JPH0790288A - 潤滑鋼板及びその製造方法 - Google Patents

潤滑鋼板及びその製造方法

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JPH0790288A
JPH0790288A JP5237676A JP23767693A JPH0790288A JP H0790288 A JPH0790288 A JP H0790288A JP 5237676 A JP5237676 A JP 5237676A JP 23767693 A JP23767693 A JP 23767693A JP H0790288 A JPH0790288 A JP H0790288A
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steel sheet
film
lubricating
molecule
group
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Yoshikazu Yamagata
芳和 山縣
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】鋼板の表面に潤滑膜4を鋼板表面分子とシロキ
サン結合2によって固定したことにより、潤滑膜分子3
が鋼板表面分子と強固に結合し、加工中も剥離するおそ
れがなく、しかも均一な厚さの超薄膜を形成し、無塗油
加工可能な鋼板を実現する。 【構成】鋼板1の表面にシロキサン結合2を介して潤滑
膜分子3を結合させている。4はシロキサン結合2と潤
滑膜分子3とを合わせた潤滑膜である。クロロシラン系
界面活性剤を潤滑膜分子として、その分子を溶解した非
水系有機溶媒に鋼板を浸漬させるか、あるいは前記分子
を揮散させ、気相中で鋼板と接触させることによって、
鋼板表面の親水性基と膜分子のクロロシリル基との間に
脱塩酸反応を起こさせ、シロキサン結合により潤滑膜を
形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は潤滑鋼板及びその製造方
法に関するもので、さらに詳しくは、親水性基と反応す
る官能基を末端に有する潤滑膜分子と鋼板とを反応さ
せ、前記分子によって鋼板をコ−トした潤滑鋼板及びそ
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋼板を加工する際には潤滑や放熱のため
に、プレス油などの加工油を塗油することが一般的であ
る。
【0003】そのため、加工後、加工油を除去する脱脂
工程が必要である。これまでクロロフルオロカーボンや
1,1,1−トリクロロエタンなどの溶剤を用いて、浸
漬あるいはスプレー、蒸気洗浄等の洗浄方法で脱脂を行
ってきた。しかし、オゾン層の保護及び地球温暖化抑制
のためにこれらの溶剤の使用・生産が制限され、全廃す
る方向にある。そこで、最近は水系洗浄剤、非水系洗浄
剤などオゾン層破壊係数のほとんどないあるいは全くな
い洗浄剤で脱脂することが検討され、これらの洗浄剤及
びそれを用いた洗浄装置などが多く開発・販売され実際
に使用され始めている。
【0004】また、揮発性のプレス油等を用いることに
よって、加工後の洗浄を不要にする方法もある程度採用
されている。さらに、鋼板に皮膜を塗布して潤滑性を向
上させ、加工油を使用せずにプレスすることができるよ
うに処理を施した潤滑鋼板も増えてきている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来、加工油の洗浄に
は前述したようにクロロフルオロカーボンや1,1,1
−トリクロロエタンなどの溶剤が使用されてきたが、こ
れらの溶剤は全廃することが決定しており、今後使用で
きなくなる。そのため、代替洗浄剤として多くの水系お
よび非水系の洗浄剤が開発され市販されているが、どの
洗浄剤も一長一短があり、あらゆる加工部品および加工
油に適した洗浄剤はまだ開発されていない。 よって、
加工部品の材質や加工油の種類に応じて洗浄剤及び洗浄
方法を変える必要があり、膨大な開発費用や設備投資、
ランニングコストがかかることになる。
【0006】また、加工油の洗浄工程をなくすための一
手段である揮発性プレス油は有望であるが、深絞りや厚
い鋼板の打ち抜きなどには不向きであり、使用条件がか
なり制限されているのが現状である。また、揮発した加
工油の安全性や大気などへの影響も懸念される。
【0007】そこで、表面処理を施した潤滑鋼板は加工
油自体を使用せずに加工できるため、勿論洗浄工程も不
要となり、最も安全で経済的な加工方法となる。しか
し、従来の潤滑鋼板は通常メッキにより表面処理し、潤
滑塗料を塗布する方法で製造されていた。例えば、電気
メッキあるいは溶融メッキにより亜鉛メッキ層等のメッ
キ層を施した後にクロメート処理し、さらに潤滑性の樹
脂皮膜を施して潤滑鋼板としてある。そのため、潤滑鋼
板に仕上げるのに多くの工程と時間、さらに特有の設備
を要す。また、メッキ工程での安全性、環境への影響な
どにも問題があり、潤滑鋼板を加工することにおいては
安全であるが、潤滑鋼板の製造方法においては安全とは
いえない。
【0008】また、従来の潤滑鋼板の場合、幾層にも皮
膜が重なっているとクラックが発生し易く、特に膜厚を
厚くした場合にはクラックの発生の割合が大きくなっ
た。そのため、面積の大きな鋼板を処理すると部分的に
十分な皮膜が形成されない場合もあり、鋼板の大きさに
も制限があった。さらに、潤滑性樹脂皮膜分子とその下
のメッキ層や皮膜などの分子とが主に物理結合で結合し
ている部分が多く、結合力が弱いことがあり、加工時に
樹脂皮膜が剥離したりする場合もあった。
【0009】以上述べてきたような従来法の欠点を考
え、本発明の目的は、潤滑膜分子と鋼板表面分子とが化
学結合をしていることにより、潤滑膜と鋼板との結合が
強く、剥離しない均一な超薄膜の潤滑膜を有する潤滑鋼
板及びその製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
本発明の潤滑鋼板は、無塗油加工可能な鋼板であって、
前記鋼板の表面に潤滑膜分子が鋼板表面分子とシロキサ
ン結合によって固定されていることを特徴とする。
【0011】前記構成においては、鋼板の表面と潤滑膜
分子との間に無機シロキサン系内層膜が存在し、鋼板表
面分子と前記内層膜分子とはシロキサン結合によって結
合され、かつ前記内層膜分子と潤滑膜分子とはシロキサ
ン結合によって固定されていることが好ましい。
【0012】また前記構成においては、潤滑膜分子がフ
ッ化炭素基及び炭化水素基から選ばれる少なくとも一つ
の有機基を含むことが好ましい。次に本発明の第1番目
の潤滑鋼板の製造方法は、クロロシリル基を分子末端に
有する潤滑性化学吸着分子を含む非水系溶液を、表面に
活性水素を有する鋼板の表面に接触させ、前記クロロシ
リル基と前記鋼板表面の活性水素とで脱塩化水素反応を
起こさせ、前記鋼板の表面に潤滑膜分子をシロキサン結
合によって固定することを特徴とする。
【0013】次に本発明の第2番目の潤滑鋼板の製造方
法は、クロロシリル基を分子末端に有する潤滑性化学吸
着膜分子を含むガスを、表面に活性水素を有する鋼板の
表面に接触させ、前記クロロシリル基と前記鋼板表面の
活性水素とで脱塩化水素反応を起こさせ、前記鋼板の表
面に潤滑膜分子をシロキサン結合によって固定すること
を特徴とする。
【0014】前記構成においては、潤滑性化学吸着膜分
子がフッ化炭素基及び炭化水素基から選ばれる少なくと
も一つの有機基を含むことが好ましい。
【0015】
【作用】前記した本発明の構成によれば、鋼板の表面に
潤滑膜分子が鋼板表面分子とシロキサン結合によって固
定されていることにより、潤滑膜分子が鋼板表面分子と
強固に結合し、加工中も剥離するおそれがなく、しかも
均一な厚さの超薄膜を形成することができる。その結
果、無塗油加工可能な鋼板を実現できる。
【0016】前記構成において、鋼板の表面と潤滑膜分
子との間に無機シロキサン系内層膜が存在し、鋼板表面
分子と前記内層膜分子とはシロキサン結合によって結合
され、かつ前記内層膜分子と潤滑膜分子とはシロキサン
結合によって固定されているという本発明の好ましい構
成によれば、潤滑膜分子をさらに濃度高く鋼板の表面に
結合することができる。
【0017】また前記構成において、潤滑膜分子がフッ
化炭素基及び炭化水素基から選ばれる少なくとも一つの
有機基を含むという本発明の好ましい構成によれば、潤
滑膜表面にフッ化アルキル基もしくはアルキル基が位置
するようになるため、潤滑性や電気絶縁性、防汚性、耐
熱性、耐薬品性等の特性をさらに向上させることができ
る。
【0018】次に本発明の第1番目の潤滑鋼板の製造方
法によれば、クロロシリル基を分子末端に有する潤滑性
化学吸着分子を含む非水系溶液を、表面に活性水素を有
する鋼板の表面に接触させ、前記クロロシリル基と前記
鋼板表面の活性水素とで脱塩化水素反応を起こさせ、前
記鋼板の表面に潤滑膜分子をシロキサン結合によって固
定することにより、いわゆる液相法(デッピング)で比
較的膜の厚さを厚く形成できる。また、末端にクロロシ
リル基を有する潤滑膜分子と、鋼板表面上の親水性基と
の間の脱塩酸反応を利用して、有機溶媒中で潤滑膜分子
と鋼板表面分子とをシロキサン結合させるため、前記脱
塩酸反応が急速に進み、短時間で潤滑膜形成が行える。
さらに、温度をあまりかける必要がないため、省エネル
ギーにもつながる。
【0019】次に本発明の第2番目の潤滑鋼板の製造方
法によれば、クロロシリル基を分子末端に有する潤滑性
化学吸着膜分子を含むガスを、表面に活性水素を有する
鋼板の表面に接触させ、前記クロロシリル基と前記鋼板
表面の活性水素とで脱塩化水素反応を起こさせ、前記鋼
板の表面に潤滑膜分子をシロキサン結合によって固定す
ることにより、気相法(ガス雰囲気)で比較的容易なプ
ロセスで形成できる。また、気相中で脱塩酸反応により
潤滑膜形成を行うため、有機溶媒による鋼板への影響及
び環境への影響が全く無い。
【0020】前記構成においては、潤滑性化学吸着膜分
子がフッ化炭素基及び炭化水素基から選ばれる少なくと
も一つの有機基を含むという本発明の好ましい構成によ
れば、さらに潤滑性に優れた無塗油加工可能な鋼板を実
現できる。
【0021】
【実施例】本発明の潤滑膜の一実施例は図1に示すよう
に、鋼板1の表面にシロキサン結合2を介して潤滑膜分
子3を結合させたものである。なお、4はシロキサン結
合2と潤滑膜分子3とを合わせた潤滑膜4である。
【0022】本発明に供される潤滑膜分子はフッ化アル
キル基もしくはアルキル基を含有するクロロシラン系界
面活性剤から構成されている。フッ化アルキル基を有す
るクロロシラン系界面活性剤としては、下記のものを一
例として挙げることができる。 (1)トリクロロシラン系界面活性剤の例 CF3 (CF2 7 (CH2 2 SiCl3 ,CF3
2 O(CH2 15SiCl3 ,CF3 (CH2 2
i(CH3 2 (CH2 15SiCl3 ,F(CF2
4 (CH2 2 Si(CH3 2 (CH2 15SiCl
3 ,F(CF2 8 (CH2 2 Si(CH3 2 (C
2 15SiCl3 ,CF3 COO(CH2 15SiC
3 ,CF3 (CF2 5 (CH2 2 SiCl3 , (2)低級アルキル基置換のモノクロロシラン系あるい
はジクロロシラン系界面活性剤(但し式中のnは何れも
1または2) CF3 (CF2 7 (CH2 2 SiCln (CH3
3-n ,CF3 (CF2 7 (CH2 2 SiCln (C
2 5 3-n ,CF3 CH2 O(CH2 15SiCln
(CH3 3-n ,CF3 CH2 O(CH2 15SiCl
n (C2 5 3-n ,CF3 (CH2 2 Si(C
3 2 (CH2 15SiCln (CH3 3-n ,CF
3 (CH2 2 Si(CH3 2 (CH2 15SiCl
n (C2 5 3-n,F(CF2 8 (CH2 2 Si
(CH3 2 (CH2 9 SiCln (CH 3 3-n
F(CF2 8 (CH2 2 Si(CH3 2 (C
2 9 SiCln (C2 5 3-n ,CF3 COO
(CH2 15SiCln (CH3 3-n ,CF3 COO
(CH2 15SiCln (C2 5 3-n ,これらの中
でも特にトリクロロシラン系界面活性剤の親水性基と結
合したクロロシリル基以外のクロロシリル基が、隣合う
クロロシリル基とシロキサン結合で分子間結合を形成す
るため、より強固な潤滑膜となり好ましい。
【0023】また、CF3 (CF2 n CH2 CH2
iCl3 (但し式中のnは整数であり、3〜25程度が
最も扱いやすい)が、溶剤溶解性と防汚性等の機能性と
の釣合が取れているため好ましい。ただし、潤滑性を向
上させるためにはアルキル鎖が長い方がより好ましい。
【0024】さらに、フッ化アルキル鎖またはアルキル
鎖部分に二重結合基や三重結合基を組み込んでおけば、
潤滑膜形成後、5メガラド程度の電子線照射で架橋でき
るので、潤滑膜の強度を向上させることも可能である。
【0025】アルキル基を有するクロロシラン系界面活
性剤としては、例えば、CH3 (CH2 18SiC
3 、CH3 (CH2 15SiCl3 、CH3 (C
2 10SiCl3 、CH3 (CH2 25SiCl3
のようなトリクロロシラン系界面活性剤をはじめ、例え
ばCH3 (CH2 18SiCln (CH3 3-n 、CH
3 (CH2 18SiCln (C2 5 3-n 、CH
3 (CH2 15SiCln (CH33-n 、CH3 (C
2 10SiCln (CH3 3-n 、CH3 (CH2
25SiCln (C2 5 3-n (但し式中のnは何れも
1または2)等の様な低級アルキル基置換のモノクロロ
シラン系あるいはジクロロシラン系界面活性剤が挙げら
れる。この中でもCH3 (CH2 n SiCl3 (但し
式中のnは整数であり、3〜25程度が最も扱いやす
い)が、溶剤溶解性の点で好ましい。
【0026】本発明に適用できるクロロシラン系界面活
性剤は、前記のような直鎖状分子だけではなく、フッ化
アルキル基またはアルキル基が分岐した形状でも、ある
いは末端のケイ素にフッ化アルキル基またはアルキル基
が置換した形状(即ちR,R 1 ,R2 ,R3 をフッ化ア
ルキル基またはアルキル基として、一般式R2 SiCl
2 、R3 SiCl,R1 2 SiCl2 ,R1 2 3
SiCl等)であってもよい。この場合の方が潤滑性は
向上する。
【0027】さらに、例えばSiCl4 、SiHC
3 、SiH2 Cl2 、Cl(SiCl 2 O)n SiC
3 (但し式中nは自然数)、SiClm (CH3
4-m 、SiClm (C2 5 4-m (但し式中mは1〜
3の整数)、HSiClk (CH33-k 、HSiCl
k (C2 5 3-k (但し式中kは1または2)等のよ
うなクロロシリル基を複数個含む分子を本発明の潤滑膜
製造方法により反応させた後、水と反応させると、表面
のクロロシリル基が親水性のシラノ−ル基に置換され、
潤滑鋼板表面が親水性となる。この上にさらに潤滑膜分
子を反応させていくことにより任意の厚さの潤滑膜を形
成でき、絶縁性や保護機能も変化させることができる。
【0028】これらの中でも、テトラクロロシランは反
応性が高く分子量も小さいことから、高密度にシラノ−
ル基を付与できるため、より好ましい。本発明に供され
る鋼板は、表面に例えば−OH基,−COOH基,−C
HO基,−NH2 基,>NH基等の親水性基または活性
水素を含む鋼板であれば何れでもよいため、あらゆる鋼
板を適用できる。その材質としては、例えば、鉄、ステ
ンレス、炭素鋼、アルミニウム、銅等が挙げられる。但
し、表面の親水性基が少ない鋼板の場合は、例えばオゾ
ン酸化もしくは電子線照射等の通常の手段の化学処理、
あるいは、前述したようなテトラクロロシラン処理等に
よって、親水性基を増やして用いると、本発明により適
した物質とすることができる。
【0029】本発明の第1番目の製造方法に供される有
機溶媒は、潤滑膜分子が水系分子と反応するためできる
だけ水分の少ない非水系有機溶媒でしかも鋼板を侵さ
ず、かつ潤滑膜分子を充分溶解させることができる溶媒
であれば何れでもよい。例えば、パーフルオロアルキ
ル、フルオロアルキル基を有する三級アミン、フルオロ
アルキル基を有する環状エ−テル等のフッ素系溶媒、例
えばヘキサン、オクタン、ヘキサデカン、シクロヘキサ
ン等の炭化水素系溶媒、例えばジブチルエ−テル、ジベ
ンジルエ−テル等のエ−テル系溶媒、例えば酢酸メチ
ル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル等エス
テル系溶媒の何れかが好ましい。ケトン系溶媒として
は、アセトン、メチルエチルケトン等が一例として挙げ
られる。ただし、フッ素系溶媒の場合、規制対象となっ
ているクロロフルオロカーボン類は地球環境保護のため
に使用しない方がよい。なお液相法の場合は浸漬、スプ
レー法等を使用することができ、気相法の場合はガス接
触法を採用するのが好ましい。どちらの場合も相対湿度
30%以下の乾燥雰囲気を保持することが好ましく、よ
り好ましくは相対湿度10%以下の乾燥雰囲気である。
【0030】以下具体的実施例を挙げて、本発明をより
詳細に説明する。 実施例1 まず、潤滑膜分子として、フッ化アルキル基を含むクロ
ロシラン系界面活性剤であるヘプタデカフルオロデシル
トリクロロシラン[CF3 (CF2 7 CH2CH2
iCl3 ]を用いた。
【0031】また、鋼板として、板厚0.5mmの鉄鋼板
を使用した。まず、上記潤滑膜分子を濃度10-2mol/l
含む非水系溶媒であるシクロヘキサン溶液に、上記鋼板
を窒素雰囲気下(相対湿度5%以下)、室温で20分間
浸漬した。
【0032】引き続き、その鋼板をエタノール中に浸漬
し、未反応のヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラ
ンを反応させ、次いで乾燥することにより潤滑薄膜を形
成した。得られたポリマー状の膜の厚さは約0.1μm
であった。
【0033】この潤滑鋼板の諸特性を以下に示す。ま
ず、クランクプレスにより、ブランク径114mmφ、プ
レス速度40spm 、絞り比2.28で無塗油にてプレス
成形を行ったところ黒変せずに良好な成形性が得られ
た。潤滑膜の動摩擦係数は0.14であり、約200℃
まで動摩擦係数の上昇はみられなかった。また、塩水噴
霧耐食性(120時間)も200℃加熱しても著しい劣
化はなかった。また、この潤滑膜の耐熱温度は約230
℃であり、耐電圧7×106 V/cm、リーク電流8×10
-12 A/V・cmの値が得られた。
【0034】比較例として、電気亜鉛メッキ鋼板(板厚
0.5mm)に1.0μm の潤滑皮膜を施してある従来の
市販潤滑鋼板を用いて、その諸物性を測定した。上記記
載と同一条件によるプレス成形では黒変せずに良好な成
形性が得られた。しかし、動摩擦係数は常温で0.08
であったが、150℃で0.15、180℃では0.2
5となり、皮膜の耐熱性が本実施例の潤滑鋼板に比べ低
かった。また、この従来の潤滑皮膜は約180℃で加熱
分解した。そのため、塩水噴霧試験でも150℃程度ま
では劣化は少なかったが、180℃では80%程度が侵
された。
【0035】実施例2 次に、実施例1においてヘプタデカフルオロデシルトリ
クロロシランをパーフルオロドデシルトリクロロシラン
に変えて、実施例1と同様の実験を行った。
【0036】形成した潤滑鋼板の諸特性は以下に示す通
りである。実施例1と同条件でのプレス成形では黒変せ
ずに良好な洗浄性が得られた。また、耐熱温度は約25
0℃となり、動摩擦係数も220℃程度まで0.12で
あった。また、塩水噴霧試験でも220℃まで劣化はみ
られなかった。
【0037】実施例3 次に、実施例1と同様の鋼板を窒素雰囲気中で2時間、
60℃に加熱しているヘプタデカフルオロデシルトリク
ロロシラン溶液上に曝した後、取り出し、エタノールに
浸漬した。この結果得られた潤滑鋼板の諸特性は、耐熱
温度は約230℃、動摩擦係数0.14(200℃ま
で)、耐電圧7×106 V/cm、リーク電流8×10-12
A/V・cm、の値であり、実施例1と同条件でのプレス成
形では黒変せずに良好な洗浄性が得られた。
【0038】
【発明の効果】以上のように本発明は、鋼板の潤滑膜分
子にクロロシリル基を有する分子を用い、脱塩酸反応に
よって、鋼板と膜分子を化学結合させることにより、鋼
板に直接、非常に薄い潤滑膜を形成でき、充分なプレス
成形性、耐熱性などを有する潤滑鋼板を提供できる。
【0039】また、本発明の潤滑膜形成方法により、電
気メッキや溶融メッキなど行う必要はなく設備省略化・
時間の短縮化、さらに、環境にも安全な潤滑鋼板製造方
法が提供できる。また、気相中で潤滑膜形成を行う場合
には溶剤の影響を全く受けない潤滑鋼板製造方法が提供
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である鋼板表面上にシロキサ
ン結合を介して潤滑膜を形成した潤滑鋼板の概念断面図
【符号の説明】
1 鋼板 2 シロキサン結合 3 潤滑膜分子 4 潤滑膜

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無塗油加工可能な鋼板であって、前記鋼
    板の表面に潤滑膜分子が鋼板表面分子とシロキサン結合
    によって固定されていることを特徴とする潤滑鋼板。
  2. 【請求項2】 鋼板の表面と潤滑膜分子との間に無機シ
    ロキサン系内層膜が存在し、鋼板表面分子と前記内層膜
    分子とはシロキサン結合によって結合され、かつ前記内
    層膜分子と潤滑膜分子とはシロキサン結合によって固定
    されている請求項1に記載の潤滑鋼板。
  3. 【請求項3】 潤滑膜分子がフッ化炭素基及び炭化水素
    基から選ばれる少なくとも一つの有機基を含む請求項1
    または2に記載の潤滑鋼板。
  4. 【請求項4】 クロロシリル基を分子末端に有する潤滑
    性化学吸着分子を含む非水系溶液を、表面に活性水素を
    有する鋼板の表面に接触させ、前記クロロシリル基と前
    記鋼板表面の活性水素とで脱塩化水素反応を起こさせ、
    前記鋼板の表面に潤滑膜分子をシロキサン結合によって
    固定することを特徴とする潤滑鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 クロロシリル基を分子末端に有する潤滑
    性化学吸着膜分子を含むガスを、表面に活性水素を有す
    る鋼板の表面に接触させ、前記クロロシリル基と前記鋼
    板表面の活性水素とで脱塩化水素反応を起こさせ、前記
    鋼板の表面に潤滑膜分子をシロキサン結合によって固定
    することを特徴とする潤滑鋼板の製造方法。
  6. 【請求項6】 潤滑性化学吸着膜分子がフッ化炭素基及
    び炭化水素基から選ばれる少なくとも一つの有機基を含
    む請求項4または5に記載の潤滑鋼板の製造方法。
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