JPH0767358B2 - サフランの柱頭様組織の生産法 - Google Patents

サフランの柱頭様組織の生産法

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JPH0767358B2
JPH0767358B2 JP10875690A JP10875690A JPH0767358B2 JP H0767358 B2 JPH0767358 B2 JP H0767358B2 JP 10875690 A JP10875690 A JP 10875690A JP 10875690 A JP10875690 A JP 10875690A JP H0767358 B2 JPH0767358 B2 JP H0767358B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、アヤメ科植物サフラン(Crocus sativus
L.)の柱頭部より誘導したカルスより柱頭様組織を効率
よく再分化させ、大量生産する方法に関するものであ
る。
〔従来の技術〕 サフランの雌しべの柱頭は、クロシン、ピクロクロシ
ン、サフラナールなどを含み、食品着色料、芳香料及び
薬用として極めて重要である。サフランの栽培は、年一
回行われ開花した柱頭部を手で摘み取った後、乾燥させ
て商品としている。しかし、このような方法では、広大
な栽培面積と人手を必要とし、天候にも大きく影響さ
れ、品質も一定でない。
これらの問題点を解決する手段として、植物組織培養技
術の利用が考えられる。
サフランの雌しべを培養してカルスを誘導し、培養カル
スから柱頭様組織が再分化することを日本生薬学会1986
年(第33回)年会において、小山らにより報告がなされ
ている。また、特開昭63−240782号公報にも同様の報告
がなされている。これらは、ともにα−ナフタレン酢酸
(以下「NAA」という)及びN6−ベンジルアデニン(6
−ベンジルアミノプリン(BAP))(以下「BA」とい
う)を、前者ではそれぞれ10-5M〜5×10-5M(1.86〜9.
31mg/L)及び10-6M〜3×10-5M(0.225〜6.76mg/L)、
後者ではそれぞれ0.1〜10ppm(0.1〜10mg/L)及び5〜1
5ppm(5〜15mg/L)含有する培地で培養を行うものであ
る。
しかしながら、これらの技術において、柱頭様組織の再
分化効率は未だ充分なものとはいえない。更に、これら
の技術において、NAA、BAの濃度は培養中一定に保持さ
れており、培養過程において、これらの濃度を変化させ
る試みはなされておらず、何ら示唆すらされていない。
〔発明が解決しようとする課題〕
従来の柱頭部(柱頭、花柱、子房、花柄)培養方法で
は、大量の柱頭様組織が得られない。更にカルスを長年
継代培養することにより柱頭様組織は、再分化が困難と
なる。
本発明者らは、培地のNAA、BAそれぞれの濃度及び前培
養培地のNAA、BA濃度について検討し、継代培養したカ
ルスから効率よく柱頭様組織を再分化させる方法を見出
した。
〔課題を解決するための手段〕
本発明のサフランの柱頭様組織の生産法は、サフラン柱
頭部より誘導したカルスを、実質的にカルスのみを増殖
させるオーキシン及びサイトカイニン濃度に調製された
カルス増殖培地で培養し、次いで、培養後のカルスを、
実質的にオーキシン及びサイトカイニンを含有しないカ
ルス再分化培地で培養し、サフラン柱頭様組織に分化さ
せることを特徴とするものである。
なお、本発明において、「実質的にカルスのみを増殖さ
せるオーキシン及びサイトカイニン濃度」とは、用いる
オーキシン及びサイトカイニンの種類により異なるが、
オーキシンとしてα−ナフタレン酢酸を用いた場合であ
れば通常0.5〜100mg/L程度であり、サイトカイニンとし
てN6−ベンジルアデニンを用いた場合であれば通常0.5
〜50mg/L程度である。
また、本発明において、「実質的にオーキシン及びサイ
トカイニンを含有しない」とは、オーキシン及びサイト
カイニンを全く含有しないか、含有しても極めて微量で
あることを意味する。具体的な濃度は、用いるオーキシ
ン及びサイトカイニンの種類により異なるが、オーキシ
ンとしてα−ナフタレン酢酸を用いた場合であれば、全
く含有しないか又は0.5mg/L以下であり、サイトカイニ
ンとしてN6−ベンジルアデニンを用いた場合であれば、
全く含有しないか又は0.5mg/L以下である。
前記カルス増殖培地及びカルス再分化培地は、ともに通
常の無機成分及び炭素源を必須成分として、これに必要
に応じて、NAA、BA以外の植物ホルモン類、ビタミン類
を添加しうる培地である。前記の無機成分としては、窒
素、リン、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネ
シウム、イオウ、鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素、モリブ
デン、塩素、沃素、コバルト等の元素を含む無機塩が挙
げられ、具体的には、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、
硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウ
ム、燐酸一水素カリウム、燐酸二水素ナトリウム、硫酸
マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫
酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、モリブデン酸ナトリ
ウム、沃化カリウム、硫酸亜鉛、硼酸、塩化コバルト等
の化合物が挙げられる。
前記炭素源としては、ショ糖などの炭水化物とその誘導
体などが挙げられる。
前記NAA、BA以外の植物ホルモン類としては、例えば2,4
−ジクロロフェノキシ酢酸等のオーキシン類、及びカイ
ネチン、ゼアチン等のサイトカイニン類が挙げられる。
前記ビタミン類としては、チアミン、イノシトール、ピ
リドキシン、ニコチン酸、葉酸、ビオチン等が挙げられ
る。
また、前記両培地には、アミノ酸、例えば、グリシン、
アスパラギン、グルタミン、プロリン、セリン、リジン
等を添加してもよい。
本発明の前記両培地は、通常無機成分を0.1μMないし9
0mM、炭素源を10g/Lないし90g/L、ビタミン類を0.1mg/L
ないし1000mg/L及びアミノ酸類を0ないし1000mg/L含ま
せて使用することが望ましい。
本発明の組織培養に用いられる前記両培地としては、従
来から植物の組織培養に用いられている培地、例えばム
ラシゲ・スクーグ(Murashige & Skoog)の培地、リン
スマイヤー・スクーグ(Linsmaier & Skoog)の培地、
ホワイト(White)の培地、ガンボルグ(Gamborg)のB
−5培地、ニッチ・ニッチ(Nitsch & Nitsch)の培
地、チェンク・ヒルデブランド(Schenk & Hidebrand
t)(以下、「SH培地」という)等に前記した炭素源及
び植物ホルモンを添加し、更に必要に応じて前記ビタミ
ン類、アミノ酸類を添加して調製される培地であるが、
本発明では、このなかでもSHの培地を用いて調製される
培地に、植物ホルモンNAA0.5〜100mg/L、BA0.5〜50mg/L
の高濃度植物ホルモンを添加して7〜60日培養後、低濃
度のNAA(0〜0.5mg/L)、BA(0〜0.5mg/L)を添加し
たSH培地で培養することが好ましい。なお、上記した従
来公知の培地組織に関しては、例えば、山田康之著「植
物細胞培養マニュアル」p.6〜p.8、講談社サイエンティ
フィク、1984年に記載されている。
本発明で使用できる前記培地は、液体培地又は寒天或い
はゲルライトを通常0.2〜1%含有させた固形培地であ
る。
〔実施例〕
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、こ
れらの実施例は、本発明の範囲を何ら制限するものでは
ない。
実施例1 アヤメ科植物サフランの花柱より誘導したカルスを植物
ホルモン濃度NAA10mg/L、BA1mg/L、ショ糖3%、グリシ
ン3ppm、アスパラギン3ppm pH5.8に調整したSH培地で、
43日間暗所(22±2℃)培養後、NAA0〜10mg/LとBA0〜1
0mg/Lの組合わせを作成し、61日間SH培地で同様にして
培養した結果を第1表に示した。
NAA、BAを0.1mg/L以下で培養することにより柱頭様組織
を効率よく再分化させることができた。
実施例2 アヤメ科植物サフランの花柱より誘導したカルスを植物
ホルモン濃度NAA10mg/L、BA1mg/L、ショ糖3%、グリシ
ン3ppmアスパラギン3ppm pH5.8に調整したSH培地で、43
日間暗所(22±2℃)培養後、NAA0〜100mg/LとBA0〜10
0mg/Lの組合わせを作成し、41日間SH培地で培養後、NAA
0.075mg/L、BA0.075mg/Lを含んだSH(ゲランガム)培地
に移植し、41日間培養した結果を第2,3表に示した。
再分化本数は、前培養(増殖培地)の植物ホルモンBA濃
度に大きく影響され、BA濃度25〜50mg/Lまで再分化本数
を増大させた。BA100mg/Lでは、前培養である増殖培地
でカルスが死滅した。
再分化本数は、第2表と同様にBA100mg/Lでは、カルス
が死滅した。BA0〜100mg/Lの組合わせ培地(増殖培地)
に同植物ホルモン組合わせ培地を継代し、実施例2と同
様にNAA0.075mg/L、BA0.075mg/Lを含んだSH(ゲランガ
ム)培地で43日間暗所(22±2℃)培養した結果を第4,
5表に示した。
NAA、BAが同濃度の場合、25mg/Lまで柱頭様組織の再分
化本数を増大させた。NAAが1mg/Lの場合、BA50mg/Lまで
再分化本数にあまり大きな差としてあらわれなかった。
BA100mg/Lでは、カルスが死滅した。BA1mg/Lの場合、NA
A濃度が増大することにともない再分化本数を増やす傾
向を示した(第4,5表より)。
〔発明の効果〕
本発明によれば、培養組織であるサフラン柱頭部由来の
カルスから柱頭様組織を効率良く大量に再分化させるこ
とができる。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】サフラン柱頭部より誘導したカルスを、実
    質的にカルスのみを増殖させるオーキシン及びサイトカ
    イニン濃度に調製されたカルス増殖培地で培養し、次い
    で、培養後のカルスを、実質的にオーキシン及びサイト
    カイニンを含有しないカルス再分化培地で培養し、サフ
    ラン柱頭様組織に分化させることを特徴とするサフラン
    柱頭様組織の生産法。
JP10875690A 1990-04-26 1990-04-26 サフランの柱頭様組織の生産法 Expired - Lifetime JPH0767358B2 (ja)

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