JPH073380A - 高熱伝導性耐食鋳鉄 - Google Patents

高熱伝導性耐食鋳鉄

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JPH073380A
JPH073380A JP14727693A JP14727693A JPH073380A JP H073380 A JPH073380 A JP H073380A JP 14727693 A JP14727693 A JP 14727693A JP 14727693 A JP14727693 A JP 14727693A JP H073380 A JPH073380 A JP H073380A
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雄一 東
Koji Nakamura
康治 中村
Katsuhiro Shibata
勝弘 柴田
Jun Sakai
潤 酒井
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 摩擦熱を速かに放出できる熱伝導性と、寿命
の長い耐食性鋳鉄を提供する。 【構成】 炭素当量4.0〜5.0重量%の範囲で、C
3.0〜4.5重量%およびSi1.5〜3.0重量%
を含有し、Mn0.5〜1.5重量%、P0.2重量%
以下、S0.06〜0.25重量%、Cu0.15〜
3.5重量%を含有し、残部をFeと不純物で構成した
ものに、更にCa0.02〜0.1重量%、Al0.0
2〜0.1重量%を添加する。 【効果】 炭素当量の向上とCaの添加とにより黒鉛の
成長を促し、黒鉛の成長により熱伝導性の向上を図るこ
とができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、乗用車等の車両および
産業機械の摺動部材、特にブレーキロータに好適な耐食
鋳鉄に関する。
【0002】
【従来の技術】摩擦熱の発生を伴う摺動部材、ブレーキ
部材は耐熱性や高熱伝導性が要求される。本出願人は、
先に特公昭59−11653号等で特性良好な耐食性鋳
鉄を提案した。すなわち、炭素当量3.8〜4.5重量
%の範囲で、C2.8〜4.5重量%およびSi1.5
〜3.0重量%を含有し、さらにMn0.5〜1.2重
量%、P0.2重量%以下、S0.06〜0.25重量
%、Cu0.15〜3.5重量%及び残部としてFeと
不純物を含有することを特徴とする錆層の層状剥離抵抗
性を向上させた耐食鋳鉄である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年の
車両の高性能化、高級化指向による重量の増加に伴っ
て、摺動材、ブレーキロータに掛かる負荷は増々苛酷に
なり、よりブレーキ性能の良い、耐久性の良い材料が求
められている。この要求に応えるべく、単に炭素当量を
高めて黒鉛の成長を促しても、今度はブレーキ効力(摩
擦係数)が低下するという別の問題が発生する。
【0004】また、高級化指向並びに商品性向上の要求
から、ブレーキの鳴きをより低減する必要がある。
【0005】この様に、摺動材、特にブレーキ部材に対
する性能向上の要請は留まるところがない。そこで本発
明の目的は摩擦熱を速かに放出できる熱伝導性と、寿命
の長い耐食性鋳鉄を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明者は、特
公昭59−11653号をベースにした研究を鋭意継続
し、CaとAlの添加が有効であることを見出すことに
成功した。
【0007】詳しく説明すると、成分中のC,Siは鋳
鉄を構成する基本的な元素であり、この組合わせにより
黒鉛の形態が変化し、ひいては熱伝導性を左右する。そ
こで、C重量%+1/3Si重量%で定義される炭素当
量の値をもって鋳鉄組織の指標とする。この炭素当量が
5.0重量%を越えると鋳鉄基地中のフェライト量が増
加して十分な強度を確保することが難かしくなる。ま
た、4.0重量%未満では黒鉛が十分に成長せず、十分
な熱伝導性を確保できない。そこで、炭素当量4.0〜
5.0重量%の範囲で、C3.0〜4.5重量%および
Si1.5〜3.0重量%に設定する。
【0008】添加されるCaは黒鉛成長の促進元素とし
て作用する。このCaの添加量が0.02重量%未満で
はその効果は非常に小さく、逆に、0.1重量%を越え
ると黒鉛を球状化する作用が強まるため、好ましい針状
黒鉛が十分に得られなくなる。そこで、Caの添加量は
0.02〜0.1重量%の範囲に設定する。
【0009】また、添加されるAlは鋳鉄基地中に析出
するフェライトの調整元素として作用する。このAlの
添加量が0.02重量%未満では溶解課程で酸化が進
み、十分な効果が期待できない。逆に、0.1重量%を
越えると黒鉛を球状化する作用が強まるため、好ましい
針状黒鉛が十分に得られなくなる。そこで、Alの添加
量は0.02〜0.1重量%の範囲に設定する。
【0010】以上を総合して本発明は、炭素当量4.0
〜5.0重量%の範囲で、C3.0〜4.5重量%およ
びSi1.5〜3.0重量%を含有し、Mn0.5〜
1.5重量%、P0.2重量%以下、S0.06〜0.
25重量%、Cu0.15〜3.5重量%を含有し、残
部をFeと不純物で構成したものに、更にCa0.02
〜0.1重量%、Al0.02〜0.1重量%を添加し
たことを特徴とする。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこ
れに限定されるものではない。 実施例1〜実施例5及び比較例;表1は実施例1〜5及
び比較例の成分組成一覧表である。なお、表では鉄Fe
および不純物を省略した。
【0012】
【表1】
【0013】表1に示す材料組成の鋳鉄を用いて、直径
280mm,板厚9mm,ベンチ幅10mmのベンチレ
ーテッドブレーキディスクを製造した。なお、原材料は
キュポラで溶解し、電極黒鉛,FeCa(Fe30%C
a合金),Al(純度99.7%)を用いて成分を調整
した。鋳造における主型は生砂型、中子はシェル中子を
使用した。実施例1〜5及び比較例の成分組成を以下に
詳述する。
【0014】実施例1; 炭素C 3.9重量% ケイ素Si 2.05重量% マンガンMn 1.0重量% リンP 0.6重量%未満 硫黄S 0.15重量% 銅Cu 1.0重量% 不純物 微 量 鉄Fe 残 量 カルシウムCa 0.02重量%添加 アルミニウムAl 0.06重量%添加
【0015】実施例2;実施例1に対して、カルシウム
Caの添加量を増した。即ち、 炭素C 3.9重量% ケイ素Si 2.05重量% マンガンMn 1.0重量% リンP 0.6重量%未満 硫黄S 0.15重量% 銅Cu 1.0重量% 不純物 微 量 鉄Fe 残 量 カルシウムCa 0.03重量%添加 アルミニウムAl 0.06重量%添加
【0016】実施例3;実施例2に対して、カルシウム
Caの添加量を増した。即ち、 炭素C 3.9重量% ケイ素Si 2.05重量% マンガンMn 1.0重量% リンP 0.6重量%未満 硫黄S 0.15重量% 銅Cu 1.0重量% 不純物 微 量 鉄Fe 残 量 カルシウムCa 0.04重量%添加 アルミニウムAl 0.06重量%添加
【0017】実施例4;実施例3に対して、カルシウム
Caの添加量を増した。即ち、 炭素C 3.9重量% ケイ素Si 2.05重量% マンガンMn 1.0重量% リンP 0.6重量%未満 硫黄S 0.15重量% 銅Cu 1.0重量% 不純物 微 量 鉄Fe 残 量 カルシウムCa 0.05重量%添加 アルミニウムAl 0.06重量%添加
【0018】実施例5;実施例1に対して、全面的に成
分及び添加量を変更した。即ち、 炭素C 3.6重量% ケイ素Si 2.7重量% マンガンMn 1.0重量% リンP 0.6重量%未満 硫黄S 0.15重量% 銅Cu 1.0重量% 不純物 微 量 鉄Fe 残 量 カルシウム 0.04重量%添加 アルミニウム 0.04重量%添加
【0019】比較例; 炭素C 3.3重量% ケイ素Si 2.0重量% マンガンMn 0.6重量% リンP 0.6重量%未満 硫黄S 0.2重量%未満 銅Cu 0.4重量% 不純物 微 量 鉄Fe 残 量
【0020】上記成分組成のブレーキディスクの寿命、
冷却性能、ブレーキ効力の評価結果を図1〜図4で具体
的に説明する。図1はカルシウム添加量と黒鉛長さの相
関図であり、ブレーキディスクのミクロ組織を観察し、
黒鉛の長さを計測したものであり、カルシウムCaの量
にほぼ正比例して黒鉛が長くなることが認められた。
【0021】図2は炭素量と熱間疲労寿命の相関図であ
り、イナーシャ・ダイナモ上で最高速度から停止までの
制動をクラックが発生まで繰り返した。すなわち、高
温、高負荷における寿命テストを実施した。炭素量の多
い実施例3は従来例の4〜5倍まで寿命が延びた。
【0022】図3はブレーキ液の温度上昇の比較図であ
り、イナーシャ・ダイナモ上で連続降坂相当のテストを
行ない、発生熱の指標としてブレーキ液の温度を計測し
た。従来例は135℃に達したが、これに対して、実施
例3は120℃となり、約15℃の温度低下が認められ
た。
【0023】図4はブレーキ効力の比較図であり、イナ
ーシャ・ダイナモ上で、JASOC 406に準拠した
ブレーキ効力テストを実施し、ブレーキ効力の平均値を
求めた。実施例3の平均ブレーキ効力は摩擦係数μで
0.4以上であり、比較例は0.4未満であった。
【0024】
【発明の効果】以上に述べた通り本発明は、炭素当量
4.0〜5.0重量%の範囲で、C3.0〜4.5重量
%およびSi1.5〜3.0重量%を含有し、Mn0.
5〜1.5重量%、P0.2重量%以下、S0.06〜
0.25重量%、Cu0.15〜3.5重量%を含有
し、残部をFeと不純物で構成したものに、更にCa
0.02〜0.1重量%、Al0.02〜0.1重量%
を添加したことを特徴とし、炭素当量の向上とCaの添
加とにより黒鉛の成長を促し、黒鉛の成長により熱伝導
性の向上を図り、併せてAlを添加することで基地組織
の適正量のフェライトを析出させることができ、これに
よりブレーキ性能の改善が図れるものである。加えて、
黒鉛の成長により摺動特性が改善され、更には共振周波
数が変化することによりブレーキノイズの発生を抑制で
きるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】カルシウム添加量と黒鉛長さの相関図
【図2】炭素量と熱間疲労寿命の相関図
【図3】ブレーキ液の温度上昇の比較図
【図4】ブレーキ効力の比較図
フロントページの続き (72)発明者 酒井 潤 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素当量4.0〜5.0重量%の範囲
    で、C3.0〜4.5重量%およびSi1.5〜3.0
    重量%を含有し、Mn0.5〜1.5重量%、P0.2
    重量%以下、S0.06〜0.25重量%、Cu0.1
    5〜3.5重量%を含有し、残部をFeと不純物で構成
    したものに、更にCa0.02〜0.1重量%、Al
    0.02〜0.1重量%を添加したことを特徴とする高
    熱伝導性耐食鋳鉄。
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