JPH0776730A - 磁束密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

磁束密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製造方法

Info

Publication number
JPH0776730A
JPH0776730A JP5161160A JP16116093A JPH0776730A JP H0776730 A JPH0776730 A JP H0776730A JP 5161160 A JP5161160 A JP 5161160A JP 16116093 A JP16116093 A JP 16116093A JP H0776730 A JPH0776730 A JP H0776730A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rolling
annealing
steel sheet
less
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP5161160A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenichi Arai
賢一 荒井
Kazuyuki Ishiyama
和志 石山
Akira Hiura
昭 日裏
Yasushi Tanaka
靖 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NKK Corp, Nippon Kokan Ltd filed Critical NKK Corp
Priority to JP5161160A priority Critical patent/JPH0776730A/ja
Publication of JPH0776730A publication Critical patent/JPH0776730A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)
  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】工程を繁雑化することなく、安定して高い磁束
密度を有する薄手方向性珪素鋼板を製造する方法を提供
することを目的とする。 【構成】 C:0.01wt%以下、Si:2.5〜
7.0wt%、S:0.01wt%以下、Al:0.0
1wt%以下、N:0.01wt%以下、Cu:0.0
1wt%以下を含む鋼材を1000℃以上に保持した
後、仕上温度700〜950℃の熱間圧延を施し、次い
で、圧延率60〜90%の一次冷間圧延を施した後、7
00〜1000℃の温度で焼鈍し、さらに圧延率40〜
80%の二次冷間圧延を施し、その後700〜1000
℃の温度で焼鈍し、さらに圧延率50〜90%の三次冷
間圧延を施した後、還元性雰囲気等で1000〜130
0℃の温度で焼鈍して薄手珪素鋼板の製造するに際し、
前記一次乃至三次冷間圧延において10kg/mm2
上の張力を付加する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、Goss 方位に集積し
た結晶方位を有し、板厚0.03〜0.2mmの磁束密
度が高い方向性珪素鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】方向性珪素鋼板は、主としてトランスの
鉄心として大量に使用されている。N.P.Gossによる
{110}<001>結晶組織を有する一方向性珪素鋼
板の製造方法の発明以来、このようなGoss 組織を有す
る方向性珪素鋼板の製造方法が数多く提案されている。
これらの提案を大別すると以下の2つに要約される。
【0003】第一の方法は、製鋼段階でAl,N,M
n,Sb,S,Se等のインヒビター(粒成長抑止剤)
添加し、これらの元素及びその微細析出物による結晶粒
成長抑制作用を利用して2次再結晶を生じさせ、選択的
にGoss組織を成長させるものである(例えば、特公昭4
0−15644号、51−13469号)。
【0004】第二の方法は、インヒビターを使用せず
に、特定条件の冷間圧延と熱処理都を組合わせることに
よりGoss方位の再結晶集合組織を得るものである(例え
ば、特開昭64−55339号、特開平2−57635
号等)。
【0005】一方、近年エネルギーコストの高騰に伴
い、高性能トランス用として低鉄損材料への要求が強ま
っており、一方向性珪素鋼板の鉄損の70〜80%を占
める渦電流損失の低減のためには製品の薄手化が有効で
あることから、一方向性珪素鋼板の薄手化が要求されて
いる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、第一の方法で
は、結晶粒成長抑制剤の効果を最大限に引き出すために
は、脱炭焼鈍及び高温長時間の純化焼鈍が必要である。
また、板厚を0.2mm以下に薄くすると2次再結晶が
不安定になりGoss方位の集積度を高めることが困難にな
る。従って、第1の方法においては薄手方向性珪素鋼板
の安定製造には限界がある。
【0007】第二の方法は、表面エネルギーを利用した
Goss方位形成を行っているために、板厚0.2mm以下
でも安定して薄手方向性珪素鋼板を製造することができ
るが、特開昭64−55339号では冷間圧延に際しロ
ール表面を脱脂し、無潤滑状態で行わなければならない
ため、最終焼鈍1220〜1380℃、保持時間2〜4
時間で、磁束密度B8 =1.88〜1.92Tの高い値
が得られるものの工業的に不利である。特開平2−57
635号では出発素材に対して1000〜1200℃で
3時間以上の純化焼鈍を必要とするため、最終焼鈍10
00℃以上、保持時間1〜3時間で、磁束密度B8
1.93Tの高い値が得られるものの、やはり工業的に
不利である。
【0008】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであって、工程を繁雑化することなく、安定して高
い磁束密度を有する板厚0.03〜0.2mmの薄手方
向性珪素鋼板を製造する方法を提供することを目的とす
る。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明は、C:
0.01wt%以下、Si:2.5〜7wt%、S:
0.01wt%以下、Al:0.01wt%以下、N:
0.01wt%以下、Cu:0.01wt%以下を含む
鋼材を準備し、この鋼材を1000℃以上に保持した
後、仕上温度が700〜950℃になるような熱間圧延
を施し、次いで、圧下率60〜90%の一次冷間又は温
間圧延を施した後、700〜1000℃の温度で焼鈍
し、さらに圧下率40〜80%の二次冷間又は温間圧延
を施し、その後700〜1000℃の温度で焼鈍し、さ
らに圧下率50〜90%の三次冷間又は温間圧延を施し
た後、還元性雰囲気若しくは酸素分圧が0.5Pa以下
の非酸化性雰囲気、又は酸素分圧が0.5Pa以下の真
空中において1000〜1300℃の温度で焼鈍して厚
さ0.03〜0.2mmの薄手珪素鋼板の製造するに際
し、前記一次乃至三次冷間圧延又は温間圧延において1
0kg/mm2 の張力を付加することを特徴とする磁束
密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製造方法を提供する。
【0010】本願発明者らは、先に、2.5〜7%Si
を基本とする特定組成の珪素鋼板に対して、インヒビタ
ーを用いず冷間圧延を3回施し、最終焼鈍として雰囲気
中の酸素濃度をコントロールし、結晶方位がGoss方位に
集積した方向性珪素鋼板を製造する方法について出願し
た(特願平4−185374号)。この先行出願を基
に、一層安定した特性が得られる方向性珪素鋼板につい
てさらに検討を重ねた結果、3回の冷間圧延時に一定値
以上の張力を付加することにより、最終焼鈍後のGoss粒
における圧延方向(R.D.)と<001>軸との角度
差(α角)が低減し、磁束密度が上昇し、磁気特性が安
定化することを見出した。上記構成を有する本発明は本
願発明者らのこのような知見に基づきなされたものであ
る。
【0011】以下、本発明について詳細に説明する。ま
ず、化学成分の限定理由について説明する。Cは製鋼段
階でできるだけ低減しておくことが磁気特性上好まし
い。Cが0.01wt%を超えると磁気特性が著しく劣
化する。このためCの上限を0.01wt%に規定す
る。
【0012】Siは、電気抵抗を高める作用と、2.5
wt%以上の含有により金属学的変態点をなくし鋼をα
単相にする作用を有している。また、6.5wt%付近
では磁歪がゼロとなるため極めて優れた軟磁気特性が得
られる。しかし、7wt%を超えると磁歪が再び増大し
磁気特性が悪化するとともに、極めて脆くなるため実用
的ではない。このためSiの含有量を2.5〜7wt%
の範囲に規定する。
【0013】S,Nは通常の鋼中に含まれる代表的な元
素であるが、これらの元素は、固溶した状態でも析出物
の形態を採った状態でも粒成長性を阻害するため、でき
る限り低減することが好ましい。但し、製鋼段階で極端
な低減を行うとコスト増の原因となるため、粒成長性を
阻害しない範囲としてこれらの含有量の上限をそれぞれ
0.01wt%に規定する。
【0014】Alはα鉄への固溶度が広く、かつ酸素と
の親和力が強い元素である。従って、最終的な熱処理に
よりGoss組織を形成する際に、熱処理雰囲気中の微量酸
素と反応して鋼板表面に酸化物層を形成してしまうた
め、表面エネルギーによる結晶粒成長が阻害されてしま
う。このため、Alの含有量をこのような不都合が生じ
ない0.01wt%以下に規定する。Al含有量のさら
に好ましい範囲は0.005wt%以下である。Alは
脱酸剤として通常添加されるものであるため、特に厳密
に制御する必要がある。
【0015】Cuはα鉄への固溶度が小さな元素であ
り、最終的な熱処理によりGoss組織を形成する際の結晶
粒成長を著しく阻害する元素である。また、Cuは製鋼
段階で0.05wt%程度含有される。従って、その含
有量を上述のような不都合が生じない0.01wt%以
下に減じることが好ましく、0.005wt%以下にす
ることが一層好ましい。ただし、Cuは融点が1083
℃であり、1000℃程度以上の熱処理により揮発する
成分であるため、0.01wt%よりも多く含有されて
いても比較的長時間の熱処理により0.01wt%以下
にすることが可能である。しかし、工程の効率化の観点
からは熱処理時間の延長は好ましくない。
【0016】これら元素以外の不可避不純物元素は通常
の鋼に含有される程度の量は許容される。しかし、磁気
特性等をより向上させる観点からは少ないほうが好まし
い。特に、α鉄への固溶度が低いSn等は、Cuと同様
に最終的な熱処理によりGoss組織を形成する際の結晶粒
成長を著しく阻害するので、その含有量が0.01wt
%以下、好ましくは0.005wt%以下になるように
注意する必要がある。また、α鉄への固溶度が広く、か
つ酸素との親和力が強いV,Zn等は、Alと同様に表
面エネルギーによる結晶粒成長を阻害する作用を有する
ため、その含有量が0.01wt%以下、好ましくは
0.005wt%以下になるように注意する必要があ
る。さらに、鋼中のOは3次再結晶挙動に影響を与える
ため、極力低いことが望ましく0.008wt%以下で
あることが好ましい。
【0017】このようにして溶解された鋼は、インゴッ
トに鋳造されるか或いは連続鋳造法によりスラブとさ
れ、次いで、このインゴット又はスラブは1000℃以
上の温度に保持され、熱間圧延に供される。熱間圧延前
の保持温度を1000℃以上に規定したのは、粗圧延機
あるいは仕上げ熱間圧延機前段での熱延中の再結晶の促
進と、700〜950℃の熱延仕上げ温度を確保するた
めである。なお、熱間圧延は、インゴット又はスラブを
加熱炉にて1000℃以上に加熱してから行ってもよい
し、直接圧延により連続鋳造の後スラブ温度を1000
℃以上に保持したまま行ってもよい。
【0018】また、熱間圧延の仕上温度は700〜95
0℃の範囲であることが必要である。仕上温度が700
℃未満では熱間圧延の圧延負荷が大きくなり過ぎ製造上
好ましくない上に、最終的なGoss粒の成長にも悪影響を
及ぼす。また、仕上温度を950℃超にするにはインゴ
ット又はスラブの初期温度を高目に設定する必要があ
り、製造コスト上不利となる。
【0019】熱延板の板厚は最終製品の所望板厚によっ
て異なるが、概ね1.6mm程度から5.0mm程度と
なる。このようにして製造された熱延板は常法に従って
巻き取られるが、その巻取温度は560〜800℃とす
ることが好ましい。巻取温度が560℃未満では、熱延
終了後のランアウトテーブル上での冷却が実際上困難で
あるため実用性に欠け、一方、巻取温度が800℃を超
えると、巻取冷却中の表面酸化により酸洗性が悪化し、
実用的ではない。
【0020】なお、巻き取られた熱延コイルを、必要に
応じて連続炉或いはバッチ炉で熱延板焼鈍してもよい。
このときの熱延板焼鈍温度は700〜1100℃である
ことが好ましい。熱延板焼鈍温度が700℃未満では、
熱延時に形成された加工組織を消滅させることができな
いため、その効果が実質的に現われず、一方、熱延板焼
鈍温度が1100℃を超えると、操業上のコスト高の原
因となるために実用上問題となる。
【0021】このようにして作製された熱延板は常法に
従って一次冷間(又は温間)圧延される。このときの圧
下率は60〜90%とする。圧下率が60%未満の場合
には、熱延中心部に存在する(100)<011>集合
組織が、冷間圧延(温間)−焼鈍後にも残存するため
に、最終焼鈍後の磁気特性(磁束密度)が不十分なもの
となる。一方、圧下率が90%を超えると、圧延機の負
荷が大きくなり経済的に不利になる。なお、通常、冷間
圧延は潤滑材を使用するが、潤滑材を使用せず無潤滑で
圧延を行っても同様の効果が得られる。
【0022】一次冷間圧延又は温間圧延が施された板は
700〜1000℃の温度で焼鈍(一次焼鈍)される。
焼鈍温度が700℃未満では、焼鈍による完全再結晶を
行わせることが困難である。一方、焼鈍温度が1000
℃を超えると、再結晶は達成されるが、焼鈍コストが不
可避的に高くなってしまう。また、短時間で再結晶を行
わせ、かつ経済性をも確保するには、特に700〜80
0℃の温度で焼鈍することが好ましい。この焼鈍では、
鋼板表面が若干酸化されたとしても、後に行われる冷間
圧延前の酸洗によりその除去が可能であるため、三次焼
鈍(最終焼鈍)時の結晶方位のGoss方位への集積を確保
するという面では大きな問題はない。しかし、酸化膜を
過度に生成しないようにするという観点から、極力酸素
分圧の低い非酸化性雰囲気または真空中で行うことが好
ましい。また、焼鈍時間は通常2分以上であれば問題は
ない。このような焼鈍処理は箱型炉によるバッチ焼鈍又
は連続焼鈍にて実施することができる。
【0023】焼鈍処理における加熱条件は、連続焼鈍で
は加熱速度200〜500℃/分、保持時間が2〜5分
間程度が適当であり、バッチ焼鈍では加熱速度4〜20
℃/分、保持時間が1〜10時間が適当である。冷却速
度は、熱収縮による歪みが鋼板内に残留しない限りにお
いて、通常採用される冷却速度で構わない。例えば、6
00℃まで13.5℃/秒、300℃まで12℃/秒の
冷却速度が採用される。
【0024】上記一次焼鈍が施された鋼板は、圧下率4
0〜80%で二次冷間(又は温間)圧延される。圧下率
が40%未満あるいは80%超では、後述する二次焼鈍
後の再結晶粒が均一な細粒にならず、最終的なGOSS 粒
の集積が十分でない。この冷間圧延は、一次冷間圧延と
同様、無潤滑、潤滑のいずれでも実施可能である。
【0025】このようにして一次冷間圧延又は温間圧延
が施された板は、再び700〜1000℃の温度で焼鈍
される(二次焼鈍)。焼鈍温度が700℃未満では、焼
鈍による完全再結晶を行わせることが困難である。一
方、焼鈍温度が1000℃を超えると、再結晶は達成さ
れるが、焼鈍コストが不可避的に高くなってしまう。ま
た、短時間で再結晶を行わせ、かつ経済性をも確保する
には、特に700〜800℃の温度で焼鈍することが好
ましい。この二次焼鈍でも一次焼鈍と同様の理由で鋼板
表面の若干の酸化が許容されるが、この場合も酸化膜を
過度に生成しないようにするという観点から、極力酸素
分圧の低い非酸化性雰囲気または真空中で行うことが好
ましい。この二次焼鈍時間も一次焼鈍と同様に通常2分
以上であれば問題はなく、また箱型炉によるバッチ焼鈍
又は連続焼鈍にて実施することができる。
【0026】なお、一次冷間(又は温間)圧延及び二次
冷間(又は温間)圧延の後に夫々実施される上述のよう
な中間焼鈍の温度は、後述する三次焼鈍後の鋼板の磁束
密度特性に影響を与える。従って、中間焼鈍としての一
次焼鈍及び二次焼鈍の温度を適切に規定する必要があ
る。
【0027】二次焼鈍が施された鋼板は、さらに圧下率
50〜90%で三次冷間(又は温間)圧延される。圧下
率が50%未満では最終焼鈍後の磁気特性(磁束密度)
が不足し、90%を超えると圧延機の負荷が大きく経済
的に不利となる。この場合の冷間圧延も、一次および二
次冷間圧延と同様、無潤滑、潤滑のいずれでも実施可能
である。
【0028】このようにして二次冷間圧延又は温間圧延
が施された板は、さらに1000〜1300℃の温度で
焼鈍される(三次焼鈍)。これにより表面エネルギーを
利用した結晶粒成長が生じ、Goss粒が成長する。焼鈍温
度が1000℃未満では、表面エネルギーを利用した結
晶粒成長の駆動力が十分でないため所望のGoss組織を得
ることはできない。一方、焼鈍温度が1300℃を超え
ると、実質的にこのような高温加熱のために必要なエネ
ルギーコストが大きくなり過ぎ、実用上の問題を生じ
る。
【0029】この三次焼鈍は、水素が必要量以上含まれ
ている実質的に還元性を有する雰囲気中か、実質的に窒
素、Ar等の不活性ガスを主体とし酸素分圧が0.5P
a以下の非酸化性雰囲気又は酸素分圧が0.5Pa以下
の真空中で行う必要がある。これは、結晶方位のGoss方
位への集積を阻害する鋼板表面に対する酸化膜の形成を
防止するためである。真空雰囲気中又は不活性ガス雰囲
気中に酸素分圧が0.5Paを超える程度に酸素が含有
される場合には、鋼板表面に酸化膜が形成され、上記の
ような効果は得られない。焼鈍時間は3分以上である
が、長時間焼鈍すればより安定したGoss組織が形成され
る。
【0030】なお、上述の温間圧延は約200〜400
℃で行う圧延をいう。本発明においては、上述した一次
乃至三次の3回の冷間圧延又は温間圧延の際に、10k
g/mm2 以上の張力を付加する。これにより、方向性
珪素鋼板の磁束密度を上昇させることができ、3%Si
の組成の場合に、その値を1.9T以上と十分に高い値
とすることができる。これは、本願発明者らの実験によ
り初めて明らかになったことである。従来は、本発明の
ように、磁束密度を向上させるために、圧延時に付加す
る張力を厳密に規定することは全く行われておらず、そ
の際の張力は、圧延速度、1パス当たりの圧下量、材料
の機械的性質により自ずから決定されるに過ぎなかっ
た。
【0031】以下、その際の本願発明者らの実験結果を
示す。2.5mm厚の3%Si熱延鋼板にリーダー材を
取付け、レーバースミルを用いて1回目の冷間圧延で圧
延付加張力の水準を変えつつ0.5mm厚とした。次に
800℃×2分間の中間焼鈍(一次焼鈍)を行い、2回
目の圧延で同様に張力を変化させつつ0.3mm厚とし
た。その後、再び800℃×2分間の中間焼鈍(二次焼
鈍)を行い、3回目の圧延で同様に張力を変化させつつ
0.1mm厚まで圧延した。各冷延板より幅15mm×
長さ200mmのサンプルを切り出し、これらに対して
水素中で1200℃×10分間の最終焼鈍を施した。こ
のようにして得られたサンプルについて、直流単板磁気
測定装置にてB8 (H=800A/mのときの磁束密
度)特性を評価した。各冷間圧延時の張力と最終焼鈍後
の磁気特性との関係を図1〜3に示す。なお、ここにお
ける磁気特性は20サンプルの平均値である。
【0032】これらの図のうち、図1は1回目の冷間圧
延張力と磁気特性との関係を示し、この際の2回目及び
3回目の圧延張力は20kg/mm2 とした。また、図
2は1回目及び3回目の圧延張力が20kg/mm2
場合の2回目の冷間圧延張力と磁気特性との関係を示
す。さらに、図3は、1回目及び2回目の圧延張力が2
0kg/mm2 の場合の3回目の冷間圧延張力と磁気特
性との関係を示す。
【0033】これらの図から明らかなように、いずれも
付加張力10kg/mm2 以上で著しい磁束密度の上昇
が認められる。ただし、3%Si鋼の引張強度(抗張
力)は50kg/mm2 程度であり、これ以上の張力を付
加するとコイルが破断してしまうため、冷間圧延時の付
加張力の上限値は自ずと50kg/mm2 程度に定まる。
【0034】Si量が4%を超えると、引張強度は著し
く高くなり、伸びは低下する。例えば、6.5%Si鋼
の場合、室温での引張強度は80kg/mm2 、伸びは
3%程度になる。この場合には、安定的な圧延性を確保
するために、200〜400℃の範囲内で温間圧延を行
う。この場合には、磁気特性向上のために必要な圧延付
加張力は10〜60kg/mm2 になる。
【0035】また、図4に同一製造条件のサンプル間で
の磁気特性のばらつきを示す。図4は20サンプルの磁
束密度特性のばらつきと1回目の付加張力との関係を示
すものであり、2回目及び3回目の圧延張力は20kg
/mm2 である。この図から明らかなように、圧延付加
張力が10kg/mm2 以上になると磁気特性が安定化
することが分かる。この傾向は、2回目、3回目の圧延
の圧延付加張力についても同様である。
【0036】このように圧延時の張力付与による磁束密
度が上昇し、しかもその値が安定する理由は、以下のよ
うに推定される。圧延と熱処理との組み合わせにより最
終焼鈍において(110)[001]に結晶を配向させ
る過程において、途中段階では(110)[001]結
晶粒はマイナーコンポーネント(非常に弱い成分)であ
り、この結晶の核は圧延後の{111}<112>マト
リックスより発生すると考えられる。各段階の圧延によ
る再結晶集合組織は、主方位{111}<112>と弱
い(110)[001]とが発生する。圧延時に一定の
張力を付与すると、各結晶粒が塑性変形するときのすべ
り方向<111>が圧延方向に安定して揃い、シャープ
な{111}<112>が形成される。従って、この
{111}<112>マトリックスから発生する(11
0)[001]粒も高くなると考えられる。なお、冷間
圧延用のミルは、タンデム、レバースいずれでも圧延時
に圧延素材に対して張力を付加することができる。
【0037】
【実施例】
[実施例1]重量%で、C:0.003%、Si:3.
2%、Mn:0.05%、P:0.001%、S:0.
001%、Al:0.003%、N:0.001%、C
u:0.002%、Ni:0.001%の含珪素スラブ
を加熱し、熱間仕上温度820℃、巻取温度600℃と
し、板厚2.8mmの熱延板を得た。この熱延板を酸洗
後、1回目の冷間圧延を圧下率82%で行った後、80
0℃×2分間の中間焼鈍(一次焼鈍)を施し、次いで2
回目の冷間圧延を圧下率40%で行い、さらに800℃
×2分間の中間焼鈍を施し、次いで3回目の冷間圧延を
圧下率67%で行った。そして、最後に100%水素雰
囲気中(露点−50℃)にて1200℃×10分間、連
続焼鈍(最終焼鈍)を施した。上記1〜3回目の冷間圧
延時には、表1に示す2〜30kg/mm2 の張力を付
加した。その際の、各圧延時の付加張力の値と磁束密度
とを表1に示す。なお、磁気特性は、幅15mm×長さ
100mmの短冊状試料により、直流磁気特性測定器を
用いて測定した。
【0038】
【表1】
【0039】表1から明らかなように、10kg/mm
2 以上の張力を付加することによりB8 特性が上昇し、
1.9T以上と高い値となることが確認された。 [実施例2]重量%で、C:0.003%、Si:6.
5%、Mn:0.05%、P:0.001%、S:0.
001%、Al:0.003%、N:0.001%、C
u:0.002%、Ni:0.001%の含珪素スラブ
を加熱し、熱間仕上温度760℃、巻取温度560℃と
し、板厚2.5mmの熱延板を得た。この熱延板を酸洗
後、1回目の温間圧延(300℃)を圧下率82%で行
った後、800℃×2分間の中間焼鈍(一次焼鈍)を施
し、次いで2回目の温間圧延(300℃)を圧下率40
%で行い、さらに800℃×2分間の中間焼鈍を施し、
次いで3回目の温間圧延(200℃)を圧下率67%で
行った。そして、最後に100%水素雰囲気中(露点−
50℃)にて1200℃×10分間、連続焼鈍(最終焼
鈍)を施した。上記1〜3回目の冷間圧延時には、表2
に示す4〜30kg/mm2 の張力を付加した。その際
の、各圧延時の付加張力の値と磁束密度とを表2に示
す。なお、磁気特性は、実施例1と同様、幅15mm×
長さ100mmの短冊状試料により、直流磁気特性測定
器を用いて測定した。
【0040】
【表2】
【0041】表2から明らかなように、10kg/mm
2 以上の張力を付加することによりB8 特性が上昇し、
6.5%Siの組成としては高い値である1.62T以
上となることが確認された。 [実施例3]重量%で、C:0.003%、Si:3.
2%、Mn:0.05%、P:0.001%、S:0.
001%、Al:0.003%、N:0.001%、C
u:0.002%、Ni:0.001%の含珪素スラブ
を加熱し、熱間仕上温度820℃、巻取温度600℃と
し、板厚2.0〜3.0mmの熱延板を得た。酸洗後、
表3に示す種々の条件で、中間焼鈍を挟む3回の冷間圧
延により、0.05mm及び0.03mmの厚さの冷延
板を得た。そして、最後に100%水素雰囲気中(露点
−50℃)にて1200℃×10分間、連続焼鈍(最終
焼鈍)を施した。上記1〜3回目の冷間圧延時には、表
3に示す4〜20kg/mm2 の張力を付加した。
【0042】
【表3】
【0043】その際の、各圧延時の付加張力の値と磁束
密度とを表4に示す。なお、磁気特性は、幅30mm×
長さ280mmの短冊状試料により、直流磁気特性測定
器を用いて測定した。
【0044】
【表4】
【0045】表4から明らかなように、10kg/mm
2 以上の張力を付加することにより、製造条件によらず
8 特性が上昇し、1.9T以上と高い値となることが
確認された。
【0046】
【発明の効果】この発明によれば、冷間(又は温間)圧
延時に10kg/mm2 以上の張力を付加することによ
り、工程を繁雑化することなく、安定して高い磁束密度
を有する板厚0.03〜0.2mmの薄手方向性珪素鋼
板を製造する方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】一次圧延時の付加張力と磁束密度B8 との関係
を示す図。
【図2】二次圧延時の付加張力と磁束密度B8 との関係
を示す図。
【図3】三次圧延時の付加張力と磁束密度B8 との関係
を示す図。
【図4】同一製造条件のサンプル間での磁気特性のばら
つきを示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 日裏 昭 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 田中 靖 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.01wt%以下、Si:2.5
    〜7wt%、S:0.01wt%以下、Al:0.01
    wt%以下、N:0.01wt%以下、Cu:0.01
    wt%以下を含む鋼材を準備し、この鋼材を1000℃
    以上に保持した後、仕上温度が700〜950℃になる
    ような熱間圧延を施し、次いで、圧下率60〜90%の
    一次冷間又は温間圧延を施した後、700〜1000℃
    の温度で焼鈍し、さらに圧下率40〜80%の二次冷間
    又は温間圧延を施し、その後700〜1000℃の温度
    で焼鈍し、さらに圧下率50〜90%の三次冷間又は温
    間圧延を施した後、還元性雰囲気若しくは酸素分圧が
    0.5Pa以下の非酸化性雰囲気、又は酸素分圧が0.
    5Pa以下の真空中において1000〜1300℃の温
    度で焼鈍して厚さ0.03〜0.2mmの薄手珪素鋼板
    の製造するに際し、前記一次乃至三次冷間圧延又は温間
    圧延において10kg/mm2 以上の張力を付加するこ
    とを特徴とする磁束密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製
    造方法。
JP5161160A 1993-06-30 1993-06-30 磁束密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製造方法 Pending JPH0776730A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP5161160A JPH0776730A (ja) 1993-06-30 1993-06-30 磁束密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP5161160A JPH0776730A (ja) 1993-06-30 1993-06-30 磁束密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH0776730A true JPH0776730A (ja) 1995-03-20

Family

ID=15729741

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP5161160A Pending JPH0776730A (ja) 1993-06-30 1993-06-30 磁束密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0776730A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013095006A1 (ko) * 2011-12-20 2013-06-27 주식회사 포스코 생산성 및 자기적 성질이 우수한 고규소 강판 및 그 제조방법

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013095006A1 (ko) * 2011-12-20 2013-06-27 주식회사 포스코 생산성 및 자기적 성질이 우수한 고규소 강판 및 그 제조방법
US10134513B2 (en) 2011-12-20 2018-11-20 Posco High silicon steel sheet having excellent productivity and magnetic properties and method for manufacturing same

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5139582A (en) Method of manufacturing an oriented silicon steel sheet having improved magnetic characeristics
JP4029523B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP4206665B2 (ja) 磁気特性および被膜特性の優れた方向性電磁鋼板の製造方法
JPH11229096A (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
US5261971A (en) Process for preparation of grain-oriented electrical steel sheet having superior magnetic properties
JP3508436B2 (ja) 歪取焼鈍後の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板
JP3331401B2 (ja) 全周磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板の製造方法
JP4281119B2 (ja) 電磁鋼板の製造方法
JP2871308B2 (ja) Goss方位に集積した結晶方位を有する方向性珪素鋼板の製造方法
JP2888226B2 (ja) 鉄損の低い無方向性電磁鋼板
JPH0776730A (ja) 磁束密度の高い薄手方向性珪素鋼板の製造方法
JP2647323B2 (ja) 低い鉄損をもつ一方向性電磁鋼板の製造方法
JPH05186831A (ja) Goss方位に集積した結晶方位を有する方向性珪素鋼板の製造方法
JPH08279408A (ja) 磁気特性が優れた一方向性電磁鋼板の製造方法
JP2521586B2 (ja) 磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法
JPH07197126A (ja) 磁束密度の高い方向性珪素鋼板の製造方法
JP2750238B2 (ja) Goss方位に集積した結晶方位を有する方向性珪素鋼板の製造方法
JP3271655B2 (ja) けい素鋼板の製造方法およびけい素鋼板
JP2001158914A (ja) 二方向性珪素鋼板の製造方法
JP3067896B2 (ja) 一方向性電磁鋼板用薄鋳片の製造方法
JPH04337050A (ja) 磁気特性の優れた高抗張力磁性材料およびその製造方法
JPH07331331A (ja) 磁気特性が極めて優れた無方向性珪素鋼板の製造方法
JP2758543B2 (ja) 磁気特性に優れた方向性けい素鋼板の製造方法
JPH0776733A (ja) 磁束密度の高い方向性珪素鋼板の製造方法
JPH08199242A (ja) 優れた磁気特性を有する方向性珪素鋼板の製造方法