生じる。このため吸気行程にあ
る他の気筒内の混合気空燃比が過濃となってしまう問題
がある。この問題は、特に各スロットル弁下流側の吸気
通路を互いに連通するバランスパイプを設けた独立吸気
機関に特に生じやすい。
【0080】図13は独立吸気機関の吸気管配置を示す
概略図である。図において、100は4つの気筒#1か
ら#4を有する4気筒機関である。また、101から1
04で示したのはそれぞれの気筒の吸気ポートに接続さ
れた、互いに独立した吸気通路である。吸気通路101
から104にはそれぞれスロットル弁101aから10
4aが設けられている。各吸気通路には、それぞれの気
筒の吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射弁107から
110が設けられている。また、図に105で示すの
は、各吸気通路101から104のスロットル弁下流側
部分に接続された共通のバランスパイプである。
【0081】バランスパイプ105は、各気筒に均等に
配分する必要があるパージガス等をそれぞれの吸気ポー
トに分配するためのものである。例えばアイドル回転数
制御のためにスロットル弁をバイパスして各気筒に吸気
を供給する場合や、蒸発燃料吸着キャニスタのパージガ
ス、クランクケースベンチレーションのパージガス等は
各気筒に均等に分配する必要がある。通常の吸気マニホ
ルドを有するエンジンであればマニホルド上流側の集合
吸気通路にこれらパージガス配管を接続すればパージガ
ス等が各気筒に均等に配分されるが、独立吸気機関では
これらの配管をそれぞれの気筒の吸気通路に接続する必
要がある。このため、本実施例では共通のバランスパイ
プを設け、このバランスパイプを各吸気通路のスロット
ル弁下流側に接続することにより、このバランスパイプ
を介して各気筒に上記パージガス等を分配するようにし
ている。
【0082】ところが、上述のようなバランスパイプを
設けたことにより各吸気通路のスロットル弁下流側部分
はバランスパイプを介して互いに連通することになる。
ところで、各気筒に燃料噴射弁を有する機関では機関始
動操作時には、全気筒の燃料噴射弁から回転に同期して
(例えばクランク回転各720度の間に2回づつ)同時
に燃料を噴射する、いわゆる同時燃料噴射を行うのが一
般的である。ところが、同時燃料噴射を行うと、噴射タ
イミングがどの時期にあっても、燃料噴射時に必ず圧縮
行程にある気筒と吸気行程にある気筒とが存在すること
になる。
【0083】このため、上記バランスパイプを有する独
立吸気機関において始動時に同時燃料噴射を行うと、カ
ーボン噛み込みによる吸気弁の閉弁不良が生じていた場
合には、圧縮行程の気筒の吸気ポートに噴射された燃料
は吸気弁を通って吹き返す気筒内混合気とともに吸気通
路に吹き返されて、バランスパイプを通って吸気行程に
ある別の気筒の吸気通路に流入するようになる。このた
め、燃料噴射時に吸気行程にある気筒には多量の燃料が
吸入され、混合気空燃比が過濃となる問題が生じるので
ある。本実施例では、この問題を解決するために機関始
動操作時に各気筒の燃料噴射を同時に実施するのではな
くそれぞれの気筒の行程に合わせてそれぞれ独立に行
う。すなわち、各気筒の圧縮行程に燃料噴射を行うとカ
ーボン噛み込みによる吸気弁の閉弁不良が生じていた場
合に上記問題が生じることになるため、各気筒の燃料噴
射時期は圧縮行程以外の時期に設定している。また、上
記問題を完全に防止するためには、吸気ポートに噴射さ
れた燃料が直ちに気筒に吸入されることが好ましい。そ
こで、本実施例では各気筒の燃料噴射時期はそれぞれの
気筒の圧縮行程終了後吸気行程が開始されるまでの間に
設定される。
【0084】このように燃料噴射時期を設定することに
より、各気筒の吸気ポートに噴射された燃料は、圧縮行
程時に吸気弁からリークする混合気に吹き戻されること
なく吸気ポートにとどまり、噴射後直ちに開始される吸
気行程中にそれぞれの気筒に吸入される。このため、各
気筒の吸気ポートに噴射された燃料が他の気筒に吸入さ
れることが防止され、気筒内の混合気空燃比が過濃にな
ることが防止される。
【0085】なお、上記タイミングの独立燃料噴射はカ
ーボン噛み込みによる吸排気弁作動不良の有無にかかわ
らず機関始動操作時に常時実施しても良く、あるいは図
6、図8の実施例のようにカーボン噛み込みによるコン
プレッションの低下が検出された場合やカーボン剥離が
予測される場合のみ実施するようにしても良い。また、
機関始動完了後は燃料噴射時期は運転条件に即して最適
な時期に変更するようにしても良い。
【0086】次に、本発明の別の実施例について説明す
る。本実施例では機関始動操作開始後の経過時間に基づ
いてコンプレッションの低下の有無を検出する際に、前
回までの機関始動操作時に機関始動に要した時間に基づ
いて算出される機関始動時間を用いて、機関コンプレッ
ションが低下したか否かを判定する。今までに説明した
ように、上述の実施例では種々の方法を用いて機関コン
プレッションの低下から吸排気弁へのカーボン噛み込み
を検出し、燃料噴射量を減量することにより機関空燃比
が過濃になることによる始動不良を防止している。
【0087】しかし、カーボン噛み込みが生じた状態で
始動操作を継続する時間が長ければそれだけ機関空燃比
が過濃になるため、燃料噴射量を減量しても機関空燃比
が可燃範囲内になるまでに時間を要することになる。こ
のため、機関始動時にはできる限り早い時期にカーボン
噛み込みを検出して燃料噴射量の減量を開始する必要が
ある。このため、機関始動操作開始からの時間によりカ
ーボン噛み込みを判定する場合には、判定時間をできる
だけ短く設定することが好ましい。一方、機関が正常な
状態であっても機関毎の差により機関始動時間がばらつ
く場合があるため、この判定時間を短く設定すると、機
関毎の始動時間のばらつきにより正常な機関がカーボン
噛み込みが生じたと誤判定され、燃料噴射量が減量され
てしまう場合が生じ、逆に機関始動不良の原因となる場
合がある。このため、機関始動操作からの経過時間に基
づいてコンプレッション低下を判定する場合には、上記
始動時間のばらつきを考慮する必要があり、判定に用い
る正常時の機関始動時間を余裕を見て大きく設定しなけ
ればならず、迅速な判定ができない問題がある。
【0088】本実施例では、前回までの機関始動操作時
に機関始動に要した時間に基づいて通常時の機関始動時
間をそれぞれの機関毎に算出し、この通常時の機関始動
時間に基づいてコンプレッション低下の有無を判定す
る。これにより、機関毎の始動時間のばらつきによる差
を考慮した適切な判定が行われる。以下、図14から図
16を用いて本実施例を説明する。図14は、本実施例
のコンプレッション低下検出ルーチンを示す。本ルーチ
ンは制御回路10により一定時間毎に実行される。
【0089】図14においてルーチンがスタートする
と、ステップ1401では通常始動時間TSTAVの値
が所定TSTAV1 以下に設定されているか否かが判定
される。ここで、通常始動時間TSTAVは前回までの
機関始動に要した時間に基づいて設定される、機関のコ
ンプレッション低下が生じていない場合(カーボン噛み
込みが生じていない場合)の機関始動に要する時間であ
り、後述する図15のルーチンにより設定される。ステ
ップ1401でTSTAVが所定値TSTAV1より大
きい場合には本ルーチンはそのまま終了する。
【0090】ステップ1401で通常時始動時間TST
AVが所定値TSTAV1 より大きい場合には始動時燃
料噴射量の減量は実行しないのは、通常始動時間TST
AVが大きな値になっている場合には、機関に何らかの
別の異常が生じたために機関が始動しにくくなっている
と考えられ、燃料噴射量の減量を行うと更に機関始動が
困難になるおそれがあるためである。ここで、TSTA
1 の値は数秒程度の時間に相当する値に設定されてい
る。
【0091】ステップ1401でTSTAV≦TSTA
1 であった場合には、次いでステップ1403で機関
冷却水温度THWが所定の範囲THW1 ≦THW≦TH
2内にあるか否かが判定され、冷却水温度THWが上
記範囲内にない場合には始動時燃料噴射量の減量を行う
ことなくそのままルーチンを終了する。上記のように冷
却水温度THWが所定の範囲内にない場合には始動時の
燃料噴射量減量を行わないのは、機関が正常な状態であ
っても冷却水温度が低い場合には機関始動時間が長くな
り、逆に冷却水温度が高い場合には始動時間が安定しな
いためコンプレッション低下の判定に誤差を生じるおそ
れがあるためである。上記冷却水温度の所定温度範囲
は、カーボン噛み込みによる始動不良が発生する頻度が
高く、かつ通常の状態では始動時間が安定している温度
領域とされ、例えば、THW1 =0度C程度、THW2
=40度C程度に設定される。
【0092】ステップ1403でTHW1 ≦THW≦T
HW2 であった場合には、ステップ1405で機関始動
時からの経過時間TSTを用いて、機関にコンプレッシ
ョン低下が発生しているか否かが判定される。ここで、
始動経過時間TSTは後述する図15のルーチンで計時
される。ステップ1405では、始動経過時間が通常始
動時間TSTAVより所定値TSTAD以上大きくなっ
ていた場合にはコンプレッション低下が生じたと判断
し、ステップ1407でフラグFの値を1に設定する。
ここで、フラグFは上述の実施例と同様コンプレッショ
ン低下が生じているか否かを示すフラグであり、F=1
はコンプレッション低下発生を意味し、F=1に設定さ
れると後述の始動時燃料噴射量の減量が実行される。
【0093】すなわち、本実施例においても、機関始動
操作開始後ある程度の時間が経過しても機関が始動しな
い場合にカーボン噛み込みによるコンプレッション低下
が生じたと判定するようにしている。しかし、本実施例
では判定に使用する通常始動時間TSTAVは一定値で
はなく、機関の前回までの始動に要した実際の時間に基
づいて図15のルーチンで設定されるため、機関毎にそ
れぞれの始動時間の平均的な値が設定される。また、ス
テップ1407におけるTSTADの値は、今回の始動
経過時間が通常始動時間に比較して異常に長くなってい
ることを判定可能な値(例えば数秒程度)に設定され
る。また、ステップ1405でTSTAV+TSTAD
<TSTであった場合には本ルーチンは今回の実行を終
了する。
【0094】ステップ1407では、機関毎に過去に実
行した始動操作時に機関が始動するまでに要した時間に
基づいて設定される通常始動時間TSTAVを用いてコ
ンプレッション低下の有無を判定しているため、機関毎
の始動時間のばらつきを考慮して判定時間TSTAV+
TSTADを大きく設定する必要がない。このため、そ
れぞれの機関で始動後最短の時間でコンプレッション低
下の有無を判定することが可能となる。
【0095】ステップ1407でフラグFの値が1に設
定されると、次いでステップ1409ではフラグFの値
を1に設定したことの妥当性が再検証される。すなわ
ち、ステップ1409では、機関が始動モードを脱して
からの時間を表すカウンタCASTの値が所定値T
2 (T2 は、例えば20秒程度の時間に相当するカウン
タCASTの値)以上か否かが判定され、CAST≧T
2 の場合には、ステップ1415に進み、一旦F=1に
設定したフラグFの値を再度0に設定する。これは、仮
に機関始動操作開始時にカーボン噛み込みが生じていた
としても、機関が始動モードを脱した状態が長く続いて
いれば、カーボンは既に吸排気弁から離脱して噛み込み
は解消していると考えられるためである。なお、機関始
動モードについては後述する。
【0096】また、ステップ1411では、現在の機関
回転数が所定回転数N2 以上であった場合には同様にス
テップ1415に進みフラグFの値を0に設定する。こ
れは、カーボンが噛み込んだ状態であっても回転数があ
る程度上昇していれば、カーボンの噛み込みは解消して
いると考えられるためである。ここで、所定回転数N 2
は比較的高い回転数(例えば2000rpm程度)に設
定されている。
【0097】さらに、ステップ1413では、現在まで
のクランキング時間TCRNKが所定時間T3 以上であ
る場合には、同様にフラグFの値を0に再設定する操作
を行う。これは、ある程度クランキングを続けた状態で
は、後述する図16の燃料噴射量減量操作により、空燃
比が可燃空燃比範囲より希薄側になってしまっている可
能性があり、これ以上燃料噴射量減量を続けても機関が
始動する可能性は少ないので、燃料噴射量減量を中止す
る必要があるためである。
【0098】上述のように、本ルーチンでは始動経過時
間TSTが、機関毎に設定される通常始動時間TSTA
Vより所定値以上大きくなった場合にフラグFを1にセ
ットするとともに、燃料噴射量減量を続ける必要がなく
なった場合にはフラグFを0にセットして燃料噴射量減
量を即座に中止するようにしている。これにより、カー
ボン噛み込み時には速やかに燃料噴射量減量が実行さ
れ、機関空燃比が過濃になることが防止されるととも
に、カーボン噛み込みが解消した場合には直ちに通常時
の燃料噴射が実行されるため、機関始動が良好になる。
【0099】図15は、通常始動時間TSTAVの算出
と始動経過時間TSTの計時のためのルーチンのフロー
チャートである。本ルーチンは制御回路10により一定
時間毎に実行される。図15においてルーチンがスター
トすると、ステップ1501から1505では始動経過
時間TSTの計時条件が成立しているか否かが判定され
る。本実施例では、TSTの計時条件は、フラグFの
値が1にセットされていないこと(ステップ150
1)、機関スタータスイッチがONになっていること
(ステップ1503)、機関回転数Nが所定の回転数
1 以上になっていること(ステップ1505)、とさ
れる。また、の条件が成立していない場合には始動経
過時間TSTの計時と通常始動時間TSTAVの算出は
行わず、ステップ1515に進み、始動経過時間カウン
タTSTの値を0にセットしてルーチンを終了する。
【0100】ここで、フラグFの値が1にセットされて
いないことを条件としているのは、フラグFの値が1に
セットされている場合には、始動時にコンプレッション
低下が生じており通常の始動状態で機関が始動されてい
ないため、このような始動状態における始動経過時間T
STの値を通常始動時間TSTAVの算出に使用するこ
とを避けるためである。
【0101】また、上記またはのいずれかの条件が
成立していない場合にはステップ1507で始動経過時
間カウンタTSTをカウントアップすることなく直接ス
テップ1509に進む。ここで、機関回転数Nが所定回
転数N1 以上の場合にのみ計時を行う(ステップ150
5)のは、例えばバッテリの能力が低下しており電圧が
低いような場合にはコンプレッションの低下が生じてい
なくても始動時間が長くなるため、このような状態では
始動経過時間TSTのカウントアップを行わず、機関回
転数が所定回転数N1 以上となってから始動経過時間T
STの計時を行うようにしたものである。所定回転数N
1 の値は通常のクランキング回転数より低い値に設定さ
れ、例えば100rpm程度とされる。
【0102】ステップ1501から1505の条件が全
て成立した場合には、ステップ1507で始動経過時間
カウンタTSTがカウントアップされる。これにより、
始動経過時間カウンタTSTは機関の始動時間が正常な
条件(ステップ1501、1505)下でのみカウント
アップされるため、図14ステップ1405のコンプレ
ッション低下の判定や通常始動時間TSTAVの算出に
誤差が入ることが防止される。
【0103】次に、ステップ1509と1511とは通
常始動時間TSTAVの算出条件の判定を示す。本実施
例では、TSTAVの算出条件は、機関始動が完了し
た時点であること(始動完了フラグXSTの値が1→0
に変化した直後のルーチン実行時であること)(ステッ
プ1509)、機関冷却水温度THWが、THW1
THW≦THW2 の範囲にあること(ステップ151
1)、である。
【0104】ステップ1509の条件は機関始動完了時
に一度だけTSTAVの算出を行うようにするためであ
る。また始動完了フラグXSTの値は、別途実行される
図示しないルーチンにより、機関回転数が所定の回転数
(例えば800rpm程度)以上で1に、それ以下の回
転数で0に設定される。ステップ1509の条件が成立
しない場合(すなわち、機関始動操作中または始動完了
後)は、TSTAVの算出は行わず、そのままルーチン
を終了する。
【0105】また、所定温度範囲(ステップ1501)
のみで計時を行うのは、図14ステップ1403と同じ
理由であり、始動時間が通常より長くなる低温時や始動
時間が安定しない高温時に計時したTSTの値に基づい
てTSTAVを算出するとTASTAVの値が必ずしも
通常の機関始動に要する時間を表さないことになるため
である。なお、THW1 、THW2 の値は図14ステッ
プ1401と同一に設定される。
【0106】ステップ1509、1511の条件が成立
しない場合には、ステップ1513を実行することな
く、そのままルーチンを終了する。ステップ1509と
1511の条件が成立した場合には、ステップ1513
で今回の始動経過時間TSTから通常始動時間TSTA
Vを、 TSTAV=((TSTAV×(N−1)+TST)/
N として更新する。ここで、右辺のTSTAVは現在記憶
しているTSTAVの値である。すなわち、TSTAV
は現在記憶している前回ルーチン実行時のTSTAVと
今回の始動に要した時間TSTとの加重平均値(なまし
値)として算出される。Nは加重平均における重み付け
係数(なまし係数)であり、本実施例では例えば10程
度の値とされる。上記のように、加重平均によりTST
AVの値を求めることにより、算出されるTSTAVの
値はTSTの変動に対して安定した値となる。なお、本
実施例では、バッテリが制御回路10と接続されていな
い場合にはTSTAVの初期値としてかなり大きな値
(例えば10秒から20秒程度の時間)をバックアップ
RAM106に格納するようにしている。これは、機関
の初期始動時(工場出荷時)等には燃料配管中に残留し
た空気等の影響で始動時間が長くなることがあるので、
このような場合に図14のルーチンでコンプレッション
低下の判定がなされることを防止するためである。ま
た、ステップ1513で算出されたTSTAVの値は、
ステップ1514で制御回路10のバックアップRAM
106に格納、保持される。このため、機関始動を繰り
返すにつれてバックアップRAM106に格納されたT
STAVの値は通常の始動に要する時間を代表する値に
近づくようになる。
【0107】図16は、図14の判定結果に基づく機関
始動時の燃料噴射量制御を示すフローチャートである。
本ルーチンも、図6のルーチンと同様一定時間または一
定クランク回転角毎に実行される。図16においてルー
チンがスタートすると、ステップ1601では図14で
設定されるフラグFの値が1に設定されているか否かが
判定される。ステップ1601でF≠1であった場合に
は、すなわちコンプレッション低下は生じていないた
め、ステップ1603に進み通常の燃料噴射制御を行
う。
【0108】ステップ1601でフラグFの値が1にセ
ットされていた場合には、ステップ1605以下の燃料
噴射制御等が行われる。すなわち、ステップ1605で
は始動モード判定用の機関回転数NS1、NS2がそれぞれ
所定量増大され、ステップ1607では、始動モード判
定フラグXSTEの値が1か否かが判定される。始動モ
ード判定フラグXSTEは別途実行される図示しないル
ーチンにより、機関が始動モードにあるときに1に、始
動モードを脱したときに0に設定される。本実施例で
は、機関がの回転数が所定の回転数以下である場合に機
関が始動モードにあると判断し、機関回転数が所定の回
転数以上である場合に機関が始動モードを脱したと判定
する。始動モード判定については後述するが、始動モー
ド判定回転数は機関始動完了有無の回転数(例えば80
0rpm)より小さな値にされている。
【0109】ステップ1607でXSTE=1の場合、
すなわちコンプレッション低下が生じていて、現在機関
が始動モードにある場合には図13で説明したように機
関の燃料噴射を各気筒毎に圧縮行程終了後の独立燃料噴
射に切換えるとともに(ステップ1609)、図6で説
明した燃料噴射量の減量を実行する(ステップ161
1)。次いで、機関のアイドル制御弁(図示せず)を全
開にして(ステップ1613)ルーチンを終了する。な
お、アイドル制御弁は、吸気通路2のスロットル弁16
をバイパスして機関に供給される吸入空気量を制御する
ものであり、アイドル制御弁を全開にすることにより機
関に供給される吸入空気量が増大する。
【0110】ステップ1609から1613の操作によ
り、燃料噴射時期が各気筒の圧縮行程終了後に切り換え
られ、さらに燃料噴射量が減量されるためカーボン噛み
込みにより過濃になった燃焼室内の空燃比が次第に可燃
空燃比範囲になる。また、アイドル制御弁を全開にする
ことにより各気筒に供給される吸入空気量が増大するた
め、燃料減量によって減少する爆発力を増大させ機関始
動が容易になる。
【0111】一方、ステップ1607でXSTE=0、
すなわちステップ1609から1613の操作により気
筒内で爆発が生じ、ある程度機関回転数が上昇したこと
により機関が始動モードを脱したと判定された場合に
は、ステップ1609から1613に代えてステップ1
615と1617が実行される。この場合には、始動時
の燃料噴射量の減量は停止され機関燃料噴射量は通常の
値に設定されることになるが、カーボン噛み込みが生じ
た状態から機関が始動したため、始動後もしばらくの間
カーボン噛み込みが解消せず空燃比過濃によるエンジン
不調が続く可能性がある。そこで、カーボン噛み込みが
生じた状態からの始動後は、ステップ1615で始動後
増量を減量し空燃比が過濃になることを防止する。ま
た、ステップ1617では、アイドル制御弁の開度を通
常より一定割合だけ増大した状態に制御し、吸入空気量
の低下による空燃比の過濃が生じることを防止する。な
お、アイドル制御弁開度は通常運転時は機関冷却水温度
に応じて設定され、冷却水温度が上昇して所定温度に達
すると全閉にされる。
【0112】次に、ステップ1607の始動モード判定
について説明する。本実施例では、機関回転数Nが上昇
して、N≧NS2になったときに機関が始動モードから脱
したとしてフラグXSTEの値を0に設定する。また、
一旦始動モードを脱した後、再び回転数が低下する場合
があるが、一旦XSTEの値が1にセットされた場合に
は、機関回転数がNS2より低い値NS1以下まで低下しな
いとフラグXSTEの値は0にセットされない。すなわ
ち、フラグXSTEを1から0に変更する条件はN≧N
S2が成立することであり、XSTEを0から1に変更す
る条件はN≦N S1が成立することである。ここでNS1
S2であり、例えば通常時にはNS1は200rpm程度
に、またNS2は400rpmに設定されている。
【0113】図16では、コンプレッション低下が生じ
た場合にはステップ1605で上記始動モードの判定回
転数NS1とNS2とをそれぞれ一定量(例えば200rp
m程度ずつ)増加させる操作をおこなっているが、これ
は以下の理由による。本実施例では、ステップ1607
で機関が始動モードを脱したと判定されると燃料噴射量
の減量は停止されるが、実際にはカーボン噛み込み時の
機関始動時には気筒内空燃比がかなり過濃に近い状態で
燃焼が行われるため、始動モードを脱した後も燃料噴射
量を通常の値に戻すと空燃比が過濃になり機関回転数が
不安定になる場合がある。このため、本実施例では、カ
ーボン噛み込み時の機関始動では、NS2、NS1を増加さ
せて始動モードが高い回転数まで続くようにするととも
に、機関回転数が低下した場合には直ちに始動モードに
復帰して燃料噴射量の減量を行うことにより空燃比を可
燃範囲内に維持するようにしたものである。
【0114】これにより、燃料噴射量の減量補正が有効
に作用し、コンプレッション低下が生じた場合の機関始
動の可能性が向上するようになる。なお、図16の実施
例では、ステップ1601でF≠1と判定された場合に
は通常の始動時燃料噴射制御が行われ、ステップ161
5の始動後燃料増量の補正(減量)とステップ1617
のアイドル制御弁の開度補正(増大)は行われないが、
例えば機関始動時にはコンプレッションの低下が発生し
ており、その後機関の回転数が上昇したためにフラグF
が0に設定されたような場合には、機関空燃比はかなり
過濃に近い状態になっているため、ステップ1601で
F≠1であった場合でも、Fの値が始動時に一旦F=1
に設定されたことがある場合には、通常の始動時燃料制
御に加えて始動モードを脱した後にステップ1615の
始動後燃料増量の補正とステップ1617のアイドル制
御弁の開度補正とを実行するようにしてもよい。
【0115】
【発明の効果】各請求項に記載の発明によれば、機関燃
焼室壁面に堆積したカーボンが剥離して吸排気弁に噛み
込みを生じた場合でも、混合気の空燃比を可燃範囲に調
整することにより機関始動を行うことができるという共
通の効果を奏する。すなわち、請求項1に記載の発明
は、機関のコンプレッション低下を検出することにより
カーボン噛み込みによる吸排気弁の閉弁不良が生じたこ
とを判定し、始動時に機関に供給する燃料量を減量する
ことにより、混合気空燃比を可燃範囲に調整して機関の
始動を可能とする効果を奏する。
【0116】また、請求項2に記載の発明は、前回まで
の機関始動に要した時間に基づいて通常の機関始動に要
する時間を算出し、この通常始動時間を経過しても機関
が始動しない場合にコンプレッションの低下が生じたと
判定することにより、機関毎の始動時間のばらつきに影
響されずに正確、かつ迅速に機関コンプレッションの低
下を判定することが可能となるという効果を奏する。
【0117】また、請求項3に記載の発明は、前回の機
関始動後停止されるまでの運転時間に基づいてカーボン
剥離が生じることが予測される場合には、始動操作時の
燃料供給量を減量することにより、混合気空燃比を可燃
範囲に調整して機関の始動を可能とする効果を奏する。
請求項4に記載の発明では、機関始動操作開始後所定時
間が経過すると機関への燃料供給を停止することによ
り、混合気空燃比を可燃範囲に調整して機関の始動を可
能とする効果を奏する。
【0118】また、請求項5に記載の発明では、機関始
動操作時に各気筒の燃料噴射弁からそれぞれの気筒の圧
縮行程後、吸気行程開始までの間の期間に燃料噴射を実
施するようにして、噴射された燃料が他の気筒に吸入さ
れることを防止することにより、各気筒の混合気空燃比
を可燃範囲に調整して機関の始動を可能とする効果を奏
する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の始動時燃料供給制御装置を適用する内
燃機関の全体概略図である。
【図2】コンプレッション低下の有無による機関クラン
キング中のバッテリ端子電圧変化を示す図である。
【図3】コンプレッション低下検出動作の一例を示すフ
ローチャートである。
【図4】機関が正常な場合のクランキング中の吸気管圧
力の変動を示す図である。
【図5】カーボン噛み込みによる吸排気弁の閉弁不良が
生じた場合の吸気管圧力の変動を示す図である。
【図6】始動時燃料供給制御の一実施例を示すフローチ
ャートである。
【図7】図6の制御に使用する係数の設定を説明する図
である。
【図8】始動時燃料供給制御の別の実施例を示すフロー
チャートである。
【図9】始動時燃料供給制御の別の実施例を示すフロー
チャートである。
【図10】図9の制御による始動時の燃料噴射量の変化
を示す図である。
【図11】始動時燃料供給制御の別の実施例を説明する
図である。
【図12】図11の始動時燃料供給制御を示すフローチ
ャートである。
【図13】独立吸気機関の吸気管配置を示す概略図であ
る。
【図14】図3とは別のコンプレッション低下検出動作
の一例を示すフローチャートである。
【図15】通常の機関始動時間に要する時間算出ルーチ
ンを示すフローチャートである。
【図16】図14のコンプレッション低下検出時の始動
時燃料供給制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…内燃機関本体 2…吸気通路 3…吸気管圧力センサ 5、6…クランク回転角センサ 7…燃料噴射弁 10…制御回路 14…吸気弁 15…排気弁
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 F02D 45/00 312 S 362 J 364 D

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃機関始動操作時の機関への燃料供給
    を制御する始動時燃料供給制御装置であって、 機関始動操作中の気筒圧縮圧力が所定値より低下したこ
    とを検出するコンプレッション低下検出手段と、 前記コンプレッション低下検出手段により前記圧縮圧力
    の低下が検出されたときに、始動操作時の機関への燃料
    供給量を前記圧縮圧力の低下が検出されないときに較べ
    て減量する減量手段と、を備えた内燃機関の始動時燃料
    供給制御装置。
  2. 【請求項2】 前記コンプレッション低下検出手段は、
    機関始動操作開始後の時間を計時する計時手段と、前回
    までの機関始動操作時に計時した、機関始動操作開始か
    ら機関が始動するまでの時間に基づいて通常の機関始動
    に要する時間を算出する通常始動時間算出手段と、機関
    始動操作時に前記計時手段の計時した時間が前記通常の
    機関始動に要する時間を越えた場合に気筒圧縮圧力が所
    定値より低下したと判定する判定手段と、を備えた請求
    項1に記載の内燃機関の始動時燃料供給制御装置。
  3. 【請求項3】 内燃機関始動操作時の機関への燃料供給
    を制御する始動時燃料供給制御装置であって、 前回の機関始動から停止までの機関運転時間に基づい
    て、機関燃焼室壁面に堆積したカーボン堆積物が今回の
    始動操作時に剥離するか否かを予測する予測手段と、 前記予測手段により前記カーボン堆積物の剥離が予測さ
    れるときに、始動操作時の機関への燃料供給量を前記剥
    離が予測されないときに較べて減量する減量手段と、を
    備えた内燃機関の始動時燃料供給制御装置。
  4. 【請求項4】 内燃機関始動操作時の機関への燃料供給
    を制御する始動時燃料供給制御装置であって、 前記機関の吸気通路に燃料を噴射する燃料噴射弁と、 該燃料噴射弁からの燃料噴射を制御する燃料噴射制御手
    段とを備え、 前記燃料噴射制御手段は機関始動操作中に、機関始動操
    作開始後第1の所定期間が経過するまでは機関始動条件
    から定まる所定量の燃料を前記燃料噴射弁から噴射し、
    前記第1の所定期間経過後第2の所定期間が経過するま
    では前記燃料噴射弁からの燃料噴射を停止し、 前記第1の所定期間は、正常な機関の始動操作が完了す
    るのに十分な時間である、内燃機関の始動時燃料供給制
    御装置。
  5. 【請求項5】 内燃機関始動操作時の機関への燃料供給
    を制御する始動時燃料供給制御装置であって、 内燃機関の各気筒の吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴
    射弁と前記それぞれの燃料噴射弁からの燃料噴射時期を
    制御する制御手段とを備え、 前記制御手段は、機関始動操作時に各気筒の圧縮行程終
    了後かつ吸気行程開始前にそれぞれの気筒の燃料噴射弁
    から燃料を噴射する、内燃機関の始動時燃料供給制御装
    置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014066208A (ja) * 2012-09-26 2014-04-17 Daihatsu Motor Co Ltd 内燃機関の制御装置
JP2018184887A (ja) * 2017-04-26 2018-11-22 マツダ株式会社 エンジンの制御方法及びエンジンの制御装置
JP2019132196A (ja) * 2018-01-31 2019-08-08 ダイハツ工業株式会社 内燃機関の制御装置
JP2019148222A (ja) * 2018-02-27 2019-09-05 トヨタ自動車株式会社 内燃機関の制御装置

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