JPH074661B2 - 耐食性に優れたアルミニウム製熱交換器の製法 - Google Patents

耐食性に優れたアルミニウム製熱交換器の製法

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JPH074661B2
JPH074661B2 JP6948692A JP6948692A JPH074661B2 JP H074661 B2 JPH074661 B2 JP H074661B2 JP 6948692 A JP6948692 A JP 6948692A JP 6948692 A JP6948692 A JP 6948692A JP H074661 B2 JPH074661 B2 JP H074661B2
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親二 竹野
信行 柿本
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スカイアルミニウム株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、アルミニウム系材料
からなるブレージングシートを用いたアルミニウム製熱
交換器の製造方法に関し、特にその熱交換器を組立てる
にあたってのろう付けに関するものである。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム系材料からなる熱交換器、
特に自動車用の熱交換器には従来からブレージングシー
トが多用されている。ブレージングシートは、Al−M
n系合金などの成形性や強度を有するアルミニウム合金
を芯材とし、その芯材の片面もしくは両面にAl−Si
系もしくはAl−Si−Mg系またはAl−Si−Mg
−Bi系などのろう合金をクラッドしたものである。熱
交換器の種類としては、ラジエータ、ヒータコア、エバ
ポレータなどがあるが、ブレージングシートは、これら
の熱交換器のタンクやヘッダープレート等に使用されて
いる。
【0003】このような熱交換器の部材としては、ろう
付け性のみならず、強度や耐食性も要求されるが、この
うち耐食性に関しては次のような問題があった。
【0004】すなわち、ブレージングシートを用いた熱
交換器では、ろう付け後もその外面にろう材が残留し、
このろう材層中には、ミクロ的には共晶Siが局部的に
存在するため、この共晶SiとマトリックスのAl母相
との間の腐食電位差に起因する電食が避けられず、した
がってろう材面は本質的に耐食性が劣っていると言わざ
るを得ない。さらに、自動車等の熱交換器については、
腐食環境下で使用されることも多く、そのため外部から
の腐食に対して優れた耐食性を有することが要求される
が、前述のような理由から、従来のブレージングシート
を用いたアルミニウム製熱交換器においてはこのような
要求に充分に応えることが困難であった。
【0005】そこで従来から、アルミニウム製熱交換器
の外部からの腐食に対する耐食性を向上させるための手
法として次のa〜cに示すような手段が講じられてい
る。 a:ろう付け後に防食のための表面処理を施す。 b:ブレージングシートの芯材の電位をろう材(皮材)
に対し50〜180mV貴にして、ろう材を犠牲陽極とし
て機能させ、芯材を防食する。 c:上記のaとbとを組合せる。 しかしながらこれらの手法のうちaおよびcでは、耐食
性そのものは確かに向上するが、表面処理のためのコス
トが高くならざるを得ないという問題がある。またbの
手法では、耐食性自体はある程度向上するが、耐食性の
向上に確実さが欠け、特にろう材継手部ではろうが優先
的に腐食されてしまう問題がある。このように継手部が
優先的に腐食されてしまう問題に対しては、特開昭63
−281795号、特開平1−148489号におい
て、片面もしくは両面にCu,Mnを含有するろう材を
用いたブレージングシートを使用することが提案され、
また特開平1−215945号においてはブレージング
シートの芯材のCu量を規制することが提案されている
が、これらの方法のように単にCu量を制御するだけで
は、ろう付け部の耐食性を確実かつ充分に向上させるこ
とは困難であることが本願発明者等の実験により確認さ
れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述のように従来の技
術では、ブレージングシートを用いたアルミニウム製熱
交換器におけるろう継手部の耐食性を安定して確実かつ
充分に高めることは困難であった。したがってこの発明
は、特にろう継手部の耐食性が優れたアルミニウム製熱
交換器の製法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】前述のような課題を解決
するべく、本発明者等が鋭意実験・研究を重ねた結果、
ろう継手部のろう材中に適量のCuを存在させるととも
にそのCuを可及的に母相(Alマトリックス)中に固
溶させてAl−Cu系金属間化合物が生成されないよう
にすることによって、ろう継手部の耐食性を向上させ得
ることを見出し、この発明をなすに至った。
【0008】具体的には、請求項1に記載された発明
は、アルミニウムのブレージングシートを使用してろう
付けにより熱交換器を製造するにあたり、ろう継手部の
ろう材中の平均Cu含有量が0.05〜1.0wt%の範
囲内となるようにろう付けし、ろう付け加熱後の冷却途
中における固液共存温度域内の540〜577℃の範囲
内の一定温度にろう継手部を20秒〜20分の間保持し
て、Al−Cu系金属間化合物が実質的に生成されない
ようにCuを液相拡散させることを特徴とするものであ
る。
【0009】また請求項2に記載された発明は、アルミ
ニウムのブレージングシートを使用してろう付けにより
熱交換器を製造するにあたり、ろう継手部のろう材中の
平均Cu含有量が0.05〜1.0wt%の範囲内となる
ようにろう付けし、ろう付け加熱後に冷却した後、固液
共存温度域内の540〜577℃の範囲内の一定温度に
ろう継手部を20秒〜20分の間加熱して、Al−Cu
系金属間化合物を液相拡散させることを特徴とするもの
である。
【0010】さらに請求項3に記載された発明は、請求
項1もしくは請求項2の発明の製法において、前記ブレ
ージングシートの芯材として、Cu0.1〜1.0wt%
を含有し、さらに必要に応じてTi0.05〜0.3wt
%、Mn0.1〜1.5wt%、Mg0.1〜0.6wt
%、Si0.4〜1.2wt%のうちの1種または2種以
上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる
合金を用い、かつブレージングシートの両面皮材として
Al−Si系合金、Al−Si−Mg系合金、Al−S
i−Mg−Bi系合金のうちのいずれかを用いるか、ま
たは一方の片面側皮材としてAl−Si系合金、Al−
Si−Mg系合金、Al−Si−Mg−Bi系合金のう
ちのいずれかを、他方の片面側皮材として芯材よりも卑
な電位を有するアルミニウム合金を用いることを特徴と
するものである。
【0011】
【作用】この発明の製法では、ろう継手部のろう材中に
積極的にCuが含有されるようにろう付けを行なう。ろ
う継手部のろう材中には、後に改めて説明するようにA
l−Si共晶組織が生じるが、このAl−Si共晶組織
中における共晶Siの周囲のAl母相に固溶したCu
は、そのAl母相の腐食電位を貴にして、Al母相と共
晶Siとの電位差に起因する腐食を軽減するに有効であ
る。ろう継手部のろう材中の平均Cu含有量が0.05
wt%未満では固溶CuによりAl母相の電位を貴にする
効果が充分ではなく、一方1.0wt%を越えれば自己腐
食等の弊害が生じるから、ろう継手部のろう材中の平均
Cu含有量は0.01〜1.0wt%の範囲内とする必要
がある。但し、ろう継手部のろう材中においてCuが固
溶せずにCuAlなどのAl−Cu化合物として存在
した場合には、後述するように逆に電食を生じやすくし
てしまう。そこで請求項1の発明の製法では、ろう付け
加工後の冷却途中で、Al−Cu化合物が生じないよう
にCuを液相拡散させる処理を行ない、また請求項2の
発明の製法の場合は、ろう付け加熱後に一旦冷却した
後、改めてAl−Cu化合物を液相拡散する処理を行な
う。
【0012】なおこの発明において規定しているろう継
手部のろう材中の平均Cu含有量0.05〜1.0wt%
の条件は、飽くまでろう付け後の状態におけるろう材部
分、すなわちろう付け加熱により溶融の痕跡が認められ
たろう材部分が満たしていれば良い。したがって請求項
3で規定しているようにブレージングシートの芯材とし
てある程度の量のCuを含有するものを用い、ろう付け
加熱時に芯材からろう材中へCuを拡散させることによ
って、ろう付け後のろう継手部のろう材が0.05〜
1.0wt%のCuを含有する状態としても、あるいはろ
う材自体に予めある程度のCuを含有させておいても良
い。
【0013】さらにこの発明におけるろう継手部のろう
材中のCuおよび液相拡散処理の作用について、従来法
と比較しつつ図1〜図4を参照して説明する。
【0014】ろう材は一般に亜共晶のAl−Si合金も
しくはAl−Si−Mg合金またはAl−Si−Mg−
Bi合金からなり、このようなろう材を用いたろう付け
後のろう継手部の溶融凝固部のミクロ組織は、Cuが実
質的に含有されていない従来の一般的な場合には、図1
に示すように、初晶Alからなるα相1とAl−Si共
晶相2とに分けられ、Al−Si共晶相2はSi(共晶
Si)3をAl母相4が取囲んだ様相を呈している。こ
のようにCuが実質的に含有されていないろう継手部に
おける溶融凝固部の共晶Si3の腐食電位は、通常Al
母相4よりも貴となっている。そのため共晶Si3とそ
の近傍のAl母相4との間で電食が発生し、Al母相4
が容易に腐食される。
【0015】一方、Cuを含有するろう継手部の溶融凝
固部のミクロ組織では、特にこの発明で規定するような
液相拡散処理を施さない限りは、図2に示すように、α
相1とAl−Si共晶相2のほか、Al−Cu化合物5
が存在するのが通常である。ここで、Al−Cu系の2
元系状態図によれば、Cu含有量が1%程度ではAl−
Cu化合物の形成が認められない筈であるが、それにも
かかわらずろう継手部の溶融凝固部においては微量のC
u含有量でもAl−Cu化合物が形成されてしまう理由
は、必ずしも明確ではないが、概ね次のように考えられ
る。
【0016】すなわち、通常のAl−Cuの2元系では
最終凝固時に多数の固相のα相の境界にCuが濃縮する
が、このCuの濃縮部は多数のα相の境界によって分散
されるため、Cuの濃縮度はさほど高くならず、Cu含
有量が相当に多くならなければAl−Cu化合物の生成
には至らない。これに対しろう材は一般に相当量のSi
を含有していてその凝固組織は通常Al−Siの亜共晶
合金となっているから、Cu濃縮部の凝固温度直上にお
いてもAl−Si共晶の液相が多量に存在するため、C
uの濃縮が分散されてしまわずに充分に濃縮される結
果、微量のCuでも濃縮度が高くなってAl−Cu化合
物の生成が容易となるものと考えられる。そしてこのよ
うにして生成されるAl−Cu化合物5は、図2に示し
ているように共晶Si3の近傍に位置しており、共晶S
i3とAl母相4との電食を大きく促進させるかあるい
はAl−Cu化合物5とAl母相4との間で新たな電食
を生じさせるものと考えられる。
【0017】このようにろう継手部のろう材中にCuが
含有されている場合、そのCu量が微量であってもAl
−Cu化合物が生成される結果、Cuを含有しない場合
よりも一層電食が生じやすくなる。そこでこの発明では
前述のようにろう付け加熱後の冷却途中での液相拡散処
理もしくはろう付け加熱−冷却後の液相拡散処理によっ
てAl−Cu化合物を液相拡散させ、ろう継手部のろう
材中にAl−Cu化合物が可及的に存在しないようにす
ると同時に、固溶Cuによる積極的な電食抑制効果を得
ようとしているのである。
【0018】図3の(A)〜(D)に、ろう継手部のろ
う材中にCuが含有されるようにろう付けした場合のろ
う材の凝固過程での温度低下に伴なうミクロ組織の変化
を模式的に示す。図3の(A)は凝固開始前の全面的に
液相6となっている状態を示す。凝固開始に伴なって先
ず図3の(B)に示すように初晶Alとしてα相1が形
成される。続いて図3の(C)に示すようにAl−Si
共晶相2(共晶Si3およびAl母相4)が形成され、
その後、図3の(D)に示すような最終的な完全凝固状
態に至る。この図3の(C)から(D)への過程におい
て、Al−Cu化合物の共晶温度は543℃と低いた
め、Al−Si共晶相2の形成過程では図3の(C)に
示すようにAl−Si共晶相2中の共晶Si3の近傍の
液相6AにCuが濃縮し、そのため従来の一般的な方法
では、図3の(D)に示すようにその部分にAl−Cu
化合物5が生成されることになる。
【0019】これに対しこの発明の請求項1の発明の方
法では、ろう付け加熱後の冷却途中の固液共存温度域内
の540〜577℃の範囲内の一定温度、すなわち図3
の(C)の状態の一定温度で20秒〜20分の時間保持
することによって、Cuの濃縮した液相6Aから周辺の
Al母相4中にCuが拡散されることになる。すなわ
ち、図3の(C)におけるCuの濃縮した液相6Aで
は、時間の経過に伴なって図4に示すように周辺へのC
uの拡散7が生じて液相6A中のCu濃度が低下し、そ
のCu濃度の低下に対応してこの液相6Aの固相線が上
昇し、凝固に至る。その結果、Al−Cu化合物5が実
質的に形成されることなく、Al−Si共晶相2のAl
母相4中にCuが固溶した完全凝固組織が得られること
になる。
【0020】一方、請求項2の発明の方法では、ろう付
け加熱後にそのまま冷却することによって一旦は図3の
(D)に示す如くAl−Cu化合物5が生成されるが、
その後、前記同様な固液共存温度域内の一定温度に20
秒〜20分加熱保持することによって、Al−Cu化合
物5が融解して図3の(C)に示すような、Cuの濃度
の高い液相6Aが局部的に生成され、引続いて図4に示
す如くCuの濃度の高い液相6Aからの周辺へのCuの
拡散7が生じ、Al−Si共晶相2のAl母相4中にC
uが固溶した組織が得られことになる。
【0021】このようにして、この発明の請求項1もし
くは請求項2の方法によれば、Al−Cu化合物が実質
的に形成されず、しかもAl−Si共晶のAl母相中に
Cuが固溶した組織が得られる。したがってAl−Cu
化合物による電食促進もしくは新規電食効果の発生が防
止されると同時に、Al母相中でのCuの固溶量の増大
による共晶SiとAl母相との電食反応の緩和が図ら
れ、これらによってろう継手部のろう材の耐食性の向上
も図られるのである。
【0022】さらにこの発明における製法の条件につい
て説明する。
【0023】ろう付け加熱温度は特に限定されないが、
通常は580〜610℃程度が好ましい。ろう付け方法
としては、真空ろう付け法、フラックスろう付け法、お
よび非腐食性フラックスろう付け法等が適用されるが、
特に限定されるものではない。
【0024】液相拡散処理の温度、すなわちろう付け加
熱後の冷却途中もしくはろう付け加熱後冷却してからの
固液共存温度域内で保持する温度としては、Al−Cu
化合物のみが液相にある温度が望ましく、そのための温
度として540℃〜577℃の温度範囲内であることが
必要である。540℃未満ではAl−Cu化合物が固相
となってしまうため、Al−Cu化合物を拡散消滅させ
るに長時間を要するから実用的でなく、一方577℃を
越える高温では、他の化合物をも含んだ多量の液相が存
在し、これを拡散消滅させるには長時間を要してしま
う。またこのような540℃〜577℃の範囲内の保持
は、可及的に一定の温度で行なうことが望ましく、20
秒〜20分の時間内に±5℃以内、好ましくは±3℃以
内で保持する。
【0025】さらに、固液共存温度域内での保持時間
は、要はAl−Cu化合物を充分に液相拡散させてCu
をできるだけ固溶させれば良く、そのためには20秒〜
20分内の範囲内であれば良いが、より望ましくは1分
〜5分の範囲内とする。保持時間が20秒よりも短か過
ぎれば液相拡散の効果が充分に得られず、20分を越え
ればその効果が飽和して経済的に無駄となるだけであ
る。
【0026】なおAl−Cu化合物としてはCuAl
が代表的であるが、特にこれに限られるものではない。
【0027】次にこの発明の製法に用いるブレージング
シートの芯材および皮材について説明する。
【0028】既に述べたように、この発明の製法ではろ
う付け後の状態でろう継手部のろう材中にCuが0.0
5〜1.0wt%含有されていれば良く、そのCuは芯
材、ろう材のいずれから与えられても良いが、請求項3
の発明では特に芯材としてCuを含有するものを用い
て、ろう付け加熱時に芯材からCuがろう継手部のろう
材中に拡散されるようにしている。
【0029】ここで、請求項3の発明における芯材の成
分組成限定理由を説明する。
【0030】Cu:Cuは強度を高めるとともに、固溶
Cuにより腐食電位を高めるに寄与し、その添加量が
0.1wt%未満ではこの効果が充分に発揮されず、一方
1.0wt%を越えれば逆に耐食性が低下するとともに成
形性も低下するから、0.1〜1.0wt%の範囲内とし
た。またCuは芯材中に含有させておくことによって、
ろう付け加熱時に継手部ろう材中に拡散され、既に述べ
たように継手部ろう材中のAl母相中に固溶したCuが
ろう材の電食を緩和する効果をもたらす。
【0031】Ti:Tiは、ピット状の腐食形態を層状
に変化させて最大腐食深さを低下させるに寄与するか
ら、必要に応じて添加される。Tiの添加量が0.05
wt%未満ではこの効果が充分に発揮されず、一方0.3
wt%を越えればその効果が飽和し、経済的ではなくな
る。したがってTiを添加する場合のTi添加量は0.
05〜0.3wt%の範囲内とした。
【0032】Mn:Mnは固溶により強度を高めるに寄
与するから、必要に応じて添加される。添加量が0.1
wt%未満ではその効果が充分に発揮されず、一方1.5
wt%を越えれば、後述するMgとSiによる時効硬化特
性が低下するとともに、CuとAl−Mn−Cu化合物
を生成してその化合物を起点とする耐食性を劣化させ、
さらにはMnによる固溶硬化の反動として成形性を劣化
させるから、Mnを添加する場合の添加量は0.1〜
1.5wt%の範囲内とした。
【0033】Mg:MgはSiとMgSi化合物を形
成してろう付け後の自然時効もしくは人工時効によって
強度を高めるに寄与するから、必要に応じて添加され
る。Mgの添加量が0.1wt%未満では上記の効果が充
分に発揮されず、一方0.6wt%を越えればろうの浸み
込み感受性が高くなったりあるいは非腐食性フラックス
ろう付け法ではフラックスと反応してろう付け性が低下
するから、Mgを添加する場合のMg添加量は0.1〜
0.6wt%の範囲内とした。
【0034】Si:SiはMgとMgSi化合物を形
成して、また一部は単独で、ろう付け後の自然時効もし
くは人工時効によって強度を高めるに寄与するから、必
要に応じて添加される。Siを添加する場合のSi量が
0.4wt%未満では、前述のようにMg添加量を少量に
規制しているため、上記の効果が充分に発揮されず、一
方1.2wt%を越えればろう付け性が低下するから、S
iを添加する場合のSi添加量は0.4〜1.2wt%の
範囲内とした。
【0035】一方請求項3の発明の製法で用いるブレー
ジングにおいて、上述のCu含有芯材と組合わされる皮
材としては、通常のろう材であるAl−Si合金もしく
はAl−Si−Mg合金またはAl−Si−Mg−Bi
合金を用いることができる。そのAl−Si合金もしく
はAl−Si−Mn合金またはAl−Si−Mg−Bi
合金としては、具体的には、4003合金、4004合
金、4104合金、4005合金、4N04合金、40
45合金、4343合金、4145合金、4047合金
などが使用されるが、特にこれらに限定されるものでは
ない。
【0036】また前述のような芯材に対する一方の片面
側の皮材として前記同様なAl−Si合金もしくはAl
−Si−Mg合金またはAl−Si−Mg−Bi合金か
らなるろう材を用いる一方、残りの片面側の皮材とし
て、芯材よりも卑な電位を有するアルミニウム合金を用
いれば、芯材の防食に有利となる。すなわち、芯材より
も卑な電位を有するアルミニウム合金からなる皮材の面
を、水系熱媒体接触面に用いれば、その皮材が芯材に対
して犠牲陽極的な作用を果たし、芯材を効果的に防食す
ることができる。このような芯材よりも卑な電位を有す
るアルミニスム合金としては、要は芯材の成分組成に応
じて選択すれば良いが、通常は1070合金、1050
合金、1200合金などの純Al系合金、7072合金
などのAl−Zn系合金、あるいはAl−In系合金、
Al−Sn系合金、さらにはこれらの合金成分を組合せ
た合金等が好適に用いられる。
【0037】なおこの発明の製法を実施するためのろう
付け炉は、特に限定されるものではないが、連続式のろ
う付け炉を用いる場合、ろう付け室と取出し室との間に
ろう継手部のろう材の固液共存温度域内の一定温度に所
定時間保持させるような保持室を設けたろう付け炉、あ
るいはろう付け後の取出し室を、ろう継手部のろう材の
固液共存温度域内の一定温度に所定時間保持できるよう
に構成したろう付け炉を用いることが望ましい。
【0038】すなわち、従来一般の熱交換器製造用の連
続式ろう付け炉としては、図7に示すように、ろう付け
対象物の搬送方向に入口側から準備室11、予熱室12
A,12B、ろう付け室13、取出し室14がその順に
設けられた構成とされている。なお予熱室12A,12
Bは必要とされる生産性に応じて数室からなっている。
このような従来の連続式ろう付け炉において、取出し室
14は単に冷却を効率良く行なうだけの機能しか有して
いないのが通常である。そのためこのような従来の連続
式ろう付け炉をこの発明の製法の実施に使用するには不
適切である。
【0039】そこでこの発明の製法、特に請求項1の発
明の製法を実施するためには、図6に示すように、ろう
付け室13と取出し室14との間に、ろう付け加熱後の
ろう継手部を、その冷却途中で固液共存温度域内の54
0〜577℃の範囲内の一定温度に保持し得る保持室1
5を設けた連続式ろう付け炉を用いることが望ましい。
なお真空ろう付け法を適用する場合は、ろう付け室13
からの製品の移入などに伴なう炉扉の開閉でろう付け室
13の真空度の低下を招かないように、保持室15は、
大気から数10-5Torrまでの真空排気ができるように構
成することが望ましい。
【0040】また請求項2の発明の製法を実施するため
には、図7に示される連続式ろう付け炉における取出し
室14を、前記同様な540〜577℃の範囲内の一定
の温度に保持し得るように構成しておけば良い。なお従
来の一般の真空ろう付けのための連続式ろう付け炉では
取出し室14はろう付け室13の真空度の低下を招かな
いように真空から数10-5Torrまでの真空排気ができる
ように構成するのが通常であるが、請求項2の製法を真
空ろう付け法で実施するための連続式ろう付け炉の場合
も、同様に取出し室14を真空排気できるように構成し
ておくことが望ましい。
【0041】
【実施例】
実施例1:表1の合金番号1〜5に示す合金を芯材用と
して溶解鋳造し、また表2の4004合金および合金符
号Aの合金を皮材用のろう材として溶解鋳造し、それぞ
れ鋳塊を得た。なお表2において4004合金に含まれ
るCuは不純物である。これらの鋳塊を面削後、均質化
処理を行ない、その後芯材用の各合金は板厚40mmに、
皮材用の各ろう材合金は板厚5mmに、それぞれ熱間圧延
した。次いで芯材用合金の板の両面にろう材合金を種々
の組合せで重ね合わせ、熱間圧延クラッドした後、適宜
中間焼鈍を加えながら冷間圧延し、最終焼鈍を行なって
板厚0.6mmのブレージングシートを得た。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】次いで図5に示す如く、前述のようにして
得られた2枚のブレージングシート20同士を組合せて
ろう継手試験片を作成した。そしてこのろう継手試験片
に対して真空度5×10-5Torr、600℃×3分の条件
で真空ろう付け加熱を行なった。続いてろう付け加熱後
の冷却途中において、565℃×5分間の液相拡散処理
を行なった。
【0045】その後、各試験片に対して、酢酸酸性塩水
噴霧耐食試験を、5%NaCl、pH3、50℃、7.2
×106 sの条件で行ない、試験後のブレージングシー
ト平坦部21およびろう付け部22における最大ピット
深さを測定して、各部分での耐食性を評価した。その結
果を表3に示す。なお同時にろう継手部のろう材中平均
Cu濃度およびその断面のAl−Cu化合物の数も調べ
たので、その結果を表3に併せて示す。なお比較例とし
ては、ろう付け加熱後の冷却途中で前述のような液相拡
散処理を行なわず、そのまま冷却する方法を適用した。
【0046】
【表3】
【0047】表3から明らかなように、ろう継手部のろ
う材中にCuを0.05〜1.0wt%の範囲内で含有さ
せ、かつ請求項1の方法に従い、ろう付け加熱後の冷却
途中で液相拡散を行なった場合には、特にろう継手部で
の耐食性が著しく優れていることが分る。
【0048】実施例2:実施例1と同様にして得られた
各ブレージンクシートを用い、実施例1と同様に図5に
示すようなろう継手試験片を作成した。そのろう継手試
験片に対し、実施例1と同様な条件で真空ろう付け加熱
を行ない、その後一旦室温まで冷却した後、550℃×
5分間の液相拡散処理を行なった。
【0049】そして各試験片について、実施例1と同じ
条件で酢酸酸性塩水噴霧試験を行ない、前記同様にして
耐食性を評価するとともに、ろう継手部のろう材中の平
均Cu濃度およびその断面のAl−Cu化合物の数を調
べた。その結果を表4に示す。なお比較例としては、ろ
う付け加熱後に一旦室温まで冷却した後に液相拡散処理
を行なわなかった例を示す。
【0050】
【表4】
【0051】表4に示されるように、請求項2の方法に
従って、ろう付け加熱後、一旦冷却してから液相拡散を
行なった場合にも、ろう継手部の耐食性が優れることが
明らかである。
【0052】
【発明の効果】実施例からも明らかなように、この発明
のアルミニウム製熱交換器の製法によれば、ブレージン
グシートを用いてろう付けにより熱交換器を組立てるに
あたり、ろう継手部のろう材中に積極的に適切な量のC
uが含有されるようにろう付けを行ない、かつろう付け
加熱後の冷却途中、もしくはろう付け加熱後一旦冷却し
てから、540〜577℃の範囲内の一定温度で液相拡
散処理を行なってCuをAl母相中に固溶した状態とす
ることによって、ろう継手部の耐食性が著しく優れた熱
交換器を得ることができる。またこの発明の製法によれ
ば、ろう継手部の外面側からの腐食に対して著しく耐食
性が優れているため、ブレージングシートの厚みを従来
よりも薄くすることができ、そのため大幅な材料コスト
の低減を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Cuを実質的に含有しないろう継手部における
ろう材の凝固組織を模式的に示す略解図である。
【図2】Cuを含有するろう継手部におけるろう材の凝
固組織を、この発明による液相拡散処理を行なわなかっ
た場合について模式的に示す略解図である。
【図3】Cuを含有するろう継手部におけるろう材の凝
固過程を、この発明による液相拡散処理を行なわなかっ
た場合について段階的に示す略解図である。
【図4】この発明の方法による液相拡散を段階的に説明
するための略解図である。
【図5】実施例におけるろう継手試験片を示す斜視図で
ある。
【図6】この発明の製法の実施に使用される連続式ろう
付け炉の一例を示す略解図である。
【図7】従来の製法に使用されていた連続式ろう付け炉
の一例を示す略解図である。
【符号の説明】
1 α相 2 Al−Si共晶相 3 共晶Si 4 Al母相 5 Al−Cu化合物 6 液相 6A Cuが濃縮した液相

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウムのブレージングシートを使
    用してろう付けにより熱交換器を製造するにあたり、 ろう継手部のろう材中の平均Cu含有量が0.05〜
    1.0wt%の範囲内となるようにろう付けし、ろう付け
    加熱後の冷却途中における固液共存温度域内の540〜
    577℃の範囲内の一定温度にろう継手部を20秒〜2
    0分の間保持して、Al−Cu系金属間化合物が実質的
    に生成されないようにCuを液相拡散させることを特徴
    とする、耐食性に優れたアルミニウム製熱交換器の製
    法。
  2. 【請求項2】 アルミニウムのブレージングシートを使
    用してろう付けにより熱交換器を製造するにあたり、 ろう継手部のろう材中の平均Cu含有量が0.05〜
    1.0wt%の範囲内となるようにろう付けし、ろう付け
    加熱後に冷却した後、固液共存温度域内の540〜57
    7℃の範囲内の一定温度にろう継手部を20秒〜20分
    の間加熱して、Al−Cu系金属間化合物を液相拡散さ
    せることを特徴とする、耐食性に優れたアルミニウム製
    熱交換器の製法。
  3. 【請求項3】 前記ブレージングシートの芯材として、
    Cu0.1〜1.0wt%を含有し、さらに必要に応じて
    Ti0.05〜0.3wt%、Mn0.1〜1.5wt%、
    Mg0.1〜0.6wt%、Si0.4〜1.2wt%のう
    ちの1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不
    可避的不純物よりなる合金を用い、かつブレージングシ
    ートの両面皮材としてAl−Si系合金、Al−Si−
    Mg系合金、Al−Si−Mg−Bi系合金のうちのい
    ずれかを用いるか、または一方の片面側皮材としてAl
    −Si系合金、Al−Si−Mg系合金、Al−Si−
    Mg−Bi系合金のうちのいずれかを、他方の片面側皮
    材として芯材よりも卑な電位を有するアルミニウム合金
    を用いる、請求項1もしくは請求項2に記載の耐食性に
    優れたアルミニウム製熱交換器の製法。
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