JPH0734385A - 柔軟化された模様付きフロック加工布とその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 分割型複合繊維のフロックを植毛した植毛布
に柔軟性の差による恒久的な模様を付与し、風合いのよ
いフロック加工品を提供する。 【構成】 分割型複合繊維のフロック(23)が植毛された
植毛布(3) の植毛面に部分的に膜状の高圧水流(6) 噴射
し、この高圧水流(6) を受けた部分(A) の分割型複合繊
維のフロックを太さ０．５デニール以下に極細化して高
圧水流(6) を受けなかった部分(B) との間に柔軟性と光
反射性の差を発現させ、この柔軟性と光反射性の差によ
る模様を有するフロック加工品となした。 【効果】 高圧水流(6) を受けた部分(A) いてはラィテ
ィング効果を有し、高圧水流(6) を受けなかった部分
(B) との間の柔軟性と光反射性の差による模様は長期間
持続する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、分割型複合繊維からな
るパイルを部分的に高圧水流により極細繊維化されてな
るフロック加工布およびその製造方法に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】太さ０．５デニール以下の短繊維（フロ
ック）を植毛してなるフロック加工布の製造方法の代表
例としては、特公昭６０−４３４７６号公報、特公昭６
１−３１２３９号公報、特開昭６２−１９９８８２号公
報等を挙げることができる。

【０００３】特公昭６０−４３４７６号公報記載の方法
は、基布上に０．５デニール以下の分割された極細のフ
ロックを直接積層し、高圧水流により交絡一体化させて
スェード調となすものであり、特公昭６１−３１２３９
号公報記載の方法は、一定密度で海島型複合繊維を植毛
したのち海島型複合繊維の一成分を除去し、フロックを
太さ０．５デニール未満、長さ０．７ｍｍ未満に極細化
するものである。また特開昭６２−１９９８８２号公報
記載の方法は、基材表面に接着剤を塗布後、長さ０．８
〜２．５ｍｍの抽出型分割繊維のフロックを植毛して接
着固定し、フロックを極細化処理するものである。

【０００４】このように繊細なフロックの植毛布は、極
細化したフロックを基布に植毛するか、または抽出型複
合繊維フロックを植毛したのち極細化処理を行うかのい
ずれかの方法によって製造されていた。

【０００５】

【発明が解決すべき課題】しかしながら極細化したフロ
ックを基布上に直接積層し、高圧液水処理してフロック
を基布と交絡一体化する方法は、高圧水流の水圧により
繊維移動が生じたりフロック間に交絡が生じて均整度や
風合いが損なわれやすく、高品質のフロック加工品を得
るには著しく高度な技術を要する。また、海島型複合繊
維またはのフロックを植毛した後、その一成分を除去し
てフロックを極細化する方法は、柔軟にして比較的均整
なフロック加工品が得られるが、繊維成分の１部が溶解
除去されるため、基布の単位面積当たりに占めるパイル
の割合が減少し、極細なパイルを高密度に植毛されたフ
ロック加工布を得ることは至難である。

【０００６】上記したそれぞれの課題を解決するべく本
発明者等は、基布に植毛した分割型複合繊維のフロック
の分割手段として高圧水流を用いることを試みたが、従
来の繊維分割や繊維交絡に使用されている高圧水流は細
い柱状であるため、フロック面に水流筋跡が残留し、こ
のような柱状の水流ではノズルを揺動させても水流痕跡
のないフロック加工布を得ることは極めて困難であっ
た。

【０００７】本発明は極細化可能な分割型複合繊維が植
毛され、その植毛布の一部のフロックが均質にかつ水流
痕跡なく分割処理され、分割処理された部分と分割処理
されなかった部分ととによる色調と柔軟性の差による模
様が発現されたフロック加工布およびその製造方法を提
供するものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は高圧水流処理装
置のノズルから吐出する水流を膜状となし、この膜状水
流を植毛面に部分的に噴射することによって上記目的を
達成した。即ち本発明のフロック加工品は、不織布ある
いは織編物からなる基布上に接着剤を介して繊維長３ｍ
ｍ以下の分割型複合繊維のフロックが植毛され、この植
毛布のフロックの一部が高圧水流により分割処理されて
０．５デニール以下の極細繊維化され、高圧水流を受け
た部分と高圧水流を受けなかった部分とのフロックの柔
軟性の差による模様を有していることを特徴とし、その
製造方法にあっては、不織布あるいは織編物からなる基
布上に接着剤を塗布し、常法により繊維長３ｍｍ以下の
分割型複合繊維のフロックを植毛して基布にフロックを
固着して植毛布となし、しかるのちその植毛面の一部を
高圧水流を噴射して一部の植毛フロックの分割を促進
し、植毛フロックを部分的に０．５デニール以下の極細
繊維化することを特徴としているものである。

【０００９】フロック加工布の基布となる不織布あるい
は織編物は、特に限定を要するものではなく、この種の
加工布に汎用されているものであればよく、使用用途分
野に応じて適宜選択すれば良い。また、基布に極細繊維
もしくは極細化可能繊維を用いてもよい。

【００１０】植毛用のフロックとしては、分割型複合繊
維が好適であり、その繊維断面形状は、放射型、貼り合
わせ型等繊維の長さ方向に分割可能なものが適用され
る。分割型複合繊維の構成成分としては、例えばポリエ
チレン、ポリプロピレン、ポリ−４メチルペンテン−
１、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−
酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系重合体もしく
は共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレ
ンテレフタレート等のポリエステル系重合体もしくは共
重合体、ナイロン６、ナイロン６６、ナイロン１２等の
ポリアミド系重合体もしくは共重合体等を挙げることが
でき、これらを２成分以上適宜選択して用いるとよい。
しかし必ずしも上述した重合体もしくは共重合体に限定
されるものではない。

【００１１】上記重合体もしくは共重合体を用いて複合
溶融押出紡糸を行い、延伸後３ｍｍ以下の所望の長さに
切断し、極細化可能な植毛用のフロックとする。フロッ
クの繊維長が３ｍｍより長くなると繊維同士の絡みが生
じ、風合いが損なわれる。

【００１２】植毛に先立ち基布に塗布する接着剤して
は、アクリル系あるいはウレタン系のものまたはこれら
の混合物が好ましく、接着剤を塗布後、上記分割型複合
繊維のフロックを例えばアップ法あるいはダウン法によ
り電気植毛を行い、乾燥して基布とフロックとを固着さ
せて植毛布とするとよい。しかるのちこの植毛布を植毛
側から部分的に膜状水流処理をすることによりその部分
の分割型複合繊維のフロックの分割が促進され、殆どが
０．５デニール以下の極細繊維となり、水流処理をしな
かった部分に比べて風合いが優れ、光線反射性の差によ
る色調差模様を呈しているフロック加工布を得ることが
できる。

【００１３】水流処理条件としては、例えば膜状水流を
撒水角度１５〜１００度で噴射するフラット撒水型スプ
レーノズルを間隔をおいて配置して使用し、吐出水圧を
３０〜２００ｋｇ／ｃｍ² 好ましくは３０〜１８０ｋｇ
／ｃｍ² として処理するとよい。また低い水圧で数回処
理することも好ましい方法である。ノズルピッチは撒水
角度や模様幅により決定するとよい。着色したフロック
加工布は、原料着色、繊維または製品段階での染色等何
れの方法によっても得ることができる。

【００１４】

【作用】本発明は、フラット撒水型スプレーノズルを用
いた膜状の高圧水流処理を行うため植毛繊維に強力な局
部水流の作用が回避でき、水流痕跡の発生や繊維の絡み
がなく、水流処理部分においてはフロックの植毛密度の
高い製品が得られる。しかも適度な水圧によって均一に
処理されるため柔軟性と風合に優れたフロック加工布と
なり、また繊維の極細化も効果的に行われる。そしてか
かる分割型複合繊維をフロックに用いて植毛後そのフロ
ックを分割処理することにより、処理後のフロックは極
細の異型断面繊維となり、水流処理をしなかった部分と
の間に光沢差が生じ、この光沢差が模様となつて発現し
たフロック加工布となる。

【００１５】

【実施例】

［実施例１］ 図７に示すような繊維断面（但し８分
割）を有し、Ａ成分(21)としてポリエステル、Ｂ成分(2
2)としてポリアミドを用いて溶融押出紡糸し、延伸後、
単繊維繊度が１．５デニールの分割型複合繊維(20)のト
ウを得た。この分割型複合繊維(20)をトウの状態でＡ成
分(21)側を分散染料で、Ｂ成分(22)側を金属錯塩染料で
染色した後、カッターで０．８ｍｍの短カットしパイル
用のフロック(23)となした。（このフロックはカット時
の衝撃によって不完全ながら分割が進行している）。

【００１６】一方基布(1) としてポリエステル６５重量
％、レーヨン３５重量％の混紡糸（綿番手２４番手）を
用いた平織物（目付け１３０ｇ／ｍ² ）を準備した。

【００１７】次にこの基布(1) に、ポリエステル系ポリ
ウレタンエマルジョンとアクリル酸エステル樹脂を１：
１の割合で配合した接着剤(2) を２００ｇ／ｍ² を塗布
した後、アップ法電値Ｍ／Ｃ（電圧３万Ｖ、電極間距離
１０ｃｍ）で上記フロック(23)を植毛した。この時、植
毛密度は、８０ｇ／ｍ² であった。植毛後、１２０℃で
乾燥を行い、幅１００ｃｍの長尺のシート状の植毛布
(3) を得た。

【００１８】次いで図２および図３に略示しているよう
に、コンベア(4) の上方給水管(7)に複数個のフラット
ノズル(5) を間隔をおいて配してなる処理装置を用い、
上記植毛布(3) をコンベア(4) 上に載せて速度３ｍ／分
で移動させながら植毛側から吐出水圧が１００ｋｇ／ｃ
ｍ² の膜状水流(6) を噴射して植毛布(3) の幅方向約３
ｃｍ間隔毎に水流処理を施し、しかるのち乾燥した。こ
の処理により膜状水流(6) を受けた部分(A) の分割型複
合繊維(20)のフロック(23)は０．１９デニールの極細繊
維にそれぞれ８分割されかつ倒伏されていて、図１のご
とく繊細にしてフロック密度の高い部分が縦縞状に発現
したフロック加工布(10)を得ることが出来た。

【００１９】なお上記実施例には、図８示したような孔
径１．０ｍｍ、撒水角度３５度のフラット撒水型スプレ
ーノズル(6) を、ノズルピッチ５０ｍｍ、被処理物との
距離６０ｍｍとして配設した給水管(7) が、図２に示し
たように４列配された液体流処理装置を使用し、植毛布
(3) に対して約３ｃｍ間隔毎に膜状水流(6) を噴射し
た。 この実施例によって得られたフロック加工布(10)
の膜状水流を受けた部分(A) の触感は、ピーチスキンタ
イプでヌメリ感があり、膜状水流を受けなかった部分
(B) との間に明瞭な光沢差を有していた。

【００２０】［実施例２］ 実施例１の膜状液体流処理
条件の吐出水圧を３０ｋｇ／ｃｍ²として、実施例１と
同じ植毛布(3) を水流処理した。この実施例２により得
られたフロック加工布(10)の膜状水流を理部分(A) は、
実施例１に比べて分割されたフロックの倒伏が少なかっ
たが水流処理を受けなかった部分(B) との間に光の反射
性に差による縦縞模様となっていた。

【００２１】［実施例３］ 実施例１の処理装置におけ
る各給水管(7)(7)の前後方向のノズル(5)(5)の間隔を３
ｃｍとなし、各給水管(7)(7)のノズル間隔を６ｃｍとな
すとともに前側の給水管(7) のノズル(5)(5)間に次の給
水管(7) の各ノズル(5)(5)を位置させ、コンベア(4) の
速度を１．８ｍ／分となして各ノズル(5)(5)から１秒間
隔で膜状水流を噴射した。得られたフロック加工布(10)
は図４に示したように膜状水流を受けた部分(A) と膜状
水流を受けなかった部分(B) との柔軟性の差による市松
模様をなしていた。

【００２２】なお水流噴射幅の異なるノズルを使用すれ
ば、図５に示したように膜状水流の受けた部分(A) の幅
の異なるフロック加工布(10)が得られ、またノズル(5)
を植毛布(3) の幅方向に往復揺動させると、図６に示す
ような模様のフロック加工布(10)を得ることができる。

【００２３】

【発明の効果】上記のように本発明のフロック加工布
は、不織布あるいは織編物からなる基布(1) 上に接着剤
(2) を介して繊維長３ｍｍ以下の分割型複合繊維(20)の
フロック(23)が植毛され、この植毛布(3) のフロック(2
3)の一部が高圧の膜状水流(6) により分割処理されて
０．５デニール以下の極細繊維化され、高圧の膜状水流
を受けた部分(A) と受けなかった部分(B) との柔軟性の
差による模様を有し、光沢差や光の反射性のさにもとづ
く優雅な外観と柔軟なフロック感触を具えている。した
がって衣料や鞄、椅子あるいは靴等の好適な生地とな
る。そして上記フロック加工品(10)は、不織布あるいは
織編物からなる基布(1) 上に接着剤(2) を塗布し、常法
により繊維長３ｍｍ以下の分割型複合繊維(20)のフロッ
ク(23)を植毛して基布(1) にフロック(23)を固着して植
毛布(3) となし、しかるのちその植毛面の一部を高圧の
膜状水流(6) を噴射して噴射部の植毛フロック(23)の分
割を促進し、植毛フロック(23)を部分的に０．５デニー
ル以下の極細繊維化することによって得るものであるか
ら、水流処理部(A) の植毛面にはほぼ均整に水流が噴射
されて水流痕跡の発現がなく、フロックがむらなく分割
されて高圧水流を受けなかった部分(B) との間に柔軟性
の差、光沢差および光反射性の差を発現させることがで
きる。そのうえ液体流処理時の吐出水圧を調整すること
により、水流処理部に変化を付与することができ、処理
部に好みの風合い、例えばピーチスキンタイプでヌメリ
感のもつフフロック加工布をのを得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のフロック加工布の部分断面斜視図であ
る。

【図２】本発明の製造方法の概略正面図である。

【図３】図１の概略平面図である。

【図４】フロック加工布の模様の他の実施例を示した平
面図である。

【図５】フロック加工布の模様の他の実施例を示した平
面図である。

【図６】フロック加工布の模様の他の実施例を示した平
面図である。

【図７】分割型複合繊維の一例を示す断面図である。

【図８】フラット撒水型スプレーノズルの部分断面側面
図である。

【符号の説明】

１ 基布 ２ 接着剤 ３ 植毛布 ４ コンベア ５ 膜状水流 ６ フラット撒水型スプレーノズル ７ 給水管 １０ フロック加工布 ２０ 分割型複合繊維 Ａ 膜状水流を受けた部分 Ｂ 膜状水流を受けなかった部分

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 不織布あるいは織編物からなる基布上に
   接着剤を介して繊維長３ｍｍ以下の分割型複合繊維のフ
   ロックが植毛され、この植毛布のフロックの一部が高圧
   水流により分割処理されて０．５デニール以下の極細繊
   維化され、高圧水流を受けた部分と高圧水流を受けなか
   った部分とのフロックの柔軟性の差による模様を有して
   いることを特徴とするフロック加工布。
2. 【請求項２】 不織布あるいは織編物からなる基布上に
   接着剤を塗布し、常法により繊維長３ｍｍ以下の分割型
   複合繊維のフロックを植毛し基布にフロックを固着して
   植毛布となし、しかるのちその植毛面の一部に膜状の高
   圧水流を噴射して一部の植毛フロックの分割を促進し、
   植毛フロックを部分的に０．５デニール以下の極細繊維
   化することを特徴とする模様付きフロック加工布の製造
   方法。