JPH0782089A - ニオブ酸リチウム単結晶薄膜およびその製造方法 - Google Patents

ニオブ酸リチウム単結晶薄膜およびその製造方法

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JPH0782089A
JPH0782089A JP25241193A JP25241193A JPH0782089A JP H0782089 A JPH0782089 A JP H0782089A JP 25241193 A JP25241193 A JP 25241193A JP 25241193 A JP25241193 A JP 25241193A JP H0782089 A JPH0782089 A JP H0782089A
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thin film
lithium niobate
crystal thin
melt
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JP25241193A
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Masahiro Tsuji
昌宏 辻
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Ibiden Co Ltd
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Ibiden Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 溶融体の粘性係数を下げ、結晶性良く、かつ
膜圧分布の均一なニオブ酸リチウム単結晶薄膜を製造す
ること。 【構成】 Li2O−B25−Nb25 系溶融体中に
K,Rb,Cs等の周期律表第IV族第4周期以降の元
素を配合して溶融体の粘性を下げ、結晶エピタキシャル
成長により単結晶基板上にニオブ酸リチウム単結晶薄膜
を形成する。タンタル酸リチウム単結晶基板上にニオブ
酸リチウム単結晶薄膜を形成するときには、格子整合を
図るため、溶融体中にNa,Mgも配合する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光応用システムを構築
するために必要となる、電気光学効果、音響光学効果、
非線形光学効果等を用いた導波路型光デバイスを始めと
する各種光学用途に好適なニオブ酸リチウム単結晶薄膜
およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近、情報の多様化に伴い、大量の情報
を高速に様々な様式で交換可能な通信システムや、これ
らを記録再生する情報処理システムが必要とされ、これ
に光技術を応用する試みが検討されている。また、計測
分野においても、分解能の向上、電磁ノイズに対する安
定性等から、光を用いた計測システムが検討されてい
る。このような光応用システムを構築していくために
は、光源としての半導体レーザや、線路となる光ファイ
バーのほかに、光マトリックススイッチ、光変調器、光
フィルター、光増幅器、第二高調波発生素子等の光デバ
イスが必要であり、更にこれらを集積化するには、導波
路型の光デバイスが必要となる。
【0003】そしてこのような導波路型光デバイス用の
材料として、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜が電気光学効
果、音響光学効果、非線形光学効果等の各種の光学特性
を備えた好適なものとして挙げられる。このニオブ酸リ
チウム単結晶薄膜光導波路は、Ti拡散法やプロトン交
換法等によるものよりも結晶性に優れ、光損失も低いと
いう特性を備えるものである。
【0004】ところでこのニオブ酸リチウム単結晶薄膜
光導波路の製造方法としては、液相エピタキシャル結晶
成長法(LPE法)によるものが結晶性等の点で好まし
く、例えば、本出願人による特開平4−12095号公
報に示されるように、Li2O−V25 −Nb25系溶
融体フラックスを用い、これにタンタル酸リチウム(L
iTaO3)単結晶基板を浸漬し、このLiTaO3単結
晶基板上に液相エピタキシャル成長により光導波路用の
ニオブ酸リチウム(LiNbO3) 単結晶薄膜を形成す
る製造方法、あるいは特公昭56−47160号公報に
示されるように、Li2O−V25−Nb25(−Ta
2)系溶融体フラックス中でニオブ酸リチウム(Li
NbO3) 単結晶基板上にLiNbO3−LiTaO3
溶体薄膜単結晶を形成する製造方法が知られている。
【0005】またこのLi2O−V25−Nb25 系溶
融体フラックスを用いて製造すると、溶融体フラックス
からニオブ酸リチウム薄膜中にV25(V3+イオン)が
混入し、このV3+イオンによって光吸収、特に可視光領
域での光吸収による伝搬損失が増加し、光学特性が損な
われるために、これに代わるものとして、Li2O−B2
3−Nb25 系溶融体フラックスを用い、ニオブ酸リ
チウム単結晶基板上にホモ・エピタキシャル成長させる
技術が、1)A.Yamada et al., Appl. Phys.Lett. vol6
1,No.24 PP.2848-2850 に記載されている。また、2)
本件出願人による特願平5−66203号明細書に記載
されるようにヘテロ・エピタキシャル成長によりタンタ
ル酸リチウム(LiTaO3) 基板上にニオブ酸リチウ
ム薄膜単結晶を形成する製造方法が記載されている。
【0006】Li2O−B23−Nb25系溶融体フラ
ックスは、Li2O−V25−Nb25(−TaO2)系
溶融体フラックスに比べVの混入がないため、可視光領
域で低損失なニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得ることが
でき、実用的な光デバイスが可視光領域で使用されるこ
とを考えるとLi2O−B23−Nb25 系溶融体フラ
ックスが望ましいと言える。
【0007】
【発明が解決しようとする問題】しかしながらLi2
−B23−Nb25系溶融体フラックスは、Li2O−
25−Nb25系溶融体フラックスに比べ粘度が高
い。そのために薄膜上にフラックスが残留したり、薄膜
そのものの結晶性が悪くなり、また膜厚分布がバラつい
て劣るという問題が生じ、主に可視光域で光学特性に優
れたニオブ酸リチウム導波路型光デバイスが実用化され
たという例は知られていない。また、このような、導波
路型光デバイスに用いられる可視光領域で光学特性に優
れたニオブ酸リチウム薄膜単結晶が得られたという例も
知られていない。
【0008】そこで本発明者等はこのような問題点を解
決するために種々研究した結果、Li2O−B23−N
25 系溶融体フラックス中に周期律表の第1A族の
第4周期以降の元素であるカリウム(K),ルビジウム
(Rb),あるいはセシウム(Cs)を添加することに
より溶融体の粘度を低減させ、このフラックスを用いて
ニオブ酸リチウム単結晶薄膜をタンタル酸リチウム等の
六方晶単結晶基板上にエピタキシャル成長させることに
より、主に可視光領域での光学特性に優れたニオブ酸リ
チウム単結晶薄膜を実用的に得ることができることを新
規に知見し、本発明を完成するに到った。
【0009】
【問題を解決するための手段】本発明は、Li2O−B2
3−Nb25 系溶融体フラックスに周期律表の第1A
族の第4周期以降の元素を添加することにより溶融体の
粘度を低下させ、この溶融体フラックス中で単結晶基板
上にニオブ酸リチウム単結晶薄膜を形成したものであ
る。第1A族の第4周期以降の元素としては、具体的に
はK,Rb,Csが挙げられる。
【0010】単結晶基板としてニオブ酸リチウム以外の
ヘテロ材料、例えばタンタル酸リチウムを用いるとすれ
ば、溶融体にタンタル酸リチウム単結晶基板を接触さ
せ、エピタキシャル成長によりニオブ酸リチウム単結晶
薄膜を育成させるものである。溶融体として、主として
Li2O、B23、Nb25、K2O、Na2O、MgO
からなり、前記K2O、Na2OとMgOを除く、Li2
O、B23、Nb25の組成範囲は、Li2O−B23
−Nb25 の3成分系の三角図において、A(88.9
0,2.22,8.88)、B(55.00,43.00,
2.00)、C(46.50,51.50,2.00)、D
(11.11,80.00,8.89)、E(37.50,
5.00,57.50)の5組成点で囲まれる組成領域内
にある。 前記Li2O−B23−Nb25の3成分系の
三角図における組成点とは(Li2Oのモル%,B23
のモル%,Nb25のモル%)を意味する。
【0011】また前記K2Oの組成範囲は、モル比でK2
O/Li2O が、10/90〜50/50とし、これに
より溶融体フラックスの粘性係数を600mPa・s以
下となるように調整している。RbやCsを粘性調整材
料として用いる場合も同様の考えに基づく。
【0012】一方、単結晶基板にニオブ酸リチウム以外
のヘテロ材料、例えばタンタル酸リチウム単結晶基板を
用いる場合にはその単結晶基板とニオブ酸リチウム単結
晶薄膜との格子整合を図るためナトリウムやマグネシウ
ムを配合するがそのとき溶融体中に配合されるNa2
の組成範囲は、モル比でNa2O/Li2Oが、0.1/
99.9〜30.0/70.0 、あるいはMgOの組成範
囲は、それぞれモル比でMgO/ニオブ酸リチウムが、
0.1/99.9〜25.0/75.0を満たす組成範囲内
にあるものを用いる。これによりニオブ酸リチウム単結
晶薄膜のa軸の格子定数とタンタル酸リチウム基板のa
軸の格子定数を整合させることができる。尚、単結晶基
板としてニオブ酸リチウム、つまりホモ材料を用いると
すれば、溶融体フラックス中にNaやMgを配合しなく
とも単結晶基板と単結晶薄膜との格子整合が図られてい
ることは言うまでもない。
【0013】形成されたニオブ酸リチウム単結晶薄膜が
極めて優れた光学特性を有する理由は、ニオブ酸リチウ
ム単結晶薄膜と六方晶構造を有する単結晶基板とが格子
整合されることにより一体化し、格子の歪や結晶の欠陥
などが極めて少なく結晶性に優れ、かつマイクロクラッ
クなどのない高品質の膜が得られるからである。ニオブ
酸リチウム単結晶薄膜とタンタル酸リチウム基板を格子
整合される手段は特に限定されるものではないが、一般
にニオブ酸リチウムのa軸の格子定数は、5.148
A、タンタル酸リチウムa軸の格子定数は、5.154
A程度であるため、格子整合の手段としては、ニオブ酸
リチウム単結晶薄膜に異種元素を含有させることにより
格子定数を大きくする方法が有利である。
【0014】ニオブ酸リチウム単結晶薄膜とタンタル酸
リチウム基板を格子整合させるための異種元素としては
Naあるいはマグネシウムが有利である。この理由は、
Naあるいはマグネシウムのイオン又は原子は、ニオブ
酸リチウムの結晶格子に対する置換あるいはドープによ
り、ニオブ酸リチウムの格子定数(a軸)を大きくする
効果を有するため、Naあるいはマグネシウムの組成を
調整することにより、容易に前記タンタル酸リチウム基
板とニオブ酸リチウム単結晶との格子整合を得ることが
でき、さらにNaあるいはマグネシウムは光学特性を何
らそこなうことがないだけでなく、マグネシウムについ
ては光学損傷を防止するという重要な効果を有するから
である。
【0015】ところでLi2O−B23−Nb25系フ
ラックスが、Li2O−V25−Nb25系フラックス
に比べ粘度が大きいことはすでに述べたが、Li2O−
23 −Nb25系フラックスの粘度を測定すると、
粘性調整材料を配合しなければ950℃において1.4
Pa・s である。ボレイト系融液にアルカリ金属を添
加するとB−Oの結合が切断されて粘度は低減するが、
特に周期律表の第IV族の第4周期以降の元素である
K,Rb,Cs等は、イオン半径が大きくなるにつれ、
B−Oの結合を切断する効果が増大する。実際Li2
−B23−Nb25系フラックスにK2O を添加する
と、粘度は、950℃において50mPa・sまで低減
される。第1A族第4周期以降の元素K,Rb,Csは
溶融体の粘度を低減でき、また、溶融体の粘度の低減に
よりフラックスの残留を防止でき、単結晶薄膜の結晶性
を高め、また膜厚分布のバラつきを改善できる。ちなみ
にK,Rb,Cs等の粘性調整材料を用いない場合の膜
厚は2インチφのウエハ面内で±1.5μm以上バラつ
くが、これらの粘性調整材料を用いると±1.0μmの
範囲内におさまる結果が得られた。
【0016】ここで前記カリウムを含有させる場合、そ
の含有量はニオブ酸リチウム単結晶に対して0.01〜
1.0モル%であることが望ましい。これは0.01〜
1.0モル%のカリウムをニオブ酸リチウム単結晶に含
有させるためには、液相エピタキシャル成長工程におい
てLiNbO3−LiBO2系溶融体に対して5〜20モ
ル%のカリウムを添加することになり、この範囲の添加
量のカリウムであれば溶融体の粘度を50〜100mP
a・sまで低下させることができるからである。LiN
bO3−LiBO2系溶融体にカリウムを添加させない場
合、溶融体の粘度は1.4Pa・sである。
【0017】ナトリウムを含有させる場合、その含有量
は、0.02〜10.0モル%であることが望ましい。
0.02モル% より少ない場合は、タンタル酸リチウム
基板と格子整合をとることが不可能であり、10.0モ
ル% を越える場合は、ニオブ酸ナトリウム結晶が析出
してしまうため、含有させることができない。望ましく
はナトリウムの含有量は、0.05〜2.0モル%である
ことが好適である。
【0018】マグネシウムを含有させる場合、その含有
量は、ニオブ酸リチウム単結晶に対して0.8〜10.8
モル%であることが望ましい。その理由はマグネシウム
の含有量が、0.8モル%より少ない場合は、光損傷を
防止する効果が不充分であり、10.8 モル%を越える
場合は、ニオブ酸マグネシウム系の結晶が析出してしま
うため、含有させることができない。望ましくはマグネ
シウムの含有量は、それぞれ 0.5〜9.0モル%であ
ることが好適である。
【0019】本発明において使用される単結晶基板は、
結晶構造が六方晶であり、a 軸の格子定数が、5.12
8〜5.173Aなる範囲であれば使用できる。また、
その形状も平板状、棒状、繊維状などの基体であっても
よい。前記単結晶基板としては、例えば、ヘテロ基板材
料としてAl23,ZnO,MgO,Gd3Ga512
タンタル酸リチウムなどが使用できるが、特にタンタル
酸リチウムが有利である。
【0020】この理由は、前記タンタル酸リチウム基板
の結晶系は、ニオブ酸リチウム単結晶に類似しておりエ
ピタキシャル成長させやすく、さらに前記タンタル酸リ
チウム基板は市販されているため、品質のよいものが安
定して入手できるからである。
【0021】また、本発明に用いるタンタル酸リチウム
基板としては、種々の元素を含有させ格子定数、屈折率
などを変化させたもの、あるいは表面を化学エッチング
などにより処理したものなどを用いることができる。タ
ンタル酸リチウム基板のニオブ酸リチウム単結晶薄膜形
成面の面粗度は、JIS B0601、Rmax =300
〜1000 であることが望ましい。この理由は、R
max の値を300より小さくすることは極めて困難であ
り、またRmax の値が1000より大きくなると、ニオ
ブ酸リチウム単結晶薄膜の結晶性が低下するからであ
る。
【0022】また、特に本発明においては、ニオブ酸リ
チウム単結晶薄膜の成長面として、タンタル酸リチウム
基板の(0001)面を使用することが望ましい。前記
タンタル酸リチウム基板の(0001)面は、タンタル
酸リチウムのc軸に垂直な面を指す。ニオブ酸リチウム
単結晶薄膜の成長面として、タンタル酸リチウム基板の
(0001)面を使用することが望ましい理由は、前記
タンタル酸リチウムは、結晶構造が六方晶であり、前記
(0001)面はa軸のみで構成されるため、a軸の格
子定数を変えるだけでニオブ酸リチウム単結晶薄膜と、
格子整合させることができるからである。
【0023】更に、前記ニオブ酸リチウム単結晶薄膜の
格子定数(a軸)は、前記タンタル酸リチウム基板の9
9.81〜100.07%であることが望ましく、99.
92〜100.03% が好適である。例えば、タンタル
酸リチウム基板の格子定数が、5.153A である場
合、5.150〜5.155Aであることが望ましい。前
記格子定数の範囲を外れた場合、タンタル酸リチウム基
板とニオブ酸リチウム単結晶薄膜の格子定数を整合させ
難く、光学材料として使用可能な光学特性の優れたニオ
ブ酸リチウム単結晶薄膜を充分に厚く形成することがで
きないからである。
【0024】また、本発明のニオブ酸リチウム単結晶薄
膜には、耐光損傷性を必要に応じて変化させるためにホ
ウ素(B)を含有することが望ましい。Bの含有量は、
50〜1000ppmであることが望ましい。この理由
は、前記Bの含有量が1000ppmを越える場合は、
ニオブ酸リチウム単結晶薄膜の光学的特性が低下するか
らであり、また50ppmより低い場合、可視光域にお
いて光損傷が発生するためである。
【0025】次に本発明の製造方法について簡単に説明
する。本発明のニオブ酸リチウム単結晶薄膜の製造方法
としては、液相エピタキシャル成長法、スパッタ法、蒸
着法などが望ましいが、特に液相エピタキシャル成長法
が好適である。この理由は、結晶性に優れた均質な膜が
得やすく、その結果、光伝搬損失が少なく光導波路とし
て好適な、しかもニオブ酸リチウム単結晶の非線形光学
効果、電気光学効果、音響光学効果などを充分生かせる
優れた特性を持ったニオブ酸リチウム単結晶薄膜が得ら
れ、さらに生産性にも優れているからである。
【0026】本発明の溶融体の原料成分としては酸化
物、もしくは、加熱により酸化物に変化する化合物が望
ましく、例えばK2CO3、Nb25、Li2CO3、B2
3、MgO、KNbO3、KBO2、LiNbO3、Li
BO2の組成物等が挙げられる。前記原料成分は、80
0〜1300℃で空気雰囲気下或いは酸化雰囲気下で加
熱溶融されることが望ましい。前記溶融体を過冷却状態
とした後、タンタル酸リチウム基板を接触させ、育成さ
せることが好ましい。
【0027】又、前記育成のための温度は700〜12
50℃であることが望ましい。この理由はニオブ酸リチ
ウムの融点が1250℃であり、これ以上の温度では結
晶が晶出せず、又、700℃は、溶融剤の融点であるた
め、これより低い温度では原料を溶融体とすることがで
きないためである。ところで、光学デバイスの構成材料
にニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウム単結晶を使用
するためには、前記ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチ
ウム単結晶が、電気光学効果、非線形光学効果など光学
的に有用な諸特性を有することが必要である。
【0028】前記ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウ
ム単結晶に電気光学効果、非線形光学効果などの特性を
持たせるためには、その製造工程にて、結晶をキュリー
点以上の温度に加熱して電界をかけ、結晶をポーリング
(分極)させなければならない。 また、異種元素を含
有させたニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムなどの
単結晶は容易にポーリングできないことが知られてい
る。
【0029】しかしながら、本発明のニオブ酸リチウム
単結晶薄膜は、基板であるタンタル酸リチウムが分極状
態であっても、また分極反転により電気的に中和されて
いても、常に分極された状態にあり、極めて優れた電気
光学効果、非線形光学効果などの諸特性を示す。このた
め、本発明のニオブ酸リチウム単結晶薄膜とタンタル酸
リチウム基板は、ポーリング工程を必要としないため、
製造工程が簡単で、またポーリング工程が不要であるこ
とから従来は使用が困難であった異種元素を含有したタ
ンタル酸リチウム基板を使用できるという利点を持つ。
【0030】
【実施例】次に本発明について各種実験を行なったので
これらについて説明する。実施例1〜8は、本発明のか
かる供試試料の製作履歴とその供試試料の物理的特性の
結果を示している。また比較試料として比較例1〜5に
その製作履歴とその物理的特性の結果を示している。表
1にはこれらをまとめて示している。
【0031】
【表1】
【0032】実施例1 (1)K2CO3 14モル%、Na2CO3 2.0モル
%、Li2CO3 34モル%、B23 40モル%、Nb
25 10モル%、MgOを前記溶融物組成から析出可
能なLiNbO3 の理論量に対して5モル%添加した混
合物を白金ルツボに入れ、エピタキシャル成長育成装置
中で空気雰囲気下で1050℃まで加熱してルツボの内
容物を溶解させた。 (2)溶融体を1時間当たりに60℃の冷却速度で85
0℃まで徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0
001)面を光学研磨したものを基板材料として溶融体
中に20rpmで回転させながら5分間浸漬した。 (3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000
rpmで10分間溶融体上で溶融体を振り切った後、室
温まで徐冷し、基板材料上に約5μmの厚さのカリウ
ム、ナトリウム、マグネシウム含有ニオブ酸リチウム単
結晶薄膜を得た。 (4)得られたニオブ酸リチウムの単結晶薄膜の格子定
数(a軸)は5.154Aであった。格子定数の測定
は、通常の粉末X線回折により行ない、Cu−2θ=4
5〜90°に検出されるニオブ酸リチウムの15本のピ
ークの2θの値とその面指数を用い、最小二重法により
算出したものである。測定においてはSiを内部標準と
して使用している。一方、反射面(0012)のX線ロ
ッキングカーブによる結晶性評価を行ったところ、その
ピーク半価幅は13secであった。また膜厚分布は2
インチφ面内で±0.5μmであった。
【0033】実施例2 (1)K2CO3 10モル%、Na2CO3 2.0モル
%、Li2CO3 38モル%、B23 40モル%、Nb
25 10モル%、MgOを前記溶融物組成から析出可
能なLiNbO3 の理論量に対して5モル%添加した混
合物を白金ルツボに入れ、エピタキシャル成長育成装置
中で空気雰囲気下で1050℃まで加熱してルツボの内
容物を溶解させた。 (2)溶融体を1時間当たりに60℃の冷却速度で87
0℃まで徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0
001)面を光学研磨したものを基板材料として溶融体
中に20rpmで回転させながら5分間浸漬した。 (3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000
rpmで10分間溶融体上で溶融体を振り切った後、室
温まで徐冷し、基板材料上に約5μmの厚さのカリウ
ム、ナトリウム、マグネシウム含有ニオブ酸リチウム単
結晶薄膜を得た。 (4)得られたニオブ酸リチウムの単結晶薄膜の格子定
数(a軸)は5.154Aであった。反射面(00
)のX線ロッキングカーブによる結晶性評価を行った
ところ、そのピーク半価幅は15secであった。また
膜厚分布は2インチφ面内で±0.7μmであった。
【0034】実施例3 (1)K2CO3 6.0モル%、Na2CO3 2.0モル
%、Li2CO342モル%、B23 40モル%、Nb2
5 10モル%、MgOを前記溶融物組成から析出可能
なLiNbO3 の理論量に対して5モル%添加した混合
物を白金ルツボに入れ、エピタキシャル成長育成装置中
で空気雰囲気下で1050℃まで加熱してルツボの内容
物を溶解させた。 (2)溶融体を1時間当たりに60℃の冷却速度で88
0℃まで徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0
001)面を光学研磨したものを基板材料として溶融体
中に20rpmで回転させながら5分間浸漬した。 (3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000
rpmで10分間溶融体上で溶融体を振り切った後、室
温まで徐冷し、基板材料上に約5μmの厚さのカリウ
ム、ナトリウム、マグネシウム含有ニオブ酸リチウム単
結晶薄膜を得た。 (4)得られたニオブ酸リチウムの単結晶薄膜の格子定
数(a軸)は5.153Aであった。反射面(00
)のX線ロッキングカーブによる結晶性評価を行った
ところ、そのピーク半価幅は20secであった。また
膜厚分布は2インチφ面内で±1.0μmであった。
【0035】実施例4 (1)K2CO3 14.8モル%、Na2CO31.2モル
%、Li2CO3 34モル%、B23 40モル%、Nb
25 10モル%、MgOを前記溶融物組成から析出可
能なLiNbO3 の理論量に対して5モル%添加した混
合物を白金ルツボに入れ、エピタキシャル成長育成装置
中で空気雰囲気下で1050℃まで加熱してルツボの内
容物を溶解させた。 (2)溶融体を1時間当たりに60℃の冷却速度で85
0℃まで徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0
001)面を光学研磨したものを基板材料として溶融体
中に20rpmで回転させながら5分間浸漬した。 (3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000
rpmで10分間溶融体上で溶融体を振り切った後、室
温まで徐冷し、基板材料上に約5μmの厚さのカリウ
ム、ナトリウム、マグネシウム含有ニオブ酸リチウム単
結晶薄膜を得た。 (4)得られたニオブ酸リチウムの単結晶薄膜の格子定
数(a軸)は5.150Aであった。反射面(00
)のX線ロッキングカーブによる結晶性評価を行った
ところ、そのピーク半価幅は18secであった。また
膜厚分布は2インチφ面内で±0.5μmであった。
【0036】実施例5 (1)K2CO3 15.75モル%、Na2CO3 2.25
モル%、Li2CO332モル%、B23 45モル%、
Nb25 5モル%、MgOを前記溶融物組成から析出
可能なLiNbO3 の理論量に対して5モル%添加した
混合物を白金ルツボに入れ、エピタキシャル成長育成装
置中で空気雰囲気下で1050℃まで加熱してルツボの
内容物を溶解させた。 (2)溶融体を1時間当たりに60℃の冷却速度で80
0℃まで徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0
001)面を光学研磨したものを基板材料として溶融体
中に20rpmで回転させながら5分間浸漬した。 (3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000
rpmで10分間溶融体上で溶融体を振り切った後、室
温まで徐冷し、基板材料上に約5μmの厚さのカリウ
ム、ナトリウム、マグネシウム含有ニオブ酸リチウム単
結晶薄膜を得た。 (4)得られたニオブ酸リチウムの単結晶薄膜の格子定
数(a軸)は5.153Aであった。反射面(00
)のX線ロッキングカーブによる結晶性評価を行った
ところ、そのピーク半価幅は15secであった。また
膜厚分布は2インチφ面内で±0.5μmであった。
【0037】実施例6 (1)K2CO3 12.25モル%、Na2CO3 1.75
モル%、Li2CO336モル%、B23 35モル%、
Nb25 15モル%、MgOを前記溶融物組成から析
出可能なLiNbO3 の理論量に対して5モル%添加し
た混合物を白金ルツボに入れ、エピタキシャル成長育成
装置中で空気雰囲気下で1050℃まで加熱してルツボ
の内容物を溶解させた。 (2)溶融体を1時間当たりに60℃の冷却速度で90
0℃まで徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0
001)面を光学研磨したものを基板材料として溶融体
中に20rpmで回転させながら5分間浸漬した。 (3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000
rpmで10分間溶融体上で溶融体を振り切った後、室
温まで徐冷し、基板材料上に約5μmの厚さのカリウ
ム、ナトリウム、マグネシウム含有ニオブ酸リチウム単
結晶薄膜を得た。 (4)得られたニオブ酸リチウムの単結晶薄膜の格子定
数(a軸)は5.154Aであった。反射面(00
)のX線ロッキングカーブによる結晶性評価を行った
ところ、そのピーク半価幅は20secであった。また
膜厚分布は2インチφ面内で±0.8μmであった。
【0038】実施例7 (1)K2CO316モル%、Li2CO3 34モル%、
23 40モル%、Nb2510モル%の組成からな
る混合物を白金ルツボに入れ、エピタキシャル成長育成
装置中で空気雰囲気下で1050℃まで加熱してルツボ
の内容物を溶解させた。 (2)溶融体を1時間当たりに60℃の冷却速度で85
0℃まで徐冷した後、ニオブ酸リチウム単結晶の(00
01)面を光学研磨したものを基板材料として溶融体中
に20rpmで回転させながら5分間浸漬した。 (3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000
rpmで10分間溶融体上で溶融体を振り切った後、室
温まで徐冷し、基板材料上に約5μmの厚さのカリウム
含有ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得た。 (4)得られたニオブ酸リチウムの単結晶薄膜の格子定
数(a軸)は5.149Aであった。反射面(00
)のX線ロッキングカーブによる結晶性評価を行った
ところ、そのピーク半価幅は10secであった。また
膜厚分布は2インチφ面内で±0.5μmであった。
【0039】実施例8 (1)K2CO3 8.0モル%、Li2CO3 42モル
%、B23 40モル%、Nb2510モル%の組成か
らなる混合物を白金ルツボに入れ、エピタキシャル成長
育成装置中で空気雰囲気下で1050℃まで加熱してル
ツボの内容物を溶解させた。 (2)溶融体を1時間当たりに60℃の冷却速度で88
0℃まで徐冷した後、ニオブ酸リチウム単結晶の(00
01)面を光学研磨したものを基板材料として溶融体中
に20rpmで回転させながら5分間浸漬した。 (3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000
rpmで10分間溶融体上で溶融体を振り切った後、室
温まで徐冷し、基板材料上に約5μmの厚さのカリウム
含有ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得た。 (4)得られたニオブ酸リチウムの単結晶薄膜の格子定
数(a軸)は5.149Aであった。反射面(00
)のX線ロッキングカーブによる結晶性評価を行った
ところ、そのピーク半価幅は12secであった。また
膜厚分布は2インチφ面内で±0.7μmであった。
【0040】比較例1 (1)K2CO3 2.0モル%、Na2CO32.0モル
%、Li2CO3 46モル%、B23 40モル%、Nb
25 10モル%、MgOを前記溶融物組成から析出可
能なLiNbO3 の理論量に対して5モル%添加した混
合物を白金ルツボに入れ、エピタキシャル成長育成装置
中で空気雰囲気下で1050℃まで加熱してルツボの内
容物を溶解させた。 (2)溶融体を1時間当たりに60℃の冷却速度で90
0℃まで徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0
001)面を光学研磨したものを基板材料として溶融体
中に20rpmで回転させながら5分間浸漬した。 (3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000
rpmで10分間溶融体上で溶融体を振り切った後、室
温まで徐冷し、基板材料上に約5μmの厚さのカリウ
ム、ナトリウム、マグネシウム含有ニオブ酸リチウム単
結晶薄膜を得た。 (4)得られたニオブ酸リチウムの単結晶薄膜の格子定
数(a軸)は5.154Aであった。反射面(00
)のX線ロッキングカーブによる結晶性評価を行った
ところ、そのピーク半価幅は25secであった。また
膜厚分布は2インチφ面内で±1.5μmであり、結晶
性,膜厚均一性ともに劣った。
【0041】比較例2 (1)Na2CO3 3.2モル%、Li2CO346.8モ
ル%、B23 40モル%、Nb2510モル%、Mg
Oを前記溶融物組成から析出可能なLiNbO3 の理論
量に対して5モル%添加した混合物を白金ルツボに入
れ、エピタキシャル成長育成装置中で空気雰囲気下で1
050℃まで加熱してルツボの内容物を溶解させた。 (2)溶融体を1時間当たりに60℃の冷却速度で90
5℃まで徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0
001)面を光学研磨したものを基板材料として溶融体
中に20rpmで回転させながら5分間浸漬した。 (3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000
rpmで10分間溶融体上で溶融体を振り切った後、室
温まで徐冷し、基板材料上に約5μmの厚さのナトリウ
ム、マグネシウム含有ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得
た。 (4)得られたニオブ酸リチウムの単結晶薄膜の格子定
数(a軸)は5.153Aであった。反射面(00
)のX線ロッキングカーブによる結晶性評価を行った
ところ、そのピーク半価幅は29secであった。また
膜厚分布は2インチφ面内で±2.3μm であり、結晶
性,膜厚均一性ともに劣った。薄膜表面には無数の凹凸
が存在し光を導波するには研磨を行わなければならな
い。
【0042】比較例3 (1)K2CO316モル%、Li2CO3 34モル%、
23 40モル%、Nb2510モル%、MgOを前
記溶融物組成から析出可能なLiNbO3 の理論量に対
して5モル%添加した混合物を白金ルツボに入れ、エピ
タキシャル成長育成装置中で空気雰囲気下で1050℃
まで加熱してルツボの内容物を溶解させた。 (2)溶融体を1時間当たりに60℃の冷却速度で85
0℃まで徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0
001)面を光学研磨したものを基板材料として溶融体
中に20rpmで回転させながら5分間浸漬した。 (3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000
rpmで10分間溶融体上で溶融体を振り切った後、室
温まで徐冷し、基板材料上に約5μmの厚さのカリウ
ム、マグネシウム含有ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得
た。 (4)得られたニオブ酸リチウムの単結晶薄膜には格子
不整合によるクラックが存在し光導波路としては使用不
能である。薄膜の格子定数(a軸)は5.148Aであ
った。
【0043】比較例4 (1)K2CO3 24モル%、Li2CO3 26モル%、
2340モル%、Nb25 10モル%、MgOを前
記溶融物組成から析出可能なLiNbO3の理論量に対
して5モル%添加した混合物を白金ルツボに入れ、エピ
タキシャル成長育成装置中で空気雰囲気下で1050℃
まで加熱してルツボの内容物を溶解させた。 (2)溶融体を1時間当たりに60℃の冷却速度で83
0℃まで徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0
001)面を光学研磨したものを基板材料として溶融体
中に20rpmで回転させながら5分間浸漬した。 (3)その結果ニオブ酸リチウム単結晶薄膜は得られ
ず、X線回折によれば析出したのはニオブ酸カリウムで
あることが判明した。
【0044】比較例5 (1)K2CO3 4.0モル%、Na2CO3 12モル
%、Li2CO3 34モル%、B23 40モル%、Nb
25 10モル%、MgOを前記溶融物組成から析出可
能なLiNbO3 の理論量に対して5モル%添加した混
合物を白金ルツボに入れ、エピタキシャル成長育成装置
中で空気雰囲気下で1050℃まで加熱してルツボの内
容物を溶解させた。 (2)溶融体を1時間当たりに60℃の冷却速度で88
0℃まで徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0
001)面を光学研磨したものを基板材料として溶融体
中に20rpmで回転させながら5分間浸漬した。 (3)その結果ニオブ酸リチウム単結晶薄膜は得られ
ず、X線回折によれば析出したのはニオブ酸ナトリウム
であることが判明した。
【0045】表1から明らかなように、本発明品は、タ
ンタル酸リチウム単結晶基板(LT基板)にニオブ酸リ
チウム単結晶薄膜(LN薄膜)を形成したもの(実施例
1〜6)も、ニオブ酸リチウム単結晶基板(LN基板)
にニオブ酸リチウム単結晶薄膜(LN薄膜)を形成した
もの(実施例7および8)も十分に格子整合がなされて
おり、しかもその溶融体組成中に適量のK2CO3が配合
されていることにより溶融体粘性係数を下げることがで
きてその結果X線ロッキングカーブによる結晶性評価テ
ストでもそのピーク半価幅が10〜20secと良好な
データが得られ、しかも膜厚分布の測定結果でも2”φ
面内で±0.5〜±1.0μmの範囲内に膜厚のバラつき
がおさまるという良好な結果が得られた。
【0046】これに対し比較品の方は、いずれもタンタ
ル酸リチウム単結晶基板(LT基板)にニオブ酸リチウ
ム単結晶薄膜(LN薄膜)を形成したものである(比較
例1〜5)が、比較例3および4は溶融体組成中にナト
リウム(Na)が配合されていなかったために格子整合
がなされず(比較例4は、カリウム(K)の配合量が多
過ぎたためにニオブ酸カリウムが析出して薄膜そのもの
が形成されなかった)、また格子整合を図るためにナト
リウム(Na)を配合したもの(比較例1,2および
5)でも、比較例5ではナトリウム(Na)の配合量が
多過ぎてニオブ酸ナトリウムが析出し、薄膜そのものが
形成されないという結果となった。
【0047】そしてまた、単結晶基板(LT基板)と単
結晶薄膜(LN薄膜)との格子整合がなされた比較例1
および2の場合においても、比較例2では溶融体組成中
にカリウム(K)が配合されていないことにより溶融体
の粘性係数が異常に高く、そのためにX線ロッキングカ
ーブによる結晶性評価テストも膜厚分布の測定結果も非
常に悪かった。尚、比較例1の場合は、溶融体組成中に
カリウム(K)が配合されているが、その量が少な過ぎ
るために溶融体粘性係数が余り下がらず、そのために結
晶性も膜厚分布もそれ程良い結果が得られなかったもの
と考察される。表2は、溶融体中のK2O添加量(K2
置換量)と薄膜諸特性との関係を示したものである。
【0048】
【表2】
【0049】この表2より明らかなように、溶融体中の
2O 添加量が増すにつれて溶融体粘性係数が低下し、
結晶性が良くなると共に、膜厚分布のバラつきも小さく
なることがわかるが、それと同時に光学特性として光伝
搬損失を測定した結果でも、可視光である0.633μ
m のTMモード導波光を使用した場合において、溶融
体中のK2O添加量が増すにつれて光伝搬損失が少なく
なるとの結果が得られた。尚、これらの供試試料は、単
結晶薄膜中にバナジウム(V)は配合されず、代わりに
ホウ素(B)が配合されているものであるから、バナジ
ウム配合のLN薄膜よりも良好であることは容易に考察
される。
【0050】またこの表2に示したように、溶融体中の
2O 添加量が増すにつれて膜厚分布のバラつきが小さ
くなることに関連し、2”φウエハから得られるデバイ
スの個数を調べたところ、K2O 添加量が増すにつれて
デバイスの抽出個数が増え、このことは生産歩留の向上
をももたらすことを意味する。次にニオブ酸リチウム単
結晶薄膜中に、ルビジウム(Rb)あるいはセシウム
(Cs)を含有させた場合の実験結果を、次の実施例9
および実施例10に述べる。
【0051】実施例9は、タンタル酸リチウム単結晶基
板上にニオブ酸リチウム単結晶薄膜を形成するに際し、
その薄膜中にルビジウム(Rb)を含有させたものであ
り、実施例10は、同じくタンタル酸リチウム単結晶基
板上にニオブ酸リチウム単結晶薄膜を形成するに際し、
その薄膜中にセシウム(Cs)を含有させたものであ
る。
【0052】実施例9 (1)Na2CO3 2.0モル%、Rb2O 6.0%、L
2CO3 42.0モル%、B23 40.0モル%、Nb
25 10.0モル%、MgOをLiNbO3 に対して5
モル%添加した混合物を白金ルツボに入れ、エピタキシ
ャル成長育成装置中で空気雰囲気下で、1100℃まで
加熱してルツボの内容物を溶解した。 (2)溶融体を1時間当りに60℃の冷却速度で912
℃まで徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(00
01)面を光学研磨した後、化学エッチングしたものを
基板材料として溶融体中に100rpmで回転させなが
ら12分間浸漬した。 (3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000
rpmで30秒間溶融体上で溶融体を振り切った後、室
温まで徐冷し、基板材料上に約12μmの厚さのナトリ
ウム、マグネシウム含有ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を
得た。 (4)得られたニオブ酸リチウム単結晶薄膜中に含有さ
れていたナトリウム、マグネシウムの量は、それぞれ1
モル%,5モル%であった。又、粉末X線解析の測定結
果、薄膜の格子定数(a軸)は5.1532A 、a軸の
格子定数は、タンタル酸リチウム単結晶基板の99.9
9%であった。 膜厚分布は2インチφで±1.0μm
と膜厚分布の均一性が得られた。またX線ロッキングカ
ーブによる結晶性評価テストのピーク半価幅は20秒と
良好であった。
【0053】実施例10 (1)Na2CO32.0モル%、Cs2O 6.0モル%、
Li2CO3 42.0モル%、B23 40.0モル%、N
25 10.0モル%、MgOをLiNbO3 に対して
5モル%添加した混合物を白金ルツボに入れ、エピタキ
シャル成長育成装置中で空気雰囲気下で、1100℃ま
で加熱してルツボの内容物を溶解した。 (2)溶融体を1時間当りに60℃の冷却速度で912
℃まで徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(00
01)面を光学研磨した後、化学エッチングしたものを
基板材料として溶融体中に100rpmで回転させなが
ら12分間浸漬した。 (3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000
rpmで30秒間溶融体上で溶融体を振り切った後、室
温まで徐冷し、基板材料上に約12μmの厚さのナトリ
ウム、マグネシウム含有ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を
得た。 (4)得られたニオブ酸リチウム単結晶薄膜中に含有さ
れていたナトリウム、マグネシウムの量は、それぞれ1
モル%,5モル%であった。又、粉末X線解析の測定結
果、薄膜の格子定数(a軸)は5.1532A 、a軸の
格子定数は、タンタル酸リチウム単結晶基板の99.9
9%であった。 膜厚分布は2インチφで±1.0μm
と膜厚分布の均一性が得られた。またX線ロッキングカ
ーブによる結晶性評価テストのピーク半価幅は20秒と
良好であった。
【0054】実施例9および10のいずれの場合も、タ
ンタル酸リチウム単結晶基板上に形成されるニオブ酸リ
チウム薄膜中にNa,Mgが含有されることにより格子
整合が良くなされていることはもちろんであるが、ルビ
ジウム(Rb),セシウム(Cs)のいずれを薄膜中に
含有させた場合も良好な結晶性が得られ、また膜厚分布
の均一性も得られた。尚、本発明の趣旨を逸脱しない範
囲で種々の条件選択ができる。例えば、溶融体フラクッ
スの粘性調整にK,Rb,Csを単独で含有させるばか
りでなく、これらの元素の二種以上の組合せによるもの
であっても本発明の目的・効果が達成されることは容易
に推察できる。
【0055】
【発明の効果】以上述べたように、本発明は、溶融体中
の粘性係数を下げた状態で単結晶基板上に格子整合され
たニオブ酸リチウム単結晶薄膜を製造するものであるか
ら、得られる単結晶薄膜の結晶性および膜厚均一性に優
れ、特にバナジウムに代えてホウ素を配合したニオブ酸
リチウム単結晶薄膜によれば、可視光域における耐光損
傷性にも優れた、電気光学効果、音響光学効果、非線形
光学効果等の光学特性を備えた導波路型光デバイス歩留
り良く製造できるもので産業上寄与する効果は極めて大
きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1図は、Li2 O−B2 3 −Nb2 5
3成分系の三角図である。各組成点は(Li2Oのモル
% ,B23のモル%,Nb25モル%)で表される。 Li2O/B23/Nb25 A(88.90, 2.22, 8.88) B(55.00,43.00, 2.00) C(46.50,51.50, 2.00) D(11.11,80.00, 8.89) E(37.50, 5.00,57.50) F(47.64,46.12, 6.24) G(27.01,64.69, 8.30) H(36.71,37.97,25.32) I(44.05,32.97,22.98)

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単結晶基板上に格子整合された状態で形
    成されたニオブ酸リチウム単結晶薄膜であって、該薄膜
    中には、カリウム,ルビジウム,セシウムのいずれか1
    種又は2種以上の元素が含有されてなることを特徴とす
    るニオブ酸リチウム単結晶薄膜。
  2. 【請求項2】 前記カリウム,ルビジウム,セシウムの
    含有量は、それぞれ0.01〜1.0モル%であることを
    特徴とする請求項1に記載のニオブ酸リチウム単結晶薄
    膜。
  3. 【請求項3】 前記単結晶薄膜の膜厚分布許容幅は、基
    準膜厚±0.1μmであることを特徴とする請求項1又
    は2に記載のニオブ酸リチウム単結晶薄膜。
  4. 【請求項4】 前記薄膜中にはホウ素が含有されてなる
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のニオブ酸リチ
    ウム単結晶薄膜。
  5. 【請求項5】 前記ホウ素の含有量は、5〜1000p
    pmであることを特徴とする請求項4に記載のニオブ酸
    リチウム単結晶薄膜。
  6. 【請求項6】 前記単結晶基板がタンタル酸リチウム材
    料であることを特徴とする請求項1に記載のニオブ酸リ
    チウム単結晶薄膜。
  7. 【請求項7】 前記単結晶薄膜中には、ナトリウムが
    0.02〜10.0モル%なる範囲で含有されてなること
    を特徴とする請求項6に記載のニオブ酸リチウム単結晶
    薄膜。
  8. 【請求項8】 前記単結晶薄膜中には、マグネシウムが
    0.8〜10.8モル%なる範囲で含有されてなることを
    特徴とする請求項6又は7に記載のニオブ酸リチウム単
    結晶薄膜。
  9. 【請求項9】 前記単結晶基板がニオブ酸リチウム材料
    であることを特徴とする請求項1に記載のニオブ酸リチ
    ウム単結晶薄膜。
  10. 【請求項10】 前記単結晶薄膜は、前記単結晶基板の
    (0001)面に形成されてなることを特徴とする請求
    項1に記載のニオブ酸リチウム単結晶薄膜。
  11. 【請求項11】 前記単結晶薄膜のa軸の格子定数は、
    単結晶基板のa軸の格子定数の99.81〜100.07
    %の範囲内となることより格子整合がなされていること
    を特徴とする請求項6又は9に記載のニオブ酸リチウム
    単結晶薄膜。
  12. 【請求項12】 単結晶基板を溶融体粘度調整材料とし
    て周期律表の第1A族の第4周期以降の元素であるカリ
    ウム,ルビジウム,セシウムのいずれか一種又は2種以
    上の元素が配合される溶融体に接触させ、エピタキシャ
    ル成長により該単結晶基板上にニオブ酸リチウム単結晶
    薄膜を形成するようにしたことを特徴とするニオブ酸リ
    チウム単結晶薄膜の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記溶融体はLi2O−B23−Nb2
    5系のものであり、Li2O、B23、Nb25の組成
    範囲は、Li2O−B23−Nb25の3成分系の三角
    図において、A(88.90,2.22,8.88)、B
    (55.00,43.00,2.00)、C(46.50,
    51.50,2.00)、D(11.11,80.00,
    8.89)、E(37.50,5.00,57.50) の
    5組成点で囲まれる組成領域内にあることを特徴とする
    請求項12に記載のニオブ酸リチウム単結晶薄膜の製造
    方法。
  14. 【請求項14】 前記溶融体中のカリウム,ルビジウ
    ム,セシウムの組成範囲は、モル比でA2O(A=K,
    Rb,Cs)/Li2Oの値が、10/90〜50/5
    0を満たすものを用いる請求項12又は13に記載のニ
    オブ酸リチウム単結晶薄膜の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記溶融体の粘性係数が、600mP
    a・s以下であることを特徴とする請求項12ないし1
    4に記載のニオブ酸リチウム単結晶薄膜の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記単結晶基板がタンタル酸リチウム
    材料であって、前記溶融体中にはNa2Oが含有され、
    該Na2Oの組成範囲は、モル比でNa2O/Li2O の
    値が0.1/99.9〜30.0/70.0を満たす組成範
    囲内にあることを特徴とする請求項12ないし15に記
    載のニオブ酸リチウム単結晶薄膜の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記溶融体中にはさらにMgOが含有
    され、該MgOの組成範囲は、モル比でMgO/ニオブ
    酸リチウムの値が10/90〜50/50を満たす組成
    範囲内にあることを特徴とする請求項16に記載のニオ
    ブ酸リチウム単結晶薄膜の製造方法。
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