JPH0740502A - プレス成形性、耐食性、耐溶剤性に優れた潤滑樹脂処理鋼板 - Google Patents

プレス成形性、耐食性、耐溶剤性に優れた潤滑樹脂処理鋼板

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JPH0740502A
JPH0740502A JP5188351A JP18835193A JPH0740502A JP H0740502 A JPH0740502 A JP H0740502A JP 5188351 A JP5188351 A JP 5188351A JP 18835193 A JP18835193 A JP 18835193A JP H0740502 A JPH0740502 A JP H0740502A
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steel sheet
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corrosion resistance
treated steel
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Hiroyuki Ogata
形 浩 行 尾
Keizou Okuno
埜 計 造 奥
Yoshihiro Naruse
瀬 義 弘 成
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    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】耐食性、高速プレス成形時の連続成形性、耐溶
剤性に優れるあるいはこれらに加えて導電性に優れる表
面処理鋼板の提供。 【構成】亜鉛系又はアルミニウム系めっき鋼板あるいは
冷延鋼板上に、付着量が金属Cr換算10〜200mg
/m2 のクロメート被膜を両面に有し、その上に下記組
成の樹脂混合物または複合物でかつそのガラス転移温度
(Tg)が−30〜70℃でその付着量が0.1〜3.
0g/m2 である熱硬化性樹脂被膜を両面に有すること
を特徴とする。(樹脂組成)水酸基及び/又はカルボキ
シル基を有する樹脂100重量部、硬化剤1〜30重量
部、融点70℃以上のポリオレフィンワックス1〜20
重量部、シリカ10〜80重量部。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車、家電、建材製
品等に使用される表面処理鋼板であって、プレス加工
性、耐溶剤性、耐食性に優れた潤滑樹脂処理鋼板に関す
る。本発明はまた、家電製品を中心として、自動車、建
材製品等にも適用できる表面処理鋼板であって、導電
性、アース性、スポット溶接性に優れかつ曲げ加工性、
耐溶剤性、耐食性にも優れる潤滑樹脂処理鋼板に関す
る。
【0002】
【従来の技術】自動車、家電、建材製品等に使用される
鋼板、特に亜鉛または亜鉛系合金めっき鋼板のようなめ
っき鋼板は、無塗装または塗装して使用するが、それま
でに種々の工程を通り、しかもその間に、かなり長時間
にわたって無塗装の状態でおかれる。そのため、その間
に錆が発生したり、めっき鋼板表面に種々の物質が吸
着、付着したりして、塗装の密着性が悪くなるなどの問
題がある。
【0003】従って、めっき鋼板が需要家で使用される
までの一次防錆処理として、クロメート処理が施され
る。しかし、このクロメート処理の耐食性は、一般に、
塩水噴霧試験でせいぜい24〜48時間程度であり、ま
た、特殊クロメート処理であるシリカゾルを添加した塗
布型クロメート処理でも、塩水噴霧試験で100〜20
0時間の耐食性しか得られない。従って、長期にわたっ
て苛酷な腐食環境下で使用される製品では、耐食性が不
十分である。
【0004】製品が苛酷な腐食環境下で使用される場合
を考慮して、クロメート処理の代りにりん酸塩処理を施
した後、10〜20μm厚程度の塗装を施し、腐食を防
止する方法がある。しかるに、このような方法ではスポ
ット溶接、アース性など通電性の関係する性能が低下ま
たは実施不能になる。また、このような厚塗り塗装を施
した鋼板にプレス加工等を施すとき、塗膜の剥離や亀裂
を生じ、その部分で局部的な耐食性の低下を生じる。ま
た、塗装板では、スポット溶接などの溶接が困難または
不可能になるので、溶接部は予め塗膜の除去が必要にな
る。さらに、塗膜を厚くするほど多くの塗料を消費し、
コストアップを招く等の問題もある。
【0005】従って、塗料を用いることなく、それ自体
優れた耐食性を有する表面処理鋼板の開発が望まれてい
る。
【0006】また、鋼板をプレス成形するに際しては、
潤滑油を鋼板表面に塗布するが、この作業は脱脂工程が
あるため、加工時に潤滑油等を使用せずにプレス加工が
できる表面処理鋼板の開発も望まれている。
【0007】さらに、需要家が、従来の表面処理鋼板を
用いて種々の工程を経て製品を製造する場合、作業者の
ハンドリングなどにより、鋼板の表面に指紋等の汚れが
付着し、商品価値を著しく低下させることがある。従っ
て、ハンドリング時に、指紋等の汚れがつき難い表面処
理鋼板の開発も望まれている。
【0008】他方、薄膜型樹脂鋼板は家電用の電子、電
気製品用として用いられる場合には、アース性を必要と
する場合がある。また自動車用鋼板あるいは一部の家電
用鋼板として用いられる場合には、スポット溶接性、電
着塗装性が要求される場合があり、何れにしても通電性
の要求されることがある。
【0009】このような背景の下で、従来技術として、
(1)亜鉛系めっき鋼板上にクロメート被膜を有し、そ
の上に、複合リン酸アルミニウム、クロム系防錆顔料
と、潤滑剤としてポリオレフィンワックス、二硫化モリ
ブデン、シリコーンとを含有するウレタン変性エポキシ
樹脂層を1〜10g/m2 有することを特徴とする耐食
性および潤滑性に優れた2層クロメート処理鋼板(特公
昭62−24505号公報)、(2)亜鉛系めっき鋼板
上にクロメート被膜を有し、その上に、シリカ粉末、親
水性ポリアミド樹脂および潤滑剤としてポリエチレンワ
ックスを含有するウレタン化エポキシエステル樹脂層を
0.3〜5μm有することを特徴とするカチオン電着塗
装性に優れた有機複合鋼板(特開昭63−35798号
公報)、(3)γ層単層のみからなるニッケル含有亜鉛
めっき鋼板上にクロメート被膜を有し、その上に、導電
顔料としてリン化鉄、潤滑剤としてポリオレフィン系化
合物、カルボン酸エステル系化合物、ポリアルキレング
リコール系化合物から選ばれた化合物と塗料用樹脂とを
含有する塗膜層を1〜20μm有することを特徴とする
耐食性塗装積層体(特開昭62−73938号公報)、
(4)樹脂中に導電性物質(カーボンブラック、グラフ
ァイト、金属粉末、半導体酸化物、リン化鉄)を含有さ
せることにより、樹脂被膜の電気抵抗を低下させ、潤滑
剤(ポリエチレンワックス、脂肪酸アミド系、金属石け
ん類、金属硫化物類、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、グリー
ス、アルカリ金属、硫酸塩など)を含有させることによ
り、溶接可能な防錆潤滑性被覆形成性組成物を得る(特
開昭63−83172号公報)が開示されている。
【0010】(1)においては、複合りん酸アルミニウ
ム、クロム系防錆顔料、ウレタン変性エポキシ樹脂の効
果により優れた耐食性が発現され、また二流化モリブデ
ン、シリコーン、ウレタン変性エポキシ樹脂の効果によ
り優れたプレス成形性が発現される。しかし付着量が1
〜10g/m2 では、被膜の電気抵抗が高く通電性、ア
ース性、スポット溶接性は改良されない。
【0011】(2)においては、親水性ポリアミド樹脂
を樹脂中に添加させることにより、電着塗装時電着樹脂
液が鋼板の樹脂中に浸透していき、樹脂鋼板の被膜の電
気抵抗を低下させるため電着塗装性が向上する。しかし
この方法では通常の状態での樹脂鋼板の通電性を上げる
ことはできず、アース性、スポット溶接性は改良されな
い。
【0012】また(3)、(4)においては導電顔料と
して無機のものを用いるため顔料の粒径が大きく、樹脂
膜厚も一般に厚くせざるをえず、その結果として、プレ
ス加工時の耐パウダリング性は一般に悪くなる。また、
アース性、スポット溶接性も期待したほど向上しない。
【0013】(1)〜(4)のいずれもが、クロメート
被膜上に、潤滑剤としてポリオレフィン系化合物を含有
する潤滑樹脂被膜を有することを特徴とする、耐食性、
潤滑性に優れる2層型被膜処理鋼板である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術における
2層型被膜処理鋼板の潤滑性は、低速プレス成形(〜5
mm/sec)に対しては有効であるが、実プレスのよ
うな高速プレス成形(250mm/sec程度)におけ
る苛酷な成形条件では、プレス時に摺動面が高温(70
℃以上)になり、樹脂被膜層が剥離し易くなり、樹脂剥
離粉が金型、プレス成形品表面に付着し、連続成形性お
よび加工後の外観を損うという問題がある。連続成形性
とは、前記のような高速で連続的(約1000個)にプ
レスを行った時、金型が120℃程度に蓄熱した状態で
のプレス成形性の事をいう。
【0015】また最近では本タイプの鋼板がフロン規制
の必要性から注目をあびており、例えばフロン規制対
策、取り扱い注意等表示シールを貼る際アルコールをは
じめ各種溶剤によって表面の汚れがとられる場合が多い
が、樹脂が硬化膜を形成していなければやはり外観を損
うという問題がある。
【0016】本発明は、上述した従来技術の欠点を解消
し、耐食性に優れており、かつ、高速プレス成形時の連
続成形性、耐溶剤性に優れる表面処理鋼板を提供するこ
とを目的とする。
【0017】また、本発明は、上述した従来技術の欠点
を解消し、導電性、プレス成形性、耐食性に優れた潤滑
樹脂処理鋼板を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】前述した従来技術に見ら
れるように、鋼板表面にクロメート処理後、潤滑性樹脂
系被膜を形成させることにより、ZnまたはZn系合金
めっき鋼板のプレス成形性、耐食性を向上させることが
できる。
【0019】本発明者らは、これらの従来技術の長所を
生かしつつ、高速プレス成形下でも潤滑性が良好かつ耐
溶剤性にも優れた有機樹脂被膜を鋭意検討した結果、水
酸基および/またはカルボキシル基を有する樹脂をこれ
らと反応しうる硬化剤と焼付加熱によって反応せしめ、
架橋塗膜とすることにより耐溶剤性を向上させ、固形潤
滑剤として融点が70℃以上のポリオレフィンワックス
を含有させ、かつこの樹脂被膜のガラス転移温度(T
g)を−30〜70℃とすることにより、高速プレス成
形下での潤滑性を向上させることができることを見い出
し、本発明に至った。
【0020】また、樹脂混合物または複合物の付着量を
乾燥重量で0.1〜1.0g/m2の範囲に制御するこ
とによりアース性、スポット溶接性、導電性など通電性
に関わる性能を向上させることができることを見い出
し、本発明に至った。
【0021】すなわち、本発明は、亜鉛または亜鉛系め
っき鋼板上に、付着量が金属Cr換算で片面あたり10
〜200mg/m2 のクロメート被膜を両面に有し、そ
の上に下記組成の樹脂混合物または複合物でかつ該樹脂
混合物または複合物のガラス転移温度(Tg)が−30
〜70℃でその付着量が片面あたり乾燥重量で0.1〜
3.0g/m2 である熱硬化性樹脂被膜を両面に有する
ことを特徴とするプレス成形性、耐溶剤性、耐食性に優
れた潤滑樹脂処理鋼板を提供するものである。 (樹脂混合物または複合物の組成) 水酸基および/またはカルボキシル基を有する樹脂 100重量部 上記樹脂と反応しうる硬化剤 1〜30重量部 融点が70℃以上のポリオレフィンワックス 1〜20重量部 シリカ 10〜80重量部
【0022】ここで、アース性、スポット溶接性、導電
性などの通電性に関わる性能が必要である場合には、熱
硬化性樹脂被膜の片面当りの付着量を、乾燥重量で0.
1〜1.0g/m2 にするのがよい。
【0023】
【作用】以下に、本発明のプレス成形性、耐溶剤性、耐
食性に優れたあるいはこれに加えて導電性に優れた潤滑
樹脂処理鋼板について、詳細に説明する。本発明で対象
とする潤滑樹脂処理鋼板の素材としては、電気亜鉛めっ
き鋼板、電気亜鉛−ニッケルめっき鋼板、溶融亜鉛めっ
き鋼板、5%アルミニウム−亜鉛溶融めっき鋼板等の各
種亜鉛系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、冷延
鋼板を挙げることができる。
【0024】亜鉛系めっき鋼板等の上記鋼板上のクロメ
ート被膜は、通常の被膜でよく、例えば、無水クロム
酸、クロム酸塩、重クロム酸等を主剤とした水溶液ある
いはこれにコロイダルシリカ等を混合した処理液を、亜
鉛系めっき鋼板等の鋼板上に、通常の方法で処理したク
ロム水和物主体の被膜である。
【0025】本発明の耐食性に優れた潤滑樹脂処理鋼板
では、前記のクロメート被膜上に次のような組成および
付着量の有機樹脂被膜を有する。
【0026】即ち、水酸基および/またはカルボキシル
基を有する樹脂に、該樹脂100重量部に対し該樹脂と
反応しうる硬化剤1〜30重量部、固形潤滑剤として融
点が70℃以上のポリオレフィンワックスを1〜20重
量部、さらにシリカ10〜80重量部を含有し、かつ該
樹脂混合物または複合物のガラス転移温度(Tg)が−
30〜70℃の潤滑樹脂被膜であって、その付着量が片
面乾燥重量で0.1〜3.0g/m2 の被膜である。導
電性を必要とする場合には、潤滑樹脂被膜の片面当りの
付着量は乾燥重量で0.1〜1.0g/m2 とするのが
よい。
【0027】本発明の潤滑樹脂混合物に使用するベース
樹脂は、水酸基および/またはカルボキシル基を有する
樹脂であるが、このような樹脂としては、エポキシ樹
脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリ
エステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等があげられ
る。またベース樹脂と反応しうる硬化剤としては、フェ
ノール、メラミン、イソシアネート、アミン等があげら
れる。
【0028】本発明におけるこれらの樹脂/硬化剤の組
合せの有用性は、以下の点にある。即ち、該潤滑樹脂処
理鋼板は、耐食性を向上させるために、シリカ−樹脂の
無機有機複合被膜を形成させたものであるが、シリカ表
面の水酸基と反応して高耐食性被膜の形成が可能な活性
基として、水酸基やカルボキシル基が望ましい。
【0029】シリカは、該潤滑樹脂処理鋼板の耐食性を
向上させるために配合するが、コロイダルシリカ、例え
ば、スノーテックス−Oやスノーテックス−N(いずれ
も日産化学社製)等や、オルガノシリカゾル、例えば、
エチルセロソルブシリカゾル(日産化学社製)等や、シ
リカ粉末、例えば、気相シリカ粉末(アエロジル社製)
等や、有機シリケート、例えばエチルシリケート等を用
いるとよい。シリカ粉末の平均粒径は、5〜70nmで
あることが好ましい。
【0030】また、ベース樹脂とシリカの反応促進剤と
して、シランカップリング剤を用いてもかまわない。シ
ランカップリング剤としては、γ−(2−アミノエチ
ル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシド
キシプロピルトリメトキシシラン等があげられる。
【0031】しかしながら、上記シリカとベース樹脂の
反応により高耐食性被膜が形成されるものの耐溶剤性向
上にとって充分な架橋塗膜を形成せしめるためには、さ
らに硬化剤として、フェノール、メラミン、イソシアネ
ート、アミン等を添加しておく必要がある。
【0032】ベース樹脂中に、反応促進剤、安定剤、分
散剤等の一般的な添加剤を、本発明の趣旨を損わない範
囲で適宜添加することは差支えなく、むしろ好ましい。
【0033】次に、潤滑性付与剤について説明する。一
般に、乾式潤滑剤としては、ワックス、二硫化モリブデ
ン、有機モリブデン、グラファイト、フッ化カーボン、
金属セッケン、窒化ホウ素、フッ素樹脂等が知られてお
り、これらは、軸受け用潤滑剤として使用されたり、プ
ラスチックや油、グリース等に添加して、潤滑性を向上
させるために用いられている。そこで、これらの潤滑剤
を用いて、潤滑性の優れた樹脂処理鋼板を得るための検
討を行った。
【0034】本発明のように、高速プレス成形下という
摺動部の発熱を伴う苛酷なプレス成形条件で、被膜剥離
を起さず、連続成形可能な高度の潤滑性を有する樹脂処
理鋼板を得るためには、摩擦係数が小さく融点の高い潤
滑剤が、樹脂被膜表面に、均一に存在する樹脂被膜が必
要である。そのような被膜で処理された鋼板では、鋼板
上の樹脂被膜表面の潤滑剤が金型との摩擦を低減し、樹
脂被膜の損傷が防止され、連続成形性が向上する。
【0035】このような目的に合った潤滑剤、ベース樹
脂およびこれらの組合せについて鋭意検討を行った。本
発明のように、高速プレス成型下という摺動部の発熱を
伴う苛酷なプレス成型条件で、被膜剥離を起こさず、連
続成型可能な高度の潤滑性を有する樹脂処理鋼板を得る
ためには、一般にベース樹脂のガラス転移温度が70℃
程度以上と高くなければならないが、一方摩擦係数が小
さく樹脂被膜表面に突出した潤滑剤を含有する樹脂被膜
も有効であることが分った。このような潤滑剤を用いる
ことにより、金型との摩擦衝撃を潤滑剤が吸収すること
となり、ベース樹脂のガラス転移温度を下げることが可
能となるのである。
【0036】しかしながら、ベース樹脂が熱可塑性の場
合は、壁温が、ガラス転移温度を超えた場合に樹脂が軟
化、剥離し、連続成形性を低下させるため熱硬化系タイ
プでの検討を試みた。熱硬化させた樹脂膜は、プレス時
の壁温がガラス転移温度を超えても樹脂が極端に軟化ま
たは流動することがなく前記連続成形性の低下はない。
【0037】このような目的に合った潤滑剤について鋭
意検討した結果、平均粒径が1〜7μmのポリオレフィ
ンワックスが好適であることが分った。高速プレス成型
時、摺動面は高温となる。この時、ポリオレフィンワッ
クスは潤滑剤として有効に働く。ポリオレフィンワック
スはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のオ
レフィン系炭化水素の重合体から成るワックスであれば
いずれでもよいしこれらを組み合せて用いても良い。
【0038】またポリオレフィンワックスには種々の融
点のものが知られているが、70℃以上の融点であれ
ば、いづれのものを用いてもよい。低融点と高融点のも
のを組み合せて用いてもよく、その場合一層加工性が良
好となる。
【0039】続いて、被膜付着量や配合成分の配合量等
の数値限定理由を述べる。本発明では、クロメート被膜
の付着量は、金属クロム換算で、片面で10〜200m
g/m2 とするのがよい。付着量が200mg/m2
超えても、付着量の増加の割合に対し耐食性の向上効果
が少なく、また処理液の劣化が激しくなり、表面外観が
悪くなり、しかも被膜が厚くなることによりプレス成型
性が低下するからである。10mg/m2 未満の場合、
鋼板表面と樹脂との密着性および耐食性が低下する。
【0040】また、本発明で用いる樹脂混合物または複
合物中の配合成分は、下記の割合で含まれていることが
好ましい。
【0041】ベース樹脂を熱硬性タイプにするための硬
化剤としては、水酸基および/またはカルボキシル基を
有する樹脂100重量部に対し、1〜30重量部加える
ことが好ましい。1重量部未満では熱硬化せず、30重
量部を超えると未反応硬化剤のために耐食性、密着性に
劣る。
【0042】耐食性を向上させるためのシリカは、水酸
基および/またはカルボキシル基を有する樹脂100重
量部に対し、10〜80重量部加えることが好ましい。
10重量部未満では、耐食性向上効果が小さく、80重
量部を超えると、被膜脆化が高まり、成形時に型カジリ
を生じ、プレス成形性を低下させる。
【0043】潤滑性付与剤の添加量は、水酸基および/
またはカルボキシル基を有する樹脂100重量部に対
し、ポリオレフィンワックスを1.0〜20重量部が望
ましい。1.0重量部未満では潤滑性向上への効果が少
なくプレス成形性も劣り、20重量部を超えると、樹脂
被膜強度が低下し、プレス加工外観が低下する。また、
ポリオレフィンワックスは、オレフィン系炭化水素の重
合体から成る融点70℃以上のワックスであればいずれ
でも良い。融点が70℃未満のものでは高速プレス成形
下での連続成形性向上への効果は少ない。
【0044】以上に述べた成分を、以上に述べた割合で
含有させ、ベース樹脂等の必須成分と、その他の添加剤
を組み合わせることが好ましい。
【0045】上記樹脂混合物または複合物のガラス転移
温度(Tg)が、−30〜70℃となるようにベース樹
脂等の必須成分と、その他の添加剤を組合せることが好
ましい。Tgが−30℃未満であると、高速プレス成形
時の加工面の昇温により被膜が熱分解、剥離し、剥離樹
脂粉が堆積し、連続成形性を低下させる。Tgが70℃
超では、常温付近の動摩擦係数が著しく高くなりプレス
成形性に劣る。なお、連続成形性とは、前記のような高
速で連続的(約1000個)にプレスを行った時、金型
が120℃程度に蓄熱した状態でのプレス成形性の事を
いう。
【0046】さらに、このような潤滑樹脂被膜の付着量
は、片面で乾燥重量で0.1〜3.0g/m2 とするこ
とが好ましい。付着量が0.1g/m2 未満では、鋼板
表面の凹凸を埋めきれず、耐食性、プレス性の向上効果
が小さい。また、3g/m2を超えると、耐食性の向上
効果はあるが、被膜が厚くなることにより、プレス成形
性が低下し、かつ、経済的でないからである。
【0047】導電性が要求される鋼板の潤滑樹脂被膜の
付着量は、片面で乾燥重量で0.1〜1.0g/m2
することが好ましい。付着量が0.1g/m2 未満で
は、鋼板表面の凹凸を埋めきれず、耐食性、プレス性の
向上効果が小さい。また、1.0g/m2 を超えると耐
食性、プレス成形性の向上効果はあるが、導電性、アー
ス性、溶接性等通電性に関わる性能の低下が著しい。
【0048】次に、本発明の、耐食性に優れた潤滑樹脂
処理鋼板の製造方法について、詳細に説明する。本発明
で対象とする潤滑樹脂処理鋼板の素材としては、電気亜
鉛めっき鋼板、電気亜鉛−ニッケルめっき鋼板、溶融亜
鉛めっき鋼板、5%アルミニウム−亜鉛溶融めっき鋼板
等の各種亜鉛系めっき鋼板およびアルミニウム系めっき
鋼板、冷延鋼板などを挙げることができる。
【0049】本発明の成型性に優れた潤滑樹脂処理鋼板
の製造にあたり、めっき鋼板上に施すクロメート処理
は、通常の処理方法に従えばよく、例えば、無水クロム
酸、クロム酸塩、重クロム酸等を主剤とした水溶液中で
浸漬クロメート処理、電解クロメート処理を行なえばよ
く、あるいは上記水溶液にコロイダルシリカ等を混合し
た処理液をめっき鋼板上に塗布する塗布型クロメート処
理等を行って、クロム水和物を主体とする被膜を形成さ
せてもよい。なお、めっき鋼板をクロメート処理液で処
理した後、フラットゴムロール等で絞る工程や、熱風乾
燥等の乾燥工程を経て、クロメート被膜が鋼板両面に形
成される。
【0050】続いて、前記のクロメート被膜上に、上述
した樹脂混合物または複合物からなる有機樹脂被膜を、
以下の方法で形成させる。各配合成分を所定量用意し、
それらを混合・分散させて、物理的に均一とする。次
に、好ましくはシランカップリング剤を加え、再び混合
・分散させ、物理的に均一な樹脂混合物または複合物と
する。前記樹脂混合物または複合物をロール塗布、スプ
レー塗布、浸漬塗布、ハケ塗り等の公知の通常の方法に
よって、所定の厚さとなるように塗布し、通常50〜1
80℃で、通常3〜90秒間乾燥させる。
【0051】
【実施例】次に本発明を実施例に基いてさらに具体的に
説明する。 (本発明例)下記条件下で、本発明のプレス成形性、耐
食性、耐溶剤性に優れた潤滑樹脂処理鋼板(請求項1に
相当する)および上記特性に加えて導電性に優れた潤滑
樹脂処理鋼板(請求項2に相当する)の試験片No.1
〜17をそれぞれ作製した。また、それぞれの鋼板につ
いての製造条件、特性、評価については、前者(プレス
成形性、耐食性、耐溶剤性に優れた潤滑樹脂処理鋼板)
は表1に、後者(プレス成形性、耐食性、耐溶剤性、導
電性に優れた潤滑樹脂処理鋼板)は表2にまとめて示
す。 1)めっき鋼板の種類 A.電気亜鉛めっき鋼板 板厚0.8mm 亜鉛めっき付着量20g/m2 B.電気亜鉛−ニッケルめっき鋼板 板厚0.8mm 亜鉛−ニッケルめっき付着量20g/m2 ニッケル含有量12% C.溶融亜鉛めっき鋼板 板厚0.8mm 亜鉛めっき付着量60g/m2 2)クロメート処理 前記各めっき鋼板に、CrO3 20g/L、Na3
lF5 4g/Lなる組成のクロメート処理液をスプレ
ー処理した後、フラットゴムロールで絞り、熱風乾燥し
た。クロメート被膜の付着量は、スプレー処理時間を調
整して両面塗布し、表1または表2に示す値(片面当
り、10〜200mg/m2 )にした。 3)樹脂被膜処理 表1または2に示す組成の処理液を、ロール塗布によ
り、片面で乾燥重量で表1または表2に示す付着量とな
るように両面塗布し、150℃で40秒間乾燥し、樹脂
被膜を形成した。ポリオレフィンワックスは平均粒径3
μmのポリエチレンワックスを用いた。なお、表中の注
は下記の通りである。 (注1) A:ポリウレタン樹脂 Tg=20℃ B:ポリウレタン樹脂 Tg=−25℃ C:エポキシ−ウレタン樹脂 Tg=70℃ (注2) a:ブロック化イソシアネート(住友バイエルウレタン
社製デスモジュールAPステーブル) b:メチル化メラミン(三井サイアナミッド(株)社製
サイメル303) (注3) アエロジル社製シリカ粉末(平均粒径:20nm)
【0052】(比較例)前記各めっき鋼板に、本発明例
と同様にクロメート処理を施し、その上に、表1または
表2に示す組成の処理液を、表1または表2に示す付着
量となるように塗布し、樹脂被膜を形成させ、試験片N
o.18〜29をそれぞれ作製した。
【0053】(試験・評価方法) 1)潤滑性試験 無塗油の試験片を、エリクセンカップ絞り試験機で絞り
比を変えて加工し、その限界絞り比を求めた。また、そ
の時の耐パウダリング性を、ダイスに付着した剥離粉を
セロテープで採取し、その程度から評価した。 プレス条件 ・しわ押え圧 2トン ・ポンチ径 33mmφ ・ブランク径 59〜79mmφ ・絞り速度 5mm/sec、500mm/sec 評価基準 ◎:ダイス付着なし ○:ダイス付着若干あり △:ダイス付着やや多 ×:ダイス付着多
【0054】2)平板耐食性試験 塩水噴霧試験(JIS Z−2371)を行い、白錆発
生までに要する時間で評価した。
【0055】3)加工後耐食性試験 無塗油の試験片を、エリクセンカップ絞り試験機で、下
記条件にて絞り加工を施し、そのカップの絞り面に対
し、塩水噴霧試験(JIS Z−2371)を行なっ
た。白錆発生までに要する時間で評価した。 プレス条件 ・しわ押え圧 2トン ・ポンチ径 33mmφ ・ブランク径 59mmφ ・絞り比 1.78 ・絞り速度 500mm/sec
【0056】4)耐溶剤性 無塗油の試験片をエタノールを浸透させたガーゼで1k
g/cm2 の圧力を加えてこすり、クロメート面が出現
するまでの往復回数によって優劣を評価する。
【0057】5)アース性(通電性)試験 三菱油化(株)製表面抵抗測定装置、ロレスター(電極
端子間:10mm、電極端子径:2mm)を用いて、鋼
板の表面抵抗値を測定した。
【0058】6)スポット溶接性試験 ラジアス型(10mmφ、100mmR)の電極を用い
て通電サイクル:13サイクル、加圧力:190kg、
電流値:7.8KAで連続打点試験を行い、引っ張り強
度、ナゲット径を求めた。
【0059】前記の方法にて作製された表1および表2
に示すそれぞれの試験片No.1〜29について、上記
の方法で、潤滑性、平板耐食性、加工後耐食性、耐溶剤
性あるいはさらにアース性、スポット溶接性を試験・評
価した。結果は表1および表2に示した。表1および表
2から明らかなように、本発明の潤滑樹脂処理鋼板は、
耐溶剤性に優れ、高速プレス成形時における潤滑性が良
好であり、そのために、平板耐食性のみならず、加工後
の耐食性も良好である。また、樹脂被覆量を適切に選定
したものは、上記特性に加えて溶接性、導電性、アース
性にも優れている。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
【表7】
【0067】
【表8】
【0068】
【発明の効果】本発明によれば、耐食性に優れており、
かつ、高速プレス成形時における潤滑性が良好なため、
プレス加工時にプレス油等の潤滑油を使用せずに、その
ままプレス加工が可能でありハンドリング時に指紋等の
汚れがつき難い潤滑樹脂処理鋼板とその製造方法を提供
することができるという効果がある。また、需要家にお
いて使用するまでの期間に、錆の発生が少ないめっき鋼
板が得られるという効果がある。さらに、プレス加工時
の潤滑性を良好とするために、従来、需要家において行
われていた潤滑油の塗布作業や脱脂処理を省略できると
いう効果があり、そのために、コストダウンが図れると
いう効果がある。
【0069】また、最近のニーズに伴う、地球環境対策
シール、取り扱い注意シール等各種シールを貼る際のア
ルコールをはじめとする各種溶剤に対する耐性にも優れ
ているという効果がある。しかも、溶接性、導電性、ア
ース性等通電性に関わる諸性能にも優れており、応用用
途も広がるという効果がある。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】亜鉛または亜鉛系めっき鋼板上に、付着量
    が金属Cr換算で片面あたり10〜200mg/m2
    クロメート被膜を両面に有し、その上に下記組成の樹脂
    混合物または複合物でかつ該樹脂混合物または複合物の
    ガラス転移温度(Tg)が−30〜70℃でその付着量
    が片面あたり乾燥重量で0.1〜3.0g/m2 である
    熱硬化性樹脂被膜を両面に有することを特徴とするプレ
    ス成形性、耐溶剤性、耐食性に優れた潤滑樹脂処理鋼
    板。 (樹脂混合物または複合物の組成) 水酸基および/またはカルボキシル基を有する樹脂 100重量部 上記樹脂と反応しうる硬化剤 1〜30重量部 融点が70℃以上のポリオレフィンワックス 1〜20重量部 シリカ 10〜80重量部
  2. 【請求項2】熱硬化性樹脂被膜の付着量が片面あたり乾
    燥重量で0.1〜1.0g/m2 である請求項1に記載
    の導電性、プレス成形性、耐食性、耐溶剤性に優れた潤
    滑樹脂処理鋼板。
  3. 【請求項3】ポリオレフィンワックスの平均粒径は1〜
    7μmである請求項1または2に記載の潤滑樹脂処理鋼
    板。
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