JP7333215B2 - アルミニウム合金加工材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルミニウム合金加工材及びその製造方法に関する。
従来より、粉末鍛造されたアルミニウム合金の加工材が知られている。
このような加工材としては、重量比で10~30.0%のSi又は1.0~15.0%のMn又は1.0~15.0%のNiのうち1種又は2種以上と、残部が不可避的不純物及びAlとからなる合金溶湯の分散急冷凝固粉末押出材が知られている(特許文献1)。また、20質量%のSiを含有するアルミニウム合金混合粉末を用いて、焼結温度を520~570℃の範囲として焼結するアルミニウム合金粉末熱間加工材の製造方法が知られている(特許文献2)。
特開昭62-10237号公報 特開2002-241868号公報
ところで、レース車両用などの熱負荷の高いピストン等に用いられる粉末鍛造されたアルミニウム合金の加工材は、軽量であり、その内部品質と疲労強度等の機械的特性に優れた加工材が要求されている。しかしながら、前述した従来の加工材では、レース車両用などの熱負荷の高いピストン等には材料仕様において限界があり十分な適用が難しく、更なる軽量化、内部品質及び疲労強度等の機械的性質の向上が必要とされている。
前記課題に照らして、本発明は、軽量であり、かつ優れた内部品質及び疲労強度等の機械的特性を有するアルミニウム合金加工材及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明は、一態様にて、Siを、30質量%を超え、かつ40質量%以下の範囲で含有し、残留ガス量が6.8cm3/100gAl以下であり、かつ円相当直径が10.7μm以上のSi粒子の割合が2.0%以下となる、アルミニウム合金加工材である。
本発明は、別の一態様にて、Siを30質量%以上40質量%以下の範囲で含有するアルミニウム合金材を溶湯処理し、アトマイズ法により粉末化して粉末材とする工程と、前記粉末材を、冷間加圧成形により粉末成形材とする工程と、前記粉末成形材を、545~555℃の範囲で真空焼結することにより、焼結材とする工程と、前記焼結材を、熱間押出成形により熱間押出材とする工程と、前記熱間押出材を加工し、熱間鍛造して熱間鍛造材とする工程と、前記熱間鍛造材を、熱処理によりアルミニウム合金粉末の熱間加工材とする工程とを含む、アルミニウム合金加工材の製造方法である。
本発明によれば、軽量であり、かつ優れた内部品質及び疲労強度等の機械的特性を有するアルミニウム合金加工材及びその製造方法が提供される。
図1は、本発明に係るアルミニウム合金加工材の製造方法の一実施形態について示すフロー図である。 図2は、本発明に係るアルミニウム合金加工材及びその製造方法について、実施例の結果を示すグラフである。 図3は、本発明に係るアルミニウム合金加工材及びその製造方法について、実施例の結果を示すグラフである。 図4は、本発明に係るアルミニウム合金加工材及びその製造方法について、実施例の結果を示すグラフである。 図5(A1)~図5(C2)は、本発明に係るアルミニウム合金加工材及びその製造方法について、実施例の結果を示す写真である。
以下、本発明に係るアルミニウム合金加工材及びその製造方法の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態によって限定されない。また、添付図面は、本実施形態の概要を説明するための図であり、フロー等の構成は一部省略している。
1.アルミニウム合金加工材
アルミニウム合金加工材の実施形態について説明する。本実施形態に係るアルミニウム合金加工材は、金属元素としてSiを少なくとも含有する。アルミニウム合金加工材中には、所定量の残留ガスとSi粒子が存在している。
Si量は、30質量%を超えた量であり、31質量%以上が好ましい。このようなSi量であれば、アルミニウム合金加工材を軽量化でき、加えて低熱膨張化と耐摩耗性の向上に寄与できる。また、Si量は、上限値として、40質量%以下であり、35質量%以下が好ましい。このような上限値のSi量であれば、後述するように、アルミニウム合金加工材の製造コストを低減できる。本明細書にて「重量」との記載は、「質量」と読み替えることができる。
残留ガスは、アルミニウム合金加工材に形成された微小空隙内に主に存在している。ガスとしては、ほとんどが水素(H2)ガスである。残留ガス量は、6.8cm3/100gAl以下である。このような残留ガス量であれば、Siの含有量が30質量%を超える場合に、微小空隙が殆ど無い金属組織を有するアルミニウム合金加工材が得られる。その結果、アルミニウム合金加工材の内部品質を向上できる。本明細書にて、「cm3/100gAl」とは、Alの100g当たりのガス量(cm3)を意図している。
Si粒子は、粉末製造工程にてアルミニウム合金溶湯から粉末製造の凝固過程にてアルミニウム合金加工材の組織に晶出したSiからなり、粒子状の塊状物である。アルミニウム合金加工材では、円相当直径が10.7μm以上のSi粒子の割合が2.0%以下である。言い換えれば、アルミニウム合金加工材中のSi粒子の2.0%以下は、10.7μm以上の大きさを有している。このような大きなSi粒子の割合が2.0%以下であれば、Siの含有量が30質量%を超える場合に、アルミニウム合金加工材のSi粒子の大きさが均一化され、アルミニウム合金加工材の疲労強度等の機械的性質を向上できる。具体的には、大きなSi粒子が少なくなり、晶出するSi粒子の形状の均一化が図られ、アルミニウム合金加工材の均一組織による疲労強度の低下が防止できる。本明細書にて、「円相当直径」とは、アルミニウム合金加工材中のSi粒子の断面積を測定し、その断面積での真円の直径を意図している。また、Si粒子の「割合」は、加工材中の全Si粒子中の個数割合を意図している。
アルミニウム合金加工材は、本明細書に記載の残留ガス及びSi粒子を存在させ得るアルミニウム合金からなる加工材であればよく、耐摩耗性の観点から主に過共晶組織を有するAl-Si系アルミニウム合金からなる加工材であることが好ましい。また、Si粒子は、粉末鍛造された過共晶Al-Si系アルミニウム合金加工材に均一に分散している。このようなSi粒子は、粉末製造工程にてアルミニウム合金溶湯の凝固過程で晶出した初晶Siである。
アルミニウム合金加工材は、成分組成として、Fe、Cu、Mg及びPからなる群より選択される少なくとも1つの金属元素を更に含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる加工材とすることができる。これら金属元素の量は、本明細書に記載の残留ガス及びSi粒子を存在させ得る量であればよく、限定されない。Feの量は、例えば1~5質量%とすることができる。Cuの量は、例えば0.5~3質量%とすることできる。Mgの量は、例えば0.1~3質量%とすることできる。Pの量は、例えば0.0020~0.0150質量%とすることできる。
また、アルミニウム合金加工材は、任意選択的な成分組成として、Ni、Mn、Ti、Cr、Zr及びVからなる群より選択される少なくとも1つの金属元素を更に含有できる。これら金属元素の量は、本明細書に記載の残留ガス及びSi粒子を存在させ得る量であればよく、限定されない。Niの量は、例えば0.5~5質量%とすることができる。Mnの量は、例えば0.05~0.2質量%とすることできる。Tiの量は、例えば0.05~0.2質量%とすることできる。Crの量は、例えば0.05~0.2質量%とすることできる。Zrの量は、例えば0.05~0.2質量%とすることできる。Vの量は、例えば0.05~0.2質量%とすることできる。
2.アルミニウム合金加工材の製造方法
以上の構成を備えるアルミニウム合金加工材の製造方法の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に係るアルミニウム合金加工材の製造方法は、粉末化工程(S10)と、冷間成形工程(S20)と、真空焼結工程(S30)と、熱間押出成形工程(S40)と、熱間鍛造工程(S50)と、熱処理工程(S60)とを少なくとも含む。
原材料となるアルミニウム合金材は、30質量%以上40質量%以下の範囲のSiを少なくとも含有している。このようなアルミニウム合金材は、前記所定量のSiを少なくとも含有したアルミニウム合金であればよく、例えば、任意選択的又は不可避的にSiが添加されたアルミニウム合金の地金(インゴット)である。また、アルミニウム合金材は、成分組成として、前記量の金属元素及び残部を好適に含有できる。
粉末化工程(S10)では、アルミニウム合金材を溶解炉等の溶解設備にて溶解することにより溶湯処理して、アルミニウム合金溶湯を形成する。溶湯処理の際の保持温度は、例えば1000℃以上とすることができ、1030~1180℃が好ましい。具体的には、Siの量が30質量%の場合は、1030℃が好ましい。また、Siの量が40質量%の場合は、1180℃が好ましい。このような保持温度であれば、アルミニウム合金材の容易な粉末製造が可能となる。また、このようなアルミニウム合金の溶湯温度であれば、溶解設備の消耗を抑制し、設備対応を容易とする。その結果、アルミニウム合金加工材の製造コストを低減できる。
溶湯処理の際には、不活性ガスの存在下での溶解、フラックスの添加等によって、アルミニウム合金溶湯中のガス量を所定範囲に維持することが好ましい。不活性ガスは、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、窒素(N2)等を使用できる。このように、アルミニウム合金溶湯と大気との接触を防ぐことによって、水分吸着等に起因してアルミニウム合金溶湯中のガス量が増加することを防げる。ガス量は、例えば、1cm3/100gAl以下とすることができる。
アルミニウム合金溶湯の温度を維持したまま、アルミニウム合金溶湯をアトマイズ法で処理して粉末化し、アルミニウム合金粉末材を得る。アトマイズ法は、溶湯を粉末化できる方法であればよく、具体的には、るつぼ底部から流出させた溶湯流に不活性ガスを噴霧することにより粉末化するガスアトマイズ法、円盤の高速回転により溶湯流を粉末化する遠心力アトマイズ法、溶湯流に空気を噴霧して粉末化する大気圧アトマイズ法等である。これらのうち、大気圧アトマイズ法が好ましい。大気圧アトマイズ法であれば、不活性ガスを用いたアトマイズ法と比較して、製造コストを低減できる。また、得られた粉末材を、分級機で例えば150μm以下の粉末に分級する。アルミニウム粉末材に、耐摩耗性等の機械的特性の向上のために炭化ケイ素(SiC)等の添加剤を添加してもよい。
冷間成形工程(S20)では、粉末材を冷間加圧成形することにより圧縮及び成形して、所定の成形密度を有した粉末成形材(粉末成形体)を得る。成形密度は、例えば、70~75%とすることができる。冷間加圧成形は、粉末材を所定の成形密度まで圧縮及び成形できる処理であればよく、具体的には、機械的プレス、油圧プレス、水圧プレス等の処理がある。これらのうち、実用的な観点より、水圧プレスが好ましく、密度の均一性の観点より、ゴム型等の成形型内に充填した粉末材に等方的な水圧を加える冷間静水圧成形等の冷間等方圧加圧処理(CIP)がより好ましい。粉末成形材の形状は、割れ、欠け等が発生せず、健全な真空焼結体が得られる形状であればよく、具体的には、塊状体、円柱状、角柱状、円筒状、角筒状等の形状とすることができ、実用的な観点より、円筒状が好ましい。
真空焼結工程(S30)では、粉末成形材を真空焼結炉内で545℃以上555℃以下の範囲で真空焼結して、焼結材(焼結体)を得る。このような範囲であれば、軽量であり、かつ優れた内部品質及び疲労強度等の機械的特性を有するアルミニウム合金加工材が得られる。保持時間は、8時間以上10時間以下の範囲とすることができる。真空焼結の方法は、前記所定範囲の温度と時間の条件下で粉末成形材を焼結できる方法であればよく、限定されない。焼結材の形成は、押出成形機、予熱炉等への運搬作業性を向上させる。また、真空焼結では、Si粒子の凝集と粗大化を防止することによりSi粒子の均一化を図り、押出抵抗を軽減する。結果として、押出加工性が向上し、押出成形機への負担を軽減できる。
熱間押出成形工程(S40)では、焼結材を押出成形機等にて熱間押出成形することにより処理して、熱間押出材を得る。押出成形時の焼結材の予熱温度は、例えば、420~460℃とすることができる。熱間押出材の形状は、押出成形できる形状であればよく、例えば、棒状、管状、板状等である。熱間押出成形では、焼結材全体の粉末流動が可能となり、均一なアルミニウム合金加工材が得られる。また、熱間押出成形前の焼結材には、必要に応じて、大気中、予熱炉、押出成形機内等にて、押出成形に前記温度となるまで予熱処理を行ってもよい。
熱間鍛造工程(S50)では、熱間押出材を例えば所定の長さの短冊状に切断することにより加工して、加工した熱間押出材を得る。加工形状は、熱間鍛造できる形状であればよく、具体的には、円柱状、角柱状、円筒状、角筒状等の形状とすることができ、実用的な観点より、円柱状が好ましい。加工された熱間押出材を熱間鍛造することにより、熱間鍛造材とする。熱間鍛造の方法は、熱間押出材をピストン等の部品に近い形状に鍛造できる方法であればよく、限定されない。熱間鍛造時の加工した熱間押出材の予熱温度は、例えば、470~490℃とすることができる。
また、熱間押出成形工程の後かつ熱間鍛造工程の前に、熱間押出材に対して熱間押出成形工程の際の押出方向に対する圧縮負荷を加える円柱鍛造を施すことを更に含み、得られた円柱鍛造材を、熱間鍛造工程の熱間押出材として用いることが好ましい。鍛造比は、例えば、1.7~2.5とすることができる。これにより、アルミニウム合金加工材に、金属組織面及び物性面における3次元等方性を付与できる。すなわち、熱間押出成形の際のSi粒子などの金属組織の押出方向への引き伸ばしによる異方性を無くし、疲労強度等の機械的特性を向上できる。
熱処理工程(S60)では、熱間鍛造材を熱処理して、熱間加工材を得る。熱処理では、熱間鍛造材に対して、目的に応じて、溶体化、水焼入れ、時効硬化等の処理を行う。溶体化は、例えば、490~520℃で1.0~4.0時間保持することにより行う。水焼入れは、例えば、30~40℃で5~15分水冷することにより行う。時効硬化処理は、例えば、180~200℃で1.0~4.0時間保持することにより行う。得られた熱間加工材を、本明細書におけるアルミニウム合金加工材とすることができる。
本実施形態によれば、30質量%を超えたSiの含有量により、Alより密度の低いSiの含有割合が増加するため、軽量化でき、かつ内部品質と疲労強度が向上したアルミニウム合金加工材を得ることができる。また、6.8cm3/100gAl以下の残留ガス量により、加工材の金属組織の微小空隙が減少するため、その内部の欠陥部分を低減し、内部品質を向上できる。更に、30質量%を超えたSiの含有量と2.0%以下のSi粒子円相当直径10.7μm以上の割合とにより、Si粒子の大きさの均一化を図り、疲労強度を向上できる。このようなアルミニウム合金加工材は、上述した利点を有しているため、レース車両用等の熱負荷の高いピストンに好適に使用できる。
また、本実施形態によれば、焼結温度を545℃以上とすることにより、製造された加工材の金属組織の微小空隙が減少するため、内部品質を向上できる。また、焼結温度を555℃以下とすることにより、製造された加工材のSi粒子の粗大化を抑制することができ、疲労強度を向上できる。更に、Siの含有量を40質量%以下とすることにより、アトマイズ法に供する前の溶湯温度を適切な範囲に抑えることができるため、アルミニウム合金の溶解設備の消耗を抑えることができる。
また、本実施形態によれば、Siの含有量が30質量%の場合、アルミニウム合金材の溶湯温度を1030℃に保持することにより、良好なアトマイズ粉末が得られる。本発明は、如何なる理論に限定されないものの、この結果について、次のことが推測できる。Al-Si二元状態図を考慮すれば、Siが30質量%である場合の液相線温度は827℃であることが確認できる。更に、アルミニウム合金溶湯が827℃未満では、以前として液体と固体の状態(固液共存状態)であり、アトマイズ法を行う際に溶湯の流れが悪くなり、不具合が発生する可能性がある。このように、アルミニウム合金材の温度を1030℃に保持することにより、アルミニウム合金溶湯の完全熔融とアトマイズ法を行う際の溶湯温度の低下とを可能な限り抑えた結果、良好なアトマイズ粉末が得られたと推測できる。Siが40質量%である場合は、液相線温度が980℃であり、良好なアトマイズ粉を得るアルミニウム合金溶湯の温度は1180℃となる。
なお、前述した実施形態では、粉末成形材を真空焼結炉内で真空焼結し、焼結材を押出成形機にて押出成形する構成を含むアルミニウム合金加工材及び製造方法を例示した。本発明は、これに限定されない。例えば、真空焼結し押出成形する方法として、冷間加圧成形により圧縮した粉末成形材を真空ホットプレス内にて前記所定の温度で真空焼結を行った後、同様のホットプレス内で熱間圧縮する方法(真空ホットプレス法)を採用できる。また、例えば、真空焼結する方法として、冷間加圧成形により圧縮した粉末成形材を金属カプセルに挿入し、真空脱ガス装置内で前記所定の温度で真空焼結を行った後、真空を保持したままホットプレスにより緻密化し、脱缶を行う方法(缶封入ホットプレス法)を採用できる。
また、前述した実施形態では、レース車両用のピストンに使用されるアルミニウム合金加工材及びその製造方法を例示した。本発明はこれに限定されない。本発明に係るアルミニウム合金加工材及びその製造方法によれば、軽量であり、優れた機械的特性と内部品質を有する加工材が得られるため、これが適用できる範囲で他の部品及びそれを備えた車両に適用できることは明らかである。例えば、本発明に係るアルミニウム合金加工材及びその製造方法は、ピストン、シリンダスリーブ、ブレーキドラム、クラッチ等の部品及びこれらを備えた二輪車、四輪車、バギー、トラクター、これらのレース車両等の車両に適用できる。
以下、本発明に係るアルミニウム合金加工材及びその製造方法についての実施例を説明することにより、その効果を明らかにする。本発明に係るアルミニウム合金加工材及びその製造方法は、以下の実施例によって限定されない。
1.試験例の作製I
試験例1~5の鍛造材をそれぞれ作製した。アルミニウム合金の地金を1000℃以上で溶解保持して溶湯とし、この溶湯のガス量を1cm3/100gAl以下に維持した。その後、大気圧アトマイズ法によりアルミニウム合金粉末を形成し、この粉末をロールタップ式ふるい振とう機で150μm以下に分級した。得られたアルミニウム合金粉末をゴム型に充填し、最高圧力130MPaで冷間静水圧成形(外径207mm×長さ679mm)を行い、成形密度70%の円筒状の粉末成形体を形成した。得られた成形体に真空焼結(550℃、8時間保持)を行い、脱ガスと予備焼結を施し焼結体(外径205mm×長さ676mm)を形成した。その後、焼結体を大気中で420℃まで加熱し、押出機で熱間押出(420~460℃)を行った。得られた押出材を所定の長さで短冊状に切断し、切断した押出材を480℃に加熱した後、円柱鍛造(鍛造比:2.3)を行った。得られた円柱鍛造材に熱処理T6(溶体化処理:500~520℃×1h保持、水焼き入れ、時効硬化処理:190℃×1h保持)を施した。得られた鍛造材を、それぞれ、試験例1~5の鍛造材とした。
2.硬さ及び密度の検証
試験例1~5の各鍛造材の中心部から試験片を採取し、各試験片についてロックウェル硬さ(HRB)と密度を測定した。ロックウェル硬さ(HRB)は、ロックウェル硬さ試験機により測定し、密度は、アルキメデス法により測定した。結果を、表1に示す。
表1に示すように、30質量%を超えるSiを含有する試験例1~4(Si量:30.1~31.6質量%)では、30質量%未満のSiを含有する試験例5と比較して、硬さを少なくとも6%向上でき、密度を最大で約3%低減できることを確認した。
3.試験例の作製II
次いで、真空焼結の温度を540~560℃の範囲で変えた以外は、試験例1と同様にして、試験例6~10の鍛造材をそれぞれ作製した。
4.残留ガス量及びSi粒子円相当直径≧10.7μmの割合の検証
試験例6~10の各鍛造材の中心部から試験片を採取し、各試験片について残留ガス量とSi粒子分布を測定した。また、Si粒子分布について、Si粒子の粒子数及び円相当直径毎のSi粒子の割合を解析した。残留ガス量は、ランズレー法により測定した。Si粒子分布並びにSi粒子の粒子数及び円相当直径毎のSi粒子の割合は、試験片の金属組織写真(500倍)を用いた画像解析により測定した。結果を、表2、図2及び図3に示す。
図2に、試験例6~10の粒子数(n)を棒グラフで示し、Si粒子円相当直径毎のSi粒子の割合(%)を折れ線グラフで表す。図2に示すように、試験例6~10では、Si粒子円相当直径が10.7μm以上となった場合、Si粒子の割合に明確な差異があることを確認した。また、表2に示すように、焼結温度が545~555℃の試験例7~9では、焼結温度が545℃未満である試験例6と比較して、残留ガス量を約56%~約90%低減できることを確認した。また、図3に、表2に基づく、焼結温度に対する残留ガス量とSi粒子の割合の関係を示す。図3に示すように、試験例7~9では、残留ガス量が6.8cm3/100gAl以下であり、かつ円相当直径が10.7μm以上のSi粒子の割合が2.0%以下であった。なお、試験例7~9では、残留ガス量が1.6cm3/100gAl以上であり、円相当直径が10.7μm以上のSi粒子の割合が0.3%以上であった。
5.機械的強度の検証
試験例6~10の各鍛造材の中心部から試験片を採取し、これらに250℃で100時間の等温加熱処理を施した。等温加熱処理後の各試験片について、疲労強度を測定した。疲労強度は、小野式回転曲げ疲労試験機により測定した。結果を、図4に示す。
図4に示すように、焼結温度が545~555℃の試験例7~9では、焼結温度が545℃未満である試験例6と比較して、疲労強度を約23%向上できることを確認した。また、試験例7~9では、焼結温度が555℃を超える試験例10と比較して、疲労強度を約45%向上できることを確認した。
6.微小空隙及び金属組織の検証
次いで、焼結温度が545℃未満である試験例6(図4中のA領域に相当)、焼結温度が545~555℃の試験例7~9(図4中のB領域に相当)、焼結温度が555℃を超える試験例10(図4中のC領域に相当)の各試験片について、電子顕微鏡写真(500倍)による微小空隙の観察と金属顕微鏡(400倍)による金属組織の観察を行った。結果を、図5(A1)~図5(C2)に示す。
図5(A1)に、A領域の試験片の拡大写真を示し、図5(B1)に、B領域の試験片の拡大写真を示し、図5(C1)に、C領域の試験片の拡大写真を示す。図5(A1)に示すように、図中にて白色部で表される微小空隙について、A領域では多数の微小空隙が認められた(図中、一部を矢印で示す)。一方で、図5(B1)及び(C1)に示すように、B領域とC領域では、微小空隙は認められなかった。上記結果に加えて、図3及び表2に示す結果を更に考慮すれば、微小空隙の存在及びその数には、残留ガス量の減少につれて、少なくなる傾向があった。図4に示す結果を更に考慮すれば、A領域の試験片は、多数の微小空隙により、疲労強度が低下したと考えられる。
また、図5(A2)に、A領域の金属組織写真を示し、図5(B2)に、B領域の金属組織写真を示し、図5(C2)に、C領域の金属組織写真を示す。図5(A2)に示すように、A領域では、10μm以下のSi粒子が均一に晶出しており、図中にて黒色部で表される微小空隙が観察された(図中、一部を矢印で示す)。図5(B2)及び(C2)に示すように、B領域及びC領域では、10μmを超えるSi粒子が多く晶出していた。Si粒子は、A領域、B領域、C領域の順に、粗大化する傾向を有していた。図4に示す結果を更に考慮すれば、C領域の試験片は、Si粒子の凝集と粗大化により、疲労強度が低下したと考えられる。
以上の結果より、30質量%を超えたSiの含有量により軽量化した場合に、残留ガス量が6.8cm3/100gAl以下であり、かつ円相当直径が10.7μm以上のSi粒子の割合が2.0%以下であれば、微小空隙を無くして内部品質を向上でき、かつ疲労強度を向上できることを確認した。
本発明に係るアルミニウム合金加工材及びその製造方法によれば、アルミニウム合金加工材を軽量化することができ、内部品質を向上することができ、疲労強度等の機械的特性を向上することができる。
S10:粉末化工程
S20:冷間成形工程
S30:真空焼結工程
S40:熱間押出成形工程
S50:熱間鍛造工程
S60:熱処理工程

Claims (8)

  1. Siを、30質量%を超え、かつ40質量%以下の範囲で含有し、
    残留ガス量が6.8cm3/100gAl以下であり、かつ円相当直径が10.7μm以上のSi粒子の割合が2.0%以下である、アルミニウム合金加工材。
  2. 前記Si粒子が、粉末鍛造された過共晶Al-Si系アルミニウム合金中のSi粒子である、請求項1に記載のアルミニウム合金加工材。
  3. 1~5質量%のFe、0.5~3質量%のCu及び0.1~3質量%のMgを更に含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる、請求項1又は2に記載のアルミニウム合金加工材。
  4. レース車両用のピストンに使用するための、請求項1~3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金加工材。
  5. Siを30質量%以上40質量%以下の範囲で含有するアルミニウム合金材を溶湯処理し、アトマイズ法により粉末化して粉末材とする工程と、
    前記粉末材を、冷間加圧成形により粉末成形材とする工程と、
    前記粉末成形材を、545~555℃の範囲で真空焼結することにより、焼結材とする工程と、
    前記焼結材を、熱間押出成形により熱間押出材とする工程と、
    前記熱間押出材を加工し、熱間鍛造して熱間鍛造材とする工程と、
    前記熱間鍛造材を、熱処理によりアルミニウム合金粉末の熱間加工材とする工程と
    を含む、アルミニウム合金加工材の製造方法。
  6. 前記溶湯処理の際に、前記アルミニウム合金材を1030~1180℃に保持する、請求項5に記載のアルミニウム合金加工材の製造方法。
  7. 前記アトマイズ法を大気圧アトマイズ法とする、請求項5又は6に記載のアルミニウム合金加工材の製造方法。
  8. 前記熱間鍛造する前に、前記熱間押出材に、前記熱間押出成形の際の押出方向に対する圧縮負荷を加えることにより円柱鍛造を施すことを更に含み、
    前記円柱鍛造された鍛造材を前記熱間鍛造に用いる、請求項5~7のいずれか一項に記載のアルミニウム合金加工材の製造方法。
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