JPH0790503A - 熱間加工性に優れた析出硬化型ステンレス鋼 - Google Patents
熱間加工性に優れた析出硬化型ステンレス鋼Info
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- JPH0790503A JPH0790503A JP25481693A JP25481693A JPH0790503A JP H0790503 A JPH0790503 A JP H0790503A JP 25481693 A JP25481693 A JP 25481693A JP 25481693 A JP25481693 A JP 25481693A JP H0790503 A JPH0790503 A JP H0790503A
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- Japan
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- steel
- stainless steel
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- precipitation hardening
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 熱間圧延条件を制限しなくても、鋼の化学成
分組成をコントロ−ルすれば耳割れが発生しない析出硬
化型ステンレス鋼を提供する。 【構成】 C :0.07wt.%以下、Si:1.0 wt.%以下、Mn:
1.0 wt.%以下、P :0.04wt.%以下、S :0.005 wt.%以
下、Ni:3.0 〜5.5wt.% 、Cr:14.0〜17.5wt.%、Cu:2.
5 〜 5.0 wt.% 、Nb:0.15〜 0.45wt.% 、Ca:0.002 〜
0.01wt.%および残りがFeおよび不可避的不純物からなる
化学成分組成を含有させ、且つ、鋼の凝固時のδフェラ
イトを10% 以下する。
分組成をコントロ−ルすれば耳割れが発生しない析出硬
化型ステンレス鋼を提供する。 【構成】 C :0.07wt.%以下、Si:1.0 wt.%以下、Mn:
1.0 wt.%以下、P :0.04wt.%以下、S :0.005 wt.%以
下、Ni:3.0 〜5.5wt.% 、Cr:14.0〜17.5wt.%、Cu:2.
5 〜 5.0 wt.% 、Nb:0.15〜 0.45wt.% 、Ca:0.002 〜
0.01wt.%および残りがFeおよび不可避的不純物からなる
化学成分組成を含有させ、且つ、鋼の凝固時のδフェラ
イトを10% 以下する。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、熱間圧延条件の制約
を伴わない、熱間加工性に優れた析出硬化型ステンレス
鋼に関するものである。
を伴わない、熱間加工性に優れた析出硬化型ステンレス
鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、高速船の水中翼、ダムの取水ゲ−
トあるいは放流管等の分野で、構造用高強度ステンレス
鋼板が利用されつつある。特に、SUS630やSUS631に代表
される析出硬化型ステンレス鋼は、耐力が100N/mm2以上
の高強度を有し、既に、前記用途で使用されている。し
かしながら、析出硬化型ステンレス鋼は、SUS304等の汎
用ステンレス鋼板と比較して熱間加工性に劣るため、厚
板の熱間圧延により、鋼板端部に耳割れが発生し、大幅
な歩留りの低下を招くとと共に、製造可能な製品の範囲
に制約を生じていた。従来、ステンレス鋼板の熱間加工
性を改善する方法として、鋼の凝固時のδフェライト量
( δcal 値) を最適範囲にコントロ−ルする方法、ある
いは、Ca、Al等を添加して、鋼中の有害なS やO を固定
する方法が知られている。
トあるいは放流管等の分野で、構造用高強度ステンレス
鋼板が利用されつつある。特に、SUS630やSUS631に代表
される析出硬化型ステンレス鋼は、耐力が100N/mm2以上
の高強度を有し、既に、前記用途で使用されている。し
かしながら、析出硬化型ステンレス鋼は、SUS304等の汎
用ステンレス鋼板と比較して熱間加工性に劣るため、厚
板の熱間圧延により、鋼板端部に耳割れが発生し、大幅
な歩留りの低下を招くとと共に、製造可能な製品の範囲
に制約を生じていた。従来、ステンレス鋼板の熱間加工
性を改善する方法として、鋼の凝固時のδフェライト量
( δcal 値) を最適範囲にコントロ−ルする方法、ある
いは、Ca、Al等を添加して、鋼中の有害なS やO を固定
する方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の方法は、ヘゲ疵に代表される表面疵の発生の抑制には
有効であるが、析出硬化型ステンレス鋼の耳割れ発生挙
動に関しては、その効果が不明であった。なお、鋼の凝
固時のδフェライト量( δcal 値) は、その鋼の化学成
分組成から算出されるものであり、例えば、特公平3-66
36号公報に記載の式:δcal =3( Cr+1.5 Si+Mo) −2.
8(Ni+0.5 Mn+0.5 Cu) −84(C+N)−19.8を指し、本発
明においても前記式によって算出した。
の方法は、ヘゲ疵に代表される表面疵の発生の抑制には
有効であるが、析出硬化型ステンレス鋼の耳割れ発生挙
動に関しては、その効果が不明であった。なお、鋼の凝
固時のδフェライト量( δcal 値) は、その鋼の化学成
分組成から算出されるものであり、例えば、特公平3-66
36号公報に記載の式:δcal =3( Cr+1.5 Si+Mo) −2.
8(Ni+0.5 Mn+0.5 Cu) −84(C+N)−19.8を指し、本発
明においても前記式によって算出した。
【0004】上記の耳割れ発生対策としては、2 相ステ
ンレス鋼を対象に、フェライト相とオ−ステナイト相と
の高温における変形抵抗の差が小さくなる温度範囲にお
いて熱間圧延を行なう方法が提案されているが、析出硬
化型ステンレス鋼に対しては、熱間圧延条件のコントロ
−ルのみでは耳割れの発生を抑制することは困難であっ
た。
ンレス鋼を対象に、フェライト相とオ−ステナイト相と
の高温における変形抵抗の差が小さくなる温度範囲にお
いて熱間圧延を行なう方法が提案されているが、析出硬
化型ステンレス鋼に対しては、熱間圧延条件のコントロ
−ルのみでは耳割れの発生を抑制することは困難であっ
た。
【0005】本発明は、上述した問題点を解決するため
になされたもので、析出硬化型ステンレス鋼の内、熱間
圧延後の時効熱処理プロセスが簡単であるマルテンサイ
ト系ステンレス鋼に注目し、熱間圧延条件を制限しなく
ても、鋼の化学成分組成をコントロ−ルすれば耳割れが
発生しない熱間加工性に優れた析出硬化型ステンレス鋼
を提供することを目的とする。
になされたもので、析出硬化型ステンレス鋼の内、熱間
圧延後の時効熱処理プロセスが簡単であるマルテンサイ
ト系ステンレス鋼に注目し、熱間圧延条件を制限しなく
ても、鋼の化学成分組成をコントロ−ルすれば耳割れが
発生しない熱間加工性に優れた析出硬化型ステンレス鋼
を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】マルテンサイト系析出硬
化型ステンレス鋼の熱間加工性について、本発明者等は
鋭意検討を重ねた結果、鋼の凝固時のδフェライト量を
10% 以下とし、且つ、Caを鋼に0.002 〜0.010wt.% 含有
させることによって、鋼の熱間加工時における耳割れの
発生が著しく抑制されることを見い出した。即ち、本発
明の熱間加工性に優れた析出硬化型ステンレス鋼は、C
:0.07wt.%以下、Si:1.0 wt.%以下、Mn:1.0 wt.%以
下、P :0.04wt.%以下、S :0.005 wt.%以下、Ni:3.0
〜5.5wt.% 、Cr:14.0〜17.5wt.%、Cu:2.5 〜 5.0 wt.
% 、Nb:0.15〜 0.45wt.% 、Ca:0.002 〜0.01wt.%およ
び残りがFeおよび不可避的不純物からなる化学成分組成
を有し、且つ、鋼の凝固時のδフェライト量が10% 以下
であることに特徴を有するものである。
化型ステンレス鋼の熱間加工性について、本発明者等は
鋭意検討を重ねた結果、鋼の凝固時のδフェライト量を
10% 以下とし、且つ、Caを鋼に0.002 〜0.010wt.% 含有
させることによって、鋼の熱間加工時における耳割れの
発生が著しく抑制されることを見い出した。即ち、本発
明の熱間加工性に優れた析出硬化型ステンレス鋼は、C
:0.07wt.%以下、Si:1.0 wt.%以下、Mn:1.0 wt.%以
下、P :0.04wt.%以下、S :0.005 wt.%以下、Ni:3.0
〜5.5wt.% 、Cr:14.0〜17.5wt.%、Cu:2.5 〜 5.0 wt.
% 、Nb:0.15〜 0.45wt.% 、Ca:0.002 〜0.01wt.%およ
び残りがFeおよび不可避的不純物からなる化学成分組成
を有し、且つ、鋼の凝固時のδフェライト量が10% 以下
であることに特徴を有するものである。
【0007】
【作用】この発明の鋼の化学成分組成および鋼の凝固時
のδフェライト量を上述した範囲内に限定した理由につ
いて述べる。 (1) 炭素(C):C は、侵入型元素であり、鋼の強度を確保
するために有効である。しかしながら、その含有量が0.
07wt.%を超えると、耐粒界腐食性が劣化すると共に、時
効熱処理後の延・靱性が低下する。従って、C の含有量
は、0.07wt.%以下に限定すべきである。
のδフェライト量を上述した範囲内に限定した理由につ
いて述べる。 (1) 炭素(C):C は、侵入型元素であり、鋼の強度を確保
するために有効である。しかしながら、その含有量が0.
07wt.%を超えると、耐粒界腐食性が劣化すると共に、時
効熱処理後の延・靱性が低下する。従って、C の含有量
は、0.07wt.%以下に限定すべきである。
【0008】(2) シリコン(Si):Siは、脱酸剤として不
可欠の元素である。しかしながら、その含有量が1.0wt.
% を超えると、鋼材の表面疵や割れの発生原因になり易
い。従って、Siの含有量は、1.0wt.% 以下に限定すべき
である。
可欠の元素である。しかしながら、その含有量が1.0wt.
% を超えると、鋼材の表面疵や割れの発生原因になり易
い。従って、Siの含有量は、1.0wt.% 以下に限定すべき
である。
【0009】(3) マンガン(Mn):Mnは、脱硫剤として鋼
中のS を固定すると共に、オ−ステナイト相を安定に
し、焼入性を向上させる。しかしながら、その含有量が
1.0wt.% を超えると、鋼の熱間加工性が劣化する。従っ
て、Mnの含有量は、1.0wt.% 以下に限定すべきである。
中のS を固定すると共に、オ−ステナイト相を安定に
し、焼入性を向上させる。しかしながら、その含有量が
1.0wt.% を超えると、鋼の熱間加工性が劣化する。従っ
て、Mnの含有量は、1.0wt.% 以下に限定すべきである。
【0010】(4) 燐(P):P は、S と同様に、結晶粒界に
偏析し、熱間加工性を劣化させると共に、溶接施工にお
いて高温割れの原因となる。その含有量が0.04wt.%を超
えると、上述した弊害が本発明鋼に顕れる。従って、P
の含有量は、0.04wt.%以下に限定すべきである。
偏析し、熱間加工性を劣化させると共に、溶接施工にお
いて高温割れの原因となる。その含有量が0.04wt.%を超
えると、上述した弊害が本発明鋼に顕れる。従って、P
の含有量は、0.04wt.%以下に限定すべきである。
【0011】(5) 硫黄(S):S は、本発明における析出硬
化型ステンレス鋼の耳割れ発生に最も悪影響を及ぼす元
素であり、その含有量は少ないほどよい。しかしなが
ら、含有量を少なくするほどコストがかかる。従って、
S の含有量は、0.005wt.% 以下に限定すべきである。
化型ステンレス鋼の耳割れ発生に最も悪影響を及ぼす元
素であり、その含有量は少ないほどよい。しかしなが
ら、含有量を少なくするほどコストがかかる。従って、
S の含有量は、0.005wt.% 以下に限定すべきである。
【0012】(6) ニッケル(Ni):Niは、オ−ステナイト
生成元素として本発明鋼に不可欠の元素であり、その含
有量が3.0 wt.%未満では十分な焼入性が得られないと同
時に、本発明の重要因子であるδフェライト量が増加
し、熱間加工時に耳割れが発生し易くなる。一方、その
含有量が5.5 wt.%を超えると、焼入後の残留オ−ステナ
イト量が増加し、その後時効処理を施しても十分な強度
が得られない。従って、Niの含有量は、3.0〜5.5 wt.%
の範囲内に限定すべきである。
生成元素として本発明鋼に不可欠の元素であり、その含
有量が3.0 wt.%未満では十分な焼入性が得られないと同
時に、本発明の重要因子であるδフェライト量が増加
し、熱間加工時に耳割れが発生し易くなる。一方、その
含有量が5.5 wt.%を超えると、焼入後の残留オ−ステナ
イト量が増加し、その後時効処理を施しても十分な強度
が得られない。従って、Niの含有量は、3.0〜5.5 wt.%
の範囲内に限定すべきである。
【0013】(7) クロム(Cr):Crは、ステンレス鋼の耐
食性を維持するための基本元素であり、その含有量が1
4.0wt.%未満では十分な耐食性が得られない。一方、そ
の含有量が17.5wt.%を超えると、δフェライト量が増加
し、熱間加工時の耳割れの発生が顕著となる。従って、
Crの含有量は、14.0〜17.5wt.%の範囲内に限定すべきで
ある。
食性を維持するための基本元素であり、その含有量が1
4.0wt.%未満では十分な耐食性が得られない。一方、そ
の含有量が17.5wt.%を超えると、δフェライト量が増加
し、熱間加工時の耳割れの発生が顕著となる。従って、
Crの含有量は、14.0〜17.5wt.%の範囲内に限定すべきで
ある。
【0014】(8) 銅(Cu):Cuは、時効熱処理により、Cu
リッチな析出物を形成し、本発明鋼の強度を上昇させる
重要な元素であり、その含有量が2.5 wt.%未満では十分
な強度が得られない。一方、その含有量が5.0 wt.%を超
えても強度上昇の効果は飽和すると同時に、熱間加工性
が低下する。従って、Cuの含有量は、2.5 〜5.0 wt.%の
範囲内に限定すべきである。
リッチな析出物を形成し、本発明鋼の強度を上昇させる
重要な元素であり、その含有量が2.5 wt.%未満では十分
な強度が得られない。一方、その含有量が5.0 wt.%を超
えても強度上昇の効果は飽和すると同時に、熱間加工性
が低下する。従って、Cuの含有量は、2.5 〜5.0 wt.%の
範囲内に限定すべきである。
【0015】(9) ニオブ(Nb):Nbは、鋼中のC を固定し
て、結晶粒界へのCr炭化物の析出を抑制し、耐食性の向
上に有効な元素であり、その含有量が、0.15wt.%未満で
はその効果が不十分である。一方、その含有量が0.45w
t.%を超えると、熱間加工性が低下する。従って、Nbの
含有量は、0.15〜0.45wt.%の範囲内に限定すべきであ
る。
て、結晶粒界へのCr炭化物の析出を抑制し、耐食性の向
上に有効な元素であり、その含有量が、0.15wt.%未満で
はその効果が不十分である。一方、その含有量が0.45w
t.%を超えると、熱間加工性が低下する。従って、Nbの
含有量は、0.15〜0.45wt.%の範囲内に限定すべきであ
る。
【0016】(10) カルシウム(Ca):Caは、結晶粒界に
偏析し熱間加工性に最も悪影響を及ぼすS を、CaS とし
て固定し、熱間加工性を改善する元素である。鋼へのCa
添加の効果については、主に、鋼材の表面疵の観点から
検討され、ヘゲ疵防止対策として0.01wt.%以下を含有さ
せることが実施されている。それに対して、本発明者等
は、新たに、析出硬化型ステンレス鋼の耳割れ発生挙動
に及ぼすCa添加の効果を検討した結果、適量のCaは耳割
れ発生の抑制にも有効であることを見い出した。図1
は、本発明の範囲内の化学成分組成を有する析出硬化型
ステンレス鋼、および、Caのみが本発明の範囲外の化学
成分組成を有する析出硬化型ステンレス鋼をそれぞれ、
実験室にて熱間圧延した時に発生した耳割れ長さの最大
値と、鋼の凝固時のδフェライト量との関係を示すグラ
フである。同図から明らかなように、Caを、0.004 wt.%
含有した鋼は、Caを含有しない鋼に比較して耳割れの長
さが著しく減少した。しかしながら、Ca含有量が、0.00
2 wt.%未満では十分な効果が得られず、一方、その含有
量が、0.01wt.%を超えると、非金属介在物の形成によ
り、鋼材の地疵や表面疵の発生原因となる。従って、Ca
の含有量は、0.002 〜0.01wt.%の範囲内に限定すべきで
ある。
偏析し熱間加工性に最も悪影響を及ぼすS を、CaS とし
て固定し、熱間加工性を改善する元素である。鋼へのCa
添加の効果については、主に、鋼材の表面疵の観点から
検討され、ヘゲ疵防止対策として0.01wt.%以下を含有さ
せることが実施されている。それに対して、本発明者等
は、新たに、析出硬化型ステンレス鋼の耳割れ発生挙動
に及ぼすCa添加の効果を検討した結果、適量のCaは耳割
れ発生の抑制にも有効であることを見い出した。図1
は、本発明の範囲内の化学成分組成を有する析出硬化型
ステンレス鋼、および、Caのみが本発明の範囲外の化学
成分組成を有する析出硬化型ステンレス鋼をそれぞれ、
実験室にて熱間圧延した時に発生した耳割れ長さの最大
値と、鋼の凝固時のδフェライト量との関係を示すグラ
フである。同図から明らかなように、Caを、0.004 wt.%
含有した鋼は、Caを含有しない鋼に比較して耳割れの長
さが著しく減少した。しかしながら、Ca含有量が、0.00
2 wt.%未満では十分な効果が得られず、一方、その含有
量が、0.01wt.%を超えると、非金属介在物の形成によ
り、鋼材の地疵や表面疵の発生原因となる。従って、Ca
の含有量は、0.002 〜0.01wt.%の範囲内に限定すべきで
ある。
【0017】更に、図1 より明らかなように、耳割れの
発生挙動は、鋼の凝固時のδフェライト量と密接に関係
しており、本発明鋼の範囲内のCaを含有する場合であっ
ても、δフェライト量が10% を超えると、最大耳割れ長
さが増加して耳割れが悪化する。従って、凝固時のδフ
ェライト量は10% 以下に限定すべきである。
発生挙動は、鋼の凝固時のδフェライト量と密接に関係
しており、本発明鋼の範囲内のCaを含有する場合であっ
ても、δフェライト量が10% を超えると、最大耳割れ長
さが増加して耳割れが悪化する。従って、凝固時のδフ
ェライト量は10% 以下に限定すべきである。
【0018】このように、耳割れ発生の抑制は、δフェ
ライト量の制御のみでは達成できず、Ca添加との複合効
果によって初めて達成することができたものである。そ
して、耳割れ発生の抑制は、変形抵抗の異なるδフェラ
イト相の体積分率が減少し、そして、結晶粒界脆化の要
因であるS の偏析がCa添加によって防止されたためであ
ると推定される。なお、鋼の凝固時のδフェライト量と
熱間圧延開始時のそれとは、ほぼ一致することを別途確
認した。
ライト量の制御のみでは達成できず、Ca添加との複合効
果によって初めて達成することができたものである。そ
して、耳割れ発生の抑制は、変形抵抗の異なるδフェラ
イト相の体積分率が減少し、そして、結晶粒界脆化の要
因であるS の偏析がCa添加によって防止されたためであ
ると推定される。なお、鋼の凝固時のδフェライト量と
熱間圧延開始時のそれとは、ほぼ一致することを別途確
認した。
【0019】
【実施例】次に、この発明を実施例により、比較例と対
比しながら説明する。表1 に示した、本発明の範囲内で
ある本発明鋼No.1〜4 、および、少なくとも1 つが本発
明の範囲外の化学成分組成または凝固時のδフェライト
量を有する比較鋼No.1〜5 の鋼を溶製し、得られたそれ
ぞれの溶鋼から厚さ100mm のスラブを調製し、次いで、
熱間圧延により厚さ12mmの鋼板に圧延し、鋼板に発生し
た耳割れを測定した。図2 は、実施例における熱間圧延
プロセスの説明図である。
比しながら説明する。表1 に示した、本発明の範囲内で
ある本発明鋼No.1〜4 、および、少なくとも1 つが本発
明の範囲外の化学成分組成または凝固時のδフェライト
量を有する比較鋼No.1〜5 の鋼を溶製し、得られたそれ
ぞれの溶鋼から厚さ100mm のスラブを調製し、次いで、
熱間圧延により厚さ12mmの鋼板に圧延し、鋼板に発生し
た耳割れを測定した。図2 は、実施例における熱間圧延
プロセスの説明図である。
【0020】
【表1】
【0021】耳割れの判定は、その長さを測定し、最大
長さが10mm未満のものを〇、10〜30mmのものを△、30mm
超のものを×で示し、同表に併記した。表1 から明らか
なように、Caを添加せず且つδフェライト量が本発明の
範囲を超える18.8% であった比較鋼No.2、Caを添加しな
かった比較鋼No.3、および、S含有量が本発明の範囲を
超える0.006wt.% であった比較鋼No.5は、いずれも耳割
れ判定が×であり、そして、δフェライト量が本発明の
を超える15.2% であった比較鋼No.1、および、Ca含有量
が本発明の範囲より少ない0.0015wt.%であった比較鋼N
o.4は、耳割れ判定が△であった。これに対して、本発
明鋼No.1〜4 は、いずれも耳割れ判定が〇であった。以
上のように、比較鋼は熱間圧延によって大きな耳割れが
発生したが、本発明鋼は良好な結果が得られた。
長さが10mm未満のものを〇、10〜30mmのものを△、30mm
超のものを×で示し、同表に併記した。表1 から明らか
なように、Caを添加せず且つδフェライト量が本発明の
範囲を超える18.8% であった比較鋼No.2、Caを添加しな
かった比較鋼No.3、および、S含有量が本発明の範囲を
超える0.006wt.% であった比較鋼No.5は、いずれも耳割
れ判定が×であり、そして、δフェライト量が本発明の
を超える15.2% であった比較鋼No.1、および、Ca含有量
が本発明の範囲より少ない0.0015wt.%であった比較鋼N
o.4は、耳割れ判定が△であった。これに対して、本発
明鋼No.1〜4 は、いずれも耳割れ判定が〇であった。以
上のように、比較鋼は熱間圧延によって大きな耳割れが
発生したが、本発明鋼は良好な結果が得られた。
【0022】
【発明の効果】析出硬化型ステンレス鋼板は、従来、耳
割れ発生のため目標幅に対して所定幅を加算して圧延さ
れ、耳部を切り捨てて製造されており、大幅な歩留の低
下をきたし、また、板厚が薄くなると、耳割れの発生が
顕著となるため、製造可能寸法にも制約があった。しか
しながら、本発明は、上述したように構成されているの
で、熱間圧延条件の制約なく耳割れ発生のない析出硬化
型ステンレス鋼板を製造することが可能となり、従っ
て、今後溶接構造用高強度ステンレス鋼として、需要の
拡大が期待される析出硬化型ステンレス鋼板を、安定し
て製造することができる、工業上有益な効果が得られ
る。
割れ発生のため目標幅に対して所定幅を加算して圧延さ
れ、耳部を切り捨てて製造されており、大幅な歩留の低
下をきたし、また、板厚が薄くなると、耳割れの発生が
顕著となるため、製造可能寸法にも制約があった。しか
しながら、本発明は、上述したように構成されているの
で、熱間圧延条件の制約なく耳割れ発生のない析出硬化
型ステンレス鋼板を製造することが可能となり、従っ
て、今後溶接構造用高強度ステンレス鋼として、需要の
拡大が期待される析出硬化型ステンレス鋼板を、安定し
て製造することができる、工業上有益な効果が得られ
る。
【図1】最大耳割れ長さに及ぼす、Ca添加、および、凝
固時のδフェライト量の影響を示すグラフである。
固時のδフェライト量の影響を示すグラフである。
【図2】実施例における熱間圧延プロセスの説明図であ
る。
る。
Claims (1)
- 【請求項1】 炭素(C) : 0.07wt.% 以下、 シリコン(Si) : 1.0 wt.% 以下、 マンガン(Mn) : 1.0 wt.% 以下、 燐(P) : 0.04wt.% 以下、 硫黄(S) : 0.005 wt.% 以下、 ニッケル(Ni) : 3.0 〜 5.5wt.%、 クロム(Cr) :14.0 〜17.5wt.%、 銅(Cu) : 2.5 〜 5.0 wt.% 、 ニオブ(Nb) : 0.15 〜 0.45wt.% 、 カルシウム(Ca): 0.002〜 0.01wt.% 、および、 残り :鉄(Fe)および不可避的不純物 からなる化学成分組成を有し、且つ、凝固時のδフェラ
イト量が10% 以下であることを特徴とする、熱間加工性
に優れた析出硬化型ステンレス鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP25481693A JPH0790503A (ja) | 1993-09-17 | 1993-09-17 | 熱間加工性に優れた析出硬化型ステンレス鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP25481693A JPH0790503A (ja) | 1993-09-17 | 1993-09-17 | 熱間加工性に優れた析出硬化型ステンレス鋼 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0790503A true JPH0790503A (ja) | 1995-04-04 |
Family
ID=17270281
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP25481693A Pending JPH0790503A (ja) | 1993-09-17 | 1993-09-17 | 熱間加工性に優れた析出硬化型ステンレス鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0790503A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH09279474A (ja) * | 1996-04-16 | 1997-10-28 | N C Ee:Kk | 被切断材の位置修正方法 |
KR100545090B1 (ko) * | 2001-12-18 | 2006-01-24 | 주식회사 포스코 | 스테인레스강의 열간가공성 향상을 위한 델타페라이트제어방법 |
-
1993
- 1993-09-17 JP JP25481693A patent/JPH0790503A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH09279474A (ja) * | 1996-04-16 | 1997-10-28 | N C Ee:Kk | 被切断材の位置修正方法 |
KR100545090B1 (ko) * | 2001-12-18 | 2006-01-24 | 주식회사 포스코 | 스테인레스강의 열간가공성 향상을 위한 델타페라이트제어방법 |
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