JPH0768577B2 - 低温靭性の優れた大入熱溶接用鋼の製造方法 - Google Patents

低温靭性の優れた大入熱溶接用鋼の製造方法

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JPH0768577B2
JPH0768577B2 JP1073320A JP7332089A JPH0768577B2 JP H0768577 B2 JPH0768577 B2 JP H0768577B2 JP 1073320 A JP1073320 A JP 1073320A JP 7332089 A JP7332089 A JP 7332089A JP H0768577 B2 JPH0768577 B2 JP H0768577B2
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、低温靱性の優れた大入熱溶接用鋼の製造法に
関するものである。
(従来の技術) 近年のエネルギー需要の増大から、海洋における石油、
天然ガス等の開発が精力的に行なわれており、特に、よ
り豊富な石油資源を求めて、最近では、北海、北極海等
の寒冷地で巨大な海洋構造物が建設されている。
このような海洋構造物は、−30℃以下の低温にさらされ
るとともに、波浪の影響等による複雑な負荷応力条件の
もとで操業されるため、それに使用される鋼材に対して
は、優れた脆性破壊特性が要求される。
特に、母材よりも靱性が低下する溶接熱影響部の靱性
は、構造物の安全性に直接影響してくるため、衝撃試験
等により評価され、例えば、−60℃で3.5kgf・m以上の
衝撃値が要求される場合がある。
また、構造物の巨大化は、建設コストの増加をもたらす
ため、使用鋼材の高張力鋼化、例えば、降伏点が36kg/m
m2以上の鋼材を用いることによる上部構造物の軽量化や
大入熱溶接法の採用による溶接コストの削減等が図られ
ている。
このような鋼材を製造する方法として、例えば、特開昭
63-103021号公報で述べているように、成分元素を限定
した制御圧延、加速冷却法による製造が公知である。こ
のような従来技術は、通常の溶接入熱(50kJ/cm以下)
では、確かに溶接熱影響部の靱性が優れた鋼材を提供す
るものであるが、大入熱溶接においては、その効果は期
待できない。
溶接熱影響部の靱性を改善する技術としては、例えば、
特開昭60-245768号公報および特開昭60-152626号公報に
記載されているごとく、酸化物をフェライト変態核とし
て粒内フェライトを生成させることにより、溶接熱影響
部の靱性を向上せしめる技術などが提案されている。
しかしながら、これらの鋼では、鋳造工程で酸化物を均
一分散させるのが難かしく、安定した溶接熱影響部の靱
性を確保できない欠点があった。
(発明が解決しようとする課題) 本発明の目的は、上記した寒冷地、極地で使用される高
強度で優れた溶接熱影響部の靱性を有する海洋構造物用
鋼材の製造方法を提供するものである。
(課題を解決するための手段) 本発明は、以上の問題点を解決するためになされたもの
であって、その要旨は、(1)重量%として、C:0.02〜
0.3%、Si:0.3%以下、Mn:0.50〜2.50%、S:0.003〜0.0
08%、Al:0.005〜0.1%、Nb:0.003〜0.015%、Cu:0.2超
〜2.0%、Ni:0.2超〜4.5%、N:0.01%以下、および重量
%でTiとN比(Ti/N)が2.0〜4.0であるTiを含有し、
(2)更に、V:0.01〜0.2%、Mo:0.1〜1.0%、Cr:0.1〜
1.0%からなる強度改善元素群のうち1種または2種以
上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物から成る鋼を
連続鋳造し、その後の冷却速度が、1000℃〜600℃まで
の範囲で平均冷却速度が5.0℃/min以下であるような冷
却を施した後、圧延前に1150℃以下に加熱することを特
徴とする低温靱性の優れた大入熱溶接用鋼の製造方法に
関するものである。
(作用) 本発明者らは多くの実験事実に基づき、溶接時の冷却
過程で生成する粒内フェライトは、酸化物だけでなく、
TiNとMnSの複合析出物(以下、TiN-MnS複合析出物と呼
ぶ)からでも生成し、溶接熱影響部の靱性を向上させ
る、このTiN-MnS複合析出物は、連続鋳造後の冷却速
度を制御することで、析出させることができることを知
見した。
以下、上記の知見に基づき、本発明の骨子を説明する。
第1図は、TiN-MnSの析出物個数と入熱100kJ/cm相当の
溶接熱サイクルを付加した後の靱性変化である。
この時の試料の化学成分は以下の通りである。
この図から、TiN-MnS析出物が増加するに伴い溶接熱サ
イクル後の靱性が向上することが分かる。
さらに、第2図には、同じ供試材を用いて実験した時の
凝固後の1000〜600℃の範囲での平均冷却速度とTiN-MnS
複合析出物個数の関係を示すが、平均冷却速度が5.0℃/
s以下にすることで析出物の個数を著しく増加させるこ
とが出来ることが分かる。
以上の実験事実から、凝固後の冷却速度を制御すること
による、粒内フェライトの変態核となるTiN-MnS複合析
出物を増加させ、溶接熱影響部の靱性を向上させること
が出来ることが明らかになった。
なお、このようにして析出したTiN-MnS複合析出物は130
0℃以上の温度で加熱されると容易に溶解してしまうた
め、その後の熱間圧延前のスラブ加熱温度は低い方が好
ましく、望ましくは1150℃以下に加熱されるべきであ
る。
次に、本発明における成分の限定理由について述べる。
Cは、強度を確保するために必要な元素であり、強度確
保のために、0.02%以上の添加が必要であるが、多量の
添加は溶接熱影響部の靱性の低下を招くためその上限を
0.3%とする。
Siは多量に添加すると溶接熱影響部の靱性を阻害するた
め、その上限を0.3%とする。
Mnは強度確保のために0.5%以上添加する必要がある
が、多量に添加すると靱性の低下をきたすため、その上
限を2.5%とする。
Niは靱性、焼入れ性に有効な元素であると同時にCu添加
の際に問題となる熱間割れの軽減にも効果があり、0.2
%以下の添加ではその効果が認められず、また多量の添
加はNiが高価であるため、4.5%以下と限定する。
NはTiと化合して析出物を形成する重要な元素である
が、鋼中でフリーに存在すると溶接熱影響部の靱性低下
を招くため、その上限を0.010%とする。
Tiは本発明鋼にとって必須の元素であり、Nと化合して
TiNを析出し、MnSの析出核として働く。したがって、最
適なTiNを得るために、TiとNの量を制御する必要があ
る。すなわち、TiとNの重量比で2.0未満になるとN過
剰になり、溶接熱影響部の靱性の低下を招き、4.0を超
えるTi/Nでは、逆にTi過剰になりTiCが析出し、母材靱
性が低下する。
Nbは母材の強度、靱性を確保するために必要な元素であ
り、0.003%未満の添加では再結晶抑制効果がなくな
り、母材の靱性が低下し、逆に0.015%を超える添加で
は溶接熱影響部の靱性低下を招くため上記の範囲に限定
する。
Cuは強度の上昇に有効な元素であり、0.2%以下ではそ
の効果がなく、2.0%を超える添加では熱間加工の際に
割れを発生しかつ溶接性を阻害するため、0.2超〜2.0%
の範囲に限定する。
SはMnSの析出に重要な元素であって、第3図に示すよ
うに、0.003%未満の添加ではその析出が不十分になる
と共に、0.008%を超えて添加すると、MnSが多量に析出
し、かえって靱性を阻害するために、0.003〜0.008%の
範囲に限定する。この場合、0.003〜0.005%の範囲でさ
らに好ましい効果が得られる。
第3図の鋼のベース成分は0.05C−0.11Si−1.57Mn−0.0
05P−0.30Cu−0.30Ni−0.010Nb−0.008Ti−0.0030Nであ
る。
Alは脱酸のために必要な元素であって、0.005%以上の
添加が必要であるが、多量に添加すると靱性が著しく低
下するため、0.1%を上限とする。
本発明では、上記の基本成分系の他に、Cr,V,Moを1種
または2種以上添加する。これらの成分は鋼の強度を向
上させるという均等的作用を持つもので、所望の効果を
確保するためには、それぞれ含有下限量をCr:0.1%、V:
0.01%、Mo:0.1%とする必要がある。しかし、それぞれ
Cr:1.0%、V:0.2%、Mo:1.0%を超えて含有させると溶
接性、母材靱性を低下させるようになるため、上記の通
り限定する。
以上述べた成分を有する鋼を電気炉、転炉で溶製し、連
続鋳造機で鋳造した後、凝固後の冷却速度が1000〜600
℃の温度範囲で5.0℃/min以下であるような冷却を行
う。
溶接熱影響部の靱性を向上させるためには、TiN-MnS複
合析出物の個数密度を確保する必要があるが、そのため
にはMnSの析出核となるTiN析出物を微細分散させる必要
がある。
すなわち、従来知見から、凝固時(1500〜1200℃)の冷
却速度が速いほどTiN析出物が微細の分散をすることが
知られており、造塊分塊法よりも凝固時の冷却速度が速
い連続鋳造法を採用する。
このようにして析出したTiN析出物上に1000℃以下の温
度範囲でMnSが析出するが、溶接熱影響部の靱性改善に
効果のあるTiN-MnS複合析出物の生成には制約条件があ
り、冷却速度が5.0℃/minを超えると適切なTiN-MnS複合
析出物の生成が不十分であり、溶接時の冷却途中に変態
して生成する粒内フェライトの析出核として作用せず、
溶接熱影響部の靱性向上は期待できない。
なお、冷却速度は遅いほど良いが、その上限は連続鋳造
機の性能によって制約される。
その後、熱間圧延のために再加熱を施すが、その時の温
度は、母材の強度、靱性を確保するためと前述した熱処
理によりTiN-MnS複合析出物の形態を変化させないため
に、1150℃以下にする必要がある。
なお、加熱後の圧延については、母材の強度、靱性の向
上を計るために、制御圧延を施したり、制御圧延後、水
冷しても何等TiN-MnS複合析出物に変化を与えることが
ないため、現在公知である製造方法を適宜選択して採用
できる。
(実施例) 供試材の化学成分を第2表に示す。
ここで、鋼A〜鋼Gは本発明に該当する成分系であり、
鋼Hは本発明から逸脱している鋼である。
また、第3表には供試材の製造条件および母材の強度靱
性、溶接部の靱性値を合わせて示している。
これらの鋼板は転炉で溶製された後、連続鋳造機で、厚
み240mm、幅1600mmに鋳造された。その後、再加熱およ
び熱間圧延され、32mmの鋼板とし試験に供された。
なお、溶接熱影響部の靱性は、片面1層の潜弧溶接(入
熱:200kJ/cm)後、シャルピー衝撃試験により評価し
た。
第3表から、本発明により製造された鋼板(板番1,3,5,
6,7,8,10)は、母材、溶接熱影響部共に優れた靱性を示
していることが分かる。
これに対して、板番2および4は鋳造時の1000〜600℃
の平均冷却速度が大きく、溶接熱影響部の靱性が低下し
ている。板番9は圧延前のスラブ加熱温度が本発明から
逸脱しており、母材の靱性が低下している。板番11は、
成分範囲が本発明から逸脱しているものであるが、この
場合、製造条件が本発明の範囲内でも溶接熱影響部の靱
性の低下は免れない。
(本発明の効果) 以上述べたように、本発明によれば、大入熱溶接によっ
ても溶接熱影響部の低温靱性が安定して高水準の鋼材が
得られるため、産業上極めて有用なものである。
【図面の簡単な説明】
第1図はTiN-MnS複合析出物と溶接熱サイクル後の靱性
変化を示す図表、第2図は凝固時の1000〜600℃の温度
範囲における平均冷却速度とTiN-MnS複合析出物の個数
と関係を示す図表、第3図は入熱200kJ/cmにおける片面
1層潜弧溶接を行った時の溶接熱影響部の靱性と〔S〕
量の関係を示した図表である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭64−62201(JP,A) 特開 昭61−113715(JP,A) 特開 昭57−92129(JP,A) 特開 平1−180948(JP,A) 特開 平2−228447(JP,A) 特開 平2−220735(JP,A)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%として、 C :0.02〜0.3% Si:0.3%以下 Mn:0.50〜2.50% Ni:0.2超〜4.5% Nb:0.003〜0.015% Cu:0.2超〜2.0% N :0.01%以下 重量%でTiとN比(Ti/N)が2.0〜4.0であるようなTi、 Al:0.005〜0.1% S :0.003〜0.008% 残部Feおよび不可避的不純物から成る鋼を連続鋳造し、
    その後の冷却速度が、1000℃〜600℃までの範囲で平均
    冷却速度が5.0℃/min以下であるような冷却を施した
    後、圧延前に1150℃以下に加熱することを特徴とする低
    温靱性の優れた大入熱溶接用鋼の製造方法。
  2. 【請求項2】重量%として、 Cr:0.1〜1.0% V :0.01〜0.2% Mo:0.1〜1.0% からなる強度改善元素群のうちの1種または2種以上を
    更に含有し、残部Feおよび不可避的不純物から成る鋼で
    ある請求項1記載の低温靱性の優れた大入熱溶接用鋼の
    製造方法。
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