JPH0756321B2 - 調和歯車減速機の外歯歯車保持装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、回転体の外周に巻回された環状で且つ可撓性
の外歯歯車と、該外歯歯車と噛合する内歯歯車とを有す
る調和歯車減速機に関し、更に詳しくは該外歯歯車の軸
方向の移動を防止すると同じに潤滑を良好とした外歯歯
車保持装置に関する。

（従来技術） １個又は２個の内歯歯車が設けられ、該内歯歯車に環状
で且つ可撓性の外歯歯車が変形して噛合し、入力軸の１
回転について内歯歯車と外歯歯車の歯数差だけ、あるい
は２個の内歯歯車の歯数差だけ位相がずれ、この位相差
が出力軸に伝達されて減速するいわゆる調和歯車減速機
あるいは差動型の調和歯車減速機は公知である。

次に、従来例として差動型の調和歯車減速機を第４図及
び第５図に基づいて説明する。

第４図は従来の差動型調和歯車減速機の縦断面図であ
り、第５図は第４図のＡ−Ａ線の横断面図である。

入力軸１に楕円形の回転体２が固定されており、回転体
２の外周には、変形可能なベアリング３を介して環状で
且つ可撓性の外歯歯車４が摺動自在に巻回されている。
環状の外歯歯車４は、楕円形の回転体２の長軸側の２箇
所で後記の内歯歯車５、６と噛合し、短軸側は内歯歯車
５、６と噛合していない。外歯歯車４の外周には２個の
内歯歯車５、６が設けられ、内歯歯車５はケーシング７
に固定され、内歯歯車６は出力軸８に連結されている。
ここで、内歯歯車５の歯数が外歯歯車４と同数となって
おり、且つ内歯歯車５と内歯歯車６とが歯数差を有して
いる。

従って、回転体２が１回だけ回転すると、外歯歯車４が
内歯歯車５、６に噛合し、内歯歯車５が固定されている
ので、内歯歯車６がその歯数差だけ相対的に変位し、歯
数差分だけ出力軸８が回転する。こうして、入力軸１の
回転が出力軸８からの減速回転として取り出される。

ところで、上記差動型の調和歯車減速機では、稼働中に
外歯歯車４が回転体２から軸方向に移動することがある
と、トルク伝達が悪化したり、最悪の場合外歯歯車４が
ケーシング７の内壁に接触し破壊する事故が生じること
になる。

一方、外歯歯車４の軸方向移動を防止する装置として、
外歯歯車４の両側に環状の円板からなる外歯歯車保持装
置11を設けたものが、第６図に示すようなカップリング
において公知である（実用新案出願公告昭和50年第4611
5号参照）。

第６図において、円板よりなる外歯歯車保持装置11は、
外歯歯車４の両側に間隔をおいて回転体２に固定されて
おり、外歯歯車４の軸方向移動を阻止している。尚、１
は入力軸、８は出力軸、３はころ状のベアリング、５及
び６は内歯歯車、７はケーシングである。

（発明が解決しょうとする問題点） しかし、上記従来公知の外歯歯車保持装置11は、噛合部
や接触部の潤滑の面で不充分なものであった。

即ち、回転体２の回転に伴い遠心力により潤滑油が半径
方向へ流動されるものとなるが、外歯歯車保持装置11が
回転体２の両側に立ち上がって固定されているので、潤
滑油が外歯歯車保持装置11の外周端から吹き飛ばされる
ものとなり、回転体２中心側から外歯歯車４と内歯歯車
５、６の噛合部12、ベアリング３及び外歯歯車４と外歯
歯車保持装置11の接触部へ潤滑油が充分に供給されるこ
とを阻害ものとなっていた。

このように噛合部12などへの潤滑油の供給が不足するた
め、伝達効率が低下したり、噛合部12、ベアリング３及
び外歯歯車４と外歯歯車保持装置11との接触部の摩耗が
激しく寿命が短くなってしまう問題があった。

そこで、本発明の目的は、外歯歯車の軸方向移動を防止
すると共に、外歯歯車と内歯歯車の噛合部、ベアリング
及び外歯歯車と外歯歯車保持装置の接触部に充分な潤滑
油の供給を可能とし、調和歯車減速機の伝達効率の向上
を図り、且つ摩耗が少なく耐久性のある調和歯車減速機
における外歯歯車保持装置を提供することにある。

（問題を解決するための手段） 上記目的を達成するため、本発明は次のような構成とな
っている。

即ち、本発明に係る外歯歯車保持装置は、入力軸（１）
と、該入力軸（１）に固定された回転体（２）と、該回
転体（２）の外周にベアリング（３）を介して巻回され
た環状で且つ可撓性の外歯歯車（４）と、該外歯歯車
（４）と噛合する内歯歯車（５）（６）と、前記内歯歯
車（５）（６）と連結された出力軸（８）を有し、前記
回転体（２）の回転を出力軸（８）に減速回転として取
り出す調和歯車減速機において、内周側が厚肉部（21）
となっており、外周側が薄肉部（22）となっており、内
周端が入力軸（１）の外周との間に隙間（19）を有して
おり、外周端が前記外歯歯車（４）の位置となってお
り、前記外歯歯車（４）の両側に設けられ、前記厚肉部
（21）が前記ベアリングの内輪（14）と接触して設けら
れた環状の円板（17）と、該円板（17）の薄肉部（22）
と前記外歯歯車（４）との間に設けられた耐摩耗性材料
よりなる環状の接触体（24）と、前記円板（17）の回転
体（２）側に放射状に複数個設けられた油溝（23）と、
を有し、前記回転体（２）の回転により、潤滑油が入力
軸（１）から前記油溝（23）を介してに前記内歯歯車
（５）（６）と外歯歯車（４）の噛合部（12）及び前記
接触体（24）に導かれることを特徴とする調和歯車減速
機の外歯歯車保持装置。

（実施例） 以下、本発明の一実施例を第１図、第２図及び第３図に
基づいて説明する。

第１図は、本実施例の要部を示す差動型調和歯車減速機
の一部縦断面図である。第２図は、第１図の外歯歯車保
持装置の内側を示す一部破断した正面図である。第３図
は、第１図の全体を示す縦断面図である。

第３図を参照して、入力軸１に楕円形の回転体２が固定
されており、回転体２の外周には、ベアリング３を介し
て、環状の外歯歯車４が摺動自在に巻介されている。こ
こでベアリング３は、ボールベアリングであり、変形可
能な外輪13と内輪14の間にボール15が設けられている。
環状の可撓性外歯歯車４は、楕円形の回転体２の長軸側
の２箇所で後記の内歯歯車５、６と噛合し、短軸側は内
歯歯車５、６と噛合していない。外歯歯車４の外周には
２個の内歯歯車５、６が設けられ、内歯歯車５はケーシ
ング７に固定され、内歯歯車６は出力軸８に連結されて
いる。ここで、内歯歯車５の歯数は外歯歯車４と同数と
なっており、且つ内歯歯車５と内歯歯車６とは歯数差を
有している。

従って、回転体２が１回転すると、外歯歯車４が内歯歯
車５、６に噛合し、内歯歯車５が固定されているので、
内歯歯車６がその歯数差だけ相対的に変位し、歯数差分
だけ出力軸８が回転する。こうして、入力軸１の回転を
出力軸８の減速回転として取り出すものである。

さて、上記の回転体２の両側に、本発明に係る外歯歯車
保持装置11が設けられている。

第１図及び第２図を参照して、回転体２の両側にボルト
16により環状の円板17が固定されている。円板17の内周
端18と入力軸１には隙間19設けられており、円板17の外
周端20は外歯歯車４の高さに位置している。隙間19は遠
心力によって潤滑油が後記の油溝23に導入される流通口
であれば足り、図示の実施例に限定されるものではな
い。

円板17の内側は、内周側が厚肉部21、外周側が薄肉部22
となっており、円板17の内周端18から外周端20に向かっ
て複数本の油溝23が放射状に設けられている。厚肉部21
はベアリング３の内輪14を側面から固定し、ベアリング
３の軸方向移動を阻止している。又、油溝23は、隙間19
から、外歯歯車４と内歯歯車５、６との噛合部12、ベア
リング３及び後記の接触体24まで潤滑油を導くものであ
る。

薄肉部22には、薄肉リングより成る接触体24が固着さ
れ、外歯歯車４を両側からはさむように設置されてい
る。この接触体24は、耐摩耗性材料より成り、外歯歯車
４との間に微少間隔をおいて設置され、円板17の薄肉部
22との間に潤滑油が流通するに十分な所定の間隔を置い
て設置されている。前記油溝23の潤滑油の流出口には、
ベアリング３及び接触体24への流出口25と、噛合部12及
び接触体24の軸方向外側への流出口26とがある。

以上のように構成された本実施例に係る外歯歯車保持装
置11は、次のように作用する。

外歯歯車４は、接触体24に接触するので、軸方向移動を
阻止される。

又、回転体２の回転により遠心力により隙間19から潤滑
油を吸い込み油溝23を介して流出口25からベアリング３
及び接触体24へ送り込み、流出口26から噛合部12に送り
込む。

尚、以上説明した実施例に本発明が限定されないことは
勿論である。

例えば、回転体は、楕円体に限定されず、偏心体あるい
は三角形等内歯歯車と非接触部を有して回転するもので
あればよい。

又、ベアリングはボールベアリングに限定されるもので
はなく、コロベアリングも本発明に含まれるものであ
る。

（発明の効果） 本発明のよれば、次の効果を奏する。

外歯歯車が接触体に接触することにより外歯歯車の軸方
向移動を防止することができるものとなる。

また、回転時の遠心力により油溝を介して外歯歯車と内
歯歯車の噛合部、ベアリング及び外歯歯車保持装置の接
触体に充分な潤滑油を提供することができる。従って、
調和歯車減速機を伝達効率が良好で、摩耗が少なく耐久
性のあるものとすることができる。

又、接触体が摩耗、破損しても簡単に接触体だけ交換す
ることができる。

円板の厚肉部がベアリングの内輪を側面から固定してい
るので、ベアリングの軸方向移動を阻止することができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明の一実施例に係る外歯歯車保持装置が
設けられた差動型調和歯車減速機の要部を示す一部縦断
面図である。 第２図は、第１図の外歯歯車保持装置の内側を示す一部
を破断した縦断面図である。 第３図は、第１図の縦断面図である。 第４図は、従来の差動型調和歯車減速機を示す縦断面図
である。 第５図は、第４図のＡ−Ａ線横断面図である。 第６図は、公知の外歯歯車保持装置が設けられたカップ
リングの縦断面図である。 符号の説明 1:入力軸 1:回転体 3:ベアリング 4:外歯歯車 ５、6:内輪 8:出力軸 12:噛合部 17:円板 19:隙間 23:油溝 24:接触体

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】入力軸（１）と、該入力軸（１）に固定さ
   れた回転体（２）と、該回転体（２）の外周にベアリン
   グ（３）を介して巻回された環状で且つ可撓性の外歯歯
   車（４）と、該外歯歯車（４）と噛合する内歯歯車
   （５）（６）と、前記内歯歯車（５）（６）と連結され
   た出力軸（８）を有し、前記回転体（２）の回転を出力
   軸（８）に減速回転として取り出す調和歯車減速機にお
   いて、 内周側が厚肉部（21）となっており、外周側が薄肉部
   （22）となっており、内周端が入力軸（１）の外周との
   間に隙間（19）を有しており、外周端が前記外歯歯車
   （４）の位置となっており、前記外歯歯車（４）の両側
   に設けられ、前記厚肉部（21）が前記ベアリングの内輪
   （14）と接触して設けられた環状の円板（17）と、 該円板（17）の薄肉部（22）と前記外歯歯車（４）との
   間に設けられた耐摩耗性材料よりなる環状の接触体（2
   4）と、 前記円板（17）の回転体（２）側に放射状に複数個設け
   られた油溝（23）と、 を有し、前記回転体（２）の回転により、潤滑油が入力
   軸（１）から前記油溝（23）を介してに前記内歯歯車
   （５）（６）と外歯歯車（４）の噛合部（12）及び前記
   接触体（24）に導かれることを特徴とする調和歯車減速
   機の外歯歯車保持装置。