JPH0798849A - 磁気記録媒体の表面処理方法及びその装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 カッピングを極力低減させることができる磁
気記録媒体の表面処理方法及びその装置を提供するこ
と。 【構成】 本装置は、交互に配設された金属ロールと弾
性ロールからなる表面処理ロールを含み、磁性塗料を塗
布して磁性層を形成した非磁性体を前記表面処理ロール
に通すことにより前記磁性層を鏡面処理する表面処理装
置において、前記表面処理装置は、前記表面処理ロール
に前置して配設された一対の前置ロールを具備し、該前
置ロールは、凸状に湾曲した表面を有する弾性ロール
と、該弾性ロールの表面に合致する凹状に湾曲した表面
を有する金属ロールからなることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、塗布型の磁気記録媒体
の表面処理方法及びその装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】磁気記録媒体の一つに磁気テープがあ
る。この磁気テープを大別すると、塗布型のテープと蒸
着型のテープとに分けられる。塗布型のテープは、主に
磁性粒子を添加物と共にバインダと分散混合し、ベース
フィルム上に塗布して作られる。塗布工程から表面処理
工程を経て、裁断、ローディングされ、更に電磁変換特
性、走行性、など数々の検査を経て、合格したものが製
品として出荷される。

【０００３】表面処理工程では、カレンダーと呼ばれる
鏡面処理装置が使用され、この装置により磁性層表面が
平滑にされる。

【０００４】表面処理工程が終わったベースフィルム
は、次に、磁性層が形成された面と反対側の面に、金属
粉、バインダーレジン、微量添加物などからなる塗料を
塗布してバックコート層が形成される。このバックコー
ト層は、テープ裏面の摩擦係数を低減するためのもので
ある。

【０００５】バックコート層が形成されたベースフィル
ムは、スリッターにかけられて用途に応じて決った寸法
に裁断される。

【０００６】その後、テープは電磁変換特性、走行性、
など数々の検査を経て、合格したものが製品として出荷
される。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】磁性層およびバックコ
ート層が形成されたベースフィルムは、磁性層とバック
コート層間の固さ、厚み、応力などの相違により、カッ
ピング（長さ方向に直角に現れるＵ字形の変形）が生じ
易い。このカッピングは、磁気テープのヘッドタッチを
悪化させ、出力の低下を招く。

【０００８】本発明は、このような従来技術の問題点を
解決することを目的とするものである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明の磁気記録媒体の
表面処理方法は、磁性塗料を非磁性体上に塗布して形成
した磁性層を鏡面処理する表面処理方法において、前記
表面処理方法は、表面処理の前に非磁性体の前記磁性層
を形成した面と反対側の面を凸状に湾曲させその状態で
加熱および加圧することを特徴とする。

【００１０】また、本発明によれば、磁気記録媒体の表
面処理装置が提供され、該装置は、交互に配設された金
属ロールと弾性ロールからなる表面処理ロールを含み、
磁性塗料を塗布して磁性層を形成した非磁性体を前記表
面処理ロールに通すことにより前記磁性層を鏡面処理す
る表面処理装置において、前記表面処理装置は、前記表
面処理ロールに前置して配設された一対の前置ロールを
具備し、該前置ロールは、凸状に湾曲した表面を有する
弾性ロールと、該弾性ロールの表面に合致する凹状に湾
曲した表面を有する金属ロールからなることを特徴とす
る。

【００１１】非磁性体は、一面側に磁性層が、他面側に
バックコート層が形成されるが、磁性層とバックコート
層間における固さ、厚み、応力などの相違により、非磁
性体は磁性層側に湾曲する。なお、一般的な塗布型テー
プの場合、磁性層の厚みは、１〜５μｍ（マイクロメー
トル）、バックコート層の厚みは、０〜０．６μｍ、非
磁性体の厚みは、６〜３５μｍである。

【００１２】本発明は、この磁性層側の湾曲を矯正する
ものである。本発明の方法は、表面処理の前に、非磁性
体の磁性層を形成した面と反対側の面を凸状に湾曲させ
その状態で加熱および加圧する。この熱および圧力によ
り、非磁性体の湾曲、すなわちカッピングを矯正する。

【００１３】湾曲率は、非磁性体（フィルム）の厚み
や、磁性層及びバックコート層の厚み、更に温度、走行
速度などによっても変化するが、一般に０．５〜１０％
程度が良く、特に１〜５％が好ましい。なお、湾曲率
は、ロール端面における径とロール中央部における径と
の差ａと、ロール長さｂに基づき、ａ／ｂ×１００
（％）により求められる。

【００１４】本発明装置において、上記湾曲率を弾性ロ
ール側と金属ロール側で同じとする。すなわち、金属ロ
ールは、弾性ロールの表面に合致する凹状に湾曲したロ
ール表面を有する。これは、金属ロールと弾性ロール間
を通る非磁性体に均一な圧力がかかるようにするためで
ある。

【００１５】非磁性体に対する上記加熱は、またその後
の表面処理工程のための予熱として利用することができ
る。

【００１６】加熱温度および圧力は、バックコート層の
成膜条件を考慮して決めることができる。

【００１７】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づき説明
する。

【００１８】図１は、本発明による表面処理装置の一例
を示す。この装置は、多段に重ねられた表面処理ロー
ル、すなわちカレンダロール１を含み、このカレンダロ
ール１は、金属ロール２と弾性ロール３とを交互に重ね
てなり、非磁性体、すなわち合成樹脂製テープ４を金属
ロール２と弾性ロール３間に多段に通すことにより、テ
ープ４に形成された磁性層を鏡面処理するものである。
金属ロール２は、研磨された表面を有し、また弾性ロー
ル３は、金属の芯の上に、樹脂、ゴム、ウレタンなどの
弾性体を巻き付けて形成され、この金属ロール２と弾性
ロール３の間をテープ４が加熱および加圧されながら通
ることにより、磁性層表面の平滑さを得るものである。
図１中、５は巻出しロール、６は巻取りロールを示す。

【００１９】この装置は、また前記カレンダロール１に
前置して配設される一対の前置ロール７を具備してい
る。この前置ロール７は、カレンダロール１のロール径
よりも大きな径を有する弾性ロール８と金属ロール９か
らなっている。弾性ロール８は、図２に示すように、凸
状に湾曲した表面を有している。この弾性ロール８は、
前記した弾性ロール３と同様に、金属の芯の上に、樹
脂、ゴム、ウレタンなどの弾性体を巻き付けて形成され
ている。金属ロール９は、前記弾性ロール８の表面に合
致する凹状に湾曲した表面を有している。

【００２０】本装置において、前置ロールを構成する弾
性ロール８と金属ロール９の軸方向長さは、両ロール間
を通るテープの１．３倍以上あるものとする。また、弾
性ロールの両端面における直径を２０〜８０ｃｍ、金属
ロールの両端面における直径を２０〜６０ｃｍとするこ
とができる。

【００２１】（実施例）このように構成された本装置を
使用して、以下のことを行なった。

【００２２】 金属磁性粉 １００重量部 塩化ビニル系樹脂 ８重量部 ウレタン系樹脂 ８重量部 導電性カーボンブラック １重量部 球状アルミナ（粒径０．１５μｍ） ６重量部 トルエン ２６０重量部 メチルエチルケトン ２６０重量部 シクロヘキサノン ４０重量部 上記組成物を十分に混合・攪拌した後、ポリイソシアネ
ート化合物４重量部を添加して得た磁性塗料を厚さ９．
８μｍのＰＥＴ（ポリエチレンテレフタレート）フィル
ム上にダイレクトグラビア法で乾燥厚が２．８μｍとな
るように塗布して磁性層を形成し、以下の条件でカレン
ダ処理を行なった。

【００２３】 前置ロール 温度９０℃ ニップ圧１００Ｋｇ／ｃｍ カレンダロール 温度９０℃ ニップ圧３００Ｋｇ／ｃｍ ライン速度１５０ｍ／ｍｉｎ その後、他面側に導電性カーボンブラック含有塗料を乾
燥厚が０．５μｍとなるように塗布してバックコート層
を形成した。

【００２４】比較例として、カレンダロールのみの処理
を行ない、他の条件は全て同じとした。比較結果を以下
に示す。

【００２５】

【表１】

【００２６】上記そり具合は、図３において、カッピン
グ（長さ方向に直角に現れるＵ字形の変形）に基づき、
ｃ／ｄ×１００により求められる。

【００２７】また、エンベロープは、ビデオヘッドがテ
ープを１トレースする間に得られる出力波形のことであ
る。テープのそり具合が小さいときは、この出力波形
は、オシロスコープ上に図４の波形Ａのように出る。と
ころが、テープのそり具合が大きくなると、この出力波
形は、図５の波形Ａ′のようになり、これはテープの特
性上良くないことが知られている。そこで、波形Ａ′の
量ｅ、ｆに基づき、ｅ／ｆ×１００をエンベロープ指標
とした。これは１００％に近いほど良いテープ媒体であ
るといえる。

【００２８】比較結果をみると、実施例は、そり具合、
エンベロープ指標、及び表面性のいずれにおいても、比
較例を上回っていることがわかる。

【００２９】

【発明の効果】本発明によれば、カッピングを極力低減
させることができる。その結果、磁気記録媒体と磁気ヘ
ッドの接触が良好に行なわれ、これによって記録・再生
に優れた磁気記録媒体が実現できるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による表面処理装置の概略図。

【図２】同装置に備る前置ロールの概略図。

【図３】テープのそり具合の様子を示す図。

【図４】テープのそり具合が小さいときのオシロスコー
プ上に映った出力波形の図。

【図５】テープのそり具合が大きいときのオシロスコー
プ上に映った出力波形の図。

【符号の説明】

１ カレンダロール ２ 金属ロール ３ 弾性ロール ４ テープ ７ 前置ロール ８ 弾性ロール ９ 金属ロール

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 志賀 章 栃木県芳賀郡市貝町大字赤羽2606番地 花 王株式会社情報科学研究所内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】磁性塗料を非磁性体上に塗布して形成した
   磁性層を鏡面処理する表面処理方法において、 前記表面処理方法は、表面処理の前に非磁性体の前記磁
   性層を形成した面と反対側の面を凸状に湾曲させその状
   態で加熱および加圧することを特徴とする磁気記録媒体
   の表面処理方法。
2. 【請求項２】交互に配設された金属ロールと弾性ロール
   からなる表面処理ロールを含み、磁性塗料を塗布して磁
   性層を形成した非磁性体を前記表面処理ロールに通すこ
   とにより前記磁性層を鏡面処理する表面処理装置におい
   て、 前記表面処理装置は、前記表面処理ロールに前置して配
   設された一対の前置ロールを具備し、該前置ロールは、
   凸状に湾曲した表面を有する弾性ロールと、該弾性ロー
   ルの表面に合致する凹状に湾曲した表面を有する金属ロ
   ールからなることを特徴とする磁気記録媒体の表面処理
   装置。