JPH0748644A - 耐熱アルミニウム合金、耐熱アルミニウム合金粉末及びコンロッド - Google Patents

耐熱アルミニウム合金、耐熱アルミニウム合金粉末及びコンロッド

Info

Publication number
JPH0748644A
JPH0748644A JP19337193A JP19337193A JPH0748644A JP H0748644 A JPH0748644 A JP H0748644A JP 19337193 A JP19337193 A JP 19337193A JP 19337193 A JP19337193 A JP 19337193A JP H0748644 A JPH0748644 A JP H0748644A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
aluminum alloy
powder
connecting rod
end hole
inner peripheral
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP19337193A
Other languages
English (en)
Inventor
Kunihiko Imahashi
▲邦▼彦 今橋
Hirohisa Miura
宏久 三浦
Chikatoshi Maeda
千芳利 前田
Koji Nishida
幸司 西田
Yasuhiro Yamada
泰弘 山田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP19337193A priority Critical patent/JPH0748644A/ja
Publication of JPH0748644A publication Critical patent/JPH0748644A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Shafts, Cranks, Connecting Bars, And Related Bearings (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】相手材への凝着を抑制し、フレッティング疲労
破損を抑制できる耐熱アルミニウム合金を提供するこ
と。 【構成】この耐熱アルミニウム合金は、重量%で、S
i:8〜25%、Fe:0.6〜8%、Cu:0.6〜
5%、Mg:0.5〜5%、Mn:0.3〜5%、不可
避の不純物、残部Alからなる合金母材に、B単体:
0.1〜5.0%が分散している。この合金は、アルミ
ニウム合金粉末とB粉末とが混合した混合粉末を用い、
この混合粉末を利用して粉末冶金法で製造することがで
きる。この合金で製造したコンロッドの小端孔の内周面
にはバニシュ加工が施され、表面粗さが0.7μmRz
以下とされ、残留圧縮応力が付与されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フレッティング疲労破
損の防止に適する耐熱アルミニウム合金、耐熱アルミニ
ウム合金粉末及びコンロッドに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、B(ボロン)を含むアルミニ
ウム合金は実用合金としてはあまり提供されていない。
その理由は、Al中に固溶するBは常温ではほとんど0
であり、730°Cという高温域においても最大0.2
2%と少ないからである。しかし鋳造材では、BとTi
を同時添加することにより組織を微細化することが知ら
れているが、Bはせいぜい0.05%である。
【0003】またBを0.4〜5.5%含有させた鋳造
アルミニウム合金(特開昭54−88819号公報)、
Bを0.5〜10%含有させた鋳造アルミニウム合金
(特開昭63−247334号公報)が提案されてい
る。しかし鋳造材では溶湯が徐冷凝固されるため(冷却
速度は砂型鋳造では100 〜10-1K/s程度)、上記
した鋳造アルミニウム合金では、組織は平衡状態図に従
い、常温でBはAlB2 等のB化合物となるので、0.
1〜5.0%もの多くのB単体が含有されることはな
い。
【0004】ところで、内燃機関では、ピストンピンと
クランクシャフトとを連結するコネクティングロッドと
も呼ばれるコンロッド(図5参照)が用いられている。
コンロッドは圧縮力、引張力、曲げ等の荷重を繰り返し
て受けるので、これらに充分耐え得る様に一般的に鉄系
の合金鋼で形成されている。合金鋼製のコンロッドで
は、ヤンク率が高く、小端孔100の内周面にもフレッ
ティング疲労破損は生じにくい。しかし、近年の内燃機
関の低燃費化に伴う軽量化の要請から、アルミニウム合
金製コンロッドが開発されている。アルミニウム合金で
は使用条件によっては、小端孔100の内周面、大端孔
102の内周面にフレッティング摩耗が生じ、その箇所
を起点としてフレッティング疲労破損が生じることがあ
る。ここで、フレッチング疲労破損現象とは、摺動特性
を示す現象であって、高荷重下で微動な摺動を繰り返し
た場合、相手材に一部が凝着し、この部位を起点として
疲労破壊する現象である。特に、鋼系のピストンピン
(SCr15)に触れる小端孔の内周面、鋼系の軸受
(軟鋼)と触れる大端孔の内周面ではAlやSiが凝着
し、フレッティング疲労破損が生じることがある。この
場合、アルミと鋼との間で微動スベリが生じ、局部的な
塑性変形や凝着が生じるためと考えられる。凝着はED
X(エネルギ分散X線分光機)分析により確認されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記した実情
に鑑みなされたものであり、その目的は、相手材への凝
着を抑制し、フレッティング疲労破損を抑制するのに有
利な耐熱アルミニウム合金、耐熱アルミニウム合金粉末
及びコンロッドを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記した課題
のもとに鋭意開発を進め、そして、重量%で、Si:8
〜25%、Fe:0.6〜8%、Cu:0.6〜5%、
Mg:0.5〜5%、Mn:0.3〜5%、不可避の不
純物、残部Alからなる合金母材に、B化合物でなくB
単体を0.1〜5.0%を含有させれば、相手材への凝
着を防止でき、フレッティング疲労破損を抑制できるこ
とを知見し、試験で確認し、本発明の耐熱アルミニウム
合金を完成させたものである。
【0007】更に、0.1〜5.0%のB単体をもつ組
成のアルミニウム合金を用い、そのアルミニウム合金に
バニシュ加工等の強圧加工を施し、表面粗さを0.7μ
mRz以下にすると共に、深さ方向において30MPa
以上の圧縮残留応力を付与すれば、B単体の添加と併せ
て相乗的に作用し凝着及びフレッティング疲労破損を一
層防止できることを知見し、試験で確認し、本発明のコ
ンロッドを完成したものである。
【0008】即ち、本発明に係る耐熱アルミニウム合金
は、重量%で、Si:8〜25%、Fe:0.6〜8
%、Cu:0.6〜5%、Mg:0.5〜5%、Mn:
0.3〜5%、不可避の不純物、残部Alからなる合金
母材に、B単体:0.1〜5.0%が分散していること
を特徴とするものである。この耐熱アルミニウム合金
は、アルミニウム合金粉末とB粉末とが混合した混合粉
末を用い、この混合粉末を利用して粉末冶金法で製造す
ることができる。B粉末は固結した組織においてB単体
を形成できる。粉末冶金法における成形手段としては、
圧縮成形、押出成形、鍛造成形、静水圧加圧成形、爆発
成形等の公知の成形法を採用できる。この耐熱アルミニ
ウム合金は、軽量化及び強度が要求されるものに適用で
き、車両においては内燃機関系の部品、例えばコンロッ
ド、バルブスプリングリテーナ、バルブリフタ等に適用
できる。
【0009】また、溶解温度を高めにし(例えば110
0°C以上)多量のBを溶解させた溶湯を急冷(冷却速
度:通常102 〜107 K/s程度)して急冷凝固粉末
とすれば、非平衡状態の組成を得ることができ、多くの
B単体を含む組成の粉末や、多くのB単体となり得るB
を含む組成の粉末を期待できる。すなわち、重量%で、
Si:8〜25%、Fe:0.6〜8%、Cu:0.6
〜5%、Mg:0.5〜5%、Mn:0.3〜5%、不
可避の不純物、残部Al、B:0.1〜5.0%を含有
し、冷却速度102 K/s以上の急冷凝固法で製造した
非平衡状態の組成をもつ耐熱アルミニウム合金粉末であ
る。かかる粉末では、Bは単体として分散していても、
B単体になり得る状態でも良い。かかる粉末を利用して
粉末冶金法で製造すれば、上記した塊状の耐熱アルミニ
ウム合金を得ることができる。急冷凝固粉末は、一般的
に、溶湯を空気や不活性ガスでアトマイズ噴霧したり、
アトマイズ噴霧したものを水や液体窒素などの冷却剤に
直ちに投入したり、あるいは高速回転する冷却ロールの
表面にその溶湯を衝突させたりして製造することができ
る。アトマイズ噴霧法やロール法において、急冷凝固粉
末を得る際の冷却速度は一般的に103 〜107 K/s
程度と考えられている。
【0010】本発明に係るコンロッドは、上記した耐熱
アルミニウム合金の主要部を主要部とするものであり、
B単体を0.1〜5.0%含有する。即ちこのコンロッ
ドは、小端孔の内周面及び大端孔の内周面の少なくとも
一方が、重量%でSiを8〜25%、B単体を0.1〜
5%を含むと共にFe、Ni、Cuの少なくとも1種を
0.6〜32%含むアルミニウム合金で構成され、該少
なくとも一方の内周面は、表面粗さが0.7μmRz以
下であり、30MPa以上の残留圧縮応力が付与されて
いることを特徴とするものである。バニシュ量が増すに
つれて表面粗さが小さくなり、表面粗度が向上する。
【0011】本発明の耐熱アルミニウム合金を構成する
元素の割合及び作用を以下に説明する。 〔Si:8〜25%〕使用時における応力による歪を小
さくするためヤング率、高温強度を向上させる必要があ
る。Siが8%未満の配合では、得られるアルミニウム
合金のヤング率、高温強度及び耐摩耗性が不十分であ
る。また相手材がピストンピンや軸受等の様に鋼系の場
合には熱膨張係数を鋼に近づけることが好ましくい。こ
こでSiが増すにつれて、熱膨張係数が低下する。上記
事情を考慮してSiを8〜25%に設定した。
【0012】また本発明の耐熱アルミニウム合金が急冷
凝固粉末を用いた粉末冶金法により製造する場合には、
Siを25%まで配合しても微細Siをもつアルミニウ
ム合金が得られる。Siを25%を超えて配合すると、
急冷凝固粉末を用いた場合でも、製品に粗大Siが含ま
れて好ましくない。なお鋳造法によりアルミニウム合金
を凝固させた場合には、Siを11.3%以上含むアル
ミニウム合金には粗大Si初晶が晶出し、相手材攻撃性
が増し、被削性が著しく悪くなるとともに、合金自体の
伸びが著しく低下し、生産技術面(例えば、部品加工時
のクラック等)で実用的でなく、また部品として使用時
に割れが生じたりして好ましくない。従ってSi量が多
い組成領域では急冷凝固粉末を利用する。 〔Fe:0.6〜8%〕一般にはFeの添加は好ましく
なく、含まれていても0.5%以下であることが望まし
いとされるが、発明者らの実験結果では、Feを配合す
ることにより、得られるアルミニウム合金の常温強度及
び高温強度が向上することが判明した。Feが0.6%
未満の配合では、アルミニウム合金の常温強度及び高温
強度向上の効果が少なく、Feを8%を超えて配合する
と、アルミニウム合金が脆くなる。 〔Cu:0.6〜5%〕Cuは、耐熱アルミニウム合金
に時効硬化を付与し、Alマトリックスを強化する。C
uが0.6%以上の配合でアルミニウム合金の常温強度
向上の効果があり、Cuを5%を超えて配合すると、粗
大な晶出物が生成し、アルミニウム合金の300℃での
高温強度を低下させる。 〔B単体:0.1〜5.0%〕本発明者が試験したとこ
ろ、B単体量が増すとともにフレッティング疲労破損防
止性は向上する傾向にある。B単体:0.1%未満では
フレッティング疲労破損防止の効果が少ない。またB単
体が5.0%を越えると、耐熱アルミニウム合金の強度
と靱性とが低下し、鍛造性等が低下する。そこでB単体
を0.1〜5.0%とした。耐熱アルミニウム合金中で
Bが単体で存在するか否かはTEM(透過型電子顕微
鏡)などにより確認できる。
【0013】アルミニウム合金粉末とB粉末との混合粉
末から圧密体を形成し、その圧密体を利用して耐熱アル
ミニウム合金を形成する場合には、溶解温度の制約はな
いので、Bを多量に添加することが可能である。この場
合B粉末は粒径20μm以下が好ましい。粒径20μm
を越えると、使用中に破壊し易く、破壊するとアブレッ
シブ摩耗により相手材(ピストンピンや軸受等)を損傷
させるからである。
【0014】コンロッドではNi(例えば5.7〜20
%)を含有することもできる。NiはNiAl、NiA
3 等の金属間化合物を生成し、高温強度及び耐摩耗性
の向上に貢献できる。
【0015】
【作用】B単体が含まれているので、凝着は抑制され、
フレッティング疲労強度は向上する。更に表面粗度が向
上し且つ残留圧縮応力が付与された小端孔や大端孔の内
周面をもつコンロッドでは、凝着は相乗的に一層防止さ
れ、フレッティング疲労強度が向上する。B単体を0.
1〜5%を含むことと併せて、面粗度の向上に伴う摩擦
係数の減少化、残留圧縮応力の付与に起因する疲労強度
の向上によるものと推察される。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。この例で
は、Siが17%、Feが5.0%、Cuが4.5%、
Mgが0.45%、Mnが0.5%、不可避の不純物、
残部実質的にAlの組成をもつ急冷凝固粉末を用いた。
急冷凝固粉末はアトマイズ噴霧法で製造したものであ
る。アトマイズ噴霧法における冷却速度は102 〜10
4 K/s程度と考えられている。またB粉末(高純度科
学研究所(株)製)を用いた。平均粒径は急冷凝固粉末
が35μm、B粉末が5μmである。
【0017】上記した急冷凝固粉末とB粉末とをV型混
粉器により60分間混合し、混合粉末を形成した。配合
割合は、重量%で混合粉末全体を100%としたとき、
急冷凝固粉末が99%、B粉末は1%とした。次に、上
記した混合粉末をゴム袋に装入し、400MPaで冷間
静水圧成形し、柱状の圧密体を得た。圧密体は密度が
2.05g/cm3 、大きさが直径230mm×600
mmであった。そして、ゴム袋から出した圧密体を、そ
の圧密体よりやや大きめの純アルミ製の缶に装入し、4
50°Cで30分間均一になるまで加熱した。その後、
押出ダイスを用い押出比20で押し出し成形し、押出材
を得た。なお押出比とは断面積比を意味する。そして、
押出材の表面に被覆されている上記缶が変形した純アル
ミ層を切削加工で取り除いた。更に、鍛造後の完成部品
と同じ重量になるように重量を設定した荒地体を得る。
次いでこの荒地体を450℃に加熱し、型温150℃の
鍛造型でバリを出さず、密閉鍛造して鍛造品とした。こ
の鍛造品を480°Cに1時間加熱して溶体化熱処理し
その後水冷し、更に175°Cで6時間時効処理(T6
処理)した。その後、旋削加工を施し小端孔及び大端孔
該当部分など旋削し、コンロッドを得た。
【0018】その後、コンロッドの小端孔の内周面に第
1バニシュ加工、第2バニシュ加工の双方を順に施し
た。第1バニシュ加工では、図2及び図3に示すバニシ
ュ装置3(スギノマシン(株) スパローラ)を用い
る。図2及び図3から理解できる様に、バニシュ装置3
は、本体30と、本体30に内側及び外側が突出して転
動可能に保持された多数個の第1強圧ローラ32(材
質:ハイス)と、第1強圧ローラ32を回転させる第1
マンドレル34(材質:ハイス)とを備えている。第1
強圧ローラ32は円錐面状のローラ面32a(テーパ度
1/30)を備えている。第1マンドレル34はローラ
面32aに対面する円錐面34cを備えている。バニシ
ュ装置3の加工外径(第1強圧ローラ32のローラ面3
2aの径大部32x間の径)をD1とし、第1バニシュ
加工実施前のコンロッド1の小端孔10の内径をD0
(D0<D1)とすると、D1からD0を減算した差
(D1−D0)、即ち、第1バニシュ加工におけるバニ
シュ量Δd11は、20〜60μm程度に設定されてい
る。
【0019】上記した第1バニシュ加工では、常温域に
おいて、図3から理解できる様に、コンロッド1の小端
孔10内に第1強圧ローラ32を矢印A1方向から押込
みつつ、第1マンドレル34を矢印B1方向に回転駆動
させると、各第1強圧ローラ32が従動回転し、これに
より小端孔10の内周面10aは強圧される。特に、第
1強圧ローラ32のローラ面32aの径大部32xによ
り小端孔10の内周面10aは強圧される。かかる加工
は、小端孔10の全周、軸方向の全域において行われ
る。これにより小端孔10の内周面10aに所定深さの
残留圧縮応力領域が形成されると共に、内周面10aの
表面粗度は向上する。第1バニシュ加工は、供給管39
から冷却液をかけつつ行う。
【0020】第2バニシュ加工で用いるローラ装置5
(スギノマシン(株)ベアリンガイザ)の要部を図4に
示す。ローラ装置5はピーニングを伴うローラ加工を行
なうものである。ローラ装置5は、係合溝50aをもつ
円筒形状のホルダー50と、ホルダー50の係合溝50
aに転動可能に保持された円柱状の多数個の第2強圧ロ
ーラ52(材質:ハイス)と、ホルダー50の内部に回
転可能に保持された第2マンドレル54(材質:ハイ
ス)とを備えている。第2強圧ローラ52は係合溝50
aに保持されつつつも、遠心方向に変位可能とされてい
る。第2マンドレル54の外周面は、ローラ個数に応じ
た横断面多角形状であり、その軸芯P4を中心とする所
定の曲率半径で形成された円弧部54tと(領域α)、
円弧部54t間に形成された平坦部54i(領域β)と
を備えている。第2マンドレル54の軸芯P4から平坦
部54iの中央までの距離をL1(図示せず)とし、軸
芯P4から円弧部54tの中央までの距離をL2とする
と、L2はL1よりも大きく設定されている(L2>L
1)。従って、第2マンドレル54がその周方向に回転
すると、円弧部54tで押圧された各第2強圧ローラ5
2が遠心方向に飛び出し、これによりピーニング作用と
ローリング作用との双方が得られる。なお、ローラ装置
5の加工外径をD4(図示せず)とし、第2バニシュ加
工を実施する前の小端孔10の内径をD3(図示せず)
(D3<D4)としたとき、D4からD3を減算した差
(D4−D3)、即ち、第2バニシュ加工におけるバニ
シュ量Δd 12は、1〜40μm程度に設定されている。
【0021】上記した第2バニシュ加工では、常温域に
おいて、コンロッド1の小端孔10内に第2強圧ローラ
52を押し込んだ状態で、第2マンドレル54をその周
方向に回転駆動させると、第2強圧ローラ52が遠心方
向に断続的に飛び出し、これによりローリング加工の他
に、断続的なピーニング作用が得られる。かかる加工は
コンロッド1の小端孔10の全周及び軸方向の全域で行
われる。この結果、小端孔10の内周面10aの表面直
下にピークをもつ残留圧縮応力分布が得られる。なお、
第2バニシュ加工は冷却液をかけつつ行う。
【0022】同様にコンロッドの大端孔の内周面にも第
1バニシュ加工、第2バニシュ加工を施した。ところ
で、小端孔10の内周面10aにおいて深さ方向の残留
圧縮応力分布をX線残留応力測定装置により測定した。
第1バニシュ加工を実施した場合には、表面から100
μmを越えた深さでは残留圧縮応力は大きいが、表面よ
りも100μm未満の表面直下では、残留圧縮応力は小
さい。この様に表面直下の残留圧縮応力が小さくなる理
由は、オーバーピーニングによる影響と考えられる。ま
た、第1バニシュ加工及び第2バニシュ加工の双方を実
施した場合には、表面よりも100μm未満の深さで
は、残留圧縮応力が大きくなり、特に表面よりも深さ2
0〜30μm付近の表面直下において、残留圧縮応力が
200MPaと大きくなり、更に、それよりも深い15
0〜200μmの深さ位置においても残留圧縮応力が1
50〜100MPaと大きい。また第2バニシュ加工の
みを実施した場合には、表面から50μm未満の深さで
残留圧縮応力が大きいものの、それよりも深部では残留
圧縮応力が小さい。
【0023】即ち、第1バニシュ加工及び第2バニシュ
加工の双方を実施すれば、表面直下から深部まで高い残
留圧縮応力の分布が得られる。また表面粗さも0.5μ
m以下となる。そのため、高温域においても高い疲労強
度が期待できる。 〔試験例1〕ところで、上記したバニシュ加工を実施し
たコンロッドを試験片NO.1とし、このコンロッドを
試験用内燃機関に組み込み、180時間の耐久試験を行
った。試験結果を表1に示す。表1に示す様に、小端孔
10の内周面10aを観察したところ、凝着、フレッテ
ィング疲労破壊については問題はなかった。小端孔10
よりも使用条件が緩やかな大端孔の内周面においても、
問題はなかった。
【0024】
【表1】 更にB単体を1%含むものの、上記したバニシュ加工を
実施しないコンロッドを試験片NO.2とした。更に比
較例として、上記したバニシュ加工を実施したものの、
B単体を含まないコンロッドを試験片NO.3とし、上
記したバニシュ加工を実施せずかつB単体も含まないコ
ンロッドを試験片NO.4とし、同様に試験した。試験
結果を表1に示す。表1に示す様に、試験片NO.2で
は、耐久試験は良好つまりOKであり、また凝着もなく
フレッティング疲労性も改善されていた。試験片NO.
3でも、耐久試験はOKであり、また凝着もなくフレッ
ティング疲労性も改善されていた。試験片NO.4で
は、54時間でフレッティング疲労破損がみられた。 〔試験例2〕更に、B単体量の効果を確認するため、B
単体量を変化させた試験片NO.A〜Dを作成し、フレ
ッティング試験を行った。試験片A〜Dの形状はほぼ正
方形で、大きさは10×9.8である。フレッティング
試験では、窒化処理したステンレス鋼(JIS SUS
430)製の平板を用い、平板により試験片を10分間
繰り返して叩き、その凝着発生面積率を測定した。凝着
面積発生率とは試験片(10×9.8)のうち凝着が生
じている面積の割合を意味する。この試験はコンロッド
の使用温度を考慮して温度100°C、面圧1.2MP
a、叩き速度5Hzで行った。試験結果を図1に示す。
図1に示す様に、B無添加の試験片NO.Aでは、凝着
発生面積は50%を越えた。しかし、B量が増加するに
伴い凝着発生面積が減少し、Bが5%の試験片NO.D
では凝着発生は認められなかった。 〔他の効果〕コンロッド1の小端孔10の内周面10a
における軸方向の両端は、内燃機関の爆発圧力に起因す
るピストンピンの変形により最大応力が作用するため、
疲労破壊により亀裂が生じやすい部位である。この点、
第1バニシュ加工及び第2バニシュ加工の双方を実施し
たコンロッドでは、小端孔10の内周面10aの軸方向
の両端に丸味部が生じ、これにより小端孔10に負荷さ
れる最大応力が低減される効果が期待でき、従って、コ
ンロッド作動の際にピストンピンから負荷される応力が
小さくなり、耐亀裂性が高まる。
【0025】更に本実施例では、仕上鍛造品を得る際に
おける強圧方向は、小端孔10の軸方向とほぼ平行な方
向であり、これ対して、第1バニシュ加工、第2バニシ
ュ加工における強圧方向は、いわば、鍛造時の強圧方向
と直交する方向、即ち、小端孔10の軸直角方向であ
る。そのため、鍛造工程とローラ工程とでそれぞれ異な
る方向から強圧され、小端孔10の内周面10aはより
効果的に強化され、耐疲労性が一層向上する。
【0026】ところで、合金元素が過飽和の急冷凝固粉
末を用いて製造された本実施例のコンロッドは、使用時
の荷重に耐え得る様にアルミニウム合金としては高強
度、高剛性である。この場合、小端孔10の内周面10
aを加工する単位時間当たりの加工量が過大であれば、
加工に起因する亀裂が生じるおそれもある。この点本実
施例では、バニシュ装置3の第1強圧ローラ32によ
り、小端孔10の内周面10aが一部づつ連続的に加工
される局部的連続加工方式が採用されている。同様に、
第2バニシュ加工でも、ローラ装置5の第2強圧ローラ
52により内周面10aが一部づつ連続的に加工される
局部的連続加工方式が採用されている。そのため、コン
ロッドの材質が高剛性であっても、小端孔10の内周面
10aの加工が無理なく行い得、過大加工に起因する亀
裂の回避に貢献できる。
【0027】
【発明の効果】以上説明した様に本発明の耐熱アルミニ
ウム合金によれば、B単体が含まれているので、凝着は
抑制され、フレッティング疲労破壊は抑制される。本発
明の耐熱アルミニウム合金粉末によれば上記した合金を
形成するのに有利である。更に本発明のコンロッドによ
れば、小端孔や大端孔の内周面は、B単体を0.1〜
5.0%を含むことと併せて、表面粗度が向上し且つ残
留圧縮応力が付与されているので、凝着は相乗的に一層
防止され、フレッティング疲労破壊は一層抑制されると
共に、通常の耐疲労性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】B量を変えた場合における凝着発生面積率の試
験結果を示すグラフである。
【図2】バニシュ装置で第1バニシュ加工している状態
を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図2のバニシュ装置の主要部を模式的に示す縦
断面図である。
【図4】ローラ装置で第2バニッシュ加工している状態
を示す断面図である。
【図5】従来のコンロッドの斜視図である。
【符号の説明】
図中、1はコンロッド、10は小端孔、10aは内周
面、3はバニシュ装置、5はローラ装置を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西田 幸司 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 山田 泰弘 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、Si:8〜25%、Fe:0.
    6〜8%、Cu:0.6〜5%、Mg:0.5〜5%、
    Mn:0.3〜5%、不可避の不純物、残部Alからな
    る合金母材に、B単体:0.1〜5.0%が分散してい
    ることを特徴とする耐熱アルミニウム合金。
  2. 【請求項2】重量%で、Si:8〜25%、Fe:0.
    6〜8%、Cu:0.6〜5%、Mg:0.5〜5%、
    Mn:0.3〜5%、B:0.1〜5.0%、不可避の
    不純物、残部Alの組成をもち、冷却速度102 K/s
    以上の急冷凝固で製造されていることを特徴とする耐熱
    アルミニウム合金粉末。
  3. 【請求項3】小端孔の内周面及び大端孔の内周面の少な
    くとも一方が、重量%でSiを8〜25%、B単体を
    0.1〜5.0%を含むと共にFe、Ni、Cuの少な
    くとも1種を0.6〜32%含むアルミニウム合金で構
    成され、 該少なくとも一方の内周面は、表面粗さが0.7μmR
    z以下であり、30MPa以上の残留圧縮応力が付与さ
    れていることを特徴とするコンロッド。
JP19337193A 1993-08-04 1993-08-04 耐熱アルミニウム合金、耐熱アルミニウム合金粉末及びコンロッド Pending JPH0748644A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP19337193A JPH0748644A (ja) 1993-08-04 1993-08-04 耐熱アルミニウム合金、耐熱アルミニウム合金粉末及びコンロッド

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP19337193A JPH0748644A (ja) 1993-08-04 1993-08-04 耐熱アルミニウム合金、耐熱アルミニウム合金粉末及びコンロッド

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH0748644A true JPH0748644A (ja) 1995-02-21

Family

ID=16306806

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP19337193A Pending JPH0748644A (ja) 1993-08-04 1993-08-04 耐熱アルミニウム合金、耐熱アルミニウム合金粉末及びコンロッド

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0748644A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100938652B1 (ko) * 2008-06-12 2010-01-27 (주)고려비철공업 휴대 정보 단말기의 디스플레이 프레임 및 키패드 프레임용 알루미늄합금 및 이를 이용한 휴대폰의 디스플레이 프레임 및 키패드 프레임
JP2012072474A (ja) * 2010-09-29 2012-04-12 Sumitomo Electric Sintered Alloy Ltd シリンダスリーブ用合金及びそれを使用したシリンダスリーブ
CN102808119A (zh) * 2012-09-07 2012-12-05 重庆大学 一种轻质高温耐磨铝合金
US9038704B2 (en) 2011-04-04 2015-05-26 Emerson Climate Technologies, Inc. Aluminum alloy compositions and methods for die-casting thereof
JPWO2020065969A1 (ja) * 2018-09-28 2021-08-30 株式会社アシックス スポーツ用ウェア

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100938652B1 (ko) * 2008-06-12 2010-01-27 (주)고려비철공업 휴대 정보 단말기의 디스플레이 프레임 및 키패드 프레임용 알루미늄합금 및 이를 이용한 휴대폰의 디스플레이 프레임 및 키패드 프레임
JP2012072474A (ja) * 2010-09-29 2012-04-12 Sumitomo Electric Sintered Alloy Ltd シリンダスリーブ用合金及びそれを使用したシリンダスリーブ
US9038704B2 (en) 2011-04-04 2015-05-26 Emerson Climate Technologies, Inc. Aluminum alloy compositions and methods for die-casting thereof
CN102808119A (zh) * 2012-09-07 2012-12-05 重庆大学 一种轻质高温耐磨铝合金
JPWO2020065969A1 (ja) * 2018-09-28 2021-08-30 株式会社アシックス スポーツ用ウェア

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2877013B2 (ja) 耐摩耗性に優れた表面処理金属部材およびその製法
JP3191665B2 (ja) 金属焼結体複合材料及びその製造方法
US7905018B2 (en) Production method for sintered gear
JP2005516118A (ja) 焼結部材を製造するための焼結性粉末混合物
EP2562282B1 (en) Bearing device
DE102010051682B4 (de) Leichtbau-Kurbeltrieb und Herstellungsverfahren desselben
CN105051226B (zh) 滑动轴承
CN108570633A (zh) 提高6xxx系铝合金摩擦磨损性能的制备方法
JP2008231538A (ja) 鉄系焼結体及びその製造方法
JP4273462B2 (ja) 自己潤滑性を有する摺動部品用材料およびピストンリング用線材
US20100021339A1 (en) Components made of steels with an ultrahigh carbon content and with a reduced density and high scaling resistance
JPH0748644A (ja) 耐熱アルミニウム合金、耐熱アルミニウム合金粉末及びコンロッド
JP3424156B2 (ja) 高強度アルミニウム合金部材の製造方法
US20020192105A1 (en) Aluminum alloy for sliding bearing and its production method
JP2017066526A (ja) 金属複合体層を有する部材の製造方法、及び、アルミニウム−ニッケル複合体層を有する部材
JP4005189B2 (ja) 高強度焼結鋼およびその製造方法
JP6001989B2 (ja) 内燃機関用ピストンの表面改質方法及び内燃機関用ピストン
US20040022663A1 (en) Production method of aluminum alloy for sliding bearing
JP2004255457A (ja) 熱間圧延用複合ロール及びその製造方法
EP2747941B1 (de) Verfahren zur herstellung von lagerschalen für gleitlager
JPH0849033A (ja) フレッティング疲労強度に優れたAl合金基複合材料
JPH06323327A (ja) アルミニウム粉末合金製コンロッド
JP7333215B2 (ja) アルミニウム合金加工材及びその製造方法
Ilia et al. High performance powder-forged connecting rods for direct injection turbocharged engines
JPH0525591A (ja) ピストンリング用線およびその製造方法