JPH0738793B2 - 2,3―ジヒドロキシ―p―トルイル酸の製造法及びこれに用いる微生物 - Google Patents

2,3―ジヒドロキシ―p―トルイル酸の製造法及びこれに用いる微生物

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JPH0738793B2
JPH0738793B2 JP4433290A JP4433290A JPH0738793B2 JP H0738793 B2 JPH0738793 B2 JP H0738793B2 JP 4433290 A JP4433290 A JP 4433290A JP 4433290 A JP4433290 A JP 4433290A JP H0738793 B2 JPH0738793 B2 JP H0738793B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は微生物またはその休止菌体もしくは菌体由来の
酵素を用いてp−キシレンまたはp−トルイル酸より2,
3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸を製造する方法、及
び当該製造法に用いる微生物に関する。
〔従来の技術及び発明が解決しようとする課題〕
2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸は、分子中にとな
り合う二つの水酸基、メチル基及びカルボキシル基を有
しており、その構造より極めて有効な酸化防止剤、防腐
剤、殺菌剤、化学合成原料等として有用であると考えら
れてきたが、ベンゼン核上に3種4個もの置換基を有す
るという特殊な構造ゆえに、化学合成が極めて困難であ
る。このため水酸基の保護、酸化生成物の分離等極めて
煩雑な手法を用いて、試薬としての合成は可能なもの
の、工業的な実用化に耐えられる合成法はまだ開発され
ていない。
一方、ある種のシュードモナス属に属する微生物のp−
キシレン代謝系の中間体として本化合物が存在すること
は古くから知られている(APPLIED MICROBIOLOGY,June
1969,P.853−856)。
微生物を用いて本化合物を生産するための研究も進めら
れているが、微生物のp−キシレン耐性が低く、いずれ
も実用レベルに達していない(米国特許3592845号)。
このため実用的な2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸
の製法が切望されてきた。
〔課題を解決するための手段〕
かかる実情において、本発明者らは前記の課題を解決す
べく様々な微生物を用いて検討したところ、アリスロバ
クター属に属するある種の微生物を用いれば2,3−ジヒ
ドロキシ−p−トルイル酸を実用的なレベルで生産でき
ることを見い出し本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明はアリスロバクター属に属し、p−キ
シレンまたはp−トルイル酸を単一炭素源として生育可
能な2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸生産菌を、p
−キシレンまたはp−トルイル酸を含有する培地で培養
し、該培養物より2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸
を採取することを特徴とする2,3−ジヒドロキシ−p−
トルイル酸の製造法;アリスロバクター属に属し、p−
キシレンまたはp−トルイル酸を単一炭素源として生育
可能な2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸生産菌の休
止菌体または菌体由来の酵素をp−キシレンまたはp−
トルイル酸と接触させることを特徴とする2,3−ジヒド
ロキシ−p−トルイル酸の製造法及びアリスロバクター
属に属し、p−キシレンまたはp−トルイル酸を単一炭
素源として生育可能である2,3−ジヒドロキシ−p−ト
ルイル酸生産菌を提供するものである。
本発明の2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸生産菌
(以下、「本発明微生物」という)は、アリスロバクタ
ー属に属し、p−キシレンまたはp−トルイル酸を単一
炭素源として生育可能であり、2,3−ジヒドロキシ−p
−トルイル酸生産能があれば、その起源は何ら問わな
い。本発明微生物は、例えば炭素源としてp−キシレン
またはp−トルイル酸のみを添加した培地を用いて、該
培地で生育し、2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸生
産能力があるか否かをもってスクリーニングすることに
より分離することができる。
当該分離方法の詳細を以下に例示する。すなわち、まず
微生物の増殖に必要な成分のうち炭素源を含まない培地
(以下、培地という)を試験管等に分注、滅菌したのち
予め採取した土壌を添加する。これにp−キシレンまた
はp−トルイル酸を加え、試験管振とう機等により培養
を行なう。この培養液を、予め培地を分注し滅菌してお
いた別の試験管等に白金耳を用いて植え継ぎした後、p
−キシレンまたはp−トルイル酸を添加し、試験管振と
う機により更に培養する。この培養液もしくはこれを滅
菌水等で希釈した培養液を寒天培地等に塗布した後、p
−キシレンまたはp−トルイル酸を添加し更に培養す
る。培養によって得られたコロニーを単離し、それぞれ
の菌株について2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸生
産能力を確認することにより本発明微生物を選択するこ
とができる。
分離操作に用いる培地には炭素源以外は一般的な培地成
分を使用することができる。すなわち、窒素源として
は、例えばアンモニア、塩化アンモニウム、燐酸アンモ
ニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸ア
ンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素
等の無機窒素化合物や酵母エキス、乾燥酵母、ペプト
ン、肉エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸等
の有機窒素源を用いることができる。無機塩類として
は、例えばカリウム、ナトリウム、鉄、マグネシウム、
マンガン、銅、カルシウム、コバルト等の各塩類等が使
用できる。また、前記分離操作における培養条件は、一
般に微生物が死滅しない培養条件であればよく、例えば
pH約5〜9、温度約20〜40℃で約1〜30日好気的に培養
すればよい。
得られた菌株の2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸の
生産能力の確認は、それぞれの菌株を前記分離操作に用
いたのと同様の培地に、p−キシレンまたはp−トルイ
ル酸のみを炭素源として添加し、同様の条件で培養し、
得られた培養液を遠心分離等で分離した後上清を適当な
分析手法、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPL
C)、ガスクロマトグラフィー(GC)、核磁気共鳴スペ
クトル(NMR)、赤外線吸収スペクトル(IR)、紫外線
吸収スペクトル(UV)等を用いて分析すればよい。
前記分離操作において直接2,3−ジヒドロキシ−p−ト
ルイル酸生産菌が得られない場合もしくは生産性が低い
場合は、得られたp−キシレンまたはp−トルイル酸に
資化性及び耐性を示す菌株を一般的な変異手法によって
変異し、得られた変異株について前記同様2,3−ジヒド
ロキシ−p−トルイル酸生産能力を確認する方法を用い
ることが効果的である。
変異手法は一般的な微生物に対する変異手法をすべて用
いることができ、例えば変異原として紫外線、電離放射
線等物理的変異原を用い寒天培地上の微生物に照射する
方法としては紫外線照射法、コバルト60照射法等があ
る。変異原として化学物質を用いる方法としては、エチ
ルメタンスルフォネート(EMS)、N−メチル−N′−
ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)、エチルニト
ロソ尿素(ENU)等のアルキル化剤やブロモデオキシウ
リジン(Brdurd)等の塩基アナログ等の化学的変異原を
用い緩衝液中の微生物に添加培養する方法を挙げること
ができる。また生物学的変異原を用いる方法としては、
トランスボゾン変異法を挙げることができる。
前記分離操作によって得られた微生物及びこれの変異株
の一例であるX−37株及び同様の変異株MX−3株を細菌
の分類同定法〔バージェイズ・マニュアル・オブ・シス
テマティック・バクテリオロジー(Bergey′s Manual o
f Systematic Bacteriology)第1版,1984年〕に従って
同定試験を行なった。その結果、X−37株及びMX−3株
は、以下のような菌学的性質を有する。
(a) 形態 細胞の形及び大きさ 球菌(直径1.2〜1.7μm)・・休止期 桿菌(0.6〜1.0×2〜8μm)・増殖気 細胞の多形性 あり 運動性の有無 なし 胞子の有無 なし グラム染色 陽性 抗酸性 なし (b) 各培地における生育状態 肉汁寒天平板培地 良好な生育、オレンジ色 (形)円形 (隆起)ヘソ状 (周辺)全縁 (表面)粗面 (光沢)鈍い光沢 (性質)バター状 肉汁寒天斜面培地 良好な生育、オレンジ色 (隆起)薄膜状〜台状 肉汁液体培養 良好な生育 浮遊物を伴う薄膜、沈殿 肉汁ゼラチン穿刺培養 ゼラチンを液化しない リトマスミルク アルカリ性 BCPミク アルカリ性 (c)生理学性質 硝酸塩の還元 (+) 脱窒反応 (−) MRテスト (−) VPテスト (−) インドールの生産 (−) 硫化水素の生成 (−) デンプンの加水分解 (−) クエン酸の利用 koserの培地 利用する Christensenの培地 利用する。
無機窒素の利用 硝酸塩 利用する アンモニウム塩 利用する 色素の生成 (−) ウレアーゼ (−) オキシダーゼ (−) カタラーゼ (+) 生育の範囲 温度 10℃で生育しない 26.5〜37.0℃で生育する 45.0℃で生育しない pH 4.20で生育しない 5.23〜9.45で生育する 10.00で生育しない 酸素に対する態度 好気性 O−Fテスト 陰性 窒素固定 (−) 炭水化物の利用 酸の生成 ガスの発生 (1)L−アラビノース (+) (−) (2)D−キシロース (+) (−) (3)D−グルコース (+) (−) (4)D−マンノース (+) (−) (5)D−フラクトース (+) (−) (6)D−ガラクトース (+) (−) (7)麦芽糖 (+) (−) (8)ショ糖 (+) (−) (9)乳糖 (+) (−) (10)トレハロース (+) (−) (11)D−ソルビット (+) (−) (12)D−マンニット (+) (−) (13)イノシット (+) (−) (14)グリセリン (+) (−) (15)デンプン (+) (−) 上記の試験結果から、X−37株及びMX−3株はアリスロ
バクター属に属する菌であると認められる。しかしなが
らアリスロバクター属に属する従来の菌は芳香族炭化水
素類に対して耐性を有しない。これを確認するためアリ
スロバクター属の標準菌株アリスロバクター・グロビフ
ォルミス(Arthrobacter globiformis)IFO 12137、ア
リスロバクター・ビスコサス(Arthrobacter viscosu
s)IFO 13497とX−37株及びMX−3株について各溶媒に
対する耐性を調べた。結果を第1表に示す。
この結果より本微生物はアリスロバクター属と形態学的
性質、生理学的性質等の菌学的性質は一致するが芳香属
炭化水素類に対する挙動を異にすることからアリスロバ
クター・エスピー(Arthrobacter sp.)に属する新菌株
と認められ、アリスロバクター・エスピー・X−37及び
アリスロバクター・エスピー・MX−3と命名した。これ
らの菌株は工業技術院微生物工業技術研究所に微工研菌
寄第11174号(FERM P−11174)及び微工研菌寄第11173
号(FERM P−11173)として寄託されている。
なお、X−37株とMX−3株とは、MX−3株が2,3−ジヒ
ドロキシ−p−トルイル酸生産能を有し、X−37株がこ
れを有さない点で異なる。
本発明微生物を用いてp−キシレンまたはp−トルイル
酸を酸化し、2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸を生
産するには、p−キシレンまたはp−トルイル酸を含む
培地で本発明微生物を培養してもよいし、該微生物の休
止菌体または菌体由来の酵素とp−キシレンまたはp−
トルイル酸を接触させてもよい。
次に本発明微生物として例えばアリスロバクター・エス
ピー・MX−3株(以下、本菌という。)を用いた場合の
2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸の製造法について
説明する。本菌を培養する場合の使用培地としては、p
−キシレンまたはp−トルイル酸を含有すること以外
は、本菌の生育が良好であれば特に制限されない。すな
わち、窒素源としては、例えばアンモニア、塩化アンモ
ニウム、燐酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸ア
ンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素
等の無機窒素化合物や酵母エキス、乾燥酵母、ペプト
ン、肉エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸等
の有機窒素源を用いることができる。
無機塩類としては、例えばカリウム、ナトリウム、鉄、
マグネシウム、マンガン、銅、カルシウム、コバルト等
の各塩類等が使用できる。
炭素源としては、p−キシレンまたはp−トルイル酸以
外に安息香酸、フタル酸、サリチル酸、グルコース、フ
ラクトース、デンプン加水分解物、肉エキス等、本菌が
資化増殖できるものを共酸化基質として添加することが
好ましい。
培養条件は、本菌が死滅せず増殖可能であればよく、例
えば培養温度は約20〜37℃、より好ましくは約25〜37
℃、培地のpHは約5.2〜9.4、より好ましくは約6.0〜8.0
で、好気的雰囲気で約1〜30日間培養するのが好まし
い。
本発明ではp−キシレン、p−トルイル酸のいずれから
も2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸を生産できる
が、原料価格の面からp−キシレンを用いることが望ま
しい。原料であるp−キシレンは培養初期から加えても
よいし途中から添加してもよい。p−キシレン添加量が
著しく増加すると本菌の増殖は低くなるため増殖系での
変換を行なう場合はp−キシレンの添加量が培地に対し
て0.01〜10wt%、より好ましくは0.1〜5wt%の範囲内で
あることが望ましい。p−キシレンは培養中に蒸発しや
すいため、蒸発防止の目的で冷却トラップ等を設けたり
p−キシレンを連続的に添加することが望ましい。ま
た、2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸の生成に伴い
培地中のpHが低下して来るため水酸化ナトリウム、アン
モニア、水酸化カリウム等のアルカリ溶液でpHを調整す
ることが望ましい。p−トルイル酸を原料として用いる
場合は、培地に添加後あらかじめ、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム等のアルカリ溶液で中和しておく必要が
ある。この場合も添加量は培地に対して0.01〜10wt%、
より好ましくは0.1〜5wt%の範囲内が好ましい。培養は
好気的条件で行なえばよく、例えば坂口フラスコやジャ
ーファーメンターを用いることができる。生産はバッチ
式でもバイオリアクター等を用いる連続式でも可能であ
る。
次に本菌の休止菌体あるいは菌体由来の酵素により2,3
−ジヒドロキシ−p−トルイル酸を生産する場合、用い
る菌体の生産は、前記培養条件下での場合と同じ条件で
行なうことができる。得られた菌体培養物は、そのまま
酵素源として使用することができるが、遠心分離等の操
作により、固液分離して得た微生物菌体を燐酸緩衝液等
の溶液で洗浄し、該溶液に懸濁して使用することもでき
る。また、菌体由来の酸素は、常法により精製すること
ができる。すなわち、例えば微生物菌体の懸濁液を超音
波、フレンチプレス、高圧ホモジナイザー等により破砕
処理して得られた菌体破砕物を、遠心分離等の操作によ
り固液分離した後、カラム精製、電気泳動等の一般的精
製手法を用いて精製酵素とすることができる。また、微
生物菌体や酵素を固定化したものを使用することもで
き、固定化したものを使用することによって効率よく反
応を行なうことができる。この固定化は、アルギン酸カ
ルシウム法、ポリアクリルアミドゲル法、ポリウレタン
樹脂法、光架橋樹脂法等常法により、行なうことができ
る。
これらの菌体もしくは菌体由来の酵素を用いて、2,3−
ジヒドロキシ−p−トルイル酸を生産するためには、菌
体もしくは菌体由来の酵素を、p−キシレンまたはp−
トルイル酸と燐酸緩衝液等の中で接触させて反応させれ
ばよい。反応温度及びpHは、前述した本菌の培養条件下
の場合と同様であるのが好ましく、また好気的雰囲気で
反応させるのが好ましい。この反応においては、エネル
ギー源としてメタノール、エタノール、水素、ニコチン
酸アミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ホルムアル
デヒド、蟻酸等の電子供与体を適宜添加するのが好まし
い。
以上の如くして得られた培養液または反応液中の2,3−
ジヒドロキシ−p−トルイル酸は常法により精製するこ
とができる。すなわち、倍養液または反応液を濾過、遠
心分離等により処理した後、得られた溶液に塩酸、硫酸
等の酸溶液を加えて酸性とすることにより、2,3−ジヒ
ドロキシ−p−トルイル酸を回収することができる。ま
た、溶剤抽出等の方法により回収することも可能であ
り、カラムクロマトグラフィー等公知の精製方法を適宜
併用することもできる。
〔発明の効果〕
本発明によれば、p−キシレンまたはp−トルイル酸を
単一炭素源として生育し、2,3−ジヒドロキシ−p−ト
ルイル酸を生産することができる新規微生物もしくはそ
の休止菌体または菌体由来の酵素を用い、p−キシレン
またはp−トルイル酸から2,3−ジヒドロキシ−p−ト
ルイル酸を効率よく生産することができる。
〔実施例〕
以下、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、
本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1 第2表及び第3表に示す培地成分を夫々水道水1に溶
解し、培地を調製した(夫々の培地のpHは7.0であっ
た)。
第2表の培地を外径21mmの試験管に10ml入れ、121℃で1
5分間滅菌した。冷却後、千葉県五井地方及び三重県四
日市地方の石油精製施設にて採取した5000種類の土壌を
それぞれ0.5g加え、別途濾過滅菌したp−キシレンをそ
れぞれ100μ添加し、試験管振とう機により30℃、250
rpmで7日間往復振とう培養した。別の試験管に第2表
の培地を10ml分注し、滅菌した。これに前記培養液を3
白金耳植え継ぎし、p−キシレンをそれぞれ100μ添
加してから試験管振とう機により30℃、250rpmで7日間
往復振とう培養した。増殖が認められたものについて、
滅菌水を用いて104〜108倍の範囲で希釈した後、これを
さきに調製した第3表の寒天培地をシャーレに撤いた寒
天平板培地に塗布し、シャーレのふた側に1mlずつp−
キシレンを加えた後、30℃で7日間培養した。得られた
コロニーを単離したものを、第2表の培地に、p−キシ
レンをそれぞれ2、3、4、5及び10wt%加えた各試験
管に植え継ぎ、培養した。その結果、p−キシレンが高
濃度でも良好な生育を示したアリスロバクター・エスピ
ー・X−37株を選抜した。
得られたアリスロバクター・エスピー・X−37株の2,3
−ジヒドロキシ−p−トルイル酸の生産能力を確認する
ため、アリスロバクター・エスピー・X−37株の培養液
をHPLCで分析したところ良好な結果が得られなかったの
で、アリスロバクター・エスピー・X−37株を以下に示
すニトロソグアニジン法により変異処理し、その変異株
の中から2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸生産能力
の高い菌株を選択することとした。すなわち第2表の培
地を外径21mmの試験管に10ml入れ、121℃で15分間滅菌
し、冷却後別途滅菌したp−キシレンを100μ添加し
た(培地1)。これに、アリスロバクター・エスピー・
X−37株を1白金耳植え継ぎ、試験管振とう機により30
℃、250rpmで3日間往復振とう培養した。この培養液を
洗浄のため15000rpmにて30秒間遠心分離し、その上清を
捨て、培養液と同量のトリス・マレイン酸バッファー
(pH6.0)に懸濁させた。この洗浄操作を更に2度繰り
返した。この後再び15000rpmにて30秒間遠心分離し、そ
の上清を捨て、トリス・マレイン酸バッファー(pH6.
0)にN−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニ
ジン(NTG)を100μg/mlの濃度で溶解させた溶液を元の
培養液と等量加えて30℃、250rpmにて1時間インキュベ
ートした。第3表の寒天培地を121℃で15分間滅菌しシ
ャーレに撒いて、寒天平板培地を調製した。前述の1時
間インキュベートした菌体を前述と同様の方法で3回洗
浄した後、同バッファーにて元の培養液の1000倍に希釈
したものをこのシャーレに塗布し、このシャーレの蓋側
にp−キシレン1mlを加え30℃にて4日間培養した。
得られたコロニーはそれぞれ培地1に白金耳で植菌し、
試験管振とう機により30℃、250rpmにて3日間往復振と
う培養した。培養液を分析した結果、2,3−ジヒドロキ
シ−p−トルイル酸を生産する菌株を98株得た。この98
株中で最も2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸の生産
量が高かった変異株をアリスロバクター・エスピー・MX
−3と命名した。
実施例2 実施例1で調製した第2表の培地を外径21mmの試験管に
10ml入れ121℃で15分間滅菌した。冷却後アリスロバク
ター・エスピー・MX−3株を1白金耳植え継ぎ、別途濾
過滅菌したp−キシレンを100μ添加し、試験管振と
う培養機により30℃250rpmで3日間往復振とう培養し
た。培養液を遠心分離後上清をHPLCによって定量分析し
たところ、生成した2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル
酸の生産量は15mg/であった。また生成した2,3−ジヒ
ドロキシ−p−トルイル酸をジエチルエーテルにて抽出
後、薄層クロマトグラフィー(TLC)にて分離精製を行
ないNMR及びMSにて構造解析を行なったところ、2,3−ジ
ヒドロキシ−p−トルイル酸であることが確認された。
実施例3 添加する基質をp−キシレンの代わりにp−トルイル酸
100mgを用い培地に添加後、水酸化ナトリウム水溶液でp
H7.0に中和した以外は実施例2の場合と同様に実施した
ところ、生成した2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸
は9mg/であった。
実施例4 添加する基質をp−トルイル酸100mgに加えて10μの
p−キシレンを加えた以外は実施例3の場合と同様に実
施したところ生成した2,3−ジヒドロキシ−p−トルイ
ル酸は30mg/であった。
実施例5 500ml坂口フラスコに、実施例1で調製した第2表に示
す培地を200ml加え、121℃で15分間滅菌した。これを冷
却しち後、実施例2と同様の方法で調製した培養液10ml
をこれに接種した。更に、これに滅菌したp−キシレン
1ml及び安息香酸ナトリウム50mgを添加した。なお、装
置は第1図に示す如きものを用いた。すなわち上記培養
液等を含む液1は坂口フラスコ2の底部にあり、フラス
コ2の上部には、上部が開放しているジャケット3が設
けられており、この中に培地に添加したもの以外にp−
キシレン(1ml)4が収められており、フラスコは通気
性のあるシリコン栓5で封じてある。
このような装置及びフラスコ振とう培養液を用い、30
℃、115rpmで10日間培養したところ、2,3−ジヒドロキ
シ−p−トルイル酸が350mg/得られた。
実施例6 実施例1で調製した第2表の培地に酵母エキス1g/を
加えた培地1を冷却トラップをつけた2ジャーファ
ーメンターに入れ、121℃で15分間滅菌した。冷却後p
−キシレンを10mlと安息香酸ナトリウム500mgを添加し
た。更にこれに実施例2と同様の方法で調製した培養液
100mlを接種し、2Nの水酸化ナトリウム水溶液にてpH6.8
に調整しながら30℃、500rpm通気量2/分の条件下で
5日間培養したところ、2,3−ジヒドロキシ−p−トル
イル酸が3200mg/得られた。
実施例7 実施例1で調製した培地1に、アリスロバクター・エス
ピー・X−37を1白金耳植え継ぎ、試験管振とう機によ
り30℃、250rpmにて3日間往復振とう培養した。この培
養液を洗浄のため15000rpmにて30秒間遠心分離し、その
上清を捨て、培養液と同量のトリス・マレイン酸バッフ
ァー(pH6.0)に懸濁させた。この洗浄操作を更に2度
繰り返した。つぎに実施例1に準じて得た第3表の培地
に0.1wt%の安息香酸ナトリウムを添加して、121℃で15
分間滅菌し、シャーレに20ml入れ寒天平板培地とし、こ
れに前記懸濁菌体100μを入れスプレッダーにて広げ
た。シャーレに15ワットの紫外線ランプを30cmの距離か
ら1分間直接照射した後、30℃で1週間培養を行ない出
現したコロニーを単離した。得られたコロニーはそれぞ
れ培地1に白金耳で植菌し、試験管振とう機により30
℃、250rpmにて3日間往復振とう培養した。培養液を分
析した結果、2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸を生
産する菌株を11株得た。
比較例1 接種する菌株がアリスロバクター・エスピー・X−37微
工研菌寄第11174号(FERM P−11174)、アリスロバクタ
ー・グロビフォルミスIFO 12137、アリスロバクター・
ビスコサスIFO 13497、シュードモナス・フルオレッセ
ンス(Pseudomonas fluorescens)IFO 3924、シュード
モナス・プチダ(Pseudomonas putida)IFO 12996、シ
ュードモナス・プチダATCC 17484である以外は実施例2
と同様に実施したところ2,3−ジヒドロキシ−p−トル
イル酸はまったく生成しなかった。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明方法に用いる実施例5で使用した内部
にジャケットを設置した坂口フラスコである。 1……調製した培地 2……坂口フラスコ 3……ジャケット 4……p−キシレン 5……シリコン栓
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:06)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アリスロバクター属に属し、p−キシレン
    またはp−トルイル酸を単一炭素源として生育可能な2,
    3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸生産菌を、p−キシ
    レンまたはp−トルイル酸を含有する培地で培養し、該
    培養物より2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸を採取
    することを特徴とする2,3−ジヒドロキシ−p−トルイ
    ル酸の製造法。
  2. 【請求項2】アリスロバクター属に属し、p−キシレン
    またはp−トルイル酸を単一炭素源として生育可能な2,
    3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸生産菌の休止菌体ま
    たは菌体由来の酵素をp−キシレンまたはp−トルイル
    酸と接触させることを特徴とする2,3−ジヒドロキシ−
    p−トルイル酸の製造法。
  3. 【請求項3】アリスロバクター属に属し、p−キシレン
    またはp−トルイル酸を単一炭素源として生育可能であ
    る2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル酸生産菌。
  4. 【請求項4】微工研菌寄第11173号(FERM P−11173)と
    して寄託されたアリスロバクター・エスピー・MX−3で
    ある請求項3記載の2,3−ジヒドロキシ−p−トルイル
    酸生産菌。
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