JPH077053Y2 - 転削工具の切屑排出装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この考案は、例えば正面フライス等、主として平面切削
に用いられる転削工具に係り、詳しくは切削に伴って生
成される切屑を逐次処理できる転削工具の切屑排出装置
に関する。

［従来の技術］ 被削材の平面加工に用いられる転削工具の一例として、
従来より、第６図ないし第８図に示す正面フライスが知
られている。

これらの図に示すように、この正面フライスは、略円筒
状をなすカツタ本体１の先端外周部に、該カツタ本体１
の先端面及び外周面に向けて開口する凹溝２が周方向等
間隔に複数形成され、これら凹溝２内に、スローアウエ
イチツプ（以下、チツプと略称する。）３が、クランプ
ネジ４で締め込まれる楔部材５によって着脱自在に装着
される一方で、各チツプ３のすくい面3aと向かい合うカ
ツタ本体１の外周面に、壁面円弧状をなすチツプポケツ
ト６が形成され、さらにカツタ本体１の中心に該カツタ
本体１を軸線方向に貫く中心孔７が形成されてなるもの
である。

このように構成された正面フライスは、機械本体の主軸
８にキー９を介して取り付けられたアーバ10の嵌合軸11
に中心孔７が嵌合された上で締付けボルト12により締結
されて主軸８と一体化される。そしてこの状態で、カツ
タ本体１が主軸８によって軸線回りに回転せしめられる
と共に軸線と直交する方向に送られて、チツプ３が被削
材を平面加工してゆくようになっており、このとき生成
される切屑は、すくい面3aからチツプポケツト６の壁面
に誘導されて丸め込まれた上でカツタ本体１の周方向外
方へ排出される。

［考案が解決しようとする課題］ ところで、上述した従来の正面フライスは、生成される
切屑を単にその周方向外方へ誘導排出するのみであるた
め、カツタ本体１の回転に伴って切屑が機械周囲へと広
く飛散し、この結果作業環境が悪化するのみならず、と
きとして作業に危険性が生じ、また、切削終了後の切屑
処理にも相当の時間を要するという欠点があった。

また、切削を継続するにつれて切屑が被削材や機械のテ
ーブル等に徐々に堆積してゆくため、これら切屑の熱に
よって被削材や機械に熱変形が生じて加工精度が劣化し
たり、あるいはチツプ３に切屑が噛み込まれて切削面の
品位が損なわれる欠点もあった。

さらに、機械の周囲に飛散した切屑が機械の摺動面等に
入り込んで、機械自身の精度劣化や寿命低下を招くおそ
れもあった。

この考案は、このような背景の下になされたもので、切
削に伴って生成される切屑を周囲に飛散させることなく
処理できる転削工具の切屑排出装置を提供することを目
的とする。

［課題を解決するための手段］ 上記課題を解決するために、この考案の転削工具の切屑
排出装置は、カッタ本体の先端外周部に切刃チップが取
り付けられ、その回転方向前方にチップポケットが形成
されると共に、カッタ本体の周面外方に、カッタ本体を
覆い且つその内周面とカッタ本体の外周面との間に切屑
収納室が形成された略円筒状の切屑収納体が配設されて
なる転削工具の切屑排出装置において、 切屑収納室と吸引機とを連通させる吸引口が、切屑収納
体の周方向に間隔をおいて複数配設され、チップポケッ
トの先端側開口部と外周側開口部の先端領域とを覆っ
て、切刃チップのすくい面との間に隙間を形成する切屑
案内部材が配設されていることを特徴とするものであ
る。

［作用］ 上記構成によれば、切刃チップのすくい面沿いに生成さ
れる切屑が、すくい面と対向する切屑案内部材によって
切屑収納室に誘導排出される。このため、カツタ本体の
回転に対して切屑収納体の回転を規制した上で、その周
面に形成された複数の吸引口から切屑収納室内の切屑を
逐次吸引することにより、切屑を機械周囲に飛散させる
ことなく逐次回収できる。

この場合、吸引口が切屑収納体の周方向に間隔をおいて
複数設けられているため、切屑収納室内の吸引口に臨む
位置から吸引口と最も離れた位置までの距離は、吸引口
を１箇所のみ設ける場合に比して短くなる。このため吸
引口から最も離れた位置における吸引力の低下が小さく
なり、特に周長さの長い大径工具でも十分な吸引力が得
られ、しかも隙間に作用する吸引力を格段に大きくでき
て切屑の誘導を確実にできる。

［実施例］ 以下、第１図ないし第３図を参照して、本考案の一実施
例を説明する。

第１図ないし第３図において符号13はカツタ本体であ
る。このカツタ本体13は、その中心部に該カツタ本体13
を軸線方向に貫く中心孔14が形成されると共に、その先
端部が拡径された略円筒体であり、上記中心孔14が、機
械本体の主軸15にキー16を介して取り付けられたアーバ
17の嵌合軸18に嵌合され、また基端側に形成されたキー
溝13aがアーバ17に固定された駆動キー19と係合された
状態で、上記アーバ17の中心に捩込まれる締付けボルト
20で軸線方向に押さえ込まれてアーバ17と連結されるよ
うになっている。

第２図及び第３図に示すように、カツタ本体13の先端外
周部には、該カツタ本体13の先端面及び外周面に向かっ
て開口する複数の凹溝21が、周方向に等間隔に形成され
ている。そして、これら凹溝21には、平板状をなすスロ
ーアウエイチツプ（以下、チツプと略称する。）22が、
クランプネジ23で締込まれる楔部材24によって着脱自在
に装着されており、各々のすくい面22aの稜線部に形成
された切刃25の一つはカツタ本体13の先端面より僅かに
突出されている。また、上記カツタ本体13周面のチツプ
すくい面22aと対向する位置には、壁面円弧状をなすチ
ツプポケツト26が形成されている。

また、第１図及び第２図に示すように、カツタ本体13の
周面外方には、略円筒状をなす切屑収納体27が配設され
ている。この切屑収納体27は、その基端側に形成された
嵌合穴27aが、上記アーバ17の拡径部17aに嵌装されて止
め輪28で係止されたラジアル軸受29と嵌合されると共
に、上記ラジアル軸受29の反対側に嵌合されたベアリン
グ押さえ30とボルト31で連結されてカツタ本体13に対し
て回転自在に支持されている。

そして、切屑収納体27の先端は、カツタ本体13の径方向
外方に突出するチツプ22の切刃25のほぼ中間位置まで延
長され、その内径は上記切刃25のカツタ本体13軸線を中
心とする旋回径より僅かに大きく定められている。さら
に、上記先端部に続く中間部の内径は上記先端部よりも
拡径され、その内周面とカツタ本体13の径方向内方に縮
径されたカツタ本体13の基端側外周面との間には切屑収
納室32が形成されている。

また、切屑収納体27の外周面には２つの吸引口33が配設
されている。これら吸引口33は、切屑収納体27の外周面
を周方向に２等分する位置に配設されており、それぞれ
の一端が上記切屑収納体27の中間部に嵌合されると共
に、各々の外周には図示せぬ吸引機の吸引ホース34が嵌
め込まれ、これにより切屑収納室32は吸引ホース34を介
して吸引機と連通され、また、切屑収納体27は吸引ホー
ス34に拘束されて回転が阻止されるようになっている。

さらに、第１図ないし第３図に示すようにカツタ本体13
の先端面には切屑案内部材35が皿ねじ36によって取り付
けられている。この切屑案内部材35は、薄いリング状を
なす取付部37の周縁に上記チツプポケツト26を覆う切屑
案内部38を周方向等間隔に形成してなるもので、その表
面がカツタ本体13の先端面と略面一をなすように軸方向
に位置決めされると共に、各切屑案内部38のチツプすく
い面22aと対向する端面38aと上記すくい面22aとの間に
隙間ｔが生じるように周方向に位置決めされ、チツプ22
のすくい面22aに沿って生成される切屑を隙間ｔからチ
ツプポケツト26内に誘導するようになっている。しか
も、切屑案内部38は、第２図及び第３図に示すように、
チップポケット26の先端側開口部と外周側開口部の先端
領域とを覆って、チップ22のすくい面22aとの間で隙間
ｔを形成している。

また、切屑収納部38の先端部裏面には、上記端面38aか
らチツプポケツト26の壁面に向かって延びる溝部38bが
形成され、上記隙間ｔに導かれた切屑の詰まりを防止し
て、切屑を滞りなくチツプポケツト26に排出させる配慮
がなされている。

以上のように構成された正面フライスにあっては、カツ
タ本体13がアーバ17を介して主軸15と連結され、この後
カツタ本体13が軸線回りに回転せしめられると共に軸線
と直交する方向に送り出され、これに伴ってチツプ22の
切刃25が被削材を切削してゆく。

このとき、チツプ22の切刃25からすくい面22aに沿って
生成される切屑は、切屑案内部材35の端面38aとすくい
面22aとの間の隙間ｔを通過してチツプポケツト26に導
かれ、該チツプポケツト26によって丸め込まれて分断さ
れた上で切屑収納室32に排出される。そして、切屑収納
室32内に排出された切屑は、各吸引口33と吸引ホース34
を介して連結された吸引機の吸引作用により、吸引口33
から排出されて吸引機に回収される。

以上のように、本実施例の正面フライスによれば、切削
時に生成される切屑が切屑案内部材35によって切屑収納
室32に逐次誘導され、さらには吸引口33から吸引ホース
34を介して吸引機に吸引回収されるため、切屑が機械周
囲に飛散することがなく、作業環境が大幅に改善される
と共に切屑処理に要する時間も大幅に短縮されるという
効果が得られる。また、被削材や機械本体のテーブル等
に切削が堆積することもないので、被削材や機械の熱変
形により加工精度の劣化や切屑の噛み込みに伴う切削面
品位の劣化も生じず、さらには、機械本体の摺動面等へ
の切屑の侵入も無くなり機械本体の精度や寿命の低下も
防止される。

加えて、本実施例では２つの吸引口33を切屑収納体27の
周面を周方向２等分する位置に設けたため、特に大径工
具において吸引口33を一過所のみ設ける場合に比して、
切屑処理能力が向上するという効果が得られる。

すなわち、吸引口33から切屑収納室32内の空気を吸引し
て切屑を回収する場合、切屑収納室32の各部に作用する
吸引力は、吸引口33から離れるにつれて次第に弱くなる
傾向がある。このため、特に直径250mm以上の大径工具
にあっては、吸引口33が一箇所のみでは切屑収納室32内
の吸引口33近傍から最も離れた位置での吸引力が極めて
小さくなり、切屑の円滑な回収が不可能となるおそれが
ある。ところが、本実施例の転削工具では、２つの吸引
口33が切屑収納体27を周方向に２等分する位置に設けら
れているため、各吸引口33の近傍から最も離れた位置ま
での距離が大幅に短縮される。このため、切屑収納室32
の吸引口33から最も離れた位置でも十分な吸引力が作用
して切屑は常に円滑に回収されるのである。

なお、本実施例では、特に吸引口33を２本設けた場合に
ついて説明したが、本考案の転削工具はこれに限るもの
でなく、吸引口33の本数は工具径に応じて最適な本数が
選択される。その目安としては、工具の直径が500mm未
満の範囲では吸引口33の本数は２ないし３本で十分であ
り、工具の直径が500mm以上の場合には少なくとも４本
以上設けることが好ましい。

また、このように３本以上の吸引口33を設ける場合の各
吸引口33の配置については、第４図に３本の場合を例示
するように、カツタ本体13の回転方向Ａに沿って吸引口
33を等間隔を配置することが一般的である。しかしなが
ら、第５図に示すように、特にカツタ本体13の送り方向
Ｂが一方向に限定されている場合には、送り方向Ｂに対
して前方側に位置するチツプ22でのみ切削が行われ、送
り方向Ｂの後方側に位置するチツプ22は切削に関与しな
いことから、吸引口33を送り方向Ｂの前方側に集中的に
配置すれば、切屑が生成される範囲により強い吸引力が
作用して切屑処理能力がより一層向上する。

また、本実施例では、切屑収納体27の先端部内周面とカ
ツタ本体13の周面外方に突出するチツプ22の切刃25との
径方向の隙間量について特に規定していないが、この隙
間量があまりに小さいと切屑収納体27の偏芯等によって
切刃25が食い込むおそれがあるため、少なくとも0.5mm
以上は確保することが望ましい。また、逆に隙間が過度
に大きいと切屑収納室32の密閉性が損なわれて吸引効率
の低下が免れないため、隙間は最大でも2mm以内、望ま
しくは1mm以内に規制する必要がある。

さらに、本実施例では特にカツタ本体13の先端にスロー
アウエイチツプ22を装着したいわゆるスローアウエイ式
の正面フライスについて説明したが、本考案の転削工具
はこれに限るものではなく、チツプをロウ付けした正面
フライスであっても当然に適用可能である。

さらにまた、上記実施例では切屑収納体27がアーバ17に
回転自在に支持されているが、本考案はこれに限るもの
ではない。例えば、切屑収納体27は機械本体の主軸周囲
に固定されたものでも良く、要するにカツタ本体13に対
して相対的に回転自在に設けられて、その吸引口33に吸
引ホース34を接続し得るものであれば良いのである。

［考案の効果］ 以上説明したように、この考案によれば、切削時に生成
される切屑が切屑吸引機構によって逐次回収されるた
め、機械周囲に切屑は一切飛散せず、作業環境が大幅に
改善されると共に切屑処理時間が大幅に短縮される。さ
らには、切屑の堆積による熱変形や切屑の噛み込みが無
くなると共に機械摺動面等への切屑の侵入も根絶され、
この結果、加工精度の劣化、切削面品位の劣化及び機械
寿命の低下が防止される。

加えて、この考案においては、吸引口が切屑収納体の周
方向に間隔をおいて複数配設されているため、各吸引口
から最も離れた場所での吸引力の低下が、吸引口を一箇
所のみ設ける場合に比して大幅に小さくなり、この結
果、周長さの長い大径工具であっても確実かつ円滑に切
屑を処理できるという効果が得られる。

しかも、吸引口を複数設けることと、チップポケットを
切屑案内部材で覆うようにしたことで、隙間に作用する
吸引力が極めて大きくなり、切屑の誘導、吸引能力が格
段に向上するという利点もある。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図は本考案の一実施例を示すもので、
第１図は軸方向断面図、第２図は底面図、第３図はカツ
タ本体の先端外周部の拡大図、第４図及び第５図は本考
案の変形例を示す底面図、第６図ないし第８図は従来の
正面フライスを示すもので、第６図は軸方向断面図、第
７図は底面図、第８図はカツタ本体の先端外周部の拡大
図である。 13……カツタ本体、22……スローアウエイチツプ、27…
…切屑収納体、32……切屑収納室、33……吸引口、37…
…切屑案内部材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】軸線回りに回転せしめられるカッタ本体の
   先端外周部に切刃チップが取り付けられ、その回転方向
   前方にチップポケットが形成されると共に、カッタ本体
   の周面外方に、該カッタ本体を覆い且つその内周面とカ
   ッタ本体の外周面との間に切屑収納室が形成された略円
   筒状の切屑収納体が配設されてなる転削工具の切屑排出
   装置において、 前記切屑収納室と吸引機とを連通させる吸引口が、切屑
   収納体の周方向に間隔をおいて複数配設され、 前記チップポケットの先端側開口部と外周側開口部の先
   端領域とを覆って、前記切刃チップのすくい面との間に
   隙間を形成する切屑案内部材が配設されていることを特
   徴とする転削工具の切屑排出装置。