JPH0749032A - 直噴式ディーゼルエンジン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 ［目的］ ディーゼルエンジンのとくに窒素酸化物の低
減のためのタイミングリタードによる燃焼の悪化に伴う
煙の発生を防止することを目的とする。 ［構成］ ピストン１２の頂部に形成されている凹部か
ら成る燃焼室２１の内周面の形状を、燃料噴霧７０が斜
めにぶつかる斜めの衝突面７１と、この衝突面７１と噴
射の方向とのなす角度が大きい方向において斜めの衝突
面７１と隣接して形成された曲線状の壁面７２とを各噴
口についてそれぞれ形成するようにしたものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は直噴式ディーゼルエンジ
ンに係り、とくに燃料噴射ポンプによって燃料を間欠的
に加圧するとともに、加圧された燃料を燃料噴射ノズル
に供給し、この燃料噴射ノズルによってピストンの頂部
に形成されている凹部から成る燃焼室に向けて燃料を噴
射するようにした直噴式ディーゼルエンジンに関する。

【０００２】

【従来の技術】ディーゼルエンジンはピストンを上死点
側へ移動させることによって、シリンダ内の吸気を圧縮
して高温の状態にしておき、ピストンがほぼ上死点に達
するのに同期して燃料噴射ノズルから燃料を噴射するよ
うにし、燃料の噴霧を吸気の熱によって自然着火させて
燃焼を行なうようにしている。

【０００３】燃料噴射ノズルから噴射された燃料の噴霧
はピストンの頂面に形成されている凹部から成る燃焼室
内において吸気と混合されて混合気を形成し、この混合
気が燃焼されるようになっている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】良好な混合気が形成さ
れることが燃焼のために必要である。局部的に燃料の噴
霧のみが存在し、空気との混合が十分でないと、その部
分の燃料の噴霧が燃焼せず、黒煙やパティキュレートの
発生の原因になる。そこでピストンの頂面に形成されて
いる燃焼室の形状を工夫するようにし、例えばその壁面
に凹部を設けたり、あるいは燃焼室をリエントラント型
にする等の工夫がこらされている。あるいはまた燃焼室
を上から見たときに四角い角型の燃焼室としたものがあ
る。

【０００５】このような対策によって、燃焼室内におけ
る空気の流動を活発化し、燃料噴霧との混合をよくして
煙の発生を抑えるようにしている。しかし従来の直噴式
ディーゼルエンジンにおいては、燃料と吸気との混合を
完全に行なうことができず、これによって煙の発生をゼ
ロにすることができない。とくに排気ガス中の窒素酸化
物を低減するためにタイミングリタードを行なうと、燃
焼状態が更に悪化し、排気ガス中に粒子状物質や黒煙を
より多く含むようになる。

【０００６】このような問題点に鑑みて燃料の高圧噴射
が試みられているが、噴射装置のコストが高くなるとい
う欠点がある。またユニットインジェクタによって燃料
の噴射を行なうことも試みられているが、ユニットイン
ジェクタを用いると、エンジン構体を大幅に変更する必
要があり、現実的ではない。

【０００７】本発明はこのような問題点に鑑みてなされ
たものであって、とくに窒素酸化物を低減するためにタ
イミングリタードを行なうことによる燃焼状態の悪化を
改善し、排ガス改善を図るようにした直噴式ディーゼル
エンジンを提供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、燃料噴射ポン
プによって燃料を間欠的に加圧するとともに、加圧され
た燃料を燃料噴射ノズルに供給し、前記燃料噴射ノズル
によってピストンの頂部に形成されている凹部から成る
燃焼室に向けて燃料を噴射するようにした直噴式ディー
ゼルエンジンにおいて、前記ピストンの燃焼室の内周面
の形状を、前記燃料噴射ノズルの各噴口からの噴霧が斜
めに衝突する斜めの衝突面と、該衝突面と噴射方向との
なす角度が大きい方向において前記斜めの衝突面と隣接
して形成された曲線状の壁面とを具備することを特徴と
する直噴式ディーゼルエンジンに関するものである。

【０００９】

【作用】燃料噴射ポンプが燃料を間欠的に加圧する。加
圧された燃料は燃料噴射ノズルに供給され、この燃料噴
射ノズルの噴口を通してピストンの頂部に形成されてい
る凹部から成る燃焼室に向けて噴射される。そしてピス
トンの凹部から成る燃焼室は、その内周面の形状が、噴
霧が斜めに衝突する斜めの衝突面を備えているために、
この衝突面に対して噴霧が斜めに衝突する。そして衝突
面との角度の大きな方に大半の噴霧が流動する。この噴
霧は斜めの衝突面と隣接して形成されている曲線状の壁
面によって案内され、噴霧のスワールを生ずる。このよ
うなスワール流によって燃料噴霧の蒸発と空気との混合
が促進される。

【００１０】

【実施例】図２は本発明の一実施例に係る燃料噴射装置
を備えるディーゼルエンジンの要部を示すものであっ
て、シリンダブロック１０には貫通孔から成るシリンダ
１１が設けられており、シリンダライナ９が嵌着されて
いる。そしてシリンダライナ９を有するシリンダ１１内
にピストン１２が摺動可能に配されている。そしてピス
トン１２はピストンピン１３によってコンロッド１４と
連結されるようになっている。

【００１１】上記ピストン１２の頂面に形成されている
凹部から成る燃焼室２１は、その内周面が特殊な形状を
有している。すなわち図１に示すように、この内周面は
燃料噴射ノズル２０の各噴口に対応して斜めの傾斜面７
１と曲線状の壁面７２とをそれぞれ有している。なお必
要に応じて燃焼室２１の外周側に位置するように、冷却
用空洞２２を内部に形成してもよい。

【００１２】ここで斜めの傾斜面７１の該面に直角な垂
線は噴霧７０の方向に対して５〜４０°の範囲内、とく
に好ましくは１０〜２０°の範囲内の角度を有するよう
に傾斜される。また斜めの傾斜面７１に対して燃料の噴
霧７０が大きな角度を有する部分に隣接されている曲線
状の壁面７２は、次の斜めの傾斜面７１を接線とするよ
うに連設されており、この壁面７２によって燃料噴霧の
スワールを形成するようになっている。

【００１３】シリンダ１１の上部開口は第２図に示すシ
リンダヘッド１５によって閉塞されるようになってお
り、しかもこのシリンダヘッド１５には吸気ポート１６
と排気ポート１７とがそれぞれ形成されている。これら
の吸気ポート１６および排気ポート１７はそれぞれ吸気
バルブ１８および排気バルブ１９によって開閉されるよ
うになっている。またシリンダヘッド１５には燃料噴射
ノズル２０がほぼ真直ぐに取付けられており、ピストン
１２の頂面に形成されている主燃焼室２１に向けて燃料
を噴射するようにしている。

【００１４】燃料噴射ノズル２０は図３に示すように、
噴射管２４によって燃料噴射ポンプ２５の対応するポン
プユニット２６に接続されている。燃料噴射ポンプ２５
はメカニカルガバナ２７を備え、このメカニカルガバナ
２７によってコントロールラック２８を動かし、１回に
噴射される燃料の供給量を調整するようにしている。ま
た燃料噴射ポンプ２５はカムシャフト２９を備え、この
カムシャフト２９に取付けられているカム３０が各ポン
プユニット２６を駆動するようになっている。またカム
シャフト２９にはタイマ３１が設けられており、このタ
イマ３１によって噴射のタイミングを調整するようにし
ている。

【００１５】燃料噴射ノズル２０は図３に示すように、
その先端部がノズル本体３４から構成されており、この
ノズル本体３４の先端部に５個の噴口３５が形成されて
いる。そしてノズル本体３４はリテーナ３６によってノ
ズルホルダ３７に取付けられている。ノズル本体３４内
にはノズルニードル３８が摺動可能に保持されている。
そしてこのノズルニードル３８の上端は押圧ロッド３９
を介してノズルホルダ３７内の圧縮コイルばね４０によ
って下方へ押圧されるようになっている。これによって
ノズルニードル３８はノズル本体３４に形成されている
バルブシート４１に圧着され、燃料の遮断を行なうよう
になっている。またノズルホルダ３７には噴射管２４と
連通する燃料通路４２が形成されている。この燃料通路
４２はノズル本体３４の燃料通路４３と連通されるよう
になっている。燃料通路４３の終端には燃料だめ５１が
形成されている。

【００１６】押圧ロッド３９を押圧しているばね４０は
その上端がばね受け４４によって受けられている。そし
てこのばね受け４４の上端側には調整ねじ４５が取付け
られるようになっている。そしてこの調整ねじ４５はノ
ズルホルダ３７の内周面に形成されている雌ねじ４６と
螺合している。またノズルホルダ３７の側面側には突部
４８が形成されており、この突部４８には雄ねじ４９が
形成され、この雄ねじ４９と螺合する接続用ナット５０
によって噴射管２４がノズルホルダ３７に接続されるよ
うになっている。

【００１７】つぎに燃料噴射ポンプ２５の各ポンプユニ
ットの構成を説明すると、図４に示すように、プランジ
ャ５４の下端部にはタペット５５が取付けられている。
そしてタペット５５は圧縮コイルばね５６によって下方
に押圧されており、これによってカム３０の外周面に押
付けられている。そしてプランジャ５４が摺動可能に嵌
合しているバレル５７にはスピルポート５８が形成され
るとともに、このスピルポート５８とほぼ対向するよう
に、プランジャ５４の外周面には傾斜溝５９が形成され
ている。

【００１８】バレル５７の外周側にはピニオン６０が回
転可能に支持されている。そしてこのピニオン６０には
コントロールスリーブ６１が固着されるとともに、この
コントロールスリーブ６１に形成されている切欠き６２
は係合板６３を受入れている。この係合板６３はプラン
ジャ５４に固着されている。

【００１９】各ポンプユニット２６の出口側にはデリベ
リバルブ６４が設けられており、ケーシング６５の下部
に設けられているバルブシート６６上に配されている。
そしてコイルばね６７によってデリベルバルブ６４はバ
ルブシート６６側に押圧されている。

【００２０】つぎに以上のような構成に成る直噴式ディ
ーゼルエンジンの動作の概要を説明する。

【００２１】エンジンの出力の一部によってタイマ３１
を介してカムシャフト２９が駆動されると、図４に示す
ような形状のカム３０がタペット５５のローラを押上げ
ることになり、これによってプランジャ５４がバレル５
７内を上方へ移動する。するとプランジャ５４の頂面が
スピルポート５８を閉じ、燃料の圧送を開始する。プラ
ンジャ５４がさらに上方へ移動すると、やがて傾斜溝５
９がスピルポート５８に整合し、これによってプランジ
ャ５４の上側の空間の圧力が傾斜溝５９を通してスピル
ポート５８側に逃げるようになり、燃料の圧送が終了す
る。

【００２２】燃料噴射ポンプ２５のメカニカルガバナ２
７がコントロールラック２８を移動させると、ピニオン
６０が回転され、これによってコントロールスリーブ６
１が回転されるようになる。このコントロールスリーブ
６１の回転は切欠き６２および係合板６３を介してプラ
ンジャ５４に伝達され、バレル５７内においてプランジ
ャ５４が回転されることになる。従ってスピルポート５
８と整合する傾斜溝５９の位置によって決まる有効スト
ロークが変化するようになり、燃料の調量が行なわれ、
１回に噴射される燃料の供給量が制御されるようにな
る。また燃料噴射ポンプ２５のカムシャフト２９に設け
られているタイマ３１によって、カムシャフト２９の位
相角が制御され、燃料の噴射のタイミングが調整される
ようになっている。

【００２３】バレル５７内においてプランジャ５４が燃
料を圧送すると、デリベリバルブ６４が開かれ、噴射管
２４を通して燃料噴射ノズル２０に燃料が圧送されるよ
うになる。図３に示す燃料噴射ノズル２０の燃料通路４
２および４３を通して燃料だめ５１に燃料圧が加えられ
ると、ノズルニードル３８はロッド３９を介してばね４
０を圧縮しながら上方へ移動するようになり、これによ
ってノズルニードル３８の先端側の部分がバルブシート
４１から離れ、噴口３５を通して燃料が噴射されるよう
になる。燃料の圧送を終了すると、ばね４０の弾性復元
力によってロッド３９を介してノズルニードル３８が下
方へ押圧され、その先端部がバルブシート４１に圧着さ
れて燃料の噴射を停止する。

【００２４】燃料の噴霧は燃料噴射ノズル２０の噴口３
５から、図２に示すピストン１２の頂面に形成されてい
る主燃焼室２１に向けて噴射されるようになる。そして
この燃料の噴霧は、圧縮された吸気の熱によって自然着
火され、シリンダ１１内で燃焼が起り、ピストン１２が
下方へ押され、エンジンの出力が取出されるようにな
る。そしてこの後に排気弁１９が開かれ、排気ポート１
７を通して排気ガスが排出されるようになる。

【００２５】上記ピストン１２の頂部に形成されている
燃焼室２１はその内周面が図１に示すような形状になっ
ており、燃料噴射ノズル２０の各噴口３５に対応して斜
めの衝突面７１と曲線状の壁面７２とを有している。燃
料噴射ノズル２０の噴口３５から噴射された燃料の噴霧
７０は図１に示すように斜めの傾斜面７１に対して所定
の角度をもってぶつかる。そしてぶつかった燃料の噴霧
７０は傾斜面７１に対して大きな角度を有する方向、す
なわち図１において時計方向に主として流動する。そし
て流動する燃料噴霧７０は斜めの傾斜面７１に隣接する
曲線状の壁面７２によって燃焼室２１の円周方向に流動
するようになり、燃料噴霧７０のスワール流７３が形成
される。

【００２６】このような燃焼室２１の内周面の形状に伴
うスワール流７３によって、燃料噴霧７０の燃料液滴の
蒸発が促進されるとともに、とくにスワール７３の先端
側の部分であって中心側にうず巻くように流動する部分
において空気との混合が促進されることになる。このよ
うな噴霧の蒸発と空気との混合の促進によって、未燃焼
あるいは不完全燃焼の液滴による黒煙の発生を抑制する
ことが可能になる。

【００２７】一般にディーゼルエンジン、とくに直噴式
ディーゼルエンジンは多量の窒素酸化物を排気ガス中に
含む欠点がある。このような窒素酸化物を低減するため
の一般的かつ有効な方法は、燃料の噴射を遅角させるタ
イミングリタードである。タイミングリタードを行なう
と、燃焼が緩慢になってシリンダ内の温度上昇が抑えら
れ、これによって空気中の窒素の活性化が抑えられ、窒
素酸化物の生成が抑えられることになる。

【００２８】ところが上記のようなタイミングリタード
を行なうと、これに伴って必然的に燃焼が悪化し、炭化
水素とともに黒煙を排気ガス中に多く含むことになる。
本実施例のピストン１２の内周面の形状に伴うスワール
流７３は、このような燃焼の悪化を防止するために極め
て有効であって、窒素酸化物を抑えるとともに、燃焼を
改善してとくに煙の発生を抑制することが可能になる。

【００２９】なおこの実施例は、図１に示すように５噴
口ノズル３４を用いた例であって、燃料噴霧７０の噴射
角が３０〜３５°の範囲内のものであるが、必ずしも５
噴口ノズルであって３０〜３５°の噴射角に限られるこ
とはなく、噴口３５の数については任意に増減可能であ
って、これによってピストン１２の燃焼室２１の内周面
の形状も変更可能である。

【００３０】

【発明の効果】本発明は、ピストンの燃焼室の内周面の
形状を、燃料噴射ノズルの各噴口からの噴霧が斜めに衝
突する斜めの衝突面と、該衝突面と噴射方向とのなす角
度が大きい方向において斜めの衝突面と隣接して形成さ
れた曲線状の壁面とを具備するようにしたものである。

【００３１】従って燃料噴射ノズルの各噴口からの噴霧
がまず斜めの衝突面に衝突し、噴霧の大半が傾斜面との
なす角度が大きい方向に流動するとともに、その方向に
隣接して形成されている曲線状の壁面に案内され、これ
によって燃料噴霧のスワール流が形成されるようにな
る。このようなスワール流によって、燃料噴霧の蒸発と
空気との混合が促進され、燃焼の悪化を改善することが
可能になり、煙の発生を抑制できるようになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例の直噴式ディーゼルエンジン
のピストンの燃焼室の部分の横断面図である。

【図２】直噴式ディーゼルエンジンの要部縦断面図であ
る。

【図３】燃料噴射ノズルの縦断面図である。

【図４】燃料噴射ポンプの要部斜視図である。

【符号の説明】

９ シリンダライナ １０ シリンダブロック １１ シリンダ １２ ピストン １３ ピストンピン １４ コンロッド １５ シリンダヘッド １６ 吸気ポート １７ 排気ポート １８ 吸気バルブ １９ 排気バルブ ２０ 燃料噴射ノズル ２１ 主燃焼室 ２２ 冷却用空洞 ２４ 噴射管 ２５ 燃料噴射ポンプ ２６ ポンプユニット ２７ メカニカルガバナ ２８ コントロールラック ２９ カムシャフト ３０ カム ３１ タイマ ３４ ノズル本体 ３５ 噴口 ３６ リテーナ ３７ ノズルホルダ ３８ ノズルニードル ３９ 押圧ロッド ４０ ばね ４１ バルブシート ４２、４３ 燃料通路 ４４ ばね受け ４５ 調整ねじ ４６ 雌ねじ ４７ キャップ ４８ 突部 ４９ 雄ねじ ５０ 接続用ナット ５１ 燃料だめ ５４ プランジャ ５５ タペット ５６ コイルばね ５７ バレル ５８ スピルポート ５９ 傾斜溝 ６０ ピニオン ６１ コントロールスリーブ ６２ 切欠き ６３ 係合板 ６４ デリベリバルブ ６５ ケーシング ６６ バルブシート ６７ コイルばね ７０ 燃料噴霧 ７１ 斜めの衝突面 ７２ 曲線状の壁面 ７３ スワール流

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】燃料噴射ポンプによって燃料を間欠的に加
   圧するとともに、加圧された燃料を燃料噴射ノズルに供
   給し、 前記燃料噴射ノズルによってピストンの頂部に形成され
   ている凹部から成る燃焼室に向けて燃料を噴射するよう
   にした直噴式ディーゼルエンジンにおいて、 前記ピストンの燃焼室の内周面の形状を、前記燃料噴射
   ノズルの各噴口からの噴霧が斜めに衝突する斜めの衝突
   面と、 該衝突面と噴射方向とのなす角度が大きい方向において
   前記斜めの衝突面と隣接して形成された曲線状の壁面と
   を具備することを特徴とする直噴式ディーゼルエンジ
   ン。