JPH0776730A - 磁束密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製造方法 - Google Patents
磁束密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製造方法Info
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- JPH0776730A JPH0776730A JP5161160A JP16116093A JPH0776730A JP H0776730 A JPH0776730 A JP H0776730A JP 5161160 A JP5161160 A JP 5161160A JP 16116093 A JP16116093 A JP 16116093A JP H0776730 A JPH0776730 A JP H0776730A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】工程を繁雑化することなく、安定して高い磁束
密度を有する薄手方向性珪素鋼板を製造する方法を提供
することを目的とする。 【構成】 C:0.01wt%以下、Si:2.5〜
7.0wt%、S:0.01wt%以下、Al:0.0
1wt%以下、N:0.01wt%以下、Cu:0.0
1wt%以下を含む鋼材を1000℃以上に保持した
後、仕上温度700〜950℃の熱間圧延を施し、次い
で、圧延率60〜90%の一次冷間圧延を施した後、7
00〜1000℃の温度で焼鈍し、さらに圧延率40〜
80%の二次冷間圧延を施し、その後700〜1000
℃の温度で焼鈍し、さらに圧延率50〜90%の三次冷
間圧延を施した後、還元性雰囲気等で1000〜130
0℃の温度で焼鈍して薄手珪素鋼板の製造するに際し、
前記一次乃至三次冷間圧延において10kg/mm2 以
上の張力を付加する。
密度を有する薄手方向性珪素鋼板を製造する方法を提供
することを目的とする。 【構成】 C:0.01wt%以下、Si:2.5〜
7.0wt%、S:0.01wt%以下、Al:0.0
1wt%以下、N:0.01wt%以下、Cu:0.0
1wt%以下を含む鋼材を1000℃以上に保持した
後、仕上温度700〜950℃の熱間圧延を施し、次い
で、圧延率60〜90%の一次冷間圧延を施した後、7
00〜1000℃の温度で焼鈍し、さらに圧延率40〜
80%の二次冷間圧延を施し、その後700〜1000
℃の温度で焼鈍し、さらに圧延率50〜90%の三次冷
間圧延を施した後、還元性雰囲気等で1000〜130
0℃の温度で焼鈍して薄手珪素鋼板の製造するに際し、
前記一次乃至三次冷間圧延において10kg/mm2 以
上の張力を付加する。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、Goss 方位に集積し
た結晶方位を有し、板厚0.03〜0.2mmの磁束密
度が高い方向性珪素鋼板の製造方法に関する。
た結晶方位を有し、板厚0.03〜0.2mmの磁束密
度が高い方向性珪素鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】方向性珪素鋼板は、主としてトランスの
鉄心として大量に使用されている。N.P.Gossによる
{110}<001>結晶組織を有する一方向性珪素鋼
板の製造方法の発明以来、このようなGoss 組織を有す
る方向性珪素鋼板の製造方法が数多く提案されている。
これらの提案を大別すると以下の2つに要約される。
鉄心として大量に使用されている。N.P.Gossによる
{110}<001>結晶組織を有する一方向性珪素鋼
板の製造方法の発明以来、このようなGoss 組織を有す
る方向性珪素鋼板の製造方法が数多く提案されている。
これらの提案を大別すると以下の2つに要約される。
【0003】第一の方法は、製鋼段階でAl,N,M
n,Sb,S,Se等のインヒビター(粒成長抑止剤)
添加し、これらの元素及びその微細析出物による結晶粒
成長抑制作用を利用して2次再結晶を生じさせ、選択的
にGoss組織を成長させるものである(例えば、特公昭4
0−15644号、51−13469号)。
n,Sb,S,Se等のインヒビター(粒成長抑止剤)
添加し、これらの元素及びその微細析出物による結晶粒
成長抑制作用を利用して2次再結晶を生じさせ、選択的
にGoss組織を成長させるものである(例えば、特公昭4
0−15644号、51−13469号)。
【0004】第二の方法は、インヒビターを使用せず
に、特定条件の冷間圧延と熱処理都を組合わせることに
よりGoss方位の再結晶集合組織を得るものである(例え
ば、特開昭64−55339号、特開平2−57635
号等)。
に、特定条件の冷間圧延と熱処理都を組合わせることに
よりGoss方位の再結晶集合組織を得るものである(例え
ば、特開昭64−55339号、特開平2−57635
号等)。
【0005】一方、近年エネルギーコストの高騰に伴
い、高性能トランス用として低鉄損材料への要求が強ま
っており、一方向性珪素鋼板の鉄損の70〜80%を占
める渦電流損失の低減のためには製品の薄手化が有効で
あることから、一方向性珪素鋼板の薄手化が要求されて
いる。
い、高性能トランス用として低鉄損材料への要求が強ま
っており、一方向性珪素鋼板の鉄損の70〜80%を占
める渦電流損失の低減のためには製品の薄手化が有効で
あることから、一方向性珪素鋼板の薄手化が要求されて
いる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、第一の方法で
は、結晶粒成長抑制剤の効果を最大限に引き出すために
は、脱炭焼鈍及び高温長時間の純化焼鈍が必要である。
また、板厚を0.2mm以下に薄くすると2次再結晶が
不安定になりGoss方位の集積度を高めることが困難にな
る。従って、第1の方法においては薄手方向性珪素鋼板
の安定製造には限界がある。
は、結晶粒成長抑制剤の効果を最大限に引き出すために
は、脱炭焼鈍及び高温長時間の純化焼鈍が必要である。
また、板厚を0.2mm以下に薄くすると2次再結晶が
不安定になりGoss方位の集積度を高めることが困難にな
る。従って、第1の方法においては薄手方向性珪素鋼板
の安定製造には限界がある。
【0007】第二の方法は、表面エネルギーを利用した
Goss方位形成を行っているために、板厚0.2mm以下
でも安定して薄手方向性珪素鋼板を製造することができ
るが、特開昭64−55339号では冷間圧延に際しロ
ール表面を脱脂し、無潤滑状態で行わなければならない
ため、最終焼鈍1220〜1380℃、保持時間2〜4
時間で、磁束密度B8 =1.88〜1.92Tの高い値
が得られるものの工業的に不利である。特開平2−57
635号では出発素材に対して1000〜1200℃で
3時間以上の純化焼鈍を必要とするため、最終焼鈍10
00℃以上、保持時間1〜3時間で、磁束密度B8 =
1.93Tの高い値が得られるものの、やはり工業的に
不利である。
Goss方位形成を行っているために、板厚0.2mm以下
でも安定して薄手方向性珪素鋼板を製造することができ
るが、特開昭64−55339号では冷間圧延に際しロ
ール表面を脱脂し、無潤滑状態で行わなければならない
ため、最終焼鈍1220〜1380℃、保持時間2〜4
時間で、磁束密度B8 =1.88〜1.92Tの高い値
が得られるものの工業的に不利である。特開平2−57
635号では出発素材に対して1000〜1200℃で
3時間以上の純化焼鈍を必要とするため、最終焼鈍10
00℃以上、保持時間1〜3時間で、磁束密度B8 =
1.93Tの高い値が得られるものの、やはり工業的に
不利である。
【0008】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであって、工程を繁雑化することなく、安定して高
い磁束密度を有する板厚0.03〜0.2mmの薄手方
向性珪素鋼板を製造する方法を提供することを目的とす
る。
ものであって、工程を繁雑化することなく、安定して高
い磁束密度を有する板厚0.03〜0.2mmの薄手方
向性珪素鋼板を製造する方法を提供することを目的とす
る。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明は、C:
0.01wt%以下、Si:2.5〜7wt%、S:
0.01wt%以下、Al:0.01wt%以下、N:
0.01wt%以下、Cu:0.01wt%以下を含む
鋼材を準備し、この鋼材を1000℃以上に保持した
後、仕上温度が700〜950℃になるような熱間圧延
を施し、次いで、圧下率60〜90%の一次冷間又は温
間圧延を施した後、700〜1000℃の温度で焼鈍
し、さらに圧下率40〜80%の二次冷間又は温間圧延
を施し、その後700〜1000℃の温度で焼鈍し、さ
らに圧下率50〜90%の三次冷間又は温間圧延を施し
た後、還元性雰囲気若しくは酸素分圧が0.5Pa以下
の非酸化性雰囲気、又は酸素分圧が0.5Pa以下の真
空中において1000〜1300℃の温度で焼鈍して厚
さ0.03〜0.2mmの薄手珪素鋼板の製造するに際
し、前記一次乃至三次冷間圧延又は温間圧延において1
0kg/mm2 の張力を付加することを特徴とする磁束
密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製造方法を提供する。
0.01wt%以下、Si:2.5〜7wt%、S:
0.01wt%以下、Al:0.01wt%以下、N:
0.01wt%以下、Cu:0.01wt%以下を含む
鋼材を準備し、この鋼材を1000℃以上に保持した
後、仕上温度が700〜950℃になるような熱間圧延
を施し、次いで、圧下率60〜90%の一次冷間又は温
間圧延を施した後、700〜1000℃の温度で焼鈍
し、さらに圧下率40〜80%の二次冷間又は温間圧延
を施し、その後700〜1000℃の温度で焼鈍し、さ
らに圧下率50〜90%の三次冷間又は温間圧延を施し
た後、還元性雰囲気若しくは酸素分圧が0.5Pa以下
の非酸化性雰囲気、又は酸素分圧が0.5Pa以下の真
空中において1000〜1300℃の温度で焼鈍して厚
さ0.03〜0.2mmの薄手珪素鋼板の製造するに際
し、前記一次乃至三次冷間圧延又は温間圧延において1
0kg/mm2 の張力を付加することを特徴とする磁束
密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製造方法を提供する。
【0010】本願発明者らは、先に、2.5〜7%Si
を基本とする特定組成の珪素鋼板に対して、インヒビタ
ーを用いず冷間圧延を3回施し、最終焼鈍として雰囲気
中の酸素濃度をコントロールし、結晶方位がGoss方位に
集積した方向性珪素鋼板を製造する方法について出願し
た(特願平4−185374号)。この先行出願を基
に、一層安定した特性が得られる方向性珪素鋼板につい
てさらに検討を重ねた結果、3回の冷間圧延時に一定値
以上の張力を付加することにより、最終焼鈍後のGoss粒
における圧延方向(R.D.)と<001>軸との角度
差(α角)が低減し、磁束密度が上昇し、磁気特性が安
定化することを見出した。上記構成を有する本発明は本
願発明者らのこのような知見に基づきなされたものであ
る。
を基本とする特定組成の珪素鋼板に対して、インヒビタ
ーを用いず冷間圧延を3回施し、最終焼鈍として雰囲気
中の酸素濃度をコントロールし、結晶方位がGoss方位に
集積した方向性珪素鋼板を製造する方法について出願し
た(特願平4−185374号)。この先行出願を基
に、一層安定した特性が得られる方向性珪素鋼板につい
てさらに検討を重ねた結果、3回の冷間圧延時に一定値
以上の張力を付加することにより、最終焼鈍後のGoss粒
における圧延方向(R.D.)と<001>軸との角度
差(α角)が低減し、磁束密度が上昇し、磁気特性が安
定化することを見出した。上記構成を有する本発明は本
願発明者らのこのような知見に基づきなされたものであ
る。
【0011】以下、本発明について詳細に説明する。ま
ず、化学成分の限定理由について説明する。Cは製鋼段
階でできるだけ低減しておくことが磁気特性上好まし
い。Cが0.01wt%を超えると磁気特性が著しく劣
化する。このためCの上限を0.01wt%に規定す
る。
ず、化学成分の限定理由について説明する。Cは製鋼段
階でできるだけ低減しておくことが磁気特性上好まし
い。Cが0.01wt%を超えると磁気特性が著しく劣
化する。このためCの上限を0.01wt%に規定す
る。
【0012】Siは、電気抵抗を高める作用と、2.5
wt%以上の含有により金属学的変態点をなくし鋼をα
単相にする作用を有している。また、6.5wt%付近
では磁歪がゼロとなるため極めて優れた軟磁気特性が得
られる。しかし、7wt%を超えると磁歪が再び増大し
磁気特性が悪化するとともに、極めて脆くなるため実用
的ではない。このためSiの含有量を2.5〜7wt%
の範囲に規定する。
wt%以上の含有により金属学的変態点をなくし鋼をα
単相にする作用を有している。また、6.5wt%付近
では磁歪がゼロとなるため極めて優れた軟磁気特性が得
られる。しかし、7wt%を超えると磁歪が再び増大し
磁気特性が悪化するとともに、極めて脆くなるため実用
的ではない。このためSiの含有量を2.5〜7wt%
の範囲に規定する。
【0013】S,Nは通常の鋼中に含まれる代表的な元
素であるが、これらの元素は、固溶した状態でも析出物
の形態を採った状態でも粒成長性を阻害するため、でき
る限り低減することが好ましい。但し、製鋼段階で極端
な低減を行うとコスト増の原因となるため、粒成長性を
阻害しない範囲としてこれらの含有量の上限をそれぞれ
0.01wt%に規定する。
素であるが、これらの元素は、固溶した状態でも析出物
の形態を採った状態でも粒成長性を阻害するため、でき
る限り低減することが好ましい。但し、製鋼段階で極端
な低減を行うとコスト増の原因となるため、粒成長性を
阻害しない範囲としてこれらの含有量の上限をそれぞれ
0.01wt%に規定する。
【0014】Alはα鉄への固溶度が広く、かつ酸素と
の親和力が強い元素である。従って、最終的な熱処理に
よりGoss組織を形成する際に、熱処理雰囲気中の微量酸
素と反応して鋼板表面に酸化物層を形成してしまうた
め、表面エネルギーによる結晶粒成長が阻害されてしま
う。このため、Alの含有量をこのような不都合が生じ
ない0.01wt%以下に規定する。Al含有量のさら
に好ましい範囲は0.005wt%以下である。Alは
脱酸剤として通常添加されるものであるため、特に厳密
に制御する必要がある。
の親和力が強い元素である。従って、最終的な熱処理に
よりGoss組織を形成する際に、熱処理雰囲気中の微量酸
素と反応して鋼板表面に酸化物層を形成してしまうた
め、表面エネルギーによる結晶粒成長が阻害されてしま
う。このため、Alの含有量をこのような不都合が生じ
ない0.01wt%以下に規定する。Al含有量のさら
に好ましい範囲は0.005wt%以下である。Alは
脱酸剤として通常添加されるものであるため、特に厳密
に制御する必要がある。
【0015】Cuはα鉄への固溶度が小さな元素であ
り、最終的な熱処理によりGoss組織を形成する際の結晶
粒成長を著しく阻害する元素である。また、Cuは製鋼
段階で0.05wt%程度含有される。従って、その含
有量を上述のような不都合が生じない0.01wt%以
下に減じることが好ましく、0.005wt%以下にす
ることが一層好ましい。ただし、Cuは融点が1083
℃であり、1000℃程度以上の熱処理により揮発する
成分であるため、0.01wt%よりも多く含有されて
いても比較的長時間の熱処理により0.01wt%以下
にすることが可能である。しかし、工程の効率化の観点
からは熱処理時間の延長は好ましくない。
り、最終的な熱処理によりGoss組織を形成する際の結晶
粒成長を著しく阻害する元素である。また、Cuは製鋼
段階で0.05wt%程度含有される。従って、その含
有量を上述のような不都合が生じない0.01wt%以
下に減じることが好ましく、0.005wt%以下にす
ることが一層好ましい。ただし、Cuは融点が1083
℃であり、1000℃程度以上の熱処理により揮発する
成分であるため、0.01wt%よりも多く含有されて
いても比較的長時間の熱処理により0.01wt%以下
にすることが可能である。しかし、工程の効率化の観点
からは熱処理時間の延長は好ましくない。
【0016】これら元素以外の不可避不純物元素は通常
の鋼に含有される程度の量は許容される。しかし、磁気
特性等をより向上させる観点からは少ないほうが好まし
い。特に、α鉄への固溶度が低いSn等は、Cuと同様
に最終的な熱処理によりGoss組織を形成する際の結晶粒
成長を著しく阻害するので、その含有量が0.01wt
%以下、好ましくは0.005wt%以下になるように
注意する必要がある。また、α鉄への固溶度が広く、か
つ酸素との親和力が強いV,Zn等は、Alと同様に表
面エネルギーによる結晶粒成長を阻害する作用を有する
ため、その含有量が0.01wt%以下、好ましくは
0.005wt%以下になるように注意する必要があ
る。さらに、鋼中のOは3次再結晶挙動に影響を与える
ため、極力低いことが望ましく0.008wt%以下で
あることが好ましい。
の鋼に含有される程度の量は許容される。しかし、磁気
特性等をより向上させる観点からは少ないほうが好まし
い。特に、α鉄への固溶度が低いSn等は、Cuと同様
に最終的な熱処理によりGoss組織を形成する際の結晶粒
成長を著しく阻害するので、その含有量が0.01wt
%以下、好ましくは0.005wt%以下になるように
注意する必要がある。また、α鉄への固溶度が広く、か
つ酸素との親和力が強いV,Zn等は、Alと同様に表
面エネルギーによる結晶粒成長を阻害する作用を有する
ため、その含有量が0.01wt%以下、好ましくは
0.005wt%以下になるように注意する必要があ
る。さらに、鋼中のOは3次再結晶挙動に影響を与える
ため、極力低いことが望ましく0.008wt%以下で
あることが好ましい。
【0017】このようにして溶解された鋼は、インゴッ
トに鋳造されるか或いは連続鋳造法によりスラブとさ
れ、次いで、このインゴット又はスラブは1000℃以
上の温度に保持され、熱間圧延に供される。熱間圧延前
の保持温度を1000℃以上に規定したのは、粗圧延機
あるいは仕上げ熱間圧延機前段での熱延中の再結晶の促
進と、700〜950℃の熱延仕上げ温度を確保するた
めである。なお、熱間圧延は、インゴット又はスラブを
加熱炉にて1000℃以上に加熱してから行ってもよい
し、直接圧延により連続鋳造の後スラブ温度を1000
℃以上に保持したまま行ってもよい。
トに鋳造されるか或いは連続鋳造法によりスラブとさ
れ、次いで、このインゴット又はスラブは1000℃以
上の温度に保持され、熱間圧延に供される。熱間圧延前
の保持温度を1000℃以上に規定したのは、粗圧延機
あるいは仕上げ熱間圧延機前段での熱延中の再結晶の促
進と、700〜950℃の熱延仕上げ温度を確保するた
めである。なお、熱間圧延は、インゴット又はスラブを
加熱炉にて1000℃以上に加熱してから行ってもよい
し、直接圧延により連続鋳造の後スラブ温度を1000
℃以上に保持したまま行ってもよい。
【0018】また、熱間圧延の仕上温度は700〜95
0℃の範囲であることが必要である。仕上温度が700
℃未満では熱間圧延の圧延負荷が大きくなり過ぎ製造上
好ましくない上に、最終的なGoss粒の成長にも悪影響を
及ぼす。また、仕上温度を950℃超にするにはインゴ
ット又はスラブの初期温度を高目に設定する必要があ
り、製造コスト上不利となる。
0℃の範囲であることが必要である。仕上温度が700
℃未満では熱間圧延の圧延負荷が大きくなり過ぎ製造上
好ましくない上に、最終的なGoss粒の成長にも悪影響を
及ぼす。また、仕上温度を950℃超にするにはインゴ
ット又はスラブの初期温度を高目に設定する必要があ
り、製造コスト上不利となる。
【0019】熱延板の板厚は最終製品の所望板厚によっ
て異なるが、概ね1.6mm程度から5.0mm程度と
なる。このようにして製造された熱延板は常法に従って
巻き取られるが、その巻取温度は560〜800℃とす
ることが好ましい。巻取温度が560℃未満では、熱延
終了後のランアウトテーブル上での冷却が実際上困難で
あるため実用性に欠け、一方、巻取温度が800℃を超
えると、巻取冷却中の表面酸化により酸洗性が悪化し、
実用的ではない。
て異なるが、概ね1.6mm程度から5.0mm程度と
なる。このようにして製造された熱延板は常法に従って
巻き取られるが、その巻取温度は560〜800℃とす
ることが好ましい。巻取温度が560℃未満では、熱延
終了後のランアウトテーブル上での冷却が実際上困難で
あるため実用性に欠け、一方、巻取温度が800℃を超
えると、巻取冷却中の表面酸化により酸洗性が悪化し、
実用的ではない。
【0020】なお、巻き取られた熱延コイルを、必要に
応じて連続炉或いはバッチ炉で熱延板焼鈍してもよい。
このときの熱延板焼鈍温度は700〜1100℃である
ことが好ましい。熱延板焼鈍温度が700℃未満では、
熱延時に形成された加工組織を消滅させることができな
いため、その効果が実質的に現われず、一方、熱延板焼
鈍温度が1100℃を超えると、操業上のコスト高の原
因となるために実用上問題となる。
応じて連続炉或いはバッチ炉で熱延板焼鈍してもよい。
このときの熱延板焼鈍温度は700〜1100℃である
ことが好ましい。熱延板焼鈍温度が700℃未満では、
熱延時に形成された加工組織を消滅させることができな
いため、その効果が実質的に現われず、一方、熱延板焼
鈍温度が1100℃を超えると、操業上のコスト高の原
因となるために実用上問題となる。
【0021】このようにして作製された熱延板は常法に
従って一次冷間(又は温間)圧延される。このときの圧
下率は60〜90%とする。圧下率が60%未満の場合
には、熱延中心部に存在する(100)<011>集合
組織が、冷間圧延(温間)−焼鈍後にも残存するため
に、最終焼鈍後の磁気特性(磁束密度)が不十分なもの
となる。一方、圧下率が90%を超えると、圧延機の負
荷が大きくなり経済的に不利になる。なお、通常、冷間
圧延は潤滑材を使用するが、潤滑材を使用せず無潤滑で
圧延を行っても同様の効果が得られる。
従って一次冷間(又は温間)圧延される。このときの圧
下率は60〜90%とする。圧下率が60%未満の場合
には、熱延中心部に存在する(100)<011>集合
組織が、冷間圧延(温間)−焼鈍後にも残存するため
に、最終焼鈍後の磁気特性(磁束密度)が不十分なもの
となる。一方、圧下率が90%を超えると、圧延機の負
荷が大きくなり経済的に不利になる。なお、通常、冷間
圧延は潤滑材を使用するが、潤滑材を使用せず無潤滑で
圧延を行っても同様の効果が得られる。
【0022】一次冷間圧延又は温間圧延が施された板は
700〜1000℃の温度で焼鈍(一次焼鈍)される。
焼鈍温度が700℃未満では、焼鈍による完全再結晶を
行わせることが困難である。一方、焼鈍温度が1000
℃を超えると、再結晶は達成されるが、焼鈍コストが不
可避的に高くなってしまう。また、短時間で再結晶を行
わせ、かつ経済性をも確保するには、特に700〜80
0℃の温度で焼鈍することが好ましい。この焼鈍では、
鋼板表面が若干酸化されたとしても、後に行われる冷間
圧延前の酸洗によりその除去が可能であるため、三次焼
鈍(最終焼鈍)時の結晶方位のGoss方位への集積を確保
するという面では大きな問題はない。しかし、酸化膜を
過度に生成しないようにするという観点から、極力酸素
分圧の低い非酸化性雰囲気または真空中で行うことが好
ましい。また、焼鈍時間は通常2分以上であれば問題は
ない。このような焼鈍処理は箱型炉によるバッチ焼鈍又
は連続焼鈍にて実施することができる。
700〜1000℃の温度で焼鈍(一次焼鈍)される。
焼鈍温度が700℃未満では、焼鈍による完全再結晶を
行わせることが困難である。一方、焼鈍温度が1000
℃を超えると、再結晶は達成されるが、焼鈍コストが不
可避的に高くなってしまう。また、短時間で再結晶を行
わせ、かつ経済性をも確保するには、特に700〜80
0℃の温度で焼鈍することが好ましい。この焼鈍では、
鋼板表面が若干酸化されたとしても、後に行われる冷間
圧延前の酸洗によりその除去が可能であるため、三次焼
鈍(最終焼鈍)時の結晶方位のGoss方位への集積を確保
するという面では大きな問題はない。しかし、酸化膜を
過度に生成しないようにするという観点から、極力酸素
分圧の低い非酸化性雰囲気または真空中で行うことが好
ましい。また、焼鈍時間は通常2分以上であれば問題は
ない。このような焼鈍処理は箱型炉によるバッチ焼鈍又
は連続焼鈍にて実施することができる。
【0023】焼鈍処理における加熱条件は、連続焼鈍で
は加熱速度200〜500℃/分、保持時間が2〜5分
間程度が適当であり、バッチ焼鈍では加熱速度4〜20
℃/分、保持時間が1〜10時間が適当である。冷却速
度は、熱収縮による歪みが鋼板内に残留しない限りにお
いて、通常採用される冷却速度で構わない。例えば、6
00℃まで13.5℃/秒、300℃まで12℃/秒の
冷却速度が採用される。
は加熱速度200〜500℃/分、保持時間が2〜5分
間程度が適当であり、バッチ焼鈍では加熱速度4〜20
℃/分、保持時間が1〜10時間が適当である。冷却速
度は、熱収縮による歪みが鋼板内に残留しない限りにお
いて、通常採用される冷却速度で構わない。例えば、6
00℃まで13.5℃/秒、300℃まで12℃/秒の
冷却速度が採用される。
【0024】上記一次焼鈍が施された鋼板は、圧下率4
0〜80%で二次冷間(又は温間)圧延される。圧下率
が40%未満あるいは80%超では、後述する二次焼鈍
後の再結晶粒が均一な細粒にならず、最終的なGOSS 粒
の集積が十分でない。この冷間圧延は、一次冷間圧延と
同様、無潤滑、潤滑のいずれでも実施可能である。
0〜80%で二次冷間(又は温間)圧延される。圧下率
が40%未満あるいは80%超では、後述する二次焼鈍
後の再結晶粒が均一な細粒にならず、最終的なGOSS 粒
の集積が十分でない。この冷間圧延は、一次冷間圧延と
同様、無潤滑、潤滑のいずれでも実施可能である。
【0025】このようにして一次冷間圧延又は温間圧延
が施された板は、再び700〜1000℃の温度で焼鈍
される(二次焼鈍)。焼鈍温度が700℃未満では、焼
鈍による完全再結晶を行わせることが困難である。一
方、焼鈍温度が1000℃を超えると、再結晶は達成さ
れるが、焼鈍コストが不可避的に高くなってしまう。ま
た、短時間で再結晶を行わせ、かつ経済性をも確保する
には、特に700〜800℃の温度で焼鈍することが好
ましい。この二次焼鈍でも一次焼鈍と同様の理由で鋼板
表面の若干の酸化が許容されるが、この場合も酸化膜を
過度に生成しないようにするという観点から、極力酸素
分圧の低い非酸化性雰囲気または真空中で行うことが好
ましい。この二次焼鈍時間も一次焼鈍と同様に通常2分
以上であれば問題はなく、また箱型炉によるバッチ焼鈍
又は連続焼鈍にて実施することができる。
が施された板は、再び700〜1000℃の温度で焼鈍
される(二次焼鈍)。焼鈍温度が700℃未満では、焼
鈍による完全再結晶を行わせることが困難である。一
方、焼鈍温度が1000℃を超えると、再結晶は達成さ
れるが、焼鈍コストが不可避的に高くなってしまう。ま
た、短時間で再結晶を行わせ、かつ経済性をも確保する
には、特に700〜800℃の温度で焼鈍することが好
ましい。この二次焼鈍でも一次焼鈍と同様の理由で鋼板
表面の若干の酸化が許容されるが、この場合も酸化膜を
過度に生成しないようにするという観点から、極力酸素
分圧の低い非酸化性雰囲気または真空中で行うことが好
ましい。この二次焼鈍時間も一次焼鈍と同様に通常2分
以上であれば問題はなく、また箱型炉によるバッチ焼鈍
又は連続焼鈍にて実施することができる。
【0026】なお、一次冷間(又は温間)圧延及び二次
冷間(又は温間)圧延の後に夫々実施される上述のよう
な中間焼鈍の温度は、後述する三次焼鈍後の鋼板の磁束
密度特性に影響を与える。従って、中間焼鈍としての一
次焼鈍及び二次焼鈍の温度を適切に規定する必要があ
る。
冷間(又は温間)圧延の後に夫々実施される上述のよう
な中間焼鈍の温度は、後述する三次焼鈍後の鋼板の磁束
密度特性に影響を与える。従って、中間焼鈍としての一
次焼鈍及び二次焼鈍の温度を適切に規定する必要があ
る。
【0027】二次焼鈍が施された鋼板は、さらに圧下率
50〜90%で三次冷間(又は温間)圧延される。圧下
率が50%未満では最終焼鈍後の磁気特性(磁束密度)
が不足し、90%を超えると圧延機の負荷が大きく経済
的に不利となる。この場合の冷間圧延も、一次および二
次冷間圧延と同様、無潤滑、潤滑のいずれでも実施可能
である。
50〜90%で三次冷間(又は温間)圧延される。圧下
率が50%未満では最終焼鈍後の磁気特性(磁束密度)
が不足し、90%を超えると圧延機の負荷が大きく経済
的に不利となる。この場合の冷間圧延も、一次および二
次冷間圧延と同様、無潤滑、潤滑のいずれでも実施可能
である。
【0028】このようにして二次冷間圧延又は温間圧延
が施された板は、さらに1000〜1300℃の温度で
焼鈍される(三次焼鈍)。これにより表面エネルギーを
利用した結晶粒成長が生じ、Goss粒が成長する。焼鈍温
度が1000℃未満では、表面エネルギーを利用した結
晶粒成長の駆動力が十分でないため所望のGoss組織を得
ることはできない。一方、焼鈍温度が1300℃を超え
ると、実質的にこのような高温加熱のために必要なエネ
ルギーコストが大きくなり過ぎ、実用上の問題を生じ
る。
が施された板は、さらに1000〜1300℃の温度で
焼鈍される(三次焼鈍)。これにより表面エネルギーを
利用した結晶粒成長が生じ、Goss粒が成長する。焼鈍温
度が1000℃未満では、表面エネルギーを利用した結
晶粒成長の駆動力が十分でないため所望のGoss組織を得
ることはできない。一方、焼鈍温度が1300℃を超え
ると、実質的にこのような高温加熱のために必要なエネ
ルギーコストが大きくなり過ぎ、実用上の問題を生じ
る。
【0029】この三次焼鈍は、水素が必要量以上含まれ
ている実質的に還元性を有する雰囲気中か、実質的に窒
素、Ar等の不活性ガスを主体とし酸素分圧が0.5P
a以下の非酸化性雰囲気又は酸素分圧が0.5Pa以下
の真空中で行う必要がある。これは、結晶方位のGoss方
位への集積を阻害する鋼板表面に対する酸化膜の形成を
防止するためである。真空雰囲気中又は不活性ガス雰囲
気中に酸素分圧が0.5Paを超える程度に酸素が含有
される場合には、鋼板表面に酸化膜が形成され、上記の
ような効果は得られない。焼鈍時間は3分以上である
が、長時間焼鈍すればより安定したGoss組織が形成され
る。
ている実質的に還元性を有する雰囲気中か、実質的に窒
素、Ar等の不活性ガスを主体とし酸素分圧が0.5P
a以下の非酸化性雰囲気又は酸素分圧が0.5Pa以下
の真空中で行う必要がある。これは、結晶方位のGoss方
位への集積を阻害する鋼板表面に対する酸化膜の形成を
防止するためである。真空雰囲気中又は不活性ガス雰囲
気中に酸素分圧が0.5Paを超える程度に酸素が含有
される場合には、鋼板表面に酸化膜が形成され、上記の
ような効果は得られない。焼鈍時間は3分以上である
が、長時間焼鈍すればより安定したGoss組織が形成され
る。
【0030】なお、上述の温間圧延は約200〜400
℃で行う圧延をいう。本発明においては、上述した一次
乃至三次の3回の冷間圧延又は温間圧延の際に、10k
g/mm2 以上の張力を付加する。これにより、方向性
珪素鋼板の磁束密度を上昇させることができ、3%Si
の組成の場合に、その値を1.9T以上と十分に高い値
とすることができる。これは、本願発明者らの実験によ
り初めて明らかになったことである。従来は、本発明の
ように、磁束密度を向上させるために、圧延時に付加す
る張力を厳密に規定することは全く行われておらず、そ
の際の張力は、圧延速度、1パス当たりの圧下量、材料
の機械的性質により自ずから決定されるに過ぎなかっ
た。
℃で行う圧延をいう。本発明においては、上述した一次
乃至三次の3回の冷間圧延又は温間圧延の際に、10k
g/mm2 以上の張力を付加する。これにより、方向性
珪素鋼板の磁束密度を上昇させることができ、3%Si
の組成の場合に、その値を1.9T以上と十分に高い値
とすることができる。これは、本願発明者らの実験によ
り初めて明らかになったことである。従来は、本発明の
ように、磁束密度を向上させるために、圧延時に付加す
る張力を厳密に規定することは全く行われておらず、そ
の際の張力は、圧延速度、1パス当たりの圧下量、材料
の機械的性質により自ずから決定されるに過ぎなかっ
た。
【0031】以下、その際の本願発明者らの実験結果を
示す。2.5mm厚の3%Si熱延鋼板にリーダー材を
取付け、レーバースミルを用いて1回目の冷間圧延で圧
延付加張力の水準を変えつつ0.5mm厚とした。次に
800℃×2分間の中間焼鈍(一次焼鈍)を行い、2回
目の圧延で同様に張力を変化させつつ0.3mm厚とし
た。その後、再び800℃×2分間の中間焼鈍(二次焼
鈍)を行い、3回目の圧延で同様に張力を変化させつつ
0.1mm厚まで圧延した。各冷延板より幅15mm×
長さ200mmのサンプルを切り出し、これらに対して
水素中で1200℃×10分間の最終焼鈍を施した。こ
のようにして得られたサンプルについて、直流単板磁気
測定装置にてB8 (H=800A/mのときの磁束密
度)特性を評価した。各冷間圧延時の張力と最終焼鈍後
の磁気特性との関係を図1〜3に示す。なお、ここにお
ける磁気特性は20サンプルの平均値である。
示す。2.5mm厚の3%Si熱延鋼板にリーダー材を
取付け、レーバースミルを用いて1回目の冷間圧延で圧
延付加張力の水準を変えつつ0.5mm厚とした。次に
800℃×2分間の中間焼鈍(一次焼鈍)を行い、2回
目の圧延で同様に張力を変化させつつ0.3mm厚とし
た。その後、再び800℃×2分間の中間焼鈍(二次焼
鈍)を行い、3回目の圧延で同様に張力を変化させつつ
0.1mm厚まで圧延した。各冷延板より幅15mm×
長さ200mmのサンプルを切り出し、これらに対して
水素中で1200℃×10分間の最終焼鈍を施した。こ
のようにして得られたサンプルについて、直流単板磁気
測定装置にてB8 (H=800A/mのときの磁束密
度)特性を評価した。各冷間圧延時の張力と最終焼鈍後
の磁気特性との関係を図1〜3に示す。なお、ここにお
ける磁気特性は20サンプルの平均値である。
【0032】これらの図のうち、図1は1回目の冷間圧
延張力と磁気特性との関係を示し、この際の2回目及び
3回目の圧延張力は20kg/mm2 とした。また、図
2は1回目及び3回目の圧延張力が20kg/mm2 の
場合の2回目の冷間圧延張力と磁気特性との関係を示
す。さらに、図3は、1回目及び2回目の圧延張力が2
0kg/mm2 の場合の3回目の冷間圧延張力と磁気特
性との関係を示す。
延張力と磁気特性との関係を示し、この際の2回目及び
3回目の圧延張力は20kg/mm2 とした。また、図
2は1回目及び3回目の圧延張力が20kg/mm2 の
場合の2回目の冷間圧延張力と磁気特性との関係を示
す。さらに、図3は、1回目及び2回目の圧延張力が2
0kg/mm2 の場合の3回目の冷間圧延張力と磁気特
性との関係を示す。
【0033】これらの図から明らかなように、いずれも
付加張力10kg/mm2 以上で著しい磁束密度の上昇
が認められる。ただし、3%Si鋼の引張強度(抗張
力)は50kg/mm2 程度であり、これ以上の張力を付
加するとコイルが破断してしまうため、冷間圧延時の付
加張力の上限値は自ずと50kg/mm2 程度に定まる。
付加張力10kg/mm2 以上で著しい磁束密度の上昇
が認められる。ただし、3%Si鋼の引張強度(抗張
力)は50kg/mm2 程度であり、これ以上の張力を付
加するとコイルが破断してしまうため、冷間圧延時の付
加張力の上限値は自ずと50kg/mm2 程度に定まる。
【0034】Si量が4%を超えると、引張強度は著し
く高くなり、伸びは低下する。例えば、6.5%Si鋼
の場合、室温での引張強度は80kg/mm2 、伸びは
3%程度になる。この場合には、安定的な圧延性を確保
するために、200〜400℃の範囲内で温間圧延を行
う。この場合には、磁気特性向上のために必要な圧延付
加張力は10〜60kg/mm2 になる。
く高くなり、伸びは低下する。例えば、6.5%Si鋼
の場合、室温での引張強度は80kg/mm2 、伸びは
3%程度になる。この場合には、安定的な圧延性を確保
するために、200〜400℃の範囲内で温間圧延を行
う。この場合には、磁気特性向上のために必要な圧延付
加張力は10〜60kg/mm2 になる。
【0035】また、図4に同一製造条件のサンプル間で
の磁気特性のばらつきを示す。図4は20サンプルの磁
束密度特性のばらつきと1回目の付加張力との関係を示
すものであり、2回目及び3回目の圧延張力は20kg
/mm2 である。この図から明らかなように、圧延付加
張力が10kg/mm2 以上になると磁気特性が安定化
することが分かる。この傾向は、2回目、3回目の圧延
の圧延付加張力についても同様である。
の磁気特性のばらつきを示す。図4は20サンプルの磁
束密度特性のばらつきと1回目の付加張力との関係を示
すものであり、2回目及び3回目の圧延張力は20kg
/mm2 である。この図から明らかなように、圧延付加
張力が10kg/mm2 以上になると磁気特性が安定化
することが分かる。この傾向は、2回目、3回目の圧延
の圧延付加張力についても同様である。
【0036】このように圧延時の張力付与による磁束密
度が上昇し、しかもその値が安定する理由は、以下のよ
うに推定される。圧延と熱処理との組み合わせにより最
終焼鈍において(110)[001]に結晶を配向させ
る過程において、途中段階では(110)[001]結
晶粒はマイナーコンポーネント(非常に弱い成分)であ
り、この結晶の核は圧延後の{111}<112>マト
リックスより発生すると考えられる。各段階の圧延によ
る再結晶集合組織は、主方位{111}<112>と弱
い(110)[001]とが発生する。圧延時に一定の
張力を付与すると、各結晶粒が塑性変形するときのすべ
り方向<111>が圧延方向に安定して揃い、シャープ
な{111}<112>が形成される。従って、この
{111}<112>マトリックスから発生する(11
0)[001]粒も高くなると考えられる。なお、冷間
圧延用のミルは、タンデム、レバースいずれでも圧延時
に圧延素材に対して張力を付加することができる。
度が上昇し、しかもその値が安定する理由は、以下のよ
うに推定される。圧延と熱処理との組み合わせにより最
終焼鈍において(110)[001]に結晶を配向させ
る過程において、途中段階では(110)[001]結
晶粒はマイナーコンポーネント(非常に弱い成分)であ
り、この結晶の核は圧延後の{111}<112>マト
リックスより発生すると考えられる。各段階の圧延によ
る再結晶集合組織は、主方位{111}<112>と弱
い(110)[001]とが発生する。圧延時に一定の
張力を付与すると、各結晶粒が塑性変形するときのすべ
り方向<111>が圧延方向に安定して揃い、シャープ
な{111}<112>が形成される。従って、この
{111}<112>マトリックスから発生する(11
0)[001]粒も高くなると考えられる。なお、冷間
圧延用のミルは、タンデム、レバースいずれでも圧延時
に圧延素材に対して張力を付加することができる。
【0037】
[実施例1]重量%で、C:0.003%、Si:3.
2%、Mn:0.05%、P:0.001%、S:0.
001%、Al:0.003%、N:0.001%、C
u:0.002%、Ni:0.001%の含珪素スラブ
を加熱し、熱間仕上温度820℃、巻取温度600℃と
し、板厚2.8mmの熱延板を得た。この熱延板を酸洗
後、1回目の冷間圧延を圧下率82%で行った後、80
0℃×2分間の中間焼鈍(一次焼鈍)を施し、次いで2
回目の冷間圧延を圧下率40%で行い、さらに800℃
×2分間の中間焼鈍を施し、次いで3回目の冷間圧延を
圧下率67%で行った。そして、最後に100%水素雰
囲気中(露点−50℃)にて1200℃×10分間、連
続焼鈍(最終焼鈍)を施した。上記1〜3回目の冷間圧
延時には、表1に示す2〜30kg/mm2 の張力を付
加した。その際の、各圧延時の付加張力の値と磁束密度
とを表1に示す。なお、磁気特性は、幅15mm×長さ
100mmの短冊状試料により、直流磁気特性測定器を
用いて測定した。
2%、Mn:0.05%、P:0.001%、S:0.
001%、Al:0.003%、N:0.001%、C
u:0.002%、Ni:0.001%の含珪素スラブ
を加熱し、熱間仕上温度820℃、巻取温度600℃と
し、板厚2.8mmの熱延板を得た。この熱延板を酸洗
後、1回目の冷間圧延を圧下率82%で行った後、80
0℃×2分間の中間焼鈍(一次焼鈍)を施し、次いで2
回目の冷間圧延を圧下率40%で行い、さらに800℃
×2分間の中間焼鈍を施し、次いで3回目の冷間圧延を
圧下率67%で行った。そして、最後に100%水素雰
囲気中(露点−50℃)にて1200℃×10分間、連
続焼鈍(最終焼鈍)を施した。上記1〜3回目の冷間圧
延時には、表1に示す2〜30kg/mm2 の張力を付
加した。その際の、各圧延時の付加張力の値と磁束密度
とを表1に示す。なお、磁気特性は、幅15mm×長さ
100mmの短冊状試料により、直流磁気特性測定器を
用いて測定した。
【0038】
【表1】
【0039】表1から明らかなように、10kg/mm
2 以上の張力を付加することによりB8 特性が上昇し、
1.9T以上と高い値となることが確認された。 [実施例2]重量%で、C:0.003%、Si:6.
5%、Mn:0.05%、P:0.001%、S:0.
001%、Al:0.003%、N:0.001%、C
u:0.002%、Ni:0.001%の含珪素スラブ
を加熱し、熱間仕上温度760℃、巻取温度560℃と
し、板厚2.5mmの熱延板を得た。この熱延板を酸洗
後、1回目の温間圧延(300℃)を圧下率82%で行
った後、800℃×2分間の中間焼鈍(一次焼鈍)を施
し、次いで2回目の温間圧延(300℃)を圧下率40
%で行い、さらに800℃×2分間の中間焼鈍を施し、
次いで3回目の温間圧延(200℃)を圧下率67%で
行った。そして、最後に100%水素雰囲気中(露点−
50℃)にて1200℃×10分間、連続焼鈍(最終焼
鈍)を施した。上記1〜3回目の冷間圧延時には、表2
に示す4〜30kg/mm2 の張力を付加した。その際
の、各圧延時の付加張力の値と磁束密度とを表2に示
す。なお、磁気特性は、実施例1と同様、幅15mm×
長さ100mmの短冊状試料により、直流磁気特性測定
器を用いて測定した。
2 以上の張力を付加することによりB8 特性が上昇し、
1.9T以上と高い値となることが確認された。 [実施例2]重量%で、C:0.003%、Si:6.
5%、Mn:0.05%、P:0.001%、S:0.
001%、Al:0.003%、N:0.001%、C
u:0.002%、Ni:0.001%の含珪素スラブ
を加熱し、熱間仕上温度760℃、巻取温度560℃と
し、板厚2.5mmの熱延板を得た。この熱延板を酸洗
後、1回目の温間圧延(300℃)を圧下率82%で行
った後、800℃×2分間の中間焼鈍(一次焼鈍)を施
し、次いで2回目の温間圧延(300℃)を圧下率40
%で行い、さらに800℃×2分間の中間焼鈍を施し、
次いで3回目の温間圧延(200℃)を圧下率67%で
行った。そして、最後に100%水素雰囲気中(露点−
50℃)にて1200℃×10分間、連続焼鈍(最終焼
鈍)を施した。上記1〜3回目の冷間圧延時には、表2
に示す4〜30kg/mm2 の張力を付加した。その際
の、各圧延時の付加張力の値と磁束密度とを表2に示
す。なお、磁気特性は、実施例1と同様、幅15mm×
長さ100mmの短冊状試料により、直流磁気特性測定
器を用いて測定した。
【0040】
【表2】
【0041】表2から明らかなように、10kg/mm
2 以上の張力を付加することによりB8 特性が上昇し、
6.5%Siの組成としては高い値である1.62T以
上となることが確認された。 [実施例3]重量%で、C:0.003%、Si:3.
2%、Mn:0.05%、P:0.001%、S:0.
001%、Al:0.003%、N:0.001%、C
u:0.002%、Ni:0.001%の含珪素スラブ
を加熱し、熱間仕上温度820℃、巻取温度600℃と
し、板厚2.0〜3.0mmの熱延板を得た。酸洗後、
表3に示す種々の条件で、中間焼鈍を挟む3回の冷間圧
延により、0.05mm及び0.03mmの厚さの冷延
板を得た。そして、最後に100%水素雰囲気中(露点
−50℃)にて1200℃×10分間、連続焼鈍(最終
焼鈍)を施した。上記1〜3回目の冷間圧延時には、表
3に示す4〜20kg/mm2 の張力を付加した。
2 以上の張力を付加することによりB8 特性が上昇し、
6.5%Siの組成としては高い値である1.62T以
上となることが確認された。 [実施例3]重量%で、C:0.003%、Si:3.
2%、Mn:0.05%、P:0.001%、S:0.
001%、Al:0.003%、N:0.001%、C
u:0.002%、Ni:0.001%の含珪素スラブ
を加熱し、熱間仕上温度820℃、巻取温度600℃と
し、板厚2.0〜3.0mmの熱延板を得た。酸洗後、
表3に示す種々の条件で、中間焼鈍を挟む3回の冷間圧
延により、0.05mm及び0.03mmの厚さの冷延
板を得た。そして、最後に100%水素雰囲気中(露点
−50℃)にて1200℃×10分間、連続焼鈍(最終
焼鈍)を施した。上記1〜3回目の冷間圧延時には、表
3に示す4〜20kg/mm2 の張力を付加した。
【0042】
【表3】
【0043】その際の、各圧延時の付加張力の値と磁束
密度とを表4に示す。なお、磁気特性は、幅30mm×
長さ280mmの短冊状試料により、直流磁気特性測定
器を用いて測定した。
密度とを表4に示す。なお、磁気特性は、幅30mm×
長さ280mmの短冊状試料により、直流磁気特性測定
器を用いて測定した。
【0044】
【表4】
【0045】表4から明らかなように、10kg/mm
2 以上の張力を付加することにより、製造条件によらず
B8 特性が上昇し、1.9T以上と高い値となることが
確認された。
2 以上の張力を付加することにより、製造条件によらず
B8 特性が上昇し、1.9T以上と高い値となることが
確認された。
【0046】
【発明の効果】この発明によれば、冷間(又は温間)圧
延時に10kg/mm2 以上の張力を付加することによ
り、工程を繁雑化することなく、安定して高い磁束密度
を有する板厚0.03〜0.2mmの薄手方向性珪素鋼
板を製造する方法が実現される。
延時に10kg/mm2 以上の張力を付加することによ
り、工程を繁雑化することなく、安定して高い磁束密度
を有する板厚0.03〜0.2mmの薄手方向性珪素鋼
板を製造する方法が実現される。
【図1】一次圧延時の付加張力と磁束密度B8 との関係
を示す図。
を示す図。
【図2】二次圧延時の付加張力と磁束密度B8 との関係
を示す図。
を示す図。
【図3】三次圧延時の付加張力と磁束密度B8 との関係
を示す図。
を示す図。
【図4】同一製造条件のサンプル間での磁気特性のばら
つきを示す図。
つきを示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 日裏 昭 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 田中 靖 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内
Claims (1)
- 【請求項1】 C:0.01wt%以下、Si:2.5
〜7wt%、S:0.01wt%以下、Al:0.01
wt%以下、N:0.01wt%以下、Cu:0.01
wt%以下を含む鋼材を準備し、この鋼材を1000℃
以上に保持した後、仕上温度が700〜950℃になる
ような熱間圧延を施し、次いで、圧下率60〜90%の
一次冷間又は温間圧延を施した後、700〜1000℃
の温度で焼鈍し、さらに圧下率40〜80%の二次冷間
又は温間圧延を施し、その後700〜1000℃の温度
で焼鈍し、さらに圧下率50〜90%の三次冷間又は温
間圧延を施した後、還元性雰囲気若しくは酸素分圧が
0.5Pa以下の非酸化性雰囲気、又は酸素分圧が0.
5Pa以下の真空中において1000〜1300℃の温
度で焼鈍して厚さ0.03〜0.2mmの薄手珪素鋼板
の製造するに際し、前記一次乃至三次冷間圧延又は温間
圧延において10kg/mm2 以上の張力を付加するこ
とを特徴とする磁束密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製
造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5161160A JPH0776730A (ja) | 1993-06-30 | 1993-06-30 | 磁束密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5161160A JPH0776730A (ja) | 1993-06-30 | 1993-06-30 | 磁束密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0776730A true JPH0776730A (ja) | 1995-03-20 |
Family
ID=15729741
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5161160A Pending JPH0776730A (ja) | 1993-06-30 | 1993-06-30 | 磁束密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0776730A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013095006A1 (ko) * | 2011-12-20 | 2013-06-27 | 주식회사 포스코 | 생산성 및 자기적 성질이 우수한 고규소 강판 및 그 제조방법 |
-
1993
- 1993-06-30 JP JP5161160A patent/JPH0776730A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013095006A1 (ko) * | 2011-12-20 | 2013-06-27 | 주식회사 포스코 | 생산성 및 자기적 성질이 우수한 고규소 강판 및 그 제조방법 |
US10134513B2 (en) | 2011-12-20 | 2018-11-20 | Posco | High silicon steel sheet having excellent productivity and magnetic properties and method for manufacturing same |
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