JP2011230505A5 - - Google Patents
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Description
本発明者らが上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、非晶質炭素膜(DLC膜)として、ケイ素(Si)を含有する非晶質炭素膜の少なくとも表面に、酸素、または窒素、または酸素及び窒素の双方を含有させることで改質して用いることにより、上記課題を解決しうることを見いだした。また、ケイ素を含む炭化水素系の原料ガスにて非晶質炭素膜を成膜した後、該非晶質炭素膜表面を、窒素又は酸素或いはそれらの混合物を用いてプラズマ処理し、該表面に脱水縮合反応、水素結合等にて、非晶質炭素膜と化学的な結合を起こし、数十nmのフッ素を含む薄膜層を形成可能なフッ素含有シランカップリング剤等のフッ素コート剤を濡れ性の低いことが要求される箇所に塗布することで、濡れ性が高いことが要求される他の部分の高い濡れ性を維持しつつ、硬く耐摩耗性、摺動性に優れた構造体を得ることができることが確認できた。
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]基材と、該基材の表面に形成された、ケイ素を含有し、さらに少なくとも膜の表面に窒素又は酸素或いは両者を含有する非晶質炭素膜と、該非晶質炭素膜の表面の少なくとも一部に、フッ素を含有し、前記非晶質炭素膜と化学結合するカップリング剤からなる薄膜を有することを特徴とする濡れ性改質構造体。
[2]基材と、該基材の表面に形成されたケイ素を含有する非晶質炭素膜と、該非晶質炭素膜を窒素又は酸素或いは両者の混合物を用いてプラズマ処理して得られたプラズマ処理表面と、該プラズマ処理表面の少なくとも一部にフッ素を含有し、前記非晶質炭素膜と化学結合するカップリング剤からなる薄膜を有することを特徴とする表面濡れ性改質構造体。
[3]前記プラズマ処理により、前記非晶質炭素膜に窒素又は酸素或いは両者が含有されていることを特徴とする[2]に記載の表面濡れ性改質構造体。
[4]前記濡れ性改質構造体の表面の前記薄膜を有しない部分は、前記薄膜を有する部分に比較して高い濡れ性を有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の表面濡れ性改質構造体。
[5]前記濡れ性改質構造体の表面の前記薄膜を有しない部分は、水との接触角が65°以下であることを特徴とする[4]に記載の表面濡れ性改質構造体。
[6]前記非晶質炭素膜が、Si−O結合を有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の表面濡れ性改質構造体。
[7]前記非晶質炭素膜は、フーリエ変換赤外分光法による測定(FT−IR測定)で、波数1300(cm −1 )付近のピークから、Si−O結合が検出されることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の濡れ性改質構造体。
[8]前記薄膜がフッ素を含有するシランカップリング剤からなることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の表面濡れ性改質構造体。
[9]前記構造体が液体吐出用ノズルであって、前記薄膜が形成された部分が、液体吐出面となる部分であり、ノズル孔の吐出口縁部を境にして、ノズル孔内部が親水性の内壁を有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の表面濡れ性改質構造体。
[10]基材に、原料ガスにケイ素を含有する炭化水素化合物を用いてプラズマCVD法により非晶質炭素膜を形成する工程と、該非晶質炭素膜を窒素又は酸素或いは両者の混合物を用いてプラズマ処理する工程と、所定箇所にマスクを形成する工程と、フッ素を含有するシランカップリング剤により薄膜を形成する工程と、前記マスク及び該マスク上の前記薄膜を除去する工程を有することを特徴とする表面濡れ性改質構造体の製造方法。
[11]前記原料ガスが、さらに酸素原子を含有することを特徴とする[10]に記載の表面濡れ性改質構造体の製造方法。
[1]基材と、該基材の表面に形成された、ケイ素を含有し、さらに少なくとも膜の表面に窒素又は酸素或いは両者を含有する非晶質炭素膜と、該非晶質炭素膜の表面の少なくとも一部に、フッ素を含有し、前記非晶質炭素膜と化学結合するカップリング剤からなる薄膜を有することを特徴とする濡れ性改質構造体。
[2]基材と、該基材の表面に形成されたケイ素を含有する非晶質炭素膜と、該非晶質炭素膜を窒素又は酸素或いは両者の混合物を用いてプラズマ処理して得られたプラズマ処理表面と、該プラズマ処理表面の少なくとも一部にフッ素を含有し、前記非晶質炭素膜と化学結合するカップリング剤からなる薄膜を有することを特徴とする表面濡れ性改質構造体。
[3]前記プラズマ処理により、前記非晶質炭素膜に窒素又は酸素或いは両者が含有されていることを特徴とする[2]に記載の表面濡れ性改質構造体。
[4]前記濡れ性改質構造体の表面の前記薄膜を有しない部分は、前記薄膜を有する部分に比較して高い濡れ性を有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の表面濡れ性改質構造体。
[5]前記濡れ性改質構造体の表面の前記薄膜を有しない部分は、水との接触角が65°以下であることを特徴とする[4]に記載の表面濡れ性改質構造体。
[6]前記非晶質炭素膜が、Si−O結合を有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の表面濡れ性改質構造体。
[7]前記非晶質炭素膜は、フーリエ変換赤外分光法による測定(FT−IR測定)で、波数1300(cm −1 )付近のピークから、Si−O結合が検出されることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の濡れ性改質構造体。
[8]前記薄膜がフッ素を含有するシランカップリング剤からなることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の表面濡れ性改質構造体。
[9]前記構造体が液体吐出用ノズルであって、前記薄膜が形成された部分が、液体吐出面となる部分であり、ノズル孔の吐出口縁部を境にして、ノズル孔内部が親水性の内壁を有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の表面濡れ性改質構造体。
[10]基材に、原料ガスにケイ素を含有する炭化水素化合物を用いてプラズマCVD法により非晶質炭素膜を形成する工程と、該非晶質炭素膜を窒素又は酸素或いは両者の混合物を用いてプラズマ処理する工程と、所定箇所にマスクを形成する工程と、フッ素を含有するシランカップリング剤により薄膜を形成する工程と、前記マスク及び該マスク上の前記薄膜を除去する工程を有することを特徴とする表面濡れ性改質構造体の製造方法。
[11]前記原料ガスが、さらに酸素原子を含有することを特徴とする[10]に記載の表面濡れ性改質構造体の製造方法。
前記a−C:H:Si:O膜を形成するには、前記a−C:H:Si膜と同様、プラズマCVD法を用いるのが好ましい。
以下、プラズマCVD法を用いたa−C:H:Si:O膜の代表的な形成方法を記載する。
(a)テトラメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジメトキシジオメチルシラン、及びテトラメチルシクロテトラシロキサンなどに、酸素を含むガスを同時に混合する方法。
(b)テトラメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジメトキシジオメチルシラン、及びテトラメチルシクロテトラシロキサンなどシリコンを含有する炭化水素系のプラズマ原料ガスで、シリコンを含む非晶質炭素膜を成膜した後、その表面に酸素、または酸素を含むガスで形成するプラズマを照射する方法。
(c)Siを含まない、アセチレンなどの炭化水素系のガスに、ヘキサメチルジシロキサン、シロキサンなどの分子中にSi−O結合を有するガスを同時に混合する方法。
以下、プラズマCVD法を用いたa−C:H:Si:O膜の代表的な形成方法を記載する。
(a)テトラメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジメトキシジオメチルシラン、及びテトラメチルシクロテトラシロキサンなどに、酸素を含むガスを同時に混合する方法。
(b)テトラメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジメトキシジオメチルシラン、及びテトラメチルシクロテトラシロキサンなどシリコンを含有する炭化水素系のプラズマ原料ガスで、シリコンを含む非晶質炭素膜を成膜した後、その表面に酸素、または酸素を含むガスで形成するプラズマを照射する方法。
(c)Siを含まない、アセチレンなどの炭化水素系のガスに、ヘキサメチルジシロキサン、シロキサンなどの分子中にSi−O結合を有するガスを同時に混合する方法。
本発明の特徴の1つは、前記の濡れ性の高い表面に部分的にフッ素含有表面処理剤を塗布して、濡れ性の低い表面を有する構造体とするとともに、該フッ素含有表面処理剤として、フッ素を含有するシランカップリング剤(以下、「フッ素系シランカップリング剤」ということもある。)等を用いる点にある。
本発明の一実施形態にて用いるフッ素を含有するシランカップリング剤は、市場で各種簡単に入手できるものであって、前記の親水化処理されたa−C:H:Si膜又はa−C:H:Si:O膜と脱水縮合反応や水素結合等による化学結合で強固に固定可能なものとし、且つ、厚みが10nm〜100nm未満の薄いフッ素含有表面処理層の形成が可能となり、薄膜で形成可能であり、金属、樹脂、セラミクス等多様な素材上に密着良く形成可能な非晶質炭素膜からなるプライマー層と合わせて、基材の形状、寸法精度を損なわない表面改質処理が可能となる。また、本発明の一実施形態においては、フッ素含有シランカップリング剤がプラズマプロセスにて改質された非晶質炭素膜と強固に結合しているため、例えば、表層の官能基に乏しい基材に対して、より強固にフッ素含有シランカップリング剤を固定する必要のある場合に多用される、液体状プライマーを用いてフッ素含有シランカップリング剤を固定する必要がない。これにより、液体状プライマーを用いた場合に発生し易い、基材への液体プライマー塗布後、乾燥固化前の該プライマーの基材の微細な穴部、溝部等への濡れ広がり(穴部、溝部を覆い塞ぐように膜を形成してしまう状態)と、続く固化による基材開口部閉塞の発生や、液体プライマー塗布時の重力方向への流動と固化による膜厚のばらつき、膜厚の増加、基材変形等の弊害を防止することができる。
本発明の一実施形態にて用いるフッ素を含有するシランカップリング剤は、市場で各種簡単に入手できるものであって、前記の親水化処理されたa−C:H:Si膜又はa−C:H:Si:O膜と脱水縮合反応や水素結合等による化学結合で強固に固定可能なものとし、且つ、厚みが10nm〜100nm未満の薄いフッ素含有表面処理層の形成が可能となり、薄膜で形成可能であり、金属、樹脂、セラミクス等多様な素材上に密着良く形成可能な非晶質炭素膜からなるプライマー層と合わせて、基材の形状、寸法精度を損なわない表面改質処理が可能となる。また、本発明の一実施形態においては、フッ素含有シランカップリング剤がプラズマプロセスにて改質された非晶質炭素膜と強固に結合しているため、例えば、表層の官能基に乏しい基材に対して、より強固にフッ素含有シランカップリング剤を固定する必要のある場合に多用される、液体状プライマーを用いてフッ素含有シランカップリング剤を固定する必要がない。これにより、液体状プライマーを用いた場合に発生し易い、基材への液体プライマー塗布後、乾燥固化前の該プライマーの基材の微細な穴部、溝部等への濡れ広がり(穴部、溝部を覆い塞ぐように膜を形成してしまう状態)と、続く固化による基材開口部閉塞の発生や、液体プライマー塗布時の重力方向への流動と固化による膜厚のばらつき、膜厚の増加、基材変形等の弊害を防止することができる。
本発明において、フッ素系シランカップリング剤を用いた場合には、a−C:H:Si膜又はa−C:H:Si:O膜に、低い濡れ性を付与することに加え、耐摩耗性、耐薬品性、低摩擦性、非粘着性等の高機能を付与することができる。
フッ素系シランカップリング剤は、特に限定されないが、具体的には、株式会社フロロテクノロジーのフロロサーフFG−5010Z130−0.2等を用いることができる。
フッ素系シランカップリング剤は、特に限定されないが、具体的には、株式会社フロロテクノロジーのフロロサーフFG−5010Z130−0.2等を用いることができる。
1.試料の作成
各試料に用いた基材は、電解研摩処理を行った30mm×30mm、厚さ1mmのステンレス鋼(SUS304)板、でその表面粗さはRa:0.034μmである。
(1)実施例1−1,2の作成
高圧パルスプラズマCVD装置に上記試料を2点投入し、1×10−3Paまで真空減圧した後、アルゴンガスプラズマで基材を約5分クリーニングした。なお、以降アルゴンガスプラズマによる試料のクリーニングは、各実施例、比較例いずれも、アルゴンガス流量15SCCM、ガス圧1Pa、印加電圧−4kV、パルス周波数2kHz、パルス幅50μs、5分間の条件で行なった。その後、アルゴン15SCCM、テトラメチルシランを流量10SCCM、ガス圧1.5Paになるよう調整し、印加電圧−4kV、パルス周波数2kHz、パルス幅50μsにて30分間シリコンを含む非晶質炭素膜を成膜し、原料ガスを排気した後、酸素ガス流量14SCCM、ガス圧1.5Paになるように調整し、印加電圧−3kV、パルス周波数2kHz、パルス幅50μsにて5分間酸素プラズマを、シリコンを含む非晶質炭素膜に照射した。
2点投入した一方の試料はそのままの状態とし(実施例1−1)、他方の試料に、フッ素系シランカップリング剤である株式会社フロロテクノロジーのフロロサーフFG−5010Z130−0.2の溶液(フッ素樹脂0.02〜0.2%、フッ素系溶剤99.8%〜99.98%)をディップ法により塗布し、2日間、室温にて乾燥させた。(実施例1−2)
各試料に用いた基材は、電解研摩処理を行った30mm×30mm、厚さ1mmのステンレス鋼(SUS304)板、でその表面粗さはRa:0.034μmである。
(1)実施例1−1,2の作成
高圧パルスプラズマCVD装置に上記試料を2点投入し、1×10−3Paまで真空減圧した後、アルゴンガスプラズマで基材を約5分クリーニングした。なお、以降アルゴンガスプラズマによる試料のクリーニングは、各実施例、比較例いずれも、アルゴンガス流量15SCCM、ガス圧1Pa、印加電圧−4kV、パルス周波数2kHz、パルス幅50μs、5分間の条件で行なった。その後、アルゴン15SCCM、テトラメチルシランを流量10SCCM、ガス圧1.5Paになるよう調整し、印加電圧−4kV、パルス周波数2kHz、パルス幅50μsにて30分間シリコンを含む非晶質炭素膜を成膜し、原料ガスを排気した後、酸素ガス流量14SCCM、ガス圧1.5Paになるように調整し、印加電圧−3kV、パルス周波数2kHz、パルス幅50μsにて5分間酸素プラズマを、シリコンを含む非晶質炭素膜に照射した。
2点投入した一方の試料はそのままの状態とし(実施例1−1)、他方の試料に、フッ素系シランカップリング剤である株式会社フロロテクノロジーのフロロサーフFG−5010Z130−0.2の溶液(フッ素樹脂0.02〜0.2%、フッ素系溶剤99.8%〜99.98%)をディップ法により塗布し、2日間、室温にて乾燥させた。(実施例1−2)
2.フーリエ変換赤外分光法による実施例の分析(FT−IR分析)
本発明の一実施形態である、シリコンを含む非晶質炭素膜形成に使用する原料ガスであるテトラメチルシランに対して、一定量の酸素を混合したプラズマ原料ガス流量にて酸素、及びシリコンを含む非晶質炭素膜を形成した場合(上記 実施例4、5)、また、本発明の一実施形態である、シリコンを含む非晶質炭素膜の成膜後、酸素ガスによるプラズマを照射した場合(上記 実施例1)、それぞれに於いてFT−IR分析の結果、3600〜3300(cm−1)付近に結合OH基、3200〜2700(cm−1)にカルボニルOH基などの官能基が確認できている。FT―IR分析は、分析装置、NICOLEL製 PROTEGE 460、ATR測定、結晶:ZnSe 長さ80mm 厚さ4mm 入射角 45度 下方入射 下方出射積分回数 128回である。
これらの官能基が生成されたことにより実施例1、4、5の試料表面において、極性を有している水との親和性が上がり、高い親水性が発現されたと推測される。さらに、フッ素シランカップリング剤等、基材上の官能基と脱水縮合反応や水素結合等による化学結合する層との密着性が向上するものと推定できる。
さらに、実施例4、5においては、1050〜1100(cm−1)付近においてSi−O結合(シロキサン結合)が存在していることが確認できる。酸素の混合量が多い実施例5の方が実施例4に比べ前述レンジでの吸収がより大きく出ていることも確認できた。
また、実施例1については、1300(cm−1)付近のピークから、Si−O結合が検出される。
前記実施例1、4、5のSi−O結合のFT−IR分析測定条件は、分析機器:Bruker社製HYPERION 3000を使用した。分析方法は、顕微ATR法で実施し、高感度反射8波数、32回の測定結果である。
本発明の一実施形態である、シリコンを含む非晶質炭素膜形成に使用する原料ガスであるテトラメチルシランに対して、一定量の酸素を混合したプラズマ原料ガス流量にて酸素、及びシリコンを含む非晶質炭素膜を形成した場合(上記 実施例4、5)、また、本発明の一実施形態である、シリコンを含む非晶質炭素膜の成膜後、酸素ガスによるプラズマを照射した場合(上記 実施例1)、それぞれに於いてFT−IR分析の結果、3600〜3300(cm−1)付近に結合OH基、3200〜2700(cm−1)にカルボニルOH基などの官能基が確認できている。FT―IR分析は、分析装置、NICOLEL製 PROTEGE 460、ATR測定、結晶:ZnSe 長さ80mm 厚さ4mm 入射角 45度 下方入射 下方出射積分回数 128回である。
これらの官能基が生成されたことにより実施例1、4、5の試料表面において、極性を有している水との親和性が上がり、高い親水性が発現されたと推測される。さらに、フッ素シランカップリング剤等、基材上の官能基と脱水縮合反応や水素結合等による化学結合する層との密着性が向上するものと推定できる。
さらに、実施例4、5においては、1050〜1100(cm−1)付近においてSi−O結合(シロキサン結合)が存在していることが確認できる。酸素の混合量が多い実施例5の方が実施例4に比べ前述レンジでの吸収がより大きく出ていることも確認できた。
また、実施例1については、1300(cm−1)付近のピークから、Si−O結合が検出される。
前記実施例1、4、5のSi−O結合のFT−IR分析測定条件は、分析機器:Bruker社製HYPERION 3000を使用した。分析方法は、顕微ATR法で実施し、高感度反射8波数、32回の測定結果である。
《水との接触角の測定》
(1)比較例1−1、2
前記の作成例から明らかなように、比較例1の最表面層は、Siを含まない非晶質炭素膜であり、且つ、プラズマ処理も施さない例であり、図1が、その結果である。
左図(1−1、未コート品)は、通常の非晶質炭素膜の接触角である70°〜80°位の接触角を示しており、比較的濡れ性の低い表面(撥水性を有している表面)といえる。
右図(1−2、コート品)は、フッ素含有シランカップリング剤を塗付したもので、長時間の超音波洗浄の結果、コート剤(フッ素含有シランカップリング剤)が試料から剥離し、未コートの接触角を示す部分が多数表れコート剤の表面定着が悪いことが確認できる。
よって、非晶質炭素膜上の一部に、必要に応じて親水性(高い濡れ性)を示す部分と、撥水性(低い濡れ性)を示す部分を形成することは困難と言える。
(1)比較例1−1、2
前記の作成例から明らかなように、比較例1の最表面層は、Siを含まない非晶質炭素膜であり、且つ、プラズマ処理も施さない例であり、図1が、その結果である。
左図(1−1、未コート品)は、通常の非晶質炭素膜の接触角である70°〜80°位の接触角を示しており、比較的濡れ性の低い表面(撥水性を有している表面)といえる。
右図(1−2、コート品)は、フッ素含有シランカップリング剤を塗付したもので、長時間の超音波洗浄の結果、コート剤(フッ素含有シランカップリング剤)が試料から剥離し、未コートの接触角を示す部分が多数表れコート剤の表面定着が悪いことが確認できる。
よって、非晶質炭素膜上の一部に、必要に応じて親水性(高い濡れ性)を示す部分と、撥水性(低い濡れ性)を示す部分を形成することは困難と言える。
以上のように、既存の技術による表面改質では、親水性(高い濡れ性)の表面と、フッ素系シランカップリング剤を定着させることで、その表面に撥水性(低い濡れ性)の表面を同時に形成できるものは存在しないことが確認できた。
上記成膜後、塗料をスプレーした反対側のNi箔面(ステンレス鋼(SUS)板側の面であり、ノズルの「液滴吐出面」側となる部分)にフッ素系シランカップリング剤である株式会社フロロテクノロジーのフロロサーフFG−5010Z130−0.2の溶液(フッ素樹脂0.02〜2%、フッ素系溶剤99.8%〜99.98%)を刷毛塗りし2日間室温にて乾燥させた。
このとき、スプレーでマスキングしたNi箔に形成したノズル孔の内壁面部分にフッ素含有シランカップリング剤が浸透するのを防止するため、塗付後速やかにフッ素含有シランカップリング剤の溶剤成分を揮発させることが望ましい。
上記のNi箔をIPAの入った超音波洗浄装置に投入し、5分間洗浄を行い、スプレー塗料を除去し、撥水性のノズル「液滴吐出面」側となる部分と、ノズル孔の吐出口縁部を境にして、ノズル孔内部が親水性の内壁を有するノズルが完成した。
このとき、スプレーでマスキングしたNi箔に形成したノズル孔の内壁面部分にフッ素含有シランカップリング剤が浸透するのを防止するため、塗付後速やかにフッ素含有シランカップリング剤の溶剤成分を揮発させることが望ましい。
上記のNi箔をIPAの入った超音波洗浄装置に投入し、5分間洗浄を行い、スプレー塗料を除去し、撥水性のノズル「液滴吐出面」側となる部分と、ノズル孔の吐出口縁部を境にして、ノズル孔内部が親水性の内壁を有するノズルが完成した。
Claims (11)
- 基材と、該基材の表面に形成された、ケイ素を含有し、さらに少なくとも膜の表面に窒素又は酸素或いは両者を含有する非晶質炭素膜と、該非晶質炭素膜の表面の少なくとも一部に、フッ素を含有し、前記非晶質炭素膜と化学結合するカップリング剤からなる薄膜を有することを特徴とする濡れ性改質構造体。
- 基材と、該基材の表面に形成されたケイ素を含有する非晶質炭素膜と、該非晶質炭素膜を窒素又は酸素或いは両者の混合物を用いてプラズマ処理して得られたプラズマ処理表面と、該プラズマ処理表面の少なくとも一部にフッ素を含有し、前記非晶質炭素膜と化学結合するカップリング剤からなる薄膜を有することを特徴とする表面濡れ性改質構造体。
- 前記プラズマ処理により、前記非晶質炭素膜に窒素又は酸素或いは両者が含有されていることを特徴とする請求項2に記載の表面濡れ性改質構造体。
- 前記濡れ性改質構造体の表面の前記薄膜を有しない部分は、前記薄膜を有する部分に比較して高い濡れ性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面濡れ性改質構造体。
- 前記濡れ性改質構造体の表面の前記薄膜を有しない部分は、水との接触角が65°以下であることを特徴とする請求項4に記載の表面濡れ性改質構造体。
- 前記非晶質炭素膜が、Si−O結合を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面濡れ性改質構造体。
- 前記非晶質炭素膜は、フーリエ変換赤外分光法による測定(FT−IR測定)で、波数1300(cm −1 )付近のピークから、Si−O結合が検出されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の濡れ性改質構造体。
- 前記薄膜がフッ素を含有するシランカップリング剤からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の表面濡れ性改質構造体。
- 前記構造体が液体吐出用ノズルであって、前記薄膜が形成された部分が、液体吐出面となる部分であり、ノズル孔の吐出口縁部を境にして、ノズル孔内部が親水性の内壁を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の表面濡れ性改質構造体。
- 基材に、原料ガスにケイ素を含有する炭化水素化合物を用いてプラズマCVD法により非晶質炭素膜を形成する工程と、該非晶質炭素膜を窒素又は酸素或いは両者の混合物を用いてプラズマ処理する工程と、所定箇所にマスクを形成する工程と、フッ素を含有するシランカップリング剤により薄膜を形成する工程と、前記マスク及び該マスク上の前記薄膜を除去する工程を有することを特徴とする表面濡れ性改質構造体の製造方法。
- 前記原料ガスが、さらに酸素原子を含有することを特徴とする請求項10に記載の表面濡れ性改質構造体の製造方法。
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