JPH0789937B2 - 海藻の酵素を利用した不飽和アルデヒドの生産 - Google Patents
海藻の酵素を利用した不飽和アルデヒドの生産Info
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- JPH0789937B2 JPH0789937B2 JP24538687A JP24538687A JPH0789937B2 JP H0789937 B2 JPH0789937 B2 JP H0789937B2 JP 24538687 A JP24538687 A JP 24538687A JP 24538687 A JP24538687 A JP 24538687A JP H0789937 B2 JPH0789937 B2 JP H0789937B2
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Description
【発明の詳細な説明】 本発明は,海藻の有効利用と香料素材開発の接点にあ
る.本発明者は,数多くの海藻がそれぞれ特徴的な香気
をもつことに注目し,今までに多くの海藻の揮発性成分
を分離して,その香気成分を分析した.また,海藻に含
まれる精油の量の測定と官能評価をはじめ,海藻香気に
寄与するいくつかの特徴的な揮発性成分の化学構造を明
らかにした.これらの研究の一部についてはすでに発表
した(文献1,2,3,4). これらの研究によって,緑藻,褐藻および紅藻の香気に
は,多くの特徴的な香気物質がそれぞれに寄与するもの
の,これら海藻に広く分布する共通の香気物質として,
後述するように数多くの不飽和アルデヒドが見出され
た. 不飽和アルデヒドは,香気がかなり強いために香料とし
て重要な物質である.たとえば,(Z)−3−ヘキセナ
ール,(E)−2−ノネナールあるいは(E,Z)−2,6−
ノナジエナールなどの炭素数が主に10以下のアルデヒド
は,普遍的に使用されている.そして,トランス体
(E)とシス体(Z)の香気は,それぞれ異なることが
知られ,その特性を生かして別々の用途に使われてい
る.しかし,幾何構造が異なった不飽和アルデヒドをそ
れぞれ別個に化学的に合成する方法は,一般に工程が長
くしたがって複雑になって容易ではないことが多い.た
とえば,緑藻のアナアオサから見出され,その香気に大
きく寄与する(Z,Z)−8,11−ヘプタデカジエナールの
合成例でも,その工程は複雑で長い(文献5). 本発明者は,ガスクロマトグラフィーによる香気分析
中,標品として使用した脂肪酸が海藻磨砕液のなかでア
ルデヒドに変化することを知り,この原因を追求しさら
に展開して本発明を完成するに至った.そして,脂肪酸
からアルデヒドが生成するメカニズムと,これに係わる
海藻の酵素の性質については,一部すでに発表した(文
献5). 本発明の概要は,海藻から調製した粗酵素液さらには,
これを含有する粉末に不飽和脂肪酸を基質として穏やか
に反応させ,不飽和アルデヒドを酵素的に生産すること
である.たとえば,アナアオサの葉状体を洗浄し,細か
く裁断したのちに冷アセトン中で磨砕し,得られた粉末
を緩衝液に懸濁して,これに各種不飽和脂肪酸を加えて
35℃で1ないし数時間反応する.そして,生成した不飽
和アルデヒドを水蒸気蒸留などの手段によって単離す
る.このようにして,海藻酵素を利用して不飽和アルデ
ヒドを得る方法はいまだ知られていない. つぎに本発明の5つの特徴について述べる.第1は,海
藻に存在する酵素を利用することである.利用できる海
藻の種類は,緑藻,褐藻あるいは紅藻いずれに属するも
のでもよいが,だいたい緑藻に存在する酵素の作用が最
も大きく,ついで褐藻,紅藻の順になっているようであ
る.なかでもアナアオサの酵素は,実施例2で示すよう
にこの作用が強く,基質のリノール酸の約90%を不飽和
アルデヒド[(Z,Z)−8,11−ヘプタデカジエナール]
に転換した. 第2は,基質の不飽和脂肪酸の幾何構造と同じ幾何構造
をもつ不飽和アルデヒドが生成することである.すなわ
ち,(Z)体の脂肪酸からは(Z)体のアルデヒトが生
成する.たとえば,(Z,Z)体の不飽和脂肪酸のひとつ
である,リノール酸[(Z,Z)−9,12−オクタデカジエ
ン酸]を基質にすると,(Z,Z)体の不飽和アルデヒド
[(Z,Z)−8,11−ヘプタデカジエナール]が生成す
る.しかも,生成するのは(Z,Z)体のみであって,
(E,E)体,(E,Z)体および(Z,E)体のアルデヒド
は,全く生成しない.また,(E)体の不飽和脂肪酸に
作用すると(E)体のみのアルデヒドが生成する.この
作用は,海藻酵素の大きな特徴のひとつである.一例と
して,リノール酸の変化を下式で示した. 第3は,基質が不飽和脂肪酸であっても飽和脂肪酸であ
っても,飽和性に関係なく基質よりカルボキシル基側の
炭素数が,ひとつ減少したアルデヒが生成することであ
る.たとえば,飽和脂肪酸であるミリスチン酸(テトラ
デカン酸)からは,炭素数がひとつ小さな飽和アルデヒ
ドである,トリデカナールが生成する.また,不飽和脂
肪酸のオレイン酸[(Z)−9−オクタデセン酸]から
は,カルボキシル基側の炭素数がひとつ減少した不飽和
アルデヒドの(Z)−8−ヘプタデセナールが生成す
る.この第3の特徴を式であらわすと下式になる. 第4は,工程が短くしかも単純なことである.脂肪酸か
らアルデヒドを生成させるのに必要な酵素の反応時間
は,1〜数時間でよい.また,その反応温度は20〜35℃が
適当である.反応終了後は水蒸気蒸留によって,あるい
は有機溶剤で抽出したのち減圧蒸留によって分離精製で
きる.反応液をそのままクロマトグラフィーによって分
離してもよい. 第5は,安全性が高いことである.これは,前項と密接
に関係しているが,合成方法と比較すると特殊な試薬や
装置をもちいる必要がないためである. 本発明は,以上述べたように多くの長所をもっている.
第1の特徴においては,多くの未開発海藻およびほとん
ど利用されていない海藻を,有効に利用できることに大
きな意義がある.とくに最近,水産業上重要な藻場にア
オサ類が異常繁殖し,これをアオサ公害ということがあ
るが,この類の海藻を利用できることは,本発明の有意
義性を高めている.第2と第3においては,本発明が初
めて明らかにした海藻酵素の特異性に起因している.第
4と第5においては,酵素反応の一般的特徴をあらわし
ている. 海藻酵素は,生鮮な海藻から分離したものが反応性に富
む.それゆえ,できるだけ新鮮な海藻から酵素液を調製
して,これと脂肪酸をすばやく反応させることが好まし
い.酵素液を粉末にしておくとこのようなあわただしさ
を避けることができる.しかも,粉末化によって酵素活
性の濃縮化ができる. 反応時間は,1ないし2時間が適当で長時間反応させて
も,生成するアルデヒドの種類と量にほとんど変化はな
い.海藻酵素は,熱に弱いので高温の反応に耐えられな
いため,反応温度は20〜35℃が好ましい.反応液のpH
は,中性区域が適当である. つぎに,不飽和アルデヒドの海藻における分布について
述べる.本発明者は,数多くの海藻の香気成分をガスク
ロマトグラフィー(GC)とガスクロマトグラフィー−質
量分析(GK−MS)によって分析した:生鮮海藻体を同容
量の水とともにミキサーで磨砕したのち,水蒸気蒸留を
おこなった.そして,得られた留出水をペンタンで抽出
してペンタン層を飽和食塩水で洗浄したのち,減圧下で
濃縮して得られたオイルを分析に供した.GCには,HP−58
40型(溶融シリカキャピラリーカラムSF−96,50m x
0.28mmφ,カラム温度75〜210℃)の装置と,GC−MSには
日立−80A型(イオン源温度200℃,イオン化エネルギー
20eV,GC部の条件は先のGCと同じ)のそれを使用した. 香気成分の同定は,合成した標品のマススペクトルおよ
びGC保持時間との一致でおこなった。
る.本発明者は,数多くの海藻がそれぞれ特徴的な香気
をもつことに注目し,今までに多くの海藻の揮発性成分
を分離して,その香気成分を分析した.また,海藻に含
まれる精油の量の測定と官能評価をはじめ,海藻香気に
寄与するいくつかの特徴的な揮発性成分の化学構造を明
らかにした.これらの研究の一部についてはすでに発表
した(文献1,2,3,4). これらの研究によって,緑藻,褐藻および紅藻の香気に
は,多くの特徴的な香気物質がそれぞれに寄与するもの
の,これら海藻に広く分布する共通の香気物質として,
後述するように数多くの不飽和アルデヒドが見出され
た. 不飽和アルデヒドは,香気がかなり強いために香料とし
て重要な物質である.たとえば,(Z)−3−ヘキセナ
ール,(E)−2−ノネナールあるいは(E,Z)−2,6−
ノナジエナールなどの炭素数が主に10以下のアルデヒド
は,普遍的に使用されている.そして,トランス体
(E)とシス体(Z)の香気は,それぞれ異なることが
知られ,その特性を生かして別々の用途に使われてい
る.しかし,幾何構造が異なった不飽和アルデヒドをそ
れぞれ別個に化学的に合成する方法は,一般に工程が長
くしたがって複雑になって容易ではないことが多い.た
とえば,緑藻のアナアオサから見出され,その香気に大
きく寄与する(Z,Z)−8,11−ヘプタデカジエナールの
合成例でも,その工程は複雑で長い(文献5). 本発明者は,ガスクロマトグラフィーによる香気分析
中,標品として使用した脂肪酸が海藻磨砕液のなかでア
ルデヒドに変化することを知り,この原因を追求しさら
に展開して本発明を完成するに至った.そして,脂肪酸
からアルデヒドが生成するメカニズムと,これに係わる
海藻の酵素の性質については,一部すでに発表した(文
献5). 本発明の概要は,海藻から調製した粗酵素液さらには,
これを含有する粉末に不飽和脂肪酸を基質として穏やか
に反応させ,不飽和アルデヒドを酵素的に生産すること
である.たとえば,アナアオサの葉状体を洗浄し,細か
く裁断したのちに冷アセトン中で磨砕し,得られた粉末
を緩衝液に懸濁して,これに各種不飽和脂肪酸を加えて
35℃で1ないし数時間反応する.そして,生成した不飽
和アルデヒドを水蒸気蒸留などの手段によって単離す
る.このようにして,海藻酵素を利用して不飽和アルデ
ヒドを得る方法はいまだ知られていない. つぎに本発明の5つの特徴について述べる.第1は,海
藻に存在する酵素を利用することである.利用できる海
藻の種類は,緑藻,褐藻あるいは紅藻いずれに属するも
のでもよいが,だいたい緑藻に存在する酵素の作用が最
も大きく,ついで褐藻,紅藻の順になっているようであ
る.なかでもアナアオサの酵素は,実施例2で示すよう
にこの作用が強く,基質のリノール酸の約90%を不飽和
アルデヒド[(Z,Z)−8,11−ヘプタデカジエナール]
に転換した. 第2は,基質の不飽和脂肪酸の幾何構造と同じ幾何構造
をもつ不飽和アルデヒドが生成することである.すなわ
ち,(Z)体の脂肪酸からは(Z)体のアルデヒトが生
成する.たとえば,(Z,Z)体の不飽和脂肪酸のひとつ
である,リノール酸[(Z,Z)−9,12−オクタデカジエ
ン酸]を基質にすると,(Z,Z)体の不飽和アルデヒド
[(Z,Z)−8,11−ヘプタデカジエナール]が生成す
る.しかも,生成するのは(Z,Z)体のみであって,
(E,E)体,(E,Z)体および(Z,E)体のアルデヒド
は,全く生成しない.また,(E)体の不飽和脂肪酸に
作用すると(E)体のみのアルデヒドが生成する.この
作用は,海藻酵素の大きな特徴のひとつである.一例と
して,リノール酸の変化を下式で示した. 第3は,基質が不飽和脂肪酸であっても飽和脂肪酸であ
っても,飽和性に関係なく基質よりカルボキシル基側の
炭素数が,ひとつ減少したアルデヒが生成することであ
る.たとえば,飽和脂肪酸であるミリスチン酸(テトラ
デカン酸)からは,炭素数がひとつ小さな飽和アルデヒ
ドである,トリデカナールが生成する.また,不飽和脂
肪酸のオレイン酸[(Z)−9−オクタデセン酸]から
は,カルボキシル基側の炭素数がひとつ減少した不飽和
アルデヒドの(Z)−8−ヘプタデセナールが生成す
る.この第3の特徴を式であらわすと下式になる. 第4は,工程が短くしかも単純なことである.脂肪酸か
らアルデヒドを生成させるのに必要な酵素の反応時間
は,1〜数時間でよい.また,その反応温度は20〜35℃が
適当である.反応終了後は水蒸気蒸留によって,あるい
は有機溶剤で抽出したのち減圧蒸留によって分離精製で
きる.反応液をそのままクロマトグラフィーによって分
離してもよい. 第5は,安全性が高いことである.これは,前項と密接
に関係しているが,合成方法と比較すると特殊な試薬や
装置をもちいる必要がないためである. 本発明は,以上述べたように多くの長所をもっている.
第1の特徴においては,多くの未開発海藻およびほとん
ど利用されていない海藻を,有効に利用できることに大
きな意義がある.とくに最近,水産業上重要な藻場にア
オサ類が異常繁殖し,これをアオサ公害ということがあ
るが,この類の海藻を利用できることは,本発明の有意
義性を高めている.第2と第3においては,本発明が初
めて明らかにした海藻酵素の特異性に起因している.第
4と第5においては,酵素反応の一般的特徴をあらわし
ている. 海藻酵素は,生鮮な海藻から分離したものが反応性に富
む.それゆえ,できるだけ新鮮な海藻から酵素液を調製
して,これと脂肪酸をすばやく反応させることが好まし
い.酵素液を粉末にしておくとこのようなあわただしさ
を避けることができる.しかも,粉末化によって酵素活
性の濃縮化ができる. 反応時間は,1ないし2時間が適当で長時間反応させて
も,生成するアルデヒドの種類と量にほとんど変化はな
い.海藻酵素は,熱に弱いので高温の反応に耐えられな
いため,反応温度は20〜35℃が好ましい.反応液のpH
は,中性区域が適当である. つぎに,不飽和アルデヒドの海藻における分布について
述べる.本発明者は,数多くの海藻の香気成分をガスク
ロマトグラフィー(GC)とガスクロマトグラフィー−質
量分析(GK−MS)によって分析した:生鮮海藻体を同容
量の水とともにミキサーで磨砕したのち,水蒸気蒸留を
おこなった.そして,得られた留出水をペンタンで抽出
してペンタン層を飽和食塩水で洗浄したのち,減圧下で
濃縮して得られたオイルを分析に供した.GCには,HP−58
40型(溶融シリカキャピラリーカラムSF−96,50m x
0.28mmφ,カラム温度75〜210℃)の装置と,GC−MSには
日立−80A型(イオン源温度200℃,イオン化エネルギー
20eV,GC部の条件は先のGCと同じ)のそれを使用した. 香気成分の同定は,合成した標品のマススペクトルおよ
びGC保持時間との一致でおこなった。
分析の結果,海藻から見出された不飽和アルデヒドとそ
れが存在した海藻を表1にまとめた.これによって,不
飽和アルデヒドは緑藻,褐藻および紅藻に広く分布して
いることがわかった.この広い分布は,これら不飽和ア
ルデヒドよりも炭素数がひとつ大きい不飽和脂肪酸の広
い分布(文献6,7)とほぼ一致している.このことは,
ほとんどの海藻が藻体中に存在する脂肪酸を,その幾何
構造を変化させることなく,かつ炭素数のひとつ小さな
アルデヒドに生体内で転換させる酵素をもつということ
を示唆している. つぎに,実施例を述べる. 実施例 1. 新鮮なアナアオサ(50g)をリン酸緩衝液(100mL)とと
もにミキサーで磨砕し,この濾液にリノール酸,20mgを
加えて2時間反応させたのち,水蒸気蒸留して留出液を
ペンタンで抽出した.ペンタン層を蒸発させた残りをGC
およびGC−MSで分析したところ,リノール酸を示すピー
ク以外に(Z,Z)−8−11−ヘプタデカジエナールを示
すピークが,もともとアナアオサに存在する,そのアル
デヒドのピークにくらべて約60倍のピーク面積を示すま
でに増大した. 実施例 2. アナアオサの葉状体(500g)をアセトン中で磨砕して得
た粉末(60g)を500mMのリン酸緩衝液(pH7.0,2L)に懸
濁し,遠心分離(10,000G,10分間)して沈殿を除いた粗
酵素液(100mL)にリノール酸[(Z,Z)−9,12−オクタ
デカジエン酸],200mgを加え,35℃で2時間反応させ
た.酵素反応液を水蒸気蒸留して,生成した不飽和アル
デヒド[(Z,Z)−8,11−ヘプタデカジエナール],160m
gを得た(収率,90%). 実施例 3. 実施例 2の方法を展開してさらに,厳密な方法で各種
脂肪酸からのアルデヒド生成率を測定した.アナアオサ
(100g)を冷アセトン(−20℃,500mL)中で磨砕し,ジ
エチルエーテルで洗浄後,得られた残渣をアセトンパウ
ダーとした.アセトンパウダー,1.0gに0.1%トリトンX
−100を含んだリン酸緩衝液(pH7.0,50mM,100mL)を加
えて,酵素を可溶化してガーゼで濾過したものを,アセ
トンパウダー可溶化酵素液とした.アセトンパウダー可
溶化酵素液(10mL)に基質(各20mg)を懸濁したのち,3
5℃で60分間の酵素反応を行った.反応混合物に,0.1%
の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン−サク酸試薬(20m
L)−ヘキサン(100mL)を加え反応後,ヘキサン層の濃
縮物をクロロホルム(1mL)に溶解させた.その溶液
(4μL)を高速液体クロマトグラフィー(HPLC,Zorba
x ODS,150mm x 4.6mmφ;CH3 CN/H20/THF=90/9/1)
に注入して,酵素反応生成物を分析定量し,その結果に
基ずくアルデヒド生成率を表2に示した.これでわかる
ように,いろいろなアルデヒドが各種脂肪酸から生成し
たが,アナアオサの酵素は飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪
酸を基質とした方がよく作用した. 実施例 4. 褐藻に属する,カヤモノリの葉状体(500g)を軽く洗浄
したのち,低温下(−20℃)でリン酸緩衝液(2L)とい
っしょにミキサーで磨砕した.これにオレイン酸から調
製したエライジン酸[(E)−9−オクタデセン酸],1
000mgと30℃で2時間反応させたのち,濾液を水蒸気蒸
留後,HPLCで処理して(E)−8−ヘプタデセナール,40
0mgを分離した(収率44%). 実施例 5. 紅藻に属する,オゴノリの藻体(250g)を軽く洗浄した
のち,低温下(−20℃)でリン酸緩衝液(1L)とともに
ミキサーで磨砕し,直ちにリノール酸,200mgと30℃で1
時間反応させた.濾液を水蒸気蒸留したのち,HPLCで処
理して,(Z,Z)−8,11−ヘプタデカジエナールを60mg
(収率33%)を得た. 文献 1.梶原忠彦ら;昭和61年度日本水産学会講演要旨集,198
6,pp193(東京). 2.梶原忠彦ら;第30回香料・テルペンおよび精油化学に
関する討論会,講演要旨集,1986,pp20(広島). 3.川合哲夫ら;特願昭61−024678. 4.梶原忠彦ら;昭和61年度日本水産学会講演要旨集,198
6,pp199(東京). 5.梶原忠彦ら;第31回香料・テルペンおよび精油化学に
関する討論会,講演要旨集,1987,pp51(京都). 6.佐藤孜郎;“海藻の生化学と利用",日本水産学会編,
恒星社厚生閣(東京),1983,pp46. 7.高木徹ら;油化学,1985,34,1008.
れが存在した海藻を表1にまとめた.これによって,不
飽和アルデヒドは緑藻,褐藻および紅藻に広く分布して
いることがわかった.この広い分布は,これら不飽和ア
ルデヒドよりも炭素数がひとつ大きい不飽和脂肪酸の広
い分布(文献6,7)とほぼ一致している.このことは,
ほとんどの海藻が藻体中に存在する脂肪酸を,その幾何
構造を変化させることなく,かつ炭素数のひとつ小さな
アルデヒドに生体内で転換させる酵素をもつということ
を示唆している. つぎに,実施例を述べる. 実施例 1. 新鮮なアナアオサ(50g)をリン酸緩衝液(100mL)とと
もにミキサーで磨砕し,この濾液にリノール酸,20mgを
加えて2時間反応させたのち,水蒸気蒸留して留出液を
ペンタンで抽出した.ペンタン層を蒸発させた残りをGC
およびGC−MSで分析したところ,リノール酸を示すピー
ク以外に(Z,Z)−8−11−ヘプタデカジエナールを示
すピークが,もともとアナアオサに存在する,そのアル
デヒドのピークにくらべて約60倍のピーク面積を示すま
でに増大した. 実施例 2. アナアオサの葉状体(500g)をアセトン中で磨砕して得
た粉末(60g)を500mMのリン酸緩衝液(pH7.0,2L)に懸
濁し,遠心分離(10,000G,10分間)して沈殿を除いた粗
酵素液(100mL)にリノール酸[(Z,Z)−9,12−オクタ
デカジエン酸],200mgを加え,35℃で2時間反応させ
た.酵素反応液を水蒸気蒸留して,生成した不飽和アル
デヒド[(Z,Z)−8,11−ヘプタデカジエナール],160m
gを得た(収率,90%). 実施例 3. 実施例 2の方法を展開してさらに,厳密な方法で各種
脂肪酸からのアルデヒド生成率を測定した.アナアオサ
(100g)を冷アセトン(−20℃,500mL)中で磨砕し,ジ
エチルエーテルで洗浄後,得られた残渣をアセトンパウ
ダーとした.アセトンパウダー,1.0gに0.1%トリトンX
−100を含んだリン酸緩衝液(pH7.0,50mM,100mL)を加
えて,酵素を可溶化してガーゼで濾過したものを,アセ
トンパウダー可溶化酵素液とした.アセトンパウダー可
溶化酵素液(10mL)に基質(各20mg)を懸濁したのち,3
5℃で60分間の酵素反応を行った.反応混合物に,0.1%
の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン−サク酸試薬(20m
L)−ヘキサン(100mL)を加え反応後,ヘキサン層の濃
縮物をクロロホルム(1mL)に溶解させた.その溶液
(4μL)を高速液体クロマトグラフィー(HPLC,Zorba
x ODS,150mm x 4.6mmφ;CH3 CN/H20/THF=90/9/1)
に注入して,酵素反応生成物を分析定量し,その結果に
基ずくアルデヒド生成率を表2に示した.これでわかる
ように,いろいろなアルデヒドが各種脂肪酸から生成し
たが,アナアオサの酵素は飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪
酸を基質とした方がよく作用した. 実施例 4. 褐藻に属する,カヤモノリの葉状体(500g)を軽く洗浄
したのち,低温下(−20℃)でリン酸緩衝液(2L)とい
っしょにミキサーで磨砕した.これにオレイン酸から調
製したエライジン酸[(E)−9−オクタデセン酸],1
000mgと30℃で2時間反応させたのち,濾液を水蒸気蒸
留後,HPLCで処理して(E)−8−ヘプタデセナール,40
0mgを分離した(収率44%). 実施例 5. 紅藻に属する,オゴノリの藻体(250g)を軽く洗浄した
のち,低温下(−20℃)でリン酸緩衝液(1L)とともに
ミキサーで磨砕し,直ちにリノール酸,200mgと30℃で1
時間反応させた.濾液を水蒸気蒸留したのち,HPLCで処
理して,(Z,Z)−8,11−ヘプタデカジエナールを60mg
(収率33%)を得た. 文献 1.梶原忠彦ら;昭和61年度日本水産学会講演要旨集,198
6,pp193(東京). 2.梶原忠彦ら;第30回香料・テルペンおよび精油化学に
関する討論会,講演要旨集,1986,pp20(広島). 3.川合哲夫ら;特願昭61−024678. 4.梶原忠彦ら;昭和61年度日本水産学会講演要旨集,198
6,pp199(東京). 5.梶原忠彦ら;第31回香料・テルペンおよび精油化学に
関する討論会,講演要旨集,1987,pp51(京都). 6.佐藤孜郎;“海藻の生化学と利用",日本水産学会編,
恒星社厚生閣(東京),1983,pp46. 7.高木徹ら;油化学,1985,34,1008.
Claims (1)
- 【請求項1】アナアオサ、カヤモノリまたはオゴノリの
磨砕液からなる粗酵素液あるいは、これを含有する粉末
に、不飽和脂肪酸を基質として反応させ、基質と同じ幾
何構造をもち、かつ基質よりカルボキシル基側の炭素数
がひとつ小さい不飽和アルデヒドを酵素的に生産するこ
とを特徴とする不飽和アルデヒドの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24538687A JPH0789937B2 (ja) | 1987-09-29 | 1987-09-29 | 海藻の酵素を利用した不飽和アルデヒドの生産 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24538687A JPH0789937B2 (ja) | 1987-09-29 | 1987-09-29 | 海藻の酵素を利用した不飽和アルデヒドの生産 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS6486884A JPS6486884A (en) | 1989-03-31 |
JPH0789937B2 true JPH0789937B2 (ja) | 1995-10-04 |
Family
ID=17132887
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP24538687A Expired - Lifetime JPH0789937B2 (ja) | 1987-09-29 | 1987-09-29 | 海藻の酵素を利用した不飽和アルデヒドの生産 |
Country Status (1)
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JP (1) | JPH0789937B2 (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
1987
- 1987-09-29 JP JP24538687A patent/JPH0789937B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
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