JPH0744529Y2 - ラックピニオン式ステアリング装置のラックケース支持装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、ラックピニオン式ステアリング装置のラック
ケース支持装置に関する。

〔従来の技術〕

近年、ハンドルの据切り時にハンドルが軽く操作できる
観点から、乗用車においては、ラックピニオン式ステア
リング装置が主流となっている。

従来、この種のラックピニオン式ステアリング装置にお
けるラック軸は、パワーシリンダー等のラックケース内
に収容され、このラックケースが車体側に支持されてい
る。詳しくは、第４図に示すように、ラックケース21は
車体からの振動がハンドル側に伝わるのを抑制するため
に、その支持部21aと21b外周面上に環状の弾性体22、23
を配置し、さらに弾性体22、23の外周に、車体に取付け
られたハウジング24、25を配置して、車体に弾性的に支
持したラックピニオン式ステアリング装置のラックケー
ス支持装置が知られている。

かかる、従来のラックケースの支持装置に用いられる弾
性体22、23は、第５図ないし第６図に示されるように、
円筒部26とフランジ部27とからなり、これらの円筒部26
とフランジ部27とは、加硫成形により一体に成形されて
いて、これらの内外周面は平滑であって突起を設けてい
ないものであった。

ラックケース21が軸方向や捩り方向に大荷重の作用を受
けると、弾性体22、23はハウジング24及びラックケース
21との接触面で滑って自由表面側に逃げるように変位す
る。そのため、荷重を取除いたとき、弾性体22、23が変
位から戻る際のヒステリシスが大きかった。

従って、従来のラックピニオン式ステアリング装置のラ
ックケース支持装置にあっては、弾性体22、23を介在さ
せることにより、車体からハンドル側に伝わる振動を抑
制できる反面、上述の如くラックケース21が軸方向や捩
り方向に大荷重の作用を受けると、ラックケース及びハ
ウジングとの接触面で滑り、ステアリングの剛性を損な
い、ハンドルを切った後の戻りが悪く、また、据切り操
作した場合充分元に戻らないので、スタート時の操縦安
定性が悪くなるという問題点があった。

〔考案が解決しようとする課題〕

本考案は上記問題点に鑑みてなされたもので、車体等か
らハンドルへの振動伝達を軽減できることは勿論のこ
と、捩り方向や軸方向に大荷重が作用した時の剛性を高
め、急激な曲がり道や据切り後の操縦安定性を高めるよ
うにしたラックピニオン式ステアリング装置のラックケ
ース支持装置を提供することを目的としている。

〔課題を解決するための手段〕

ラックピニオン式ステアリング装置のラック軸を収容し
た筒状のラックケースの外周面に内周面を密接せしめて
配置された環状の弾性体と、該環状の弾性体の外周面に
内周面を密接せしめて配置され、車体に取付けられた筒
状のハウジングとを備えたラックピニオン式ステアリン
グ装置のラックケース支持装置において、前記環状の弾
性体の内外周面に満遍無く多数の小突起および／あるい
は多数の小突条が形成され、且つ前記筒状のハウジング
が複数個の分割体から組立てられ、該筒状のハウジング
により前記環状の弾性体に求心方向に予圧を加えて前記
ラックケースが車体に弾性支持されている構成としてい
る。

〔作用〕

上記のように構成したラックピニオン式ステアリング装
置のラックケース支持装置において、環状の弾性体に予
圧を加えて配置した際、環状の弾性体の内外周面に小突
起あるいは小突条が形成されているので、これ等と密接
するラックケースの外周面およびハウジング内周面との
間の摩擦抵抗は大となり、ハンドルを切る際ラックケー
スに軸方向や捩り方向の大きな変位が環状の弾性体の全
体に生じてもこれに滑りが生じ難くなり、環状の弾性体
が自由表面に変位するのを抑制できる。

〔実施例〕

本考案を、図面に従って詳細に説明する。

第１図において、ラックピニオン式ステアリング装置の
ラックケース支持装置は、ラック軸２を収容している断
面略だ円形のラックケース１の外周に内周面3aが密接さ
れて配置された環状の弾性体３と、この環状の弾性体３
の外周面3bに密接されて配置された分割された車体６側
に取付けられたハウジング４、５により構成されてい
る。環状の弾性体３は環状に形成され、車体への取付部
においてラックケース１の外周のほぼ全周に密着されて
いる。ラックケース１はその軸心にラック軸２を収容し
貫通させている。

ラックケース１は、環状の弾性体３の外側から車体に取
付けられたハウジング４、５により環状の弾性体３に与
圧が加えられることによって車体６側に支持されてい
る。即ちハウジングは車体６に取付けられたハウジング
５と、与圧を加えることができるようにされたハウジン
グ４とに２分割されている。そして、ハウジング５に対
してハウジング４をボルト８で緊締することにより環状
の弾性体３に求心方向に与圧を加えている。

環状の弾性体３は、その内周面3aがラックケース１の外
周面に接するように断面略だ円形、且つ一定厚さをもつ
筒状に形成されている。詳しくは、その両端部には鍔部
11、12が一体に形成されている（第２図）。

又、この環状の弾性体３は軸方向に一端から他端にスリ
ット13が施され軸方向に開口できるようになっている。

そして、この環状の弾性体３の内外周面3a、3bには全面
に略一様な形状の突起10が多数個形成されている。

突起10の高さは0.3〜0.5mmとするのが望ましく、１cm²
当たり15〜20個設けるとよい。

なお突起10は、成形金型の表面にポンチ等で打刻して凹
みを設けることにより、環状の弾性体３に突起を形成す
ることができる。

次に、本考案と従来例の荷重−撓み特性について、第３
図に基づいて説明する。

第３図は、ハンドル操作の中間点を０として、右
（正）、左（負）の全域を想定して、軸方向に荷重を受
けた場合の本考案と従来例の荷重と撓みの特性の比較を
示す荷重−撓み線図である。

第３図において、本考案の環状の弾性体３の軸方向のば
ね特性は実線の（イ）線で示すように変化するのに対
し、従来例のものは点線の（ハ）線で示すように変化し
ている。即ち、荷重が小さいOP間では本考案と従来例の
ばね特性の変化は同じであるが、荷重が大きくなるにつ
れ本考案は（イ）線においてPAと急勾配で立上がって変
化するのに対し、従来例のものは点線の（ハ）線におい
てＱにいたる緩い勾配で変化する。このように本考案
は、軸方向荷重が大きくなると、従来例のものに比べて
撓みが小さい。

又、荷重を取り除くと、本考案のばね特性は実線の
（ロ）線で変化するのに対し、従来例のばね特性は滑り
が大きいため点線の（ニ）線で変化している。即ち、本
考案のばね特性の（ロ）線は従来例のばね特性（ニ）線
に比べて滑りが小さいので急な勾配で戻っている。そし
て、本考案は従来例に比べて荷重を０にした際の残って
いる撓みの値も小さい。

さらに、正（右）、負（左）の荷重を周期的に繰り返し
た場合、本考案のヒステリシスは実線で示す環状線とな
り、従来のものは点線で示す環状線となる。

このように、本考案は従来例に比べて、ヒステリシスが
小さい。

従って、本考案は従来例に比べて、スリップが少なく、
戻り時間も早くなる。

なお、捩り方向に荷重を受けた場合、本考案と従来例の
荷重−撓みの特性の比較を示す荷重−撓み線図も前記軸
方向荷重の場合と同様の結果が得られる。

〔効果〕 以上に説明したように、本考案のラックピニオン式ステ
アリング装置のラックケース支持装置によれば従来例と
同様に振動伝達を軽減できることは勿論のこと、特に、
大荷重の入力が軸方向および捩り方向に作用したときス
テアリングの剛性を高めることができ、急激な曲がり道
や据切り後の操縦安定性を高めることが出来る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案のラックピニオン式ステアリング装置の
ラックケース支持装置の要部横断面図、第２図は第１図
における環状の弾性体の斜視図、第３図は軸方向に往復
荷重を受けたときの本考案と従来例との比較を示す荷重
−撓み線図、第４図は従来のラックピニオン式ステアリ
ング装置のラックケース支持装置の要部を断面で示す概
略図、第５図ないし第６図は従来のラックケース支持装
置における環状の弾性体の斜視図である。 １……ラックケース、２……ラック軸 ３……環状の弾性体、4,5……ハウジング ６……車体、9,10……突起

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ラックピニオン式ステアリング装置のラッ
   ク軸を収容した筒状のラックケースの外周面に内周面を
   密接せしめて配置された環状の弾性体と、該環状の弾性
   体の外周面に内周面を密接せしめて配置され、車体に取
   付けられた筒状のハウジングとを備えたラックピニオン
   式ステアリング装置のラックケース支持装置において、
   前記環状の弾性体の内外周面に満遍無く多数の小突起お
   よび／あるいは多数の小突条が形成され、且つ前記筒状
   のハウジングが複数個の分割体から組立てられ、該筒状
   のハウジングにより前記環状の弾性体に求心方向に予圧
   を加えて前記ラックケースが車体に弾性支持されている
   ことを特徴とするラックピニオン式ステアリング装置の
   ラックケース支持装置。